特許第6387039号(P6387039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387039
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】遷移金属/ゼオライトSCR触媒
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20180827BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20180827BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20180827BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180827BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B01D53/94 223
   B01J29/76 AZAB
   B01J35/04 301P
   F01N3/08 B
   F01N3/10 A
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-76435(P2016-76435)
(22)【出願日】2016年4月6日
(62)【分割の表示】特願2014-185086(P2014-185086)の分割
【原出願日】2008年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-195992(P2016-195992A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年5月6日
【審判番号】不服2017-15474(P2017-15474/J1)
【審判請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2007/050216
(32)【優先日】2007年4月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ジョセフ、アンダーセン
(72)【発明者】
【氏名】ジリアン、エレーヌ、コリア
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、レオネッロ、カッシ
(72)【発明者】
【氏名】ハイ‐イン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ、マイケル、フェデイコ
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー、コク、シン、フー
(72)【発明者】
【氏名】ラジ、ラオ、ラジャラム
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 後藤 政博
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−31328(JP,A)
【文献】 特表2004−535435(JP,A)
【文献】 特表2004−537398(JP,A)
【文献】 特開平8−24656(JP,A)
【文献】 特表2010−522688(JP,A)
【文献】 特開2004−188388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
.1から10重量%のを含むゼオライト触媒の存在下で、窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることによって、ガス中の窒素酸化物を窒素に転化する方法であり、
ゼオライト触媒がモノリス基材に塗布されたものであるか、又は押出触媒であり、
ゼオライト触媒が、KFI、LEV、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、及びVNIからなる群から選択される骨格を有するアルミノケイ酸でり、但し、ゼオライト触媒は鉄を含まない、方法。
【請求項2】
0.1から10重量%の銅を含むゼオライト触媒を含み、窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることによって、ガス中の窒素酸化物を窒素に転化するための触媒であって
オライト触媒がモノリス基材に塗布されたものであるか、又は押出触媒であり、
ゼオライト触媒が、KFI、LEV、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、及びVNIからなる群から選択される骨格を有するアルミノケイ酸でり、但し、ゼオライト触媒は鉄を含まない、触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトが、シリカ対アルミナの比が2から300である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
ゼオライト触媒がフィルターに塗布されたものである、請求項2に記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライト触媒が押出触媒である、請求項2に記載の触媒。
【請求項6】
ゼオライト触媒が0.5から5重量%の銅を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項7】
窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることによって、ガス中の窒素酸化物を窒素に転化するための触媒製造品であって、
製造品が、0.1から10重量%のを含むゼオライト触媒を含み、
ゼオライト触媒がモノリスフィルターに塗布されたものであるか、又は押出触媒フィルターであり、
ゼオライト触媒が、KFI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、及びVNIからなる群から選択される骨格を有するアルミノケイ酸でり、但し、ゼオライト触媒は鉄を含まない、触媒製造品。
【請求項8】
更にアンモニア酸化触媒を含む、請求項に記載の触媒製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両リーンバーン内燃機関の排ガス等のガス中にある窒素酸化物を、遷移金属含有ゼオライト触媒の存在下で、窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることにより、窒素に転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアンモニアまたは尿素等の窒素系化合物によるNOの 選択的触媒還元(SCR)は、工業的な固定用途向けに最初に開発された。SCR技術は、1970年代後期に日本における火力発電所で最初に使用され、 1980年代中期以来、ヨーロッパで広く応用されている。米国では、SCR装置は、1990年代にガスタービン用に導入され、より最近では石炭燃焼発電所 で使用されている。SCR用途には、石炭燃焼コジェネレーションプラント及びガスタービンに加えて、プラント、製油所加熱器、および化学処理工業、炉、 コークス炉、都市廃棄物処理設備、及び焼却装置のボイラーがある。より最近では、SCR技術に基づくNO還元システムが、ヨーロッパ、日本、及び米国で多くの車両(自動車)用途に、例えばディーゼル排ガス処理用に開発されている。
【0003】
NHSCR装置では、幾つかの化学反応が起こり、それらの全てが、NOを窒素に還元する望ましい反応を代表する。支配的な反応は、反応(1)により代表される。
