【実施例1】
【0017】
以下、本発明の水底施工領域の高さ管理
方法を、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1〜
図11は、本発明の実施例1を示し、この例は水底作業として捨石マウンドの施工作業に本発明を適用したものである。
【0019】
クレーン船1は、捨石マウンド造成時の捨石投入に使用されるガット船等の作業船であって、台船2上の端部中央に旋回可能に支持されたクレーン旋回部3と、このクレーン旋回部3に上下回動可能に支持されたクレーンアーム4と、このクレーンアーム4の先端より繰り出されるワイヤ(図示せず)とを備え、このワイヤの先端に吊り体としてバケット6が吊り持ちされている。尚、バケット6が捨石の投入手段である。
【0020】
前記クレーン船1は、捨石等の石材が積載される船倉部7を備え、船倉部7内の捨石等の石材をバケット6で掴み、そのバケット6をクレーン操作により船縁外側に移動させ、その位置でバケット6を解放することにより石材を水中に投入する。尚、バケット6としてはグラブバケットを用いている。さらに、台船2の後部には操作室8が設けられ、この操作室8にはクレーン船1の航行を操作する操作装置が設けられている。
【0021】
前記クレーン船1には、後述するソナーを携帯する搭乗者9が乗船し、この搭乗者9が投入指示者である。
【0022】
前記クレーン船1及び搭乗者9の位置を検出するためにGPS装置を用いており、例えば、ディファレンシャルGPS装置が用いられる。以下、そのGPS装置について説明すると、
図3において、基地局10は港湾近くの地上の特定の既設点又は公共既設点に設置され、GPSアンテナ11及びGPS受信機12からなる固定GPSを備えると共に、この固定GPSで測位されたデータを移動局であるクレーン船1に向けて伝送するためのデータ送信機13及びデータアンテナ14を備える。一方、クレーン船1には、基地局10から伝送されてくるデータを受信するデータアンテナ15及び受信データをデコードするデータ受信機16が設けられ、また、GPSアンテナ17及びGPS受信機18からなる移動局20,20,20が複数設けられ、この例では、移動局20がクレーン船1の前記操作室8の上部左右と、クレーン船1のクレーンアーム4の先端上に設けられ、衛星からのGPS信号を前記固定GPSと移動GPSで受信し、固定GPSで得られた測位データと、その固定GPSの既知の位置データとの差により、移動GPSで得られた測位データを補正して移動GPSの位置(測位値)を得る。
【0023】
移動局である搭乗者9は、基地局10から伝送されてくるデータを受信するデータアンテナ15及び受信データをデコードするデータ受信機16、GPSアンテナ17及びGPS受信機18を携帯し、同様に移動局GPSの位置(測位値)を得ることができる。尚、搭乗者9は、リュックサックにデータ受信機16及びGPS受信機18を収納し、GPSアンテナ17の上端をリュックサックから突出して設けている。
【0024】
4つの移動GPSはブルートゥース(登録商標)を用いた無線通信手段19により、制御装置たる管理パソコン21に接続されている。尚、以下の説明に出てくる無線通信手段にもブルートゥース(登録商標)や無線LANを用いることができる。管理パソコン21は操作室8などに配置される。
【0025】
管理パソコン21は、GPS装置により測定されたクレーン船1上の2箇所の位置測定データから、予め入力されたクレーン船1の大きさとクレーン船1上後部の2つのGPSアンテナ17,17の位置に関する座標データに基づき、クレーン船1の緯度、経度に基く平面位置と範囲を表示手段22に表示させる。尚、表示手段22には管理パソコン21のディスプレーなどが用いられる。尚、以下の各位置に関するデータもGPS装置により得られたデータにより得られる。
【0026】
搭乗者9が携帯するソナー23は、浮体を備え、水面227に浮く。そして、所定長さを有する支持杆24の先端に索条25を設け、この索条25の下端に前記ソナー23を連結している。また、支持杆24の基端側には図示しない印を設け、この印の位置で搭乗者9が支持杆24を把持する。
【0027】
従って、支持杆24を、略水平で、台船2の長さ方向に対して略直交方向に保持することにより、搭乗者9からソナー23までの平面距離及び台船2に対する向きが分かり、予め管理パソコン21に支持杆24の長さのデータを入力することにより、GPS装置の情報によりソナー23の位置を算出することができる。尚、支持杆24の長さのデータは前記印の位置から先端までの長さである。
