(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0011】
本実施の形態では、現金自動取引装置(ATM:Automated Teller Machine)に本発明の動力伝達機構を利用しているが、動力伝達機構を必要とする装置であれば現金自動取引装置に限定されない。
【0012】
<現金自動取引装置の構成及び動作>
図1は、現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
図1に示す現金自動取引装置1は、利用者から入金(投入)された紙幣を内部に保管するとともに、内部に保管されている紙幣を利用者へ出金(放出)する装置である。現金自動取引装置1は、紙幣取引装置101と、カード・明細票処理機構102と、顧客操作部103と、金庫筐体104とを備えている。
【0013】
紙幣取引装置101は、利用者による紙幣の投入及び利用者に対する紙幣の放出を行う紙幣スロット101aを介して、紙幣の入金処理、出金処理、識別処理などを実行する。また、紙幣取引装置101の下部には、紙幣が保管される紙幣収納庫が設けられており、紙幣収納庫は金庫筐体104で囲まれている。紙幣取引装置101の詳細な構成については、後述する。
【0014】
カード・明細票処理機構102は、現金自動取引装置1の上部右側に設けられており、カード挿入口・明細票発券口102aを介して、取引時に使用される利用者のキャッシュカードなどの挿入及び排出や、取引明細が印字された明細票の排出を実行する。また、カードに付加された磁気ストライプの情報の読取・磁気ストライプへの情報の書込、取引明細の印字を実行する。
【0015】
顧客操作部103は、現金自動取引装置1の上部左側に設けられており、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示部とボタン式の操作部とから構成されており、現金自動取引装置1の利用者に対して、取引内容の選択画面や各種取引の実行画面等を表示し、利用者の選択を受け付ける。
【0016】
なお、
図1では、顧客操作部103は、表示部の周辺に操作部を設けた構成としているが、例えば、操作部をタッチパネルとし、タッチパネルとLCDとを重ね合わせた構成としてもよい。
【0017】
なお、
図1に示されていないが、取引時に使用される通帳の挿入及び排出を実行し、挿入された通帳への印字を実行し、通帳に貼付された磁気ストライプの情報の読取や、磁気ストライプへの情報の書込を実行する通帳処理装置や、硬貨の入金処理、出金処理、識別処理などを実行する硬貨処理装置を備えていてもよい。
【0018】
図2は、現金自動取引装置1の機能構成を示すブロック図である。現金自動取引装置1は、紙幣取引装置101と、カード・明細票処理機構102と、顧客操作部103と、外部記憶装置105とを備えている。これらの装置及び機構は、バス106を介して本体装置の本体制御部107と接続されており、本体装置の本体制御部107の制御の下に必要な動作を行う。また、上記各機構及び構成部分は、電源部108より電力を供給される。
【0019】
図3は、紙幣取引装置101の構成を示す側面図である。
図3に示す紙幣取引装置101には、その上部左側に入出金口10が配置される。入出金口10では、外部から投入された紙幣を受理する「入金」と、外部に放出する紙幣が収納される「出金」が同じ場所で実施される。
【0020】
紙幣取引装置101の中央部には、搬送された紙幣の識別情報を取得する識別部30が配置される。ここで、紙幣の識別情報とは、例えば、紙幣の金種情報、真偽情報(真性の紙幣であるか、偽造の紙幣であるか、偽造と疑わしい紙幣であるか、又は紙幣として認識できないか等)、紙幣の状態情報(破れがあるか、しわがあるか等)を含む情報である。
【0021】
