特許第6387009号(P6387009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387009
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】癌細胞トラップ
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20180827BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20180827BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20180827BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61L31/04 100
   A61L31/12 100
   A61L31/14 300
   A61L31/16
   A61K38/22
   A61P35/00
   A61P35/04
   A61P35/02
【請求項の数】12
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2015-538095(P2015-538095)
(86)(22)【出願日】2013年10月19日
(65)【公表番号】特表2015-534847(P2015-534847A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】US2013065803
(87)【国際公開番号】WO2014063128
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/716,526
(32)【優先日】2012年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】タン,リーピン
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−131577(JP,A)
【文献】 特開2008−274267(JP,A)
【文献】 特表2008−523061(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0159008(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/002401(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/090778(WO,A1)
【文献】 Proc. of SPIE, 2009, Vol.7207, p.72070E-1〜8
【文献】 Proc. of SPIE, 2012 Jan, Vol.8251, p.825105-1〜7
【文献】 Proc. of SPIE, 2011, Vol.7929, p.792905-1〜10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00
A61K 38/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌転移を治療または予防する方法に用いられる癌細胞トラップであって、前記癌細胞トラップが、
i) 微粒子、
ii) ナノ粒子、
iii)足場構造、または
iV) ヒドロゲル、
を含み、
循環癌細胞が前記癌細胞トラップに動員され、前記循環癌細胞が、白血病細胞、黒色腫細胞、前立腺癌細胞および肺癌細胞からなる群から選択され、前記癌細胞トラップが、当該癌細胞トラップから放出されるエリスロポエチン(EPO)を含み、前記EPOは、前記癌細胞トラップ中の前記循環癌細胞の動員及び蓄積を可能にし、
前記癌細胞トラップは、化学療法剤をさらに含み、および/または、前記方法は、前記癌細胞トラップを放射線に暴露することをさらに含み、それによって前記対象の癌転移を治療または予防する、癌細胞トラップ。
【請求項2】
前記癌細胞トラップがヒドロゲルを含む、請求項1に記載の癌細胞トラップ。
【請求項3】
前記癌細胞トラップが足場構造を含む、請求項1に記載の癌細胞トラップ。
【請求項4】
前記足場が分解性ポリマーおよびポリペプチドを含む、請求項3に記載の癌細胞トラップ。
【請求項5】
前記癌細胞トラップが微粒子および/またはナノ粒子を含む、請求項1に記載の癌細胞トラップ。
【請求項6】
前記ヒドロゲルが、1以上のポリマー材料、多糖類、ポリエチレングリコール−ポリアクリル酸貫入ネットワーク(PEG−PAA−IPN)ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、細胞外マトリックスタンパク質、フィブリノーゲン、ヒドロゲル微粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項2に記載の癌細胞トラップ。
【請求項7】
前記足場が、PLGA、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチンおよびそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の癌細胞トラップ。
【請求項8】
前記癌細胞トラップが前記対象に埋め込まれている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の癌細胞トラップ。
【請求項9】
前記癌細胞トラップが前記対象に注入されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の癌細胞トラップ。
【請求項10】
前記対象がヒトである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の癌細胞トラップ。
【請求項11】
前記癌細胞トラップが化学療法剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の癌細胞トラップ。
【請求項12】
癌転移を検出するためのエクスビボの方法であって、前記方法は、転移性癌細胞の存在について請求項1〜11のいずれか1項に記載の癌細胞トラップをアッセイすることを含み、前記癌細胞トラップは、対象に投与されており、前記転移性癌細胞が前記癌細胞トラップに遊走および蓄積されており、それによって前記対象における癌転移を検出する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年10月20日に出願した米国仮出願第61/716,526号(この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
米国連邦政府支援の研究開発の陳述
本発明は、米国立衛生研究所により授与された認可番号RO1、EB007271−01の下、米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明の分野は、一般的に癌の分野に関する。本発明の分野は、癌転移を治療および/または予防するため、かつ癌転移の診断および検出のための癌細胞トラップならびにそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
転移または転移性疾患は、1つの臓器または部分から別の非隣接臓器または部分への疾患の広がりである。転移性疾患は、独特ではないが主に、悪性腫瘍細胞および感染症と関連付けられている(Klein,2008,Science 321(5897):1785−88;Chiang & Massague,2008,New Engl.J.Med.359(26):2814−23)。転移性腫瘍は、癌の後期段階では非常によく見られる。例えば、致死率の高い黒色腫は、身体のほぼ全ての部分に転移する黒色腫細胞の能力によって引き起こされる。異なる臓器への癌転移は、多くの癌の一般的な合併症であり、ヒトの癌死の90%の原因であることに留意すべきである。現在、ステージIIIおよびIVの転移性黒色腫を有する患者は、外科的切除、放射線療法、化学療法、生化学療法、またはそれらの組合せで治療される場合が多い。残念ながら、これらの治療は、深刻な全身性の副作用に関連付けられる場合が多く、実質的に結果を改善しない。
【0005】
転移が生じる最も一般的な場所は、肺、肝臓、脳、および骨である。ある種の腫瘍は、特定の臓器で生じる傾向もある。例えば、前立腺癌は通常、骨に転移する。同様に、結腸癌は、肝臓に転移する傾向がある。胃癌は、女性では卵巣に転移する場合が多い。乳癌細胞は、骨組織に転移する場合が多い。これらの組織選択的転移プロセスは、特定の解剖学的および器質的なルートによるものであることを複数の研究が示唆している。
【0006】
癌転移は、細胞外マトリックスを通る侵入、リンパ管または血管への血管内侵入、循環中の生存、離れた部位への溢出、およびその部位における進行性増殖を含む一連のステップならびに経路に分けることができる。例えば、Chambers,A.F.,A.C.Groom,and LC.MacDonald,Nat Rev Cancer,2002.2(8):p.563−72;Fidler,I.J.,Nat Rev Cancer,2003.3(6):p.453−8;およびFolkman,J.,Semin Cancer Biol,1992.3(2):p.65−71を参照されたい。
【0007】
集中的な研究努力にもかかわらず、癌転移の詳細なメカニズムは完全には理解されていない。制御可能な方法で癌転移の程度を定量するために使用できる動物モデルの欠如が、少なくとも部分的にこの欠陥の原因である。いくつかのインビトロモデルおよびインビボモデルが、癌転移を評価するために過去に使用されてきた。転移のほとんどの研究は、腫瘍異種移植片を有するげっ歯類で行われてきた。例えば、Welch DR.Clin Exp Metastasis 1997;15:272−306;Gupta GP,Perk J,Acharyya S,de Candia P,Mittal V,Todorova−Manova K,et al,Proc Natl Acad Sci USA 2007;104:19506−19511;およびYamamoto M,Kikuchi H,Ohta M,Kawabata T, Hiramatsu Y,Kondo K,et al.Cancer Res 2008;68:9754−9762を参照されたい。
【0008】
自然転移のアッセイにおいて、腫瘍細胞が、部位、好ましくは同所性の位置に注入される。その後、原発性腫瘍が生じて転移が起こることを、通し時間で監視する。このアッセイは完全な転移プロセスを測定するが、この方法は通常、定性的であり、時間がかかる。例えば、Cespedes MV,Casanova I,Parreno M,Mangues R.Clin Transl Oncol 2006;8:318−329;およびTalmadge JE,Singh RK,Fidler IJ,Raz A.Am J Pathol 2007;170:793−804を参照されたい。
【0009】
転移の評価は、血流中への腫瘍細胞の注入後に、重要な臓器における腫瘍増殖を定量することによっても行われてきた。この方法は、転移の血管内侵入後のステージに関する情報のみを提供できる。いくつかのトランスジェニックマウス系統を用いて、原発性腫瘍形成および自発的転移が研究されてきたことにも留意すべきである。例えば、Talmadge JE,Singh RK,Fidler IJ,Raz A.Am J Pathol 2007;170:793−804;Khanna C,Hunter K.Carcinogenesis 2005;26:513−523;Schwertfeger KL,Xian W,Kaplan AM,Burnett SH,Cohen DA,Rosen JM.Cancer Res 2006;66:5676−5685;およびTaketo MM,Edelmann W.Gastroenterology 2009;136:780−798を参照されたい。しかし、これらのシステムの重大な欠点は、費用がかかること、予測不可能であること、および汎用性の欠如である。
【0010】
多数の報告が、転移性細胞の元の腫瘍からの脱出および新しい部位への広がりの促進に炎症シグナルが関与していると見なしている。例えば、Lorusso,G.and C.Ruegg,Histochem Cell Biol,2008.130(6):p.1091−103;Lu,H.,W.Ouyang,and C.Huang,Mol Cancer Res,2006.4(4):p.221−33;Marx,J.,Science,2004.306(5698):p.966−8;およびPollard,J.W.,Nat Rev Cancer,2004.4(1):p.71−8を参照されたい。
【0011】
さらに、炎症応答が腫瘍の発生および進行において重要な役割を果たすことを示唆する証拠が増えつつある。例えば、Lorusso,G.and C.Ruegg,Histochem Cell Biol,2008.130(6):p.1091−103;Lu,H.,W.Ouyang,and C.Huang,Mol Cancer Res,2006.4(4):p.221−33;Aggarwal,B.B.,et al,Biochem Pharmacol,2006.72(11):p.1605−21;Arias,J.I.,M.A.Aller,and J.Arias,Mol Cancer,2007.6:p.29;およびMelnikova,V.O.and M.Bar−Eli,Pigment Cell Melanoma Res,2009.22(3):p.257−67を参照されたい。
【0012】
例えば、CXCL12(SDF−1)/CXCR4、CCR7/CCL21、MIP−1a/CCL3、IL−8/CXCL8およびRANTES/CCL5などの炎症性ケモカインは、乳癌、黒色腫、骨髄腫、結腸直腸癌、卵巣癌および肺癌の転移と関連付けられている。Ben−Baruch,A.,Cancer Metastasis Rev,2006.25(3):p.357−71;Gomperts,B.N.and R.M.Strieter,Contrib Microbiol,2006.13:170−90;Kakinuma,T.and S.T.Hwang,J Leukoc Biol,2006.79(4):639−51;Opdenakker,G.and J.Van Damme,.Int J Dev Biol,2004.48(5−6):p.519−27;Shields,J.D.,et al.Oncogene,2007.26(21):p.2997−3005;およびSoria,G.and A.Ben−Baruch,Cancer Lett,2008.267(2):p.271−85。
【0013】
ヒトおよびマウスの腫瘍が、様々な炎症性サイトカイン、CXCケモカインおよびそれらの受容体を分泌することも判明している。Ben−Baruch, A.,Cancer Metastasis Rev,2006.25(3):p.357−71;Germano,G.,P.Allavena,and A.Mantovani,Cytokine,2008.43(3):p.374−9;Luboshits,G.,et al,Cancer Res,1999.59(18):p.4681−7;Mantovani,A.,et al,Immunol Today,1992.13(7):p.265−70;およびNegus,R.P.,et al,J Clin Invest,1995.95(5):p.2391−6。
【0014】
CXCR4およびCCR7などの炎症性ケモカイン受容体は、一般的にヒト乳癌で発現している。Muller,A.,et al,Nature,2001.410(6824):p.50−6。CCL21の遮断は、転移性黒色腫細胞の遊走を減少させることが示されている。Lanati,S.,et al,Cancer Res,2010。
【0015】
これらの結果は、炎症性ケモカインがインビボで癌細胞の遊走を誘発するのに重要な役割を果たしているという考えを支持する。最近の研究は、B16F10黒色腫細胞が非癌性メラノサイトよりも280倍高いヒスタミンを含有し、ヒスタミン放出が黒色腫細胞の遊走および増殖において重要であり得ることを明らかにした。例えば、Davis,S.C.,et al,Inflamm Res,2010;Medina,V.A.and E.S.Rivera,Br J Pharmacol,2010.161(4):p.755−67;およびMedina,V.A.,et al,Free Radie Biol Med,2009.46(11):p.1510−5を参照されたい。
【0016】
さらに、エリスロポエチン(EPO)などの多くの増殖因子は、黒色腫細胞および他の癌細胞の遊走ならびに広がりを促進することが示されている。例えば、Mirmohammadsadegh,A.,et al,J Invest Dermatol,2010.130(1):p.201−10;およびShi,Z.,et al,Mol Cancer Res,2010.8(4):p.615−26を参照されたい。
【0017】
最近のいくつかの出版物は、ナノスフェアを作製して、局所的薬物送達または免疫反応の誘導を介して腫瘍細胞を標的としその後根絶できると主張している。Hara,K.,et al,Oncol Rep,2006.16(6):p.1215−20;Ruoslahti,E.,S.N.Bhatia,and M.J.Sailor,J Cell Biol,2010.188(6):p.759−68;Torchilin,V.P.,Handb Exp Pharmacol,2010(197):p.3−53を参照されたい。
【0018】
転移性癌の早期検出は癌を患っている個体の予後に著しく影響を与え、かつ適切な治療過程を決定できる。一般に、原発性腫瘍が検出された場合、近くの(局所)リンパ節のうちの1以上が除去され、そのリンパ節への癌の広がりについてアッセイされる。リンパ節中の癌細胞の検出(リンパ節転移診断)は、手術範囲を決定するのにまたは術後化学療法を決定するのに有用な情報を提供する。しかし、癌細胞がリンパ節に存在する場合であっても、癌細胞の無い切断面から切片が調製されて、その切片が組織診断に供された場合には、癌細胞は見落とされ得る。その上、診断結果は診断を行う病理医の熟練度に依存して変化し得る。さらに、癌細胞が離れた位置に転移したかまたは転移能を有していても、癌細胞は近くのリンパ節中に存在しない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
癌転移のメカニズムに関する広範な研究にもかかわらず、転移の発生を抑制または防止するための効果的なアプローチは存在しない。患者における転移性腫瘍の発症を効果的に抑制、最小化または予防することが当技術分野で緊急に必要である。転移性癌細胞を検出するための高感度かつ堅牢な方法も当技術分野で必要である。本発明は、これらおよび他の必要性を満たす。
【0020】
前述の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。これは、本明細書に提供される情報の全てが先行技術であるか、現在特許請求されている発明に関連するか、または具体的にもしくは暗黙的に参照される全ての刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一態様において、本発明は、転移性癌細胞が癌細胞トラップに遊走および蓄積する癌細胞トラップを提供する。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、必要に応じて1以上の生物活性剤を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1以上の化学療法剤を含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤および/または生物活性剤が、癌細胞トラップから放出される。
【発明の効果】
【0022】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として製剤化される。
【0023】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、タンパク質、ケモカイン、および増殖因子などの1以上の生物活性剤を放出することが可能である。いくつかの実施形態において、放出は、ある期間にわたって制御される放出または持続される放出であり、経時的に癌細胞トラップにおける癌細胞の動員および蓄積を可能にする。
【0024】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、足場構造、ヒドロゲル、微粒子およびナノ粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはマイクロバブル足場を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは組織の足場である。いくつかの実施形態において、足場は、分解性ポリマーおよびポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、足場は高度に多孔性であり、そこで生物活性剤の放出および細胞の蓄積を可能にする。
