特許第6387040号(P6387040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387040
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】車両電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20180827BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20180827BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02J7/00 302B
   H02J7/00 P
   B60R16/03 A
   B60R16/033 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-90242(P2016-90242)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-200347(P2017-200347A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 周二
(72)【発明者】
【氏名】青木 良仁
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−171157(JP,A)
【文献】 特開2014−024417(JP,A)
【文献】 特開2000−023380(JP,A)
【文献】 特開平10−271678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
B60R 16/03
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された複数の異なる負荷から構成された複数の負荷群において、それぞれ異なる前記負荷群に接続され、接続された前記負荷群の前記負荷に供給する電力を制御する複数の負荷電源制御部と、
それぞれ異なる前記負荷電源制御部に接続され、接続された前記負荷電源制御部に供給する電力を制御する複数のエリア電源制御部と、
前記複数のエリア電源制御部及び前記車両の電源に接続され、前記電源から前記複数のエリア電源制御部に供給する電力を制御するマスタ電源制御部と、を備え
前記マスタ電源制御部は、
前記電源の状態と、前記複数のエリア電源制御部に前記負荷電源制御部を介して接続される前記負荷群の消費電力に関する情報とに基づいて、前記負荷群が使用する電力を制限する電力指令値を前記複数のエリア電源制御部にそれぞれ設定し、
前記複数のエリア電源制御部は、
前記負荷電源制御部を介して接続される前記負荷群の消費電力が、前記電力指令値に基づいて定められる電力制限の目標値を超過するとき、
前記負荷群の消費電力を制御することで当該負荷群の消費電力が前記目標値以下になる場合、前記負荷群の消費電力を制御し、
前記負荷群の消費電力を制御しても当該負荷群の消費電力が前記目標値以下にならない場合、前記マスタ電源制御部に前記電力指令値による電力制限の変更を要求することを特徴とする車両電源制御装置。
【請求項2】
前記複数のエリア電源制御部のうち一の前記エリア電源制御部と、当該一のエリア電源制御部に接続される前記複数の負荷電源制御部と、当該複数の負荷電源制御部に接続される前記負荷群とは、予め定められた同じ車両エリアに設置される請求項1に記載の車両電源制御装置。
【請求項3】
前記複数のエリア電源制御部は、
前記電力指令値に基づいて、前記負荷電源制御部を介して前記負荷群に供給する電力を制御する請求項1又は2に記載の車両電源制御装置。
【請求項4】
前記マスタ電源制御部は、
前記電力指令値による電力制限の変更の要求があった場合、当該電力制限の変更の要求があった前記エリア電源制御部の電力の制限を弱化し、前記電力制限の変更の要求があった前記エリア電源制御部とは異なる前記エリア電源制御部の電力の制限を強化する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両電源制御装置。
【請求項5】
前記マスタ電源制御部は、
前記電力指令値として、前記負荷群の負荷の動作を制御する電力制御モードを前記複数のエリア電源制御部に設定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両電源制御装置は、車両に搭載されている機器にバッテリの電力を供給する。例えば、車両電源制御装置は、複数の電源ボックスを備え、バッテリが各電源ボックスを介して機器に接続される。各電源ボックスは、複数のスイッチを備え、当該各スイッチを介して機器が接続され、スイッチを切り替えてバッテリの電力を機器に供給する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−42563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両電源制御装置は、各電源ボックスを介して車両の機器に適切に電力を供給する点で更なる改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の機器に適切に電力を供給することができる車両電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両電源制御装置は、車両に設置された複数の異なる負荷から構成された複数の負荷群において、それぞれ異なる前記負荷群に接続され、接続された前記負荷群の前記負荷に供給する電力を制御する複数の負荷電源制御部と、それぞれ異なる前記負荷電源制御部に接続され、接続された前記負荷電源制御部に供給する電力を制御する複数のエリア電源制御部と、前記複数のエリア電源制御部及び前記車両の電源に接続され、前記電源から前記複数のエリア電源制御部に供給する電力を制御するマスタ電源制御部と、を備え、前記マスタ電源制御部は、前記電源の状態と、前記複数のエリア電源制御部に前記負荷電源制御部を介して接続される前記負荷群の消費電力に関する情報とに基づいて、前記負荷群が使用する電力を制限する電力指令値を前記複数のエリア電源制御部にそれぞれ設定し、前記複数のエリア電源制御部は、前記負荷電源制御部を介して接続される前記負荷群の消費電力が、前記電力指令値に基づいて定められる電力制限の目標値を超過するとき、前記負荷群の消費電力を制御することで当該負荷群の消費電力が前記目標値以下になる場合、前記負荷群の消費電力を制御し、前記負荷群の消費電力を制御しても当該負荷群の消費電力が前記目標値以下にならない場合、前記マスタ電源制御部に前記電力指令値による電力制限の変更を要求することを特徴とする。
