特許第6386968号(P6386968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386968
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】建物の断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   E04B1/76 500Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-98860(P2015-98860)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-216897(P2016-216897A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】金子 翔太
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241341(JP,A)
【文献】 特開2014−020003(JP,A)
【文献】 特開平03−183840(JP,A)
【文献】 米国特許第04653241(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76 − 1/80
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外周部に沿って設けられた外周基礎と、
その外周基礎の上に当該外周基礎に沿って設けられた床梁と、
その床梁の上に当該床梁に沿って設けられた根太と、
その根太の上に設けられた床面材とを備える建物に適用され、
前記外周基礎の内側面に設けられた基礎断熱部と、
前記床面材の下面側に設けられた床下断熱部と、
前記床面材の下方となる床下空間側から前記床梁を覆うように設けられた床梁断熱部とを備え、
前記床梁断熱部は、前記基礎断熱部と前記床下断熱部とにそれぞれ連続させて設けられていることを特徴とする建物の断熱構造。
【請求項2】
前記床梁は、前記床下空間側に開口した溝部を有する溝形鋼よりなり、
前記床梁断熱部は、前記溝部に配設された梁内断熱部と、前記溝部の外に配設された梁外断熱部とを有し、
前記梁外断熱部が前記基礎断熱部と前記床下断熱部とに連続させて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の断熱構造。
【請求項3】
前記梁内断熱部と前記梁外断熱部とは別体からなることを特徴とする請求項2に記載の建物の断熱構造。
【請求項4】
前記梁外断熱部は、前記外周基礎の厚み方向における長さが前記梁内断熱部よりも大きくされているとともに、前記厚み方向に分割された複数の梁外断熱材により構成されており、
前記各梁外断熱材と、前記梁内断熱部を構成する梁内断熱材とはいずれも同じ構成の断熱材からなることを特徴とする請求項3に記載の建物の断熱構造。
【請求項5】
前記梁外断熱部は、前記外周基礎の厚み方向において前記床下空間側の端部が前記基礎断熱部の前記床下空間側の面と同じ位置か又はそれよりも前記床下空間側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の建物の断熱構造。
【請求項6】
前記床梁と前記床面材との間において前記根太よりも前記床下空間側の隙間には前記床下断熱部の端部が入り込んでおり、その端部は前記根太に接触した状態で配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅においては、住宅の快適性やエネルギー効率を向上するために、高断熱性が求められるようになってきている。そして、高断熱性を実現するために、床に断熱材を施工する床断熱工法に代え、基礎に発泡性樹脂等からなる断熱材を施工する基礎断熱工法の採用が活発化している。
【0003】
例えば特許文献1には、かかる基礎断熱工法を複数の建物ユニットからなるユニット式建物に適用した構成が開示されている。特許文献1に記載のものでは、基礎の内側面に基礎断熱材が設けられることで基礎断熱が図られている。また、特許文献1に記載のものは、基礎の上に建物ユニットの床梁が当該床梁に沿って配設されている。この床梁は、断面コ字状の溝形鋼よりなり、その溝部を床下空間側に向けて配置されている。
【0004】