なお、取得した紙幣情報により、取扱紙幣は「正紙幣」、「リジェクト紙幣」及び「偽造紙幣」に分類される。ここで、「正紙幣」は、紙幣取引装置101の内部に収納及び出金処理に適切できる紙幣のことである。「リジェクト紙幣」とは、例えば折れや破れ等により紙幣取引装置101の内部に収納することは可能であるが、他の利用者への出金に適さないと判断された紙幣のことである。
【0022】
また、識別部30は、上記識別情報とは異なる、各々の紙幣の固有情報(例:紙幣に印刷された記番号等)を読み取ることにより、同一の金種、真偽若しくは状態の紙幣が複数であっても、別個の紙幣として認識することが可能である。
【0023】
紙幣取引装置101の中部左上側には、入金された紙幣内の正紙幣を取引成立までの間、一時的に保管する第1の一時保管庫40が配置される。
【0024】
紙幣取引装置101の中部左下側には、入金された紙幣内のリジェクト紙幣を正紙幣の取引成立までの間、一時的に保管する第2の一時保管庫50が配置される。
【0025】
紙幣取引装置101の中部右上側には、正紙幣を取引成立した後、偽造紙幣と、入出金口10に出金され、利用者は取り忘れた正紙幣を保管する偽造・取り忘れ紙幣保管庫60が配置される。偽造・取り忘れ紙幣保管庫60は、入金された偽造紙幣を保管する上段部と、出金された取り忘れ正紙幣を保管する下段部と、上段部と下段部との仕切板とを備える。
【0026】
紙幣取引装置101の下部には、その左側から2番目の紙幣の収納のみを行う非還流ボックス74と、左側から1番目、3番目、4番目及び5番目の紙幣の収納及び放出を行う還流ボックス70、71、72及び73とが配置される。これらの非還流ボックス74と還流ボックス70、71、72及び73とを合わせて、紙幣収納庫と称する。
【0027】
非還流ボックス74は、入金処理時及び出金処理時に発生したリジェクト紙幣等を収納する収納庫である。ここで非還流ボックス74は,例えばその収納空間が二段構成になっており、二種類に区分された紙幣を収納する二段入金庫であってもよい。
【0028】
還流ボックス70、71、72及び73は、入金された紙幣内の正紙幣であって出金に適した正紙幣を収納する収納庫である。還流ボックス70、71、72及び73には、入金処理時に金種別に紙葉類が収納され、出金処理時に指定された枚数の紙葉類が放出される。
【0029】
なお、ソフトウェアによる設定や、ディップスイッチ(図示せず)の設定等により、非還流ボックス74、還流ボックス70、71、72及び73の設定を変更することは可能であり、例えば、非還流ボックス74を還流ボックスとしたり、還流ボックス70、71、72及び73を非還流ボックスとして運用してもよい。
【0030】
また、非還流ボックス74、還流ボックス70、71、72及び73は、同一の外形であり、それぞれのボックスにおける紙幣の出入口(または入口)は共通の位置に設けられている。そのため、ソフトウェアによる設定や、ディップスイッチ(図示せず)の設定等を用いなくても、それぞれのボックスの位置を相互に交換することも可能である。
【0031】
また、還流ボックス70、71、72及び73に収納する紙幣の金種も、ソフトウェアによる設定や、ディップスイッチの設定等により可能であり、複数の還流ボックスに同一金種の紙幣を収納してもよい。
【0032】
上記入出金口10と、識別部30と、第1の一時保管庫40と、第2の一時保管庫50と、偽造・取り忘れ紙幣を収納する偽造・取り忘れ紙幣保管庫60と、非還流ボックス74と、還流ボックス70、71、72及び73とは、紙幣を搬送する搬送路20、21、22、23、24及び25により接続される。これらの搬送路20、21、22、23、24及び25は、図示しない駆動源により駆動される。なお、各搬送路の駆動源を別個の駆動源としたり、複数の搬送路を纏めて一つの駆動源にしたりすることにより駆動してもよい。また、各搬送路の分岐点には、図示せぬゲートが設けられている。
【0033】