【0007】
また、上記車両電源制御装置において、前記複数のエリア電源制御部のうち一の前記エリア電源制御部と、当該一のエリア電源制御部に接続される前記複数の負荷電源制御部と、当該複数の負荷電源制御部に接続される前記負荷群とは、予め定められた同じ車両エリアに設置されることが好ましい。
【0009】
また、上記車両電源制御装置において、前記複数のエリア電源制御部は、前記電力指令値に基づいて、前記負荷電源制御部を介して前記負荷群に供給する電力を制御することが好ましい。
【0011】
また、上記車両電源制御装置において、前記マスタ電源制御部は、前記電力指令値による電力制限の変更の要求があった場合、当該電力制限の変更の要求があった前記エリア電源制御部の電力の制限を弱化し、前記電力制限の変更の要求があった前記エリア電源制御部とは異なる前記エリア電源制御部の電力の制限を強化することが好ましい。
【0012】
また、上記車両電源制御装置において、前記マスタ電源制御部は、前記電力指令値として、前記負荷群の負荷の動作を制御する電力制御モードを前記複数のエリア電源制御部に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両電源制御装置は、車両に設置された複数の異なる負荷から構成された複数の負荷群において、それぞれ異なる前記負荷群に接続され、接続された前記負荷群の前記負荷に供給する電力を制御する複数の負荷電源制御部と、それぞれ異なる前記負荷電源制御部に接続され、接続された前記負荷電源制御部に供給する電力を制御する複数のエリア電源制御部と、前記複数のエリア電源制御部及び前記車両の電源に接続され、前記電源から前記複数のエリア電源制御部に供給する電力を制御するマスタ電源制御部と、を備えるものである。これにより、車両電源制御装置は、車両の機器に電力を適切に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る車両電源制御装置の設置例を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る車両電源制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る車両電源制御装置の機能例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る車両電源制御装置の動作例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る車両電源制御装置の動作例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る車両電源制御装置の動作例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る車両電源マスタの動作例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る車両電源マスタの動作例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係るエリア電源マスタの動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係るエリア電源マスタの動作例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係るエリア電源スレーブの動作例を示すフローチャートである。
図12図12は、変形例に係る車両電源制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態〕
実施形態に係る車両電源制御装置について説明する。車両電源制御装置1は、図1に示すように、車両100に設置され、車両100に搭載されている機器(負荷)2にバッテリ(電源)3の電力を供給するものである。車両電源制御装置1は、複数の電源ボックスBXを備え、各電源ボックスBXが所謂ツリー構造を成して接続される。各電源ボックスBXは、車両100の組立構造に応じて区画された複数の車両エリアEに設置される。
【0017】
各車両エリアEは、例えば、ワイヤーハーネスWHが車両100のボディを貫通する部分単位で区画されるものであり、エンジンコンパートメントE1、第1フロアエリアE2、第2フロアエリアE3、及び、リアエリアE4である。なお、本実施形態においては、各車両エリアEを一例として説明するが、各車両エリアEは、車両100の組立構造に応じて区画されたものであればよく、各車両エリアEの数や構成や位置などはこれらに限定されない。また、車両100のエリア内の更なる分割は、ワイヤーハーネスWHの配索や電源ボックスBXの数や構成等を考慮し、軽量化やコスト等に基づいて決められることが好ましい。
【0018】
エンジンコンパートメントE1は、車両100のボディの全長方向における前部に設けられたエリアである。例えば、エンジンコンパートメントE1は、ダッシュパネルやインサイドパネル、ボンネット等により区画された空間であり、エンジン周辺の各種機器2やワイパー、ヘッドランプに関わるセンサやモータ等の各種機器2が設置される。
【0019】
第1フロアエリアE2は、車両100のボディの全長方向に沿ってエンジンコンパートメントE1と車両100の後部との間のエリアにおいて、車幅方向における一方側に設けられたエリアである。例えば、第1フロアエリアE2は、ルームフロアパネルや車幅方向における一方側のフロントドア、リアドア等により区画された空間であり、ウィンドウ開閉や屋内照明等の制御に関わるスイッチやモータ等の各種機器2が設置される。