【0028】
ソナー23は、測定する水深により複数の0〜4の5段階のレンジ(計測範囲)に切り替え可能であり、レンジが0は70cm〜10m、レンジが1は70cm〜20m、レンジが2は70cm〜30m、レンジが3は70cm〜40m、レンジが4は70cm〜50mの範囲の計測に適する。また、表示手段22において、ソナー23の測定値はそのまま表示することもできるし、連続した複数回の測定値の平均値を表示することもできる。ソナー23は水面121に浮遊しながら計測を行うから、計測値にばらつきが発生しても、複数の計測値を平均化して近似する表示を行うことができる。
【0029】
搭乗者9は、タブレット型パソコンなどの携帯端末26を携帯して使用し、この携帯端末26は無線通信手段により、前記管理パソコン21に接続されている。尚、ソナー23の計測データを、無線通信手段により携帯端末26に送り、無線通信手段により携帯端末26から管理パソコン21に送るようにしてもよい。
【0030】
基本的には一人の搭乗者9が移動局20の機器をリックサックなどにより背負うと共に、携帯端末26を操作し、さらに、支持杆24を操作するが、複数、例えば二人の搭乗者9,9により作業を行うこともできる。この場合、一方の搭乗者9が移動局20の機器を背負うと共に、携帯端末26を操作し、もう一方の搭乗者9が支持杆24を持ってソナー23を操作し、二人の搭乗者9,9は、所定範囲である半径2m以内程度の近接した一定の範囲内で作業を行う。あるいは一人の搭乗者9が携帯端末26とソナー23を操作し、且つ、台車(図示せず)に移動局20を載せて該移動局20を一人の搭乗者9と共に移動してもよい。
【0031】
前記クレーン旋回部3には、クレーンの操作を行うクレーン操作室3Aが設けられ、このクレーン操作室3Aのクレーン操作者は、ノート型のパソコン27を使用する。このパソコン27は無線通信手段により前記管理パソコン21に接続されている。尚、これらの場合の接続とはデータのやり取りができる状態を言う。さらに、パソコン27は表示手段(図示せず)を備える。
【0032】
図1及び
図3に示すように、クレーン船1以外の場所の陸上などに工事を管理する事務所28を設け、この事務所28にパソコン29を設け、インターネット回線によりそのパソコン29と前記管理パソコン21とを接続する。
【0033】
前記クレーンアーム4の先端に設ける移動局20の機器は、永久磁石であるネオジム磁石の磁力によりクレーンアーム4の先端上部に取り付けられる。具体的には取付板(図示せず)の下面に複数のネオジム磁石を設け、前記取付板の上面に、機器としてデータアンテナ15,データ受信機16,GPSアンテナ17及びGPS受信機18を設ける。また、これら機器の電源は充電池や有線による給電を用いることができる。
【0034】
従って、クレーン船1が交代する場合、交代前のクレーン船1の移動局20のGPSの機器を取り外し、取り外した移動局20の機器を次のクレーン船1のクレーンアーム4に簡便に取り付けることができる。また、台船2の後部左右の移動局20,20は、操作室8の上部の手摺などにボルトなどの着脱手段により着脱可能に取り付けられており、クレーン船1が交代する場合、取り外して次のクレーン船1に取り付けることができる。
【0035】
次に、前記管理パソコン21などによる制御と表示手段22における設定及び表示等について説明する。
図4は管理パソコン21の制御による表示手段22の表示の一例を示し、施工管理画面31を表示している。尚、後述する携帯端末及びクレーン操作室3Aのパソコンにも同様に表示される。表示手段22の施工管理画面31の中央には、施工領域表示部32が設けられ、この施工領域表示部32は作業現場の位置に係る情報などを切替表示する。
図4においては、作業状態を示し、施工領域を升目33により区画した区画表示部34を表示し、この区画表示部34の升目33の大きさは、施工条件などに応じて変更することができる。即ち、升目33は縦横一定の施工領域の長さの範囲を示し、その長さを変更することができる。尚、升目33の縦横の長さは同一以外に異なるように設定できる。
【0036】
