(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解質二次電池であるリチウム二次電池は、正極活物質に用いるリチウム遷移金属複合酸化物として、α−NaFeO
2型結晶構造を有する「LiMeO
2型」活物質(Meは遷移金属)が検討され、LiCoO
2が広く実用化されていた。LiCoO
2を正極活物質として用いたリチウム二次電池は、放電容量が120〜130mAh/g程度であった。
【0003】
充放電サイクル性能の点でも優れる「LiMeO
2型」活物質が種々提案され、一部実用化されている。例えば、LiNi
1/2Mn
1/2O
2やLiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2は、150〜180mAh/gの放電容量を有する。
【0004】
前記Meとして、地球資源として豊富なMnを用いることが望まれていた。しかし、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5を超える「LiMeO
2型」活物質は、充電に伴いα−NaFeO
2型からスピネル型へと構造変化が起こり、結晶構造が維持できず、充放電サイクル性能が著しく劣るという問題があった。
そこで、近年、上記のような「LiMeO
2型」活物質に対し、遷移金属(Me)に対するリチウムのモル比Li/Meが1を超え、マンガン(Mn)のモル比Mn/Meが0.5を超え、充電をしてもα−NaFeO
2構造を維持できる、いわゆる「リチウム過剰型」活物質(特許文献1〜3参照)が提案された。この活物質は、Li
wMeO
1+w(w>1)と表すことができる。
【0005】
特許文献1には、「Li
aNi
xCo
yMn
zO
1+a(ただし、x+y+z=1である。)で表され、下記条件(1)〜(3)を満たす複合酸化物であり、比表面積が4.5m
2/g以上であることを特徴とする正極活物質。
(1)0.03≦y/x≦0.25である。
(2)Ni、CoおよびMnの合計に対するLiの比率aが2z+y−0.1≦a≦2z+y+0.1である。
(3)前記複合酸化物がリチウム過剰相を含み、b=3(z−x)/(x+2y+3z)で表されるリチウム過剰相の比率bが0.18≦b<0.36である。」(請求項1)と記載されている。
また、特許文献1には、「表2に示すように、条件(1)〜(3)を満たし、比表面積が4.5m
2/g以上である例3、4、9〜11では、いずれかの条件を満たさない例1、2、5〜8、12〜15に比べて、充分なレート特性と高い充放電効率とを兼ね備えていた。」(段落[0103])と記載されている。
そして、例3、4、9〜11には、それぞれ、yが0.03、0.02、0.03、0.06、0.09であり、Li/X(a)が1.140、1.203、1.125、1.125、1.125であり、xが0.41、0.38、0.42、0.40、0.38である上記の複合酸化物が示されている(表1及び表2参照)。
【0006】
特許文献2には、「Li
aNi
xCo
yMn
zO
1+a(ただし、x+y+z=1である。)で表され、下記条件(1)〜(3)を満たす複合酸化物であり、比表面積が4.5m
2/g以上であることを特徴とする正極活物質。
(1)b=3(z−x)/(x+2y+3z)で表される、複合酸化物中のリチウム過剰相の比率bが0.36≦b≦0.45である。
(2)0.03≦y/x≦0.25である。
(3)Ni、CoおよびMnの合計に対するLiの比率aが2z+y−0.1≦a≦2z+y+0.1である。」(請求項1)と記載されている。
また、特許文献2には、「表2に示すように、条件(1)〜(3)を満たし、かつ比表面積が4.5m
2/g以上である例5、9、10では、いずれかの条件を満たさない例1〜4、6〜8、11〜14に比べて、4.5V初期容量が高く、レート特性に優れていた。また、例5、9、10では、充分な充放電効率も得られた。」(段落[0100])と記載されている。
そして、例5、9、10には、それぞれ、yが0.02、0.02、0.06であり、Li/X(a)が1.29、1.28、1.28であり、xが0.34、0.33、0.31である上記の複合酸化物が示されている(表1及び表2参照)。
【0007】
特許文献3には、「式xLi
2MnO
3・(1−x)LiNi
u+ΔMn
u−ΔCo
wA
yO
2によって近似的に表される層状リチウム金属酸化物を含むリチウムイオン電池用の正極活性組成物であって、xが、少なくとも約0.03であり、約0.47以下であり、Δの絶対値が概して約0.3以下であり、2u+w+yが約1であり、wが0〜1の範囲内であり、uが0〜0.5の範囲内であり、yが約0.1以下であり、ただし(u+Δ)とwの両方が0であることはないものとし、任意選択のフッ素ドーパントが、約10モルパーセント以下の酸素を置換することができる正極活性組成物。」(請求項1)と記載されている。
また、特許文献3には、「上の節で論じたように、これらの組成物に関する全体の組成式は、xLi
2MnO
3・(1−x)LiNi
uMn
vCo
wO
2(組成式I)またはLi
1+bNi
αCo
γMn
βO
2(組成式II)と書くことができる。2組の組成物を生成した。第1の組に関しては、u=vを有する組成物タイプを合成した。表3で見られるように、Xが0.1〜0.5の範囲内であり、Mn%が35%〜70%の範囲内である総計34種のカソード組成物を合成した。組成物中に存在するNi、Co、およびMnの関係を
図2にさらに示す。第2の組の組成物に関しては、uはvと等しくなく、ここでもx=0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5である。表4は、合成された5つの異なるカソード組成物と、それらの対応するMn%を示す。」(段落[0085])と記載されている。そして、
図2からは、Mnが0.35〜0.70であるとき、Coは、0.125〜0.625であることが読み取れる。
さらに、「X=0.2、X=0.3、およびX=0.5を有するカソード材料を用いて作製されたコイン電池を、それぞれ225、350、および400サイクルにわたって4.5Vと2ボルトの間でサイクルさせた。最初の2回のサイクルは速度C/10で行い、その後のサイクルは速度C/3で行った。比放電容量を
図27にプロットする。X=0.5の組成物を用いた電池は、始めはかなり大きい比容量を有するが、これらの電池はまた、サイクルと共に、より速い容量減少を示した。225サイクルで、最初のサイクル性能と比べた電池の比容量に関するサイクル効率は、X=0.2に関して約90%、X=0.3に関して87%、X=0.5に関して81%であった。同様に、これらの電池に関して平均電圧をサイクルと共に測定した。3つのコイン電池に関して、サイクル数の関数としての平均電圧を
