特許第6387030号(P6387030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387030
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】防音パネル
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20180827BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E01F8/00
   E04G21/32 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-27708(P2016-27708)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-145608(P2017-145608A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】395019306
【氏名又は名称】備讃商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 裕
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−152829(JP,A)
【文献】 特開2009−144485(JP,A)
【文献】 特開2012−036644(JP,A)
【文献】 特開昭55−036547(JP,A)
【文献】 実開平04−031910(JP,U)
【文献】 米国特許第05965852(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
E04G 21/32
E04B 2/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を空けて設けた複数の支柱と、これら支柱の各々の表裏面に対向状に取り付けた壁面部材と、これら壁面部材の垂直及び水平の各々の方向の両端部に設けて壁面部材間を閉塞する閉塞板部材と、を備えた防音パネルにおいて、垂直方向の閉塞板部材の水平方向両端部に、吊り上げ金具を係合させるために形成した係合孔と、壁面部材の垂直方向及び水平方向の各端部に形成した開口と、この開口を開閉する扉部材と、垂直方向の閉塞板部材の垂直方向両端面の、一端面の厚み方向中央部に形成された位置決凸部と、他端面の厚み方向の中央部に形成された位置決凹部と、を有し、さらに、壁面部材のうち現場の内部を向く面を内側としたときの内側の壁面部材はパンチング加工がされ、該壁面部材の対向する空間にはグラスウールが設けられたことを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
壁面部材の外側面に、扉部材の一辺と開口の一辺とに亘って自然状態で両端が離間するばね蝶番を設けたことを特徴とする請求項1記載の防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音パネルを吊り上げる構成に係り、手入れや自作する部材が不要であると共に景観を損なうことのない防音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場など騒音が発生する現場では、その現場を例えば特許文献1のような防音パネルで覆って騒音を抑制している。
【0003】
特許文献1の防音パネルは、壁を支えるように並列する状態に立設される複数本の支柱部材と、該支柱部材の間の表面側を閉塞するように平面を縦方向にする姿勢で積み上げる複数枚の表裏一対の防音板材と、支柱部材及び防音板材により形成される空間の上側開口部及び下側開口部を閉塞する閉塞部材と、を備えて、防音板材の間に、支柱部材で区画されて閉塞されている空気層を形成するものである。
【0004】
特許文献2には、防音パネルを用いた防音ハウスを、移動可能とすると共に移動の際に変形が生じにくくする構造が示されている。
【0005】
すなわち、特許文献2には、土台に間隔を空けて複数本固定された柱、及び柱に設けられている梁を有した躯体と、躯体に設けられた防音パネルと、土台の下に設けられた複数個の車輪と、躯体及び防音パネルで構成される壁及び天井の一部を構成し、躯体に連結させる第1のブレースと、車輪による躯体の移動方向を長さ方向とする左右両側の土台間を連結して、土台の取付位置は左右両側の土台の対向位置であり、着脱自在である、左右両側の土台間の幅保持用連結部材と、を備えることが記載されている。
【0006】
防音パネルは、工事現場まで運搬する運搬車に積載する際、及び移動現場において実際に構築する位置に移動する際、吊り上げて行われる。したがって、防音パネルは、吊り上げが可能な構成を有している。本出願人によれば、従来の防音パネルを吊り上げ可能とする構造として次の(1)〜(3)を確認している。
【0007】
(1)防音パネルの吊り上げる際の上側の面に、表裏を貫通する孔を形成し、この孔の裏面側にナットを溶接して表面側からフック受金具に形成されたボルトを螺着する。
【0008】
(2)防音パネルの吊り上げる際の上側の面に、表裏を貫通する大幅と小幅が連続した孔を形成して、フック受金具に形成された係合部を孔の大幅部位から挿入して小幅部位で係合する。
【0009】
(3)防音パネルの吊り上げる際の上側の面に、表裏を貫通する孔を形成すると共に防音パネルの側面の一部に開口を設け、この開口から手を入れて孔の裏面側にナットを配置し、孔の表面側からフック受金具に形成されたボルトを螺着する。
【0010】
