特許第6386965号(P6386965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386965
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】タイヤ状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20180827BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20180827BHJP
   G01L 17/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B60C23/04 N
   G08C17/00 B
   G01L17/00 301P
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-88839(P2015-88839)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-203834(P2016-203834A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】牛田 敏
(72)【発明者】
【氏名】高畑 信哉
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283816(JP,A)
【文献】 特開2004−051060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0122660(US,A1)
【文献】 特開2016−203722(JP,A)
【文献】 特開2014−20833(JP,A)
【文献】 特開2006−298182(JP,A)
【文献】 特開2004−243883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに設置された送信機から車両本体に設置された受信機へ前記タイヤの状態を通知するための通知信号を送信するタイヤ状態監視装置であって、
送信の開始を示す所定の開始信号が含まれた前記通知信号を前記送信機から間欠的に送信するタイヤ側制御部と、
前記受信機において前記通知信号を受信するための受信処理を一定の周期で間欠的に実行する車両側制御部とを備え、
前記タイヤ側制御部は、一の前記開始信号の送信を開始した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の後において最初に前記開始信号の送信を終了した時刻との間隔が、前記受信処理の一回の実行時間よりも短く、かつ、前記開始信号の送信時間より第1シフト時間だけ長くなるように前記通知信号の送信間隔を制御する
ことを特徴とするタイヤ状態監視装置。
【請求項2】
前記タイヤ側制御部は、前記受信処理の周期に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔で前記通知信号の間欠的な送信を行い、前記N分の1の送信間隔で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を前記N分の1の送信間隔より前記第1シフト時間だけ長くする
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ状態監視装置。
【請求項3】
前記タイヤ側制御部は、前記第1シフト時間を、前記N分の1の送信間隔に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ状態監視装置。
【請求項4】
タイヤに設置された送信機から車両本体に設置された受信機へ前記タイヤの状態を通知するための通知信号を送信するタイヤ状態監視装置であって、
送信の開始を示す所定の開始信号が含まれた前記通知信号を前記送信機から間欠的に送信するタイヤ側制御部と、
前記受信機において前記通知信号を受信するための受信処理を一定の周期で間欠的に実行する車両側制御部とを備え、
前記タイヤ側制御部は、一の前記開始信号の送信を終了した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の前において最後に前記開始信号の送信を開始した時刻との間隔が、前記受信処理の一回の実行時間よりも短く、かつ、前記開始信号の送信時間より第2シフト時間だけ長くなるように前記通知信号の送信間隔を制御する
ことを特徴とするタイヤ状態監視装置。
【請求項5】
前記タイヤ側制御部は、前記受信処理の周期に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔で前記通知信号の間欠的な送信を行い、前記N分の1の送信間隔で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を前記N分の1の送信間隔より前記第2シフト時間だけ短くする
ことを特徴とする請求項4に記載のタイヤ状態監視装置。
【請求項6】
前記タイヤ側制御部は、前記第2シフト時間を、前記N分の1の送信間隔に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定する
ことを特徴とする請求項5に記載のタイヤ状態監視装置。
【請求項7】
前記車両側制御部は、車両の駆動系が動作状態にあることを示す信号を入力した場合、前記受信処理を継続的に実行し、前記駆動系が停止状態にあることを示す信号を入力した場合、前記受信処理を間欠的に実行する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のタイヤ状態監視装置。