【0020】
第2フロアエリアE3は、車両100のボディの全長方向に沿ってエンジンコンパートメントE1とリアエリアE4との間のエリアにおいて、車幅方向における他方側に設けられたエリアである。例えば、第2フロアエリアE3は、ルームフロアパネルや車幅方向における他方側のフロントドア、リアドア等により区画された空間であり、ウィンドウ開閉や屋内照明、オーディオ、空調(ヒータ)、ブロア(送風ファン)等の制御に関わるスイッチやモータ等の各種機器2が設置される。
【0021】
リアエリアE4は、車両100のボディの全長方向における後部に設けられたエリアである。例えば、リアエリアE4は、トランクフロアパネル等により区画された空間であり、リアのハザードランプの制御に関わるセンサやモータ等の各種機器2が設置される。
【0022】
車両電源制御装置1は、複数の電源ボックスBXとして、一つの車両電源マスタ10と、複数のエリア電源マスタ20と、複数のエリア電源スレーブ30とを備え、各車両エリアEに設置される。
【0023】
車両電源マスタ10は、マスタ電源制御部であり、図3に示すように、車両100全体及び+B系(常時電源)の電力供給を制御するものである。車両電源マスタ10は、例えばエンジンコンパートメントE1に設置され、複数のエリア電源マスタ20及び車両100のバッテリ3にワイヤーハーネスWHを介して接続される。車両電源マスタ10は、図2に示すように、複数のヒューズ11と、通信部12と、CPU13とを備える。各ヒューズ11は、エンジンコンパートメントE1に設置されるバッテリ3と各エリア電源マスタ20との間に介在し、バッテリ3から各エリア電源マスタ20に過電流が流れると溶断して回路を保護する。通信部12は、各エリア電源マスタ20に接続され、各エリア電源マスタ20と通信を行う。CPU13は、通信部12に接続され、バッテリ3から各エリア電源マスタ20に供給する電力を制御する。例えば、CPU13は、バッテリ3の状態と、各エリア電源マスタ20から出力される消費電力に関する情報とに基づいて各エリア電源マスタ20を制御する。ここで、バッテリ3の状態は、当該バッテリ3のSOC(充電率;State Of Charge)、オルタネータなどの発電装置による発電電力、及び、車両100の消費電力に基づいて判定される。バッテリ3は、オルタネータの発電によって充電され、車両100の機器2の電力消費によって放電される。つまり、バッテリ3は、車両100の発電電力が消費電力を上回るとSOCが上がり、車両100の発電電力が消費電力を下回るとSOCが下がる。このように、バッテリ3の状態は、SOCや充放電によって判定される。なお、バッテリ3の状態は、SOCのみに基づいて判定されてもよい。CPU13は、バッテリ3の状態と各エリア電源マスタ20の消費電力に関する情報とに基づいて、各車両エリアE内で使用する電力を制限する電力指令値を各エリア電源マスタ20にそれぞれ設定する。なお、CPU13は、電力制御に関連する他のシステムやECU等からの信号を考慮して電力指令値を求めてもよい。また、バッテリ3への充電は、電磁誘導や磁気共鳴などによる非接触給電でもよい。
【0024】
各エリア電源マスタ20は、エリア電源制御部であり、図3に示すように、各車両エリアE(エンジンコンパートメント、フロアエリア及びリアエリア)のエリア電源スレーブ30への電力供給を制御するものである。各エリア電源マスタ20は、各車両エリアEのそれぞれ異なるエリア電源スレーブ30にワイヤーハーネスWHを介して接続される。各エリア電源マスタ20は、例えば、エンジンコンパートメントE1、第1フロアエリアE2、第2フロアエリアE3、及び、リアエリアE4にそれぞれ一台ずつ設置される。各エリア電源マスタ20は、同じ車両エリアEに設置された各エリア電源スレーブ30に接続される。例えば、第1フロアエリアE2に設置されたエリア電源マスタ20は、第1フロアエリアE2に設置された各エリア電源スレーブ30に接続される。各エリア電源マスタ20は、図2に示すように、複数のIPD(半導体リレー;Intelligent Power Device)21と、通信部22a、22bと、CPU23とを備える。各IPD21は、車両電源マスタ10と各エリア電源スレーブ30との間に介在する。各IPD21は、電流をオン(ON)・オフ(OFF)するスイッチ機能やPWM(Pulse Width Modulation)制御機能、過熱・過電流などに対する各種保護機能などを有する集積回路である。各IPD21は、例えば、CPU23によりオン・オフ制御され、車両電源マスタ10から各エリア電源スレーブ30に流れる電流を通過又は停止させる。通信部22aは、車両電源マスタ10に接続され、車両電源マスタ10と通信を行う。なお、IPD21は、機械的なリレー接点であってもよい。通信部22bは、各エリア電源スレーブ30に接続され、各エリア電源スレーブ30と通信を行う。CPU23は、通信部22a、22b及び各IPD21に接続され、車両電源マスタ10からの電力指令値に基づいて、各エリア電源スレーブ30に供給する電力を制御する。例えば、CPU23は、電力指令値に基づいて各IPD21をオン・オフ制御やPWM制御を行って各エリア電源スレーブ30に流れる電流を制限する。
【0025】
