(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1において、1は物品移送装置であり、この物品移送装置1は、複数の物品Wが積み上げられるように載置された第1の搬送装置2の載置位置から、複数の物品Wのうちの移送対象である被移送物品W1を、所定の位置である第2の搬送装置3のステーション4まで移送して段ばらしする。
【0018】
すなわち、物品移送装置1は、パレットP上に所定の積付パターンで段積みされた状態で第1の搬送装置2により載置位置まで搬送されてきた複数の物品Wを、第2の搬送装置3のステーション4へ移送して、段ばらし(デパレタイズ)する段ばらし装置である。
【0019】
ここで、物品Wは、例えば長手方向を有する矩形シート状に畳まれた袋体が無結束状態で所定枚数(15枚)毎に上下方向に重ねられて1組とされた厚みが30mmの袋束である。
【0020】
また、載置位置では、
図2(a)および(b)に示すように、各段において間隔を開けて2組の物品Wの長手方向が略平行に配置されており、かつ、奇数段の物品Wと偶数段の物品Wとが互いの長手方向が略垂直となるように配置された積付パターンで段積みされている。すなわち、載置位置では、被移送物品W1とその隣の物品W2とが間隔を開けて互いの長手方向が略平行になるように並列して配置され、これら被移送物品W1および物品W2の下段の物品W3および物品W4が、被移送物品W1および物品W2と長手方向が略垂直になるように配置され、同様に奇数段の物品Wと偶数段の物品Wとが互いの長手方向が略垂直になるように配置されて、順次段積みされている。
【0021】
段ばらし装置としての物品移送装置1には、
図1および
図3に示すように、装置本体であるロボット本体5の先端側に、第1の搬送装置2の載置位置に載置された被移送物品W1を第2の搬送装置3のステーション4まで移送するハンド装置(ロボットハンド)6が設けられている。これらロボット本体5およびハンド装置6は、制御部7によって制御されている。なお、
図1では、ロボット本体5の先端側を一部省略しハンド装置6を拡大して示している。
【0022】
ロボット本体5は、設置面に固定された基台8に、ロボットアーム9が回動可能に立設されている。
【0023】
ロボットアーム9は、基台8に鉛直軸線Yを中心として回動可能に接続されたアーム基部11を有している。アーム基部11には、第1アーム部である下腕部12の下端部が水平軸線を中心として回動可能に連結され、この下腕部12の上端部には第2アーム部である上腕部13の基端部が水平軸線を中心として回動可能に連結されている。
【0024】
上腕部13の先端部には、回動軸部14が上下方向の軸線である鉛直軸線Yを中心として回動可能に設けられている。
【0025】
この回動軸部14の下端部には、被移送物品W1を保持可能なハンド装置6が連結固定されている。そして、ハンド装置6は、ロボットアーム9の作動に基づいて所定範囲内で任意方向に移動可能であるとともに、鉛直軸線Yを中心に回動可能である。
【0026】
ハンド装置6は、
図3に示すように、ロボットアーム9の回動軸部14の下端部に連結固定されたベース体15を備えている。
【0027】
ベース体15は、回動軸部14の下端部に連結される平板15aと、この平板15aの底面の両側部から下方に設けられた2つのフレーム15bとを有している。なお、これらフレーム15bは間隔を空けて互いに対向するように、平行に設けられている。
【0028】
そして、ベース体15は、ロボットアーム9の作動に基づいて所定範囲内で任意方向に移動可能であるとともに、ロボットアーム9の上腕部13に対して回動軸部14と一体に鉛直軸線Yを中心として回動可能である。
【0029】
ベース体15の一端側には、支持体16が固定して設けられている。ベース体15の支持体16一端側と対向する他端側には、移動体17が支持体16に接離(接近および離反)するようにベース体15に対して所定の範囲で水平方向に移動可能に設けられている。
【0030】