【化1】
【0004】
競合する、酸素との非選択的反応は、二次的放出物を生成するか、またはアンモニアを非生産的に消費することがある。そのような非選択的反応は、反応(2)に示す、アンモニアの完全酸化である。
【化2】
【0005】
また、副反応により、例えばNO等の好ましくない生成物が、反応(3)により形成されることがある。
【化3】
【0006】
アルミノケイ酸塩ゼオライトは、NHによるNOのSCR用触媒として使用される。一つの用途は、車両ディーゼルエンジンからのNO放 出物を、例えば尿素等のアンモニア前駆物質から得られる還元体で、またはアンモニア自体を注入することにより、制御することである。触媒活性を促進するた めに、遷移金属をアルミノケイ酸塩ゼオライト中に配合する。最も一般的に試験される遷移金属ゼオライトは、比較的広い温度寛容度を有するので、 Cu/ZSM-5、Cu/ベータ、Fe/ZSM-5及びFe/ベータである。一般的に、Cu系ゼオライト触媒は、Fe系ゼオライト触媒よりも、優れた低温 NO還元活性を示す。
【0007】
しかし、使用の際、ZSM-5及びベータゼオライトには、多くの欠点がある。これらの触媒は、高温水熱エージングの際に脱アルミニウム化に敏感であり、特 にCu/ベータ及びCu/ZSM-5触媒で活性が低下する。ベータ-及びZSM-5系触媒は、両方とも、炭化水素による影響も受け、これらの炭化水素が、 比較的低い温度で触媒上に吸着され、触媒系の温度が上昇するにつれて酸化されて大量の熱を発生し、これが、触媒を熱的に損なうことがある。この問題は、低 温始動の際に大量の炭化水素が触媒上に吸着される車両用ディーゼル用途で特に顕著であり、ベータ-及びZSM-5ゼオライトは、炭化水素によるコークス形 成も受け易い。
【0008】
一般的に、Cu系ゼオライト触媒は、熱的耐久性が低く、Fe系ゼオライト触媒よりも高いレベルのNOを生成する。しかし、対応するFe系ゼオライト触媒と比較して、使用の際すり抜けるアンモニアが少ないという利点がある。
【0009】
遷移金属を含むアルミノリン酸塩ゼオライトは、炭化水素によるNOのSCR(リーンNO触媒作用または「DeNO触 媒作用」とも呼ばれる)用アルミノケイ酸塩ゼオライト触媒より、高い触媒活性及び優れた熱的安定性を示すことが報告されている(例えばIshihara et al., Journal of Catalysis, 169(1997)93)。同様に、WO 2006/064805は、ディーゼルエンジン排ガスを処理するための、コロナ放電を利用する電気的処理技術を開示している。NO還元剤(炭化水素または燃料)を添加するための装置とCu-SAPO-34NO還元触媒の組合せを、電気的処理装置の下流に配置することができる。しかし、我々の知る限り、NH(または尿素)によるNOのSCRに使用するための遷移金属含有アルミノリン酸塩ゼオライトの研究は、今日まで、どの文献にも報告されていない。
【0010】
WO 00/72965は、化石燃料発電所及びエンジンから放出されるNOを 制御するための、アンモニアによる一酸化窒素の選択的触媒還元に使用する、鉄(Fe)交換ゼオライトを開示している。提案されているFe交換、及び所望に よりFe-希土類元素交換、例えばFe-Ce交換ゼオライトとしては、ZSM-5、モルデナイト、SAPO、クリノプティオライト、チャバザイト、ZK- 4及びZK-5がある。具体的なSAPOゼオライトは特定されておらず、SAPOゼオライトを使用する実験も開示されていない。その上、WO '965は、その開示が、ある範囲の細孔径のゼオライト、すなわち大(モルデナイト)、中(ZSM-5、クリノプティオライト)及び小(チャバザイト、 ZK-4、ZK-5)細孔のゼオライトに適用され、Fe-ZSM-5が好ましいことを開示している。中及び大細孔ゼオライトと比較した小細孔ゼオライトを 使用する利点は、開示または提案されていない。その上、ZK-4ゼオライトは、水熱的に不安定な可能性がある。
【0011】
米国特許第4,735,927号は、アナターゼ形態の高表面積チタニア及び天然または合成ゼオライトを含む、硫黄被毒に対する安定性を有する押出型NH-SCR 触媒を開示している。このゼオライトは、酸形態にあるか、触媒製品中で酸形態に熱的に転化し得る必要がある。好適なゼオライトの例としては、モルデナイ ト、天然クリノプティオライト、エリオナイト、ヒューランダイト、フェリエライト、天然ホージャサイトまたはその合成対応ゼオライトY、チャバザイト及び グメリナイトがある。好ましいゼオライトは天然クリノプティオライトであり、これは、例えばチャバザイト等の別の酸安定性ゼオライトと混合することができ る。触媒は、所望により、少量(少なくとも0.1元素重量%)の、酸化バナジウム、酸化銅、酸化モリブデンまたはそれらの組合せの形態にある助触媒 (Cu0.2重量%及びV1.6重量%までが例示されている)を含むことができる。押出型触媒は、一般的に不活性モノリス基材に塗布された触媒被覆より も、耐久性が低く、化学的強度が低く、同じ活性を達成するのに、より多くの触媒材料を必要とし、製造がより複雑である。
【0012】
米国特許第5,417,949号も、拘束係数(constraint index)が12までのゼオライト及びチタニア結合剤を含む、押出型NH-SCR 触媒を開示している。意図的に、遷移金属助触媒は存在しない。(「拘束係数」は、ゼオライトにおける形状選択的触媒挙動を測定する試験である。拘束係数 は、競合条件下でのn-ヘキサンのクラッキング及びその異性体3-メチルペンタンに関する反応速度を比較する(V.F. Frillette et al., J Catal. 67 (1991) 218参照)。
【0013】
米国特許第5,589,147号は、分子篩及び金属を含むアンモニアSCR触媒を開示しているが、この触媒は、基材モノリス上に塗布することができる。こ の発明で有用な分子篩は、いずれかの特定の分子篩材料に制限されず、一般的に、全てのメタロケイ酸塩、メタロリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩及び層状及 び柱支持された(pillared)層状材料を含む。金属は、典型的には、周期律表のIIIA、IB、IIB、VA、VIA、VIIA、VIIIA族の金 属およびそれらの組合せの少なくとも一種から選択される。これらの金属の例としては、銅、亜鉛、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、 ロジウム、パラジウム、白金、モリブデン、タングステン、セリウムおよびそれらの混合物の少なくとも一種が挙げられる。
【0014】
米国特許第5,589,147号の開示は、小細孔ゼオライト(ここに規定する)が、この発明の方法に使用できるか、否かが不明である。例えば、一方で、特 定の小細孔ゼオライト、すなわちエリオナイト及びチャバザイトが、その発明で使用できるゼオライトとして記載されており、特に分子篩SAPO-34が「意 図されている」。他方、「本発明の方法における触媒として好適な幾つかを含む」幾つかの典型的なゼオライトの拘束係数(CI)値を挙げた表が記載されてい る。この表中にあるCI値の大多数が10よりかなり下であり、その中で、エリオナイト(316℃で38)及びZSM-34(371℃で50)が、明らかな 例外である。しかし、明らかなのは、中間細孔径ゼオライト、例えば細孔径が約5〜7オングストローム未満のゼオライトが、この発明の方法で好ましい。特 に、この開示は、中間細孔径ゼオライトが、結晶内自由空間への到達及びそこからの脱出を拘束するので、好ましい、すなわち「中間細孔径ゼオライト... は、結晶中の細孔窓が、8員環の酸素原子により形成されている場合にのみ、ノルマルヘキサンを自由に収着するのに好適な細孔径を有し、その場合、ノルマル ヘキサンより断面がより大きい分子への到達は排除され、そのゼオライトは、中間細孔径材料ではない」ことを説明している。押し出されたFe-ZSM-5だ けが例示されている。
