(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386990
(24)【登録日】2018年8月17日
    
      
        (45)【発行日】2018年9月5日
      
    (54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D  29/44        20060101AFI20180827BHJP        
   F04D  29/66        20060101ALI20180827BHJP        
【FI】
   F04D29/44 Y
   F04D29/44 T
   F04D29/66 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2015-231582(P2015-231582)
(22)【出願日】2015年11月27日
    
      (65)【公開番号】特開2017-96224(P2017-96224A)
(43)【公開日】2017年6月1日
    【審査請求日】2017年4月6日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成  幹生
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】盧  波
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】松原  真朗
              
            
        
      
    
      【審査官】
        岸  智章
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開昭60−233398(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭51−090009(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2011−001939(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平09−242699(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2014/0301828(US,A1)    
        
        【文献】
          特開昭62−243999(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D    29/44,29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  上ケーシングと下ケーシングの間にインペラが回転可能な状態で保持された構造を有し、
  前記インペラは、環状のシュラウドと、主板と、前記シュラウドと前記主板の間に配置された複数の羽根とから構成され、
  前記下ケーシングは、金属製のモータベースと樹脂製のベースプレートとを軸方向に重ねて構成され、
  前記上ケーシングには、吸い込み口が設けられ、
  前記上ケーシングの外周端の下面と前記ベースプレートの外周端の上面との間には、前記インペラによって生じる気流を径外側の方向に吹き出す吹き出し口が設けられ、
  前記吹き出し口は、水平方向から軸方向下方の方向に向いており、
  前記上ケーシングの外周端の下面は、径外側に行くに従って前記下ケーシングの方向に曲がった曲面に形成され、
  前記下ケーシングの前記ベースプレートの外周端の上面は、径外側に行くに従って前記上ケーシングから離れる方向に曲がった曲面に形成され、
  前記モータベースの外周端は、前記ベースプレートの前記外周端の前記曲面の箇所に形成された軸方向に延在した形状のエッジカバー部によって覆われていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
  前記ベースプレートは開口を有し、該開口と前記モータベースとにより段差部が形成され、該段差部に前記インペラの前記主板の外周側が位置することで、前記主板の前記外周側の下面が前記モータベースに対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
  前記モータベースはリード線取り出し口を備え、前記リード線取り出し口に前記ベースプレートに設けられたリード線取り出し口カバー部が嵌合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は遠心ファンに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケーシングが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラを収納し、インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
  図7は、特許文献1に記載の遠心ファン100で、四角形のケーシング120が上ケーシング121と下ケーシング122からなり、上ケーシング121と下ケーシング122の間にインペラ130を収納している。インペラ130は環状のシュラウド131を備えている。環状のシュラウド131は中央に円筒部132を有し、円筒部132から環状のシュラウド131の外周部では上ケーシング121に向かって反りかえり、環状のシュラウド131の円筒部132の端から環状のシュラウド131の外周部まで上面形状は曲率半径の異なった4つの円弧をつなげた形状の曲面にて形成され、環状のシュラウド131の外周部までの空気流路の断面積が漸増する構成としている。これによって空気の圧力が増加されてインペラ130の外周部から外方に気流が吹き出される。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−207600号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  図7の構造において、インペラ130の高速回転により、吸い込み口110から吸い込まれた空気は、羽根135の間を通過してインペラ130の外周から外方に吹き出され、上ケーシング121と下ケーシング122の間の側面に形成された吹き出し口111から外方に向けて排出される。しかしながら、この構造の遠心ファン100は、環状のシュラウド131の外周部では上ケーシング121に向かって反りかえった形状を有しているため、インペラ130の外周から吹き出された空気の一部が、環状のシュラウド131と上ケーシング121との間の隙間125から吸い込み口110に向かって逆流する虞がある。この逆流が生じると、逆流した空気によって吸い込み口110付近で空気の流れに乱れが生じ、騒音の原因となる。
【0006】
  本発明は、遠心ファンにおいて、インペラから吹き出された空気の一部が逆流することを抑制して騒音を低減できる遠心ファンを提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  請求項1に記載の発明は、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラが回転可能な状態で保持された構造を有し、
前記インペラは、環状のシュラウドと、主板と、前記シュラウドと前記主板の間に配置された複数の羽根とから構成され、前記下ケーシングは、金属製のモータベースと樹脂製のベースプレートとを軸方向に重ねて構成され、前記上ケーシングには、吸い込み口が設けられ、前記上ケーシングの外周端の下面と前記ベースプレートの外周端の上面との間には、前記インペラによって生じる気流を径外側の方向に吹き出す吹き出し口が設けられ、前記吹き出し口は、水平方向から軸方向下方の方向に向いており、
前記上ケーシングの外周端の下面は、径外側に行くに従って前記下ケーシングの方向に曲がった曲面に形成され、前記下ケーシングの前記ベースプレートの外周端の上面は、径外側に行くに従って前記上ケーシングから離れる方向に曲がった曲面に形成され、前記モータベースの外周端は、前記ベースプレートの
前記外周端
の前記曲面の箇所に形成された軸方向に延在した形状のエッジカバー部によって覆われていることを特徴とする遠心ファンである。
【0008】
  請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ベースプレートは開口を有し、該開口と前記モータベースとにより段差部が形成され、該段差部に前記インペラの前記主板の外周側が位置することで、前記主板の前記外周側の下面が前記モータベースに対向して配置されていることを特徴とする。
【0009】
  請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記モータベースはリード線取り出し口を備え、前記リード線取り出し口に前記ベースプレートに設けられたリード線取り出し口カバー部が嵌合されていることを特徴とする。
 