そして、移動体17が支持体16側へ接近移動することにより、載置位置の被移送物品W1を支持体16側へ移動させるとともに、この移動させた被移送物品W1を支持体16と移動体17とによって両側から挟持する。一方、移動体17が支持体16から離反移動することにより、被移送物品W1の挟持を解除する。
【0031】
また、ベース体15における支持体16より他端側で移動体17の移動範囲より一端側には、挟持された被移送物品W1を上部から押さえて挟持状態を安定させるための押え体18が設けられている。
【0032】
さらに、ベース体15における移動体17の移動範囲より他端側には、被移送物品W1以外の物品Wを載置位置に保持するための保持体19が設けられている。すなわち、保持体19は、移動体17が支持体16に対して最も離間した位置よりも支持体16から遠い位置に、移動体17を挟んで設けられている。
【0033】
また、ベース体15には、移動体17を支持体16に対して接離移動(接近移動および離反移動)させる駆動手段としての駆動部21が設けられている。
【0034】
この駆動部21は、互いに間隔を開けて設けられた一方側駆動プーリ22および他方側駆動プーリ23(
図6を参照。)を有している。
【0035】
これら一方側駆動プーリ22および他方側駆動プーリ23には、無端状の図示しないベルトが掛け渡され、このベルトに移動体17が取り付けられている。また、一方側駆動プーリ22には、駆動源である電動モータ(サーボモータ)24が減速器25を介して接続されている。
【0036】
そして、例えばエンコーダパルス制御により電動モータ24が駆動されると、電動モータ24からの動力でベルトが一方向に回行して、移動体17がベース体15のガイド部26にて案内されながら支持体16側へ接近移動する。また、電動モータ24からの動力でベルトが他方向に回行すると、移動体17がベース体15のガイド部26にて案内されながら支持体16から離反移動する。
【0037】
支持体16は、
図3および
図4に示すように、ベース体15に固定取付部材31を介して固定して取り付けられた複数、例えば4つのフォーク部材32を有している。
【0038】
フォーク部材32は、固定取付部材31の外側である一側面に取り付けられた固定基部33と、この固定基部33の下端部からベース体15の他端側へ水平状に延び、移動体17によって移動された被移送物品W1を下方から支持する下方支持部34とを有しており、側面視で略L字状である。
【0039】
これらのフォーク部材32は、水平方向に互いに離間するように固定取付部材31に取り付けられており、また、下方支持部34にて被移送物品W1を略水平に支持するために互いの下方支持部34の高さが揃うように設置されている。つまり、各下方支持部34の上面である物品支持面は水平面を構成している。
【0040】
固定取付部材31には、フォーク部材32の間に位置するように矩形板状の複数、例えば3つのガイド部材35が取り付けられている。
【0041】
ガイド部材35は、固定取付部材31に固定して取り付けられた固定部36と、この固定部36より下端側である先端側に位置しフォーク部材32の固定基部33よりベース体15における他端部側へ突出するように形成された突出部37とを有している。
【0042】
突出部37は、先端部近傍に鉛直方向に平坦な当接部38を有しており、移動体17によって下方支持部34上に移動された被移送物品W1の一端部が当接部38に当接する。
【0043】
また一方、固定取付部材31の内側である他側面には、下方支持部34上における被移送物品W1の有無を検知する物品検知部39が設けられている。そして、物品検知部39にて下方支持部34上の被移送物品W1が検知されると、押え体18が作動する。
【0044】
押え体18は、
図3および
図5に示すように、固定取付部41を介してベース体15に固定された駆動源であるシリンダ42を有している。
【0045】
このシリンダ42は、筒状の本体部43と、この本体部43に進退可能に設けられたロッド部44とを有している。
【0046】
ロッド部44の先端には、水平方向に長手方向を有する長手状の押え部45が取り付けられている。