【0015】
WO 2004/002611は、セリアドープアルミノケイ酸塩ゼオライトを含むNH-SCR触媒を開示している。
【0016】
米国特許第6,514,470号は、窒素酸化物及び還元体材料を含む排ガス流中のNOを触媒作用により還元する方法を開示している。この触媒は、アルミノケイ酸塩材料及び金属を、触媒の総重量に対して約0.1重量%までの量で含む。例は全てフェリエライトを使用している。
【0017】
Long et al., Journal of Catalysis 207 (2002) 274-285は、アンモニアによるNOの選択的触媒還元用のFe3+交 換ゼオライトの研究を報告している。試験されているゼオライトは、モルデナイト、クリノプティオライト、ベータ、フェリエライト及びチャバザイトである。 SCR活性は、研究した条件下で下記の順、すなわちFe-モルデナイト>Fe-クリノプティオライト>Fe-フェリエライト>Fe-ベータ>Fe-チャバ ザイト、で低下する。Fe-チャバザイトの製造に使用したチャバザイトは、天然産の鉱物である。
【0018】
米国特許第4,961,917号は、シリカ対アルミナの比が少なくとも約10であり、三結晶学的次元の全てで、平均速度論的細孔径が少なくとも約7オングストロームである細孔により相互接続された細孔構造を有するゼオライト、及びCuまたはFe助触媒を含むNH-SCR触媒を開示している。これらの触媒は、活性が高く、NH酸化が少なく、硫黄被毒が少ないと云われている。ゼオライトベータ及びゼオライトYが、必要な定義に適合する2種類のゼオライトである。
【0019】
米国特許第3,895,094号は、結晶間細孔径が少なくとも6オングストロームであるゼオライト触媒を使用するNH-SCR方法を開示している。ゼオライトを遷移金属で交換することは記載されていない。
【0020】
米国特許第4,220,632号は、今回は、NaまたはH形態の3〜10オングストローム細孔径ゼオライトを使用するNH-SCR方法を開示している。
【0021】
WO 02/41991は、NH-SCR用の金属助触媒を使用するゼオライトベータを開示しているが、このゼオライトは、水熱安定性を改良するために前処理されている。
【発明の概要】
【0022】
この分野では、比較的良好な低温SCR活性を有し、Nに対する選択性が比較的高く、特にNO形成が少なく、熱的耐久性が比較的良好であり、炭化水素抑制に対する耐性が比較的高いSCR触媒が求められている。ここで我々は、この要求を満たす、または貢献する遷移金属含有ゼオライトの一群を発見した。
【0023】
一態様によれば、本発明は、ガス中の窒素酸化物を窒素に転化する方法であって、少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト触媒の存在下で、前記窒素酸化物 を窒素系還元剤(窒素含有還元剤、nitorgenous reducing agent)と接触させることを含んでなるものであり、前記ゼオライトが、8個の四面体原子による最大環サイズ(最大の大きさの環、maximum ring size)少なくとも一種の遷移金属が、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir 及びPtからなる群から選択されてなる、方法。
【0024】
「少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト触媒」とは、本明細書では、イオン交換、含浸または同形置換、等により、一種以上の金属を加えたゼオライト構 造を意味する。「遷移金属含有ゼオライト触媒」及び「少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト触媒」及び類似の用語は、本明細書では、互換的に使用され る。
【0025】
無論、ゼオライトをそれらの骨格型コード(Framework Type Codes)により定義することにより、我々は、「型材料(Type Material)」及びいずれかの、及び全ての同一構造型骨格材料を含む。(「型材料」は、骨格型を確立するために最初に使用した化学種である)。本発 明で使用するための一連の代表的なゼオライトゼオタイプ骨格材料を挙げた表1を参照する。誤解を避けるために、他に指示が無い限り、名称、例えば「チャバ ザイト」、によるゼオライトへの言及は、ゼオライト材料自体(この例では、天然産型材料チャバザイト)への言及であって、個別のゼオライトが属する可能性 がある骨格型コードにより指定される他の材料、例えば幾つかの他の同一構造型の骨格材料、への言及ではない。従って、例えば、付随する請求項が、あるゼオ ライト触媒を否認する場合、この否認行為は、「その際、遷移金属を含有する小細孔ゼオライトはCu/チャバザイトではない」が、その型の材料を排除するの であって、例えばSAPO-34またはSSZ-13等の同一構造型の骨格材料ではないことを意図するように、せまく解釈すべきである、同様に、本明細書に おけるFTCの使用は、その型材料及びそのFTCにより規定される全ての同一構造型骨格材料に言及するものである。読者は、さらなる情報に関して、 International Zeolite Associationのウェブサイトwww.iza-online.orgにアクセスするとよい。
【0026】
ゼオライト型材料間、例えば天然産(すなわち鉱物)チャバザイト、と同じ骨格型コード内の同一構造型との間の区別は、単なる任意ではなく、材料間の特性の 違いを反映しており、この違いは、本発明の方法における活性の差につながる。例えば、Long et al., Journal of Catalysis 207 (2002) 274-285に関連して以下に記載する記述に加えて、天然産のチャバザイトは、例えばSSZ-13等のアルミノケイ酸塩同一構造型より、シリカ対アルミ ナ比が低く、天然産のチャバザイトは、例えばSSZ-13等のアルミノケイ酸塩同一構造型より、酸性度が低く、本発明の方法におけるこの材料の活性は比較 的低い(例13におけるCu/天然産チャバザイトとCu/SAPO-34の比較参照)。
【0027】
本発明で使用するためのゼオライト触媒は、好適な基材モノリス上に被覆するか、または押出型触媒として形成することができるが、好ましくは触媒被覆として使用する。
【0028】
先行技術(例えば上記の背景技術の欄に記載した書類)は、ガス中の窒素酸化物を窒素系還元剤で窒素に転化するための、少なくとも一種の遷移金属を含む幾つ かの小細孔ゼオライトを確かに記載しているが、先行技術では、少なくとも一種の遷移金属を含む小細孔ゼオライトをこの目的に使用することの、我々が見出し 得る特別な利点を認識していない。従って、先行技術は、少なくとも一種の遷移金属を含む大、中及び小細孔ゼオライトを、区別無く使用することを提案してい る。従って、我々は、この状況下でのみ記載されている、少なくとも一種の遷移金属を含む特定の小細孔ゼオライトを敢えて排除する。
【0029】