区画表示部34の升目33には、施工の進捗状況に対応して各種の状態が着色,模様,枠の色や太さなどにより表示される。具体的には、投入した捨石による捨石マウンド122の水深,捨石の投入回数や施工回数などが升目33の着色などにより示される。そして、事前に升目33に対応する施工領域の長さを入力し、前記ソナー23による深度計測情報を伝送し、表示手段22上で、深度別に升目33を色分け表示することができる。また、升目33には、その位置を示すアルファベットと自然数とが付されており、開始点の升目33の位置を「A−1」(以下、升目位置表示33Aという)とし、Y座標にアルファベットを順に付し、X座標に自然数を順に付し、
図6では、「
K−
3」に符号33Aを付している。尚、捨石を設定回数である複数回投入することにより1回の施工が終了し、この1回の施工を1施工単位という。
【0037】
施工領域表示部32には、現在位置を示すためにクレーン船1の形状に対応する現在位置船体表示部35と、バケット6を表示する現在位置バケット表示部36が表示され、また、目標位置の目標位置船体表示部37が表示される。施工管理画面31の右上には、投入指示部38と、投入升目位置表示部39と、投入完了部40とが設けられ、投入指示部38を操作すると、投入指示部38の色が赤に変わり、マウスなどより、投入指示をする升目33を選択することができる。この場合、投入指示部38を操作すると、十字ボタンが表示され、この十字ボタンにより投入指示する升目33を選択したり、表示手段22がタッチパネルであれば、施工領域表示部32の升目33をタッチするなどの操作をすることにおり、投入指示する升目33を選択することができ、この選択した升目33に投入升目表示39Hが表示され、具体的には、
図6の「J−3」に示すように、投入升目表示39Hとして、選択した升目33の枠が他と異なる色又は/及び太さに表示される。
【0038】
現在位置船体表示部35及び目標位置船体表示部37には、後述するように、台船2の輪郭を表示する台船表示部77と、クレーン旋回部3を表示するクレーン旋回部3の表示部77Aと、クレーンアーム4を表示するクレーンアーム表示部77Bと、クレーン操作室3Aを表示するクレーン操作室表示部77Cと、バケット6を表示するバケット表示部77Dと、クレーンアーム4に取り付けた移動GPSを点で表示するクレーン移動GPS表示部77Eと、台船2の後部左右の移動GPSを点で表示する左右の移動GPS表示部77F,77Fとを表示することができる。
【0039】
施工管理画面31の上部には、現在のバケット6の位置から投入指示が出た升目33の中央までの位置(投入指示位置)までを案内する案内表示部41が設けられている。この案内表示部41は、現在のバケット6の位置から投入指示位置までを前後方向の距離と左右方向の距離を表示し、
図4では、画面上方向である前に4.95m、画面左へ1.4m移動することにより、現在のバケット6が投入位置の升目33の位置になることが分かる。
【0040】
升目33における所定回数の捨石の投入が完了したら、投入完了部40を操作することにより、施工済みとなる。即ち、1つの升目33に所定回数の捨石を投入することにより、1施工単位である1回の施工が済む。尚、投入升目位置表示部39と投入完了部40による投入指示及び投入管理は管理パソコン21と携帯端末26において行うことができ、クレーン側のパソコン27ではできない。
【0041】
バケット6が投入指示の升目33に位置合わせされると、投入升目位置表示部39の表示が変わり、具体的には投入升目位置表示部39の背景色が赤から緑に変わり、バケット6が位置合わせされたことを直感的に知ることができる。クレーン操作者がバケット6を操作して所定回数の捨石の投入を完了したら、投入完了部40を操作する。投入指示者が投入完了部40を操作すると、管理パソコン21が操作回数をカウントして記憶する。1回の施工予定である所定回数の捨石投入が完了したら、必要に応じて、ソナー23により水深を測定する。その後、上述したように、投入指示をする升目33を選択し、一般的には施工済みの隣りの升目33を選択し、同様に1回目の施工として所定回数の捨石投入を行う。尚、所定回数は複数回数である。
【0042】
区画表示部34の右側には、施工回数別凡例表示部42が設けられ、この施工回数別凡例表示部42には、施工の進捗状況たる施工回数とこれに対応する色が表示されており、n回目の施工が完了した升目33(施工済み升目)には、n回数を示す色が表示される。また、区画表示部34の左側には、計測区域深度別凡例表示部48が設けられ、この例では1mピッチで深度(水深)と対応する色が表示されており、表示の切り替え操作により、区画表示部34に升目33の深度に対応した色を表示することができる。
【0043】