【0047】
この押え部45は、ロッド部44に接続された基部46と、この基部46に取り付けられ下側がゴム製の接触部47とを有している。接触部47の下端面は、下方支持部34の被移送物品W1が載置される面と対向している。
【0048】
そして、押え体18は、被移送物品W1が下方支持部34上に位置して支持体16と移動体17とで挟持された状態において、シリンダ42の駆動によって押え部45が下降し、接触部47が被移送物品W1の上面に接触して押える。また、このように押え体18によって被移送物品W1を上側から押えることにより、例えば無結束の袋束である被移送物品W1が挟持による両側から力でバラバラにならないようにするとともに、ハンド装置6の移動によって発生した遠心力等によって被移送物品W1が支持体16から離脱しないように、被移送物品W1を保持して挟持状態を安定させる。
【0049】
また、押え体18は、支持体16と移動体17とによる被移送物品W1の挟持が解除されるとともに、シリンダ42の駆動によって押え部45が上昇し、接触部47が被移送物品W1の上面から離間する。
【0050】
移動体17は、
図3および
図6に示すように、ベース体15に移動可能に取り付けられた移動取付部材51を有している。
【0051】
この移動取付部材51は、一方側駆動プーリ22および他方側駆動プーリ23に掛け渡されたベルトに取付板部52を介して取り付けられているとともに、ガイド部26に摺動可能に連結された摺動部53を介してベース体15に接続されている。そして、電動モータ24の駆動力でベルトが回行することにより、ガイド部26に沿って摺動部53が摺動し移動取付部材51が移動する。
【0052】
また、移動取付部材51には、上下方向に長手方向を有する長手状の複数、例えば2つの長手部材54が、移動取付部材51に固定されたブラケット55を介して取り付けられている。
【0053】
長手部材54は、
図7に示すように、ブラケット55の下側固定部56に固定された筒状のリニアブッシュ58と、このリニアブッシュ58の軸方向である上下方向に移動可能な上下移動部としての棒状のピン59とを有している。すなわち、長手部材54は、ピン59がブラケット55やリニアブッシュ58に対して上下方向に移動することにより、ピン59の下端部の位置が上下方向に変化する。
【0054】
そして、長手部材54は、ロボットアーム9の作動に基づくベース体15の移動とともに所定の範囲で任意の方向に移動可能であり、載置位置上で物品Wへ向かって下降することにより、被移送物品W1の隣の物品W2の上面にピン59の先端部が接触する。また、移動体17を水平方向に移動させると、物品W2の上面の端部から下段の物品W3へ移動する際にピン59が下方に移動して物品W3の上面に接触する。さらに、長手部材54は、ピン59の先端部が物品W3の上面に接触した状態で支持体16側へ接近移動すると、ピン59の側面に被移送物品W1の端部が接触して、そのまま被移送物品W1を下方支持部34上へ移動させて、移動させた被移送物品W1を支持体16とピン59とで挟持する。
【0055】
リニアブッシュ58は、円筒状の筒状部61と、この筒状部61の軸方向の一端部である上端部から外側へ突出するフランジ部62とを有している。このリニアブッシュ58は、筒状部61の軸方向が略鉛直となるように下側固定部56の孔部63内に嵌合され、フランジ部62が下側固定部56の上側に固定されている。
【0056】
ピン59は、リニアブッシュ58から上方および下方へ突出するように筒状部61内に摺動自在に挿通され、かつ、上端側がブラケット55の上側固定部57の孔部64に座金65を介して摺動可能に挿通されている。
【0057】
そして、ピン59は、ブラケット55およびリニアブッシュ58に対して、筒状部61および座金65に案内されるように、リニアブッシュ58の軸方向である上下方向に移動可能である。
【0058】
つまり、ピン59は、下方から負荷を受けていない状態では、上端部が上側固定部57から上方へ短く突出し、下端部がリニアブッシュ58から下方へ長く突出する。一方、ピン59が下方から負荷を受けた状態では、下方からの負荷が増大するにつれて上側固定部57から上方へのピン59の突出長さが長くなり、リニアブッシュ58から下方へのピン59の突出長さが短くなる。