搬送路20は、入出金口10と金庫筐体104内部を繋ぐ搬送路である。搬送路21は識別部30と搬送路20との間で紙幣を搬送する搬送路である。搬送路22は、紙幣を偽造・取り忘れ紙幣保管庫60へ搬送する紙幣搬送路である。搬送路23は、識別部30と第1の一時保管庫40との間で紙幣を搬送する紙幣搬送路である。搬送路24は第2の一時保管庫50と繋がり、リジェクト紙幣を第2の一時保管庫50へ(またはリジェックト紙幣を第2の一時保管庫50から)搬送する紙幣搬送路である。
【0034】
搬送路20〜24の搬送方向は、図示せぬゲートによって切り替えられる。搬送路25及び搬送路25aは、図示せぬゲートと、非還流ボックス74、還流ボックス70、還流ボックス71、還流ボックス72及び還流ボックス73との間で紙幣を搬送する紙幣搬送路である。非還流ボックス74、還流ボックス70、還流ボックス71、還流ボックス72及び還流ボックス73への紙幣の収納と、還流ボックス70、還流ボックス71、還流ボックス72及び還流ボックス73からの紙幣の繰出しとは、図示せぬゲートによって切り替えられる。
【0035】
搬送路20、21、23、24及び25は、紙幣を双方向に搬送する紙幣搬送路である。一方、搬送路22及び25aは、紙幣を一方向に搬送する一方向の紙幣搬送路である。紙幣の搬送方向は非還流ボックス74へ収納する方向である。
【0036】
なお、一方向の紙幣搬送路は、構造上一方向にしか紙幣を搬送できない紙幣搬送路としても、構造上は双方向に搬送可能であるが、一方向にしか紙幣を搬送しない設定とした搬送でもよい。また、後者の場合、搬送路22及び25aを双方向搬送路にしてもよい。
【0037】
各搬送路上には、紙幣の存在を検出するための搬送路センサ(図示せず)を備えている。搬送路センサは、例えば、赤外光発光部と、搬送路を挟んで赤外光発光部に対向する位置に設けられた赤外光受光部とから構成され、赤外光受光部のダーク/ライトを検出することにより、紙幣の存在を検出する。
【0038】
図4は、紙幣取引装置101の機能構成を示すブロック図である。紙幣取引装置101は、入出金口10と、識別部30と、第1の一時保管庫40と、第2の一時保管庫50と、偽造・取り忘れ紙幣保管庫60と、非還流ボックス74と、還流ボックス70、71、72及び73と、搬送路20〜25、25aと、ゲート(図示せず)と、記憶部(図示せず)と、を備えている。
【0039】
これらの各機構及び構成部分は、制御部109と接続されており、制御部109の制御の下に必要な動作を行う。すなわち、制御部109は、本体制御部107からの指令を現金自動取引装置1のバス106を介して受信し、当該指令に基づき各機構及び構成部分を制御する。
【0040】
記憶部(図示せず)は、例えば、RAM(Random Access Memory)等であり、識別部30により判別された紙葉類の識別情報(金種情報、真偽情報、状態情報)や、各々の紙葉類に固有の情報(例:紙葉類に印刷された記番号等)を格納する。
【0041】
次に、紙幣の入金動作について説明する。紙幣の入出金動作は、利用者により投入された紙幣を紙幣入出金機に入金する動作(入金動作)と、紙幣入出金機に収納された紙幣を利用者に対して出金する動作(出金動作)とに分けられる。また、入金動作は、利用者により投入された紙幣を計数する動作(入金計数動作)と、計数された紙幣内のリジェクト紙幣を識別部30により識別した後に、利用者へ返却する動作(リジェクト返却動作)と、計数された紙幣を非還流ボックス74、還流ボックス70、71、72及び73に収納する動作(入金収納動作)とに分けられる。
【0042】
図5を参照して、入金計数動作における詳細な処理を説明する。
図5は、紙幣取引装置101が入金計数動作を行う径路を示す側面図である。紙幣取引装置101は、紙幣スロット101aを介して入出金口10に投入された紙幣を、一枚ずつ分離する。その後、分離した紙幣を、搬送路20及び21を経由させ、識別部30で紙幣の識別情報及び固有情報を取得する。紙幣として認識できた場合(正紙幣)は、搬送路23を経由させ、正紙幣を第1の一時保管庫40に一時的に収納する。紙幣として認識できたが、傾き異常や紙幣同士の間隔異常となった場合(リジェクト紙幣)は、搬送路24を経由させ、第2の一時保管庫50に一時的に収納する。