【請求項8】
前記タイヤの空気圧を検出するセンサを備え、
前記タイヤ側制御部は、前記センサの検出結果に基づいて前記空気圧が正常と判定した場合、前記送信機からの前記通知信号の送信を抑止する
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のタイヤ状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの状態を監視するための情報をタイヤに設置された送信機から車両本体に設置された受信機へ送信するタイヤ状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの空気圧をセンサにより検出して車両側の装置に送信し、空気圧の異常の有無を監視するTPMS(tire pressure monitoring system)が従来より知られている。
【0003】
一般にタイヤ側の装置では、バッテリの消費を低減するため、車両の停車時に無線信号の送信間隔が長くなるように送信機が制御される。また車両側の装置においても、エンジンの停止時には節電のため受信機が間欠的に動作するように制御される。従って、送信機と受信機の双方が間欠的に動作する場合があり、送信と受信のタイミングを合わせる必要が生じる。
【0004】
下記の特許文献1に記載されるタイヤ空気圧監視装置では、受信機の間欠起動時間に比べて送信機のデータ送信時間を長くすることにより、送信機からデータ送信が行われた場合、受信機において確実にデータを受信できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、法規によって電波の強度等が規制されていると、送信機における1回の送信時間をあまり長くできない場合がある。また、送信時間を長くすると送信機の電力が増大するため、電力が定格をオーバーしないように送信出力を低下せざるを得ず、その結果、車両側の受信機において十分な受信感度が得られない場合もある。このような場合、特許文献1に記載されるように送信時間を長くする方法は採用できない。
【0007】
送信時間を長くする代わりに、受信機における受信動作の間隔を短くすることも考えられる。しかしながら、例えば受信機を他のシステム(例えばキーレスエントリーシステム)と併用している場合は、受信機の受信動作の間隔を自由に変更できないため、特許文献1の方法は採用できない。
【0008】
送信機の送信タイミングと受信機の受信タイミングとを合わせるため、双方に精度の高いリアルタイムクロックを設ける方法も考えられるが、この方法では回路構成が複雑化してコストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤに設置された送信機と車両本体に設置された受信機とがそれぞれ間欠的に動作する場合において、送信機の送信時間が受信機の受信間隔より短くても、簡易な回路構成で、送信機からの信号を受信機が確実に受信できるタイヤ状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タイヤに設置された送信機から車両本体に設置された受信機へ前記タイヤの状態を通知するための通知信号を送信するタイヤ状態監視装置に関する。
本発明の第1の観点に係るタイヤ状態監視装置は、送信の開始を示す所定の開始信号が含まれた前記通知信号を前記送信機から間欠的に送信するタイヤ側制御部と、前記受信機において前記通知信号を受信するための受信処理を一定の周期で間欠的に実行する車両側制御部とを備える。前記タイヤ側制御部は、一の前記開始信号の送信を開始した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の後において最初に前記開始信号の送信を終了した時刻との間隔が、前記受信処理の一回の実行時間よりも短く、かつ、前記開始信号の送信時間より第1シフト時間だけ長くなるように前記通知信号の送信間隔を制御する。
【0011】
上記の構成によれば、一の前記開始信号の送信を開始した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の後において最初に前記開始信号の送信を終了した時刻との間隔(以下、この段落において「間隔Tx1」と記す。)が、前記開始信号の送信時間より前記第1シフト時間だけ長い。そのため、一の前記開始信号の送信を開始した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻に対して、当該基準時刻の後において最初に前記開始信号の送信を開始した時刻が、前記第1シフト時間だけ相対的に遅れる方向へずれる。すなわち、前記開始信号の送信期間は、前記受信処理の一周期に相当する時間が経過する度に、前記受信処理の実行期間に対して相対的に前記第1シフト時間ずつ遅れる方向へシフトする。これにより、前記受信処理が繰り返される過程において、前記開始信号の送信期間は、前記受信処理の実行期間を通過する。その通過の際、前記間隔Tx1が前記受信処理の一回の実行時間より短いため、前記開始信号の送信期間の全体が前記受信処理の実行期間に含まれる。従って、このとき、前記開始信号の全体が前記受信機において正常に受信される。
【0012】
好適に、前記タイヤ側制御部は、前記受信処理の周期に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔で前記通知信号の間欠的な送信を行ってよい。また、前記タイヤ側制御部は、前記N分の1の送信間隔で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を前記N分の1の送信間隔より前記第1シフト時間だけ長くしてよい。