各エリア電源スレーブ30は、負荷電源制御部であり、図3に示すように、ヘッドランプやリアのハザードランプなどの機器2へ供給する電力を制御するものである。各エリア電源スレーブ30は、車両100に設置された複数の異なる機器2から構成された複数の機器群(負荷群)2cにおいて、それぞれ異なる機器群2cにワイヤーハーネスWHを介して接続される。各エリア電源スレーブ30は、例えばエンジンコンパートメントE1、第1フロアエリアE2、第2フロアエリアE3、及び、リアエリアE4にそれぞれ複数台ずつ設置される。各エリア電源スレーブ30は、同じ車両エリアEに設置された一台のエリア電源マスタ20及び複数の機器2に接続される。例えば、第1フロアエリアE2に設置された各エリア電源スレーブ30は、同じ第1フロアエリアE2に設置された一台のエリア電源マスタ20及び複数の機器2に接続される。各エリア電源スレーブ30は、当該各エリア電源スレーブ30の近傍に位置する各機器2に接続される。各エリア電源スレーブ30は、複数のIPD(又はリレー接点)31と、通信部32と、CPU33とを備える。各IPD31は、エリア電源マスタ20と各機器2との間に介在する。各IPD31は、例えばCPU33によりオン・オフ制御され、エリア電源マスタ20から各機器2に流れる電流を通過又は停止させる。なお、各IPD31は、半導体リレーであるが機械的なリレー接点であってもよく、適宜リレー接点ともいう。通信部32は、エリア電源マスタ20に接続され、エリア電源マスタ20と通信を行う。CPU33は、通信部32及び各IPD31に接続され、エリア電源マスタ20の制御に基づいて各機器2に供給する電力を制御する。例えば、CPU33は、エリア電源マスタ20の制御に基づいて各IPD31をオン・オフ制御やPWM制御を行い、各機器2に流れる電流を制御する。このように、車両電源制御装置1は、図3に示すように、車両100全体の消費電力を制御する車両電源マスタ10と、各エリア電源スレーブ30に接続される各機器2の消費電力を制御する複数のエリア電源マスタ20と、接続される各機器2の消費電力を制御する複数のエリア電源スレーブ30とがツリー構造を成して構成される。
【0026】
次に、車両電源制御装置1の動作例について説明する。この例では、車両電源制御装置1は、各機器2が消費する消費電力を低減する制御として、各機器2を省電力で制御する省電力制御と、各機器2の電力を低減する電力低減制御と、各機器2の優先度に基づいて電力を制御する優先制御とがある。
【0027】
先ず、省電力制御について説明する。図4に示す比較例において、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が各リレー接点31のオンを継続して各機器2に電力を供給した場合、各機器2が消費電力W1を消費する。これに対して、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が各IPD31をPWM制御して各機器2に電力を供給した場合、各機器2が消費電力W1より小さい消費電力W2を消費する(省電力制御)。これにより、車両電源制御装置1は、例えば、省電力制御により電球等の各機器2を適切な明るさに制御することができる。
【0028】
次に、電力低減制御について説明する。図5に示す比較例において、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が各リレー接点31のオンを継続して各機器2a、2bに電力を供給した場合、各機器2a、2bが消費電力W3を消費する。これに対して、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が各リレー接点31をオン・オフ制御して各機器2a、2bに電力を供給した場合、各機器2a、2bが消費電力W3より小さい消費電力W4を消費する(電力低減制御)。例えば、車両電源制御装置1は、二つのリレー接点31を交互にオン・オフして各機器2a、2bに電力を供給して電力低減制御を行う。これにより、車両電源制御装置1は、電力指令値に基づいて定められる電力制限の目標値(電力制限目標値)よりも各機器2a、2bの消費電力W4を小さくすることができる。
【0029】
次に、優先制御について説明する。図6に示す比較例において、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が各リレー接点31のオンを継続して各機器2a、2bに電力を供給した場合、各機器2a、2bが消費電力W5を消費する。これに対して、車両電源制御装置1は、エリア電源スレーブ30が優先度の高い機器2aのリレー接点31をオンし、優先度の低い機器2bのリレー接点31をオフして機器2aのみに電力を供給した場合、機器2aが消費電力W5より小さい消費電力W6を消費する(優先制御)。これにより、車両電源制御装置1は、各機器2a、2bの消費電力W6を電力制限目標値よりも小さくすることができる。
【0030】
次に、フローチャートを参照して、車両電源マスタ10の動作例について説明する。先ず、車両電源マスタ10は、図7に示すように、車両100のバッテリ3の状態を確認する(ステップS1)。例えば、車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCを確認すると共に、発電装置による発電電力と車両100全体の消費電力からバッテリ3の充放電を確認する。次に、車両電源マスタ10は、各エリア電源マスタ20から消費電力に関する情報を受信する(ステップS2)。次に、車両電源マスタ10は、他のシステムや各ECU等から電力制御に関連する情報を受信する(ステップS3)。次に、車両電源マスタ10は、電力指令値として、各機器2の動作を制御する電力制御モードを各エリア電源マスタ20に設定する(ステップS4)。ここで、電力制御モードとは、各機器2の動作を制御してバッテリ3の電力を制御するモードであり、例えばモード0〜モード5が用いられる。モード0は、各機器2の電力の制限がないモードであり、モード1〜5は、機器2の電力の制限があるモードである。例えば、モード1〜5は、モードの数値が上がるに従って機器2の電力の制限が強化される。つまり、モード1〜5は、モード1が最も機器2の電力の制限が弱く、モード5が最も機器2の電力の制限が強い。車両電源マスタ10は、例えばバッテリ3のSOCに基づいて、電力制御モードのモード0〜5を各エリア電源マスタ20に設定する。なお、電力制御モードの設定方法の詳細については、後述する。次に、車両電源マスタ10は、設定した電力制御モードを各エリア電源マスタ20に送信する(ステップS5)。次に、車両電源マスタ10は、各ECUに信号を送信し(ステップS6)、処理を終了する。
【0031】