これに関して、一実施態様では、ゼオライト触媒は、Co、Ga、Mn、InまたはZnまたはそれらの2種類以上の組合せ/エピスティルバイト(米国特許第 6,514,470号参照)の一種ではない。別の実施態様では、遷移金属含有小細孔ゼオライトは、Cu/チャバザイト、Mo/チャバザイト、Cu-Mo /チャバザイト、Cu/エリオナイト、Mo/エリオナイトまたはCu-Mo/エリオナイト(米国特許第4,735,927号参照)ではない。別の実施態様 では、遷移金属含有小細孔ゼオライトは、Ce/エリオナイト(WO 2004/002611参照)ではない。別の実施態様では、遷移金属含有小細孔ゼオライトは、Fe/チャバザイト、Fe/ZK-5、Fe/ZK-4、 Fe-希土類元素/チャバザイト、Fe-希土類元素/ZK-5またはFe-希土類元素/ZK-4(WO 00/72965参照)ではない。さらに、WO 00/72965は、Ce/SAPOゼオライト及びCe-希土類元素/ SAPOゼオライトの使用を一般的に開示しているが、本発明の用途で特定の小細孔SAPOゼオライト、例えばSAPO-17、SAPO-18、SAPO- 34、SAPO-35、SAPO-39、SAPO-43及びSAPO-56は、開示していない。さらに別の実施態様では、遷移金属含有小細孔ゼオライト は、Fe/チャバザイトではない(Long et al., Journal of Catalysis 207 (2002) 274-285参照)。上記の理由から、我々は、米国特許第5,589,147号が、本発明の方法による少なくとも一種の遷移金属を含む小細孔ゼオライト の使用を開示しているとは考えていないが、安全のために、別の実施態様では、ゼオライト触媒は、銅、亜鉛、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、ロ ジウム、パラジウム、白金、モリブデン、セリウムまたはそれらの混合物のいずれか一種/アルミノケイ酸塩チャバザイト、アルミノケイ酸塩エリオナイト、ア ルミノケイ酸塩ZSM-34及びSAPO-34のいずれか一種ではない。別の実施態様では、遷移金属含有ゼオライト触媒は、LTAまたはFe/CHAでは ない。
【0030】
無論、チャバザイトは、本明細書では採用する定義による小細孔ゼオライトであり、上記のLong et al.の文献は、Fe/チャバザイトが、試験した触媒の中で活性が最も低いことを報告している。理論に捕らわれたくはないが、我々は、この研究における Fe/チャバザイトの劣った性能は、2つの主な理由によるものと考えている。第一に、天然チャバザイトは、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム及びカル シウムを含む塩基性金属陽イオンを含むことがある。塩基性金属は、ゼオライトの酸箇所の公知の毒であるため、活性材料を得るには、塩基性金属陽イオンを、 例えば鉄陽イオンに交換する必要がある。報告されている研究では、天然鉱物を先ずNHCl溶液で処理し、存在する陽イオンを「洗い流す」ことを試みている。しかし、我々は、報告されている劣った活性の一つの理由は、この研究におけるチャバザイト中の酸性箇所が塩基性金属陽イオンにより被毒したままであることによる考えている。
【0031】
第二に、鉄イオンは、イオン性交換媒体中の好適な配位子と金属錯体(配位化合物)を形成することがある。これに関して、我々は、Long et al.が、イオン交換にFeCl水溶液を使用していることに注目している。ゼオライトの細孔は比較的小さいので、大きい配位化合物が、細孔中に位置する活性箇所に到達できない可能性がある。
【0032】
無論、例えば下記の表1から、「MeAPSO」及び「MeAlPO」により、我々は、一種以上の金属で置換されたゼオタイプを意図している。好適な置換金 属としては、As、B、Be、Co、Fe、Ga、Ge、Li、Mg、Mn、Zn及びZrの一種以上があるが、これらに限定するものではない。
【0033】
特別な実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、金属置換アルミノケイ酸塩ゼオライト及びアルミノリン酸塩ゼオライトからなる群から選択することができる。
【0034】
本発明で使用するアルミノリン酸塩ゼオライトとしては、アルミノリン酸塩(AlPO)ゼオライト、金属置換ゼオライト(MeAlPO)、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)ゼオライト及び金属置換シリコアルミノリン酸塩(MeAPSO)ゼオライトがある。
【0035】
無論、本発明は、本発明の遷移金属含有小細孔ゼオライト及び非小細孔ゼオライト(金属化されても、なくとも)、例えば中-、大-及びメソ-細孔ゼオライト (遷移金属を含むか、または含まない)の両方を含む触媒被覆及び押出型基材モノリスにも及ぶが、これは、そのような組合せにより、小細孔ゼオライト自体を 使用する利点が得られるためである。無論、本発明で使用する触媒被覆及び押出型基材モノリスは、2種類以上の遷移金属含有小細孔ゼオライトの組合せを含む こともできる。さらに、そのような組合せにおける小細孔ゼオライトは、それぞれ上記の群から選択された一種以上の遷移金属を含むことができ、例えば第一の 小細孔ゼオライトがCu及びFeの両方を含み、第二の小細孔ゼオライトが、第一の小細孔ゼオライトとの組み合わせにおいて、Ceを含むこともできる。
【0036】
本発明で、遷移金属含有小細孔ゼオライトが、NHによるNOのSCRに有利な触媒であることを見出した。遷移金属を含む中、大またはメソ細孔ゼオライト触媒と比較して、遷移金属含有小細孔ゼオライト触媒は、著しく改良された、特に低温におけるNO還元活性を示す。これらの触媒は、Nに対する高い選択性(例えばNO 形成が少ない)及び良好な水熱安定性も示す。さらに、少なくとも一種の遷移金属を含む小細孔ゼオライトは、より大きな細孔のゼオライト、例えばZSM-5 等の例えば中細孔ゼオライト(最大環サイズ10を含むゼオライト)、または例えばベータ等の大細孔ゼオライト(最大環サイズ12を含むゼオライト)より、 炭化水素抑制に対する耐性が高い。本発明で使用する小細孔アルミノリン酸塩ゼオライトとしては、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-34、 SAPO-35、SAPO-39、SAPO-43及びSAPO-56がある。
【0037】
一実施態様では、小細孔ゼオライトを、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、 DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、 RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZONからなる骨格型コードの群から選択する。
【0038】
本発明で使用するゼオライトは、水熱安定性を改良するための処理を行ったゼオライトを含むことができる。水熱安定性を改良する代表的な方法としては、
(i)蒸気処理及び酸または錯化剤、例えば(EDTA-エチレンジアミンテトラ酢酸)を使用する酸抽出、酸及び/または錯化剤による処理、SiClの気体流による処理(ゼオライト骨格中のAlをSiで置き換える)による脱アルミニウム化、
(ii)陽イオン交換−例えばLa等の多価陽イオンの使用、及び
(iii)リン含有化合物の使用(例えば米国特許第5,958,818号参照)
が挙げられる。
【0039】
我々は、小細孔ゼオライトが、分子篩効果により、炭化水素の悪影響を最少に抑えることができ、その際、小細孔ゼオライトにより、NO及びNHを細孔の内側にある活性箇所に拡散させるが、炭化水素分子の拡散は制限されると考えている。これに関して、NO(3.16Å)及びNH(2.6Å)の両方の動力学的直径は、例えばディーゼルエンジン排気中に存在する典型的な炭化水素の直径(C〜4.5Å、n−C18〜4.30Å及びC〜6.0Å)より小さい。従って、一実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライト触媒の細孔径は、少なくとも4.3Å未満の寸法にある。好適な小細孔ゼオライトの代表的な例を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