ここで、こうした構成においては、床梁が熱橋(ヒートブリッジ)とならないように考慮する必要がある。そこで、特許文献1では、床梁の溝部にグラスウールからなる梁内断熱材を配設して、床梁が熱橋となるのを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−172437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、床梁の溝部に梁内断熱材を配設した上述の構成では、床梁の上下のフランジ部分については梁内断熱材で覆うことができないため、このフランジ部分が依然として熱橋となるおそれがある。そのため、断熱性能の低下が懸念される。
【0007】
また、寒冷地においては、基礎断熱工法によっても十分に断熱が図れない場合が想定され、さらなる断熱性能の向上が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、断熱性能のさらなる向上を図ることができる建物の断熱構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の断熱構造は、基礎と、その基礎の上に当該基礎に沿って設けられた床梁と、その床梁の上に当該床梁に沿って設けられた根太と、その根太の上に設けられた床面材とを備える建物に適用され、前記基礎の内側面に設けられた基礎断熱部と、前記床面材の下面側に設けられた床下断熱部と、前記床面材の下方となる床下空間の側から前記床梁を覆うように設けられた床梁断熱部とを備え、前記床梁断熱部は、前記基礎断熱部と前記床下断熱部とにそれぞれ連続させて設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、基礎の内側面に基礎断熱材を設ける基礎断熱工法が採用されている。そして、かかる基礎断熱工法を採用しながらも、床面材の下面側には床下断熱部が設けられている。そのため、建物の断熱性能が大いに高められており、寒冷地においても十分な断熱を図ることが可能となる。
【0011】
また、このように基礎断熱部に加え床下断熱部を設けた構成にあって、床梁を床下空間側から覆う床梁断熱部を基礎断熱部及び床下断熱部とそれぞれ連続させて設けたため、床梁の床下空間側においてこれら3つの断熱部(基礎断熱部、床梁断熱部及び床下断熱部)が連続する断熱ライン(断熱層)を形成することができる。これにより、床梁の高さ方向全域を床下空間側から断熱ラインで覆うことができるため、床梁が熱橋となるのを確実に抑制することができる。よって、以上より、断熱性能のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
なお、「床梁断熱部が基礎断熱部と連続して設けられている」とは、床梁断熱部が基礎断熱部と接触した状態で設けられている場合だけでなく、床梁断熱部が基礎断熱部と他の断熱部(断熱材)を介して連続している場合をも含む意味である。また、「床梁断熱部が床下断熱部と連続して設けられている」についても、これと同様の意味である。
【0013】
第2の発明の建物の断熱構造は、第1の発明において、前記床梁は、前記床下空間側に開口した溝部を有する溝形鋼よりなり、前記床梁断熱部は、前記溝部に配設された梁内断熱部と、前記溝部の外に配設された梁外断熱部とを有し、前記梁外断熱部が前記基礎断熱部と前記床下断熱部とに連続させて設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、溝形鋼からなる床梁に対して床梁断熱部が設けられている。この場合、床梁断熱部の一部(梁外断熱部)が床梁の溝部の外に設けられ、基礎断熱部と床下断熱部とにそれぞれ連続されている。これにより、床梁を上下のフランジ部分を含めて上記断熱ラインで覆うことができるため、床梁が溝形鋼からなる構成にあって、床梁が熱橋となるのを確実に抑制することができる。また、床梁断熱部の残りの部分(梁内断熱部)については床梁の溝部に配設されているため、この梁内断熱部により床梁断熱部の厚みを大きくする(かせぐ)ことができる。よって、この場合、床梁が溝形鋼からなる構成にあって、断熱性能の向上を好適に図ることができる。
【0015】
第3の発明の建物の断熱構造は、第2の発明において、前記梁内断熱部と前記梁外断熱部とは別体からなることを特徴とする。
【0016】
