特許第6386989号(P6386989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386989制御手段及びこれを備えた車載プログラムの書き換え装置並びに車載プログラムの書き換え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386989
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】制御手段及びこれを備えた車載プログラムの書き換え装置並びに車載プログラムの書き換え方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20180827BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180827BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G06F8/65
   B60R16/02 660U
   E02F9/20 M
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-220245(P2015-220245)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-139399(P2016-139399A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-11470(P2015-11470)
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 和宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 利彦
【審査官】 多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−235652(JP,A)
【文献】 特開2007−011734(JP,A)
【文献】 特開2002−144983(JP,A)
【文献】 特開2006−127252(JP,A)
【文献】 特開2014−168219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65−8/658
B60R 16/02
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された制御手段であって、
(i) 上記車両の外部に配置されたサーバから外部通信手段を介して送信された情報を受け取る通信領域と、車載プログラムに基づく上記車両の通常制御を行うとともに上記車両による作業が停止中であることを示す情報が入力される通常制御領域と、上記通信領域と上記通常制御領域とを通信可能に接続する内部通信手段と、上記通常制御領域に接続された乗降遮断レバーと、を備え、
(ii) 上記通信領域は、上記受信した更新プログラムを保存するデータ保存手段と、上記データ保存手段に保存された更新プログラムを上記通常制御領域からの転送要求に応じて転送する更新プログラム転送手段とを備え、
(iii) 上記通常制御領域は、上記作業が停止中であることを示す情報に基づいて予め設定されたプログラム更新条件が整ったときに更新可能と判定する更新可否判定手段と、上記更新可否判定手段において更新可能と判定されたときに上記通信領域に対し上記更新プログラムの転送を要求する転送要求手段と、上記通信領域から転送された更新プログラムにより車載プログラムを書き換えるプログラム更新手段とを有し、
上記更新可否判定手段は、上記乗降遮断レバーにより作業停止中であることを示す操作が行われたときに更新可能と判定する、制御手段。
【請求項2】
請求項1に記載の制御手段であって、
上記通信領域を有する通信コントローラと、
上記通信コントローラとは別に設けられ、上記通常制御領域を有する通常制御コントローラとを備え、
上記通信コントローラ及び上記通常制御コントローラを上記内部通信手段により結ぶことによって構成されている、制御手段。
【請求項3】
請求項2に記載の制御手段であって、
上記通常制御コントローラは、上記通信コントローラから転送された上記更新プログラムの誤りの有無を検査する一次検査と、書き換え後の上記車載プログラムの誤りの有無を検査する二次検査とを行う検査手段を備えている、制御手段。
【請求項4】
請求項3に記載の制御手段であって、
上記通常制御コントローラは、上記二次検査によって書き換え後の上記車載プログラムの誤りが検出されたときに上記車載プログラムを更新前の車載プログラムに戻す、制御手段。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の制御手段であって、
上記更新可否判定手段は、上記車両に設けられたキースイッチが停止側に操作されたときに更新可能と判定する、制御手段。
【請求項6】
車載プログラムの書き換え装置であって、
請求項1〜5の何れか1項に記載の制御手段と、