【0025】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、インサイツ固化ヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、ポリエチレングリコールベースのインサイツゲル化ヒドロゲルから作製される。
【0026】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、1以上のポリマー材料、多糖類、ポリエチレングリコール−ポリアクリル酸貫入ネットワーク(PEG−PAA−IPN)ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、細胞外マトリックスタンパク質、フィブリノーゲン、ヒドロゲル微粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、足場は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)コポリマー、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチンおよびそれらの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1以上の生物活性タンパク質または分子を含む。いくつかの実施形態において、生物活性タンパク質または分子は、IL−1、IL−4、IL−8、IL−10、IL−13、IL−17、CCL2、CCL5、CCL9、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CCR4、CCR5、CCR7/CCL21、CCR9、CCR10、CCL18、CCL2/MCP−1、MIP−1α/CCL3、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL8、CXCL12/SDF−1α、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR7、エリスロポエチン(EPO)、CCL5/RANTES、肝細胞増殖因子アクチベーター(HGFA)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、CXCL14、プロスタグランジンE2、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
別の態様において、本発明は、癌転移を治療または予防する方法であって、有効量の本発明の癌細胞トラップを、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供し、その際、転移性癌細胞が癌細胞トラップに遊走および蓄積し、それによって対象における転移を治療または予防する。
【0030】
いくつかの実施形態において、癌幹細胞は癌細胞トラップに遊走する。
【0031】
いくつかの実施形態において、癌は、黒色腫、前立腺癌、白血病、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、膠芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿生殖器癌、消化管癌、甲状腺癌および皮膚癌からなる群から選択される。
【0032】
癌細胞トラップは、医療および製薬分野で公知の方法を用いて対象または患者に投与できる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象に注入される。いくつかの実施形態において、対象はヒトなどの哺乳類である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、任意の癌治療と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、治療は、手術、化学療法、および放射線からなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、埋め込まれたまたは注入された癌細胞トラップを放射線治療に供し、それによって癌細胞トラップに遊走した転移性癌細胞を死滅させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、一定期間後に患者から取り出される。
【0035】
別の態様において、本発明は、癌の転移を検出する方法であって、癌細胞トラップを、それを必要とする対象に投与することを含み、その際、転移性癌細胞が癌細胞トラップに遊走および蓄積し、かつ転移性癌細胞の存在について癌細胞トラップをアッセイし、それにより対象における癌転移を検出することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、癌細胞は癌細胞トラップから取り出され評価される。いくつかの実施形態において、細胞はトラップから取り出されるが、トラップは対象にまだ存在している。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象から取り出され、細胞は必要に応じて取り出された後に評価される。
【0036】
本発明の前述の概要および以下の詳細な説明の両方は例示であり、したがって、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0037】
当業者なら、以下で説明する図面が例示のみの目的であることを理解するであろう。図面は、決して本教示の範囲を限定するものであると意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】異物反応が腫瘍細胞の遊走を誘発する。1日たった既存の皮下インプラントが、CD11b炎症細胞(A、左)および腹腔内に移植されたB16F10黒色腫細胞(A、右)の移行を誘引することが判明した。癌細胞遊走における炎症性シグナルの影響を決定するために、様々な程度の炎症性刺激強度で実験のタイムテーブルにより6時間〜2週間刺激した(B)。多数のCD11b炎症細胞が12時間で埋め込み部位に動員され、その後、炎症細胞の流入は減速したことが判明した。これらの結果は、生体材料媒介性炎症反応の異なるステージを示す(C)。炎症反応のステージも、黒色腫細胞動員の程度に影響を与える(D)。埋め込み領域における黒色腫細胞の蓄積は、ミクロスフェア埋め込み後約24時間あたりでピークに達した(E)。炎症誘発性の癌転移も、Kodak社製X−サイト761(X−Sight 761)近赤外線ナノスフェアで黒色腫細胞を標識することによる光学イメージング法で検出される(F)。
図2】デキサメタゾン(Dex)処置を行った場合および行わない場合のPLAミクロスフェア周囲の皮下組織の免疫組織化学染色。PLAミクロスフェアを埋め込んだ組織(A、左上)またはデキサメタゾンに浸漬したPLAミクロスフェアを埋め込んだ組織(A、右上)における炎症細胞(CD11b)の蓄積が観察できる(200倍)。黒色腫細胞(HMB45)の動員も、PLAミクロスフェアを埋め込んだ組織(A、左下)またはデキサメタゾン包埋PLAミクロスフェアを埋め込んだ組織(A、右下)において観察された(400倍)。両方の処置での皮下組織における炎症細胞および黒色腫細胞の数の定量をグラフ化し、統計解析した(B)。データは、平均±SD(グループあたり6匹)である。P<0.05、t検定。
図3】異なる生体材料インプラントに対する異物応答および黒色腫細胞動員の程度。組織の免疫組織化学染色を行って異物反応の程度を評価し、PLA、水酸化アルミニウムおよびグラスパーレン(Glasperlen)を含むインプラントの周りのCD11b炎症細胞およびHMB45黒色腫細胞の蓄積を定量化した(A)。細胞動員の定量分析をグラフ化し(B)、埋め込んだミクロスフェアの周囲組織における黒色腫細胞数および炎症細胞数との相関を統計解析した(C)。データは、平均±SD(グループあたり5匹)である。P<0.05、ANOVA。
図4】免疫組織学的分析に基づく、ミクロスフェアインプラント領域へのB16F10細胞動員の生体内分布評価。生体内分布を観察するために、GFP発現B16F10細胞を、PLAミクロスフェア埋め込み後24時間の時点で腹腔内投与した。高密度の癌細胞が、リンパ節、脾臓および埋め込み領域に見られた。しかし、比較的低密度の癌細胞が、皮膚、肺、肝臓、および腎臓に見られた。
図5】炎症性刺激に応答した癌細胞動員は、ルイス肺癌(LLC)、ヒトMDA−MB−231乳癌、ヒトPC−3前立腺癌、JHU−31ラット前立腺癌を含む異なる癌細胞型において普遍的である。非標識癌細胞を移植したPLAインプラントを担持する動物を対照として用いた。
図6】AMD3100処置は、埋め込み部位へのB16F10黒色腫細胞動員を阻害した(A)。しかし、AMD3100の遮断は、リンパ節における黒色腫細胞の蓄積には影響を及ぼさなかった(B)。一方、炎症部位でのB16F10黒色腫細胞蓄積におけるCCR7/CCL21経路も、CCL21中和抗体処置によって調べた。対照的に、ミクロスフェア埋め込み部位への腫瘍細胞遊走の数は、影響を受けなかった(C)。しかし、リンパ節におけるB16F10黒色腫細胞の存在は、大幅に減少した(D)。P<0.05、t検定。
図7】(A)対照の足場とともにEPOおよびSDF−1a装填組織の足場を、マウス黒色腫転移モデルを使用して、黒色腫動員能力について試験した。リアルタイムのインビボイメージングは、組織の足場の周囲の標識B16F10黒色腫細胞の蓄積を示した。(B)対照の足場とともにEPOおよびSDF−1装填組織の足場を、マウス黒色腫転移モデルを用いて、黒色腫動員能力について試験した。EPOを放出する組織の足場は、Kodak社製イメージングシステムを用いて検出される黒色腫細胞蓄積の1倍超の増強を示した。(C)EPO放出足場は、担癌動物の寿命を著しく向上させた。P<0.05、t検定。
図8】ケモカイン放出ヒドロゲルを用いる転移性癌細胞トラップ。
図9】癌転移動物モデルの模式図。
図10】(A)PLGA足場を作製するためにポロゲンとして使用されるBSAマイクロバブル(MB)。光学顕微鏡下でのマイクロバブルの画像。(B)BSA MB足場のSEM画像は、大きな孔および蜂の巣様の孔壁構造を示した。(C)顕著なブルータンパク質染色が、BSA MB足場における大きな孔のほぼ全ての壁に見られた。(D)MB−IGF−1足場およびIGF−1浸漬足場から様々な時点で放出されるIGF−1の生物活性。
図11】(A)制御されたタンパク質放出のためのPEGベースのヒドロゲル。室温でのヒドロゲルの流体相は、37℃で固体になる。(B)制御されたタンパク質放出用のPEGベースのヒドロゲル。時間に伴う様々な濃度のヒドロゲル(0%、3%対5%)からのNIR標識BSAのインビボ放出画像。(C)制御されたタンパク質放出用のPEGベースのヒドロゲル。定量的な結果は、PEGdヒドロゲルの制御された徐放特性を示す。
図12】(A〜H)ゼラチンMB足場の特徴づけ。(A)対照足場(low mag)および(B)ゼラチンMB足場(low mag)の走査型電子顕微鏡画像。スケールバー:100μm。(C)対照(high mag)および(D)ゼラチンMB(high mag)の走査型電子顕微鏡画像。スケールバー:50μm。内部断面のクーマシーブルー染色を行い、(E)対照足場および(F)ゼラチンMB足場での内部構造およびタンパク質局在性を決定した。(G)対照足場およびゼラチンMB足場の多孔度ならびに機械的強度を示す表である。(H)蛍光プレートリーダーを用いて測定したNIR色素結合EPOの放出を示すグラフである。
図13】タンパク質装填PEG粒子の模式図である。
図14】白血病細胞に対する癌細胞トラップの効果。(A)白血病に感染したマウスに、EPO放出足場または対照足場(EPO無)のいずれかを埋め込んだ。癌細胞トラップの埋め込み後、両群の動物の血中の白血病細胞数を監視した。白血病細胞数は時間と共に増加するが、白血病細胞数の増加は実質的に遅くなることが判明した。これらの結果はグラフ(A)に示されている。EPOの放出があると、白血病移植マウスの生存率は約90日であることが判明した。しかし、以下のグラフ(B)に示すように、癌細胞トラップ(EPO放出)により生存期間が約20%増加した。
図15】黒色腫癌細胞に対する癌細胞トラップの効果。RANTES、IL−8、または(対照として)生理食塩水のいずれかを放出するヒドロゲル癌細胞トラップの埋め込み部位に動員される黒色腫癌細胞数を監視した。これらの実験の結果をグラフ(A)に示す。処置した動物の生存期間も監視した。これらの実験の結果をグラフ(B)にまとめる。
図16】PC3前立腺癌細胞に対する癌細胞トラップの効果。VEGF(50ng/インプラント)またはEPO(1,000 ID/インプラント)のいずれかを放出できる埋め込まれた組織足場の部位における前立腺癌細胞数を監視した。これらの実験の結果をグラフ(A)に示す。処置した動物の生存期間も監視した。これらの実験の結果をグラフ(B)にまとめる。
図17】PC3前立腺癌細胞動員に対するVEGF、EPOまたはSDF−Iαの局在放出の効果。24時間の移植後、近赤外色素で標識された細胞の分布を、全身イメージングシステムを用いて監視した。PC3細胞は、様々なケモカイン(VEGF、EPOおよびSDF−Iα)を放出するヒドロゲル癌トラップの埋め込み部位に動員された。その後、インプラントに関連する蛍光強度を、Image Jソフトウェアを用いて定量した(n=3)。
図18】(A)異なる時点でのHA粒子注入部位におけるBSA−NIR蛍光強度の代表的な画像。(B)異なる時点でのHA粒子(「C」と表記)または生理食塩水(NIR色素+生理食塩水)からのNIR色素標識BSA放出の放出動態。
図19】転移性癌細胞を検出するための診断として使用するための癌細胞トラップの実施形態。
図20】転移性癌の診断および治療を示すフローチャートモデルである。
図21】皮下または腹腔内空間のいずれかに埋め込んだヒドロゲル癌細胞トラップが無い場合(対照)と癌細胞トラップがある場合の、ルイス肺癌細胞移植動物の肺における癌病巣数を定量化した。
図22】異なる癌細胞ケモカイン/増殖因子を放出する癌細胞トラップを埋め込んだ動物由来の末梢血に見られる循環黒色腫細胞の割合を明らかにした。
図23】異なる癌細胞ケモカイン/増殖因子を放出する癌細胞トラップを埋め込んだ動物由来の末梢血に見られる循環ルイス肺癌細胞の割合を明らかにした。
図24】ヒドロゲル癌細胞トラップ、足場癌細胞トラップを担持する動物、または(対照として)何も担持しない動物から単離された様々な臓器におけるLLC細胞の生体内分布の比較。
図25】異なる期間の埋め込み後の、EPO装填粒子対EPO+ドキソルビシン(300μg/ml/インプラント)装填粒子へ動員されるFITC標識PC3前立腺癌細胞の定量化。
図26】異なる期間の埋め込み後の、EPO装填粒子対EPO+パクリタキセル(30mg/ml/インプラント)装填粒子へ動員されるFITC標識B16F10黒色腫癌細胞の定量化。
図27】癌細胞トラップ埋め込み後の循環AML細胞の定量化。EPO装填ポリグリコール酸足場を用いて癌細胞トラップを作製した。ブランクPLGA足場を対照として使用した。3対の動物(パネルA〜Cの各々において1対の動物を示す)を試験した。全3セットのデータは、EPO装填癌細胞トラップが循環癌細胞の割合を低減するだけでなく、担癌動物の寿命も延長することを示した。
図28】AMLモデルの寿命の延長に対するEPO装填癌細胞トラップの有効性。癌細胞トラップがある場合またはない場合の動物の寿命を、「トラップ埋め込み後の日数」(A)または「癌細胞移植後の日数」(B)のいずれかに基づいて決定した。両セットのデータは、癌細胞トラップ埋め込み後に動物の寿命が大幅に改善することを示す。癌細胞トラップ埋め込みは、担癌マウスの全生存も改善する(C)。
図29】足場インプラント周囲の癌幹細胞の組織構造である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、対象に置かれたときに、転移性癌細胞が「癌細胞トラップ」に遊走および蓄積するという驚くべき発見に基づいている。それによって、癌転移を担癌対象で検出できる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、対象における転移性腫瘍形成を抑制または防止し、それによって対象の生存を延長できる。本発明の機能の仕方については、理論に束縛されないが、癌細胞トラップが血液中のケモカイン濃度勾配を誘導し、結果として、循環中の転移性癌細胞が、重要臓器の代わりに癌細胞トラップに優先的に遊走および蓄積すると考えられる。
【0040】
図面および以下の実施例と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ本発明の現在の好ましい実施形態について、これから詳細に説明する。これらの実施形態を、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に説明するが、他の実施形態が利用されてもよいこと、かつ本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく構造的、生物学的、および化学的に変化させてもよいことを理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0041】
当業者は、本明細書で論じる既知の技術または同等の技術の詳細な説明のために一般的な参考テキストを参照してもよい。これらのテキストには、例えば、分子生物学の最新プロトコル(Ausubelら(編) John Wiley & Sons、ニューヨーク州およびそれらに対する補足)、免疫学の最新プロトコル(Coliganら(編) John Wiley & Sons、ニューヨーク州およびそれらに対する補足)、薬理学の最新プロトコル(Ennaら(編) John Wiley & Sons、ニューヨーク州およびそれらに対する補足)ならびにレミントン:薬学の科学と実践(Lippincott Williams & Wilicins,2Vt版(2005))が含まれる。
【0042】
分子生物学における一般用語の定義は、例えば、Benjamin Lewin、オックスフォード大学出版によって出版された遺伝子VII、2000(ISBN 019879276X);Kendrewら(編);ブラックウェル出版社によって出版された分子生物学百科事典、1994年(ISBN 0632021829);およびRobert A.Meyers(編);分子生物学およびバイオテクノロジー:John Wiley & Sons社によって出版された総合デスクリファレンス(Comprehensive Desk Reference)、1995(ISBN 0471186341)の中で見つけることができる。
【0043】
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数で使用される用語は複数も含み、逆もまた同様である。以下に記載の全ての定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書を含めて、任意の他の文書に記載されているその語の用法と食い違う場合には、(例えば、用語が最初に使用される文書中で)反対の意味がはっきり示されない限り、本明細書およびそれに関連する請求項を解釈する目的のために、以下に記載の定義が常に優先するものする。特に明記しない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。特に明記しない限り、または「1以上」の使用が明らかに不適切である場合には、「1つ(a)」の使用は、本明細書では「1以上」を意味する。「含む(comprise)」「「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」の使用は、交換可能であり、限定することを意図するものではない。さらに、1以上の実施形態の説明が「含む」という用語を使用する場合に、いくつかの特定の場合において、当業者なら、実施形態(複数可)は代替的に「から本質的になる」および/または「からなる」という言葉を用いて説明できると理解するであろう。
【0044】
本発明によって包含される「癌細胞トラップ」は、ある期間、材料への転移性癌細胞の遊走および蓄積を可能にする材料を指す。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、タンパク質、ケモカイン、増殖因子、治療薬、化学療法剤、抗癌剤およびそれらの組み合わせから選択される1以上の分子を放出することが可能である。
【0045】
本明細書で使用する「約」という用語は、使用される数の数値±10%を意味する。
【0046】