ところで、床梁断熱部の一部(梁内断熱部)を床梁の溝部に配設するようにした上述の構成では、例えば製造工場において予め床梁の溝部に床梁断熱部を組み付けておき、それによって現場での作業を軽減させることが考えられる。しかしながら、この場合、床梁断熱材の一部(梁外断熱部)が床梁からはみ出した状態で床梁を搬送等する必要があるため、その搬送等の際に床梁から床梁断熱部が脱落してしまうことが懸念される。その一方で、床梁断熱部の床梁への組み付けを施工現場で行おうとすると、床梁断熱部の厚みが大きいため床梁断熱部の取り扱いが大変になるおそれがある。
【0017】
そこで本発明では、これらの点に鑑みて、床梁断熱部において梁内断熱部と梁外断熱部とを別体として構成している。この場合、梁内断熱部については製造工場にて床梁の溝部に組み付け、梁外断熱部については施工現場にて組み付けることが可能となる。そのため、床梁の搬送等の際に床梁から床梁断熱部(梁内断熱部)が脱落するのを抑制でき、その上現場での梁外断熱材の組み付けも比較的容易に行うことが可能となる。
【0018】
また、建物が複数の建物ユニットが組み合わされてなるユニット式建物である場合には、ユニット製造工場にて建物ユニットの床梁の溝部に梁内断熱部を組み付け、その後施工現場で梁外断熱部を組み付けることが可能となる。この場合、建物ユニットの施工現場への搬送時に床梁断熱部(梁内断熱材)が脱落するのを抑制することができる。また、施工現場での作業は床下空間に潜っての作業となるが、この場合、梁外断熱部だけを組み付ければよいため、かかる作業負担の軽減を図ることができる。
【0019】
第4の発明の建物の断熱構造は、第3の発明において、前記梁外断熱部は、前記基礎の厚み方向における長さが前記梁内断熱部よりも大きくされているとともに、前記厚み方向に分割された複数の梁外断熱材により構成されており、前記各梁外断熱材と、前記梁内断熱部を構成する梁内断熱材とはいずれも同じ構成の断熱材からなることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、梁外断熱部における基礎の厚み方向の長さ(つまり、梁外断熱部の厚み)が梁内断熱部の厚みよりも大きくされているため、断熱性能の向上を図ることができる。また、梁外断熱部は、厚み方向に分割された複数の梁外断熱材により構成されており、それら各梁外断熱材と梁内断熱材とはいずれも同じ構成とされている。この場合、断熱材に関し部材の共通化を図ることができるため、部材コストの低減を図りながら断熱性能の向上を図ることができる。
【0021】
第5の発明の建物の断熱構造は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記梁外断熱部は、前記基礎の厚み方向において前記床下空間側の端部が前記基礎断熱部の前記床下空間側の面と同じ位置か又はそれよりも前記床下空間側に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、基礎厚み方向において、梁外断熱部の床下空間側の端部が基礎断熱部の床下空間側の面と同位置か又はそれよりも床下空間側に位置している。この場合、梁外断熱部が基礎断熱部の上方において当該基礎断熱部の厚み方向全域に亘って配設されているため、梁外断熱部と基礎断熱部とが連続する連続部分において断熱厚みが小さくなってしまうのを回避できる。これにより、当該連続部分において断熱性能が低下してしまうのを抑制できる。
【0023】
第6の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記床梁と前記床面材との間において前記根太よりも前記床下空間側の隙間には前記床下断熱部の端部が入り込んでおり、その端部は前記根太に接触した状態で配置されていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、床梁と床面材との間の隙間に床下断熱部の端部が入り込んでおり、その端部が根太に対して接触している。この場合、床梁の上面において根太よりも床下空間側が床下断熱部の上記端部により上方から覆われるため、床梁から上方(居室側)へ向けた熱の伝わりを抑制することができる。これにより、断熱性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】建物における基礎周辺の構成を示す縦断面図。
図2】建物ユニットの構成を示す斜視図。
図3】断熱構造を構築する際の作業手順を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物として、複数の建物ユニットが互いに組み合わされることで構築されるユニット式建物について具体化している。そこでまず、そのユニット式建物を構成する建物ユニット20の構成について図2を用いながら簡単に説明する。図2は、建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