上記車両の外部に配置されたサーバと、
上記通常制御領域に接続された、キースイッチ備えている、車載プログラムの書き換え装置。
【請求項7】
車載プログラムの書き換え方法であって、
車両の外部から送信された情報を受け取る通信領域と、上記車両の通常制御を行うとともに上記車両による作業が停止中であることを示す情報が入力される通常制御領域と、上記通信領域と上記通常制御領域とを通信可能に接続する内部通信手段と、上記通常制御領域に接続された乗降遮断レバーと、を有するとともに上記車両に設けられた制御手段を準備し、
上記車両の外部に設置されたサーバから外部通信手段を介して送信される更新プログラムを上記制御手段の通信領域に保存し、
上記通常制御領域において上記作業が停止中であることを示す情報に基づいて予め設定されたプログラム更新条件が整ったときに更新可能と判断して上記通信領域に対し上記更新プログラムの転送を要求し、上記保存された更新プログラムを上記通信領域から上記通常制御領域に転送して当該更新プログラムにより車載プログラムを書き換えるものであり、
上記乗降遮断レバーにより作業停止中であることを示す操作が行われたときに更新可能と判定する、車載プログラムの書き換え方法。
【請求項8】
請求項7に記載の車載プログラムの書き換え方法であって、
上記制御手段を準備する際には、キースイッチ上記通常制御領域に接続された上記制御手段を準備する、車載プログラムの書き換え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル等の建設機械において、作業時の各種制御や累積稼働時間等の車両情報の収集、外部とのデータの授受、その他を行うための車載プログラムを更新する制御手段及びこれを備えた車載プログラムの書き換え装置並びに車載プログラムの書き換え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部のサーバと外部通信手段によってつながった建設機械において、車載プログラムをバージョンアップ等のために新たなプログラムに書き換える方法として、従来、特許文献1に示された方法が知られている。この方法では、サーバからの書き換え指令に基づいて車載コントローラで書き換えモードが選択されたときに、更新プログラムを外部のサーバから車載のコントローラに外部通信手段を介して送信し、そのまま当該更新プログラムにより現在のプログラムを書き換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4487007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、上記のようにサーバからのデータ転送及びプログラムの書き換えを車載の制御手段に対して直接かつ連続して行うため、基本的に、更新に要する合計の時間が長くなる。
【0005】
このため、元々通信異常や通信速度の低下が起こり易い「外部通信手段」を長く使うことでハングアップ等が起こり、更新を完遂できない事態が発生し易い。
【0006】
また、プログラムの更新に要する時間、すなわち更新を待って作業できない時間が長くなるため、作業効率が悪くなる。
【0007】
しかも、特許文献1に記載の方法では、設定時間内で書き換えが終了しない場合に、更新を中止して現在のプログラムに戻すこととしている。そのため、現在のプログラムに戻すための設定時間の経過を待つ分、拘束時間がさらに延びて作業効率が益々悪くなる。
【0008】
本発明の目的は、プログラムの書き換えを短時間で確実に遂行して作業効率を向上させることができる車載プログラムの書き換え装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載された制御手段であって、(i) 上記車両の外部に配置されたサーバから外部通信手段を介して送信された情報を受け取る通信領域と、車載プログラムに基づく上記車両の通常制御を行うとともに上記車両による作業が停止中であることを示す情報が入力される通常制御領域と、上記通信領域と上記通常制御領域とを通信可能に接続する内部通信手段と、上記通常制御領域に接続された乗降遮断レバーと、を備え、(ii) 上記通信領域は、上記受信した更新プログラムを保存するデータ保存手段と、上記データ保存手段に保存された更新プログラムを上記通常制御領域からの転送要求に応じて転送する更新プログラム転送手段とを備え、(iii) 上記通常制御領域は、上記作業が停止中であることを示す情報に基づいて予め設定されたプログラム更新条件が整ったときに更新可能と判定する更新可否判定手段と、上記更新可否判定手段において更新可能と判定されたときに上記通信領域に対し上記更新プログラムの転送を要求する転送要求手段と、上記通信領域から転送された更新プログラムにより車載プログラムを書き換えるプログラム更新手段とを有し、上記更新可否判定手段は、上記乗降遮断レバーにより作業停止中であることを示す操作が行われたときに更新可能と判定する、制御手段を提供する。
【0010】