施工管理画面31には、使用するクレーン船1の名称を表示する船舶表示部43と、ソナー23の情報を表示するソナー情報表示部44とが設けられている。このソナー情報表示部44には、ソナー23のX軸とY軸の位置を表示する位置表示部45と、レンジ表示部46と、ソナー23により測定した深度表示部47とを有する。
【0044】
施工管理画面31には、クレーン旋回中心表示部51が設けられ、このクレーン旋回中心表示部51は、クレーン旋回中心の目標位置のX軸とY軸の位置と角度を表示する目標位置表示部52と、クレーン旋回中心の現在位置のX軸とY軸の位置と角度を表示する現在位置表示部53とが設けられている。
【0045】
施工管理画面31には、4つの移動GPSの状態を表示するGPS状態表示部54が設けられ、さらに、工事地区と東京湾との平均海面高さ(ジオイド高さ)の差を設定表示する潮位表示部55と、地盤高を示す地盤高表示部56と、ソナー23のレンジを示すレンジ表示部57と、ソナー23により測定した深度を表示する深度表示部58と、クレーン船1の船底の高さを示す船底高さ表示部59とが設けられている。尚、前記潮位表示部55は数値を手入力する以外に潮位観測システムからのデータを自動で入力するように構成してもよい。また、船底高さ表示部59には船底と台船2の後部のGPSアンテナ17の高さの差を入力する。
【0046】
管理パソコン21は、使用する複数のクレーン船1のデータとして、その名称と形状、測量機器の設置座標を記憶する。尚、これらのデータの入力は管理パソコン21においてのみ行うことができる。
【0047】
図7を用いて説明すると、管理パソコン21は、入力された複数のクレーン船1のデータを記憶可能であり、切替により表示手段22には船体座標設定表示画面61が表示され、以下の各設定表示画面の各表示部では、数値などを入力・訂正又は選択して管理パソコン21に記憶させ、数値などを設定表示することができる。
【0048】
前記船体座標設定表示画面61の左上の使用船舶の選択部62には、複数のクレーン船1の名称が表示され、いずれかのクレーン船1を選択すると、選択部62において名称が反転表示又は背景色が変わって表示され、船名表示部63に選択した船名が表示され、選択したクレーン船1に関して予め記憶したデータが、船体座標設定表示画面61の各項目に表示される。同図は「○○○○号」を選択した状態であり、船名表示部63に「○○○○号」が表示され、その右下の船体寸法表示部64には、長さ表示部64Aと幅表示部64Bが上下に設けられ、長さ表示部64Aに、選択したクレーン船1の長さ、幅表示部64Bにクレーン船1の幅の数値が表示さる。また、船体寸法表示部64の下部には、バケット6の平面寸法を示すバケット形状表示部65が設けられ、このバケット形状表示部65には、バケット6の縦寸法65A(X軸方向の寸法)とバケット6の横寸法65B(Y軸方向の寸法)が数値により表示される。尚、前記選択部62に新たな船名を追加し、各表示部に追加したクレーン船1のデータを入力して設定することができる。
【0049】
バケット形状表示部65の下部には、クレーンアーム4に磁力により取り付けた移動GPSのGPSアンテナ17の平面位置とバケット6の中心の平面位置との位置ずれを設定するオフセット表示部66が設けられている。前記GPSアンテナ17はクレーンアーム4の先端上部に磁石により取り付けられるが、クレーンアーム4の先端形状によりGPSアンテナ17のバケット6の中心の平面位置に取り付けることができない場合があるから、オフセット表示部66は、前記位置のずれをX軸方向とY方向とでそれぞれ数値で入力することにより設定表示することができる。尚、クレーンアーム4をX軸方向に向けた状態における位置ずれの数値を設定し、言い換えれば、船首の方向がX軸方向の(+)、右舷方向がY軸方向の(+)である。また、オフセット表示部66の下には、クレーン船1の船底から台船2の後部左右の移動GPSのGPSアンテナ17までの高さ寸法を表示する船底からGPSアンテナまでの高さ表示部67が設けられている。
【0050】
前記船名表示部63の下には、台船2の後部左右の移動GPSの位置を示す計測位置表示部68が設けられ、左右の移動GPSのX座標位置とY座標位置が上下の段にそれぞれ数値により表示される。前記計測位置表示部68の下には、前記クレーン旋回部3の旋回中心のX座標位置とY座標位置を示す旋回中心表示部69と、前記クレーンアーム4の旋回半径を示す旋回半径表示部70とが上下に並んで設けられている。さらに、前記旋回半径表示部70の下にはクレーン操作室3Aの寸法を表示するクレーン室寸法表示部71が設けられ、このクレーン室寸法表示部71には、クレーン操作室3Aの縦寸法(X軸方向の寸法)とバケット6の横寸法(Y軸方向の寸法)を表示する長さ表示部71Aと幅表示部71Bが設けられている。また、前記クレーン室寸法表示部71の下には、オフセット表示部72が設けられ、このオフセット表示部72は、前記旋回中心と、前記クレーン操作室3Aの中心位置とのずれをX軸方向とY方向とでそれぞれ数値で表示する。
