特許第6386948号(P6386948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386948
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】空調機械室構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20180827BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20180827BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20180827BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F24F13/02 C
   F24F3/044
   F24F13/02 D
   F24F13/10 A
   F24F7/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-52118(P2015-52118)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2015-194334(P2015-194334A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-53452(P2014-53452)
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直美
(72)【発明者】
【氏名】小山 徹
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−088009(JP,A)
【文献】 実開平06−069624(JP,U)
【文献】 特開平09−178202(JP,A)
【文献】 特開2006−097385(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0186010(US,A1)
【文献】 特開平9−170809(JP,A)
【文献】 特開平7−102857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 3/044
F24F 7/10
F24F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気を生成する空調装置と、その生成された空調空気を空調対象となる居室空間まで流す通気部材とを備えた空調システムを有する建物において、前記空調装置を収容する空調機械室の構造であって、
室内に物品収納棚が設けられるとともに、
床に設置された前記空調装置が収容される第1空間と、前記物品収納棚が設けられた第2空間とが並べて設けられ、
さらに、前記第1空間を開閉する第1開閉戸と、前記第2空間を開閉する第2開閉戸とも並べて設けられ、
前記第2開閉戸が閉じられた状態で前記第1開閉戸が開放されることを規制する開放規制手段を有していることを特徴とする空調機械室構造。
【請求項2】
前記第1空間の上に前記第2空間が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空調機械室構造。
【請求項3】
前記第1開閉戸は手前側に開く開き戸であり、
前記開放規制手段は、前記第1開閉戸に設けられてその第1開閉戸の開き方向である手前側への移動を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記物品収納棚が有する底棚部に設けられた突起部に当たることでそれ以上の手前側への移動を規制する被係止部と、弾性変形することによって前記被係止部を係止状態が解除される側へ変位させる変形部とを備え、
前記被係止部が前記突起部に当たった状態で、前記変形部の上方に、閉じられた状態の前記第2開閉戸が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の空調機械室構造。
【請求項4】
前記第1開閉戸は、当該第1開閉戸を正面から見て左右方向の一端側で、上下方向を中心軸線として回動可能に軸支され、
前記規制部は、前記軸支された側とは反対の他端側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の空調機械室構造。
【請求項5】
前記底棚部は、平板状に形成された棚板部と、前記棚板部の前記手前側で当該棚板部の下端よりも下方に突出するように設けられた前框とを有し、
前記突起部は前記前框の下面に設けられ、
前記棚板部と前記前框とは構造上分離して設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の空調機械室構造。
【請求項6】
前記底棚部は、平板状に形成された棚板部と、前記棚板部の前記手前側で当該棚板部の下端よりも下方に突出するように設けられた前框とを有し、
前記棚板部及び前記前框は、それぞれ前記前框が延びる方向の両端部で支持されており、
前記突起部は前記前框の下面に設けられ、
前記規制部は、前記前框が延びる方向においてはその中央寄りの位置で、かつ前記底棚部がその撓み許容量の最大まで撓んだ場合に、前記被係止部の上端が前記前框の下面よりも低い位置に配置された状態となる高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の空調機械室構造。
【請求項7】
前記通気部材は前記空調装置から上方に延びる上流側通気部を有しており、前記物品収納棚の奥に前記上流側通気部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空調機械室構造。
【請求項8】
前記空調機械室は、前記建物の非居室空間に隣接して設けられ、
その非居室空間は下がり天井を有する低天井空間であり、その天井裏空間を利用して前記通気部材の下流側通気部が設けられ、
前記収納棚の天井側は、非居室空間の下がり天井と同じ天井高さとされていることを特徴とする請求項7に記載の空調機械室構造。
【請求項9】
前記第1開閉戸及び前記第2開閉戸は、一対の扉板部材が観音開き式に取り付けられて構成されたものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の空調機械室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における空調機械室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、空調装置によって生成された空調空気を、空調ダクトやチャンバ等の通気部材を介して、各居室空間へ供給する空調システムが設けられることがある。その場合、天井裏空間や床下空間を利用して、システムを構成する空調装置や通気部材が設置されることが比較的多い。
【0003】