また、本発明は、車載プログラムの書き換え方法であって、車両の外部から送信された情報を受け取る通信領域と、上記車両の通常制御を行うとともに上記車両による作業が停止中であることを示す情報が入力される通常制御領域と、上記通信領域と上記通常制御領域とを通信可能に接続する内部通信手段と、上記通常制御領域に接続された乗降遮断レバーと、を有するとともに上記車両に設けられた制御手段を準備し、上記車両の外部に設置されたサーバから外部通信手段を介して送信される更新プログラムを上記制御手段の通信領域に保存し、上記通常制御領域において上記作業が停止中であることを示す情報に基づいて予め設定されたプログラム更新条件が整ったときに更新可能と判断して上記通信領域に対し上記更新プログラムの転送を要求し、上記保存された更新プログラムを上記通信領域から上記通常制御領域に転送して当該更新プログラムにより車載プログラムを書き換えるものであり、上記乗降遮断レバーにより作業停止中であることを示す操作が行われたときに更新可能と判定する、車載プログラムの書き換え方法を提供する。
【0011】
上記制御手段及び車載プログラムの書き換え方法によれば、車両に搭載され、通信領域と通常制御領域とを有する制御手段を用いて、外部のサーバから車両へのデータ(更新プログラム)の転送と保存を通信領域で行う。そして、通常制御領域において予め設定されたプログラム更新条件が整ったとして更新可能と判定されたとき(例えば、車両のキースイッチが停止側に操作されたとき)に、通信領域に保存された更新プログラムを通常制御領域に転送し、かつ、車載プログラムを書き換える。そのため、外部通信手段によるサーバからのデータ転送は作業中にも行うことができる。
【0012】
従って、作業の停止時間は、通信安定性の良い内部通信手段による、通信領域から通常制御領域へのデータ転送と車載プログラムの書き換えに要する時間だけですむ。そのため、車載プログラム書き換えを短時間で確実に遂行することができる。
【0013】
また、制御手段を通信領域と通常制御領域とに分け、内部通信手段によって両領域間の通信が行われる。そのため、通信領域でサーバから更新プログラムを受信している間、通常制御領域で通常の作業を更新プログラムの受信の影響を受けることなく行うことができる。
【0014】
上記制御手段において、上記通信領域を有する通信コントローラと、上記通信コントローラとは別に設けられ、上記通常制御領域を有する通常制御コントローラとを備え、上記通信コントローラ及び上記通常制御コントローラを上記内部通信手段により結ぶことによって構成されていることが好ましい。
【0015】
こうすれば、両コントローラを適宜の位置に分けて別々に設置することができるため、制御手段の搭載性が良いものとなる。
【0016】
また上記制御手段において、上記通常制御コントローラは、上記通信コントローラから転送された上記更新プログラムの誤りの有無を検査する一次検査と、書き換え後の上記車載プログラムの誤りの有無を検査する二次検査とを行う検査手段を備えていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、二次に亘るチェック機能によりデータのやり取り過程で生じるデータの破損等をチェックし、車両の制御の不具合の発生を防止して機械を保護することができる。
【0018】
この場合、上記通常制御コントローラは、上記二次検査によって書き換え後の上記車載プログラムの誤りが検出されたときに上記車載プログラムを更新前の車載プログラムに戻すことが好ましい。
【0019】
このように、更新後の車載プログラムを更新前の車載プログラムに戻すことにより、誤った車載プログラムによる車両の制御の不具合を防止しつつ、更新前のレベルでの運転を継続することができる。
【0020】
さらに、本発明は、車載プログラムの書き換え装置であって、上記制御手段と、上記車両の外部に配置されたサーバと、上記通常制御領域に接続された、キースイッチ備えている、車載プログラムの書き換え装置を提供する。
【0021】
また、上記車載プログラムの書き換え装置において、上記制御手段を準備する際には、キースイッチ上記通常制御領域に接続された上記制御手段を準備することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、プログラムの書き換えを短時間で確実に遂行して作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
図2】実施形態における通信コントローラの処理内容を説明するためのフローチャートである。
図3】実施形態における通常制御コントローラの処理内容を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0025】
図1は、実施形態に係る車載プログラム書き換え装置のシステム構成を示す。
【0026】
この装置は、一点鎖線を挟んで左側に示す、ショベル等の車両の外側に設けられた設備であるサーバ1と、右側に示す、車両に搭載された設備である制御手段(符号省略)と、を備えている。
【0027】