本明細書で使用する「治療有効量」または「有効量」は、転移性腫瘍形成の抑制または減少を含めて、癌に関連する症状を減少、抑制、予防または改善するのに十分な量である。
【0047】
本明細書で使用する「治療する」ならびにその全ての形態および時制(例えば、治療すること、治療される、および治療を含む)は、治療的または予防的処置を指すことができる。本発明の特定の態様において、治療を必要とするものには、(本発明の病理学的状態(例えば、癌を含む)を既に有しているものが含まれ、その場合に、治療は、対象が本発明の病的状態の徴候または症状に改善を有するように治療有効量の組成物を対象(例えば、治療を必要とするヒトまたは他の哺乳類を含む)に投与することを指す。改善は、全ての観察可能または測定可能な改善であり得る。したがって、当業者なら、治療は患者の病状を改善できるが、病理学的状態の完全な治癒ではない場合があることに気が付く。本発明の他の特定の態様において、治療を必要とするものには、既に癌を有しているもの、ならびに癌を有する傾向にあるものまたは癌転移を防ぐべきものが含まれる。
【0048】
本明細書で使用する「癌」とは、細胞(複数可)が、浸潤による直接的な隣接組織への成長または転移による遠位部位での成長のいずれかによる、調節不全のおよび/または増殖性の細胞成長ならびに前記成長を誘導する能力によって特徴付けられる病態生理学的状態を指し、これらには、例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、星状細胞腫(例えば、小脳および大脳を含む)、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(例えば、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫を含む)、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(例えば、胃腸を含む)、未知の原発部位の癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖疾患、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、腫瘍のユーイングファミリー、肝外胆管癌、眼の癌(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫を含む、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣を含む)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、扁平上皮頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞癌(例えば、内分泌膵臓を含む)、カポジ肉腫、下喉頭癌、白血病、口唇および口腔癌、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞を含む)、リンパ腫、マクログロブリン血症、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性扁平頸部癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、骨肉腫、中咽頭癌、卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌、胚細胞腫瘍を含む)、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠および乳癌、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(例えば、非黒色腫または黒色腫を含む)、小腸癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌、絨毛性腫瘍(例えば、妊娠を含む)、珍しい小児期および成人期の癌、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、膣癌、ウイルス誘発性癌(例えば、HPV誘発癌を含む)、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、および女性の癌などの細胞腫および肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
「ヒドロゲル」という用語は従来の意味で使用され、実質的な量の水を吸収して、弾性ゲルを形成できる水膨潤性ポリマーまたは多糖ベースのマトリックスを指し、その際「マトリックス」は、共有結合または非共有結合の架橋によって共に保持される高分子の三次元ネットワークである。これらのヒドロゲルのいくつかは、温度またはpH変化により固化させることができる。体内に配置されると、ヒドロゲルは、様々な生体分子を放出するための担体として使用できる。
【0050】
本明細書で使用する「薬物」、「薬剤」、「医薬」などの用語は、互換的に使用され得る。一般的に、これらの用語は、分子量に関係なく、疾患もしくは病状の治療、治癒、予防、または診断において使用されるか、あるいは別の方法で、ヒトもしくは他の動物の身体的または精神的状態を変更するために使用される任意の化学物質を指す。医薬組成物は、本発明の薬物送達ビヒクルと組み合わせた薬物を用いて調製することもできる。医薬組成物は、適切なポリマー形態の薬物および生物学的に許容される担体を含んでもよい。適切なポリマー形態には、マイクロカプセル、微粒子、フィルム、ポリマーコーティング、およびナノ粒子が含まれる。
【0051】
癌細胞トラップ
一実施形態において、本発明は、癌転移を治療、予防および/または診断するための癌細胞トラップを提供し、その際、癌細胞トラップが対象の中に置かれた時に、転移性癌細胞がある期間にわたって癌細胞トラップに遊走および蓄積できる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、タンパク質、ケモカイン、増殖因子および化学療法剤もしくは抗癌剤などの1以上の生物活性分子ならびに/または薬物を放出する能力を有する癌細胞トラップを作製できる。
【0053】
癌細胞トラップは、限定されない1以上の材料および癌細胞トラップを作製するのに使用できる材料から作ることができる。好ましくは、材料は生体適合性であり、かつ一般に対象の健康な非癌性細胞に対して非毒性である。
【0054】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、デキストラン、ポリメタクリルアミド、PEG、マレイン酸、リンゴ酸、マレイン酸無水物の誘導体を含むがこれらに限定されない水溶性ポリマーから選択される1以上の材料を含み、これらのポリマーならびにカルボジイミドとも呼ばれる1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドを含む適切なカップリング剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは、分解性もしくは非分解性または高分子電解質材料であってもよい。いくつかの実施形態において、分解性ポリマー材料は、例として、ポリ−L−グリコール酸(PLGA)、ポリ−DL−グリコール酸、ポリ−L−乳酸(PLLA)、PLLA−PLGAコポリマー、ポリ(DL−ラクチド)−ブロック−メトキシポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン)−ブロック−メトキシポリエチレングリコール(PCL−MePEG)、ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)−ブロック−メトキシポリエチレングリコール(PDLLACL−MePEG)、いくつかの多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ポリグリカン、キトサン)、タンパク質(例えば、フィブリノーゲン、アルブミン、コラーゲン、細胞外マトリクス)、ペプチド類(例えば、RGD、ポリヒスチジン)、核酸(例えば、一本鎖または二本鎖のRNA、DNA)、ウイルス、細菌、細胞および細胞フラグメント、有機または炭素含有材料を含む。非分解性材料は、天然または合成ポリマー材料(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルウレタン、ポリ塩化ビニル、シリカ、ポリジメチルシロキサン、アクリレート類、アクリルアミド類、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアクロレイン、ポリグルタルアルデヒド)、いくつかの多糖類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース誘導体、デキストラン(登録商標)、デキストロース、スクロース、フィコール(登録商標)、パーコール(登録商標)、アラビノガラクタン、デンプン)、およびヒドロゲル(例えば、ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリ塩化アルミニウム)を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、足場構造、ヒドロゲル、ナノ粒子および/または微粒子からなる群から選択される材料を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、生物活性分子および/または化学療法剤を放出できる制御放出特性を有する1以上の材料を含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル癌細胞トラップは液体組成物であり、対象に注入されるかまたは埋め込まれる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子および/または微粒子癌細胞トラップは、粒子の液体組成物であり、対象に注入されるかまたは埋め込まれる。いくつかの実施形態において、足場構造は、固体組成物であり、対象に埋め込まれるかまたは外科的処置を介して注入される。いくつかの実施形態において、足場構造、ヒドロゲル、微粒子および/またはナノ粒子は、19〜21ゲージ針を介して注入される。
【0056】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、皮下空間および/または腹腔内腔に埋め込まれるかまたは注入される。
【0057】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、有効量の1以上の生物活性分子を含む。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、物理的吸着によって癌細胞トラップに添加される。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、癌細胞トラップへの転移性癌細胞の動員および遊走を促進する。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、IL−1、IL−4、IL−8、IL−10、IL−13、IL−17、CCL2、CCL5、CCL9、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CCR4、CCR5、CCR7/CCL21、CCR9、CCR10、CCL18、CCL2/MCP−1、MIP−1α/CCL3、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL8、CXCL12/SDF−1α、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR7、エリスロポエチン(EPO)、CCL5/RANTES、肝細胞増殖因子アクチベーター(HGFA)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、CXCL14、プロスタグランジンE2、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。生物活性断片および変異体も使用できる。
【0058】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、対象に注入されるかまたは埋め込まれた後に、有効量の生物活性分子を放出する。いくつかの実施形態において、放出は長期間にわたる。いくつかの実施形態において、生物活性分子は1〜6ヶ月の期間にわたって放出される。いくつかの実施形態において、生物活性分子は約1週間、2週間、3週間、または4週間の期間にわたって放出される。いくつかの実施形態において、生物活性分子は約14日の期間にわたって放出される。いくつかの実施形態において、生物活性分子は約7〜10日の期間にわたって放出される。いくつかの実施形態において、生物活性分子は約2〜7日の期間にわたって放出される。
【0059】
生物活性分子に関して、「有効量」という用語は、投与された場合に所望の効果をもたらす、すなわち癌細胞トラップへの転移性癌細胞の動員および遊走を誘導する量を意味する。正確な量は特定の薬剤、治療されるべき対象に依存し、有効用量を決定するための公知の方法および技術を用いて当業者によって確認され得る。いくつかの実施形態において、投与されるべき生物活性分子の量は、約0.05ng/kg/日〜約1mg/kg/日を含む。いくつかの実施形態において、約0.1ng/kg/日〜約1μg/kg/日の量の生物活性分子を投与できる。
【0060】
いくつかの実施形態において、生物活性分子は、以下の濃度範囲で放出できる:IL−8(0.01〜250ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL19(10μg〜1000ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL20(0.1〜4000ナノモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL21(0.01〜100マイクロモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL2/MCP−1(0.05〜100ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL3(10〜1000ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CXCL12/SDF−1α(0.5〜500ナノモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL5/RANTES(0.01〜1000ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、およびEPO(1〜10000 I.U./日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL5/RANTES(0.2〜500ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、およびVEGF(0.01〜100ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)。
【0061】
いくつかの実施形態において、生物活性分子は、以下の濃度範囲で放出できる:IL−8(0.1〜20ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL19(100μg〜100ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL20(1〜400ナノモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL21(0.1〜10マイクロモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL2/MCP−1(0.5〜10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL3(1〜100ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CXCL12/SDF−1α(5〜50ナノモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL5/RANTES(0.1〜10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、およびEPO(1〜100 I.U./日/1mlまたは1cmのインプラント)、CCL5/RANTES(2〜50ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、およびVEGF(0.1〜10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)。
【0062】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、独立して、または組換えヒトHGF/SF(10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、MCP−1(0.5〜10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、CXCL12/SDF−1α(5〜50ナノモル/日/1000mlまたは1000cmのインプラント)、CCL5/RANTES(0.5〜10ng/日/1mlまたは1cmのインプラント)、およびEPO(1〜100 I.U./日/1mlまたは1cmのインプラント)との組合せで放出するように作製することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)、MCP−1α、RANTES、SDF−1α、MCP−1、EPO、ヒスタミン、またはMIP−1α、およびそれらの組み合わせを放出するように作製できる。いくつかの実施形態において、これらの癌細胞トラップは、Otsuka,S.and G.Bebb,J Thorac Oncol,2008.3(12):p.1379−83に記載の方法を用いて作製できる。
【0064】
いくつかの実施形態において、癌細胞は、ケモカイン勾配およびケモカインの局所濃度に基づいて癌細胞トラップに動員される。
【0065】
EPOが放出されるいくつかの実施形態において、注入量は、約600単位/0.027mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは27mmの足場トラップである。いくつかの実施形態において、放出速度は約1.5〜約2.5国際単位/日である。いくつかの実施形態において、EPOは約30日超の期間にわたり放出される。
【0066】
RANTES/CCL5が放出されるいくつかの実施形態において、注入量は、約600ng/1mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは1cmの足場トラップである。いくつかの実施形態において、放出速度は約10ng/日である。いくつかの実施形態において、RANTES/CCL5は約21日超の期間にわたり放出される。
【0067】
肝細胞増殖因子(HGF/SF)が放出されるいくつかの実施形態において、注入量は、約900ng/1mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは1cmの足場トラップである。いくつかの実施形態において、放出速度は約15ng/日である。いくつかの実施形態において、肝細胞増殖因子(HGF/SF)は、約28日超の期間にわたり放出される。
【0068】
SDF−1αが放出されるいくつかの実施形態において、注入量は、約10μg/1mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは1cmの足場トラップである。いくつかの実施形態において、放出速度は約100ng/日である。いくつかの実施形態において、SDF−1αは約24日超の期間にわたり放出される。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の癌細胞トラップは、RANTES(10〜500μg/体重kg)、EPO(1〜20 IU/体重kg)、SDF−1α(0.1〜10mg/体重kg)、MCP−1(0.1〜10mg/体重kg)、およびΜΙΡ−1α(0.1〜10mg/体重kg)を放出するように作製できる。
【0070】
いくつかの実施形態において、2以上の生物活性分子が癌細胞トラップから放出される。
【0071】