ただ、建物が陸屋根である場合など、空調装置等を設置するだけの空間を天井裏空間に確保することができない建物も中にはある。そのような場合には、下がり天井を有する非居室空間に隣接して空調機械室を設け、そこに空調装置等を設置するようにした構成が知られている。例えば特許文献1では、空調機械室内に空調装置等を設置する構成のほか、空調機械室内を還流空気の流通路として利用する工夫が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−213648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、空調機械室を設けた場合において、その室内空間を空調装置等の設置スペースとしてだけでなく、他に利用する方法も提案されているところである。しかしながら、上記特許文献1のように空気の流通路として利用するだけでは、空調機器類の設置スペース以外のスペースが有効に利用されているとはいえず、改善の余地がある。
【0006】
また、上記特許文献1では、空調機械室を仕切る壁に扉が設けられ、その扉を開けることにより空調機器類の点検を可能とする構成が採用されている。空調装置が床置きされた場合、扉も床側に配置されるため、幼児等の子供が扉を開けて空調装置へのアクセスが可能となってしまう。このため、子供による空調装置の誤操作のおそれへの対処という点でも改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空調機械室内に収納空間を設けてスペースの有効利用を図るとともに、空調機器類へのアクセス制限も併せて行える空調機械室構造を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の空調機械室構造では、空調空気を生成する空調装置と、その生成された空調空気を空調対象となる居室空間まで流す通気部材とを備えた空調システムを有する建物において、前記空調装置を収容する空調機械室の構造であって、室内に物品収納棚が設けられるとともに、床上に設置された前記空調装置が収容される第1空間と、前記物品収納棚が設けられた第2空間とが並べて設けられ、さらに、前記第1空間を開閉する第1開閉戸と、前記第2空間を開閉する第2開閉戸とも並べて設けられ、前記第2開閉戸が閉じられた状態で前記第1開閉戸が開放されることを規制する開放規制手段を有していることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明によれば、空調機械室に物品収納棚が設けられているため、空調機械室を利用して収納空間を確保でき、スペースの有効利用を図ることができる。それに加え、空調装置と収納空間とにそれぞれアクセスするための開閉戸が別に設けられ、開放規制手段により、第1開閉戸は、第2開閉戸が閉じられた状態では開きが規制される。第1開閉戸は、幼児等の子供によって開けられることを困難にする必要があるところ、その第1開閉戸だけを開くことができないようにすることで、子供による空調装置の誤操作のおそれを低減させることができる。
【0010】
第2の発明では、前記第1空間の上に前記第2空間が配置されている。
【0011】
この第2の発明によれば、第1空間の上に第2空間が配置されていることにより、第2開閉戸は第1開閉戸の上に存在することになる。そうすると、第2開閉戸を開閉するには背丈が必要となるため、幼児等の小さい子供が第2開閉戸を開閉することが困難となる。その結果、第1開閉戸を開くこともより困難になるため、子供による空調装置の誤操作のおそれをより一層低減させることができる。
【0012】
第3の発明では、前記第1開閉戸は手前側に開く開き戸であり、前記開放規制手段は、前記第1開閉戸に設けられてその第1開閉戸の開き方向である手前側への移動を規制する規制部を有し、前記規制部は、前記物品収納棚が有する底棚部に設けられた突起部に当たることでそれ以上の手前側への移動を規制する被係止部と、弾性変形することによって前記被係止部を係止状態が解除される側へ変位させる変形部とを備え、前記被係止部が前記突起部に当たった状態で、前記変形部の上方に、閉じられた状態の前記第2開閉戸が配置されている。
【0013】
この第3の発明によれば、第1開閉戸に設けられた被係止部が突起部に当たることにより、第1開閉戸はそれ以上の開き方向への移動が規制される。その移動規制を解除するには、変形部を変位させて被係止部の係止状態を解除する必要があるが、第2開閉戸が閉じている場合にはその第2開閉戸が変形部の上方に存在している。そのため、第2開閉戸を開いて変形部の上方に第2開閉戸が存在しない状態としない限り、変形部を変形させることができない。
【0014】
第1開閉戸を開くには、第2開閉戸も開く必要があるということに加え、第1開閉戸の移動規制を解除するには、さらに、変形部を弾性変形させる必要があるため、第1開閉戸を開くことがより困難となる。これにより、幼児等の子供による空調装置の誤操作のおそれを抑制できる。
【0015】
第4の発明では、前記第1開閉戸は、当該第1開閉戸を正面から見て左右方向の一端側で、上下方向を中心軸線として回動可能に軸支され、前記規制部は、前記軸支された側とは反対の他端側に設けられている。
【0016】
この第4の発明によれば、前記規制部は、前記第1開閉戸が軸支された側とは反対側、つまり前記第1開閉戸を開けた場合に、より大きな開き量を確保できる部分に設けられることになる。このため、前記変形部を変形させて前記被係止部による係止状態を解除するためのスペースが確保され、第1開閉戸の開きが規制された状態の解除を行い易い。
【0017】
第5の発明では、前記底棚部は、平板状に形成された棚板部と、前記棚板部の前記手前側で当該棚板部の下端よりも下方に突出するように設けられた前框とを有し、前記突起部は前記前框の下面に設けられ、前記棚板部と前記前框とは構造上分離されて設けられている。
【0018】
この第5の発明によれば、前記前框と前記棚板部とが構造上分離されているため、棚板部に載置された収納物品等の荷重により当該棚板部が撓んでも、前框までそれと一緒に撓んでしまうことが抑制される。このため、棚板部が撓んでも前框及びその下面に設けられた前記突起部の高さ位置を維持することが可能となる。それにより、第1開閉戸を手前側へ移動させる上で、前框が撓んで突起部の高さ位置が下がってしまうことによる弊害、つまり前記規制部の前記被係止部が、突起部に当たる前に前框の下端部と干渉してしまうことを抑制できる。
【0019】
第6の発明では、前記底棚部は、平板状に形成された棚板部と、前記棚板部の前記手前側で当該棚板部の下端よりも下方に突出するように設けられた前框とを有し、前記棚板部及び前記前框は、それぞれ前記前框が延びる方向の両端部で支持されており、前記突起部は前記前框の下面に設けられ、前記規制部は、前記前框が延びる方向においてはその中央寄りの位置で、かつ前記底棚部がその撓み許容量の最大まで撓んだ場合でも、前記被係止部の上端が前記前框の下面よりも低い位置に配置された状態となる高さ位置に設けられている。
【0020】