【0027】
図2に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0028】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。
【0029】
次に、建物10における基礎周辺の構成について図1を用いながら説明する。図1は、建物10における基礎周辺の構成を示す縦断面図である。
【0030】
図1に示すように、基礎11は、鉄筋コンクリート造の布基礎よりなり、地盤内部に埋設されたフーチング部11aと、その上方に延びる立ち上がり部11bとからなる。基礎11は、建物10の外周部に沿って設けられたいわゆる外周基礎となっている。基礎11(立ち上がり部11b)により囲まれた内側は床下空間13となっており、その床下空間13における床下地盤14上には防湿コンクリート15が打設されている。
【0031】
基礎11の立ち上がり部11b上には、建物10を構成する建物ユニット20が設置されている。基礎11の立ち上がり部11b上には、複数の建物ユニット20が並べて設置され、その設置状態で各建物ユニット20が互いに連結されることで建物10が構築されている。
【0032】
かかる建物ユニット20の設置状態において、基礎11の立ち上がり部11b上には、当該建物ユニット20の床大梁23が基礎11に沿って配設されている。床大梁23は、上述したように溝形鋼よりなり、上下方向に延びるウェブ部23aと、そのウェブ部23aを挟んだ上下両側に設けられた上フランジ部23b及び下フランジ部23cとを有している。床大梁23においてこれら各部23a〜23cにより囲まれた内側は溝部23dとなっており、床大梁23は、その溝部23dを床下空間13側に向けて配置されている。なお、床大梁23が床梁に相当する。
【0033】
床大梁23が基礎11の立ち上がり部11b上に設置された状態では、立ち上がり部11bの上面と床大梁23(詳しくはその下フランジ部23c)の下面との間に所定の隙間16が形成されている。この隙間16には気密材17が設けられている。気密材17は、床大梁23に沿った長尺状に形成され、上記の隙間16を塞ぐように設けられている。これにより、床下空間13の気密性能が確保されている。
【0034】
床大梁23(詳しくはその上フランジ部23b)の上には根太18が設けられている。根太18は、床大梁23に沿って配設され、その配設状態において床下空間13側の側面が上フランジ部23bの床下空間13側の端部よりも屋外側に位置している。根太18の上には、床面材19が設けられている。床面材19は、パーティクルボードよりなる床下地面材である。床面材19の上面には、図示しない床仕上げ材が敷設されている。この床仕上げ材により居室28の床面が形成されている。
【0035】
居室28は、外壁部31により屋外と仕切られている。外壁部31は、屋外に面した外壁面材32と、居室28に面した内壁面材33とを有している。外壁面材32は、その裏面側に設けられた下地フレーム34を介して床大梁23(詳しくはそのウェブ部23a)の屋外側に固定されている。また、外壁面材32と内壁面材33との間にはグラスウールからなる壁内断熱材35が設けられている。
【0036】
続いて、建物10において基礎周辺に構築された断熱構造について説明する。
【0037】
本実施形態の建物10では、基礎断熱工法が採用されている。すなわち、基礎11の立ち上がり部11bの内側面には、基礎断熱材37が設けられている。基礎断熱材37は、発泡系断熱材としての発泡ポリエチレンからなる。基礎断熱材37は、板状に形成されており、立ち上がり部11bに対して二枚重ねされた状態で設けられている。また、基礎断熱材37は、立ち上がり部11bにおける高さ方向全域に亘って配設されている。この場合、基礎断熱材37は、その上端部が立ち上がり部11bの上面と同じ高さ位置に設定されている。なお、2枚重ねされた各基礎断熱材37により基礎断熱部が構成されている。
【0038】
床面材19の下面側には、床下断熱材38が設けられている。床下断熱材38は、発泡系断熱材としての発泡ポリエチレンからなる。床下断熱材38は、板状に形成されており、床面材19の下面に重ねて設けられている。また、床下断熱材38は、例えば図示しない取付金具を用いて床小梁26に取り付けられている。