リーンバーン内燃機関から出る排ガス、例えば車両排ガス中のNOを処理するのに特に使用する小細孔ゼオライトを表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
本発明で使用する小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトは、シリカ対アルミナの比(SAR)が2〜300、所望により4〜200、好ましくは8〜150であ る。無論、熱安定性を改良するには高いSARが好ましいが、これは、遷移金属交換に悪影響を及ぼすことがある。従って、好ましい材料の選択では、これら2 つの特性間のバランスがとれるようにSARを考慮するとよい。
【0044】
窒素酸化物を含むガスは、ガス毎時空間速度5,000 hr−1〜500,000 hr−1、所望により10,000 hr−1〜200,000 hr−1で、ゼオライト触媒と接触することができる。
【0045】
一実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライトは、上に規定するアルミノリン酸塩ゼオライトを含まない。別の実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼ オライト(上に規定する)は、アルミノリン酸塩ゼオライト(上に規定する)に限定される。別の実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライトは、アルミ ノケイ酸塩ゼオライト及び金属置換アルミノケイ酸塩ゼオライトである(上に規定するアルミノリン酸塩ゼオライトではない)。
【0046】
本発明で使用する小細孔ゼオライトは、三次元的構造、すなわち3つの結晶学的次元の全てで相互接続された細孔構造、または二次元的構造を有することができ る。一実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライトは、三次元的構造を有するゼオライトからなる。別の実施態様では、本発明で使用する小細孔ゼオライ トは、二次元的構造を有するゼオライトからなる。
【0047】
一実施態様では、少なくとも一種の遷移金属は、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群から選択される。好ましい実施態様では、少なくとも 一種の遷移金属は、Cu、Fe、及びCeからなる群から選択される。特に好ましい実施態様では、少なくとも一種の遷移金属はCuである。別の特別な実施態 様では、少なくとも一種の遷移金属はFeである。さらに別の特別な実施態様では、少なくとも一種の遷移金属はCu及び/またはFeである。
【0048】
少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト中に含むことができる少なくとも一種の遷移金属の合計は、少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト触媒の総重 量に対して0.01〜20重量%でよい。一実施態様では、含むことができる少なくとも一種の遷移金属の合計は、0.1〜10重量%でよい。特別な実施態様 では、含むことができる少なくとも一種の遷移金属の合計は、0.5〜5重量%でよい。
【0049】
本発明で使用する好ましい遷移金属含有二次元的小細孔ゼオライトは、例えばCu/Nu-3等のCu/LEVからなるのに対し、本発明で使用する好ましい遷 移金属含有三次元的小細孔ゼオライト/アルミノリン酸塩ゼオライトは、例えばCu/SAPO-34またはCu/SSZ-13等のCu/CHAからなる。別 の実施態様では、特にNO/NOの比を、例えば好適な酸化触媒(下記参照)を使用することにより、約1:1に調節する場合、例え ばFe/CHA等のFe含有ゼオライト触媒、例えばFe/SAPO-34またはFe/SSZ-13が好ましい。予備分析により、Cu/SSZ-13及び Cu/Nu-3は、同等のCu/SAPO-34より、長期間の過酷な高温リーン水熱エージング (4.5%HO/空気混合物中、900℃で3時間、例4参照)に対して、より耐性があることが示されている。
【0050】
少なくとも一種の遷移金属は、いずれかの好適な方法により、ゼオライト中に取り入れることができる。例えば、遷移金属は、例えば初期的湿潤 (incipient wetness)または交換法により、ゼオライトを合成した後に、加えることができるか、または少なくとも一種の金属をゼオライト合成の際に加えることも できる。
【0051】
本発明で使用するゼオライト触媒は、例えばウォッシュコート成分として、好適なモノリス、例えば金属またはセラミックフロースルーモノリス基材または濾過 基材、例えばウォールフローフィルターまたは焼結した金属または部分的フィルター(例えばWO 01/80978または欧州特許第1057519号に開示されているようなフィルターであり、後者の文書には、煤の通過を少なくとも遅らせる輪状に巻いた 流路を含む基材が記載されている)上に塗布することができる。あるいは、本発明で使用するゼオライトは、基材上に直接合成することができる。あるいは、本 発明のゼオライト触媒は、押出型フロースルー触媒に形成することができる。
【0052】
本発明で使用する、少なくとも一種の遷移金属を含む小細孔ゼオライト触媒は、好適なモノリス基材上に塗布する。押出型基材モノリスを製造するためのモノリ ス基材上に塗布する、本発明で使用するゼオライトを含むウォッシュコート組成物は、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然産クレー、 TiO、ZrO、及びSnOからなる群から選択された結合剤を含むことができる。
【0053】
一実施態様では、窒素酸化物を還元剤で、少なくとも100℃の温度で還元する。別の実施態様では、窒素酸化物を還元剤で、温度約150℃〜750℃で還元 する。後者の実施態様は、重及び軽負荷ディーゼルエンジン、特に(所望により触媒作用を付与した)ディーゼル粒子状物質フィルターを含んでなる排気システ ムを含むエンジン、から出る排ガスを処理するのに特に有用であり、そのフィルターは、フィルターの上流にある排気システム中に炭化水素を注入することによ り、能動的に再生し、その際、本発明で使用するゼオライト触媒は、フィルターの下流に配置される。
【0054】
特別な実施態様では、温度範囲が175〜550℃である。別の実施態様では、温度範囲が175〜400℃である。
【0055】
別の実施態様では、窒素酸化物の還元が、酸素の存在下で行われる。別の実施態様では、窒素酸化物の還元が、酸素の非存在下で行われる。
【0056】
本願で使用するゼオライトとしては、天然産及び合成ゼオライトがあるが、合成ゼオライトの方が、より一様なシリカ対アルミナ比(SAR)、結晶サイズ、結晶形態を有し、不純物(例えばアルカリ土類金属)が存在しないので、好ましい。
【0057】
窒素系還元体の供給源は、アンモニア自体、ヒドラジンまたは例えば尿素((NH)CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはギ酸アンモニウム等のいずれかの好適なアンモニア前駆物質でよい。
【0058】
本方法は、例えば内燃機関(可動でも固定でも)、ガスタービン及び石炭または石油火力発電所等の燃焼過程から得られるガスに対して行うことができる。本方 法は、例えば精製等の工業的プロセスから、精油所ヒーター及びボイラー、炉、化学処理工業、コークス炉、都市廃棄物処理設備及び焼却炉、コーヒー焙煎設備 等からのガスの処理に使用することができる。