この第6の発明によれば、前記底棚部が撓み許容量の最大まで撓み得ることを想定して前記規制部が設けられているため、底棚部に載置された収納物品等の荷重により当該底棚部が撓んでも、前記被係止部の上端は前記前框の下面よりも低い位置に配置されている。これにより、底棚部が撓み許容量の最大まで撓んでも、第1開閉戸を手前側へ移動させる上で、前記被係止部が突起部に当たる前に前框の下端部と干渉してしまうことを抑制できる。
【0021】
第7の発明では、前記通気部材は前記空調装置から上方に延びる上流側通気部を有しており、前記物品収納棚の奥に前記上流側通気部が設けられている。
【0022】
この第7の発明によれば、物品収納棚の奥に上流側通気部が設けられていることにより、空調装置から上流側通気部が上方に延びる構成を備えた空調システムを採用した場合に、スペースの有効活用として好適である。この場合、空調装置も上流側通気部と同様に、空調機械室の奥側へ配置すれば、空調装置の前方に点検用スペースを確保することができる点でも好適である。
【0023】
第8の発明では、前記空調機械室は、前記建物の非居室空間に隣接して設けられ、前記非居室空間は下がり天井を有する低天井空間であり、その天井裏空間を利用して前記通気部材の下流側通気部が設けられ、前記収納棚の天井側は、非居室空間の下がり天井と同じ天井高さとされている。
【0024】
この第8の発明によれば、物品収納棚の天井側が非居室空間の下がり天井と同じ天井高さとされているため、物品収納棚の天井側を最大限高く設定することが可能となり、より広い収納空間を確保することができる。
【0025】
第9の発明では、前記第1開閉戸及び前記第2開閉戸は、一対の扉板部材が観音開き式に取り付けられて構成されたものである。
【0026】
この第9の発明によれば、第1開閉戸及び第2開閉戸は観音開き式の構成を有するため、片方の扉板部材を個別に開閉することが可能となり、一枚の扉板部材によって構成された場合に比べて開閉しやすい。特に、物品収納棚の開閉に関しては、片方の扉板部材を個別に開閉することが可能となるため、使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】建物における二階部分の空調機械室を示す縦断面図。
図2】空調機械室を廊下側から見た場合の正面図。
図3図1と同じ縦断面図において、空調機械室内のスペースを示す図。
図4】収納棚を構成する底棚部の前部周辺を示す縦断面図。
図5】第2開閉戸を開いた状態の空調機械室を示す概略正面図。
図6】第1開閉戸の開放規制とその解除の様子を概略的に示す説明図。
図7】底棚部の別例を示す縦断面図。
図8】棚板部だけが撓んだ状態を概略的に示す説明図。
図9】ストッパ部材の取付位置の別例を示す縦断面図。
図10】底棚部が撓んだ状態を概略的に示す説明図。
図11】別例の開放規制手段を採用した扉体を示す一部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の空調機械室構造を、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物であって、陸屋根よりなる屋根部を有する建物において具体化している。なお、ユニット式建物とは、梁及び柱を有する複数の建物ユニットを備え、それら各建物ユニットが互いに組み合わされることにより構成された建物である。
【0029】
はじめに、空調機械室の概要について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、建物における二階部分の空調機械室を示す縦断面図であり、図2は、空調機械室を廊下側から見た場合の正面図である。
【0030】
図1に示すように、建物10の二階部分には、屋内空間として、廊下11と空調機械室12とが設けられている。この図1には図示されていないが、建物10の二階部分における屋内空間としては、廊下11及び空調機械室12のほか、複数の居室空間が廊下11に隣接して設けられている。このため、非居室空間である廊下11は、各居室空間を繋ぐ空間としての役割を有している。
【0031】
また、建物10は、各階部分を個別に空調する空調システムを有しており、空調機械室12は、そのうちの二階部分に設けられた空調システム40の一部である空調機器類を設置する空間である。この空調機械室12は、廊下11に隣接して設けられるとともに、室外であるその廊下11に向けて、そのほぼ全域が開放された開放口13を有する空間となっている。
【0032】
図1のほか、図2にも示すように、空調機械室12の開放口13は、左右の側面壁14側に設けられた一対の縦枠15a,15bと、天井側に設けられた横枠16と、床面によって形成されている。そして、空調機械室12の開放口13は常時開放された状態にあるのではなく、その開放口13には扉体17が設けられている。この扉体17によって、空調機械室12の開放口13が開閉されるようになっている。
【0033】
なおここで、本実施形態における空調機械室12につき、その前後左右について説明する。左右とは図2の正面図を前提とし、前とは空調機械室12の開放口13側、つまり廊下11側をいい、その反対側の背面壁18側を奥というものとする。
【0034】
次に、建物10の二階部分に設けられた上記廊下11及び空調機械室12の天井及び床の概略構成について、上記図1を参照して説明する。
【0035】
図1に示すように、二階部分の屋内空間において、その天井側には二階天井21が設けられ、二階天井21の上方は天井裏空間22となっている。天井裏空間22は二階天井21と建物10の屋根部(図示略)との間に設けられているため、天井裏空間22を屋根裏空間ということもできる。
【0036】
二階天井21のうち、廊下11の天井部分23は、第1天井面材24と第2天井面材25とを備えて構成されている。これら各天井面材24,25はいずれも、石膏ボードである。第1天井面材24は、建物ユニットの天井梁(図示略)によって上方から支持されている。第2天井面材25は第1天井面材24よりも低い位置に設けられ、この第2天井面材25によって廊下11の天井面が形成されている。このように、廊下11では、第2天井面材25が設けられることにより、その天井部分23はいわゆる下がり天井となっている。その結果、廊下11は、他の屋内空間(空調機械室12や居室空間(図示略))よりも天井高さが低い低天井空間となっている。なお、第2天井面材25は、廊下11を囲う壁等に固定される等、適宜の固定方法により支持されている。
【0037】
前述したように、二階天井21の上方は天井裏空間22となっているが、廊下11では、天井部分23が2つの天井面材24,25とで構成されているため、両天井面材24,25の間には下部空間26が形成されている。すなわち、廊下11の天井裏は、下部空間26と天井裏空間22との二層の空間が形成されている。
【0038】
一方、空調機械室12の天井部分27についてみると、廊下11の天井部分23に設けられた前記第1天井面材24がこの空調機械室12にも設けられている。このため、空調機械室12は第1天井面材24によって天井面が形成されている。
【0039】