癌細胞トラップを用いて転移性癌細胞を動員する。転移性癌細胞は、限定されず、任意の転移性癌細胞を含んでよい。いくつかの実施形態において、転移性癌細胞は、黒色腫、前立腺癌、白血病、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、膠芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿生殖器癌、消化管癌、甲状腺癌および皮膚癌からなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、転移性癌細胞を死滅もしくはその増殖を阻害するために使用できる有効量の1以上の抗癌剤または化学療法剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、化学療法剤は癌細胞トラップから放出され、癌細胞トラップに蓄積された細胞に加えて、循環中の転移性細胞も死滅させまたは阻害する。本発明で使用するのに適する化学療法剤または抗癌剤は、癌を治療するのに有用であることが知られている任意の化学物質、例えば、アブラキサン、アルダラ、アリムタ、アプレピタント、アリミデックス、アロマシン、アラノン、三酸化ヒ素、アバスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セツキシマブ、クロファラビン、クロファレックス、クロラ(Clolar)、ダコジェン、ダサチニブ、エレンス、エロキサチン、エメンド(Emend)、エルロチニブ、ファスロデックス、フェマーラ、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、ジェムザール、グリベック、ハーセプチン、ハイカムチン、メシル酸イマチニブ、イレッサ、ケピバンス、レナリドミド、レブラン(Levulan)、メタゾラストン、ミロサール(Mylosar)、マイロターグ、ナノ粒子パクリタキセル、ネララビン、ネクサバール、ノルバデックス、オンキャスパー、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミンで安定化されたナノ粒子製剤、パリフェルミン、パニツムマブ、ペガスパルガーゼ、ペメトレキセド二ナトリウム、プラチノール−AQ、プラチノール、レブリミド、リツキサン、スクレロソール(Sclerosol)胸腔内エアロゾル、ソラフェニブ、トシラート、スプリセル、スニチニブマレート、スーテント、シノビール(Synovir)、タモキシフェン、タルセバ、ターグレチン、タキソール、タキソテール、テモダール、テモゾロミド、サロミド、サリドマイド、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、トリセノックス、ベクティビックス、ベルケイド、ビダーザ、ボリノスタット、ゼローダ、ゾレドロン酸、ゾリンザ、ゾメタ、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、フルオロウラシル、5−FU、メトトレキサート、フロクスウリジン、インターフェロンアルファ−2b、グルタミン酸、プリカマイシン、6−チオグアニン、アミノプテリン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、カペシタビン、シタラビン、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エストラムス、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、メドロキシプロゲステロン、ラムスチンリン酸ナトリウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲストロール、メチルテストステロン、ジエチルスチルベストロール二リン酸、クロロトリアニセン、テストラクトン、メファレン(mephalen)、メクロレタミン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム(bethamethasone sodium phosphate)、ジカルバジン(dicarbazine)、アスパラギナーゼ、ミトタン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、IFN−γ、イリノテカン、カンプト、イリノテカンアナログ、カルムスチン、フォテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、BBR3464、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、チオテパ、ウラムスチン、ビンデシン、ビノレルビン、アレムツズマブ、トシツモマブ、メチルアミノレブリン酸、ポルフィマー、ベルテポルフィン、ラパチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、ZD6474、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、デニロイキンジフチトクス、エストラムスチン、ヒドロキシカルバミド、マソプロコール、ミトタン、トレチノイン、または例えば、細胞毒性薬、DNAアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質剤、抗代謝剤、チューブリン安定化剤、チューブリン不安定化剤、ホルモンアンタゴニスト剤、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、HMG−CoA阻害剤、CDK阻害剤、サイクリン阻害剤、カスパーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、アンチセンス核酸、三重らせんDNA、核酸、アプタマー、および分子的に修飾されたウイルス、細菌または外毒素の薬剤を含む他の抗癌剤であり得る。本発明のさらなる特定の態様において、抗癌剤は、上記抗癌剤のうちの2以上を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、抗癌剤または化学療法剤の組み合わせを用いて作製できる。いくつかの実施形態において、薬剤の組み合わせは、例えば、CHOP(シトキサン、ヒドロキシルビシン(アドリアマイシン)、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニゾン)、CHOP−R(CHOP、リツキシマブ)、FOLFOX(フルオロウラシル、ロイコボリン(フォリン酸)、オキサリプラチン)、VAD(ビンクリスチン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、デキサメタゾン)、サール/デックス(サリドマイド、デキサメタゾン)、COPまたはCVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン(オンコビン)、およびプレドニゾン)、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミド、ビンクリスチン(オンコビン)、デキサメタゾン(デカドロン))、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン(オンコビン)、メトトレキサート、ロイコボリン)、COPP(シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プロカルバジン、プレドニゾン)、MACOP−B(メトトレキサート、ロイコボリン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミド、ビンクリスチン(オンコビン)、プレドニゾン、ブレオマイシン)、MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン(オンコビン)、プロカルバジン、プレドニゾン)、ProMACE−MOPP(メトトレキサート、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミド、エトポシド、MOPP)、ABVD(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)、BEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プロカルバジン、プレドニゾン)、スタンフォードV(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、メクロレタミン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン(オンコビン)、エトポシド(VP−16)、プレドニゾン)、ECF(エピルビシン、シスプラチン、フルオロウラシル)、BEP(ブレオマイシン、エトポシド、白金(シスプラチン))、およびPCV(プロカルバジン、ロムスチン(CCNU)、ビンクリスチン)を含む。
【0074】
化学療法剤に関する「有効量」という用語は、投与された場合に所望の効果をもたらす、すなわち転移性癌細胞を死滅させるかまたはその増殖を阻害する量を意味する。正確な量は特定の薬剤、治療されるべき対象に依存し、有効用量を決定するための公知の方法および技術を用いて当業者によって確認され得る。いくつかの実施形態において、投与されるべき化学療法剤の量は、約0.01μg/kg/日〜約100mg/kg/日を含む。いくつかの実施形態において、投与できる化学療法剤の量は約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、パクリタキセル、ドキソルビシン、および/もしくはビンクリスチンを取り込むならびに/または放出するように作製される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは1cmの足場トラップ当たり約0.1〜1000μg/日、0.5〜500μg/日、1〜100μg/日または2〜20μg/日の速度でドキソルビシンを放出するように作製できる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1mlのヒドロゲル/粒子癌トラップまたは1cmの足場トラップ当たり約0.01〜500mg/日、0.1〜100mg/日、0.1〜50mg/日、0.2〜20mg/日または0.2〜2mg/日の速度でパクリタキセルを放出するように作製できる。
【0076】
癌細胞トラップは、任意の種類の形状に加工できる。いくつかの実施形態において、固形癌細胞トラップはディスク形状を有する。いくつかの実施形態において、固形癌細胞トラップは、管状の形状を有するように作製できる。いくつかの実施形態において、管状構造は、片側または両側に開口部を有する。いくつかの実施形態において、管状構造は、癌細胞トラップの側面および開口部から内腔への癌細胞の浸潤を可能にする多孔質構造を有する。いくつかの実施形態において、癌細胞は、18〜21ゲージ針などの針を介して癌細胞トラップの内腔から回収できる。
【0077】
足場癌細胞トラップ
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは足場構造として作製される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは組織の足場である。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは1以上の細胞外マトリックス成分を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはマイクロバブル足場である。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは合成ポリマーから作られる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはポリマーおよびタンパク質から作られる。いくつかの実施形態において、足場構造は、1以上のタンパク質、ポリマー、およびそれらの組み合わせから調製される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、細胞外マトリックスタンパク質、例えば、コラーゲンI、コラーゲンIII、エラスチンおよびフィブロネクチンである。いくつかの実施形態において、足場は分解性である。いくつかの実施形態において、足場は、生分解性ポリマーおよび1以上のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、足場は組織から作製でき、その際、細胞外マトリックス成分を含む足場構造を残して細胞が除去される。
【0078】
いくつかの実施形態において、足場構造は、実際は一般的に多孔質である。いくつかの実施形態において、多孔率は、約10〜97%、約25〜98%、約50〜95%および約80〜90%の範囲である。
【0079】
いくつかの実施形態において、足場は、脂肪族ポリエステル、アルギン酸塩、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、グリコリドのコポリマー、ラクチドのコポリマー、エラスチン、フィブリン、グリコリド/1−ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC)、グリコサミノグリカン、ラクチド/テトラメチルグリコリドポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/ε−カプロラクトンコポリマー、ラクチド/δ−バレロラクトンコポリマー、L−ラクチド/dl−ラクチドコポリマー、メタクリル酸メチル−N−ビニルピロリドンコポリマー、修飾タンパク質ナイロン−2ΡΗΒΑ/γ−ヒドロキシバレレートコポリマー(PHBA/HVA)、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー、PLA−ポリエチレンオキシド(PELA)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエートポリマー(PHA)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、ポリ(ブチレンジグリコレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリ(オルトエステル)、ポリアルキル−2−シアノアクリレート、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、ポリデプシペプチド、ポリジヒドロピラン、ポリ−dl−ラクチド(PDLLA)、ポリエステルアミド、シュウ酸のポリエステル、ポリグリコリド(PGA)、ポリイミノカーボネート、ポリラクチド(PLA)、ポリ−l−ラクチド(PLLA)、ポリオルトエステル、ポリ−p−ジオキサノン(PDO)、ポリペプチド、ポリホスファゼン、多糖類、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ−β−ヒドロキシプロピオネート(PHPA)、ポリ−β−ヒドロキシブチレート(PBA)、ポリ−δ−バレロラクトン、ポリ−β−アルカン酸、ポリ−β−リンゴ酸(PMLA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)、擬似ポリ(アミノ酸)、デンプン、トリメチレンカーボネート(TMC)、および/またはチロシンベースのポリマーなどの生分解性ポリマーから作製できる。
【0080】
いくつかの実施形態において、足場は、PLGA、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチンおよびそれらの組み合わせから作製される。いくつかの実施形態において、足場は分解性ポリマーおよびポリペプチドを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、足場構造はマイクロバブル足場(MB)であり、それにより、細胞を取り込みかつ生物活性分子を放出することもできる多孔質足場をもたらす。マイクロバブル足場は、例えば、Nairらの、ポロゲンおよび増殖因子担体としてタンパク質マイクロバブルを用いる新規ポリマー足場(Novel polymeric scaffolds using protein microbubbles as porogen and growth factor carriers)、Tissue Eng Part C Methods,2010.16(1):p.23−32で論じられる技術に従って調製できる。いくつかの実施形態において、マイクロバブルが最初に調製され、その後ポリマーと組み合わされて、マイクロバブル足場を形成する。マイクロバブルはまた、本発明のいくつかの実施形態に従い生物活性分子で装填されて生物活性分子を放出する足場を生成し得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、以下のように調製できる:BSAなどのタンパク質溶液(例えば、5%w/v、10%w/v、20%w/v、または50%w/v)を窒素ガスで覆う。混合物を10秒間、20kHzでプローブソニケータ(Ultrasonix社、ボセル、WA)を使用して超音波処理する。この手順により、BSAタンパク質シェルによって囲まれている、窒素ガスの充填されたMBが形成される。MBは、ガラス管に移して48℃に保つことができる。MBの物理的な構造を観察するために、MBの小滴をスライドガラス上に置き、その後、顕微鏡(Leica Microsystems社、ウェッツラー、ドイツ)下で撮像できる。MBのサイズ分布は、一般に、直径50〜200μmの範囲である。生体分子装填MB(MB−ケモカインと表示される)を合成するために、IGF−1などのケモカイン(例えば、500ng/mL)溶液をBSA溶液と混合し、その後、上記のように窒素ガス下で超音波処理する。
【0083】
いくつかの実施形態において、マイクロバブルはその後、様々な濃度のポリマー溶液(例えば、5%w/v、7.5%w/v、および10%w/v)と組み合わせて、MBが埋め込まれた多孔質足場を作成できる。このようなMB−ポリマー混合物は、様々な温度(0℃、20℃、および196℃)で相分離できる。簡単に説明すると、いくつかの実施形態において、7.5%w/vのPLGAを、ポリマーが溶媒に完全に溶解するまで約20分間ボルテックスすることによって、1,4−ジオキサンに溶解できる。いくつかの実施形態において、ポリマー溶液はその後1:1の比でBSA−MBまたは生体分子装填BSA−MB(例えば、5%w/vのBSA)と混合できる。室温で約3分間穏やかに撹拌した後、ガラスのペトリ皿(直径5cm)中のポリマー−溶液混合物を液体窒素中で急冷し、相分離を誘導する。固化した足場をその後、例えば、フリーゾーン12凍結乾燥機(Labconco社、ミズーリ州カンザスシティ)で、0.03ミリバールの真空下で48時間凍結乾燥できる。生体分子装填MBが埋め込まれた足場を作製するために、生体分子装填MB(例えば、MB−IGF−1、500ng/mLのIGF−1の存在下で作製されたMB)をポロゲンとして使用する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明のマイクロバブル足場は、単一のタンパク質または異なる比率のタンパク質混合物から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、マイクロバブル足場は、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチン、およびそれらの組み合わせから作製される。
【0085】
いくつかの実施形態において、マイクロバブル足場は1以上の生体分子を放出する。いくつかの実施形態において、マイクロバブル足場は以下の濃度範囲で生体分子を放出できる:IL−8(0.1〜20ng/1cmの足場/日)、CCL19(100μg〜100ng/1cmの足場/日)、CCL20(1〜4000ナノモル/1000cmの足場/日)、CCL21(0.1〜10マイクロモル/1000cmの足場/日)、CCL2/MCP−1(0.5〜10ng/1cmの足場/日)、CCL3(1〜100ng/1cmの足場/日)、CXCL12/SDF−1a(5〜50ナノモル/1000cmの足場/日)、CCL5/RANTES(0.1〜10ng/1cmの足場/日)、およびEPO(1〜100 I.U./1cmの足場/日)、CCL5/RANTES(2〜50ng/1cmの足場/日)、およびVEGF(0.1〜10ng/1cmの足場/日)。
【0086】
いくつかの実施形態において、マイクロバブル足場は70〜98%の範囲の多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロバブル足場は10μm〜300μmの範囲の孔径を有する。いくつかの実施形態において、孔径は、約20μm〜約200μm、約40μm〜約150μm、約80μm〜約130μm、および約100μm〜約120μmから選択される。
【0087】