【0043】
次に、
図6を参照して、リジェクト返却動作における詳細な処理を説明する。
図6は、紙幣取引装置101におけるリジェクト返却動作を行う径路を示す側面図である。
【0044】
第2の一時保管庫50に一時保管している紙幣(リジェクト紙幣)は、搬送路25を経由し、識別部30へ搬送され、識別部30で紙幣の識別情報及び固有情報を再取得する。正紙幣として再認識できた紙幣は、搬送路23を経由し、第1の一時保管庫40に収納される。正紙幣として認識されなかった紙幣は、搬送路20を経由し、入出金口10に搬送され、利用者に返却する。入出金口10に紙幣を返却した場合は、顧客操作部103に、利用者に紙幣を再投入する旨を指示する画面が表示される。
【0045】
<動力伝達機構の構成及び動作>
次に、本発明における紙幣取引装置に備えられる、一部の動力伝達機構に関して、その構成と動作について説明する。
【0047】
本実施の形態における動力伝達機構は、駆動部材500と駆動部材の左側にある左側従動部材503aと駆動部材の右側にある右側従動部材505aと軸503Sとを有する。ここで、左側従動部材503aと右側従動部材505aとの距離をL1、駆動部材500の長さをL2とすると、L1<L2という関係となっている。
【0048】
駆動部材500は、軸503Sに対して、回転且つ移動が自在であり、駆動部材500には斜面を有する左接触部500l、及び右接触部500rが存在する。また、駆動部材500には、軸503Sに対して傾斜する方向に長穴515が設けられ、軸503Sには当該長穴515を貫通するように、軸503Sに固定されたピン518pが設けられている。
【0049】
また、駆動部材500には、コイルばね516が取り付けられている。ここで、
図7Eを用いてコイルばね516について詳細に説明する。コイルばね516は、駆動部材500には固定されていない状態で、駆動部材500の回転方向と逆方向に抵抗力を付与している。また、このコイルばね516の端516aは、固定された規制部材530の穴530aに差し込まれている。コイルばね516は、駆動部材500が矢印Xのスラスト方向に移動する時には、コイルばね516の端516aが規制部材530を摺動して、矢印X方向と同じ方向に移動する。なお、コイルばね516は、本発明の抵抗部材の一例である。
【0050】
また、左側従動部材503aと右側従動部材505aは、ベアリング503cと505bを通して、軸503Sに対して回転自在な状態で取り付けられている。そして、左側従動部材503a及び右側従動部材505aは、それぞれ、斜面を有する左側従動部材の爪部5031、右側従動部材の爪部5051を有する。
【0051】
なお、駆動部材と従動部材との接触面は両方とも斜面ではなくてもよい。例えば、駆動部材の左右接触部だけに斜面を設けてもよい。または、従動部材の爪部だけに斜面を設けてもよい。
【0052】
次に、
図7A〜
図7Dを参照して、駆動部材の動作と従動部材との接続状態について説明する。
【0053】
図7Bに示すように、軸503Sが矢印Aの方向に回転すると、駆動部材500は、コイルばね516から弾性抵抗力を受けるため、ピン518pと長穴515の間に接触力F1が発生し、軸503Sの動力が駆動部材500へ伝達される。更に、軸503Sの回転に伴って、駆動部材500の右接触部500rは、その接触している右側従動部材の爪部5051の斜面から接触力F2を受けて、駆動部材500は矢印D
1方向に押し出される。
【0054】
上記した軸方向の接触力F1及びF2によって、駆動部材500が、確実に矢印D
1方向の左側従動部材503a側に移動する(
図7B)。そして、駆動部材500の左接触部500lが左側従動部材503aに接触して結合し(
図7C)、駆動部材500を通して、軸503Sの動力が左側従動部材503aに伝えられる。この時、駆動部材500は、他方の右側従動部材505aとは反対側に移動し、駆動部材500と右側従動部材505aは接触しないため、右側従動部材505aには回転トルクは伝わらない(