図28にプロットする。X=0.5のカソード組成物を用いて作製された電池は、他の2つの電池に比べてすべてのサイクルで大幅に低い平均電圧を示し、また、X=0.5のカソード材料を用いた電池に関して、平均電圧はサイクルと共により急速に降下した。より低い平均電圧は、一般に、電池から利用可能なエネルギーおよび電力の対応する減少をもたらす。X=0.2の組成物を用いた電池は、X=0.3を有する電池によって示される平均電圧に比べて、すべてのサイクルでわずかだけ大きい平均電圧を示した。」(段落[0125])と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(正極活物質の組成、及び結晶性)
本実施形態に係る正極活物質は、α−NaFeO
2型結晶構造を有し、式Li
wNi
xCo
yMn
zO
1+w(w>1、x+y+z=1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物である。
本実施形態に係る正極活物質は、その特性を著しく損なわない範囲で、少量の金属M(Mg、Sr、Ba、Cd、Zn、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce
、Y、Nb、Cr、Fe、Vの一種、又はそれらの二種以上の組み合わせ)を含んでいてもよい。
【0016】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、遷移金属元素の共沈前駆体とリチウム化合物とを焼成して合成した粉末として得ることができる。合成後(充放電前)の粉末の、CuKα管球を用いたX線回折パターンは、空間群R3−mに帰属される結晶系に由来するピークに加えて、2θ=20.8±1°に、空間群C2/m、C2/c又はP3
112に帰属される結晶系に由来する超格子ピーク(Li
2MnO
3型の単斜晶に見られるピーク)が確認される。ところが、一度でも充電時に観察される4.5V(vs.Li/Li
+)付近のプラトーを超えて充電を行うと、結晶中のLiの脱離に伴って結晶の対称性が変化することにより、この超格子ピークが消滅して、前記リチウム遷移金属複合酸化物は空間群R3−mに帰属されるようになる。なお、空間群C2/m、C2/c又はP3
112は、空間群R3−mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルであり、R3−mにおける原子配置に秩序性が認められるときに該P3
112モデルが採用される。X線回折図上の2θ=18.6±1°の回折ピークは、空間群P3
112及びR3−mではミラー指数hklにおける(003)面に指数付けされる。なお、「R3−m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「−」を施して表記する。
【0017】
本発明者らは、Ni、Mn及びCoの組成比を特定の範囲とすると共に、「Li過剰型」活物質をLi
2MnO
3とLiMeO
2の固溶体と仮定したときのLi
2MnO
3の割合を特定範囲とすることによって、エネルギー密度が高く、且つ、充放電サイクルに伴うエネルギー密度維持率が高い「リチウム過剰型」正極活物質を提供することができることを見出した。これは、Li
2MnO
3中の2bサイトに存在するLi
+の移動が容易になり、さらに活物質中のLi
+の出入りの反応場が適切な広さとなることにより、本発明の効果が奏されたものと推察している。
【0018】
(w−2x−y)/wの技術的意義は以下のとおりである。
「Li過剰型」活物質をLi
2MnO
3(以下、「Li
α(Li
1/3Mn
2/3)O
2+β」と表記する。)とLiMeO
2の固溶体と仮定する。具体的には、Li
wNi
xCo
yMn
zO
1+w(x+y+z=1)と表される「Li過剰型」活物質をA・Li
α(Li
1/3Mn
2/3)O
2+β−B・LiNi
x'Co
y'Mn
x'O
2と置く。ここで、LiMeO
2中に存在するNiの酸化数は常に2価であり、Ni
2+とMn
4+は常に等モルで存在すると仮定する。すると、x'+y'+x'=1、B・x'=x、B・y'=yの関係式が導かれる。このとき、Li
wNi
xCo
yMn
zO
1+wで表される「Li過剰型」活物質全体に含まれるLi量のうち、上記式中、LiNi
x'Co
y'Mn
x'O
2に含まれるLi量の割合は、
(B・x'+B・y'+Bx')/w=(2x+y)/w
と表され、Li
α(Li
1/3Mn
2/3)O
2+βに含まれるLi量の割合は、
1−(2x+y)/w=(w−2x+y)/w
と表される。
【0019】
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、上記式中、Li
α(Li
1/3Mn
2/3)O
2+βの割合を表す(w−2x−y)/wの値が0.47<(w−2x−y)/w<0.51の範囲とし、上記の式Li
wNi
xCo
yMn
zO
1+w(w>1、x+y+z=1)におけるx、y、zを、それぞれ、0.30<x<0.37、0≦y<0.05、0.63<z<0.70の範囲とする。リチウム遷移金属複合酸化物を、上記のような組成範囲とすることにより、エネルギー密度が高く、且つ、充放電サイクルに伴うエネルギー密度維持率が高い正極活物質が得られる。
(w−2x−y)/wの値は0.475<(w−2x−y)/w<0.510の範囲であることが好ましく、x、y、zは、それぞれ、0.315<x<0.35、0≦y<0.02、0.655<z<0.675の範囲とすることが好ましい。また、wは、1.30≦w≦1.35の範囲とすることが好ましい。
さらに、遷移金属(Ni、Co及びMn)中のNiのモル比率を表すxの値は、0.34以下がより好ましく、また、0.32以上がより好ましい。遷移金属(Ni、Co及びMn)中のCoのモル比率を表すyの値は、0.016以下がより好ましく、0がさらに好ましい。遷移金属(Ni、Co及びMn)中のMnのモル比率を表すzの値は、0.66以上がより好ましく、また、0.67以下がより好ましい。
【0020】
本実施形態に係るリチウム遷移金属酸化物は、格子定数aが2.870以上であることが好ましい。格子定数aは、次の手順に従って、X線回折測定によっ
て求める。X線回折測定に供する試料は、電極作製前の活物質粉末であれば、そのまま測定に供する。電池を解体して取り出した電極から試料を採取する場合には、電池を解体する前に、次の手順によって電池を放電状態とする。まず、0.1
Cの電流で、正極の電位が4.3V(vs.Li/Li
+)となる電池電圧まで定電流充電を行い、同じ電池電圧にて、電流値が0.01
Cに減少するまで定電圧充電を行い、充電末状態とする。30分の休止後、0.1
Cの電流で、正極の電位が2.0V(vs.Li/Li
+)となる電池電圧に至るまで定電流放電を行い、放電末状態とする。金属リチウム電極を負極に用いた電池であれば、当該電池を放電末状態又は充電末状態とした後に電池を解体して電極を取り出せばよいが、金属リチウム電極を負極に用いた電池でない場合は、正極電位を正確に制御するため、電池を解体して電極を取り出した後に、金属リチウム電極を対極とした電池を組立ててから、上記の手順に沿って、放電末状態に調整する。
【0021】