また、床側に関しては、廊下11の床部分31にはフローリング等の床仕上げ材32が設けられ、この床仕上げ材32によって廊下11の床面が形成されている。一方、空調機械室12では、床仕上げ材32は、廊下11から空調機械室12の開放口13より若干中に入った位置まで設けられている。それより奥側では、ACL床等の床下地材33が現れている状態となっている。
【0040】
次に、空調機械室12について、その室内構造を、上記図1及び図2に加えて、図3及び図4もさらに参照しつつより詳しく説明する。その説明に際しては、空調システム40についても必要な範囲で適宜説明を加える。
【0041】
前述したとおり、空調機械室12には、二階部分の空調システム40を構成する一部が設置されている。図1に示すように、その空調システム40は、空調空気(暖気及び冷気)を生成する室内機としての機能を有する空調装置41と、空調装置41に接続された通気部材42と、通気部材42に接続されて各居室空間に設けられる吹出部(図示略)とを備えている。
【0042】
空調装置41は、廊下11から空調機械室12に流れ込む空気を還気として取り込み、その還気をもとに空調空気を生成し、通気部材42内へ吹き出す。その吹き出された空調空気は、吹出部(図示略)に至るまで通気部材42を流通した後、吹出部(図示略)から空調対象となる各居室空間に空調空気が供給されるようになっている。この空調装置41は、床下地材33の上にベースパン43を介して設置され、空調機械室12に収容されている。
【0043】
空調装置41の前方、つまり空調機械室12の開放口13側には、床仕上げ材32の上に消音パネル44が設置されている。消音パネル44は、空調装置41から発せられる音を低減させる機能を有している。消音パネル44は、廊下11側から見て、空調装置41を構成する下部装置41aの前方を覆うように、空調機械室12の側面壁14同士の間全域にわたって床から立設され、空調装置41の点検が必要な時には着脱が可能となるように構成されている。
【0044】
通気部材42は、上流側通気部51と、下流側通気部52と、接続チャンバ53とを有している。上流側通気部51及び下流側通気部52はいずれも空調ダクトにより構成されている。
【0045】
上流側通気部51は、消音機能が付与されたフレキシブルダクトである。上流側通気部51の一端(上流側端部54)は、空調装置41の上端に設けられたダクト接続部41bに接続されている。空調機械室12内において、上流側通気部51は空調装置41から上方に向かって延びるように設けられており、他端(下流側端部55)が接続チャンバ53に接続されている。
【0046】
一方、下流側通気部52は水平方向に延びるように形成された成形ダクトであり、廊下11の二階天井21に設けられた下部空間26に設置されている。下流側通気部52は、廊下11と空調機械室12との境界部分上方に設けられたダクト支持部材45により、上流側端部56が支持されている。下流側通気部52の上流側端部56は、空調機械室12内へ突出した状態で接続チャンバ53に接続されている。
【0047】
接続チャンバ53は、空調装置41から上方に向かって延びる上流側通気部51と、廊下11の天井側で水平方向に延びる下流側通気部52とをつなぐチャンバである。この接続チャンバ53は、空調機械室12の天井面に近い天井寄りに設けられ、空調機械室12の奥側から手前側(前側)に向かって略直角に折れ曲がるように形成されている。
【0048】
以上のように、空調機械室12には、空調システム40のうち、空調装置41と、通気部材42の一部よりなる空調機器類が設置されている。通気部材42の一部とは、上流側通気部51、接続チャンバ53及び下流側通気部52の上流側端部56である。
【0049】
ところで、空調機械室12に設置された空調装置41は室内の奥側に配置されており、その結果、空調装置41から上方に延びる上流側通気部51も同じく奥側に配置されている。そして、空調機械室12の天井側には、奥側から手前側に折り曲がる接続チャンバ53が設けられている。空調機械室12において、空調装置41と通気部材42の一部よりなる空調機器類がこのように配置された構成となっているため、空調装置41及び上流側通気部51の手前側にはスペースが設けられている。
【0050】
図3は、図1と同じ、建物10における二階部分の空調機械室12を示す縦断面図であり、空調機器類のみを図示して他を省略することにより、スペースの存在を示した図である。この図3に示すように、空調機械室12では、空調装置41及び上流側通気部51の手前側に前方スペース60が設けられている。前方スペース60は、空調装置41の手前側に存在する第1スペース61と、上流側通気部51の手前側に存在する第2スペース62とを有している。
【0051】
第1スペース61は、空調装置41とその上端のダクト接続部41bを含む高さが確保されたスペースであり、空調装置41を点検する場合に人が中に入り込むための点検用スペースとして利用される。なお、点検時には消音パネル44(図1を参照)は外される。このような点検用の第1スペース61が確保されることにより、空調装置41が点検しやすいようになっている。
【0052】
第1スペース61の奥には空調装置41が設置されており、そこが装置設置スペース63となっている。この装置設置スペース63と第1スペース61とを合わせた空間が、空調装置41が収容される第1空間に相当する。
【0053】
これに対し、第2スペース62は、第1スペース61の直上に存在し、開放口13の上端までの領域が確保されたスペースである。この第2スペース62は、そのままではデッドスペースと化してしまうため、物品の収納スペースとして利用される。このため、第2スペース62が第2空間に相当する。収納スペースとしての利用に関して、具体的には次のとおりである。
【0054】
図1に戻り、図3の第2スペース62に相当する部分には、物品収納棚70が設けられている。物品収納棚70は、底棚部71と、天板72と、背面部73とを有している。空調機械室12を形成する左右の側面壁14間に底棚部71及び天板72が水平に架け渡されるとともに、背面部73が底棚部71と天板72の奥側を塞ぐようにして、それぞれが設けられている。これにより、物品収納棚70に箱型の収納空間74が形成され、収納空間74は、その奥の空調装置41や上流側通気部51が設置された設置空間と区画されている。収納空間74を形成する天板72、背面部73及び左右の側面壁14の内側面にはクロス等の仕上げ材が貼り付けられ、化粧仕上げが施されている。
【0055】
図4は、物品収納棚70を構成する底棚部71の前部周辺を示す縦断面図である。この図4に示すように、底棚部71は、棚板桟81、棚仕上げ材82及び前框83を有して構成されている。棚板桟81は木質系の角材により枠状に形成された構造材であり、空調機械室12の左右の側面壁14間及び縦枠15a,15b間に架け渡されるようにして設けられ、左右両端部が側面壁14及び縦枠15a,15bに固定されている。かかる構成により、棚板桟81は、そこに成人が載った場合でも、人から受ける荷重に耐え得る構造を備えている。
【0056】
棚仕上げ材82は棚板桟81の上全域にわたって設けられ、その上面によって物品収納棚70の底面が形成されている。棚仕上げ材82の前端部には、前框83と組付けるための溝切加工が施されている。