次に、電力制御モードを各エリア電源マスタ20に設定する方法(上述のステップS4の処理内容)について詳細に説明する。車両電源マスタ10は、図8に示すように、電力制御モードのモードがゼロ(0)に設定されているか否かを判定する(ステップS41)。車両電源マスタ10は、電力制御モードが電力の制限がないモード0に設定されている場合(ステップS41;Yes)、バッテリ3のSOCが75%以上であるか否かを判定する(ステップS42)。車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが75%以上であると判定した場合(ステップS42;Yes)、電力制御モードがモード0の状態で処理を終了する。これにより、車両電源マスタ10は、各機器2の電力を制限しないモード0の状態で、バッテリ3が十分に充電されているのでモード0を継続して電力の制限を実施しない。
【0032】
また、車両電源マスタ10は、上述のステップS42で、バッテリ3のSOCが75%未満であると判定した場合(ステップS42;No)、バッテリ3のSOCに応じて電力制御モードにモードn(n=1〜5)を設定して電力の制限を行う(ステップS43)。例えば、車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが75%未満〜65%以上であれば、電力制御モードにモード1を設定する。また、車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが65%未満であれば、バッテリ3のSOCに応じて電力制御モードにモード2〜5を適宜設定する。これにより、車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが相対的に少ない場合に、電力を制限することができる。なお、車両電源マスタ10は、上述のステップS42で、車両100の消費電力と発電装置による発電電力との関係も考慮して電力制御モードの設定を判定してもよい。例えば、車両電源マスタ10は、消費電力が発電電力より大きく、かつ、バッテリ3のSOCが75%未満であれば(ステップS42;No)、電力制御モードにモードn(n=1〜5)を設定して電力の制限を行う。
【0033】
また、車両電源マスタ10は、上述のステップS41で、電力制御モードが電力の制限がないモード0に設定されていない場合(ステップS41;No)、各エリア電源マスタ20から電力制御モードの変更要求があるか否かを判定する(ステップS44)。車両電源マスタ10は、各エリア電源マスタ20から電力制御モードの変更要求がない場合(ステップS44;Yes)、バッテリ3のSOCが80%以上であるか否かを判定する(ステップS45)。車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが80%以上である場合(ステップS45;Yes)、バッテリ3が十分に充電されているので電力制御モードを解除する(ステップS46)。例えば、車両電源マスタ10は、電力制御モードのモードをゼロ(0)に変更し、処理を終了する。また、車両電源マスタ10は、バッテリ3のSOCが80%未満である場合(ステップS45;No)、バッテリ3が十分に充電されていないので、電力制御モードを現状のモードn(n=1〜5)に維持して処理を終了する。
【0034】
また、車両電源マスタ10は、上述のステップS44で、各エリア電源マスタ20から電力制御モードの変更要求がある場合(ステップS44;No)、電力制御モードを変更する(ステップS47)。例えば、車両電源マスタ10は、電力制御モードの変更要求があったエリア電源マスタ20a(図2参照)の電力の制限を弱化し、当該エリア電源マスタ20aとは異なるエリア電源マスタ20b(図2参照)の電力の制限を強化する。具体的に、車両電源マスタ10は、電力制御モードのモードnに「1」を減算したモードn−1をエリア電源マスタ20aに設定し、電力制御モードのモードnに「1」を加算したモードn+1をエリア電源マスタ20bに設定する。これにより、車両電源マスタ10は、必要な電力を各エリア電源マスタ20に供給しつつ、バッテリ3のSOCを維持することができる。なお、電力制御モードの変更要求については、後述する各エリア電源マスタ20の動作例で説明する。
【0035】
次に、各エリア電源マスタ20の動作例について説明する。先ず、各エリア電源マスタ20は、図9に示すように、各エリア電源スレーブ30を介して接続される車両エリアE内の各機器2の消費電力を確認する(ステップT1)。例えば、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30や各車両エリアE内のECU等から出力される信号に基づいて車両エリアE内の各機器2の消費電力を確認する。次に、各エリア電源マスタ20は、車両電源マスタ10から電力制御モードを受信する(ステップT2)。例えば、各エリア電源マスタ20は、モード0〜5のいずれかのモードを受信する。次に、各エリア電源マスタ20は、電力制御に関連する情報を各ECUから受信する(ステップT3)。次に、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30から信号を受信する(ステップT4)。例えば、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30が他のエリア電源スレーブ30に要求がある場合に、各エリア電源スレーブ30から信号を受信する。次に、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30を介して接続される各機器2の電力を制御する(ステップT5)。例えば、各エリア電源マスタ20は、電力制御モードのモード0〜5に基づいて、該当するエリア電源スレーブ30を介して各機器2に供給する電力を制限する。次に、各エリア電源マスタ20は、エリア電源スレーブ30を介して接続される各機器2の電力制御状態を確認する(ステップT6)。例えば、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30を介して接続される各機器2の消費電力と、電力指令値に基づいて定められる電力制限の目標値(電力制限目標値)とに基づいて電力制御状態を確認する。なお、各エリア電源マスタ20による電力制御状態の確認方法の詳細は、後述する。次に、各エリア電源マスタ20は、車両電源マスタ10に電力制御状態の確認結果を送信する(ステップT7)。次に、各エリア電源マスタ20は、各ECUに信号を送信して(ステップT8)、処理を終了する。