マイクロバブル足場は、装填された生体分子の5〜35%のボーラス放出を有してもよい。例えば、マイクロバブル足場は、最初の24時間以内に、ケモカイン、増殖因子またはタンパク質を含む生体分子の20%のボーラス放出を有するように作製されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、足場は、一日あたり総量の約2〜10%の生体分子の徐放を提供するために作製される。
【0089】
ナノ粒子および/または微粒子
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、微粒子および/またはナノ粒子を用いて作製されてもよい。いくつかの実施形態において、粒子は様々な生物活性分子を放出できる。
【0090】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子および微粒子は、単一のタンパク質または異なる比率のタンパク質の混合物から作製できる。例えば、足場は、PLGA、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、またはフィブロネクチン、およびそれらの組み合わせから作製されてもよい。
【0091】
本明細書で使用する「微粒子」、「ナノ粒子」、「顕微鏡的粒子」または「官能化粒子」などの用語は、一般的に、形が円筒形または球形で、半透過性シェルまたは透過性のナノボールのような形をした顕微鏡的(サイズが数μm〜数mm)または超顕微鏡的(1μm未満)固体コロイド物を指すために使用される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子および微粒子組成物は液体形態である。いくつかの実施形態において、組成物は対象に外科的に注入されるかまたは埋め込まれる。いくつかの実施形態において、粒子は18〜23ゲージ針を用いて注入される。
【0092】
1以上の生体分子もしくは薬物または他の関連材料(例えば、核医学または放射線療法などの診断目的のために使用されるもの)は、当業者に公知の技術を用いて、ナノ粒子または微粒子内に溶解するか、封入、カプセル化、吸収、吸着、共有結合するか、または付着させてもよい。
【0093】
さらに、本発明の粒子はコーティングされてもよい。関連材料が先ほど説明したように粒子に添加されると、それをタグ付き粒子と見なすことができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の粒子は、金属粒子、炭素粒子、グラファイト粒子、ポリマー粒子、ヒドロゲル粒子、多糖粒子、液体粒子または多孔質粒子として作製できる。したがって、微粒子およびナノ粒子は金属、炭素、グラファイト、ポリマーであり得、かつ光吸収性もしくは色吸収性染料、同位体、生体分子/サイトカイン/ケモカイン/増殖因子、放射性種、化学療法剤を装填されるか、またはガスの充填された孔を有する多孔質であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、粒子は、デキストラン、ポリメタクリルアミドの誘導体、PEG、マレイン酸、リンゴ酸、およびマレイン酸無水物を含むがこれらに限定されない水溶性ポリマーのコポリマーを含む1以上のポリマーまたは高分子電解質を含み、かつこれらのポリマーおよび、カルボジイミドとも呼ばれる、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドを含む、適切なカップリング剤を含んでもよい。ポリマーは、身体または高分子電解質材料中で分解性であっても、非分解性であってもよい。分解性ポリマー材料は、例えば、ポリ−L−グリコール酸(PLGA)、ポリ−DL−グリコール酸、ポリ−L−乳酸(PLLA)、PLLA−PLGAコポリマー、ポリ(DL−ラクチド)−ブロック−m−エトキシポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン)−ブロック−メトキシポリエチレングリコール(PCL−MePEG)、ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)−ブロック−メトキシポリエチレングリコール(PDLLACL−MePEG)、いくつかの多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ポリグリカン、キトサン)、タンパク質(例えば、フィブリノーゲン、アルブミン、コラーゲン、細胞外マトリクス)、ペプチド類(例えば、RGD、ポリヒスチジン)、核酸(例えば、一本鎖または二本鎖のRNA、DNA)、ウイルス、細菌、細胞および細胞フラグメントを含む。非分解性材料は、天然または合成ポリマー材料(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルウレタン、ポリ塩化ビニル、シリカ、ポリジメチルシロキサン、アクリレート、アクリルアミド、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアクロレイン(polyacroleine)、ポリグルタルアルデヒド)、いくつかの多糖類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース誘導体、デキストラン(登録商標)、デキストロース、スクロース、フィコール(登録商標)、パーコール(登録商標)、アラビノガラクタン、デンプン)、ならびにヒドロゲル(例えば、ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリ塩化アルミニウム)を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の粒子は、当業者に公知の従来の方法により生成される。技術には、連続水相中での乳化重合、連続有機相中での乳化重合、界面重合、溶媒析出、溶媒蒸発、有機ポリマー溶液の脱溶媒和、エマルジョン中の水溶性ポリマーの架橋、高分子の脱溶媒和、および炭水化物架橋が含まれる。これらの作製方法は、上述した広範囲のポリマー材料を用いて行うことができる。ナノ粒子を作製するための材料および作製方法の例が公開されている。(Kreuter,J.1991.Nanoparticles−preparation and Applications.In:M.Donbrow(編):Microcapsules and nanoparticles in medicine and pharmacy.CRC Press,Boca Raton,Fla.,pp.125−148;Hu,Z,Gao J.Optical properties of N−isopropylacrylamide microgel spheres in water.Langmuir 2002;18:1306−67;Ghezzo E,et al,Hyaluronic acid derivative microspheres as NGF delivery devices:Preparation methods and in vitro release characterization.Int J Pharm 1992;87:21−29を参照されたい;これらは参照により本明細書に組み込まれる。)
【0097】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子および微粒子は、油および界面活性剤を含まないヒアルロン酸ナノ粒子ならびに微粒子を合成するためのプロセスと題する米国特許公開第2006/0040892号;Fessi et al,International Journal of Pharmaceutics,55(1989)R1−R4;およびWeng et al,J.Biomater.Sci.Polymer Edn,Vol.15,No.9,pp.1167−1180(2004)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法に従って調製される。
【0098】
いくつかの実施形態において、薬物および/または生体分子は、予め作られたナノ粒子に吸着もしくは吸収させるか、または作製プロセス中にナノ粒子に組み込むことができる。吸収、吸着、および組み込みの方法は当業者の常識である。いくつかの実施形態において、モノマーおよび/またはポリマー、溶剤、乳化剤、コーティング剤ならびに他の補助物質の選択は、作製される特定のナノ粒子によって決定され、制限も問題もなく、当業者が選択できる。粒子(例えば、ポリマー)に対する薬物の比率は、薬物送達のために、必要に応じて変更できる。さらに、溶媒または乳化剤の除去は、当業者に公知の多数の方法を含んでもよい。
【0099】
ヒドロゲル癌細胞トラップ
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは制御放出特性を有する。例えば、いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはインサイツ固化ヒドロゲルであり得る。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップはヒドロゲル基材を用いて作製できる。
【0100】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、ポリエチレングリコールベースのインサイツゲル化ヒドロゲルから作製される。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは1以上の化学療法剤を放出する。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは1以上の生体分子を放出する。
【0101】
ヒドロゲルは、1以上のポリマー材料、多糖類、ポリエチレングリコール−ポリアクリル酸貫入ネットワーク(PEG−PAA−IPN)ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、細胞外マトリックスタンパク質、フィブリノーゲン、ヒドロゲル微粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製できる。
【0102】
様々な天然および合成のヒドロゲルならびにヒドロゲル由来の化合物は、本発明の癌細胞トラップに有用である。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルのゲルには、アルギン酸塩ヒドロゲルSAF−ゲル(ConvaTec社、ニュージャージー州プリンストン)、Duoderm Hydroactiveゲル(ConvaTec社)、NU−ゲル(Johnson & Johnson Medical社、テキサス州アーリントン)、Carrasyn(V)アセマンナン(Acemannan)ヒドロゲル(Carrington Laboratories社、テキサス州アーヴィング)、グリセリンゲルEltaヒドロゲル(Swiss−American Products社、テキサス州ダラス)およびK−Y無菌(Johnson & Johnson社)が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
天然の供給源から得られるヒドロゲルも使用できる。適切なヒドロゲルには、例えば、ゼラチン、コラーゲン、シルク、エラスチン、フィブリンおよびアガロースのような多糖由来のポリマーなどの天然ヒドロゲル、ならびにキトサン、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、架橋カルボキシル含有多糖類などの多糖類、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0104】
合成ヒドロゲルには、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)などのアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350、PEG 4500、PEG 8000)、シリコーン、ポリイソブチレンおよびポリイソプレンなどのポリオレフィン、シリコーンとポリウレタンのコポリマー、ネオプレン、ニトリル、加硫ゴム、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)などのアクリレートおよびN−ビニルピロリドンとアクリレートのコポリマー、N−ビニルラクタムとアクリレートのコポリマー、ポリアクリロニトリルまたはこれらの組み合わせから形成されるものが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル材料は、必要に応じてさらなる強度を提供するためにさらに架橋され得る。異なる種類のポリウレタンの例としては、熱可塑性または熱硬化性ポリウレタン、脂肪族または芳香族ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネート−ウレタンまたはシリコーンポリエーテル−ウレタン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
本発明のヒドロゲルは、溶媒和時に粘性ゲルを形成できる1以上の材料(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、コラーゲン、ヒアルロン酸(HY)、アルギン酸塩、キトサン、グリコサミノグリカン(GAGS)など)から作製することもできる。他の吸収性および非吸収性ポリマー材料は、本発明を実施するのに適切であり得る。本発明の実施において処理される適切なポリマーマトリックスまたは材料は、所望の機械的特性および材料特性、材料が生成されるための外科用アプリケーション、およびその最終的なアプリケーションにおける装置の所望の分解速度を含むがこれらに限定されないいくつかの要因によって決定できる。
【0106】
ヒドロゲル癌細胞トラップは、様々な公知の方法を用いて調製できる。例えば、ヒドロゲル癌細胞トラップは、コアセルベーション、噴霧乾燥、またはエマルジョンを用いて調製できる。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、Ta et al.,Journal of Controlled Release 126(2008)205−216(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法に従って調製される。いくつかの実施形態において、ヒドロゲル癌細胞トラップは、Kuzmaらの米国特許第8,475,820号(移植可能なデバイスを作製する方法)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法を用いて調製できる。
【0107】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、BSAでカプセル化されるヒアルロン酸(HA)粒子を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、油および界面活性剤の汚染物質を実質的に含まない均一なサイズのヒアルロン酸(「HA」)粒子で構成されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル癌細胞トラップのポリマーマトリックスは、埋め込み前に水和させてヒドロゲルを形成でき、このデバイスは水和状態で対象に埋め込まれる。あるいは、インプラントは、ドライインプラントとして埋め込み時に自己水和してもよく、したがって、埋め込み前のインプラントの水和は必要ない。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明のヒドロゲルは多孔質であってもよい。例えば、ヒドロゲル系の孔は10オングストローム(1×10−9m)〜数ミクロンメートルのサイズの範囲であり得る。他の適切な範囲には、50オングストローム〜0.1ミクロンおよび0.1ミクロン〜1ミクロンが含まれる。送達のための分子が巨大分子である場合、孔サイズは50オングストロームを超えることが適切である。
【0110】
いくつかの実施形態において、孔は拡散促進剤を含んでもよい。拡散促進剤には、生理食塩水、等張水、およびリン酸緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。これらの孔は、周囲環境への巨大分子活性剤の通過を可能にするより大きなスペースを提供する。
【0111】
ヒドロゲルが水和の最大レベルに達すると、ヒドロゲルの含水量は「平衡含水量」(EWC)と呼ばれる。ヒドロゲルの含水率(任意の水和状態)は、米国特許第6,361,797号に記載のように決定される。米国特許第8,475,820号も参照されたい。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒドロゲルは、必要に応じて、約20%〜約90%、約35%〜約85%、または約50%〜約80%の範囲のEWC値を有することができる。いくつかの実施形態において、EWC値の増加は放出速度の増加に対応できる。
【0113】
癌転移の治療または予防の方法
いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本発明の癌細胞トラップをそれを必要とする対象に投与することを含む癌転移を治療または予防する方法であって、転移性癌細胞が癌細胞トラップに遊走および蓄積し、それにより対象における転移を治療または予防する方法を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップ治療の期間は、癌転移のステージに基づくべきである。いくつかの実施形態において、対象は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月またはそれより長い期間治療を受けている。いくつかの実施形態において、追加の治療が必要とされ得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、各治療に必要な癌細胞トラップの量は、約1〜約500ml(cm)/対象の範囲である。いくつかの実施形態において、その量は、約1〜約100ml(cm)/対象、約3〜約50ml(cm)/対象、および約5〜約15ml(cm)/対象の範囲である。
【0116】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、埋め込みまたは注入などによって一定期間対象に配置される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは一定期間後に除去される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは一定期間後に新しい癌細胞トラップと置換される。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、1〜2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、または約1年ごとに除去されて新しい癌細胞トラップと置換される。
【0117】
いくつかの実施形態において、対象は単一の癌細胞トラップを投与される。いくつかの実施形態において、2以上のトラップが対象に投与される。いくつかの実施形態において、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20のまたはそれより多い癌細胞トラップが投与される。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明の方法において有用な癌細胞トラップは、1以上の化学療法剤を含む。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは投与後一定期間後に局所放射線に暴露され、動員された癌細胞をインプラント部位(複数可)で死滅および根絶させることができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、放射線、外科手術、化学療法または他の抗癌剤の投与などの1以上の他の公知の癌治療と組み合わされる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは化学療法剤と組み合わせてもよい。例えば、癌細胞トラップは、1種類以上の化学療法薬または化学療法剤を放出してもよい。
【0120】
「対象」、「個体」および「患者」という用語は、本明細書では霊長類、雌ウシ、ヒツジ(sheep)、ヤギ、ウマ(horse)、イヌ(dog)、ネコ(cat)、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ、ヒツジ(ovine)、ウマ(equine)、イヌ(canine)、ネコ(feline)、齧歯類、もしくはネズミの種を含むがこれらに限定されない哺乳類などの動物を含むと定義される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0121】