【0057】
前框83は、その上面が棚仕上げ材82の上面と同一平面をなす高さ位置に設けられ、棚板桟81の前端に当接した状態で、空調機械室12の左右の縦枠15a,15b間に架け渡されている。前框83は、その左右両端部において、固定金具(図示略)を用いて左右の縦枠15a,15bに固定されている。前框83の上端部は溝切加工され、前記棚仕上げ材82に施された溝切部分と合わさって、前框83と棚仕上げ材82の前端部とが組み付けられている。前框83の上下方向の長さ(厚さ)は、棚板桟81及び棚仕上げ材82を合わせた厚さよりも長く形成されており、前框83の下端は棚板桟81の下端よりも下方に突出している。このため、底棚部71の手前側(前側)は、図示のように、縦断面がL字状をなしている。
【0058】
再び図1に戻り、物品収納棚70の天板72は石膏ボードにより構成され、廊下11の天井部分23に設けられた第2天井面材25と同じ高さ位置に設けられている。そのため、廊下11の下がり天井と同じ天井高さとなっている。
【0059】
背面部73は、木質系の角材により形成された枠体(図示略)や石膏ボード(図示略)を組み合わせて構成され、その左右両端が側面壁14に、下端部が底棚部71に、上端部が天板72にそれぞれ固定されている。背面部73の内側面には、上下方向に延びるハンギングレール75が左右両端側に設けられている(後述の図5(a)を参照)。ハンギングレール75には、一枚又は複数枚(図示では2枚)の可動棚板76が着脱自在に設けられている。可動棚板76は、その支持金具76aをハンギングレール75に引っ掛けることによって、所望の高さ位置に取り付けられる構成を有している。
【0060】
ここで、背面部73は、前述したように、収納空間74の奥側を塞ぐように設けられている。これにより、背面部73の奥に配置されている上流側通気部51は、背面部73によって隠れた状態となり、収納空間74からその上流側通気部51を目視することができない。この場合、上流側通気部51の点検が必要な場合に支障をきたすことになる。そこで、背面部73には点検口77が設けられている。
【0061】
点検口77は、収納空間74とその背後の上流側通気部51が配置された空間とを連通する矩形状の孔であり、縦横が人の肩幅よりも若干大きめの寸法(一例として、縦横それぞれ620mm程度)を有している。背面部73における点検口77の位置は、左右方向では中央部であり、上下方向では中央部よりも下寄りにずらした位置となっている(後述の図5(a)を参照)。前記ハンギングレール75は、この点検口77の左右両側方に設けられている。
【0062】
点検口77には、その点検口77を塞ぐ点検口蓋部材78が設けられている。点検口蓋部材78は点検口77の形状と同じ矩形状をなし、点検口77に対して着脱自在に嵌め込まれている。点検口蓋部材78には、点検口77に嵌め込まれた状態で収納空間74側となる面にクロス等の仕上げ材が貼り付けられ、化粧仕上げが施されている。
【0063】
続いて、空調機械室12の扉体17に関する構成を、図1図2及び図4に加えて、図5及び図6もさらに参照しつつ説明する。
【0064】
図1及び図2に示すように、空調機械室12の開放口13には扉体17が設けられている。扉体17は、第1開閉戸91と第2開閉戸92とを有して構成されている。第1開閉戸91は空調装置41の前方に設けられ、第2開閉戸92は物品収納棚70の前方に設けられている。換言すれば、空調機器類の前方に設けられた前方スペース60のうち(図3を参照)、第1開閉戸91は第1スペース61の前方に、第2開閉戸92は第2スペース62の前方に設けられているともいえる。これにより、第1開閉戸91が下側に、第2開閉戸92が上側にそれぞれ配置された状態となっている。
【0065】
いずれの開閉戸91,92も右扉板部材91a,92aと左扉板部材91b,92bとで構成され、右扉板部材91a,92aは右側の縦枠15aに、左扉板部材91b、92bは左側に縦枠15bに、複数(この実施形態では3個)の丁番Tを介して開閉可能に支持されている。つまり、右扉板部材91a,92aは右端側で、左扉板部材91b、92bは左端側で、それぞれ上下方向を中心軸線として回動可能に軸支されている。これにより、第1開閉戸91及び第2開閉戸92は、いずれも観音開き式に開閉される。
【0066】
また、各開閉戸91,92が閉じられた状態において、左右中央で互いに突き合わされる右扉板部材91a,92aの左端部と左扉板部材91b,92bの右端部には、それぞれ上下方向にわたって溝状部91c,92cが形成されている(後述の図5を参照)。この溝状部91c,92cを指で引っ掛けることで、右扉板部材91a,92a及び左扉板部材91b,92bを開け易くなっている。
【0067】
第1開閉戸91は、その上端が物品収納棚70の底棚部71を構成する前框83の下端部前方に位置し、下端はアンダーカットとされている。このアンダーカットを通じて、廊下11の空気が還気として空調機械室12内に取り込まれ、消音パネル44を乗り越えるように流通して空調装置41に取り込まれる。
【0068】
一方、第2開閉戸92は、その上端が横枠16に至り、下端は前框83の前方であって、第1開閉戸91の上端に至るまでの寸法を有している。このため、空調機械室12の開放口13は、第1開閉戸91のアンダーカット部分を除き、ほぼ全面が両開閉戸91、92で閉じられた状態となっている。
【0069】
このように、空調機械室12は、空調システム40の一部を収容するだけでなく、空調システム40を構成する上流側通気部51の前方に物品収納棚70が設けられ、空調装置41の収容部分と物品収納棚70とのそれぞれに対応する開閉戸91,92が設けられている。そのため、空調装置41に対して点検や操作が必要な場合に限り第1開閉戸91を開閉し、物品収納棚70を日常的に利用する場合は、第2開閉戸92のみを開閉すれば足りる。
【0070】
図5は、第2開閉戸92を開いた状態の空調機械室12を示す概略正面図であり、(a)は物品収納棚70を日常利用する状態を示し、(b)は点検時の状態を示している。この図5(a)に示すように、物品収納棚70を日常利用する場合は、点検口77が点検口蓋部材78によって塞がれ、建物10の利用者は、底棚部71や可動棚板76を利用して、所望の物品を収納することができる。
【0071】
一方、定期点検等により空調システム40の点検が必要な場合は、図5(b)に示すように、収納された物品が取り出されるとともに、可動棚板76をハンギングレール75から取り外した状態とする。その上で、点検口蓋部材78を取り外すことで点検口77が開放され、その奥に存在する上流側通気部51を目視することができる。そして、底棚部71の棚板桟81が耐荷重構造とされているため、底棚部71に点検者が乗り、点検口77からその奥を覗き込み、上流側通気部51を点検することができる。また、点検口77は、前述したとおり比較的大きな開口で、背面部73において下寄りに配置されているため、点検者は点検口77に頭部を入れて奥を覗き込むことが可能となる。それにより、ダクト接続部41bと上流側通気部51の上流側端部54との接続部分を見下ろしながら点検し、上流側通気部51の下流側端部55と接続チャンバ53との接続部分を見上げながら点検することができる。