【0059】
特別な実施態様では、本方法は、車両リーンバーン内燃機関、例えばディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジンまたは液化石油ガスまたは天然ガスで作動するエンジンから出る排ガスの処理に使用する。
【0060】
別の態様で、本発明は、排ガス流を運ぶための導管、窒素系還元体の供給源、前記排ガスの流路中に配置された、少なくとも一種の遷移金属を含むゼオライト触 媒、及び前記ゼオライト触媒の上流で排ガス流中に窒素系還元体を計量供給するための手段を含んでなる、車両リーンバーン内燃機関用の排気装置であって、前 記ゼオライト触媒が、8個の四面体原子の最大環サイズを含む小細孔ゼオライトであり、前記少なくとも一種の遷移金属が、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、 Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir及びPtからなる群から選択される、排気システムを提供する。
【0061】
誤解を避けるために、本発明の排気システム態様で使用する小細孔遷移金属含有ゼオライトは、上に記載する本発明の方法で使用する全てのゼオライトを含む。
【0062】
一実施態様では、ゼオライト触媒を、上に記載するような、フロースルーモノリス基材(すなわち全体を通して軸方向に走る多くの平行な通路を含むハニカムモ ノリス触媒担体構造)または例えばウォールフローフィルター等のフィルターモノリス基材の上に塗布する。別の実施態様では、ゼオライト触媒を、押出型触媒 に成形する。
【0063】
この装置は、使用の際に、ゼオライト触媒がNO還元に所望の効率以上で、例えば 100℃より上、150℃より上、または175℃より上で、触媒作用し得ると決定された時にのみ、窒素系還元体が排ガス流中に計量供給されるように、計量 供給手段を制御するための手段を含むことができる。制御手段による決定は、排ガス温度、触媒床温度、加速器の位置、装置中を流れる排ガスの量、マニホルド 真空、点火時期、エンジン速度、排ガスのラムダ値、エンジン中に注入される燃料の量、排ガス再循環(EGR)バルブの位置およびEGRの量及びブースト圧 からなる群から選択されたエンジンの状態を示す一個以上の好適なセンサーの入力により支援することができる。
【0064】
特別な実施態様では、計量供給は、排ガス中の窒素酸化物の量に応答して制御され、その量は、直接的(好適なNOセンサーを使用して)または間接的に、例えば予め相関させた、エンジンの状態を示す上記の入力の一つ以上を、排ガスの予想されるNO含有量と相関する−制御手段中に保存されている−ルックアップテーブルまたはマップを使用して決定される。
【0065】
制御手段は、例えば電子管理装置(ECU)等の予めプログラム化されたプロセッサーを含むことができる。
【0066】
窒素系還元体の計量供給は、1:1NH/NO及び4:3NH/NOで計算して、理論的アンモニアの60%〜200%が、SCR触媒に入る排ガス中に存在するように設定することができる。
【0067】
別の実施態様では、排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒を、窒素系還元体を排ガス中に計量供給する点の上流に配置することができる。一実施態様では、酸化触媒を、SCRゼオライト触媒に入るガス流のNO対NOの比が、例えば酸化触媒入口における排ガス温度250℃〜450℃で、体積で約4:1〜約1:3になるように適合させる。この概念は、S. Kasaoka et al.「アンモニアによる窒素酸化物の接触還元における入口NO/NOモル比の効果及び酸素の貢献(Effect of Inlet NO/NO Molar Ratio and Contribution of Oxygen in the Catalytic Reduction of Nitrogen Oxides with Ammonia)」, Nippon Kagaku Kaishi, 1978, No. 6, pp.874-881及びWO 99/39809に開示されている。
【0068】
酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に塗布された、少なくとも一種の白金族金属(またはそれらの幾つかの組合せ)、例えば白金、パラジウムまたはロジ ウム、を含むことができる。一実施態様では、少なくとも一種の白金族金属は、白金、パラジウムまたは白金とパラジウムの組合せである。白金族金属は、高表 面積ウォッシュコート成分、例えばアルミナ、ゼオライト、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、 チタニアまたはセリアとジルコニアの両方を含む混合または複合酸化物、上に担持することができる。
【0069】
別の実施態様では、好適なフィルター基材を、酸化触媒とゼオライト触媒の間に配置する。フィルター基材は、上記の基材のいずれか、例えばウォールフロー フィルターから選択することができる。フィルターに、例えば上記の種類の酸化触媒で、触媒作用を付与する場合、好ましくは窒素系還元体の計量供給点は、 フィルターとゼオライト触媒の間に配置される。あるいは、フィルターに触媒作用を付与しない場合、窒素系還元体の計量供給手段は、酸化触媒とフィルターの 間に配置されることができる。無論、この配置は、WO 99/39809に開示されている。
【0070】
別の実施態様では、本発明で使用するゼオライト触媒は、酸化触媒の下流に位置されるフィルター上に塗布される。フィルターが、本発明で使用するゼオライト触媒を含む場合、窒素系還元体の計量供給点は、好ましくは酸化触媒とフィルターの間に位置する。
【0071】
一実施態様では、制御手段が、排ガス温度が少なくとも100℃である場合にのみ、例えば排ガス温度が150℃〜750℃である場合にのみ、窒素系還元体を排ガス流中に計量供給する。
【0072】
別の態様では、本発明の排気システムを含んでなる車両用リーンバーンエンジンを提供する。
【0073】
車両用リーンバーン内燃機関は、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジンまたは液化石油ガスまたは天然ガスで作動するエンジンでよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら、下記の例を、例示のためにのみ記載する。
図1】実験室反応器で行った比較的穏やかなリーン水熱エージング後の、遷移金属含有アルミノケイ酸塩触媒を遷移金属含有アルミノリン酸塩/小細孔ゼオライト触媒と比較するNOx転化率(ガス毎時空間速度30,000 hr−1における)を示すグラフである。
図2図1に示す試験におけるN2O形成を示すグラフである。
図3】実験室反応器で行った比較的穏やかなリーン水熱エージング後の、Cu/ベータゼオライト及びCu/SAPO-34触媒を遷移金属含有アルミノリン酸塩/小細孔ゼオライト触媒と比較するNOx転化率(ガス毎時空間速度100,000 hr−1における)を示すグラフである。
図4】実験室反応器で行った比較的穏やかなリーン水熱エージング後の、遷移金属含有アルミノケイ酸塩触媒を遷移金属含有アルミノリン酸塩/小細孔ゼオライト触媒と比較するNOx転化率(ガス毎時空間速度30,000 hr−1における)を示すグラフである。
図5】新しいCu/ゼオライト触媒に対するNOx転化率を示すグラフである。
図6】エージングしたCu/ゼオライト触媒に対するNOx転化率を示すグラフである。
図7図5の新しいCu/ゼオライト触媒に対するN2O形成を示すグラフである。