【0051】
船体座標設定表示画面61の右上には、データの更新、追加、削除を選択する更新操作部73と、追加操作部74と、削除操作部75とが設けられ、これら操作部73,74,75はマウスでクリックしたり、タッチパネルの場合はタッチしたりすることにより操作を行うことができる。前記更新操作部73を操作すれば、各表示部に新たに入力した数値に更新することができ、追加操作部74を操作すれば、上述したように船名表示部63に新たなクレーン船1の名前を入力し、この新たなクレーン船1のデータを各表示部に入力し、入力後、更新操作部73を操作することにより、入力したデータを管理パソコン21に記憶させることができる。また、使用船舶の選択部62の船名を選択し、選択状態で削除操作部75を操作すれば、その船名に係わるデータを削除することができる。
【0052】
そして、前記選択部62の下には、選択したクレーン船1の平面形状を表示する船体座標表示部76が設けられている。この船体座標表示部76にはX軸とY軸が表示され、XY座標(0,0)の位置を台船2の左舷後部とし、台船2の長さ方向をX軸方向に向けてクレーン船1を表示している。この表示としては、台船2の輪郭を表示する台船表示部77と、クレーン旋回部3を表示するクレーン旋回部3の表示部77Aと、クレーンアーム4を表示するクレーンアーム表示部77Bと、クレーン操作室3Aを表示するクレーン操作室表示部77Cと、バケット6を表示するバケット表示部77Dと、クレーンアーム4に取り付けた移動GPSを点で表示するクレーン移動GPS表示部77Eと、台船2の後部左右の移動GPSを点で表示する左右の移動GPS表示部77F,77Fとが設けられている。
【0053】
図8は施工条件設定表示画面81を示し、この施工条件設定表示画面81の左上には、工事名称表示部82と、システム名表示部83が設けられている。システム名表示部83の下には、施工区域表示部84が設けられ、この施工区域表示部84には、前記区画表示部34においてX方向とY方向の升目33の数を表示するX方向升目数表示部84AとY方向升目数表示部84Bが設けられ、それぞれの数が表示されている。それら表示部84A,84Bの下には升目33の表す実際の施工区域の寸法を示すX方向寸法表示部84CとY方向寸法表示部84Dが設けられている。
【0054】
これら表示部84A,84B,84C,84Dの下には、XY座標の基準点たる開始点表示部85が設けられ、この開始点表示部85には、選択した座標系における開始点のX座標表示部85AとY座標表示部85Bが設けられ、さらに、前記区画表示部34のX方向と選択した座標系のX方向とがなす角度である升目方向表示部85Cが設けられている。また、施工済み表示期間表示部86が設けられ、表示する期間を選択することができる。さらに、前記支持杆24の長さを設定表示する支持杆長さ表示部87と、ジオイド表示部88とが設けられている。そして、GPSのZ座標は東京湾の平均海面を標高の基準とするため、工事地区と東京湾との平均海面高さ(ジオイド高さ)の差を前記ジオイド表示部88に入力することにより各種の測定値を施工領域に対応して補正することができる。尚、前記設定する支持杆24の長さは、搭乗者9からソナー23の距離である。
【0055】
前記施工条件設定表示画面81にはソナー表示部89が設けられ、このソナー表示部89には、レンジ選択表示部89Aと、データ平均個数表示部89Bと、ソナー感度表示部89Cとが設けられている。また、施工済み状態を曜日単位で表示するためにそれぞれ異なる色を設定する曜日施工済み表示部91と、捨石の投入回数で施工済み状態を表示するために色を設定する回数施工済み表示部92とが設けられている。尚、それら設定部による色の設定により、前記升目33には設定された色のメッシュ模様が表示される。
【0056】