【0072】
ところで、第1開閉戸91及び第2開閉戸92のうち、第2開閉戸92は自由な開閉が可能とされ、物品収納棚70へのアクセスに関して制限は設けられていない。これに対して、第1開閉戸91は下側に設けられているため、幼児等の子供であっても開閉することが可能となる。この場合、第1開閉戸91を開けると空調装置41へのアクセスが可能となるため、子供による空調装置41の誤操作のおそれがある。そこで、第1開閉戸91の開きを規制する開放規制手段が設けられている。
【0073】
図4に示すように、第1開閉戸91の裏面、つまり閉状態において空調機械室12内側となる面には、規制部としてのストッパ部材93が取り付けられている。ストッパ部材93は、左右の扉板部材91a,91bにそれぞれ1つずつ設けられている。図2を参照すれば、ストッパ部材93は、第1開閉戸91の閉状態において、左右中央寄りの上端部であって、前框83の下方に取り付けられている。つまり、ストッパ部材93は、各扉板部材91a,91bにおいて、丁番Tによって軸支された側とは反対側の位置に設けられている。
【0074】
ストッパ部材93は、金属製の板材が折り曲げ形成されてなり、扉板部材91a,91bへの取付部94、水平部95、被係止部96及び先端部97を有している。変形部としての水平部95は前框83の下方で取付部94から奥に向かって水平に延び、前框83よりも長い寸法を有している。被係止部96は、水平部95の先が直角に立ち上がって形成されている。被係止部96の上端96aは、前框83の下面83aよりも若干(例えば1mm〜3mm程度)下位置に配置され、その先が斜め下向きに延びる先端部97となっている。
【0075】
一方、前框83の下面83aには、その前側に、突起部としてのストッパピン98が設けられている。ストッパピン98は、前框83の下面83aから下方に突出し、ストッパ部材93の水平部95とは干渉せず、かつ突出端が被係止部96の上端96aよりも下に位置するように設けられている。第1開閉戸91を開く場合に、このストッパピン98にストッパ部材93の被係止部96が当たることで、第1開閉戸91の開きが規制されるようになっている。
【0076】
その開放規制の仕組みについて、図6を参照しつつさらに説明する。図6は、第1開閉戸91の開放規制とその解除の様子を概略的に示す説明図であり、(a)は両開閉戸91,92を閉じた状態、(b)は第1開閉戸91の開放が規制された状態、(c)は第1開閉戸91の開放規制を解除する様子を示している。なお、この図6では、各開閉戸91、92を構成する左右の扉板部材91a,91b,92a,92bのうち、左扉板部材91b,92bを示しているが、右扉板部材91a,92aもこれと同様の仕組みで開放規制がなされる。
【0077】
図6(a)に示すように、両開閉戸91,92を閉じた状態では、ストッパ部材93の被係止部96はストッパピン98よりも奥側に位置している。この状態から、第1開閉戸91のみを観音開き式で開けようとすると、第1開閉戸91の左扉板部材91bは前方へ移動する。
【0078】
すると、図6(b)に示すように、ストッパ部材93の被係止部96がストッパピン98に当たり、それ以上に左扉板部材91bが開くことが規制される。このとき、閉じた状態にある第2開閉戸92(左扉板部材92b)がストッパ部材93の水平部95の上方に存在するため、被係止部96とストッパピン98との係止を解除することできなくなっている。つまり、第1開閉戸91の左扉板部材91bが移動したことにより生じる空間が、第2開閉戸92の左扉板部材92bによって塞がれた状態となり、ストッパ部材93を操作することができなくなっている。したがって、第2開閉戸92が閉じた状態にある限り、第1開閉戸91を開けることはできない。
【0079】
ちなみに、上記のような構成とするため、ストッパ部材93の水平部95は、取付部94から被係止部96までの長さLが、第2開閉戸92の左扉板部材92bの厚さと、前框83の前面からストッパピン98の被係止部96との当接面までの長さとを合わせた寸法と、ほぼ同じとなるように設定されている。
【0080】
このような開放規制を解除する場合、図6(c)に示すように、まず第2開閉戸92を開いた状態とする。そして、ストッパ部材93の水平部95を下へ押し込むことにより、被係止部96とストッパピン98との係止状態が解除される。これにより、開放規制が解除されるため、第1開閉戸91の左扉板部材91bを開けることができる。
【0081】
なお、ストッパ部材93の水平部95の押し込みを止めると、水平部95は復元力によってもとの水平状態に復帰する。このため、第1開閉戸91の左扉板部材91bを開いた状態から閉じる場合には、水平部95を再度下へ押し込んで、被係止部96とストッパピン98とが当たることを避けながら閉じることになる。
【0082】
このように第2開閉戸92を開けない限り、下側にある第1開閉戸91を開くことができない。そして、第2開閉戸92は上側にあるため、幼児等の子供が開閉することが困難である。このため、空調装置41へのアクセスを可能とする第1開閉戸91が子供によって開かれることを抑制し、子供が空調装置41に対して誤操作するおそれを低減させることができる。
【0083】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0084】
空調機械室12には、物品収納棚70が設けられている。そのため、空調機械室12を利用して収納空間74を確保でき、スペースの有効利用を図ることができる。
【0085】
空調機械室12の扉体17は、空調装置41にアクセスするための第1開閉戸91と、収納空間74にアクセスするための第2開閉戸92とを有する。そして、第2開閉戸92が閉じられた状態では、その第2開閉戸92の存在により、ストッパ部材93の水平部95を押し込む操作を行うことができず、第1開閉戸91を開くことができない。これにより、幼児等の子供による空調装置41の誤操作のおそれを低減させることができる。
【0086】
さらに、第2開閉戸92が第1開閉戸91の上に存在し、両開閉戸91,92が上下に並んで設けられている。そうすると、第2開閉戸92を開閉するには背丈が必要となるため、幼児等の小さい子供が第2開閉戸92を開けることが困難となる。これにより、第1開閉戸91と第2開閉戸92が横に並んで配置された構成と異なり、子供による空調装置41の誤操作のおそれをより一層低減させることができる。
【0087】
第1開閉戸91の開放規制手段を有しており、第1開閉戸91に設けられたストッパ部材93の被係止部96が、前框83の下面に設けられたストッパピン98に当たることで、第1開閉戸91はそれ以上の開き方向への移動が規制される。その移動規制を解除するには、水平部95を変位させて被係止部96の係止状態を解除する必要がある。ところが、第2開閉戸92が閉じられている場合、その第2開閉戸92が水平部95の上方に存在している。そのため、第2開閉戸92を開いて水平部95の上方に第2開閉戸92が存在しない状態にしないと、水平部95を変形させることができない。