図7D)。
【0055】
なお、上記したように、左側従動部材503aと右側従動部材505aとの距離をL1、駆動部材500の長さをL2とすると、L1<L2という関係となっている。L1とL2の長さがこのような関係であると、例えば、コイルばね516と駆動部材500の接触が不十分となり、接触力F1が微少となった場合でも、駆動部材500の右接触部500rと右側従動部材の爪部5051の斜面との接触力F2のみで、駆動部材500が左側従動部材503aと結合することが可能となる。
【0056】
図8A〜
図8Dは、上記した
図7A〜
図7Dとは逆方向の、駆動部材の動作と従動部材との接続状態を示した説明図である。軸503Sが矢印Bの方向に回転すると、駆動部材500は、コイルばね516から弾性抵抗力を受けるため、ピン518pと長穴515の間に接触力F3が発生し、軸503Sの動力が駆動部材500へ伝達される。
【0057】
更に、軸503Sの回転に伴って、駆動部材500の左接触部500lは、その接触している左側従動部材の爪部5031の斜面から接触力F4を受けて、駆動部材500は矢印D
2の方向に押し出される。
【0058】
上記した軸方向の接触力F3及びF4によって、駆動部材500が、確実に矢印D
2方向の右側従動部材505a側に移動する(
図8B)。そして、駆動部材500の右接触部500rが右側従動部材505aに接触して結合し(
図8C)、駆動部材500を通して、軸503Sの動力が右側従動部材505aに伝えられる。この時、駆動部材500は、他方の左側従動部材503aとは反対側に移動し、駆動部材500と左側従動部材503aは接触しないため、左側従動部材503aには回転トルクは伝わらない(
図8D)。
【0059】
次に上述の動力伝達機構を、紙幣を収納し放出する紙幣収納庫である第2の一時保管庫50に適用した場合について説明する。
図9及び
図10を参照して、本実施の形態の第2の一時保管庫50の詳細な構造について説明する。
【0060】
図9は、第2の一時保管庫50の構成を示す側面図である。第2の一時保管庫50は、テープ501と、テープ501と紙幣を剥離するためのスクレーパ510と、テープの配置や張力を調整するために配置されるアイドラ504と、テープ501の上に紙幣Pを乗せた状態で巻き取るホイール502と、ホイール502が取付けられている軸502Sと、テープ501を巻き取るリール503と、リール503の軸503Sと、紙幣Pを搬送するローラ511と、紙幣Pを搬送する面である可動ガイド506と、テープ501及び紙幣Pをホイール502に案内するガイドローラ509とが設けられている。
【0061】
搬送路24を経由して第2の一時保管庫50に誘導された紙幣は、その短手方向を搬送方向として第2の一時保管庫50の内部に搬送される。第2の一時保管庫50は、1枚の長尺なテープ501を備えており、テープの両端にホイール502とリール503とが設けられている。なお、ホイール502とリール503は、駆動モータ508によって回転駆動力が付与される。
【0062】
第2の一時保管庫50に紙幣が収納されるときには、紙幣は搬送路24からローラ511の間を通過して可動ガイド506上へ搬送され、ホイール502とガイドローラ509とによって波形に変形付与され、テープ501上へ搬送される。そして、ホイール502を回転させることで、テープ501で紙幣を搬送し、紙幣はテープ501と共にホイール502に巻きつけられる。
【0063】
これに対して、第2の一時保管庫50から紙幣が放出されるときには、リール503はテープ501を巻き取り、テープ501と共にホイール502に巻き付いていた紙幣が、ホイール502から放出される。このとき、テープ501と挟まれた紙幣は、ホイール502とガイドローラ509とによって波形に変形付与され、第2の一時保管庫50から放出されて搬送路24に搬送される。