サーバ1は、車両に設けられた車載プログラムのバージョンアップ等のための更新プログラムを外部通信手段(例えば、携帯電話通信網。以下、この場合で説明する)Nを通じて通信コントローラ2に送る更新プログラム送信手段4を有する。
【0028】
制御手段は、サーバ1から外部通信手段Nを介して送信された情報を受け取る通信領域を有する通信コントローラ2と、通信コントローラ2とは別に設けられ、車載プログラムに基づく車両の通常制御を行う通常制御領域を有する通常制御コントローラ3と、通信領域(通信コントローラ2)と通常制御領域(通常制御コントローラ3)とを通信可能に接続する通信線(内部通信手段)7と、を備えている。
【0029】
通信コントローラ2は、サーバ1から受信した更新プログラムを保存する受信データ保存手段5と、受信データ保存手段5に保存された更新プログラムを通常制御コントローラ3からの転送要求に応じて転送する更新プログラム転送手段6とを有する。
【0030】
通信線7は、CAN(Controller Area Network)通信によるデータの授受が可能となるように通信コントローラ2と通常制御コントローラ3とを接続する。
【0031】
通常制御コントローラ3は、通常制御、例えば車両がショベルである場合における油圧ポンプの制御及びその他の作業のための制御を行う通常制御処理手段8と、通信コントローラ2に更新プログラムの転送を要求する更新プログラム転送要求手段9と、通信コントローラ2から転送された更新プログラムを記憶するとともにこの記憶された更新プログラムにより現在の車載プログラムを書き換えるプログラム記憶/更新手段10と、このプログラムの記憶/更新に際してデータに誤りが無いかどうかをチェックする検査手段11と、更新の可否を判定する更新可否判定手段12とを備えている。
【0032】
検査手段11は、予め数値化されたデータの合計値を照合するチェックサムを、受信データに対するものと、書き換え後のデータに対するものの二段階に亘って行う。
【0033】
すなわち、検査手段11は、通信コントローラ2から転送された更新プログラムの誤りの有無を検査する一次検査と、書き換え後の車載プログラムの誤りの有無を検査する二次検査とを行う。そして、通常制御コントローラ3は、一次検査において誤りがある場合には車載プログラムの書き換えを行わず、二次検査において誤りがある場合には更新後の車載プログラムを更新前(現在)の車載プログラムに戻す(後述)。
【0034】
更新可否判定手段12は、予め設定されたプログラム更新条件が整ったときに更新可能と判定する。具体的に、更新可否判定手段12は、図示しないエンジンの始動/停止を行うためのキースイッチ13が停止側に操作されたとき、つまり、作業が停止されたときに、プログラム更新条件が整ったと判定する。これにより、プログラム更新処理が開始される。
【0035】
具体的に、更新プログラム転送要求手段9は、更新可否判定手段12において更新可能と判定されたときに通信コントローラ2に対し更新プログラムの転送を要求する。
【0036】
この点の作用を図2,3のフローチャートによって説明する。
【0037】
図2は、バージョンアップ等のための車載プログラムの更新の必要が生じてサーバ1から更新プログラムが送信されるときに通信コントローラ2により実行される処理を示す。図3は、通信コントローラ2での処理に応じて通常制御コントローラ3で実行される処理を示す。
【0038】
まず、図2に示す処理が開始されると、ステップS1においてサーバ1から更新プログラムが送信されたか否かが判断され、YESの場合にはステップS2において更新プログラムを受信して保存する。
【0039】
続くステップS3では、通常制御コントローラ3から更新プログラムの転送要求があったか否かが判断され、YES(要求有り)の場合はステップS4が実行され、NO(要求無し)の場合はステップS3を繰り返す。
【0040】
上記ステップS3において転送要求があった場合、ステップS4において更新プログラムを通常制御コントローラ3に転送して通信コントローラ2での処理が終了する。
【0041】
これに対し、通常制御コントローラ3では、図3に示すステップS11〜S18の処理を行う。
【0042】
まず、ステップS11において、図1中のキースイッチ13が停止側に操作されたか否か(作業中でないかどうか=プログラム更新が可能な状態か否か)を判定する。
【0043】
ステップS11でNO(キースイッチ13がオン)の場合は作業中であるため更新不可としてステップS11を繰り返す。
【0044】
ステップS11でYES(キースイッチ13がオフ)の場合はステップS12において、更新プログラム転送要求手段9により通信コントローラ2に対して更新プログラムの転送を要求する(この転送要求を受けて通信コントローラ2から通常制御コントローラ3に更新プログラムが転送される)。
【0045】
続くステップS13で更新プログラムの受信が完了したか否かが判断され、NOの場合はステップS12に戻る。
【0046】
ステップS13でYESの場合にはステップS14において受信後のチェックサムの確認結果(検査手段11による一次検査の結果)が正常か否かの判断が行われる。