【0088】
このように、第1開閉戸91を開くには、第2開閉戸92も開ける必要があるということに加え、第1開閉戸91の移動規制を解除するには、さらに、水平部95を弾性変形させる必要があるため、幼児等の子供が第1開閉戸91を開けることはより困難となる。それにより、幼児等の子供による空調装置41の誤操作のおそれを抑制できる。
【0089】
第1開閉戸91において、ストッパ部材93は、各扉板部材91a,91bが軸支された側、つまり丁番Tが設けられた側とは反対側の位置に設けられている。このため、第1開閉戸91を開けた場合、より大きな開き量を確保できる部分にストッパ部材93が存在する。これにより、ストッパ部材93の水平部95を変形させて、被係止部96による係止状態を解除するためのスペースを確保でき、第1開閉戸91の開きが規制された状態を解除し易い。
【0090】
空調システム40の空調装置41が奥側に配置されるとともに、上流側通気部51は物品収納棚70の背面部73の奥側に設けられている。これにより、空調装置41の前方に点検用スペースを確保しつつ、物品収納棚70の奥に存在するスペースを利用して上流側通気部51が配置されるため、スペースの有効活用として好適である。
【0091】
物品収納棚70は、その天井側が廊下11の下がり天井と同じ天井高さとされている。このため、物品収納棚70の天井側を最大限高く設定されており、より広い収納空間74を確保することができる。
【0092】
第1開閉戸91及び第2開閉戸92は、観音開き式の両開き戸となっている。このため、左右の扉板部材91a,91b,92a,92bをそれぞれ個別に開閉することが可能となり、片開き戸である場合に比べて開閉がしやすく使い勝手がよい。特に、物品収納棚70の開閉に関しては、各扉板部材92a,92bを個別に開閉できるということは、使い勝手の向上につながる。
【0093】
[他の実施形態]
(1)上記実施の形態では、空調装置41が設置される空間と物品収納棚70とが上下に並んで設けられているところ、これを左右に並べて設けられた構成を採用してもよい。例えば、上流側通気部51が空調装置41より横方向に延びるように設けられる空調システム40の場合、このような構成を採用することが好適となる。この構成では、第1開閉戸91及び第2開閉戸92が床側に配置されるため、幼児等の子供は両開閉戸91,92に手が届く。ただそれでも、開放規制手段により、第2開閉戸92が開いた状態でない限り、第1開閉戸91を開くことができない構成とすることで、第1開閉戸91単独でも開ける場合に比べて、幼児等の子供が空調装置41を誤操作するおそれを低減させることができる。
【0094】
なお、この場合の開放規制手段としては、例えば、第1開閉戸91に開放を規制するロック機構を設け、そのロック機構を解除するための解除操作部を物品収納棚70に設ける等の構成が考えられる。
【0095】
(2)上記の実施形態では、物品収納棚70の底棚部71について、棚仕上げ材82と前框83とが溝切部分で組み付けられて一体化した構成となっているが、例えば図7に示すように、その両者を分離した構成を採用してもよい。この構成では、棚仕上げ材82の前端と棚板桟81の前端とで同一平面が形成され、そこに前框83が当接するようにして当該前框83が設けられている。棚板桟81及び棚仕上げ材82とで平板状をなす棚板部84が形成され、その棚板部84と前框83とは、縦枠15a,15b等に固定されて支持されている。棚板部84と前框83とは、固定支持された左右両端部を除いて構造上分離して設けられている。
【0096】
なお、棚仕上げ材82の前端及び棚板桟81の前端と前框83との間に若干の隙間が形成された構成であってもよい。
【0097】
ここで、底棚部71には、物品収納棚70に収納される収納物品が載置されたり、空調システム40の点検時に点検者が乗ったりする。それら収納物品や人により底棚部71には荷重が作用するため、その荷重によって底棚部71には撓みが生じる。前框83及び棚板部84を含む底棚部71はその左右両端部と奥側で固定されているため、その撓み量は、前側でかつ左右方向の中央寄りの部分、つまりストッパ部材93の設置箇所付近において大きくなる。そうすると、上記の実施形態のように、棚仕上げ材82と前框83とが一体化されている構成では、底棚部71の撓みによって前框83が撓むことになり、その下面83aの高さ位置は非荷重の状態(図4の状態)よりも下がる。この場合、ストッパ部材93の被係止部96が前框83の下端部と干渉してしまい、被係止部96がストッパピン98に当接するまで第1開閉戸91を前に引き出せなくなる可能性がある。
【0098】
その点、上記した別形態の構成によれば、前框83が棚板部84と構造上分離されて設けられているため、図8に示すように、収納物品や人による荷重が棚板部84に作用しても、その荷重による棚板部84の撓みは当該棚板部84にのみ作用し、前框83まで一緒に撓んでしまうことが抑制される。これにより、前框83の下面83aの高さ位置は、荷重非作用の状態と同じレベルを維持することが可能となり、第1開閉戸91を開ける際に、ストッパ部材93の被係止部96が、ストッパピン98に当たる前に前框83の下端部と干渉してしまうことを抑制できる。
【0099】
(3)上記の実施形態では、ストッパ部材93は、その被係止部96の上端96aが前框83の下面83aよりも若干(1mm〜3mm)下の位置となるように設けられていたが、例えば図9に示すように、より離れた位置に設けられた構成を採用してもよい。具体的には、ストッパ部材93は、被係止部96の上端96aが前框83の下面83aよりも高さH1だけ低い位置に設けられている。この高さH1は、前框83を含む底棚部71の撓み許容量よりも大きくなっている。つまり、ストッパ部材93は、前框83を含む底棚部71が撓んで前框83の下面83aが下がることを想定した位置に設けられている。そして、ストッパ部材93の取付位置が上記実施形態の構成よりも下げられたことにより、ストッパピン98は、前框83の下面83aからの突出長さが上記実施形態の構成よりも長くなっている。その突出長さとしては、ストッパ部材93の水平部95と干渉せず、かつ突出端が被係止部96の上端96aよりも下に位置するような長さである。
【0100】
なお、撓み許容量は、荷重により底棚部71が変形して取付位置が下がった場合における位置差(下がり量)の最大値であり、底棚部71に対し、所定の積載重量で一定期間荷重をかけた場合を基準として設定される。一例として、積載重量1.5kg/dmとし、その積載重量で1週間荷重をかけた場合が考えられる。この場合、5mm又は横幅(物品収納棚70を正面から見た場合の左右方向の幅)に対する割合の0.5%として算出される数値のうち、いずれか小さい方の数値を撓み許容量として設定することが好ましい。具体的には、底棚部71の横幅が800mmであれば撓み許容量は4mm(横幅の0.5%)と設定され、1500mmであれば横幅の0.5%は7.5mmだが、撓み許容量は5mmと設定される。
【0101】