上記の構成によれば、前記通知信号の送信がN回繰り返される度に、前記通知信号の送信時間が前記受信処理の実行時間に対して相対的に前記第1シフト時間ずつ遅れる方向へシフトする。
【0013】
好適に、前記タイヤ側制御部は、前記第1シフト時間を、前記N分の1の送信間隔に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定してよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係るタイヤ状態監視装置は、送信の開始を示す所定の開始信号が含まれた前記通知信号を前記送信機から間欠的に送信するタイヤ側制御部と、前記受信機において前記通知信号を受信するための受信処理を一定の周期で間欠的に実行する車両側制御部とを備える。前記タイヤ側制御部は、一の前記開始信号の送信を終了した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の前において最後に前記開始信号の送信を開始した時刻との間隔が、前記受信処理の一回の実行時間よりも短く、かつ、前記開始信号の送信時間より第2シフト時間だけ長くなるように前記通知信号の送信間隔を制御する。
【0015】
上記の構成によれば、一の前記開始信号の送信を終了した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻と、当該基準時刻の前において最後に前記開始信号の送信を開始した時刻との間隔(以下、この段落において「間隔Tx2」と記す。)が、前記開始信号の送信時間より前記第2シフト時間だけ長い。そのため、一の前記開始信号の送信を終了した時刻から前記受信処理の一周期と同じ時間だけ経過した基準時刻に対して、当該基準時刻の前において最後に前記開始信号の送信を終了した時刻が、前記第2シフト時間だけ相対的に早くなる方向へずれる。すなわち、前記開始信号の送信期間は、前記受信処理の一周期に相当する時間が経過する度に、前記受信処理の実行期間に対して相対的に前記第2シフト時間ずつ早くなる方向へシフトする。これにより、前記受信処理が繰り返される過程において、前記開始信号の送信期間は、前記受信処理の実行期間を通過する。その通過の際、前記間隔Tx2が前記受信処理の一回の実行時間より短いため、前記開始信号の送信期間の全体が前記受信処理の実行期間に含まれる。従って、このとき、前記開始信号の全体が前記受信機において正常に受信される。
【0016】
好適に、前記タイヤ側制御部は、前記受信処理の周期に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔で前記通知信号の間欠的な送信を行ってよい。また、前記タイヤ側制御部は、前記N分の1の送信間隔で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を前記N分の1の送信間隔より前記第2シフト時間だけ短くしてよい。
上記の構成によれば、前記通知信号の送信がN回繰り返される度に、前記通知信号の送信時間が前記受信処理の実行時間に対して相対的に前記第2シフト時間ずつ早くなる方向へシフトする。
【0017】
好適に、前記タイヤ側制御部は、前記第2シフト時間を、前記N分の1の送信間隔に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定してよい。
【0018】
なお、上記第1の観点並びに上記第2の観点において、前記車両側制御部は、車両の駆動系が動作状態にあることを示す信号を入力した場合、前記受信処理を継続的に実行してよく、前記駆動系が停止状態にあることを示す信号を入力した場合、前記受信処理を間欠的に実行してよい。
これにより、車両の駆動系が動作状態にある場合、前記送信機において前記通知信号が送信されると、前記受信機において前記通知信号が直ちに受信される。また、前記駆動系が停止状態にある場合は、前記受信機において前記受信処理が間欠的に実行されるため、前記受信処理に伴う消費電力が低減する。
【0019】
また、本発明に係るタイヤ状態監視装置は、前記タイヤの空気圧を検出するセンサを備えてよい。前記タイヤ側制御部は、前記センサの検出結果に基づいて前記空気圧が正常と判定した場合、前記送信機からの前記通知信号の送信を抑止してよい。
これにより、前記タイヤの空気圧が正常な場合は、前記送信機の送信による電力の消費が抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイヤに設置された送信機と車両本体に設置された受信機とがそれぞれ間欠的に動作する場合において、送信機の送信時間が受信機の受信間隔より短くても、リアルタイムクロック等を用いない簡易な回路構成で、送信機からの信号を受信機が確実に受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の構成の一例を示す図である。
図2】タイヤ側装置の構成の一例を示す図である。
図3】タイヤ側装置から車両側装置へ送信される通知信号の構成の一例を示す図である。
図4】車両側装置の構成の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の動作の一例を説明するための図である。