【0064】
ここで、ホイール502には、スクレーパ510が所定の圧力で接触している。紙幣はホイール502に巻かれており、ホイール502の外周に沿って放出される。このような場合において、ローラ511がホイール502から放出された紙幣を受け取れない場合、紙幣の搬送ジャムの原因となる。
【0065】
このような紙幣の搬送ジャムを防止するために、スクレーパ510は、ホイール502の外周に沿って放出される紙幣をホイール502の外周から剥離し、ローラ511の方向へ案内する。その後、紙幣はローラ511によってテープ501と分離され、搬送路24へ受け渡される。テープ501は、アイドラ504を通過しリール503に巻き取られる。
【0066】
図10は、本実施の形態の第2の一時保管庫50の構成を示す正面図である。軸502S及び軸503Sは、側板513a及び側板513bに対して回転自在に支持されている。ホイール502及びリール503には、それぞれトルクリミッタ517及びトルクリミッタ514が取付けられており、トルクリミッタ517はホイール502と、トルクリミッタ514はギヤ503b及びギヤ507を介して、リール503と連結されている。
【0067】
軸503Sには、ギヤ512、ギヤ503b及びギヤ505と、リール503と、駆動部材500と、その両側に、左側従動部材503aおよび右側従動部材505aとが取り付けられている。ギヤ512は、軸503Sに対して固定された状態で、軸503Sに直接取り付けられており、駆動モータ508のギヤ520から駆動力を伝達される。
【0068】
一方、ギヤ503b、ギヤ505、リール503と、左側従動部材503a、及び、右側従動部材505aは、ベアリング503c及びベアリング505bを通して、軸503Sに対して回転自在な状態で取り付けられている。また駆動部材500は、軸503Sに対して回転自在、且つ軸方向(
図10の左右方向)に移動可能な状態で取り付けられている。そして、駆動部材500が、左側従動部材503aまたは右側従動部材505aに接触することにより、当該左側従動部材503aまたは右側従動部材505aに駆動力が伝達される。
【0069】
軸502Sには、ホイール502と、ギヤ519とが、それぞれ軸502Sに対して固定された状態で取り付けられている。
【0070】
図11及び
図12を参照して、第2の一時保管庫50の動作に関して説明する。
【0071】
図11及び
図12は、第2の一時保管庫50のリール503にテープ501を巻き取るときの駆動系を説明する説明図である。ここで、駆動部材500、左側従動部材503a、右側従動部材505aを含む動力伝達機構の動作については上記と同様の動作であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
図11に示すように、駆動モータ508が回転することにより、駆動モータ508のギヤ520及びギヤ512を介して、軸503Sに駆動モータ508の駆動力が伝達され、軸503Sは矢印Aの方向に回転する。
【0073】
上記したように、軸503Sが矢印Aの方向に回転すると、駆動部材500は、コイルばね516から弾性抵抗力を受けるため、ピン518pと長穴515の間に接触力が発生し、軸503Sの動力が駆動部材500へ伝達され、駆動部材500は左側従動部材503a側に移動する。
【0074】
ピン518pが長穴515の端に移動したとき、駆動部材500の左接触部500lは左側従動部材503aに接触し結合しているため、駆動部材500の回転トルクは左側従動部材503aに伝達される。この時、駆動部材500は、他方の右側従動部材505aとは反対側に移動し、駆動部材500と右側従動部材505aは接触しないので、右側従動部材505aには回転トルクは伝わらない。
【0075】
以上の動作により、左側従動部材503aの回転トルクが、リール503に伝達され、リール503がテープ501を巻き取る方向(矢印Cの方向)に回転する。リール503がテープ501を巻き取り始めると、テープ501に張力が掛かることにより、ホイール502に回転トルクが作用し始める。