【0036】
次に、各エリア電源マスタ20による各機器2の電力制御状態の確認方法(上述のステップT6の処理内容)について詳細に説明する。各エリア電源マスタ20は、図10に示すように、電力制御モードのモードがゼロ(0)に設定されているか否かを判定する(ステップT61)。各エリア電源マスタ20は、電力制御モードがモード0に設定されている場合(ステップT61;Yes)、各機器2の電力が制限されていないので、処理を終了する。また、各エリア電源マスタ20は、電力制御モードがモード0に設定されていない場合(ステップT61;No)、各エリア電源スレーブ30を介して接続される各機器2の消費電力が、電力制限目標値以下であるか否かを判定する(ステップT62)。各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30を介して接続される各機器2の消費電力が、電力制限目標値以下である場合(ステップT62;Yes)、各機器2の電力を制御する必要がないので、処理を終了する。また、各エリア電源マスタ20は、各エリア電源スレーブ30を介して接続される車両エリアE内の各機器2の消費電力が、電力制限目標値を超過する場合(ステップT62;No)、電力制御モードを変更することが可能か否かを判定する(ステップT63)。例えば、各エリア電源マスタ20は、各車両エリアE内の各機器2の電力制御モードを変更して電力制限を強化することで、各車両エリアE内の各機器2の消費電力を電力制限目標値以下にすることが可能か否かを判定する。各エリア電源マスタ20は、電力制御モードを変更することが可能である場合(ステップT63;Yes)、電力制御モードを変更する(ステップT64)。例えば、各エリア電源マスタ20は、電力制御モードのモードn(n=1〜5)に「1」を加算して電力制御モードを変更して各車両エリアE内の各機器2の消費電力を下げて処理を終了する。また、各エリア電源マスタ20は、電力制御モードを変更することが可能でない場合(ステップT63;No)、電力制御モードの変更を車両電源マスタ10に要求する(ステップT65)。例えば、各エリア電源マスタ20は、優先度が高く電力の制限ができない機器2があり、各車両エリアE内の機器2の消費電力が電力制限目標値を超過する場合、車両電源マスタ10に電力制御モードを変更して電力制限を軽減するように要求して処理を終了する。ここで、機器2の優先度は、電力を制限する序列であり、車両100のヘッドランプなどの安全系の機器2の優先度が高く、車両100の空調などの快適系の機器2の優先度が低い。このように、各エリア電源マスタ20は、各車両エリアE内で電力制限が可能な場合、各車両エリアE内で電力制限を行い、各車両エリアE内で電力制限が不可能な場合、車両電源マスタ10に電力制御モードの変更を要求する。
【0037】
次に、各エリア電源スレーブ30の動作例について説明する。各エリア電源スレーブ30は、各エリア電源マスタ20から電力制御モードを受信する(ステップU1)。次に、各エリア電源スレーブ30は、電力制御モードを確認する(ステップU2)。例えば、各エリア電源スレーブ30は、電力制御モードがモードn(n=0〜5)に設定されていることを確認する。次に、各エリア電源スレーブ30は、電力制御モードに基づいて各機器2の電力制御を行う(ステップU3)。例えば、各エリア電源スレーブ30は、電力制御モードがモード1〜5の場合、該当する機器2に供給する電力を制限し、電力制御モードがモード0の場合、該当する機器2に供給する電力を制限しない。具体的に、各エリア電源スレーブ30は、電力制御モードがモード1〜5の場合、上述した省電力制御や電力低減制御、優先制御を実施して各機器2の消費電力を低減させる。次に、各エリア電源スレーブ30は、各機器2の状態を確認する(ステップU4)。例えば、各エリア電源スレーブ30は、近傍にあるSW、センサ、ECU等の信号により、制御する対象が他のエリア電源スレーブ30や他の車両エリアE内の機器2にまたがるか否かを確認する。次に、各エリア電源スレーブ30は、エリア電源マスタ20に信号を送信し(ステップU5)、処理を終了する。例えば、各エリア電源スレーブ30は、制御する対象が他のエリア電源スレーブ30や他の車両エリアE内の機器2にまたがる場合、エリア電源マスタ20に信号を送信し、エリア電源マスタ20を通じて他のエリア電源スレーブ30や他の車両エリアE内の機器2に対して信号を伝達して処理を終了する。
【0038】
〔電力制御モードの具体例〕
次に、電力制御モードのモード1〜5の具体例について説明する。例えば、モード1は、ヒータの間欠制御や室内照明を制限するモードである。モード3は、ブロア(送風ファン)を停止するモードである。モード5は、空調の停止やヒータを停止するモードである。具体例は省略するが、モード2は、モード1とモード3との間に行われる電力制限であり、モード4は、モード3とモード5との間に行われる電力制限である。このように、モード1〜5は、モードの数値が上がるに従って機器2の電力の制限が強化される。
【0039】
〔車両シーンを組み合わせて電力制御モードを設定〕
次に、車両100の車両シーンを組み合わせて電力制御モードを設定する例について説明する。車両シーンは、車両100が環境から影響を受ける要因や、車両100の動作に関わる要因等である。車両シーンは、例えば、当該車両シーンを規定する要因が四つあり、車両100の外部の明るさや、天候、乗員の有無、走行状態である。車両100の外部の明るさは、例えば照度センサにより検出され、天候は、例えば天候情報が保存されたサーバに無線通信可能な車両100の情報端末により取得され、乗員は、例えば車両100のシートに設置された荷重センサにより検出され、走行状態は、例えば車両100の停止や進行等の状態であり、各種センサにより検出される。