図6】第2の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の構成の一例を示す図である。図1に示すタイヤ状態監視装置は、車両1のタイヤ5A〜5Dにおける空気圧等の状態監視する装置であり、タイヤ5A〜5Dに設けられたタイヤ側装置2A〜2Dと、車両1の本体に設けられた車両側装置3とを有する。以下の説明では、タイヤ5A〜5Dの任意の1つを代表して「タイヤ5」と記し、タイヤ側装置2A〜2Dの任意の1つを代表して「タイヤ側装置2」と記す。
【0023】
図1に示すタイヤ状態監視装置は、概ね次のように動作する。まず、各タイヤ側装置2が、タイヤ5の空気圧等の状態をセンサにより検出し、検出した状態を通知するための通知信号を車両側装置3へ間欠的に送信する。車両側装置3は、各タイヤ側装置2からの通知信号を受信することで、各タイヤ5の状態を監視する。タイヤ側装置2からタイヤ5の異常を示す通知信号を受信した場合、車両側装置3は、車両1に搭載される不図示の上位装置(電子コントロールユニット等)に異常の検知を通知する。また車両側装置3は、車両1の駆動系が停止している場合(例えばイグニッションスイッチがオフの場合)、通知信号の受信処理を一定の周期で間欠的に実行する。
【0024】
図2は、タイヤ側装置2の構成の一例を示す図である。図2に示すタイヤ側装置2は、例えばタイヤバルブなどと共にタイヤ5のホイール部に固定される装置であり、送信機21と、タイヤ5内部の空気圧を検出する空気圧センサ22と、タイヤ5に生じる加速度を検出する加速度センサ23と、タイヤ側制御部24と、記憶部25を有する。タイヤ側装置2は、図示しないバッテリによって電源を供給されて動作する。
【0025】
送信機21は、車両側装置3に無線信号を送信する回路であり、図2の例では送信回路210とアンテナ211を有する。送信回路210は、タイヤ側制御部24において生成された送信用のデータに符号化や変調、増幅などの所定の信号処理を施して送信信号を生成し、これをアンテナ211から無線信号として送信する。
【0026】
タイヤ側制御部24は、タイヤ側装置2の処理を統括的に司る回路であり、例えば、記憶部25に格納されるプログラムに基づいて命令を実行するコンピュータ(マイクロプロセッサ等)や、専用のロジック回路(ASIC等)を含んで構成される。
【0027】
タイヤ側制御部24は、空気圧センサ22によって検出されたタイヤ内部の空気圧を示す検出信号に基づいて、空気圧が正常範囲に含まれるか否かを判定する。空気圧が正常範囲から逸脱していると判定した場合、タイヤ側制御部24は、タイヤ5の空気圧の異常を車両側装置3に通知するための通知信号を送信機21から間欠的に送信する。空気圧が正常範囲に含まれる場合、タイヤ側制御部24は、送信機21からの通知信号の送信を抑止する。
【0028】
図3は、タイヤ側装置2から車両側装置3へ送信される通知信号の構成の一例を示す図である。図3の例において、通知信号は、「プリアンブル」と「コマンド」と「チェックサム」からなる。
「プリアンブル」は、タイヤ側装置2から通知信号の送信が開始されたことを示す信号であり、本発明における開始信号に対応する。車両側装置3は、受信した信号の先頭部分にこのプリアンブル(開始信号)が含まれる場合、受信した信号がタイヤ側装置2からの通知信号であると判定し、プリアンブル(開始信号)を含んだ通知信号の残りの信号を更に受信する処理を行う。
「コマンド」は、通知信号の本体であり、タイヤ5の状態(図3の例では空気圧の状態)に関する情報を含む。
「チェックサム」は、車両側装置3において通知信号の受信エラーをチェックするための情報であり、通知信号に含まれるデータを数値群とみなして加算等の演算を施すことにより得られる。
【0029】
タイヤ側制御部24は、送信機21から間欠的に送信する通知信号の送信間隔Tt1を次のように制御する。すなわち、タイヤ側制御部24は、車両側装置3における間欠的な受信処理の一周期Tr1に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行時間Tw1に対して通知信号のプリアンブルの送信時間Tp1が相対的にシフトするように、通知信号の送信間隔Tt1を制御する。また、タイヤ側制御部24は、この相対的なシフトの過程においてプリアンブルの送信時間Tp1が受信処理の実行時間Tw1の範囲を通過する際、プリアンブルの送信時間Tp1の全体が受信処理の実行時間Tw1の範囲内に含まれるように、通知信号の送信間隔Tt1を制御する。
【0030】
例えば、タイヤ側制御部24は、通知信号のプリアンブルの送信を開始した時刻から車両側装置3の受信処理の一周期Tr1と同じ時間だけ経過した基準時刻と、この基準時刻の後において最初に通知信号のプリアンブルの送信を終了した時刻との間隔Tx1が、車両側装置3における受信処理の一回の実行時間Tw1よりも短くなり、かつ、プリアンブルの送信時間Tp1より第1シフト時間ΔT1だけ長くなるように、通知信号の送信間隔Tt1を制御する。
【0031】
より具体的には、タイヤ側制御部24は、車両側装置3の受信処理の周期Tr1に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔Tt1(=Tr1/N)で通知信号の間欠的な送信を行い、この送信間隔Tt1で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を送信間隔Tt1(=Tr1/N)より第1シフト時間ΔT1だけ長くする。
タイヤ側制御部24は、第1シフト時間ΔT1を、受信処理の実行時間Tw1とプリアンブルの送信時間Tp1との差より短い時間に設定する。例えば、タイヤ側制御部24は、送信間隔Tt1(=Tr1/N)に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定する。