そして、施工の進捗状況として、回数施工済み表示部92の設定により区画表示部34を表示すると、升目33の施工が何回目であるかが色により表示され、また、施工の進捗状況として、曜日施工済み表示部91の設定により区画表示部34を表示すると、曜日ごとの施工済み状態が表示され、この施工済み状態として施工が何回目等の状態を示す。尚、曜日施工済み表示部91及び回数施工済み表示部92の上部には選択部91A,92Aがそれぞれ設けられ、これら選択部91A,92Aの一方を選択することにより、対応する表示が区画表示部34に表示される。
【0057】
色の設定表示部93が設けられ、この色の設定表示部93には、区画表示部34の背景色を設定する背景色表示部94と、クレーン船1に係わる前記表示部77〜77Dの色を設定する船色表示部95と、前記表示部77〜77Dの線の太さを設定する線太さ表示部96と、クレーン船1の目標位置の色を設定する目標位置色表示部97と、クレーン船1の現在位置の色を設定する現在位置色表示部98とが設けられている。そして、各表示部に入力又は条件を設定した後、右下の「OK」の表示にクリックなどの操作を行うことにより、入力又は設定した条件が管理パソコン21に記憶される。
【0058】
図9に示すように計測区域設定表示画面101は、ソナー23の計測区域を設定表示する画面であり、前記施工条件設定表示画面81と一部共通する。具体的には、前記計測区域設定表示画面101には、X方向とY方向の升目33の数を表示する前記X方向升目数表示部84Aと前記Y方向升目数表示部84Bが設けられ、それぞれの数が表示されている。それら表示部84A,84Bの下には升目33の表す実際の施工区域の寸法を示す前記X方向寸法表示部84Cと前記Y方向寸法表示部84Dが設けられている。そして、計測区域設定表示画面101により設定されたソナー用の区画表示部34Aを前記施工管理画面31に表示することができる。この場合、前記区画表示部34,34Aの一方を表示したり、両者を重ねて表示したりすることができる。
【0059】
それら表示部84C,84Dの下には、XY座標の前記開始点表示部85が設けられ、この開始点表示部85には、選択した座標系における前記X座標表示部85Aと前記Y座標表示部85Bが設けられ、さらに、前記区画表示部34のX方向と選択した座標系のX方向とがなす角度である前記升目方向表示部85Cが設けられている。
【0060】
升目方向表示部85Cの下部には升目数表示部102が設けられ、この升目数表示部102は升目33の数によりソナー23による計測範囲を設定して表示するものであり、選択した数に等しい縦横の数の升目33を単位として計測を行うように設定する。そして、
図10に示すように、設定する数は奇数であり、数が1の場合は、図中左側に示すように1つの升目33の中心で測定を行い、数が3つの場合は、図中右側に示すように縦3個、横3個の升目33を1つの単位として、中心の升目33で測定を行い、数が5つの場合は、図中右側に示すように縦5個、横5個の升目33を1つの単位として、中心の升目33で測定を行うように設定することができる。尚、
図10中、103がソナー23の計測位置であり、選択した範囲の中央に位置する。尚、ソナー23の測定位置は、選択した範囲内であれば、中央以外で測定してもよい。
【0061】
前記計測区域設定表示画面101の右側には、深度層単位表示部104を設け、この深度層単位表示部104により設定された単位により複数の深度を表示し、これら深度の隣に該深度に対応する計測区域描画色105を設定して表示される。そして、
図10に示す水深を表示する区画表示部34Aに示すように、ソナー23により水深を測定すると、施工の進捗状況として、升目33が水深に対応する計測区域描画色105の色に変わり、升目33に対応する施工箇所の深度が分かる。さらに、
図10に示すように、マウスのカーソール106を升目33に合わせて選択すると、その升目33の捨石マウンド122のX軸、Y軸、Z軸の計測値が表示される。
【0062】
図11は停泊目標位置設定表示画面111を示し、この停泊目標位置設定表示画面111は、クレーン船1の目標位置を複数設定して表示することができる。前記目標位置に対応して、選択した座標系におけるX座標表示部112とY座標表示部113が設けられ、さらに、前記区画表示部34のX方向と選択した座標系のX方向とがなす角度である升目方向表示部114が設けられている。尚、X座標表示部112とY座標表示部113の数値は台船2の左舷後部の位置を示す。停泊目標位置設定表示画面111により、目標位置船体表示部37を表示することができる。
【0063】