【0047】
ここでYES(異常無し)となると、ステップS15においてプログラム記憶/更新手段10による更新プログラムの書き換えが行われる。
【0048】
この後、ステップS16において検査手段11による二次検査である書き換え後の車載プログラムに対するチェックサムの確認結果が正常か否かの判断が行われる。ステップS16で正常(YES)の場合はステップS18で電源を落として書き換え処理が終了する。
【0049】
これに対し、ステップS14でNO、つまり、一次検査の結果が異常であった場合は、プログラム更新を行わずに直接ステップS18で電源が落とされる。
【0050】
一方、ステップS16でNO、つまり、二次検査の結果が異常であった場合は、ステップS17が実行される。ステップS17では、プログラムの更新を無効とし、書き換え後の車載プログラムをプログラム記憶/更新手段10の記憶域に記憶されている更新前の車載プログラムに戻す。その後、ステップS18で電源が落とされる。
【0051】
このように、車両に搭載され、通信領域を有する通信コントローラ2と通常制御領域を有する通常制御コントローラ3とを備えた制御手段を用いて、外部のサーバ1から車両へのデータ(更新プログラム)の転送と保存を通信コントローラ2で行う。そして、通常制御コントローラ3において更新可能と判定されたとき(キースイッチ13が停止操作されたとき)に、通信コントローラ2に保存された更新プログラムを通常制御コントローラ3に転送し、かつ、車載プログラムを書き換える。そのため、外部通信手段である携帯電話通信網Nによるサーバ1からのデータ転送は作業中にも行うことができる。
【0052】
従って、作業の停止時間は、通信安定性の良い通信線(内部通信手段)7におけるCAN通信による通信コントローラ2から通常制御コントローラ3へのデータ転送と車載プログラムの書き換えに要する時間だけですむ。そのため、車載プログラム書き換えを短時間で確実に遂行することができる。
【0053】
また、通信領域と通常制御領域をそれぞれ別々のコントローラ2,3で構成し、通信線(内部通信手段)7によって両コントローラ2,3間のデータの授受をCAN通信で行う。そのため、通信コントローラ2でサーバ1から更新プログラムを受信している間、通常制御コントローラ3で通常の作業を更新プログラムの受信の影響を受けることなく行うことができる。また、データの転送速度を早くして書き換え時間をより短縮できるとともに、その分、車載バッテリの消耗を低減することができる。
【0054】
両コントローラ2、3を適宜の位置に分けて別々に設置することができるため、制御手段の搭載性が良いものとなる。
【0055】
さらに、検査手段11により、更新プログラムの転送時と車載プログラムの書き換え後の二次に亘ってデータの正誤のチェックサム検査を行うため、車両の制御の不具合の発生を防止して機械を保護することができる。
【0056】
この場合、上記二次検査によって書き換え後の車載プログラムの誤りが検出されたときに更新後の車載プログラムを更新前の車載プログラムに戻すため、誤った車載プログラムによる車両の制御の不具合を防止しつつ、更新前のレベルでの運転を継続することができる。
【0057】
他の実施形態
(1)上記実施形態では、車両に設けられた通信領域及び通常制御領域が別々のコントローラ(通信、通常制御両コントローラ)2、3によって構成されているが、車両に設けられた一つのコントローラに両領域が設けられていてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態ではキースイッチ13の操作に基づいて更新可否判定手段12がプログラムの更新の可否を判定しているが、プログラムの更新の可否を判定する根拠はこれに限定されない。例えば、ショベルにおいてオペレータの乗降口に設置される乗降遮断レバーの操作(オペレータが退出したこと=作業停止中であることを示す操作)や、専用のスイッチ、またはこれらを含む複数種類の操作の組み合わせを車載プログラムの更新の可否を判定するための根拠とすることもできる。
【0059】
(3)上記実施形態では、検査手段11において、予め数値化されたデータの合計値を照合するチェックサムを行う場合を例示したが、他の検査方式、たとえば巡回冗長検査(Cyclic Redundancy CHECK=CRC)を用いることもできる。
【0060】
(4)通信コントローラ2と通常制御コントローラ3との間のデータの授受は、上記実施形態で挙げたCAN(Controller Area Network)通信に限らず、フレックスレイ(Flex Ray)等の他の通信方式、規格によって行うこともできる。
【符号の説明】
【0061】
N 外部通信手段としての携帯電話通信網
1 サーバ
2 通信コントローラ
3 通常制御コントローラ
4 更新プログラム送信手段
5 受信データ保存手段
6 更新プログラム転送手段
7 CAN通信用の通信線
8 通常制御処理手段
9 更新プログラム転送要求手段
10 更新手段
11 検査手段
12 更新可否判定手段
13 キースイッチ
図1
図2
図3