図8図6のエージングしたCu/ゼオライト触媒に対するN2O形成を示すグラフである。
図9】300℃におけるNH3-SCRの際に、Cu/ゼオライト触媒にHC化学種を添加する効果を示すグラフである。
図10】は、300℃におけるNH3-SCRの際に、Cu/ゼオライト触媒に炭化水素化学種を添加した後に続く炭化水素の展開を示すグラフである。
図11】Cuゼオライト触媒を通って流れるn-オクタンの150℃における吸着プロファイルを示すグラフである。
図12】150℃でHC吸着後の、Cu/ゼオライト触媒に対するHC化学種の温度プログラム化された脱着(TPD)を示すグラフである。
図13】エージングしたCu/シグマ-1、Cu-SAPO-34、Cu/SSZ-13及びCu/ベータに関してNOx転化活性を比較する、図6と類似のグラフである。
図14図13のエージングしたCu/ゼオライト触媒に関してN2O形成を比較する、図8と類似のグラフである。
図15】エージングしたCu/ZSM-34、Cu-SAPO-34、Cu/SSZ-13及びCu/ベータ触媒に関してNOx転化活性を比較する、図13と類似のグラフである。を示すグラフである。
図16】新しい、及びエージングしたCu-SAPO-34及びCu/SSZ-13触媒のNOx転化活性を比較するグラフである。
図17】Cu-SAPO-34の新しい試料のNOx転化活性を、Cu/天然産チャバザイト型材料と比較するグラフである。
図18】新しいCu/SAPO-34のNOx転化活性を、2種類の新しいCu/天然産チャバザイト型材料のNOx転化活性と、2つの温度データ点で比較する棒グラフである。
図19】エージングしたCu/ベータ、Cu/SAPO-34、Fe/ SAPO-34及びFe/SSZ-13触媒のNOx転化活性を比較する棒グラフである。
図20】新しいFe/ベータ及びFe/SSZ-13触媒に関して、原料ガス中に導入するn-オクタンの炭化水素抑制効果を比較する棒グラフである。
図21図20の実験でn-オクタンの導入に続く、炭化水素の展開を示すグラフである。
図22】新しいFe/SSZ-13触媒に関して、NOx転化活性に対する影響を、原料ガスの成分として100%NOを使用する場合と、1:1のNO:NO2を使用する場合で比較する棒グラフである。
図23】本発明による排気システムの実施態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図23は、 本発明の排気システムの一実施態様の模式図であり、ディーゼルエンジン12は、エンジンから排ガスをテールパイプ15を経由して大気中に運ぶための排気ラ イン14を含む本発明の排気システム10を含む。排ガスの流路には、セラミックフロースルー基材モノリス上に塗布された、白金または白金/パラジウムNO 酸化触媒16が配置されている。排気システムにおける酸化触媒16の下流には、セラミックウォールフローフィルター18が配置されている。
【0076】
またセラミックフロースルー基材モノリス上に塗布された鉄/小細孔ゼオライトSCR触媒20がウォールフローフィルター18の下流に配置されている。NH3酸化クリーンアップまたはスリップ触媒21は、SCR触媒モノリス基材の下流末端に塗布されている。あるいは、NH3ス リップ触媒は、SCR触媒の下流に位置する別の基材上に塗布することができる。窒素系還元体流体(尿素26)を貯蔵部24から排気ライン14中の排ガス中 に導入するための手段(注入装置22)を備えている。注入装置22は、バルブ28を使用して制御され、そのバルブは、電子制御ユニット30(破線で示すバ ルブ制御)により制御される。電子制御ユニット30は、SCR触媒の下流に位置するNOxセンサー32から閉ループフィードバック制御入力を受ける。
【0077】
使用の際、酸化触媒16は、NOをNO2に受動的に酸化し、粒子状物質がフィルター18上に捕獲され、NO2中で燃焼する。フィルターから放出されるNOxは、注入装置22を経由して注入された尿素から得られるアンモニアの存在下で、SCR触媒20上で還元される。SCR触媒に入る排ガスの総NOx含有量中のNOとNO2の混合物(約1:1)は、より容易にN2に還元されるので、SCR触媒上でのNOx還元に望ましいことも分かる。NH3スリップ触媒21は、大気中に排出される恐れがあるNH3を酸化する。類似の配置は、WO 99/39809に記載されている。
【実施例】
【0078】
例1 新しい5重量%Fe/ベータベータまたはSAPO−34または3重量%SSZ-13ゼオライト触媒の製造方法
市販のベータゼオライト、SAPO−34またはSSZ-13、をNH4NO3溶液中でNH4イオン交換し、次いで濾過した。得られた材料をFe(NO3) 3の水溶液に攪拌しながら加えた。このスラリーを濾過し、次いで洗浄し、乾燥させた。この手順を繰り返し、所望の金属装填量を達成することができる。最終的な生成物をか焼した。
【0079】
例2 新しい3重量%Cu/ゼオライトの製造方法
市販のSAPO−34、SSZ-13、シグマ-1、ZSM-34、Nu-3、ZSM-5及びベータゼオライトをNH4NO3溶液中でNH4イオン交換し、次いで濾過した。得られた材料をCu(NO3) 2の水溶液に攪拌しながら加えた。このスラリーを濾過し、次いで洗浄し、乾燥させた。この手順を繰り返し、所望の金属装填量を達成することができる。最終的な生成物をか焼した。
【0080】
例3 リーン水熱エージング
例1及び2で得た触媒を、750℃で24時間、4.5%H2O/空気混合物中でリーン水熱的エージングした。
【0081】
例4 過酷なリーン水熱エージング
例1及び2で得た触媒を、900℃で1時間、4.5%H2O/空気混合物中で過酷なリーン水熱的エージングした。
【0082】
例5 長時間の過酷なリーン水熱エージング
例1及び2で得た触媒を、900℃で3時間、4.5%H2O/空気混合物中で過酷なリーン水熱的エージングした。
【0083】
例6 試験条件
例1により製造したFe/ベータベータ及び例2により製造したCu/ベータベータ、Cu/ZSM-5及びCu/SAPO-34の個別試料を、例3及び4によりエージングし、実験室装置で、下記のガス混合物、すなわち350 ppmNO、350 ppmNH3、14%O2、4.5%H2O、4.5%CO2、残部N2を使用して試験した。結果を図1図4に示す。
【0084】
例2により製造し、例3によりエージングしたCu/ベータベータ、Cu/ZSM-5及びCu/SAPO-34及びCu/Nu-3にも、実験室装置で、12%O2を使用した以外は、上記と同じガス混合物を使用し、試験を行った。結果を図5〜8に示す。
【0085】
例7 n−オクタン吸着試験条件
実験室装置に装填した触媒で、1000 ppm(C1当量として)プロペン、n−オクタンまたはトルエンを、300℃におけるSCR(350 ppmNO、350 ppmNH3、12%O2、4.5%H2O、4.5%CO2、残部N2)の際に注入した。炭化水素脱着は、12%O2、4.5%H2O、4.5%CO2、残部N2中で温度を10℃/分で上昇させることにより、測定した。
【0086】
例8 図1〜4に示す実験結果
図1は、穏やかなエージング後の、Cu/SAPO−34のNOx還元効率を、一連のアルミノケイ酸塩ゼオライトが担持された遷移金属触媒(Cu/ZSM-5、Cu/ベータ及びFe/ベータ)に対して比較する。この結果は、Cu/SAPO−34が、NH3によるNOxのSCRに対して改良された低温活性を有することを明らかに立証している。
【0087】
図2は、触媒上でのN2O形成を比較している。Cu/SAPO−34触媒が、他の2種類のCu含有触媒と比較して、低レベルのN2Oを生じることが明らかである。Fe含有触媒も低いN2O形成を示すが、図1に示すように、Fe含有触媒は、低温では活性がより低い。