次に、施工方法の一例を説明する。まず、船体座標設定表示画面61,施工条件設定表示画面81,計測区域設定表示画面101及び停泊目標位置設定表示画面111等において、上述したように各種の設定を行う。そして、現在位置船体表示部35及び目標位置船体表示部37により、クレーン船1を目標位置船体表示部37に移動し、案内表示部41と現在位置バケット表示部36を参考にして、投入升目表示39Hの升目33にバケット6を誘導する。バケット6が投入指示の升目33に位置合わせされると、投入升目位置表示部39の背景色が赤から緑に変わり、バケット6が位置合わせされたことを直感的に知ることができ、バケット6から水面121に捨石を投入する。尚、
図6で説明すれば、クレーン船1は、「I−3」の升目33の右側で台船2の前後方向を上下方向にしてその升目33の深度をソナー23で測定できる位置に停泊する。
【0064】
所定回数の捨石の投入が完了し、ソナー23により計測を行ったら、投入指示者である搭乗者9又は操作室8の作業員が投入完了部40を操作する。この操作により投入が完了した升目33は色が変わり、この色は施工回数別凡例表示部42の回数を示す色に対応する。投入指示者は次に施工すべき升目33を指定し、同様に捨石を投入し、これを順次繰り返す。尚、所定回数の投入が終わるごとにソナー23による計測を行わずに、工事で予定していた捨石の投入回数が終わった後、ソナー23による捨石マウンド122の深度の測定を行い、その深度により得られる捨石マウンド122の実際の高さと設計高さの差に基き、追加の捨石の投入を行うようにしてもよい。また、所定範囲の升目33の施工が完了したら、目標位置船体表示部37により次の停泊位置を設定し、クレーン船1を移動し、次の範囲の施工を行う。
【0065】
そして、施工の進捗状況については、施工管理画面31において、曜日施工済み表示部91を表示することにより、曜日ごとの施工実績が分かり、回数施工済み表示部92を表示することにより、各升目33の施工が何回目であるかが分かる。
図6では、「A−1」〜「H−3」までのn+1回目の施工が終わり、「H−3」以降はn回目の施工が終わった状態が示されている。
【0066】
クレーン船1の捨石がなくなったら、次のクレーン船1と交代し、上述したように各種の機器を交換する。また、交代するクレーン船1について、船体座標設定表示画面61,施工条件設定表示画面81,計測区域設定表示画面101及び停泊目標位置設定表示画面111等において、各種の設定を行う。尚、管理パソコン21はクレーン船1毎にデータを記憶しているから、設定も容易に行うことがでる。即ち、使用するクレーン船1の諸元等を事前入力することで、施工時の入力時間短縮が図られる。
【0067】
クレーン船1に設置する移動局20の機器等は、取付けに永久磁石を用いているため、その設置・取外し作業時間の短縮を図ることができる。さらに、施工区域の設定及び分割する升目33の大きさは施工状況に応じて設定することができる。
【0068】
工事の進捗管理について、曜日施工済み表示部91に基く区画表示部34の表示により、日毎の出来高が升目33の色や模様などの表示によりわかる。また、回数施工済み表示部92に基く区画表示部34の表示により、1から10層(回目)までの出来高が升目33の色や模様などの表示により分かる。
【0069】
出来形管理について、事前に計測区域・升目33の規格を入力し、ソナー23による深度計測情報を伝送し、表示手段22において、深度別に色分け表示でき、実測データを進捗管理にも活用できるため、作業性が良好となる。また、投入指示者である搭乗者9が次に投入したい升目33の指示を表示手段22を通して、クレーン操作室3Aのクレーン操作者に的確に指示することができる。また、搭乗者9とクレーン操作者が進捗状況の情報を共有でき、円滑な作業を行うことができる。尚、指示は操作室8の作業員がパソコン21により指示することもできる。
【0070】
クレーン船1の停泊位置を事前入力し、目標位置船体表示部37として表示することにより、船位置誘導が可能となる。また、簡易なソナー23を採用することにより、レッド測深に比べ、深度計測の定量化が実現できる。
【0071】
GPS装置によるZ軸方向の情報と、クレーン船1の船舶緒元より、クレーン船1の船底高さが常時表示されるため、座礁防止対策が可能となる。
【0072】
このように本実施例では、請求項1に対応して、水底の施工領域の高さを管理する水底施工領域の高さ管理装置において、既知点に設置された固定GPSを有する基地局10と、