タイヤ側制御部24による上述した送信間隔Tt1の制御については、後で図5を参照して詳しく説明する。
【0032】
タイヤ側制御部24は、上述した送信間隔Tt1の制御に加えて、加速度センサ23の検出結果に応じた送信間隔Tt1の制御も行う。すなわち、タイヤ側制御部24は、加速度センサ23の検出結果に基づいて車両1が停止状態にあるか否かの判定を行い、車両1が停止状態にあると判定した場合は通知信号の送信間隔Tt1を長くし、車両1が非停止状態(運転状態)にあると判定した場合は通知信号の送信間隔Tt1を短くする。例えば、タイヤ側制御部24は、加速度センサ23において検出される加速度の変化量が所定のしきい値より小さい場合、車両1が停止状態にあると判定し、通知信号の送信間隔Tt1を長くする。
【0033】
記憶部25は、例えばタイヤ側制御部24におけるコンピュータのプログラムや、処理用に予め準備されたデータ、処理過程で一時的に保存されるデータを記憶する装置であり、ROMやRAM、不揮発性メモリ等を含んで構成される。
【0034】
図4は、車両側装置3の構成の一例を示す図である。図4に示す車両側装置3は、車両1の本体に設置される装置であり、受信機31と、インターフェース部32と、車両側制御部33と、記憶部34を有する。
【0035】
受信機31は、各タイヤ5のタイヤ側装置2から送信される無線信号を受信する回路であり、図4の例では受信回路310とアンテナ311を有する。受信回路310は、アンテナ311において受信されたタイヤ側装置2からの無線信号に増幅、復調、復号化などの所定の信号処理を施して受信データを生成し、車両側制御部33に出力する。
【0036】
インターフェース部32は、車両1に設置された上位装置(電子コントロールユニット等)とバス4を介して接続されており、例えばCAN(controller area network)などの通信プロトコルに従って上位装置との通信に関わる処理を行う。
【0037】
車両側制御部33は、車両側装置3の処理を統括的に司る回路であり、例えば記憶部34に格納されるプログラムに基づいて命令を実行するコンピュータ(マイクロプロセッサ等)や、専用のロジック回路(ASIC等)を含んで構成される。
【0038】
車両側制御部33は、車両1の駆動系が停止しているか否かを示す信号を、例えばインターフェース部32によって上位装置から入力する。車両側制御部33は、車両1の駆動系が動作状態にあることを示す信号を入力した場合、受信機31における通知信号の受信処理を継続的に実行し、車両1の駆動系が停止していることを示す信号を入力した場合は、通知信号の受信処理を一定の周期Tr1で間欠的に実行する。
【0039】
車両側制御部33は、受信機31において受信された信号の先頭部分が所定のパターンと一致する場合、受信された信号が通知信号のプリアンブルであると判定し、プリアンブルに続く通知信号の残りの信号も受信する。車両側制御部33は、通知信号の受信処理を間欠的に実行しているときに通知信号のプリアンブルを受信した場合には、通知信号の残りの信号を全て受信するまで受信処理を継続する。
【0040】
車両側制御部33は、受信機31においてタイヤ側装置2からの通知信号を受信した場合、通知信号に応じた動作(例えば車両1の計器盤における警告表示など)を促すための信号をインターフェース部32から上位装置へ出力する。
【0041】
記憶部34は、例えば車両側制御部33におけるコンピュータのプログラムや、処理用に予め準備されたデータ、処理過程で一時的に保存されるデータを記憶する装置であり、ROMやRAM、不揮発性メモリ、ハードディスク等を含んで構成される。記憶部34に記憶されるプログラムやデータは、インターフェース部32や別の通信インターフェースを介して不図示のサーバ装置からダウンロードしてもよいし、光ディスクやUSBメモリ等の非一時的記録媒体から読み出してもよい。
【0042】
ここで、上述した構成を有する第1の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の動作について、図5のタイミングチャートを参照して説明する。
【0043】
図5のタイミングチャートにおける「CY(i)」「CY(i+1)」「CY(i+2)」(i=1,2,3,…)は、車両側装置3の受信機31において一定の周期Tr1で実行される受信処理の連続した3つのサイクルを示す。括弧の中の数値(i,i+1,i+2)は、受信処理のサイクルの順番を表す。このタイミングチャートでは、連続する3サイクルの受信処理の実行タイミングと、タイヤ側装置2の送信機21から通知信号(S1,S2,S3,…)が送信されるタイミングとの関係が、横方向を時間軸の方向として表されている。また図5では、紙幅の都合上、連続した3サイクル分のタイミングチャートの直ぐ下に、1サイクルだけ時間が進行した3サイクル分のタイミングチャートが図示されている。従って、この図では受信処理のサイクルCY(1)からサイクルCY(12)までのタイミングチャートが表されている。
【0044】
図5のタイミングチャートにおいて、通知信号S1,S2,S3,…を表す図形における斜線部分はプリアンブルを示す。
【0045】
図5における第1行目のタイミングチャート(i=1)に着目すると、時刻t1は、通知信号S1のプリアンブルの送信を開始した時刻であり、時刻t2は、時刻t1から受信処理の周期Tr1と同じ時間だけ経過した基準時刻である(t2−t1=Tr1)。また時刻t3は、基準時刻t2の後において最初に通知信号のプリアンブルの送信を開始した時刻であり、時刻t4は、この通知信号のプリアンブルの送信を終了した時刻である。タイヤ側装置2のタイヤ側制御部24は、時刻t4と基準時刻t2との間隔Tx1が受信処理の実行時間Tw1よりも短くなり、かつ、プリアンブルの送信時間Tp1より第1シフト時間ΔT1だけ長くなるように(Tx1=Tp1+ΔT1)、通知信号の送信間隔Tt1を制御する。