【0059】
このようなピン59の軸方向の中央部よりやや下側には、固定部60aがピン59に対して固定されている。この固定部60aの上側には、座金60bを介してばね用ワッシャ67が設けられている。また、固定部60aは、ばね71,72による下方向の弾性力を受けたばね用ワッシャ67の下方向への移動を規制している。よって、ばね用ワッシャ67は、ピン59と一体に移動する固定部60aとともにピン59の上下方向の移動に同期する。
【0060】
また、固定部60aの下側には、座金60cを介してストッパ66が設けられている。このストッパ66は、ピン59に設けられた段差と固定部60aに挟まれることで、ピン59に対して固定されて、ピン59と同期して上下方向に移動する。なお、ピン59は、ストッパ66の底面を境に上側の径より下側の径の方が太く段差状に形成されている。
【0061】
ストッパ66は、ピン59が移動範囲の下限に位置している場合、すなわちピン59に下方向からの負荷が掛かっていない場合には、リニアブッシュ58のフランジ部62の上面にストッパ66の底面が当接して、ピン59の下方向への移動を規制する。
【0062】
また、固定ブラケット55の上側固定部57の下側面には、ばね用ワッシャ68が座金65を介してばね71,72の弾性力を受けて当接しており、このばね用ワッシャ68内にピン59が摺動自在に挿通されている。
【0063】
さらに、ピン59の外周におけるばね用ワッシャ67,68間には、ばね用ワッシャ69,70を介して2つのコイル状のばね71,72が接続されている。すなわち、ばね71は、上端部がばね用ワッシャ68に接続され、下端部がばね用ワッシャ69に接続されている。また、ばね72は、ばね71と同軸上に配置されるように、上端部がばね用ワッシャ70に接続され、下端部がばね用ワッシャ67に接続されている。そして、このように同軸上に配置されたばね71,72の内部空間に、ピン59が挿入されるように配置されている。
【0064】
また、ばね用ワッシャ68,69,70およびばね71,72は、ピン59に対して固定されておらず、ピン59は、ばね用ワッシャ68,69,70およびばね71,72に対して移動可能である。
【0065】
そして、例えばピン59の先端部が物品Wの上面に接触した状態で移動体17が下降しピン59に対して上方への力が作用すると、ピン59およびばね用ワッシャ67が上方へ移動して、ばね71,72が収縮する。ばね71,72が収縮すると、ばね71,72の復元力がばね用ワッシャ67に作用して、ピン59がばね用ワッシャ67とともに下方へ付勢される。そのため、ピン59の下方への移動を係止する力が解除されると、ばね71,72の付勢力によりピン59が下方へ移動する。
【0066】
ピン59の下端部近傍には、ピン59の外周面から径方向内側へくびれるように形成された溝部73が、ピン59の周方向に沿って連続して設けられている。
【0067】
この溝部73は、被移送物品W1を挟持する際に、被移送物品W1の端部が溝部73に引っ掛からずに上方へ逃げるようにスライドし易いように、上側端部74が弧状に形成されている。また、溝部73は、挟持状態にて被移送物品W1の端部が下方へ抜け落ちにくいように、下側端部75が弧状に形成され、被移送物品W1の端部が下側端部75に引っ掛かり易く構成されている。なお、この溝部73は、ピン59において被移送物品W1の側面に当接する部分だけに設けられた構成にしてもよい。
【0068】
また一方、ベース体15における移動体17の移動範囲の支持体16とは反対側である他端部近傍には、載置位置に載置された被移送物品W1の下段の物品W3までの高さを検知する検知手段である計測装置76が固定して取り付けられている。
【0069】
この計測装置76は、載置位置において同じ段に複数の物品Wが存在する場合には、被移送物品W1とこの被移送物品W1の隣の物品W2との隙間を利用して被移送物品W1の一段下の物品W3からの高さを測定する。