なお、(1)(3)において、フック受金具とは、吊り上げ用の重機に設けたフックを係合するための環状の部位を有した金具を意味する(例えば、マーテック株式会社:フレノ・リンクボルトA型)。(2)において、フック受金具とは、環状の部位から径方向に延びた部材を、孔の大幅部位よりやや狭幅で小幅部位より拡幅の鋼板(係合部)を有した金具を意味する。
【0011】
しかしながら、(1)〜(3)の構造ではそれぞれ次の問題があった。(1)はナットが錆びるため、出荷の際の移動時にはナットの点検や手入れが必要となる。(2)は孔に合う係合部を作成する必要がある、又はそうした孔に合う係合部を有したフック受金具が存在するとしても、係合部を孔に係合するだけなので、安全性に劣る。(3)は開口が常時開状態であるために景観が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−36644号公報
【特許文献2】特開2014−70397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、従来の防音パネルの吊り上げに関する(1)の構造は溶接したナットの点検や手入れを必要となる点、(2)の構造は係合部を自作する必要があると共にこの自作部材の安全性が乏しい点、(3)の構造は開口により景観が損なわれるという点、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の防音パネルは、所定間隔を空けて設けた複数の支柱と、これら支柱の各々の表裏面に対向状に取り付けた壁面部材と、これら壁面部材の垂直及び水平の各々の方向の両端部に設けて壁面部材間を閉塞する閉塞板部材と、を備え、垂直方向の閉塞板部材の水平方向両端部に、吊り上げ金具を係合させるために形成した係合孔と、壁面部材の垂直方向及び水平方向の各端部に形成した開口と、この開口を開閉する扉部材と、垂直方向の閉塞板部材の垂直方向両端面の、一端面の厚み方向中央部に形成された位置決凸部と、他端面の厚み方向の中央部に形成された位置決凹部と、を有し、さらに、壁面部材のうち現場の内部を向く面を内側としたときの内側の壁面部材はパンチング加工がされ、該壁面部材の対向する空間にはグラスウールが設けることとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防音パネルは、上記構成により、市販のボルト付のフック受金具を螺着するためのナットを溶接する必要がない。また、例えばボルト付のフック受金具を用いる場合、本発明の防音パネルは、開口を開けてここから手を入れて孔の裏面側にナットを容易に配置することができ、ボルト付フックを螺着後に開口から手を出した後に開口を閉めることができるので、景観を損なうことがない。また、位置決凸部と位置決凹部により、壁面部材3を高さ方向に直線状に並設することができる。
【0016】
さらに、本発明の防音パネルは、取り付けに若干の作業を要する市販のフック受金具も壁面に設けた開口から手を入れることができるので、作業が容易となり、よって市販のフック受金具を幅広く使用可能となる。また、本発明の防音パネルは、前記のように市販のフック受金具を幅広く採用できることで、安全性について、市販品の保証書などで確認できるといった利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の防音パネルの、(a)は正面を、(b)は平面を、(c)は底面を、(d)は正面の右側面を、(e)は正面のA−A線断面を、(f)は正面のB−B線断面を、各々示した図である。
図2図2は本発明の防音パネルの、図1(f)のa部を拡大した図である。
図3図3は本発明の防音パネルの、(a)は図1(e)のb部を拡大した図、(b)は図1(e)のc部を拡大した図、である。
図4図4は本発明の防音パネルの、(a)は図1(d)のd部を拡大した図、(b)は図1(d)のe部を拡大した図、である。
図5図5は本発明の防音パネルの図1(a)のf部を拡大した図である。
図6図6は本発明の実施例で防音パネルに採用したばね蝶番の、(a)は正面を、(b)は分解した正面を、各々示す図である。
図7図7の(a)〜(c)は、本発明の防音パネルにフック受金具及びフックを取り付けた状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の防音パネルは、溶接したナットの点検や手入れを必要となる点、係合部を自作する必要があると共にこの自作部材の安全性が乏しい点、開口が常時開状態であるために景観が損なわれるという点を、複数の支柱の各々の表裏面に対向状に取り付けた壁面部材の垂直方向及び水平方向の各端部に形成した開口と、この開口を開閉する扉部材と、壁面部材間を閉塞する垂直方向の閉塞板部材における水平方向両端部に、吊り上げ金具を係合させるために形成した係合孔と、を有した構成とすることで解消した。
【0019】
また、本発明の防音パネルは、上記構成において、壁面部材の外側面に、扉部材の一辺と開口の一辺とに亘って自然状態で両端が離間するばね蝶番を設けることで、フック受金具を係合させる作業中及び係合時は開口が開状態で、それ以外の時には該開口がばね蝶番により閉状態となるので、扉部材の開閉を操作する必要がなくなり、作業性が向上する。
【実施例】
【0020】
以下、図1図7を参照して本発明の防音パネルの実施例について説明する。1は、本発明の防音パネルであり、次の構成となっている。なお、説明において、防音パネル1に関しては防音パネルを設ける現場の、外部を向く面を外側、内部を向く面を内側と、水平方向を幅方向(右左)と、垂直方向を高さ方向(上下)と、外側面‐内側面の方向を厚み方向と、各々記すこととする。また、図1(a)の本発明の防音パネル1の「正面」は、内側としている。
【0021】