【0088】
図3は、Cu/SAPO−34触媒のNOx還元効率を、より高いガス毎時空間速度で試験し、Cu/ベータ触媒に対して比較している。Cu/SAPO−34触媒は、低い反応温度で、活性がCu/ベータ触媒より著しく高い。
【0089】
図4は、過酷なリーン水熱エージング後の、Cu/SAPO−34触媒及び一連のアルミノケイ酸塩ゼオライト担持された遷移金属触媒(Cu/ZSM-5、Cu/ベータ、及びFe/ベータ)のNOx還元効率を示す。この結果は、Cu/SAPO−34触媒が、優れた水熱安定性を有することを明らかに立証している。
【0090】
例9 図5〜12に示す実験結果
図5で、小細孔ゼオライトSAPO−34及びNu-3上に担持された新しい(すなわちエージングしていない)CuのNH3SCR活性を、大細孔ゼオライト上に担持されたCuの活性と比較した。過酷なリーン水熱条件下でエージングした同じ触媒の対応する活性を図6に示す。新しい、及びエージングした活性プロファイルの比較により、水熱安定性は、Cuが小細孔ゼオライト上に担持された場合のアルミノケイ酸塩ゼオライトでのみ達成されることが立証される。
【0091】
新しい、及びエージングした触媒で測定したN2O形成を図7及び8にそれぞれ示す。これらの結果は、大きな細孔を持たないゼオライト上にCuを担持することにより、N2O形成が大きく低下することを明らかに示す。
【0092】
図9は、Cu/ゼオライト触媒に対するHCの影響を比較するが、そこでは、SAPO−34及びNu-3を小細孔ゼオライト材料の例として使用する。比較のため、ZSM-5及びベータゼオライトを、中及び大細孔ゼオライトの例としてそれぞれ使用する。300℃におけるNH3SCR反応の際に試料を様々なHC化学種(プロペン、n−オクテン及びトルエン)にさらした。図10は、HC添加に続く、対応するHC展開(breakthrough)を示す。
【0093】
図11は、 様々なCu/ゼオライト触媒を通って流れるn-オクタンの150℃における吸着プロファイルを示す。HC展開は、小細孔ゼオライトSAPO-34及び Nu-3上に担持されたCuでほとんど直ちに観察されるのに対し、ベータゼオライト及びZSM-5上のCuでは重大なHC吸収が観察される。図12は、その後に続くHC脱着プロファイルと温度増加の関係を示し、Cuを大細孔ゼオライト上に担持した場合には大量のHCが保存されるのに対し、小細孔ゼオライトを使用した場合には、保存されるHCが非常に少ないことが確認される。
【0094】
例10 図13及び14に示す実験結果
例2により製造したCu/SSZ-13、Cu/SAPO−34、Cu/シグマ-1及びCu/ベータを、例4に記載する様式でエージングし、例6により試験した。これらの結果を図13に示すが、そこから、過酷なリーン水熱エージングしたCu/SSZ-13、Cu/SAPO−34及びCu/シグマ-1試料のそれぞれのNOx転化活性が、対応する大細孔ゼオライト、Cu/ベータの活性より著しく優れていることが分かる。さらに、図14から、Cu/ベータは、Cu/小細孔ゼオライト触媒よりも、非常に大量のN2Oを発生させることが分かる。
【0095】
例11 図15に示す実験結果
例2により製造したCu/ZSM-34、Cu/SAPO−34、Cu/SSZ-13及びCu/ベータを、例3に記載する様式でエージングし、例6により試験した。これらの結果を図15に示すが、そこから、リーン水熱エージングしたCu/SSZ-13、Cu/SAPO−34及びCu/ZSM-34試料のそれぞれのNOx転化活性は、対応する大細孔ゼオライト、Cu/ベータの活性より著しく優れていることが分かる。
【0096】
例12 図16に示す実験結果
Cu/SSZ-13及びCu/SAPO−34の新しい試料を例2により製造し、それらの試料を、例5に記載する様式でエージングした。新しい(すなわちエージングしていない)、及びエージングした試料を、例6により試験し、これらの結果を図16に示すが、そこから、Cu/SSZ-13のNOx転化活性が、長時間の過酷なリーン水熱エージングの後にも維持されることが分かる。
【0097】
例13 図17及び18に示す実験結果
SARが約4であるCu/SAPO−34及びCu/天然産チャバザイト型材料を例2により製造し、これらの新しい材料を例6により試験した。これらの結果を図17に示すが、そこから、天然産Cu/チャバザイトのNOx転化活性が、Cu/SAPO−34よりも非常に低いことが分かる。図18は、例2により製造した2種類の新しいCu/天然産チャバザイト型材料のNOx転化活性を2つの温度データ点(200℃及び300℃)で比較する棒グラフであり、第一チャバザイト材料は、SARが約4であり、第二チャバザイト材料は、SARが約7である。SAR7チャバザイトのNOx転化活性は、SAR4チャバザイト材料の活性より優れており、SAR7チャバザイト材料の活性は、新しいCu/SAPO−34よりも非常に低いことが分かる。
【0098】
例14 図19に示す実験結果
Cu/SAPO−34及びCu/ベータを例2により製造した。Fe/ SAPO−34及びFe/SSZ-13を例1により製造した。これらの試料を例4によりエージングし、エージングした試料を例6により試験した。350℃及び450℃データ点におけるNOx活性を図19に示すが、そこから、Cu/SAPO−34、Fe/ SAPO−34及びFe/SSZ-13試料は、Cu/ベータ基準と同等か、またはそれより優れた性能を示すことが分かる。
【0099】
例15 図20及び21に示す実験結果
例1により製造したFe/SSZ-13及びFe/ベータを、新しい状態で、例7に記載するようにを試験したが、その際、n-オクタン(排ガス中の未燃焼ディーゼル燃料の影響を模擬するために)を8分間で試験中に導入した。図20に示す結果は、NOx転 化活性を、n-オクタンを8分間で試験中に導入する前(HC−)と、n-オクタンを8分間で試験中に導入した後(HC+)で比較する。n-オクタン導入に 続いてFe/ベータ活性が、Fe/SSZ-13と比較して、劇的に低下することが分かる。我々は、この効果が、触媒のコークス形成によるものと考えてい る。
【0100】
Fe/ベータ触媒のコークス形成が、NOx転化活性の劇的な低下の原因であるとする仮定は、図21に 示す結果により裏打ちされるが、そこではC1炭化水素がFe/SSZ-13触媒の下流では、n-オクタンを原料ガス中に8分間で導入したほとんど直後に検 出される。これに対して、Fe/ベータ試料の流出物では、著しく低い量のC1炭化水素が観察されている。Fe/ベータ試料の流出物中に存在するC1炭化水 素が著しく少なく、n-オクタンは何処かへ行っているはずであるので、これらの結果は、n-オクタンがFe/ベータ触媒上でコークスを形成し、NOx転化活性の低下を助長したことを示唆している。
【0101】
例16 図22に示す実験結果
例1により製造したFe/SSZ-13を、新しい状態で、すなわちエージングせずに、例6に記載する様式で試験した。次いで、350 ppmNOを175 ppmNOと175 ppmNO2の混合物、すなわち合計350 ppmのNOxで置き換えた以外は、試験を同等の条件を使用して繰り返した。両方の試験から得た結果を図22に示すが、そこから、原料ガス中のNOxのNO2含有量を1:1に増加することから得られる重大な改良が分かる。実際には、NH3-SCR触媒の上流に配置した好適な酸化触媒を使用し、例えばディーゼルエンジンの排ガス中のNOを酸化することにより、NO:NO2比を調節することができる。
【0102】
誤解を避けるために、本明細書で引用する全ての先行技術文献の内容全体を、ここに参考として含める。
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