電池の解体から測定までの作業は露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。取り出した正極板は、ジメチルカーボネートを用いて十分洗浄する。室温にて一昼夜の乾燥後、合剤を電極から取り出し、瑪瑙乳鉢を用いて凝集した粉体をほぐす。
【0022】
X線回折装置の線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ45kV及び200mAとする。サンプリング幅は0.01deg、走査幅は15degから70deg、スキャンスピードは0.9秒、発散スリット幅は0.65deg、受光スリット幅は0.2mm、散乱スリットは0.65de
gとする。得られたエックス線回折データについて、Kα2に由来するピークを除去せず、前記エックス線回折装置の付属ソフトである「PDXL」を用いてピーク位置を求める。求めたピーク位置のうち、空間群R3−mにおいて、(012)、(110)、(113)で表されるピークを用いて、格子定数aを求める。
【0023】
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、周知技術を適用して、少なくとも表面にアルミニウム化合物を存在させることができる。粒子表面にアルミニウム化合物が存在することにより、活物質と電解液との直接的な接触が防止され、活物質の酸化に伴う構造変化等の劣化を抑制することができる。
【0024】
(正極活物質の製法)
次に、本実施形態に係る正極活物質の製造方法について述べる。
まず、Ni、Co、Mnのモル比x、y、zが、0.30<x<0.37、0≦y<0.05、0.63<z<0.70(x+y+z=1)となるように調整した、Ni及びMn、又は、Ni、Co及びMnを含む遷移金属化合物の水溶液、並びにアルカリ水溶液を反応槽へ供給し、共沈反応により、遷移金属を含む前駆体粒子(共沈前駆体の粉末)を製造する。次に、前記前駆体粒子とリチウム化合物を、リチウム遷移金属複合酸化物中のLiのモル比をwとしたとき、(w−2x−y)/wの値が0.47<(w−2x−y)/w<0.51(w>1)の範囲となるように混合し焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物粒子を製造する。
【0025】
本実施形態における遷移金属を含む前駆体粒子は、上記のような所定の濃度のNi塩、Mn塩、任意にCo塩を含有する混合溶液とアルカリ水溶液とを反応槽へ供給し、pHが6〜13になるように制御し、オーバーフローした懸濁液をオーバーフロー管に連結された濃縮槽で濃縮速度を調整しながら反応槽
へ循環し、反応槽と沈降槽中の前駆体粒子濃度が0.1〜15mol/Lになるまで反応を行って得ることができる。また、濃縮槽を設けずに、オーバーフローで前駆体粒子を得てもよい。反応後は常法に従って、水洗、乾燥、粉砕を行えばよい。
遷移金属化合物(Ni塩、Mn塩、Co塩)としては、硫酸塩や硝酸塩、塩化物等を用いることができる。
反応槽の温度は、35℃〜60℃に保持することが好ましい。遷移金属化合物の組成が上記の範囲となるように原料を調製し、35℃以上で反応させて得られた前駆体粒子を用いることにより、エネルギー密度が高く、且つ、充放電サイクルに伴うエネルギー密度維持率が高い正極活物質が得られる。
【0026】
本実施形態における遷移金属を含む前駆体粒子としては、特に限定されることなく各種の遷移金属化合物を用いることができるが、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩又はそれらの混合物が好ましく、より好ましくは遷移金属の水酸化物若しくは炭酸塩である。
前駆体を製造するときの反応槽の好ましいpHは、炭酸塩の場合、7〜9であり、水酸化物の場合、10〜12である。遷移金属化合物の水溶液と共に、アルカリ水溶液として、炭酸塩前駆体の場合、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液等を用いて共沈前駆体を製造することができ、水酸化物前駆体の場合、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等を用いて共沈前駆体を製造することができる。
【0027】
さらに、反応槽に、アルカリ水溶液と共に、錯化剤を投入してもよい。
なお、錯化剤としては、アンモニウムイオン供給体、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリト三酢酸、ウラシル二酢酸、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、オキシン、アセチルアセトン又はグリシンから選ばれる1種又は2以上を用いることができる。
【0028】
本実施形態における前駆体粒子は、平均粒子径が1.5〜50μm、BET比表面積が5〜300m
2/gであることが好ましい。
【0029】
本実施形態に用いるリチウム化合物としては、特に限定されることなく各種のリチウム塩を用いることができるが、例えば、水酸化リチウム・一水和物、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、乳酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、ピルビン酸リチウム、硫酸リチウム、酸化リチウムなどが挙げられ、炭酸リチウムが好ましい。リチウム化合物を混合する場合の混合割合は焼成中にLi化合物の一部が消失することを見込んで、前記前駆体粒子に対する所定のモル比より、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
【0030】
また、用いるリチウム化合物は平均粒子径が50μm以下であることが好ましい。より好ましくは30μm以下である。リチウム化合物の平均粒子径が50μmを超える場合には、前駆体粒子との混合が不均一となり、結晶性の良い複合酸化物粒子粉末を得るのが困難となる。
【0031】
遷移金属を含む前駆体粒子とリチウム化合物の混合処理は、均一に混合することができれば乾式、湿式のどちらでもよい。
【0032】
遷移金属を含む前駆体粒子粉末とリチウム化合物との混合処理は、一度で行ってもよく、遷移金属を含む前駆体粒子粉末とLi化合物とを混合し焼成した焼成物にLi化合物を加えて再度焼成してもよい。
【0033】
このとき、焼成温度は、400〜1500℃であることが好ましい。400℃未満の場合にはLiとNi、Mnとの反応が十分に進まず、十分に複合化されない。1500℃を超える場合には焼結が進みすぎるので好ましくない。より好ましくは600〜1200℃の温度範囲であり、さらにより好ましくは750〜1050℃の温度範囲である。焼成時の雰囲気は酸化性ガス雰囲気が好ましく、より好ましくは通常の空気である。焼成時間は1〜30時間が好ましい。
【0034】
本実施形態において、得られた正極活物質粒子粉末は、少なくとも空間群R−3mに属する結晶系と、空間群C2/m、C2/c又はP3