2は、幅方向に所定間隔を空けて複数設けた断面略C字状(図2参照)の支柱である。3は、支柱2の各々に取り付けた壁面部材であり、本例では支柱2を挟んで外側と内側とに対向するように該支柱2に取り付けている。
【0022】
なお、壁面部材3は、外側のものを壁面部材3Aと、内側のものを壁面部材3Bと、総称する際には壁面部材3と、それぞれ記すこととする。本例では、図示するように、壁面部材3Bはパンチング加工がされたものを採用している。壁面部材3Bの高さ方向両端かつ幅方向両端には、壁面部材3の幅方向の連結のための連結孔3aが形成されている。
【0023】
4は、壁面部材3の高さ及び幅方向の両端部に設けて壁面部材3A,3Bの対向面間の開口を閉塞する閉塞板部材であり、総称する場合には閉塞部材4と、壁面部材3の高さ方向における上開口を閉塞するものは上閉塞部材4Aと、下開口を閉塞するものは下閉塞部材4Bと、また、壁面部材3の幅方向における右開口を閉塞するものは右閉塞部材4Cと、左開口を閉塞するものは左閉塞部材4Dと、各々記すこととする。
【0024】
ここで、壁面部材3と閉塞部材4とにより形成される内部空間を、以下、空間Pとすることとし、例えば壁面部材3A,3Bについて対向する側は空間P側と、その反対側は被空間P側、と記すこととする。なお、本例において、この空間Pには、グラスウールGが設けられる。
【0025】
上閉塞部材4Aと下閉塞部材4Bは、本例では、図4(a)(b)において壁面部材3の右側端面を拡大して示すように、壁面部材3Aの高さ方向の上下端と直交して(例えば折り曲げることで)連続的に形成されている。
【0026】
上閉塞部材4Aは、厚み方向の中央部に、位置決凸部4aが幅方向に直線状に形成されている。一方、下閉塞部材4Aは、厚み方向の中央部に、前記位置決凸部4aに対応するように位置決凹部4bが幅方向に直線状に形成されている。位置決凸部4aと位置決凹部4bは、壁面部材3を高さ方向に直線状に並設するためのものである。
【0027】
さらに、上閉塞部材4Aと下閉塞部材4Bは、本例では、図4に拡大して示すように、壁面部材3B側へ直交状に折り返している。壁面部材3Bは、これら上閉塞部材4A及び下閉塞部材4Bのそれぞれの前記折り返し部位の空間P側の面に設けられる。
【0028】
右閉塞板部材4Cと左閉塞部材4Dは、図2に示すように、中辺面4cを挟んでこの中辺面4cの両端に直交した長辺面4dと短辺面4eが形成された断面形状となっている。
【0029】
右閉塞板部材4Cと左閉塞部材4Dの、それぞれの長辺面4dは壁面部材3Aの空間P側の面に、それぞれの短辺面4eは壁面部材3Bの空間P側の面に、それぞれ取り付けられてコーキング剤が充填されている。
【0030】
右閉塞板部材4Cと左閉塞部材4Dの中辺面4cは、壁面部材3A,3Bの幅方向の右開口と左開口を塞いでいる。
【0031】
5は、上閉塞板部材4Aにおける幅方向の両端で厚み方向の中央からやや内側寄りに形成したフック受金具F(図7参照)を係合するための係合孔である。
【0032】
6は、本例では壁面部材3Bの幅方向両端かつ高さ方向両端で上記連結孔3aより幅方向中央寄りの位置に形成された開口である。本例では、図5に示すように、開口6の空間P側には扉部材6Aがばね蝶番6B(図6)によって開閉自在に設けられている。ばね蝶番6Bも本例では、開口6の空間P側に設けており、扉部材6Aは空間P側へ押して開口6を開状態とする。
【0033】
ばね蝶番6Bは、一方と他方の蝶番片6a,6bの突き合わせ側に形成されたそれぞれの軸孔6c,6cに、トーションばね6dを設けた軸6eを挿通した通常の構成である。トーションばね6dは自然状態で両腕が略180度に開いており、両腕が各々の蝶番片6a,6bに接触している。扉部材6Aは、ばね蝶番6Bにより、空間P側へ押すと開口6が開状態となるが、押すことを停止すると閉状態(トーションばね6dの自然状態)に復帰しようとする。
【0034】
本例では、フック受金具Fとして、強度の証明書(保証書)を有したマーテック株式会社製のBKロッキングフックを防音パネル1に取り付けた状況について説明する。フック受金具Fのトリガーを押し下げてラッチを開けた状態で、該トリガー部分(手でも可)によってばね蝶番6Bのトーションばねの付勢力より強い力で扉部材6Aを空間P側へ押すと開口6が開状態となり、該トリガー(先端)部分を係合孔5に係合する。
【0035】
その後、トリガー部分から手を離し、手を開口6から出すと、扉部材6Aが閉まろうとするが、フック受金具Fのトリガー部分だけ開口6が開いたままとなる。このフック受金具Fの環状の部位に重機側のフックを係合すると、ラッチがトリガーによりロックされ、吊り上げ可能となる。
【0036】
防音パネル1を吊り上げて移動し、所定位置に載置した後、フック受金具Fを取り外すために、開口6から空間P内に手を入れると、扉部材6Aが手が挿入できる分だけ開き、トリガー部分を係合孔5から外し、トリガー部分と共に手を開口6から出すと、ばね蝶番6Bにより扉部材6Aが開口6を閉じる。
【0037】
上記本例では、扉部材6Aはばね蝶番6Bによって開口6から手を出せば、閉状態となるようにばね蝶番6Bを設けたが、これに代えて扉部材6Aが例えば幅方向にスライドして開閉する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 防音パネル
2 支柱
3 壁面部材
3A 壁面部材
3B 壁面部材
4 閉塞板部材
4A 上閉塞板部材
4B 下閉塞板部材
4C 右閉塞板部材
4D 左閉塞板部材
5 係合孔
6 開口
6A 扉部材
6B ばね蝶番
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7