【発明の効果】
【0010】
  本発明によれば、遠心ファンにおいて、インペラから吹き出された空気の一部が逆流することを抑制して騒音を低減できる遠心ファンが提供される。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】本発明の遠心ファンにおける吹き出し口から吹き出される空気の流れを示す説明図である。
 
【
図5】
図1に示す遠心ファンの下ケーシングの組立状況を示す斜視図である。
 
【
図6】
図5に示す下ケーシングの底面を示す斜視図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)遠心ファンの基本構造について
  
図1および
図2には、遠心ファン1が示されている。遠心ファン1の基本構造は、特許文献1に記載された構造と略同じである。遠心ファン1は、ケーシング2を備えている。ケーシング2は、上ケーシング3と下ケーシング4から構成され、上ケーシング3と下ケーシング4の間にインペラ8が回転自在な状態で収納されている。インペラ8の回転に伴って吸い込み口35から軸方向(
図1〜3の下の方向)に吸入した空気は羽根10の間を通過して上ケーシング3と下ケーシング4の間に介装された支柱7を除いた側面に形成された吹き出し口36からケーシング2の外方(径外方向)に向けて排出される。
 
【0013】
  インペラ8は、アウターロータ型のブラシレスDCモータであるモータ21によって駆動され回転する。モータ21は、モータベース5に形成した凹部5aの底面に装着されている。モータ21の下インシュレータ24bには、モータ21を駆動するための電子回路が搭載された回路基板30が装着されている。回路基板30および回路基板30上の電子部品31も凹部5aの中に収納されている。
 
【0014】
  モータ21は、ステータ22を備えている。ステータ22は、コアを所定枚数、積層してなるステータコア23と、ステータコア23の軸方向両側から装着された上インシュレータ24aと下インシュレータ24bからなる樹脂製のインシュレータ24と、インシュレータ24を介してステータコア23のティースに巻回されたコイル25とから構成されている。コアは、環状ヨークから径外方に延在する複数のティース(この例では6個のティースを有している)を備えており、このコアを積層させてステータコア23が構成されている。
 
【0015】
  ステータ22は、軸受保持部26の外側に配設されている。すなわち、軸受保持部26をステータコア23の中央に形成された開口に嵌合させることで、軸受保持部26の外側にステータ22が配設されている。軸受保持部26の内側には軸受27、28が装着され、軸受27、28はシャフト16を回転可能な状態で支持している。
 