112に属する結晶系とを特定比率で有する化合物からなる。焼成して得られる化合物が、このような2種の結晶系を特定比率で有するためには、基本的に、Mn含有量、即ち、Mn/(Ni+Mn)又はMn/(Ni+Co+Mn)がモル比で0.5以上、好ましくは0.55〜0.70の範囲となるような前駆体粒子を調製すればよい。上記範囲内に調製する方法としては、前駆体の原料であるMn塩、Ni塩、任意のCo塩の量を調節する方法が挙げられる。なお、空間群R−3mに属する結晶系は上記のLiMeO
2化合物に由来するものであり、空間群C2/m、C2/c又はP3
112に属する結晶系は主としてLi
2MnO
3に由来するものであるが、これらの化合物は一連の製造方法で同時に形成されるものであり、その比率は前駆体のMn含有量及びLi化合物の混合量で決定されるものである。
【0035】
上記のように、前駆体粒子とリチウム化合物とを混合して焼成することにより得られたリチウム遷移金属複合酸化物の粒子は、そのまま、又は所望の粒子径になるように粉砕し、正極活物質として使用することができる。
また、このリチウム遷移金属複合酸化物の粒子を硫酸アルミニウム等の水溶液と接触させることにより、周知のように、粒子表面にアルミニウム化合物を存在させて、正極活物質としてもよい。
【0036】
(負極活物質)
負極活物質としては、限定されない。リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li
1/3Ti
5/3]O
4に代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
【0037】
(正極・負極)
正極活物質の粉体および負極活物質の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが好ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で15μm以下であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには、所定の大きさの前駆体を作製する方法や粉砕機、分級機などを用いる方法などがある。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0038】
正極及び負極には、前記活物質の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
【0039】
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため好ましい。正極活物質に導電剤を十分に混合するために、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミル等の粉体混合機を乾式、あるいは湿式で用いることが可能である。
【0040】
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0041】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば限定されない。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
【0042】
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極材料)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液をアルミニウム箔等の集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
(非水電解質)
本実施形態に係るリチウム二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO
4,LiBF
4,LiAsF
6,LiPF
6,LiSCN,LiBr,LiI,Li
2SO
4,Li
2B
10Cl
10,NaClO
4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO
4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF
3SO
3,LiN(CF
3SO
2)
2,LiN(C
2F
5SO
2)
2,LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2),LiC(CF
3SO
2)
3,LiC(C
2F
5SO
2)
3,(CH
3)
4NBF
4,(CH
3)
4NBr,(C
2H
5)
4NClO
4,(C
2H
5)
4NI,(C
3H
7)
4NBr,(n−C
4H
9)
4NClO
4,(n−C
4H
9)
4NI,(C
2H
5)
4N−maleate,(C
2H
5)
4N−benzoate,(C
2H
5)
4N−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0045】
さらに、LiPF
6又はLiBF
4と、LiN(C
2F
5SO
2)
2のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より好ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
【0046】
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/L〜5mol/Lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/L〜2.5mol/Lである。
【0047】
(セパレータ)
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0048】
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
【0049】
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
【0050】
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため好ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
【0051】
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、電子線(EB)照射、又は、ラジカル開始剤を添加して加熱若しくは紫外線(UV)照射を行うこと等により、架橋反応を行わせることが可能である。
【0052】
(電池のその他の構成要素)
電池のその他の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
【0053】
(リチウム二次電池の構成)