【0040】
車両電源マスタ10は、上述のステップS5で、各エリア電源マスタ20に電力制御モードを送信すると共に車両シーンを規定する要因を送信する。各エリア電源マスタ20は、上述のステップT5で、車両シーンと電力制御モードとの組み合わせ毎に予め設定された電力の制限を行う。車両シーンと電力制御モードとの組み合わせは、例えば、車両シーンが、明るさ=「暗い(夜)」、天候=「雨」、乗員=「運転者のみ」、走行状態=「停車」の場合、電力制御モードは、モード0が、電力の制限がないモードであり、モード1が、ヒータの間欠制御や運転席のみ照明を点灯するモードであり、モード3が、ブロアの停止やワイパーの間欠制御であり、モード5が、空調の停止やヘッドランプを消灯するモードである。具体例は省略するが、モード2は、モード1とモード3との間に行われる電力制限であり、モード4は、モード3とモード5との間に行われる電力制限である。これにより、各エリア電源マスタ20は、車両シーンに応じて最適な電力制御モードを設定することができる。例えば、各エリア電源マスタ20は、天候が雨のときに電力制御モードがモード3の場合、ワイパーの間欠制御等を行うので、車両シーンに応じて適切に電力を制限することができる。
【0041】
〔各車両エリアと車両シーンとを組み合わせて電力制御モードを設定〕
次に、各車両エリアEと車両シーンとを組み合わせて電力制御モードを設定する例について説明する。車両電源マスタ10は、上述のステップS5で、各エリア電源マスタ20に電力制御モードを送信すると共に車両シーンを規定する要因を送信する。各エリア電源マスタ20は、上述のステップT5で、車両シーンと電力制御モードとに基づいて、車両100の電力制御を指示する。ここで、車両シーンと当該車両シーンに対応する電力制御モードとは、車両エリアE毎に組み合わされている。例えば、車両エリアEが助手席を含む第2フロアエリアE3では、車両シーンが、明るさ=「暗い(夜)」、天候=「雨」、乗員=「運転者のみ」、走行状態=「停車」である場合、電力制御モードは、モード0が、電力の制限がないモードであり、モード1が、屋内照明を消灯するモードであり、モード3が、ブロアを停止するモードであり、モード5が、空調の停止やシート・ドアへの電力供給を停止するモードである。具体例は省略するが、モード2は、モード1とモード3との間に行われる電力制限であり、モード4は、モード3とモード5との間に行われる電力制限である。このように、車両シーンと当該車両シーンに対応する電力制御モードとは、車両エリアE毎に組み合わされている。これにより、各エリア電源マスタ20は、車両エリアE毎に車両シーンに応じて適切に電力を制限することができる。例えば、第2フロアエリアE3のエリア電源マスタ20は、乗員が運転者のみであるときに電力制御モードがモード1である場合、助手席側である第2フロアエリアE3の屋内照明を消灯するので、適切に電力を制限することができる。
【0042】
なお、複数の車両エリアEと当該各車両エリアEに対応する電力制御モードとが、車両シーン毎に組み合わされてもよい。例えば、車両電源マスタ10は、乗員が運転者のみの場合、運転席を含む第1フロアエリアE2以外の車両エリアEの電力制御モードのモードを高く設定して電力を制限する。また、車両電源マスタ10は、夜で雨の場合、ワイパーやヘッドランプを含むエンジンコンパートメントE1以外の車両エリアEの電力制御モードのモードを高く設定して電力を制限する。
【0043】
以上のように、実施形態に係る車両電源制御装置1は、車両100に設置された複数の異なる機器2から構成された複数の機器群2cにおいて、それぞれ異なる機器群2cに接続され、接続された機器群2cの機器2に供給する電力を制御する複数のエリア電源スレーブ30と、それぞれ異なるエリア電源スレーブ30に接続され、接続されたエリア電源スレーブ30に供給する電力を制御する複数のエリア電源マスタ20と、複数のエリア電源マスタ20及び車両100のバッテリ3に接続され、バッテリ3から複数のエリア電源マスタ20に供給する電力を制御する車両電源マスタ10と、を備える。これにより、車両電源制御装置1は、バッテリ3から機器2に至る電力供給経路を細分化することができるので、必要な機器2にのみ電力を供給することができる。つまり、車両電源制御装置1は、エリア電源マスタ20毎に機器2に細かく電力を供給することができる。従って、車両電源制御装置1は、機器2に電力を適切に供給することができるので、機器2の消費電力を低減することができる。
【0044】
また、車両電源制御装置1は、各電源ボックスBX(車両電源マスタ10、各エリア電源マスタ20、各エリア電源スレーブ30)が三階層の所謂ツリー構造により構成されるので、各電源ボックスBXの細分化により各電源ボックスBXを小型化することができ、車両100に容易に設置することができる。また、車両電源制御装置1は、機器2が増加しても当該機器2の近傍のエリア電源スレーブ30に機器2が接続されるので、ワイヤーハーネスWHの配索性を向上できると共にワイヤーハーネスWHを軽量化することができる。また、車両電源制御装置1は、軽量化により車両100の燃費を向上できる。また、車両電源制御装置1は、エリア電源マスタ20を設置することにより車両エリアE単位で各機器2の電力が制御されるので、車両電源マスタ10が各機器2の動作を把握する必要がなくなり、車両電源マスタ10の構成を共通化できる。例えば、車両電源制御装置1は、各エリア電源マスタ20の消費電力やエリア電源マスタ20の個数、エリア電源スレーブ30の個数などに基づいて車両電源マスタ10のラインアップを用意することができる。
【0045】
また、車両電源制御装置1は、複数のエリア電源マスタ20のうち一のエリア電源マスタ20と、当該一のエリア電源マスタ20に接続される複数のエリア電源スレーブ30と、当該複数のエリア電源スレーブ30に接続される複数の機器群2cとは、予め定められた同じ車両エリアEに設置される。これにより、車両電源制御装置1は、ワイヤーハーネスWHの配索性をより向上できると共に、ワイヤーハーネスWHをより軽量化できる。