積載した捨石を投入手段により水中に投入して水底に捨石マウンドを形成するクレーン船1に配置された移動GPSを有する移動局20と、クレーン船1の搭乗者9と共に移動し移動GPSを有する移動局20Aと、衛星からのGPS信号を固定GPSと移動GPSとで受信することによりクレーン船1及び搭乗者9の測位値を得るGPS装置と、搭乗者9が携帯し水深を測定するソナー23と、
搭乗者9が携帯する携帯端末26と、ソナー23の測定により施工領域の水深を表示する表示手段22と、を
用い、表示手段22は、水底の施工領域を升目33により区画した区画表示部34を備え、この区画表示部34に施工の進捗状況を表示し、表示手段22は、クレーン船1及び携帯端末26に設けられ、ソナー23は浮体を備え、水面121に浮き、支持杆24の先端に索条25を設け、この索条25の下端にソナー23が連結され、搭乗者9は支持杆24の基端側を把持し、搭乗者9が支持杆24を水平でクレーン船1の長さ方向に対して直交方向に保持した状態で、水面121に浮いたソナー23により水深を測定すると共に、GPS装置による搭乗者9の測位値と、搭乗者9が支持杆24を把持した位置から先端までの長さのデータとからソナー32の測定位置を算出するから、GPS装置により搭乗者9の測位値が得られ、この搭乗者9がソナー23を使って水深を測定することにより、水深と測定位置とが得られ、水底の高さを位置と共に正確に管理することができる。
【0073】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、作業船は、積載した捨石を投入手段たるバケット6により水中に投入して水底に捨石マウンド122を形成するクレーン船1であるから、捨石マウンド122の高さを位置と共に正確に管理することができ、確実な投入指示や投入作業を実施することができる。
【0074】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、表示手段22は、水底の施工領域を升目33により区画した区画表示部34を備え、この区画表示部34に施工の進捗状況を表示するから、区画表示部34の升目33に表示された施工回数や深度などの進捗状況により、各升目33の進捗状況を確認して施工管理を効率よく行うことができる。
【0075】
このように本実施例では、請求項
2に対応して、表示手段22は、区画表示部34と、現在
のクレーン船1の位置を示す現在位置船体表示部35と、前記作業船の目標位置を示す目標位置船体表示部37とを同時に表示するから、クレーン船1の停泊位置として目標位置船体表示部37を設定し、クレーン船1を停泊位置に誘導することができる。
【0076】
次に、実施例上の効果として、搭乗者9が移動局20の機器を背負って携帯するから、移動局20の携帯が容易となる。また、区画表示部34の升目33にはそれぞれの位置を示す升目位置表示33Aが設けられているから、投入指示を出す升目33を選択してその升目位置表示33Aを投入升目位置表示部39に表示することができる。また、選択した升目33に投入升目表示39Hが表示されるから、投入する升目33の位置の確認が容易となる。また、現在のバケット6の位置から投入指示が出た升目33の中央までの位置(投入指示位置)までを案内する案内表示部41が設けられているから、バケット6の移動方向と移動量を把握することができ、クレーン操作の補助となる。また、バケット6が投入指示の升目33に位置合わせされると、投入升目位置表示部39の表示が変わり、具体的には色や模様などの表示が変わり、バケット6が位置合わせされたことを直感的に知ることができる。また、クレーンアーム4に磁力により取り付けた移動GPSのGPSアンテナ17の平面位置とバケット6の中心の平面位置との位置ずれを設定するオフセット表示部66が設けられているから、クレーンアーム4の先端形状によりGPSアンテナ17のバケット6の中心の平面位置に取り付けることができない場合、オフセット表示部66は、前記位置のずれをX軸方向とY方向とでそれぞれ数値で入力することにより設定表示し、管理パソコン21が記憶して補正し、その位置を正しく算出することができる。また、升目数表示部102は升目33の数によりソナー23による計測範囲を設定可能であるから、水深を効率よく測定することができる。
【0077】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、GPSにはリアルタイムキネマティックGPSを用いることができる。また、進捗状況を示す表示は、色又は模様,色と模様の組み合わせでもよい。