【0039】
床下断熱材38は、その厚みが根太18の高さ寸法(上下幅)と同じ大きさに設定されている。床下断熱材38は、その端部が床大梁23(上フランジ部23b)の上面と床面材19の下面との間に入り込んでいる。この入り込んだ部分は入り込み部38aとなっており、その入り込み部38aは根太18の側面に当接(接触)した状態で配置されている。
【0040】
基礎11の立ち上がり部11bの上面には基礎上断熱材39が設けられている。基礎上断熱材39は、立ち上がり部11bの上面と基礎断熱材37の上面とに跨がって設けられている。基礎上断熱材39は、板状(薄板状)のグラスウールよりなり、基礎11に沿って長尺状に形成されている。基礎上断熱材39は、その一部が立ち上がり部11bと床大梁23との間の隙間16に入り込んでおり、その入り込んだ部分がそれら両者11b,23間で圧縮された状態で挟み込まれている。また、基礎上断熱材39は、基礎11の厚み方向(以下、単に基礎厚み方向ともいう)における床下空間13側の端部が、基礎断熱材37における床下空間13側の面(詳しくは基礎断熱材37において床下空間13に面した板面)と同じ位置にある。
【0041】
床大梁23の溝部23dには梁内断熱材41が設けられている。梁内断熱材41は、繊維系断熱材としてのグラスウールよりなる。梁内断熱材41は、床大梁23に沿った長尺状に形成されており、床大梁23の溝部23dを埋めるようにして配設されている。梁内断熱材41は、その横断面(長手方向に対して直交する方向の断面)が略矩形形状をなしている。梁内断熱材41は、その自然状態(非圧縮状態)における高さ寸法(上下寸法)が床大梁23の高さ寸法よりも大きくされ、かつ、その厚み(基礎厚み方向の長さ)が床大梁23の幅と同じとされている。この場合、梁内断熱材41は、床大梁23の溝部23dにおいて上下に圧縮された状態で配設されている。なお、梁内断熱材41により梁内断熱部が構成されている。
【0042】
床大梁23(及び梁内断熱材41)の床下空間13側には、複数(具体的には2つ)の梁外断熱材42が設けられている。これら各梁外断熱材42はいずれも、繊維系断熱材としてのグラスウールよりなる。各梁外断熱材42は、床大梁23に沿って長尺状に形成され、その横断面(長手方向に対して直交する方向の断面)が略矩形形状をなしている。また、各梁外断熱材42はいずれもその構成(詳しくは自然状態における構成)が同じとされ、さらには、その構成が梁内断熱材41とも同じとされている。これにより、床大梁23に複数の断熱材を設けた構成にあって、部材の共通化が図られている。なお、これら各梁外断熱材42により梁外断熱部が構成されている。
【0043】
各梁外断熱材42は、梁内断熱材41の床下空間13側において基礎厚み方向に並べて設けられている。この場合、各梁外断熱材42と梁内断熱材41とは基礎厚み方向に積層された状態で配置されている。各梁外断熱材42のうち、梁内断熱材41に隣接する梁外断熱材42(以下、この符号にaを付す)は当該梁内断熱材41と接触した状態で設けられている。また、この梁外断熱材42aは、他方の梁外断熱材42(以下、この符号にbを付す)にも接触した状態で設けられている。この場合、これら各断熱材41,42a,42bにより床梁断熱部が構成されている。
【0044】
各梁外断熱材42a,42bはいずれも、基礎上断熱材39と床下断熱材38との間に配設されている。詳しくは、各梁外断熱材42a,42bは両断熱材38,39の間で(若干)圧縮された状態で配設されている。この場合、各梁外断熱材42a,42bは、その下端部において基礎上断熱材39と接触している。したがって、梁外断熱材42a,42bは、基礎上断熱材39を介して基礎断熱材37と連続している。また、各梁外断熱材42a,42bは、その上端部において床下断熱材38と接触している。したがって、梁外断熱材42a,42bは床下断熱材38とも連続している。このように、本建物10では、基礎11から床下に亘って、上記各断熱材37〜39,42a,42bが連続した断熱ライン(断熱層)が形成されている。
【0045】
梁外断熱材42bは、その床下空間13側の面(側面)が基礎断熱材37の床下空間13側の面(板面)と同一平面上に位置している。これにより、2つの梁外断熱材42a,42bからなる梁外断熱部が基礎断熱材37の上方にて当該基礎断熱材37の厚み方向全域に亘って配設されている。
【0046】