【0016】
  インペラ8の中央には、ロータ15が結合している。ロータ15は、シャフト16と、シャフト16に装着されたボス部17と、ボス部17に装着されたカップ状態のロータヨーク18と、ロータヨーク18の内側に固着された環状のマグネット19とから構成されている。ロータヨーク18はボス部17にカシメ固着されている。
 
【0017】
  インペラ8は、環状のシュラウド9と複数の羽根10と主板11から構成されており、羽根10と主板11は樹脂の一体成形にて形成されている。羽根10は、主板11から軸方向に立設し、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有し、回転方向に対して後向き羽根(いわゆる、ターボ型)である。羽根10は全て同じ形状である。羽根10と環状のシュラウド9とは超音波溶着にて接合されている。
 
【0018】
  インペラ8の主板11は、内周側と外周側との間に傾斜面11aを有している。つまり、インペラ8の内周側は軸方向上方に位置し、インペラ8の外周側は軸方向下方に位置し、この内周側と外周側との間に傾斜面11aが設けられている。
 
【0019】
  インペラ8とロータ15とは以下のようにして結合されている。まず、環状のフランジ20がロータヨーク18の外周面に、例えば抵抗溶接によって溶着されている。他方で、主板11の内周側の下面には一体成形にて形成したピン(図示省略)が設けられ、このピンをフランジ20に形成した貫通穴に嵌合させ、ピンの先端を熱で潰して熱カシメすることで両者が結合され、ロータヨーク18に主板11が固定されている。こうして、ロータ15にインペラ8が装着されている。
 
【0020】
  上ケーシング3の上面側には複数の凹部3a(肉盗み部分)が形成されており、上ケーシング3の外周には径外方に延在するフランジ部40が形成され、フランジ部40には軸方向下方に突出する支柱7が一体に形成されている。上ケーシング3とフランジ部40と支柱7は樹脂の射出成型により一体に成形されている。上ケーシング3と下ケーシング4の結合は、上ケーシング3と下ケーシング4の間に支柱7を介装し、支柱7をねじ等の締結材で締結することで行われている。この例では、上ケーシング3と下ケーシング4との結合は、支柱7に形成した下穴に貫通穴5e、6eを貫通させたタッピンねじ29を締め付けることで行われている。なお、締結手段はこれに限定されない。例えば、下ケーシング4側からねじ(またはボルト)を支柱7の貫通穴に挿通し、上ケーシング3側からナットで固定する構成であってもよい。
 
【0021】
  下ケーシング4は、金属製(例えば、鉄板)のモータベース5と、樹脂製のベースプレート6とから構成されており、両者を重ね合わせて下ケーシング4が形成されている。ベースプレート6の外周端には下方に延在するエッジカバー部6aが形成されており、このエッジカバー部6aの内側にモータベース5の外周端が当接する。
 
【0022】
  以上述べたように、遠心ファン1は、上ケーシング3と下ケーシング4の間にインペラ8が回転可能な状態で保持された構造を有し、下ケーシング4はモータベース5とベースプレート6とから構成され、上ケーシング3の外周端の下面3bは、断面が円弧状の曲面に形成されており、ベースプレート6の外周端の上面6bは、断面が円弧状の曲面に形成されており、上ケーシング3の外周端の前記下面3bとベースプレート6の外周端の上面6bとの間には、インペラ8によって生じる気流を径外側の方向に吹き出す吹き出し口36が設けられ、モータベース5の外周端は、ベースプレート6の外周端の円弧状の曲面に形成された部分(符号6bの部分)の先(縁に向かう側)にあり、軸方向に延在した形状のエッジカバー部6aによって覆われている。
 