【0046】
仮に第1シフト時間ΔT1をゼロとすると、時刻t4と基準時刻t2との間隔Tx1はプリアンブルの送信時間Tp1と等しくなり、基準時刻t2は通知信号S4のプリアンブルの送信開始時刻t3と一致する。すなわち、通知信号S1のプリアンブルの送信が開始された時刻t1から周期Tr1と同じ時間だけ経過した基準時刻t2(=t3)において、通知信号S4のプリアンブルの送信が開始される。このことは、車両側装置3の受信処理が実行される期間と、通知信号のプリアンブルが送信される期間との相対的なタイミングが変化しないことを意味する。タイヤ側装置2の送信機21と車両側装置3の受信機31は独立に動作するため、両者の相対的なタイミングは不定であり、初期状態において全くずれている可能性がある。もし、両者の相対的なタイミングが初期状態においてずれていると、そのずれた状態が継続されてしまい、車両側装置3は通知信号を受信できなくなる。
【0047】
これに対し、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置では、第1シフト時間ΔT1がゼロでない所定の時間に設定される。すなわち、プリアンブルの送信を開始した時刻t1から受信処理の周期Tr1と同じ時間だけ経過した基準時刻t2に対して、この基準時刻t2の後において最初にプリアンブルの送信を開始した時刻t3が、第1シフト時間ΔT1だけ相対的に遅れる方向へずれる。すなわち、プリアンブルの送信期間は、受信処理の周期Tr1に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行期間に対して相対的に第1シフト時間ΔT1ずつ遅れる方向へシフトする。これにより、図5からも明らかなように、受信処理が繰り返される過程において、プリアンブルの送信期間は必ず受信処理の実行期間を通過する。
【0048】
プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間を通過する際、間隔Tx1(=Tp1+ΔT1)が受信処理の実行時間Tw1より短いため、プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれる。
【0049】
すなわち、プリアンブルの送信期間の長さ(Tp1)と、1周期Tr1におけるプリアンブルの送信期間のシフト量(ΔT1)とを合わせた時間(Tp1+ΔT1)が受信処理の実行時間Tw1より短いため、仮にサイクルCY(i+1)においてプリアンブルの送信期間の一部が受信処理の実行期間に含まれるとすると、サイクルCY(i)又はサイクルCY(i+2)において、プリアンブルの送信期間の全てが受信処理の実行期間に含まれる。また、プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間と全く重ならない場合に、1サイクル分のシフト(ΔT1)のみで、プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間と重なることなく通過することはなく、プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれる状態が必ず発生する。
【0050】
プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれると、プリアンブルの全てが車両側装置3の受信機31に受信されることになり、このプリアンブルを含む通知信号の全体が受信機31に受信される。従って、通知信号が受信機31において正常に受信される。
【0051】
なお、図5の例において、タイヤ側制御部24は、車両側装置3の受信処理の周期Tr1に対して3分の1の送信間隔Tt1(=Tr1/3)で通知信号の間欠的な送信を行っている。またタイヤ側制御部24は、この送信間隔Tt1で2回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を送信間隔Tt1より第1シフト時間ΔT1だけ長くする(Tt1+ΔT1)。例えば、通知信号S1とS2との送信間隔、及び、通知信号S2とS3との送信間隔は「Tt1」であり、通知信号S3とS4との送信間隔は「Tt1+ΔT1」となっている。
【0052】
また、図5の例において、タイヤ側制御部24は、第1シフト時間ΔT1を、送信間隔Tt1(=Tr1/3)に対して3分の1に設定している。プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれる状態は、8回又は11回の通知信号の送信に対して1回発生している(S1,S12,S20,S28)。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態に係るタイヤ状態監視装置によれば、車両側装置3における間欠的な受信処理の一周期Tr1に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行時間Tw1に対して通知信号のプリアンブルの送信時間Tp1が相対的にシフトするように、通知信号の送信間隔Tt1が制御される。また、この相対的なシフトの過程においてプリアンブルの送信時間Tp1が受信処理の実行時間Tw1の範囲を通過する際、プリアンブルの送信時間Tp1の全体が受信処理の実行時間Tw1の範囲内に含まれるように、通知信号の送信間隔Tt1が制御される。