【0070】
そして、ロボットアーム9の作動に基づくベース体15の下降により、測定した高さが所定の高さ、例えば300mmになった場合に、ベース体15の下降を減速および停止させる。また、ベース体15の下降が停止すると、保持体19が作動する。
【0071】
保持体19は、
図3および
図8に示すように、固定取付部81を介してベース体15に固定された駆動源であるシリンダ82を有している。
【0072】
このシリンダ82は、筒状の本体部83と、この本体部83に進退可能に設けられたロッド部84とを有している。
【0073】
また、ロッド部84の先端には、水平方向に長手方向を有する長手状の押え部85が取り付けられている。
【0074】
この押え部85は、ロッド部84に接続された基部86と、この基部86に取り付けられ下側がゴム製の接触部87とを有している。
【0075】
そして、保持体19は、載置位置に載置された物品W2の上面にピン59の先端部が接触した状態にて、シリンダ82の駆動によって押え部85が下降し、接触部87が物品W2の上面に接触して押える。すなわち、保持体19によって物品W2を下側である物品W3,W4側に押圧するように押えることによって、移動体17の移動にてピン59が物品W2の上面に接触しながら水平方向に移動する際に、被移送物品W1以外の物品Wが載置位置に載置された状態を保持する。
【0076】
また、保持体19は、移動体17によって被移送物品W1を下方支持部34上へ移動させた後に、シリンダ82の駆動によって押え部85が上昇して、接触部87が物品W2の上面から離間する。つまり、保持体19は、鉛直方向に昇降し、下降によって物品Wの表面(天面)を上部から押圧し、上昇によってその押圧状態を解除するものである。
【0077】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0078】
物品移送装置1にて、段ばらし作業(デパレタイズ作業)を行う際には、第1の搬送装置2の載置位置にて、パレットP上に例えば
図2(a)および(b)に示す積付パターンで段積みされた物品Wの各段において、1組ずつ物品Wを移送する。具体的には、まず被移送物品W1を移送し、次にこの被移送物品W1の隣に配置されていた物品W2を移送し、次に被移送物品W1の下段に配置されていた一方の物品W3を移送し、次に被移送物品W1の下段に配置されていた他方の物品W4を移送する。また、同様に各段の物品Wを順次移送する。
【0079】
被移送物品W1を載置位置から移送する際には、まず、ハンド装置6は、ロボットアーム9の作動に基づいて、
図9に示すように、載置位置に段積みされた物品Wの上方に移動体17が配置される位置で、かつ、物品Wの上方に支持体16が配置されない位置に移動する。
【0080】
次いで、計測装置にて、被移送物品W1と物品W2との隙間を利用して、被移送物品W1より1段下の物品W3からの高さを測定するとともに、ハンド装置6が下降する。
【0081】
ハンド装置6が下降すると、
図10に示すように、物品W2の上面にピン59が接触する。また、そのままハンド装置6がさらに下降することにより、ばね71,72に付勢力に抗してピン59がブラケット55およびリニアブッシュ58に対して上方へ押し込まれるように移動する。
【0082】
また、ハンド装置6の下降の際には、計測装置76にて物品W3からの高さが検出されており、物品W3からの高さが所定の高さ、例えば300mmとなるとハンド装置6の下降が減速して停止する。なお、ハンド装置6の下降が停止した状態では、1段分の物品Wの厚さ寸法(30mm)に10mmを加えた長さでピン59が上方へ押し込まれるように移動している。
【0083】
ハンド装置6の下降が停止すると、保持体19は、シリンダ82の駆動によって押え部85が下降し接触部87が物品W2の上面に接触して、物品W2を上方から下段の物品W3,W4側へ押圧して押える。
【0084】
次いで、制御部7に制御により電動モータ24が駆動して、移動体17が支持体16へ接近するように水平方向に移動する。