【0023】
  ここで、上ケーシング3の外周端の下面3bは、径外側に行くに従って下ケーシング4の方向に曲がった曲面に形成され、下ケーシング4のベースプレート6の外周端の上面6bは、径外側に行くに従って上ケーシング3から離れる方向に曲がった曲面に形成されている。この構造によれば、径外側に向う気流が
図4の下の方向に向くように強制され、符号37で示される流路で吹き出される。
 
【0024】
(2)発明の特徴について
(2)−1.騒音の低減について
  上ケーシング3および下ケーシング4のベースプレート6の外径は、インペラ8の外径よりも大きい。
図4に示すように、上ケーシング3の外周端の下面3bは、断面が円弧状の曲面に形成されている。また、下ケーシング4のベースプレート6の外周端の上面6bは、断面が円弧状の曲面に形成されている。このため、インペラ8の外周端から径外側の方向に吹き出された空気は、上ケーシング3と下ケーシング4のベースプレート6との間に形成された吹き出し口36となる空間からケーシング2の外方に吹き出される際、吹き出される方向が軸方向下方に吹き出され、その後、少し上方に向きを変え、水平方向に吹き出される。
図4には、この際の気流の流れが符号37として示されている。このように、吹き出し口36が水平方向と下方向(上ケーシング3から下ケーシング4に向かう方向)との間の方向に向いており、吹き出し口36から吹き出される方向が軸方向下方になるため、上ケーシング3と環状シュラウド9との間の隙間3cから吸い込み口35の側に逆流する空気を抑制することができる。そしてこの結果、騒音を低減することができる。
 
【0025】
  図
3には、回転軸を含む切断面が示されている。図
3に示すように、環状のシュラウド9の吸い込み口35となる開口を形成する円筒部の上端は、軸方向に延存した環状の突起部9aを構成し、この突起部9aは上ケーシング3の環状溝3dの中に位置している。この構造によれば、上ケーシング3が環状のシュラウド9の円筒部の上端を覆った形状となっている。このため、仮にインペラ8の外周縁からの空気が逆流した場合であっても、この箇所での抵抗によって、吸い込み口35に入り込む逆流を抑制することができる。
 
【0026】
(2)−2.その他
  下ケーシング4を構成する金属製のモータベース5と樹脂製のベースプレート6は別体で形成されている。金属製のモータベース5はプレス加工で形成されるため、切断面にはバリが出る場合がある。手作業でモータベース5を持った際、切断面のバリに触れて指が怪我をする虞があり、作業に支障をきたす場合がある。このため、モータベース5の切断面はベースプレート6に形成されたエッジカバー部6aによって覆われるように構成されている。また、モータベース5のリード線取り出し口5cにベースプレート6に形成されたリード線取り出し口カバー部6cを嵌合させ、リード線取り出し口5cのエッジをリード線取り出し口カバー部6cによって保護している。この結果、モータベース5の切断面のバリがある場合であっても、怪我を防止される。また、リード線(図示省略)の被膜の損傷も防止される。
 
【0027】
  下ケーシング4を構成する金属製のモータベース5と樹脂製のベースプレート6は別体で形成されているが、モータベース5をインサート成形して、ベースプレート6を一体に成形した構成であってもよい。
 
 
【符号の説明】
【0028】
  1…遠心ファン、2…ケーシング、3…上ケーシング、3a…凹部、3b…外周端の下面、3c…隙間、3d…環状溝、4…下ケーシング、5…モータベース、5a…凹部、6…ベースプレート、6a…エッジカバー部、6b…外周端の上面、7…支柱、8…インペラ、9…環状のシュラウド、9a…突起部、10…羽根、11…主板、11a…傾斜面、15…ロータ、16…シャフト、17…ボス部、18…ロータヨーク、19…マグネット、20…フランジ、21…モータ、22…ステータ、23…ステータコア、24…インシュレータ、24a…上インシュレータ、24b…下インシュレータ、25…コイル、26…軸受保持部、27…軸受、28…軸受、30…回路基板、31…電子部品、35…吸い込み口、36…吹き出し口、37…気流の流れ、40…フランジ部。