【0076】
この回転トルクがトルクリミッタ517の設定トルクを超えたとき、ホイール502はテープ501を放出する方向(矢印Eの方向)に回転し始める。このトルクリミッタ517の作用により、テープ501は緩みなく紙幣を安定して搬送することができる。
【0077】
その後、リール503によるテープ501の巻き取りが終了したことをセンサ等(図示せず)により検知した後、駆動モータ508は停止される。駆動モータ508が停止されると、軸503S及びリール503の動作も停止する。このとき、テープ501に掛かっていた張力が無くなり、軸502S及びホイール502の動作も停止する。
【0078】
図13及び
図14は、第2の一時保管庫50のホイール502にテープ501と紙幣とを巻き取るときの駆動系の説明図である。ここで、駆動部材500、左側従動部材503a、右側従動部材505aを含む動力伝達機構の動作については上記と同様の動作であるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
図13に示すように、駆動モータ508が回転することにより、駆動モータ508のギヤ520及びギヤ512を介して軸503Sに駆動モータ508の駆動力が伝達され、軸503Sは矢印Bの方向に回転する。ここで、
図11及び
図12に示すように、駆動部材500が、第2の一時保管庫50のリール503にテープ501を巻き取るとき、上記と同様の原理により、右側従動部材505a側に移動し、駆動部材500の右接触部500rが当該右側従動部材505aに接触する。
【0080】
そして、摩擦力によって駆動部材500の回転トルクは右側従動部材505aに伝達される。この時、駆動部材500は、左側従動部材503aとは反対側に移動するため、左側従動部材503aには回転トルクは伝わらない。
【0081】
右側従動部材505aの回転トルクは、ギヤ505及びギヤ519を介して軸502Sに伝達される。軸502Sはホイール502がテープ501を巻き取る方向(矢印Gの方向)に回転する。ホイール502がテープ501を巻き取り始めると、テープ501に張力が掛かることにより、リール503に回転トルクが掛かり始める。この回転トルクがギヤ503b、507を介してトルクリミッタ514に伝達される。
【0082】
伝達された回転トルクがトルクリミッタ514の設定トルクを超えたとき、リール503はテープ501を放出する方向(矢印Fの方向)に回転し始める。このトルクリミッタ514の作用により、テープ501は緩みなく紙幣を安定して搬送できる。
【0083】
そして、紙幣の巻き取りが終了した後、駆動モータ508は停止される。駆動モータ508が停止されると、軸502S及びホイール502の動作も停止する。このとき、テープ501に掛かっていた張力が無くなり、軸503S及びリール503の動作も停止する。
【0084】
以上、本実施の形態によれば、紙幣取引装置101内の一部の動力伝達機構は、動力を伝達するための駆動部材500及び従動部材(左側従動部材503a、右側従動部材505a)が同一軸上に取付けられており、かつ、駆動部材500の両側に従動部材(左側従動部材503a、右側従動部材505a)を備え、駆動部材500により一方の従動部材へ動力を伝達する際に、他方の従動部材とは接触しない構造を有する。
【0085】
さらに、駆動部材500は回転軸(軸503S)に対して、傾斜する方向に設けられた長穴515と、長穴515に貫通するように回転軸(軸503S)に固定されたピン518pとを備え、ピン518pが長穴515とにより、駆動部材500を回転軸(軸503S)の軸方向へ移動する構成である。また、駆動部材500と同方向に移動可能なコイルばね516によって、駆動部材500にはスラスト方向の抵抗力が作用させることなく、軸の回転によって駆動部材500が確実に移動することが可能となり、確実な動力伝達が可能となる。