癌細胞トラップは、医学分野で公知の方法を用いて対象または患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象に注入される。
【0122】
癌転移の診断および/または検出
いくつかの実施形態において、本発明の癌細胞トラップは、対象における癌転移の存在および/または程度を評価するための診断ツールとして使用できる。診断ツールとして使用する場合、癌細胞トラップは癌細胞を動員するために対象に導入される。いくつかの実施形態において、本発明は、癌細胞トラップを対象に投与することを含む癌転移を検出するための方法であって、前記対象中で癌細胞がトラップへ遊走してかつ癌細胞が回収および評価される方法である。
【0123】
いくつかの実施形態において、本発明は、癌転移を検出する方法を提供し、癌細胞トラップをそれを必要とする対象に投与することを含み、転移性癌細胞が癌細胞トラップに遊走および蓄積し;かつ転移性癌細胞の存在について癌細胞トラップをアッセイし、それによって対象における癌転移を検出することを含む。いくつかの実施形態において、癌細胞は、癌細胞トラップまたはトラップ周囲の領域から除去されて評価される。いくつかの実施形態において、細胞はトラップから除去されるが、トラップは依然として対象に存在する。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象から除去され、細胞はそれらが評価される前に必要に応じてトラップから除去される。細胞は、例えば、組織学的染色、ポリメラーゼ連鎖反応、免疫細胞化学およびフローサイトメトリーなどの、転移性細胞の同定において公知の方法および技術を用いて評価できる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象における癌の治療の有効性を監視する方法を提供し、対象に癌細胞トラップを導入すること、および1以上の期間にわたって癌細胞の存在についてアッセイすることを含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは、管状構造体として作製できる。いくつかの実施形態において、管状構造は片側または両側に開口部を有する。いくつかの実施形態において、管状構造は、癌細胞トラップの側面および開口部から内腔へと癌細胞の浸潤を可能にする多孔質構造を有する。いくつかの実施形態において、癌細胞は18〜23ゲージ針などの針を介して癌細胞トラップの内腔から回収できる。
【0126】
癌細胞トラップを含む組成物
いくつかの実施形態において、本発明の癌細胞トラップは医薬組成物として対象に投与され、それは塩、緩衝剤、防腐剤、または他の薬学的賦形剤を含んでもよい。
【0127】
組成物は、非経口、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内もしくは静脈内投与、または注射投与用に処方できる。いくつかの実施形態において、そのような投与に適する形態には、滅菌懸濁液およびエマルジョンが含まれる。このような組成物は、滅菌水、生理食塩水、およびグルコースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤との混合物であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は凍結乾燥することもできる。組成物は、投与経路および所望の製剤に依存して、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化または粘度増強添加剤、ならびに防腐剤などの補助物質を含んでよい。レミントン:薬学の科学と実践、Lippincott Williams & Wilkins、第20版(2003年6月1日)ならびにレミントンの製薬科学、Mack出版社;第18版および第19版(それぞれ1985年12月、および1990年6月)(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)などのテキストを調べて、適切な製剤を調製できる。このような追加成分の存在は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与えることができ、したがって追加成分は意図される用途に応じて選ばれ、担体の特性が選択された投与経路に合わせて調整される。
【0128】
適切な非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養の補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。いくつかの実施形態において、非経口投与のための組成物は、無菌の注射可能な水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンなどの無菌の注射可能な製剤の形態であってもよい。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて当技術分野で公知の方法に従って処方されてもよい。無菌の注射用製剤は、1,3−ブタンジオール中の溶液などの、非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。適切な希釈剤には、例えば、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来法で使用されてもよい。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性の固定油が使用されてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が同様に注射剤の調製に使用されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、組成物は、好ましくはレシピエントの血液または他の体液と等張である。組成物の等張性は、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質などの様々な賦形剤を用いて達成できる。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムが使用される。酢酸およびその塩、クエン酸およびその塩、ホウ酸およびその塩、ならびにリン酸およびその塩などの緩衝剤が使用できる。本発明のいくつかの実施形態において、リン酸緩衝生理食塩水が懸濁のために使用される。
【0130】
いくつかの実施形態において、組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して、選択したレベルで維持できる。いくつかの実施形態において、容易にかつ経済的に入手可能であり、かつ作業が容易であるために、メチルセルロースが使用される。他の適切な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボマーなどが含まれる。増粘剤の濃度は選択される薬剤に依存し得る。いくつかの実施形態において、粘性組成物は、そのような増粘剤を添加することによって溶液から調製される。
【0131】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される防腐剤は、組成物の貯蔵寿命を増加させるために用いることができる。例えば、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、または塩化ベンザルコニウムを含む様々な防腐剤も使用できるが、ベンジルアルコールが適切であり得る。防腐剤の適切な濃度は、選択される薬剤に依存してかなりのばらつきがあり得るが、総重量に基づいて0.02%〜2%であり得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、組成物は生物活性分子および/または化学療法剤の即時放出用に設計される。他の実施形態において、組成物は持続放出用に設計される。さらなる実施形態において、組成物は1以上の即時放出表面および1以上の持続放出表面を含む。
【0133】
本発明の組成物は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製されてもよい。一般に、そのような調製方法は活性成分を賦形剤および/または1以上の他の付属成分と会合させる工程を含み、次いで、必要である場合および/または望ましい場合には、生成物を単回用量または複数回用量単位に分割、成形および/または包装する工程を含む。
【0134】
本発明による医薬組成物は、単回単位用量として、および/または複数の単回単位用量として、調製、包装、および/またはバルク販売できる。本明細書で使用する「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、対象に投与される活性成分の投与量と一般的に等しく、かつ/または例えば、そのような投薬量の1/2または1/3などのそのような投薬量の便利な画分である。
【0135】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主にヒトへの投与に適する医薬組成物に向けられているが、そのような組成物が、一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳類への投与に適することは当業者なら理解するであろう。様々な動物への投与に適する組成物とするために、ヒトへの投与に適した医薬組成物の改良が十分に理解され、通常の熟練した獣医薬理学者は、もしあれば、単に通常の実験を用いてそのような改変を設計および/または実行できる。医薬組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび/もしくは他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラットなどの商業的に関連する哺乳類を含む哺乳類;ならびに/または家禽類、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくは七面鳥などの商業的に関連する鳥類を含む鳥類が含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象が何であるか、そのサイズ、および/またはその病状に依存し、かつ組成物が投与される経路にさらに依存して変化する。一例として、組成物は0.1%〜100%の、例えば、0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0137】
癌細胞トラップは、医学分野で公知の方法を用いて対象または患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、癌細胞トラップは対象に埋め込まれる。他の実施形態において、癌細胞トラップは対象に注入される。例えば、癌細胞トラップは、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、または皮下に注入されてもよい。
【0138】
特定の問題に対する本発明の教示の適用は、本明細書に含まれる教示に照らして当業者の能力の範囲内である。本発明の組成物および方法の例は、以下の非限定的な実施例の中で見られる。
【0139】
各個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度に、全ての刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
実施例
実施例1.癌転移を研究するための2ステップインビボモデル
本研究は、炎症媒介性癌転移を支配するプロセスを調査するために、再現可能な動物モデルの開発を目的とした。
【0141】
最初に、生体材料ミクロスフェアを皮下へ埋め込み、局所的な炎症反応を作り出した。この手技は、生体材料の埋め込みが様々なレベルの炎症反応を引き起こすことを示す広範な研究に基づく。例えば、Kamath S,Bhattacharyya D,Padukudru C,Timmons RB,Tang L.J Biomed Mater Res A 2008;86:617−626;Nair A,Zou L,Bhattacharyya D,Timmons RB,Tang L.Langmuir 2008,24:2015−2024;およびWeng H,Zhou J,Tang L,Hu Z.Tissue responses to thermally−responsive hydrogel nanoparticles.J Biomater Sci Polym Ed 2004,15:1167−1180を参照されたい。
【0142】
第2に、その後、転移性癌細胞を腹腔内に注射するが、これは、リンパ節および循環を介する癌の移動を研究するために広く使用されている。例えば、Carvalho MA,Zecchin KG,Seguin F,Bastos DC,Agostini M,Rangel AL,et al.Int J Cancer 2008;123:2557−2565;Gerber SA,Rybalko VY,Bigelow CE,Lugade AA,Foster TH,Frelinger JG,et al.Am J Pathol 2006;169:1739−1752;およびHippo Y,Yashiro M,Ishii M,Taniguchi H,Tsutsumi S,Hirakawa K,et al.Differential gene expression profiles of scirrhous gastric cancer cells with high metastatic potential to peritoneum or lymph nodes.Cancer Res 2001;61:889−895を参照されたい。
【0143】
異なる期間の癌細胞移植後に、リンパ節、皮下ミクロスフェアインプラント、および周囲組織を組織学的分析のために回収した。癌細胞の数をリンパ節および埋め込み部位の組織の両方において定量して癌転移の程度を示すことができる。最後に、ケモカイン放出足場を作製して、生体内で足場インプラントへの黒色腫動員を促進することに対する様々なケモカインの影響を試験した。
【0144】
材料および方法
癌細胞培養
本研究で使用したB16F10黒色腫細胞、ルイス肺癌(LLC)細胞、ラット前立腺癌細胞株(UHU−31)、ヒト前立腺腺癌(PC−3)、およびヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231)は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(米国バージニア州マナッサス)から購入した。B16F10黒色腫細胞は、C57BL/6Jマウスから単離した皮膚黒色腫細胞株である。C57BL/6Jマウスから単離されたLLC細胞は、癌転移のモデルとして広く使用されている。JHU−31細胞はラットに由来し、肺およびリンパ節への高い転移率(>75%)を示す。PC3細胞は、骨転移性前立腺腺癌を有する62歳の男性白人由来である。MDA−MB−231細胞は乳腺癌転移胸水に由来する。全ての細胞を、37℃、5%CO加湿環境で10%熱不活性化ウシ胎児血清を補充したDMEM中で維持した。インビボ追跡のために、癌細胞のいくつかを、公知の方法(ユーザーマニュアルからの方法を含む)を用いてKodak社製X−Sight 761ナノスフェア(Carestream Health社、米国コネチカット州ニューヘブン)で標識した。Nair A,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Zhang CC,Tang L.Biomaterial implants mediate autologous stem cell recruitment in mice.Acta Biomater 2011;およびThevenot PT,Nair AM,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Tang L.The effect of incorporation of SDF−1 alpha into PLGA scaffolds on stem cell recruitment and the inflammatory response.Biomaterials 2010;31:3997−4008。
【0145】
ミクロスフェア製剤
様々な程度の異物反応を促すために、ポリ−L−乳酸(PLA)、水酸化アルミニウム(アルヒドロゲル85)、ガラス(Glasperlen(登録商標)を含む異なる材料で作られたミクロスフェアを本研究で使用した。PLAミクロスフェアを、改変された沈殿法に従って合成した。Weng H,Zhou J,Tang L,Hu Z.Tissue responses to thermally−responsive hydrogel nanoparticles.J Biomater Sci Polym Ed 2004;15:1167−1180;Carvalho MA,Zecchin KG,Seguin F,Bastos DC,Agostini M,Rangel AL,et al.Fatty acid synthase inhibition with Orlistat promotes apoptosis and reduces cell Growth and lymph node metastasis in a mouse melanoma model.Int J Cancer 2008;123:2557−2565;Gerber SA,Rybalko VY,Bigelow CE,Lugade AA,Foster TH,Frelinger JG,et al.Preferential attachment of peritoneal tumor metastases to omental immune aggregates and possible role of a unique vascular microenvironment in metastatic survival and growth.Am J Pathol 2006;169:1739−1752;Hippo Y,Yashiro M,Ishii M,Taniguchi H,Tsutsumi S,Hirakawa K,et al.Differential gene expression profiles of scirrhous gastric cancer cells with high metastatic potential to peritoneum or lymph nodes.Cancer Res 2001;61:889−895;Nair A,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Zhang CC,Tang L.Biomaterial implants mediate autologous stem cell recruitment in mice.Acta Biomater 2011;Thevenot PT,Nair AM,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Tang L.The effect of incorporation of SDF−1 alpha into PLGA scaffolds on stem cell recruitment and the inflammatory response.Biomaterials 2010;31:3997−4008;およびFessi H,Puisieux F,Devissaguet JP,Ammoury N,Benita S.Nanocapsules formation by interfacial polymer deposition following Solvent displacement.Int J Pharm 1989;55:R1−R4を参照されたい。
【0146】
これらのミクロスフェアの平均サイズは、それぞれ直径8.23±2.12、10、および450〜500μmであった。全てのミクロスフェアを70%エタノールで滅菌し、その後、実験前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS、100mM、pH7.2)に移した。
【0147】
ケモカイン放出足場の作製
ケモカインSDF−1α:(Prospec−Tany TechnoGene(株)、レホヴォト、イスラエル)およびEPO(Cell Sciences社、米国マサチューセッツ州カントン)を放出するPLGA足場を、以前に公開された方法を用いて作製した。Nair A,Thevenot P,Dey J,Shen J,Sun MW,Yang J,et al.Novel polymeric scaffolds using protein Microbubbles as porogen and growth factor carriers.Tissue Eng Part C Methods 2010;16:23−32。