【0085】
移動体17が支持体16へ接近移動すると、長手部材54は、ピン59の先端部が物品W2の上面に接触した状態で移動する。つまり、ピン59の先端部は、接触する物品Wの表面の形状に応じて上下方向に移動し、例えば物品Wの表面に皺等による起伏がある場合には、その起伏に応じて上下方向に移動する。
【0086】
また、移動体17の水平方向への移動によりピン59の先端部が物品W2の上面の端部を通過する際には、ばね71,72の付勢力によって、物品W2の上面の端部と下段の物品W3の上面との段差に追従するようにピン59が下方に移動して、ピン59の先端部が被移送物品W1の下側に位置する物体である物品W3の上面に接触する。つまり、ピン59の先端部は、載置位置において接触する各物品Wとの当接状態によって上下位置が自動で調整される。そして、移動体17に水平方向への移動により、ピン59がそのまま物品W3上を水平方向に移動する。
【0087】
なお、このようにピン59が物品W2,W3の上面に接触しながら移動しても、保持体19によって物品W2が下段の物品W3,W4側へ向かって押圧されているため、被移送物品W1以外の物品Wすなわち、物品W2,W3,W4同士がピン59および被移送物品W1の移動による影響を受けて載置位置からずれてしまうことを防止して、被移送物品W1以外の物品Wが載置位置に保持される。
【0088】
また、物品W3の上面にピン59の先端部が接触した状態で移動体17が支持体16へ接近移動すると、
図11に示すように、ピン59の先端部近傍の側面に被移送物品W1の他端部が接触する。
【0089】
このようにピン59の先端部近傍の側面に被移送物品W1の他端部が接触した状態にて、移動体17が支持体16に接近移動すると、被移送物品W1が移動体17とともに支持体16側へ移動し、
図12に示すように、被移送物品W1が移動体17によって掻き出されるように支持体16の下方支持部34上に移動される。
【0090】
被移送物品W1が下方支持部34上に移動されると、被移送物品W1の一端部が当接部38に当接する。
【0091】
被移送物品W1の一端部が当接部38に当接した状態で、さらに移動体17が支持体16側へ移動することにより、支持体16と移動体17とで被移送物品W1を両側から挟持する。
【0092】
なお、このように被移送物品W1が支持体16と移動体17とで挟持される際には、被移送物品W1の他端部が、溝部73の下側端部75から溝部73に沿って持ち上げられるように上方へ移動し、力を逃がすように溝部73の上側端部74から溝部73の上方へ移動して、被移送物品W1が湾曲した状態となる。
【0093】
支持体16と移動体17とで被移送物品W1を挟持すると、押え体18は、シリンダ42の駆動により押え部45が下降して、接触部47が被移送物品W1の上面に接触し被移送物品W1を上方から押える。このように挟持状態の被移送物品W1を押え体18により上方から押えることで、例えば無結束の袋束である被移送物品W1が挟持力によってバラバラにならないようにして、被移送物品W1の挟持状態を安定させる。
【0094】
次いで、
図13に示すように、ロボットアーム9の作動に基づくハンド装置6に移動によって、被移送物品W1を所定の位置である第2の搬送装置3のステーション4へ向けて移送する。なお、この移送中においても、被移送物品W1の上面が押え体18により押えられて、支持体16と移動体17とにより安定的に挟持されている。
【0095】
ここで、被移送物品W1を挟持した状態のハンド装置6の移動中において、例えば挟持力が弱く被移送物品W1の他端側が下方に垂れ下がりそうになった場合等であっても、ピン59には溝部73が設けられており、この溝部73の下側端部75に被移送物品W1の他端部が引っ掛かりやすいため、被移送物品W1の他端部が抜け落ちることによる挟持状態の解除を防止できる。
【0096】
ステーション4の上方にハンド装置6が移動すると、
図14に示すように、ステーション4に設けられた荷下ろし用の昇降体91が上昇する。
【0097】