従って、タイヤ側装置2の送信機21と車両側装置3の受信機31とがそれぞれ間欠的に動作する場合において、送信機21の送信時間が受信機31の受信処理の実行間隔より短くても、リアルタイムクロック等を用いない簡易な回路構成で、送信機21からの通知信号を受信機31が確実に受信できる。
【0054】
また、送信機21の送信時間を受信機31の受信処理の実行間隔より短くすることから、法規によって電波の強度等が規制されている場合、その規制を順守しつつ通知信号の受信を確実に行うことができる。
【0055】
更に、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置によれば、車両1の駆動系が動作状態にある場合、車両側装置3の受信機31において受信処理が継続的に実行されるため、タイヤ側装置2の送信機21において通知信号が送信されると、受信機31において通知信号を直ちに受信して、通知信号に応じた所定の動作(計器盤における警告表示等)を迅速に行うことができる。また、車両1の駆動系が停止状態にある場合は、受信機31において受信処理が間欠的に実行されるため、受信機31の受信処理に伴う消費電力を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置によれば、タイヤ側装置2において空気圧センサ22の検出結果に基づいて空気圧が正常と判定された場合、送信機21からの通知信号の送信が抑止されるため、タイヤの空気圧が正常な場合は、送信機21の送信による電力の消費を抑制することができる。
【0057】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態に係るタイヤ状態監視装置では、車両側装置3の受信処理が周期的に繰り返される過程において、プリアンブルの送信期間が第1シフト時間ΔT1ずつ遅れる方向にシフトしているが、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置では、プリアンブルの送信期間が早くなる方向にシフトする。
【0058】
第2の実施形態に係るタイヤ状態監視装置は、タイヤ側装置2のタイヤ側制御部24における通知信号の送信間隔の制御方法に関して図1に示すタイヤ状態監視装置と異なっており、他の構成は図1に示すタイヤ状態監視装置と同じである。従って、以下では相違点に絞って説明する。
【0059】
本実施形態に係るタイヤ状態監視装置において、タイヤ側制御部24は、送信機21から間欠的に送信する通知信号の送信間隔Tt2を次のように制御する。すなわち、タイヤ側制御部24は、車両側装置3における間欠的な受信処理の一周期Tr2に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行時間Tw2に対して通知信号のプリアンブルの送信時間Tp2が相対的に早くなる方向へシフトするように、通知信号の送信間隔Tt2を制御する。また、タイヤ側制御部24は、この相対的なシフトの過程においてプリアンブルの送信時間Tp2が受信処理の実行時間Tw2の範囲を通過する際、プリアンブルの送信時間Tp2の全体が受信処理の実行時間Tw2の範囲内に含まれるように、通知信号の送信間隔Tt1を制御する。
【0060】
例えば、タイヤ側制御部24は、通知信号のプリアンブルの送信を終了した時刻から車両側装置3の受信処理の一周期Tr2と同じ時間だけ経過した時刻と、この時刻の前において最後に通知信号のプリアンブルの送信を開始した時刻との間隔Tx2が、車両側装置3における受信処理の一回の実行時間Tw2よりも短くなり、かつ、プリアンブルの送信時間Tp2より第2シフト時間ΔT2だけ長くなるように、通知信号の送信間隔Tt2を制御する。
【0061】
より具体的には、タイヤ側制御部24は、車両側装置3の受信処理の周期Tr2に対してN分の1(Nは1より大きい整数を示す。)の送信間隔Tt2(=Tr2/N)で通知信号の間欠的な送信を行い、この送信間隔Tt2で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を送信間隔Tt2(=Tr2/N)より第2シフト時間ΔT2だけ短くする。
タイヤ側制御部24は、第2シフト時間ΔT2を、受信処理の実行時間Tw2とプリアンブルの送信時間Tp2との差より短い時間に設定する。例えば、タイヤ側制御部24は、送信間隔Tt2(=Tr2/N)に対してM分の1(Mは1より大きい整数を示す。)に設定する。
【0062】
図6は、第2の実施形態に係るタイヤ状態監視装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6における第1行目のタイミングチャート(i=1)に着目すると、時刻t5は、通知信号S1のプリアンブルの送信を終了した時刻であり、時刻t8は、時刻t5から受信処理の周期Tr2と同じ時間だけ経過した基準時刻である(t8−t5=Tr2)。また時刻t6は、基準時刻t8の前において最後に通知信号のプリアンブルの送信を開始した時刻であり、時刻t7は、この通知信号のプリアンブルの送信を終了した時刻である。タイヤ側装置2のタイヤ側制御部24は、時刻t6と基準時刻t8との間隔Tx2が受信処理の実行時間Tw2よりも短くなり、かつ、プリアンブルの送信時間Tp2より第2シフト時間ΔT2だけ長くなるように(Tx2=Tp2+ΔT2)、通知信号の送信間隔Tt2を制御する。
【0063】