【0148】
簡単に説明すると、SDF−α:(1μg/ml)またはEPO(100 IU)を装填して、窒素ガスバブリング下、10%w/vウシ血清アルブミンを超音波処理することによって作られるアルブミンマイクロバブルを、1,4−ジオキサン中10%w/vPLGA溶液に添加した。このような混合物を液体窒素で凍結し、少なくとも72時間凍結乾燥して、SDF−αまたはEPOのいずれかを装填した3−D分解性癌細胞トラップを形成した。
【0149】
癌転移の動物モデル
動物実験を、Jackson Laboratory社(米国メイン州バーハーバー)からのC57BL/6マウス(6〜10週齢)を用いて行った。このマウス癌転移モデルは、2つの連続するステップから成る。最初に、生体材料のミクロスフェア(75mg/食塩水0.5ml/マウス)を皮下の局所的な炎症を誘発するためにマウスの背部皮下空間に埋め込んだ。第2に、異なる期間(6時間〜14日)ミクロスフェアを埋め込んだ後に、癌細胞(5×10細胞/0.2ml/マウス)を腹腔内に移植した。腫瘍細胞移植から24時間後に動物を屠殺した。次いで、重要な臓器、リンパ節、ミクロスフェアインプラントおよび周囲組織を回収し、−80℃でOCT包埋培地(Polysciences社、米国ペンシルベニア州ウォリントン)中で凍結した。末梢血もさらなる分析のために収集した。8μmの厚さの切片をLeica社製クリオスタット(CM1850)を用いてスライスし、組織学的および免疫組織化学的分析のために、ポリ−L−リジンをコーティングしたスライド上に置いた。異物反応の程度を低減するために、投与前に、PLAミクロスフェアの一部を、抗炎症剤デキサメタゾン(薬物0.1mg/ミクロスフェア懸濁液0.5ml)に浸漬した。癌細胞遊走の全身イメージングでは、並行試験を行いC57BL/B6マウスにおけるX−Sight 761ナノスフィア標識B16F10細胞の遊走を監視した。その後、動物を、Kodak社製インビボイメージングシステムFXプロ(Carestream Health社、米国コネチカット州ニューヘブン)を用いて画像化した。
【0150】
生体内分布解析
動物内での細胞移動を追跡するために、B16F10細胞を緑色蛍光タンパク質を有するAd5ウイルス(pEGFP−N1、Clontech Laboratories社、米国カリフォルニア州マウンテンビュー)で24時間、50のMOIにて形質導入し、その後、腹腔に注入した。実験前に、B16F10へのGFP Ad5の感染力を、蛍光顕微鏡によって可視化したGFP発現によって評価した。生体内分布の分析では、前述したように、培地(0.2ml)に懸濁したGFP−B16F10(1.0×10)をC57BL/6マウスの腹膜に注入した。動物を屠殺した後、組織切片を蛍光顕微鏡下で分析した。癌転移の程度を示すために、異なる組織における癌細胞密度を定量した。いくつかの研究では、生体内分布の分析は、FITC標識癌細胞およびエクスビボでの臓器イメージング法を用いて行うこともできる。研究終了時に、全ての臓器を動物から単離し、様々な臓器における癌細胞の分布を、Kodak社製インビボイメージングシステムを用いて決定した。
【0151】
癌細胞遊走におけるケモカイン阻害剤および中和抗体の影響
癌転移におけるCXCR4/SDF−1αおよびCCR7/CCL21経路の役割を決定するために、AMD3100およびCCL21中和抗体を用いて、それぞれ、CXCR4/SDF−1αおよびCCR7/CCL21経路を遮断した。具体的には、腫瘍注入の1時間前および腫瘍注入の12時間後に、ミクロスフェアを埋め込んだ動物に、AMD3100(250μg/0.1ml/マウス、Sigma−Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)またはCCL21(1mg/0.1ml/マウス:R&D Systems社、米国ミネソタ州ミネアポリス)の中和抗体のいずれかを腹腔内注射した。
【0152】
炎症応答および癌細胞遊走の組織学的定量化
CD11b+炎症細胞およびHMB45+黒色腫細胞について免疫組織学的分析を行い、それぞれ、インプラント媒介性炎症反応および黒色腫細胞遊走の程度を評価した。簡単に説明すると、組織切片を一次抗黒色腫抗体(HMB45、1:50希釈、Abeam社、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)または抗マウスCD11b抗体(1:20希釈、Serotec社、米国ノースカロライナ州ローリー)と共に、37℃で1時間インキュベートした。その後、PBSで3回洗浄した後、スライドをHRP結合二次抗体またはFITC結合二次抗体(1:500希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国ペンシルベニア州ウェストグローブ)のいずれかと共に、37℃で1時間インキュベートした。FITC結合抗体とインキュベートした組織切片は、そのまま画像解析にかけた。HRP結合抗体でインキュベートした切片は、DAB液体基質システムで15分間発色させた。以前に記載されたように、全組織切片の画像を、Retiga−EXi CCDカメラ(Qlmaging、サリー、BC、カナダ)を備えるLeica社製蛍光顕微鏡(Leica Microsystems GmbH社、ウェッツラー、ドイツ)を用いて撮影した。Nair A,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Zhang CC,Tang L.Biomaterial implants mediate autologous stem cell recruitment in mice.Acta Biomater 2011;Thevenot PT,Nair AM,Shen J,Lotfi P,Ko CY,Tang L.The effect of incorporation of SDF−1 alpha into PLGA Scaffolds on stem cell recruitment and the inflammatory response.Biomaterials 2010;31:3997−4008;およびNair A,Thevenot P,Dey J,Shen J,Sun MW,Yang J,et al.Novel polymeric scaffolds using protein microbubbles as porogen and growth factor carriers.Tissue Eng Part C Methods 2010;6:23−32。
【0153】
統計解析
異なるグループ間の統計的比較を、スチューデントt検定または一方向ANOVAを用いて行った。p<0.05の場合に、差異が統計的に有意であるとみなした。
【0154】
生体材料インプラントに向かう癌細胞の動員
生体材料媒介炎症反応には、様々な免疫細胞および炎症性サイトカイン/ケモカインの参加を伴う一連のプロセスが関与する。1日たった皮下インプラントは、炎症細胞(CD11b+)および腹腔内移植したB16F10黒色腫細胞(HMB45+)の浸潤を引きつけることが判明した(図1A)。遠隔炎症部位への黒色腫細胞の移行は、炎症性シグナルが黒色腫細胞の化学誘引物質として働き得ることを示唆している。これを試験するために、様々な程度の炎症反応の黒色腫細胞遊走に対する影響を分析した。様々な炎症強度の局所的な環境を作るために、ポリ−L−乳酸(PLA)ミクロスフェアを異なる期間(6時間、12時間、24時間、2日、7日および14日間)皮下空間に埋め込んだ(図1B)。予想されるように、ほとんどの炎症細胞(CD11b+)の動員は、ミクロスフェア埋め込み後12時間以内に生じ、24時間より後には大して増加しなかった(図1C)。癌細胞遊走における炎症プロセスの段階および強度の重要性を決定するために、B16F10黒色腫細胞を、異なる期間、皮下ミクロスフェアインプラントを有するマウスの腹膜に移植した。炎症開始後の様々な時点で、皮下のミクロスフェア埋め込み部位に移行した黒色腫細胞の数を分析した(図1DおよびE)。興味深いことに、動員された黒色腫細胞の数は、異なる期間のインプラントを有するマウスで大きく異なっていることが判明した(図1DおよびE)。黒色腫細胞の蓄積は、12時間〜最大7日のミクロスフェア埋め込みによって誘発された急性炎症反応に応答しているように思われる。しかし、6時間未満かつ2週間超埋め込まれたミクロスフェアでは、ほんのわずかの黒色腫細胞しかミクロスフェア埋め込み部位へ動員されなかった(図1D)。炎症反応媒介性癌転移の特異性は、Kodak社製近赤外X−Sight761ナノスフェアで標識したB16F10黒色腫細胞を用いて、光学撮像方法により証明することもできた。インビボ画像は、移植された黒色腫細胞がミクロスフェアインプラントを有する背側皮膚部位にのみ動員されたことを示す(図1F)。
【0155】
癌細胞移行に対する炎症抑制の効果
黒色腫細胞移行の誘発における炎症反応の重要性を確認するために、抗炎症剤デキサメタゾンの存在下または非存在下で、同様の皮下へのPLAミクロスフェア埋め込みを行った。予想されたように、デキサメタゾンで処置したミクロスフェアは、生理食塩水とインキュベートしたミクロスフェア対照よりも、実質的により少なくしか炎症細胞(CD11b+)動員を促進しなかった(図2A、写真のパネル:CD11b+対HMB45+、デキサメタゾン処置対対照)。偶然にも、黒色腫細胞(HMB45+)の動員もデキサメタゾンの局所放出によって減少した(図2A)。炎症細胞および黒色腫細胞の減少に対する局所放出デキサメタゾンの影響は、統計的に有意である(図2B)。これらの結果は、炎症反応が腹腔から皮下ミクロスフェア埋め込み部位への癌細胞遊走の開始に不可欠であるという考えを強力に支持する。
【0156】
癌細胞動員に対する生体材料特性の影響
異なる材料が様々な程度の炎症反応を誘発することはよく知られている。生体材料媒介性炎症反応の程度が癌細胞の移行の程度に影響を与えるならば、異なる組織適合性を有する材料は、差次的に黒色腫細胞動員に影響を与える可能性がある。この仮説を試験するために、PLA、水酸化アルミニウム、およびガラスからなるミクロスフェアを、同じ動物モデルを用いて試験した。予想したように、免疫組織化学的分析が示すように、これらの埋め込まれたミクロスフェアは異なる程度の炎症反応および黒色腫細胞移行を引き起こした(図3A)。PLAミクロスフェアは、水酸化アルミニウムおよびガラスからなるミクロスフェアよりも多くの炎症細胞(CD11b+)および黒色腫細胞(HMB45+)の動員を促すことが判明した(図3B)。両方の細胞型の数を比較することによって、発明者らの結果は、炎症反応の程度と黒色腫細胞動員との間に優れた相関がある(R2=0.9197)ことを示した(図3C)。これらの結果は、炎症反応が黒色腫細胞の遊走および、おそらく転移挙動に影響を与えるという発明者らの仮説を強く支持する。
【0157】
癌細胞の生体内分布の評価
発明者らの組織学的結果は、局所炎症反応が腹腔から皮下埋め込み部位に黒色腫細胞移行を誘引するという考えを支持するが、炎症組織/ミクロスフェア埋め込み部位が遊走している黒色腫細胞にとっての唯一の標的であるか否かは明らかではない。主要な臓器(肺、肝臓、腎臓、脾臓、およびリンパ節を含む)におけるGFP発現B16F10黒色腫細胞の全体的な分布を、組織学的分析を用いて評価した。皮下埋め込み部位に加えて、リンパ節および脾臓に多数の癌細胞が見られた。しかし、比較的低い密度の癌細胞が、皮膚、肺、肝臓、および腎臓に見られた(図4)。脾臓における黒色腫細胞の蓄積は、血液フィルター活性に関連付けられ得る。リンパ節における大量の癌細胞の蓄積は、腹膜から血液への黒色腫細胞遊走がリンパ系を介した通過を伴うことを示唆している。
【0158】
炎症反応は、様々な癌転移の過程に関与している。Ikebe M,Kitaura Y,Nakamura M,Tanaka H,Yamasaki A,Nagai S,et al.Lipopolysaccharide(LPS) increases the invasive ability of pancreatic cancer cells through the TLR4/MyD88 signaling pathway.J Surg Oncol 2009;100:725−731;およびKoller FL,Hwang DG,Dozier EA,Fingleton B.Epithelial interleukin−4 receptor expression promotes colon tumor growth.Carcinogenesis 2010;31:1010−1017。
【0159】
発明者らの結果はこれまでのところ、炎症がB16F10黒色腫細胞を炎症部位に蓄積させるという仮説を支持するが、他の種類の癌細胞も同様に応答するか否かは明らかではなかった。異なる供給源に由来するいくつかの癌細胞(ルイス肺癌、ヒトMDA−MB−231乳癌、ヒトPC3前立腺癌、ラットJHU−31前立腺癌)をNIRプローブで標識することにより、同一の動物モデルを試験した。興味深いことに、癌細胞遊走の程度は細胞型間で変化しているが、本明細書に記載の試験した全ての癌細胞は皮下埋め込み部位に遊走することが判明した(図5)。
【0160】
炎症媒介性癌遊走に関連する分子経路
ミクロスフェア埋め込み部位への癌細胞動員に関する上記の観察にもかかわらず、この動物モデルが、以前の他の癌転移モデルに似た細胞反応および生理学的反応を示すか否かはまだ明らかではなかった。このモデルの妥当性を試験するために、異物反応媒介性癌遊走を支配する分子プロセスを最初に同定した。CXCR4/CXCL12およびCCR7/CCL21の両方の経路が黒色腫癌転移において重要な役割を果たすことが示されているので、異物反応媒介性癌遊走における両経路の潜在的な役割を評価した。
【0161】
最初に、CXCR4/CXCL12経路が発明者らの動物モデルに関与しているか否かを試験した。実際に、SDF−1α受容体CXCR4の拮抗薬であるAMD3100での処置は、黒色腫細胞および炎症細胞の両方の皮下ミクロスフェア埋め込み部位への動員を大幅に減少させた(図6A)。一方、AMD3100処置は、リンパ節における黒色腫細胞の蓄積に影響を及ぼさなかった(図6B)。炎症部位でのB16F10黒色腫細胞蓄積におけるCCR7/CCL21経路の重要性を試験するために、ミクロスフェアを有するマウスを、黒色腫細胞移植前にCCL21中和抗体または生理食塩水のいずれかで処置した。ミクロスフェア埋め込み部位へ遊走する腫瘍細胞の数は、CCL21中和抗体処置によって影響を受けなかったことが観察された(図6C)。一方、CCL21中和抗体処置は、リンパ節におけるB16F10黒色腫細胞の存在を著しく減少させた(図6D)。これらの結果は、CXCR4/CXCL12経路ではなく、CCR7/CCL21経路が、リンパ系を介した黒色腫遊走に重要であることを示している。一方、CCR7/CCL21経路ではなく、CXCR4/CXCL12経路が、皮下埋め込み部位への細胞移行に不可欠である。
【0162】
癌細胞動員を増強するためのケモカイン放出足場の適用
以前の結果は、インプラント関連性の炎症産物が循環癌細胞を活発に動員することを支持する。次の問題は、癌細胞の動員が癌細胞遊走特異的ケモカインによって増強されるのか否かである。この答えを見つけるために、発明者がSDF−1αおよびEPOに興味を持ったのは、これらのケモカインの両方が癌細胞遊走を増強することが示されており、かつ転移性癌細胞で上方制御されているからである。Gomperts BN,Strieter RM.Chemokine−directed metastasis.Contrib Microbiol 2006;13:170−190;およびLugade,A.A.,et al,J Immunol,2005.174(12):p.7516−23。
【0163】
この仮説を試験するために、SDF−1放出足場およびEPO放出足場を作製した。発明者らの結果は、これらの足場が約10日間、装填された薬物の10%を放出することが可能であることを示した。マウスの皮下に埋め込みその後NIR標識B16F10黒色腫細胞を移植した場合、対照と有意差がなかったSDF−1αと比較して、EPOの局所放出は最も高い癌細胞動員を促したことが判明した(図7AおよびB)。足場を有する動物の生存期間も、インビボイメージングの検出が終了した後に評価した。非常に興味深いことに、SDF−1α装填足場と比較して、EPOの放出が担癌マウスの生存率を著しく延長(>30%)していることが判明した(図7C)。
【0164】
実施例2.様々な転移性癌の治療における癌細胞トラップの有効性
白血病
AML細胞株を用いて、白血病を治療するための癌細胞トラップの有効性を試験した。AML細胞株の注射によってマウスに白血病を誘導した。循環する白血病細胞が40%に達成するまで異なる期間埋め込んだ後、EPO放出足場または対照足場(EPO無し)のいずれかを動物に埋め込んだ。その後、両群の動物の血液中の白血病細胞数を監視した。白血病細胞数が時間とともに増加することが判明した。一方、図14に示すように、白血病細胞数の増加は実質的に減速した。
【0165】
EPO放出では、白血病移植マウスの生存は約90日であることが判明した。しかし、図14に示すように、癌細胞トラップ(EPO放出)は生存期間を20%増加させる。
【0166】
黒色腫癌
近赤外標識B16F10黒色腫細胞を移植したマウスを用いて、癌転移の低減における癌細胞トラップの効果を検討した。具体的には、PEGヒドロゲルを癌細胞トラップの担体として使用した。PEGヒドロゲルを、RANTES(100ng/ml)、IL8(10ng/ml)または(対照として)生理食塩水と混合した。C57マウスに黒色腫細胞(10/マウス)を静脈内移植し、その後癌細胞トラップゲル1mlを皮下に注入した。図15に示すように、24時間の埋め込み後、対照よりも実質的に多くの黒色腫細胞が、RANTESまたはIL−8のいずれかを放出する癌細胞トラップへと動員されたことが判明した。さらに、対照との比較で、末梢血中の黒色腫細胞数は、RANTESまたはIL−8放出ヒドロゲルを有するマウスにおいて、それぞれ76%または82%減少した。
【0167】
様々な処置をした動物の生存期間も監視した。RANTES放出およびIL−8放出ヒドロゲルインプラントが、動物の寿命を対照との比較で実質的に20%超増加させることが判明した(図15参照)。
【0168】
前立腺癌
近赤外標識PC3前立腺癌細胞(10/動物)を腹腔内に移植したマウスを用いて、前立腺癌転移の低減における様々な癌細胞トラップの有効性を決定した。そのために、VEGF(50ng/インプラント)またはEPO(1,000 ID/インプラント)のいずれかを放出できる組織足場を作製した。これらの癌細胞トラップを担癌マウスの腹膜に移植した。Kodak社製インビボ撮像システムを用いて癌細胞動員の程度を監視した。図16に示すように、24時間の埋め込み後、対照よりも実質的に多くの前立腺癌細胞がVEGFまたはEPOのいずれかを放出する癌細胞トラップへと動員された。さらに、腹膜洗浄液における前立腺癌数も測定した。対照と比較して、VEGF放出またはEPO放出足場を有するマウスにおける腹膜液中の前立腺癌数は、それぞれ86%または91%低減したことが判明した。
【0169】
様々な処置をした動物の生存期間も監視した。VEGF放出およびEPO放出インプラントは、動物の寿命を対照との比較で実質的に25%超増加させることが判明した(図16参照)。
【0170】
実施例3.タンパク質を放出する分解性組織足場の作製
物理吸着は、増殖因子を放出する足場を作製するために多くの研究で使用されてきたが、このような方法では1〜2日間の増殖因子の放出しか可能でない。放出期間を改善するために、増殖因子をコーティングした足場を作製するための化学結合プロセスが開発されてきた。残念ながら、このような化学反応は、足場材料特性および組み込まれたタンパク質の生物活性を変える場合が多く、また追加の複雑な化学反応を必要とする。このような欠点を克服するために、アルブミンマイクロバブル(MB)をポロゲン(図10A)および増殖因子担体として使用する新規な2ステップ多孔質足場作製手順を作り出した。Nair,A.,et al.,Novel polymeric scaffolds using protein microbubbles as porogen and growth factor carriers.Tissue Eng Part C Methods,2010.16(1):p.23−32。
【0171】
最初に、マトリックスが相互連結したMB埋め込み足場の孔径は100〜150μmの範囲を示した(図10A)。また、クーマシーブルータンパク質染色により示されるように孔に沿ってタンパク質沈着も観察され、このことはMBが大きい孔径に関与することを示す(図10B)。その後、MBが足場作製プロセス中に溶剤の不活性化から増殖因子を保護できるか否かを試験した。そのため、コラーゲン生成の強力な刺激因子であるインスリン様増殖因子−1(IGF−1)をモデルケモカインとして選択した。実際に、MBは、足場作製によく用いられる有機溶媒への曝露後でさえ増殖因子の生物活性を保護できた。これらのIGF−1装填MBをPLGA足場に組み込み、放出試験を行った。MB足場から放出されるIGF−1は、IGF−1に浸漬した対照足場よりも3倍を超える生物活性があった(図10B)。