図5に、本発明の一態様に係る矩形状のリチウム二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。
図5に示すリチウム二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明の一態様に係るリチウム二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
【0054】
(蓄電装置の構成)
本実施形態は、上記のリチウム二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を
図6に示す。
図6において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数のリチウム二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明の例示であって、本発明がこれらの実施例に限定されないことは勿論である。
【0056】
<実施例1>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.0(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Mnのモル比が0.338:0.662となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Mn)が1.33となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下930℃で4hr焼成し、中間焼成物(リチウム遷移金属複合酸化物)を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下400℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0057】
<実施例2>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら40℃に保持した。さらにpH=8.0(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Mnのモル比が0.341:0.659となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、100℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Mn)が1.31となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下900℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを35℃に保持した30mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.04mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液6mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で4hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0058】
<実施例3>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら40℃に保持した。さらにpH=8.4(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Mnのモル比が0.341:0.659となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、100℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Mn)が1.32となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下880℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを35℃に保持した30mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度0.5mol/Lとなるように調整した混合水溶液6mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で4hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0059】
<実施例4>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.4(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Mnのモル比が0.34:0.66となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Mn)が1.30となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを35℃に保持した30mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度0.5mol/L、となるように調整した混合水溶液6mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で4hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0060】
<実施例5>
密閉型反応槽に水を6L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.4(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.319:0.016:0.666となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.32となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを35℃に保持した30mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度1.5mol/L、となるように調整した混合水溶液6mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で4hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0061】