このような構成によれば、図10に示すように、収納物品や人による荷重が底棚部71に作用して当該底棚部71が撓み許容量の最大まで撓んだとしても、被係止部96の上端96aが前框83の下面83aよりも高さH2だけ低い位置に配置された状態となる。これにより、底棚部71が撓んでも、第1開閉戸91を開ける際に、ストッパ部材93の被係止部96が前框83の下端部と干渉してしまうことを抑制できる。つまり、この別形態によっても、上記(2)の別形態と同じ効果を得ることができる。
【0102】
(4)上記実施の形態では、開放規制手段として、ストッパ部材93及びストッパピン98を設け、ストッパ部材93の水平部95の上方に、閉じられた状態の第2開閉戸92が配置される構成を採用したが、別の構成を採用としてもよい。例えば、図11はその別例の開放規制手段を採用した扉体17を示す一部正面図である。この図11に示すように、第1開閉戸91には溝状部91cを有しない扉板部材101a,101bを有している。この扉板部材101a,101bの上面には、左右中央寄りの箇所に、溝部102が設けられている。第1開閉戸91の上端と第2開閉戸92の下端との間は、幼児等の子供でも指が入らないようなわずかな隙間が設けられているため、第2開閉戸92を開いて初めて、溝部102に指を引っ掛けることが可能となる。かかる構成であっても、第1開閉戸91の開放を規制し、幼児等の子供よる空調装置41の誤操作のおそれを低減できる。
【0103】
(5)上記実施の形態では、第1開閉戸91の各扉板部材91a,91bにおいて、それらが軸支された側とは反対側の位置にストッパ部材93を設けたが、ストッパ部材93を取り付ける位置は任意である。例えば、各扉板部材91a,91bのそれぞれの中央部にストッパ部材93が設けられた構成を採用してもよい。もっとも、水平部95を変形させて、被係止部96による係止状態を解除するためのスペースを確保するという意味では、軸支側とは反対側に設けられた構成として扉の開き量を確保することが好ましい。
【0104】
(6)上記実施の形態では、空調機械室12に収容される空調システム40として、空調装置41から上流側通気部51が上方に延び、下流側通気部52が下がり天井による天井側の下部空間26に設けられた構成を採用したが、他の構成を採用してもよい。
【0105】
例えば、通気部材42が二階床下空間に設けられ、上流側通気部51が空調装置41から下方へ引き出される構成としてもよい。この構成では、物品収納棚70の奥側に上流側通気部51が存在しないため、空調装置41が設置される空間の上をすべて収納用の空間として利用できる。また、この構成では収納空間が広くなる分、収納可能な物品の量が増える。これにより、底棚部71が収納物品から受ける荷重も増加し、底棚部71の撓み量も大きくなる可能性があるため、上記(2)や(3)で説明した別形態の構成を採用することが好適である。
【0106】
(7)上記実施の形態では、物品収納棚70は可動棚板76が設けられているが、これを省略してもよい。また、可動棚板76は水平方向にのみ設けられた構成となっているが、可動棚板76が垂直方向に設置された構成を採用してもよく、さらには、引き出しを収納空間74に設けたり、可動棚板76と併設したりしてもよい。
【0107】
その他、物品収納棚70として必要な構成としては底棚部71であり、天板72や背面部73を省略してもよいし、点検口77や点検口蓋部材78のない背面部73としてもよい。もっとも、本実施形態のように天板72や背面部73が設けられた物品収納棚70の方が、奥側に物品の落下を防止できたり、可動棚板76が設置できたりする点で、使い勝手はよい。
【0108】
(8)上記実施の形態では、物品収納棚70の天井側が廊下11の下がり天井と同じ天井高さに設定されているが、物品収納棚70の天井側が下がり天井よりも低い位置に設けられた構成を採用してもよい。この場合は、収納空間74の収納容量が少なくなるため、本実施形態と同様、下がり天井と同じ高さ位置に設定することが好ましい。
【0109】
(9)上記実施の形態では、通気部材42が上流側通気部51、下流側通気部52及び接続チャンバ53によって構成されているが、これらを一つの空調ダクト(フレキシブルダクト又は成形ダクト)によって構成してもよい。また、上流側通気部51を成形ダクトとしてもよいし、下流側通気部52や接続チャンバ53をフレキシブルダクトに変更してもよい。
【0110】
(10)上記実施の形態では、扉体17を構成する第1開閉戸91と第2開閉戸92とが観音開き式とされているが、そのいずれか一方又は両方を片開き式としてもよいし、引き戸としてもよい。片開き式とされた第1開閉戸91又は第2開閉戸92は、一枚の扉板部材により構成され、正面から見た左右方向のいずれか一端側でその扉板部材が回動可能に軸支される。この場合において、その反対側となる他端側に、ストッパ部材93を設けた構成とすることが好ましい。なお、引き戸とされた場合は、空調装置41の点検時に引き戸である第1開閉戸91や第2開閉戸92が取り外されることになる。
【0111】
(11)上記実施の形態では、空調機械室12は廊下11に隣接して設けられているが、玄関等の他の非居室空間に隣接して設けられた構成としてもよい。
【0112】
(12)上記実施の形態では、建物10の二階部分に設けられる空調システム40を収容するための空調機械室12として説明したが、一階部分に設けられる空調システムを収容する一階部分の空調機械室に適用してもよい。このように一階部分の空調機械室に適用した場合には、上記実施形態のように空調装置41から上流側通気部51が上方に延びる構成ではなく、通気部材42が一階床下空間を利用して設けられ、上流側通気部51が空調装置41から下方へ引き出される構成とすることが好適である。
【0113】
(13)上記実施の形態では、建物10として、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物であって、陸屋根を有するものを想定したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物に適用してもよい。また、陸屋根ではなく傾斜屋根部を有する建物であってもよく、特に傾斜屋根部であっても屋根裏空間が狭く、そこに空調システム40を設置するだけのスペースを確保することが困難な場合に好適となる。
【符号の説明】
【0114】
12…空調機械室、40…空調システム、41…空調装置、42…通気部材、51…上流側通気部、52…下流側通気部、61…第1空間を構成する第1スペース、62…第2空間としての第2スペース、63…第1空間を構成する装置設置スペース、70…物品収納棚、71…底棚部、83…前框、84…棚板部、91…第1開閉戸、92…第2開閉戸、91a,91b…扉板部材、92a,92b…扉板部材、93…開放規制手段を構成する規制部としてのストッパ部材、95…規制手段を構成する変形部としての水平部、96…規制手段を構成する被係止部、98…規制手段を構成する突起部としてのストッパピン。
図1
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