【0046】
また、車両電源制御装置1は、車両電源マスタ10が、バッテリ3の状態と、複数のエリア電源マスタ20にエリア電源スレーブ30を介して接続される機器群2cの消費電力に関する情報とに基づいて、機器群2cが使用する電力を制限する電力指令値を複数のエリア電源マスタ20にそれぞれ設定する。これにより、車両電源制御装置1は、エリア電源マスタ20毎に消費電力を制御することができ、車両電源マスタ10の制御を簡略化できる。
【0047】
また、車両電源制御装置1は、複数のエリア電源マスタ20が、電力指令値に基づいて、複数のエリア電源スレーブ30を介して機器群2cに供給する電力を制御する。これにより、車両電源制御装置1は、各エリア電源マスタ20が機器群2cの消費電力を制御することができるので、車両電源マスタ10が機器群2cの消費電力を制御する手間を省くことができる。
【0048】
また、車両電源制御装置1は、複数のエリア電源マスタ20が、エリア電源スレーブ30を介して接続される機器群2cの消費電力が、電力指令値に基づいて定められる電力制限の目標値を超過するとき、機器群2cの消費電力を制御することで機器群2cの消費電力が目標値以下になる場合、機器群2cの消費電力を制御し、機器群2cの消費電力を制御しても当該機器群2cの消費電力が目標値以下にならない場合、車両電源マスタ10に電力指令値による電力制限の変更を要求する。これにより、車両電源制御装置1は、エリア電源マスタ20にエリア電源スレーブ30を介して接続される機器群2cの機器2の消費電力を電力制限目標値の範囲内に収めることができる。
【0049】
また、車両電源制御装置1は、車両電源マスタ10が、電力指令値による電力制限の変更の要求があった場合、当該電力制限の変更の要求があったエリア電源マスタ20の電力の制限を弱化し、電力制限の変更の要求があったエリア電源マスタ20とは異なるエリア電源マスタ20の電力の制限を強化する。これにより、車両電源制御装置1は、各エリア電源マスタ20の消費電力の合計値を一定に保つことができる。
【0050】
また、車両電源制御装置1は、車両電源マスタ10が、電力指令値として、機器群2cの機器2の動作を制御する電力制御モードを複数のエリア電源マスタ20に設定する。これにより、車両電源制御装置1は、各エリア電源マスタ20が、電力制御モードに基づいて各エリア電源スレーブ30に接続される機器群2cの機器2の動作を制御することができる。
【0051】
〔変形例〕
次に、実施形態の変形例について説明する。車両電源マスタ10は、電力制御モードを各エリア電源マスタ20に設定することにより電力を制限したが、電力制御モードの代わりに電力量を用いて電力を制限してもよい。例えば、車両電源マスタ10は、各車両エリアE内で使用可能なエリア内電力量を各エリア電源マスタ20に設定することにより電力を制限する。この場合、各エリア電源マスタ20は、エリア内電力量に基づいてエリア電源スレーブ30を介して接続される機器群2cの機器2を制御する。例えば、各エリア電源マスタ20は、エリア内電力量に基づいて各エリア電源スレーブ30に使用可能な電力を分配する。各エリア電源スレーブ30は、エリア電源マスタ20から分配された電力に基づいて各機器2を制御する。
【0052】
また、車両電源制御装置1は、複数のバッテリ3を有していてもよい。例えば、車両電源制御装置1Aは、図12に示すように、二つのバッテリ3、3Aを有し、二系統(プライマリ側、セカンダリ側)から構成される。具体的に、車両電源制御装置1Aは、バッテリ3と、車両電源マスタ10と、複数のエリア電源マスタ20と、複数のエリア電源スレーブ30とから成る第一系統(プライマリ側)と、さらに、バッテリ3Aと、電源マスタ10Aと、複数のエリア電源マスタ20Aと、複数のエリア電源スレーブ30Aとから成る第二系統(セカンダリ側)とから構成される。車両電源制御装置1Aは、プライマリ側の車両電源マスタ10とセカンダリ側の電源マスタ10Aとが、各バッテリ3、3A間を接続する接続スイッチ40を介して接続される。また、車両電源制御装置1Aは、車両電源マスタ10の通信部12と電源マスタ10Aの通信部12とが通信回線を介して接続される。車両電源制御装置1Aは、接続スイッチ40がオフの場合、車両電源マスタ10が、プライマリ側の各エリア電源マスタ20を制御し、電源マスタ10Aが、セカンダリ側の各エリア電源マスタ20Aを制御する。また、車両電源制御装置1Aは、接続スイッチ40がオンの場合、車両電源マスタ10が、プライマリ側の各エリア電源マスタ20を制御すると共に、セカンダリ側の各エリア電源マスタ20Aを制御する。車両電源制御装置1Aは、車両電源マスタ10が、接続スイッチ40をオン・オフ制御する。なお、車両電源制御装置1Aは、電源マスタ10Aが接続スイッチ40をオン・オフ制御してもよい。このように、変形例に係る車両電源制御装置1Aは、二つのバッテリ3、3Aを有し、二系統から構成され、プライマリ側とセカンダリ側とをそれぞれ別々に制御したり、プライマリ側とセカンダリ側とを一系統とみなして制御したりする。
【0053】
また、車両電源マスタ10は、例えば、複数の車両100による隊列走行時に他の車両100から供給される電力に基づいて各エリア電源マスタ20に供給する電力を制御してもよい。
【0054】
また、車両電源制御装置1は、車両電源マスタ10と、エリア電源マスタ20と、エリア電源スレーブ30とを有する三階層で構成される例について説明したが、三階層よりも多くの階層で構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、1A 車両電源制御装置
2 機器(負荷)
2c 機器群(負荷群)
3、3A バッテリ(電源)
10 車両電源マスタ(マスタ電源制御部)
20 エリア電源マスタ(エリア電源制御部)
30 エリア電源スレーブ(負荷電源制御部)
100 車両
E 車両エリア
E1 エンジンコンパートメント
E2 第1フロアエリア
E3 第2フロアエリア
E4 リアエリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12