仮に第2シフト時間ΔT2をゼロとすると、時刻t6と基準時刻t8との間隔Tx2はプリアンブルの送信時間Tp2と等しくなり、基準時刻t8は通知信号S3のプリアンブルの送信終了時刻t7と一致する。すなわち、通知信号S1のプリアンブルの送信が終了した時刻t5から周期Tr2と同じ時間だけ経過した基準時刻t8(=t7)において、通知信号S3のプリアンブルの送信が終了する。このことは、車両側装置3の受信処理が実行される期間と、通知信号のプリアンブルが送信される期間との相対的なタイミングが変化しないことを意味する。もし、両者の相対的なタイミングが初期状態においてずれていると、そのずれが状態が継続されてしまい、車両側装置3は通知信号を受信できなくなる。
【0064】
これに対し、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置では、第2シフト時間ΔT2がゼロでない所定の時間に設定される。すなわち、プリアンブルの送信を終了した時刻t5から受信処理の周期Tr2と同じ時間だけ経過した基準時刻t8に対して、この基準時刻t8の前において最後にプリアンブルの送信を終了した時刻t7が、第2シフト時間ΔT2だけ相対的に早くなる方向へずれる。すなわち、プリアンブルの送信期間は、受信処理の周期Tr2に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行期間に対して相対的に第2シフト時間ΔT2ずつ早くなる方向へシフトする。これにより、図6からも明らかなように、受信処理が繰り返される過程において、プリアンブルの送信期間は必ず受信処理の実行期間を通過する。
【0065】
プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間を通過する際、間隔Tx2(=Tp2+ΔT2)が受信処理の実行時間Tw2より短いため、プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれる。
【0066】
すなわち、プリアンブルの送信期間の長さ(Tp2)と、1周期Tr2におけるプリアンブルの送信期間のシフト量(ΔT2)とを合わせた時間(Tp2+ΔT2)が受信処理の実行時間Tw2より短いため、仮にサイクルCY(i+1)においてプリアンブルの送信期間の一部が受信処理の実行期間に含まれるとすると、サイクルCY(i)又はサイクルCY(i+2)において、プリアンブルの送信期間の全てが受信処理の実行期間に含まれる。また、プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間と全く重ならない場合に、1サイクル分のシフト(ΔT2)のみで、プリアンブルの送信期間が受信処理の実行期間と重なることなく通過することはなく、プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれる状態が必ず発生する。
【0067】
プリアンブルの送信期間の全体が受信処理の実行期間に含まれると、プリアンブルの全てが車両側装置3の受信機31に受信されることになり、このプリアンブルを含む通知信号の全体が受信機31に受信される。従って、通知信号が受信機31において正常に受信される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ状態監視装置によれば、車両側装置3における間欠的な受信処理の一周期Tr2に相当する時間が経過する度に、受信処理の実行時間Tw2に対して通知信号のプリアンブルの送信時間Tp2が相対的に早くなる方向へシフトするように、通知信号の送信間隔Tt2が制御される。また、この相対的なシフトの過程においてプリアンブルの送信時間Tp2が受信処理の実行時間Tw2の範囲を通過する際、プリアンブルの送信時間Tp2の全体が受信処理の実行時間Tw2の範囲内に含まれるように、通知信号の送信間隔Tt2が制御される。
従って、第1の実施形態と同様に、送信機21の送信時間を受信機31の受信処理の実行間隔より短くしつつ、リアルタイムクロック等を用いない簡易な回路構成で、送信機21からの通知信号を受信機31が確実に受信できる。
【0069】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の形態のみに限定されるものではなく、他の種々のバリエーションを含んでいる。
【0070】
上述した実施形態では、受信処理の周期に対してN分の1の送信間隔で通知信号の間欠的な送信を行うとともに、当該N分の1の送信間隔で(N−1)回の送信を繰り返した後の1回の送信については、前回の送信からの送信間隔を当該N分の1の送信間隔より所定のシフト時間だけずらす(長くする、又は、短くする)例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、このシフト時間の発生をN回の送信間隔に均等に分配してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態における車両側装置3は、携帯機からの信号に応じて解錠等の車両制御を行うキーレスエントリーシステムを兼用していてもよいし、キーレスエントリーシステムと独立に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…車両、2,2A〜2D…タイヤ側装置、3…車両側装置、4…バス、5,5A〜5D…タイヤ、21…送信機、22…空気圧センサ、23…加速度センサ、24…タイヤ側制御部、25…記憶部、31…受信機、32…インターフェース部、33…車両側制御部、34…記憶部、S1〜S32…通知信号、Tr1,Tr2…受信処理の周期、Tw1,Tw2…受信処理の実行時間、ΔT1…第1シフト時間、ΔT2…第2シフト時間、Tt1,Tt2…通知信号の送信間隔。

図1
図2
図3
図4
図5
図6