昇降体91は、ステーション4の水平方向軸線を中心に回転可能に軸支された複数のローラ92間において昇降可能な複数のプレート93を有している。これらプレート93は、ローラ92間において、ローラ92の軸方向と平行な方向にフォーク部材32の幅方向の長さより離間して配置されている。
【0098】
そして、ローラ92間からプレート93が上昇した後、
図14に示すように、ハンド装置6は、フォーク部材32がプレート93間に入り込んで潜るように下降する。
【0099】
なお、例えば、
図14に示すように、支持体16のフォーク部材32の向きとステーション4に軸支されたローラ92の軸方向とが交差する構成の場合には、ハンド装置6の下降だけではフォーク部材32がローラ92に干渉してしまい、ハンド装置6から被移送物品W1をステーション4上に下ろしにくくなってしまう。
【0100】
そこで、ステーション4に昇降体91が設けられることにより、ハンド装置6で移動させた被移送物品W1を、一旦昇降体91上に載置して荷下ろしできる。
【0101】
このようにハンド装置6から昇降体91上に被移送物品W1を載置すると、移動体17は、制御部7の制御により電動モータ24が駆動して、ピン59が被移送物品W1の端部から離れるように支持体16に対して移動体17が離反移動して、被移送物品W1の挟持が解除される。
【0102】
また、挟持の解除とともに、シリンダ42の駆動により押え部85が上昇し接触部87が被移送物品W1の上面から離間して、押え体18による被移送物品W1の保持も解除され、
図15に示すように、プレート93上に被移送物品W1が略水平に載置された状態となる。
【0103】
また、ハンド装置6は、ロボットアーム9の作動に基づいて支持体16が被移送物品W1から離間するように水平方向に移動してステーション4から退避する。
【0104】
次いで、ハンド装置6は、
図16に示すように、一旦上方に移動し、再度第1の搬送装置2の載置位置の上方へ向けて移動する。
【0105】
また、第2の搬送装置3のステーション4では、昇降体91が下降して、ローラ92上に被移送物品W1が載置されて、第2の搬送装置3にて被移送物品W1が移送される。
【0106】
また、物品W2が同様に移送され、次いで、下段の物品W3,W4も同様に順次移送されて、各段の物品Wが移送される。
【0107】
そして、このような物品移送装置1によれば、ハンド装置6が、被移送物品W1を下方から支持する下方支持部34を有する支持体16と、この支持体16に対する接近移動により被移送物品W1を下方支持部34上に移動させる移動体17とを備えているため、被移送物品W1を適切に移送できる。すなわち、被移送物品W1が例えば無結束の袋束のように、複数のシート体が積み重ねられて1組にされたものであっても、支持体16に対する移動体17の接近移動によって載置位置の被移送物品W1を掻き出すように下方支持部34上に移動できるため、1組の被移送物品W1がバラバラになることなく移送できる。また、下方支持部34上に被移送物品W1を支持しながら、その被移送物品W1を支持体16と移動体17とで挟持して所定の位置であるステーション4に移送できる。よって、例えば、物品Wの種類、形状および積付パターン等に影響されることなく、物品Wを載置位置から所定の位置まで適切に移送できる。
【0108】
移動体17が上下方向に移動可能な上下移動部としてのピン59を有するため、載置位置のパレットP上に載置された物品Wの形状や積付パターンに応じてピン59を上下に移動させて対応でき、載置位置から下方支持部34上へ被移送物品W1をより確実に移動できる。
【0109】
ピン59が下方へ付勢されているため、移動体17の下降を精密に制御しなくても、例えば一旦物品W2の上面にピン59の先端部を接触させた後に移動体17を水平方向に移動させるだけで、物品W2と物品W3との段差に容易に適応できるとともに、ピン59の先端部を物品W3上に密着させることができ、例えば物品Wが無結束の袋束であっても1組の物品Wがバラバラになることなく確実に下方支持部34上へ移動できる。
【0110】