【0172】
実施例4.注入可能な癌細胞トラップの開発
多孔質足場の主な欠点は、外科的処置またはトロカールが埋め込みに必要とされることである。この状況を改善するために、研究を行ってタンパク質放出特性を有する水ベースの温度感受性ヒドロゲルを合成した。この努力の結果により、ポリエチレングリコール−ポリアクリル酸相互貫入ネットワーク(PEG−PAA−IPN)ヒドロゲルを生成した。沈殿重合法を用いてポリエチレンナノ粒子を最初に合成した。Tong Cai,M.M.,and Zhibing Hu,Monodisperse Thermoresponsive Microgels of Poly(ethylene glycol)Analogue−Based Biopolymers.Langmuir,2007.23(17):p.8663−8666を参照されたい。その後、PEGナノ粒子を、二次ポリアクリル酸(PAA)ネットワークを形成するためのシードとして使用した。PEG−PAA−IPNは、室温で様々なケモカインおよび薬物と容易に混合できる。皮下注入後、温度が上昇するにつれて、PEG−PAAナノ粒子は体内で膨潤して固体で多孔性のインプラントを形成した(図11A)。0%、3%、対5%のナノ粒子を含むヒドロゲルからのNIR標識ウシ血清アルブミン(BSA)の放出も監視した。予想されたように、PEG−PAA−IPNは、NIR−BSAの放出を実質的に延長した(図11B)。BSA放出の期間は、ポリマーの重量百分率に依存する(図11C)。同様の制御放出特性が、インスリンおよびEPOなどの他のタンパク質を用いても見出された。発明者らの結果は、PEG−PAA−IPNヒドロゲルが制御された方法で様々なタンパク質放出を容易に行うことができるという考えを支持する。
【0173】
実施例5.マイクロバブル足場の作製
ケモカイン/増殖因子装填PLGA足場を、発明者らのタンパク質マイクロバブル作製法を用いて作製した。簡単に説明すると、様々なケモカインを有する2〜20%w/vのタンパク質溶液を、窒素ガスで重層し、10秒間、20kHzでプローブソニケータ(Ultrasonix社、ワシントン州ボセル)を用いて超音波処理した。タンパク質溶液は、単一タンパク質または異なる比率のタンパク質混合物で構成できる。潜在的なタンパク質候補には、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、免疫グロブリン、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチンなどが含まれる。タンパク質マイクロバブル溶液を1:1の比でPLGA(1,4−ジオキサン中3〜15%w/v)に添加し、穏やかに攪拌できる。その後、それらを液体窒素中で急冷し、0.01〜0.1ミリバールの真空で、フリーゾーン(Freezone)12凍結乾燥機(Labconco社、米国ミズーリ州カンザスシティ)で72時間凍結乾燥した。
【0174】
マイクロバブル(MB)足場を、走査型電子顕微鏡を用いて分析した。ポロゲンの非存在下では、対照の相分離足場は20μmの孔を有するのみであった(図12A)。しかし、ゼラチンMB足場は、10〜200μmの範囲の大きな孔隙の存在を示した(図12B)。足場のタンパク質分布および内部構造を、以前に記載されたように、クーマシーブルーで組織切片を染色することによって決定した。予想されたように、ポロゲンの非存在下では、足場部分はクーマシーブルー色素を保持しない(図12C)。対照的に、ゼラチンMB足場部分のクーマシーブルー染色は、孔の周りおよびゼラチンMB足場のマトリックス全体にタンパク質の存在を示した(図12C)。足場の圧縮強度を、500N装填セルを取り付けたMTSインサイト2機(MTS Insight 2 machine)を用いて試験した。試料(幅5mmおよび厚さ5mm)を、2mm/分の偏向速度で10%の歪みまで圧縮した。ヤング率は、発明者らの以前の出版物に類似する曲線の傾きから計算した。孔の大きさの違いにもかかわらず、ゼラチンMB足場と対照との間に多孔度に差は認められず、作製技術はゼラチンMB足場の圧縮強度における著しい危殆化を示唆しなかった(図12G)。最終的に、MB足場からのサイトカイン/増殖因子の放出動態を、オイスター800結合EPOおよびオイスター800結合SDFを用いて決定した。興味深いことに、最初の24時間以内に両方のケモカインのボーラス放出(20%)があることが判明した。その後、足場は、両方のケモカインを一日あたり総量の約2%を徐放した(図12H)。
【0175】
実施例6.前立腺癌細胞動員におけるヒドロゲル癌細胞トラップ
近赤外標識PC3前立腺細胞を移植したマウスを用いて、癌転移の低減におけるヒドロゲル癌細胞トラップの効果を検討した。具体的には、PEGヒドロゲルを以下のように作製した。カルボキシル末端PEG誘導体ポリマーを、フリーラジカル重合を用いて合成した。簡単に説明すると、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)および様々な重量比(10:1〜20:1)の2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート(MEOMA)およびオリゴ(エチレングリコール)モノメチルエーテルメタクリレート(分子量:475;OEOMA475)をエタノールに溶解して20重量%のモノマー溶液を形成した。溶液を10分間窒素ガスでパージし、6時間60℃でインキュベートした。その後、溶媒を真空下で蒸発させて除去し、粗ポリマーをDI水に再溶解し、DI水に対して透析で精製した後、凍結乾燥した。カルボキシル末端PEG誘導体ポリマーの低臨界溶液温度(LCST)を、UV−可視分光計を用いて測定した。OEOMA475に対するMEOMAのモル比を変化させることにより、32℃のLCSTを有するカルボキシル末端PEG誘導体ポリマーが得られ、このポリマーを用いて下記のように熱ゲル化生物活性ヒドロゲル足場を作製した。PEGヒドロゲルへのケモカイン/サイトカインの組み込みは、物理吸着によって達成された。PEGヒドロゲルを、血管内皮増殖因子(VEGF)(100ng/ml)、エリスロポエチン(EPO)(100国際単位/ml)、間質由来因子−1α(SDF−1α)または(対照として)生理食塩水と混合した。その後、ヒドロゲル試料を20ゲージの針を介して、C57マウスの(皮膚の下の)皮下腔に注入した。その後、マウスに、PC3前立腺癌細胞を静脈内移植した(5×10/マウス)。24時間の移植後、多数のPC3細胞が、蛍光強度の増加によって反映されるように、ヒドロゲルインプラント部位に蓄積することが判明した。発明者らの結果は、VEGF、EPOまたはSDF−1αの局所放出が、インプラント部位(癌細胞トラップ)へのPC3前立腺癌細胞の動員を増加させたことを示している。図17を参照されたい。
【0176】
実施例7.ヒアルロン酸粒子のタンパク質放出速度
異なるサイズのヒアルロン酸(HA)粒子(直径2、10、20および40μm)を、発明者らが公開した手順(米国特許第7,601,704号;Zou L,Nair A,Weng H, Tsai YT,Hu Z,Tang L.Intraocular pressure changes:an important determinant of the biocompatibility of intravitreous implants.PLoS One.2011;6(12):e28720.PMCID:3237488)に従って作製した。以下に説明するように、粒子を生成した。アセトンを、100:80(アセトン:HA溶液)の重量比で0.5重量%のHA溶液に加え、混合物を2時間攪拌した。アジピン酸ジヒドラジド(ADH)およびEDAC(EDACに対するADHのモル比1:1)を、0.05:100(ADH:HA)の重量比で混合物に添加して架橋された混合物を形成した。その後、この混合物を約24時間20℃で攪拌した後、約160:100(アセトン:HA溶液)の重量比で追加のアセトンを添加して最終混合物を形成した。最終混合物を20時間撹拌し、蒸留水に対して透析してHA粒子を形成した。2.5〜3.8の範囲のアセトン/水の重量比を維持しながら、HAの濃度を変えることにより、異なるサイズのHA粒子を作製できる。その後、HAに対するADHの重量比を変えることにより(0.01/100〜0.20/100)、様々な架橋密度を有する一連のHA粒子を調製した。
【0177】
様々な癌細胞ケモカインの装填効率を最大にするために、HA粒子内への様々な巨大分子のカプセル化について「呼吸(breathing−in)」法を用いた(Blackburn WH,Dickerson EB,Smith MH,McDonald JF,Lyon LA.Peptide−functionalized nanogels for targeted siRNA delivery.Bioconjugate chemistry.2009;20(5):960−8.PMCID:2765502)。簡単に説明すると、凍結乾燥HA粒子を、血管内皮増殖因子(VEGF)(100ng/ml)、エリスロポエチン(EPO)(100国際単位/ml)、間質由来因子−1α(SDF−1α)を含む溶液に再懸濁した。重要なことに、これを、膨潤粒子によってほぼ完全に吸収されるローディング溶液容量を用いて行った。
【0178】
HA粒子が皮下タンパク質送達のために使用できるか否かを試験するために、研究を行った。簡単に説明すると、取扱説明書にしたがって近赤外(NIR)色素(Oyster(登録商標)−800、Boca Scientific社)で標識したBSAを最初に合成した。BSA−NIRを、対照(BSA−NIR)またはBSA−NIR装填HA粒子と共にBalb/Cマウスの皮下空間(皮膚の下)に注入した。その後、BSA−NIRの放出を、Kodak社製インビボFX Proシステム(f/停止、2.5;励起フィルター:760nm;発光フィルター:830nm:4×4ビニング)を用いて毎日監視した。イメージング解析では、関心領域を、蛍光画像内の注入部位の上に描画し、蛍光画像内の全ピクセルの平均強度を計算した。HA粒子へのBSAのカプセル化は、NIR標識BSA(実施例2)の放出率を14日を超えるまで実質的に延長することが判明した。図18A〜18Bを参照されたい。
【0179】
実施例8.転移性癌の治療および診断のための癌細胞トラップ
癌細胞トラップは、転移性癌細胞の動員を誘発するように設計されたインプラントである。このようなデバイスは、癌診断および癌治療の両方に使用できる。
【0180】
動員された癌細胞は、診断目的のために癌細胞トラップから抽出できる。そのために、癌細胞トラップは、インプラントの片側または両側に開口部を有する管状構造として作製されてもよい。図19を参照されたい。多孔質構造は、癌細胞トラップの側面および開口部からの内腔への癌細胞の浸潤を可能にする。その後、組織液を含む癌細胞を、18〜23ゲージの針を介して癌細胞トラップの内腔から回収できる。その後、動員された細胞の種類を、フローサイトメトリー法を用いて決定できる。
【0181】
癌治療の目的のために、癌細胞トラップは抗癌薬を放出するよう作成できる。癌細胞トラップは局在化放射線にも暴露され得る。これらの方法は、動員された癌細胞をインプラント部位で根絶することを可能にする。図20を参照されたい。
【0182】
【表1】
【0183】
実施例10.ケモカイン濃度および期間
癌細胞トラップからの様々な癌幹細胞ケモカイン/増殖因子の放出速度を決定するために実験を行った。各生体分子の最適な放出速度を以下に列挙する。
【0184】
【表2】
【0185】
ヒト患者のための癌細胞トラップのサイズおよび寸法。このようにこれまで行った全ての研究は、マウス癌モデルを使用した。癌細胞はケモカインの勾配に基づいて動員されるので、全身濃度ではなく局所濃度が決定要因である。言い換えれば、癌細胞トラップの有効性は、上の表に列挙したように局所放出速度に基づいて決定される。
【0186】
実施例11.癌細胞トラップ埋め込み部位
癌細胞トラップは、皮下空間および腹腔内の空洞に埋め込むことができる。動物実験を、ジャクソン・ラボラトリー(米国メイン州バーハーバー)からのC57BL/6マウス(6〜10週齢)を用いて行った。このマウス癌転移モデルは、2つの連続したステップで構成されている。最初に、ルイス肺癌(LLC)癌細胞(5×10細胞/0.2ml/マウス)を静脈内注射により動物に移植した。第2に、EPO装填ナノ粒子癌細胞トラップ(600国際単位/1ml)を皮下空間または腹腔内空間に注入した。4週間の癌細胞トラップの埋め込み後、肺における転移癌病巣数を定量した。皮下空間(皮膚の下)および腹腔内空間(腹腔内)の両方への癌細胞トラップの埋め込みは、いずれも肺におけるLLC癌細胞病巣形成の低下に有効であることが見出された。図21を参照されたい。
【0187】
温度感受性ヒドロゲルナノ粒子の作製は、最近の出版物(Cai T,Hu P,Sun M,Zhou J,Tsai Y−T,Baker DW,Tang L.Novel thermogelling dispersions of polymer nanoparticles for controlled protein release.Nanomedicine 8(8):1301−8,2012)に記載されている。ポリ(オリゴ(エチレングリコール))ナノ粒子を、沈殿重合法を用いて調製した。具体的には、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)0.02g、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.08g、およびメタクリロイル−L−リジン0.61gと共に、OEGEEM 6.3g、MEOMA 0.86gを三つ口フラスコ中の蒸留水400gに添加し、このフラスコを30分間、窒素ガス下、70℃の循環水浴に入れた。過硫酸アンモニウム(APS)0.20gを水5gに溶解し、この溶液に添加して重合を開始した。窒素ガス下、6時間、70℃で反応を行った。得られたポリ(オリゴ(エチレングリコール)ナノ粒子を、一週間、DI水に対して透析して精製した。その後、上記で調製したナノ粒子をシードとして使用してポリアクリル酸(PAAC)に基づく第二のネットワークを形成した。ポリ(オリゴ(エチレングリコール)ナノ粒子溶液252gを、24時間23℃で、フラスコ中でN,N−メチレンビスアクリルアミド(BIS)0.3gおよびアクリル酸3.0gと混合した。その後、TEMED0.2gおよび過硫酸アンモニウム(APS)0.2gを各々水5gに溶解した後、フラスコに加えた。反応を30分間窒素雰囲気中で行った。得られたナノ粒子を、一週間DI水に対して透析することにより精製し、さらなる使用のために遠心分離した。
【0188】
実施例12.循環癌細胞の低減における癌細胞トラップの有効性
循環癌細胞の低減または排除におけるヒドロゲル癌細胞トラップの有効性を試験した。動物実験を、ジャクソン・ラボラトリー(米国メイン州バーハーバー)からのC57BL/6マウス(6〜10週齢)を用いて行った。近赤外色素標識したB16F10黒色腫癌細胞またはLLC癌細胞(5×10細胞/0.2ml/マウス)を静脈内注射により動物に移植した。様々なケモカイン/増殖因子(EPO、600国際単位/1ml;SDF−1α 10μg/1ml、RANTES/CCL5 600ng/ml、またはHGF/SF 900ng/ml)を装填したPEGヒドロゲルを、動物の背中の皮下空間に注入した。24時間の癌細胞移植後、血液を各動物から採取し、その後、白血球の総数のうちの癌細胞の割合を、フローサイトメトリー法を用いて定量した。様々な癌細胞トラップが循環中の癌細胞数を低減できることが判明した。図22および図23を参照されたい。
【0189】
実施例13.ケモカイン濃度および期間
癌細胞トラップの埋め込みが癌細胞の広がり−転移を低減できるか否かを調べるために、さらなる研究を行った。答えを見つけるために、近赤外色素標識LLC癌細胞(5〜10細胞/0.2ml/マウス)を静脈内注射によってC57マウスに移植した。EPO装填PEGヒドロゲル(600国際単位/1ml;ヒドロゲルとして標識)およびEPO装填PLA足場(600国際単位/1ml、足場として標識)をそれぞれ、動物の背中の皮下空間に注入または埋め込んだ。24時間の癌細胞移植後、全ての臓器を動物から単離し、様々な臓器におけるLLC細胞の分布を、Kodak社製インビトロイメージングシステムを用いて決定した。実際、ヒドロゲル癌細胞トラップおよび足場癌細胞トラップの埋め込みは、LLC転移の主な臓器である肝臓、脾臓および肺において動員される癌細胞数を実質的に低減することが判明した。図24を参照されたい。
【0190】
実施例14.癌撲滅における化学療法薬の局所放出
温度感受性ヒドロゲルナノ粒子の作製は、最近の出版物(Cai T,Hu P,Sun M,Zhou J,Tsai Y−T,Baker DW,Tang L.Novel thermogelling dispersions of polymer nanoparticles for controlled protein release.Nanomedicine 8(8):1301−8,2012)に記載されている。ナノ粒子に、ドキソルビシン(300μg/ml)およびパクリタキセル(30mg/ml)の存在下または非存在下でEPO(600国際単位/1ml)を装填した。そのために、EPO(600国際単位)、ドキソルビシン(300μg)またはパクリタキセル(30mg)を、室温でヒドロゲルナノ粒子50μgと混合した。埋め込み後に、ドキソルビシンおよびパクリタキセルのインビボ放出速度の平均値を、それぞれ10μg/日および1mg/日で測定した。
【0191】
化学療法薬装填癌細胞トラップの埋め込みが、インプラント部位で癌細胞を死滅させることができるか否かを決定するために、さらなる研究を行った。答えを見つけるために、C57マウスに、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識LLC癌細胞(5×10細胞/0.2ml/マウス)またはFITC標識黒色腫細胞を静脈内注射により移植した。異なる期間(1、2、4、および7日間)埋め込んだ後に、動物を屠殺した。インプラントおよび周囲の組織を単離した後、組織学的分析のために切片を作った。細胞動員を定量するために、組織切片の画像を、Qlmaging Retiga−EXi CCDカメラ(Qlmaging、サリー、BC、カナダ)を備えたLeica社製蛍光顕微鏡(Leica Microsystems Wetzlar GmbH、ウェッツラー、ドイツ)を用いて撮影した。その後、400倍の倍率での組織切片像(表示画面0.24mm)を用いて、ImageJ処理プログラムのセルカウンタプラグインによって視野当たりの細胞数を定量した。
【0192】
予想されたように、化学療法薬(ドキソルビシンおよびパクリタキセル)の補充は、動員されるPC3細胞および黒色腫細胞の数を実質的に低減した。これらの結果は、癌細胞トラップがインプラント部位で循環癌細胞を根絶する(7日間で95%超)ために使用できることを支持している。図25および図26を参照されたい。
【0193】
実施例15.局所的な化学療法薬
1Gyでの照射後C57BL/6マウスに0.8×10の競合細胞と共に0.5×10のAE9細胞を移植することにより、AE9 AML(急性骨髄芽球性白血病)モデルを樹立した。その後、末梢血AML細胞がフローサイトメトリーにより10%超検出されるまで、これらの動物をケージで飼育した。マウスを無作為にペアにして、EPO−PLGA足場またはブランクPLGA足場を埋め込んだ。足場の埋め込み後の細胞数および寿命を監視した。図27A〜Cおよび図28A〜Cを参照されたい。
【0194】
癌細胞トラップは、癌細胞だけでなく、癌幹細胞も動員することが判明した。動員されたAML細胞の多くは、幹細胞マーカーを有することが明らかになった。これらの結果は、癌細胞トラップが、循環から癌幹細胞を特異的に除去することにより、癌転移を実質的に弱めることができることを支持している。図29に示すC−kit染色およびGFP+は、癌染色細胞を含む。
【0195】
本教示は、様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図しない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および等価物を包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A-C】
図10D
図11A
図11B
図11C
図12A-B】
図12C-D】
図12E-F】
図12G
図12H
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図28A
図28B
図28C
図29