次に、上述した断熱構造を構築する際の作業手順について説明する。図3は、断熱構造を構築する際の作業手順を説明するための説明図である。
【0047】
ユニット製造工場では、まず建物10を構成する各建物ユニット20を製造する。建物ユニット20の製造に際しては、図3(a)に示すように、床面材19の下面側に床下断熱材38を取り付けるとともに、床大梁23の溝部23dに梁内断熱材41を配設する。
【0048】
建物ユニット20の製造後、各建物ユニット20をトラックにより施工現場へ搬送する。
【0049】
施工現場では、まず基礎11の施工を行う。基礎11の施工に際しては、図3(b)に示すように、基礎断熱材37を基礎11の立ち上がり部11bの内側面に取り付ける。
【0050】
基礎11を施工後、ユニット製造工場から搬送される建物ユニット20を基礎11上に設置する作業を行う。建物ユニット20の設置に際しては、まず図3(c)に示すように、基礎11の立ち上がり部11b上に基礎上断熱材39を配設し、その後、建物ユニット20を立ち上がり部11b上に設置する。
【0051】
建物ユニット20を設置後、図3(d)に示すように、梁外断熱材42a,42bを基礎断熱材37(基礎上断熱材39)と床下断熱材38との間に配設する作業を行う。この作業は、床下空間13に潜り込んだ状態で行う。
【0052】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
基礎11(立ち上がり部11b)の内側面に基礎断熱材37を設ける基礎断熱工法を採用しながらも、床面材19の下面側に床下断熱材38を設けたため、建物の断熱性能を大いに高めることができ、寒冷地においても十分な断熱を図ることが可能となる。
【0054】
また、こうした構成にあって、床大梁23を床下空間13側から覆う床梁断熱部(具体的には梁内断熱材41及び梁外断熱材42)を設け、その床梁断熱部を基礎断熱材37と床下断熱材38とにそれぞれ連続させた。この場合、床大梁23の床下空間13側において基礎断熱材37と床梁断熱部(詳しくは梁外断熱材42)と床下断熱材38とが連続する断熱ライン(断熱層)を形成することができるため、床大梁23の高さ方向全域を床下空間13側から上記断熱ラインで覆うことができる。そのため、床大梁23が熱橋となるのを確実に抑制することができる。よって、この場合、断熱性能のさらなる向上を図ることができる。
【0055】
床梁断熱部の一部(梁内断熱材41)を床大梁23の溝部23dに配設し、残りの部分(梁外断熱材42)を溝部23dの外に配設した。そして、梁外断熱材42については基礎断熱材37と床下断熱材38とにそれぞれ連続させた。この場合、床大梁23を上下のフランジ部23b,23cを含めて上記断熱ラインで覆うことができるため、床大梁23が溝形鋼からなる構成にあって、当該床大梁23が熱橋となるのを確実に抑制することができる。また、梁内断熱材41については溝部23dに配設したため、床梁断熱部の厚みを大きくする(かせぐ)ことができる。よって、この場合、床大梁23が溝形鋼からなる構成にあって、断熱性能の向上を好適に図ることができる。
【0056】
床梁断熱部を構成する梁内断熱材41と梁外断熱材42とを互いに別体として構成した。この場合、梁内断熱材41についてはユニット製造工場にて床大梁23の溝部23dに組み付け、梁外断熱材42については施工現場にて組み付けることが可能となる。これにより、建物ユニット20の施工現場への搬送時に床梁断熱部(梁内断熱材41)が脱落するのを抑制することができる。また、施工現場での作業は床下空間13に潜っての作業となるが、この場合、梁外断熱材42だけを組み付ければよいため、かかる作業負担の軽減を図ることができる。
【0057】
ここで、仮に、梁内断熱材41と梁外断熱材42とを一体化させて床梁断熱部を構成し、それを施工現場において床大梁23の溝部23dに組み付けることを考えると、その作業は基礎断熱材37と床下断熱材38との間を通じた奥まった位置での作業となるため、著しく大変な作業になると考えられる。そのため、この点を鑑みても、梁内断熱材41と梁外断熱材42とを別体とすることで、梁外断熱材42だけを現場で組み付ければよいようにした上記の構成は好ましい構成といえる。
【0058】
梁外断熱部(梁外断熱材42a,42b全体)の厚み(基礎厚み方向の長さ)を梁内断熱材41の厚みよりも大きくしたため、床梁断熱部全体の厚みを大きくすることができる。これにより、断熱性能の向上を図ることができる。また、梁外断熱部を厚み方向に分割した複数の梁外断熱材42a,42bにより構成し、それら各梁外断熱材42a,42bと梁内断熱材41とをいずれも同じ構成とした。この場合、断熱材に関し部材の共通化を図ることができるため、部材コストの低減を図りながら断熱性能の向上を図ることができる。