ばね71,72にて付勢された移動体17のピン59は、物品Wとの当接状態に応じて先端位置が上下に変化する。したがって、ピン59は、被移送物品W1が載置された直下層の物品W3の表面(天面)に起伏があっても、物品W3の表面の起伏に追従しながら上下移動して被移送物品W1の側面への当接状態を確保できるため、被移送物品W1を支持体16へ確実に移動させることができる。このような構成の移動体17は、例えばシート類、紙袋、クラフト袋および布等のように、積み重ねた際に上面が平坦になりにくい物品に適用すると特に有効である。
【0111】
なお、物品Wの積付パターンは、被移送物品W1がその下側に位置する物品の一部に重なるように積み上げられていれば
図2(a)および(b)に示すものには限定されず、物品の形状や種類等に応じて適宜決定でき、例えば各段に1組の物品Wが配置された構成等のように、各段における物品Wの数も適宜決定できる。
【0112】
また、物品Wは直接パレットPに載置された構成には限定されず、例えばカバー用のシート体等のように物品Wとは異なる物体がパレットP上に載置され、その上に物品Wが載置された構成であってもよい。
【0113】
このようにパレットP上にシート体等を介して物品Wが載置された構成の場合には、被移送物品W1以外の物体である他の物品Wおよび他の物体が保持体19によって載置位置に保持される。
【0114】
ハンド装置6は、保持体19および押え体18を備えた構成としたが、移動体17が支持体16に対して接近移動することにより、載置位置の被移送物品W1を下方支持部34上に移動させる構成であれば、保持体19および押え体18が設けられていない構成であってもよい。
【0115】
また、被移送物品W1を載置位置から積み付けパターンの外側(保持体19側)へずらしてから保持体19を作用させてもよい。例えば、同じ方向を向いた物品Wが積層された場合等に用いられる。この場合、制御部7は、まず、ハンド装置6の移動により移動体17を被移送物品W1の側面に当接させて、被移送物品W1の一部が積み付けパターンの外側に位置するように被移送物品W1を移動させ、被移送物品W1の直下の物品W3,W4の表面(天面)を露出させる。次いで、その物品W3,W4の表面に対して保持体19を下降させ押圧して、被移送物品W1以外の物品Wを載置位置に保持する。そして、このように被移送物品W1以外の物品Wを載置位置に保持した状態で、移動体17の移動によって被移送物品W1を支持体16側へ移動させることができる。
【0116】
移動体17は、長手状の長手部材54を有する構成としたが、このような構成には限定されず、支持体16への接近移動により、下方支持部34上へ被移送物品W1を移動できる構成であればよい。
【0117】
また、長手部材54は、
図7に示すように棒状のピン59を有する構成には限定されず、例えば細長板状の部材等により構成してもよい。上下移動部は、ピン以外にも、筒状体を多段に組み合わせた構造、パンタグラフ構造および平行リンク構造等を採用してもよい。言い換えれば、上下移動部には、その下端部の位置が下方からの力が増加するにつれて上昇し、下方からの力が減少するにつれて下降する構造を採用できる。
【0118】
長手部材54がピン59を有する構成の場合には、ピン59が上下方向に移動可能である構成には限定されず、ピン59が上下方向に移動しない構成等にしてもよい。ピン59が上下方向に移動しない場合には、移動体17の下降によりピン59の先端が物品W2の上面に接触した際に移動体17の下降を停止するように制御するとともに、物品W2と物品W3との段さに追従するように移動体17の移動を制御する等、ロボットアーム9や移動体17を適宜制御すればよい。
【0119】
ピン59が上下方向に移動可能である構成の場合には、ピン59が下方に付勢された構成には限定されず、ピン59は、例えばシリンダやモータ等の駆動手段によって移動する構成等のように、上下方向に移動可能な構成であればよい。
【0120】
また、移動体17の下降によりピン59の先端部が接触する箇所は、物品W2の上面に限定されず、被移送物品W1と物品W2との隙間から物品W3の上面に接触する構成にしてもよ
い。