【0059】
基礎厚み方向において、梁外断熱材42bの床下空間13側の端部(側面)を基礎断熱材37の床下空間13側の面と同位置に設定した。この場合、梁外断熱材42(42a,42b)が基礎断熱材37の上方において当該基礎断熱材37の厚み方向全域に亘って配設されるため、梁外断熱材42(42a,42b)と基礎断熱材37とが連続する連続部分において断熱厚みが小さくなってしまうのを回避できる。これにより、当該連続部分において断熱性能が低下してしまうのを抑制できる。
【0060】
なお、基礎厚み方向において、梁外断熱材42bの床下空間13側の端部(側面)を基礎断熱材37の床下空間13側の面よりも床下空間13側に位置させてもよい。その場合にも、梁外断熱材42(42a,42b)が基礎断熱材37の上方にて当該基礎断熱材37の厚み方向全域に亘って配設されるため、上述の効果を得ることが可能となる。
【0061】
床大梁23の上フランジ部23bと床面材19との間に床下断熱材38の入り込み部38aを入り込ませ、その入り込み部38aを根太18に対して接触させた。この場合、床下断熱材38の入り込み部38aにより床大梁23の上フランジ部23b(の先端側)を上方から覆うことができるため、上フランジ部23bが熱橋となって屋外の熱が床大梁23上方(換言すると居室28側)に伝わるのを抑制することができる。
【0062】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0063】
(1)上記実施形態では、梁外断熱部を分割した2つの梁外断熱材42により構成したが、3つ以上の梁外断熱材42に分割してもよい。また、分割した各梁外断熱材42は必ずしも同じ構成とする必要はなく、また梁内断熱材41とも同じ構成とする必要はない。また、梁外断熱部を分割せず1つだけ設けるようにしてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、床梁断熱部において梁内断熱材41(梁内断熱部)と梁外断熱材42(梁外断熱部)とを別体として構成したが、これを変更して、梁内断熱部と梁外断熱部とを一体化した床梁断熱部を構成してもよい。但し、床梁断熱部の取り扱い性等を考慮すると、梁内断熱部と梁外断熱部とは別体として構成するのが望ましい。
【0065】
また、梁内断熱材41を設けないようにしてもよい。その場合にも、基礎断熱材37と床下断熱材38とが梁外断熱材42を介して連続されているため、断熱性能の向上を図ることができる。
【0066】
(3)上記実施形態では、基礎断熱材37と梁外断熱材42とを基礎上断熱材39を介して連続させたが、これを変更して、基礎断熱材37と梁外断熱材42とを基礎上断熱材39を介さず直接接触させることで連続させてもよい。また、上記実施形態では、床下断熱材38と梁外断熱材42とを直接接触させることで連続させたが、これを変更して、これら各断熱材38,42の間に他の断熱材を介在させ、その他の断熱材を介して各断熱材38,42を連続させてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、基礎断熱材37及び床下断熱材38として発泡ポリエチレン(発泡系断熱材)を用いたが、ポリエチレンフォームやフェノールフォーム等他の発泡系断熱材を用いてもよい。また、基礎断熱材37及び床下断熱材38としては必ずしも発泡系断熱材を用いる必要はなく、グラスウール等の繊維系断熱材を用いてもよい。
【0068】
上記実施形態では、梁内断熱材41及び梁外断熱材42として、グラスウール(繊維系断熱材)を用いたが、ロックウールやセルロースファイバー等、他の繊維系断熱材を用いてもよい。また、梁内断熱材41及び梁外断熱材42としては、必ずしも繊維系断熱材を用いる必要はなく、発泡ポリエチレン等の発泡系断熱材を用いることもできる。
【0069】
(5)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0070】
10…建物、11…基礎、13…床下空間、18…根太、19…床面材、20…建物ユニット、23…床梁としての床大梁、23d…溝部、37…基礎断熱材、38…床下断熱材、41…梁内断熱材、42…梁外断熱材。
図1
図2
図3