<比較例1>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.0(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.290:0.061:0.649となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.33となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で4hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下400℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0062】
<比較例2>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.283:0.095:0.622となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.28となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で4hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0063】
<比較例3>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.347:0.152:0.501となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.11となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下950℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度0.5mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下500℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0064】
<比較例4>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.296:0.152:0.552となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.21となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で5hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度0.5mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0065】
<比較例5>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.383:0.102:0.515となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.13となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下900℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下500℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0066】
<比較例6>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.247:0.152:0.601となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.31となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.10mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.5mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下400℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0067】
<比較例7>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.244:0.099:0.657となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、120℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.36となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下850℃で6hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、120℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0068】
<比較例8>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.193:0.201:0.605となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、100℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.36となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下900℃で5hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.5mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下400℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0069】
<比較例9>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.193:0.302:0.505となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.30となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下900℃で5hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸アルミニウム濃度0.5mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下450℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0070】
<比較例10>
密閉型反応槽に水を8L入れ、窒素ガスを流通させながら50℃に保持した。さらにpH=8.5(±0.2)となるように撹拌しながら、連続的にNi、Co、Mnのモル比が0.182:0.124:0.694となるように調整した混合硫酸塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、80℃で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
得られた共沈前駆体の粉末と炭酸リチウム粉末をLi/(Ni+Co+Mn)が1.39となるように秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、空気流通下950℃で5hr焼成し、中間焼成物を得た。
この中間焼成物100gを30℃に保持した20mLの純水に攪拌しながら投入した。次に硫酸濃度0.05mol/L、硫酸アルミニウム濃度1.0mol/L、となるように調整した混合水溶液3mLを、中間焼成物のスラリーに滴下し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。これを電気炉を用いて、空気流通下500℃で5hr焼成し、正極活物質の粉末を得た。
この正極活物質の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面にアルミニウム化合物が存在している。
【0071】
上記した全ての正極活物質の粉末は、エックス線回折装置(Rigaku社製、型名:SmartLab)を用いて、上記の条件を採用して、格子定数aを求めた。
【0072】
(リチウム二次電池の作製)
前記実施例及び比較例に係る正極活物質(活物質)の粉末をそれぞれ用いて、以下の手順でリチウム二次電池を作製した。
【0073】
N−メチルピロリドンを分散媒とし、活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている塗布用ペーストを作製した。該塗布ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の片方の面に塗布し、正極板を作製した。なお、全ての実施例及び比較例に係るリチウム二次電池同士で試験条件が同一になるように、一定面積当たりに塗布されている活物質の質量及び塗布厚みを統一した。
【0074】
正極の単独挙動を正確に観察する目的のため、対極、即ち負極には金属リチウムをニッケル箔集電体に密着させて用いた。ここで、リチウム二次電池の容量が負極によって制限されないよう、負極には十分な量の金属リチウムを配置した。
【0075】
電解液として、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)が体積比6:7:7である混合溶媒に濃度が1mol/LとなるようにLiPF
6を溶解させた溶液を用いた。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用い、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように電極を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記電解液を注液後、注液孔を封止した。
【0076】
(初期充放電工程)
次に、25℃にて、1サイクルの初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1
C、電圧4.6Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/50に減衰した時点とした。放電は、電流0.1
C、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を1サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。このようにして、リチウム二次電池を作製した。
【0077】
(1
Cでの放電試験)
25℃にて、1
Cでの放電試験を行った。充電は、電流0.1
C、電圧4.45Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/50に減衰した時点とした。放電は、電流1
C、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。このときの放電容量及び平均電圧(V)、並びに、これらの積として算出されるエネルギー密度をそれぞれ「1
Cでの放電容量(mAh/g)」、及び「1
Cでの平均電圧(V)」、並びに、「1
Cでのエネルギー密度(mWh/g)」として記録した。
【0078】
(充放電サイクル試験)
25℃環境下において、25サイクルの充放電試験を行った。充電は、電流0.33CAの定電流充電とし、充電終止電圧は4.45Vとした。放電は、電流0.33CAの定電流放電とし、放電終止電圧は2.0Vとした。ここで充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止期間を設けた。当該充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量と平均電圧の積として算出されるエネルギー密度に対する、25サイクル目の放電容量と平均電圧の積として算出されるエネルギー密度の百分率を「エネルギー密度維持率(%)」として記録した。
【0079】
前記実施例及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれリチウム二次電池用正極活物質として用いたリチウム二次電池の試験結果を表1に示す。
但し、実施例5は参考例である。
また、前記実施例及び比較例における(w−2x−y)/wに対して、それぞれエネルギー密度及びエネルギー密度維持率をプロットしたグラフを
図1、
図2に示す。また、前記実施例及び比較例におけるエネルギー密度とエネルギー密度維持率の関係を
図3に、(w−2x−y)/wと格子定数aの関係を
図4に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1及び
図1〜3から、以下のことがわかる。
(w−2x−y)/wが、0.47<(w−2x−y)/w<0.51を満たし、0.30<x<0.37、0≦y<0.05、0.63<z<0.70を満たす実施例1〜5に係る正極活物質は、1
Cでのエネルギー密度が高く、且つエネルギー密度維持率も高い。
【0082】
(w−2x−y)/wが0.51以上の比較例1、7、8及び10、並びに0.47以下の比較例3〜5では、比較例10を除いて1
Cでのエネルギー密度が小さい(
図1参照)。比較例10は、(w−2x−y)/wが0.648と本実施形態の範囲を大きく外れ、エネルギー密度は高いものの、エネルギー密度維持率が91.1%と低い(
図2参照)。
比較例2、6及び9は、(w−2x−y)/wが本実施形態の範囲内であるが、x、y、zがいずれも本実施形態の範囲を満たしておらず、いずれも1
Cでのエネルギー密度が低い。
1
Cでのエネルギー密度とエネルギー密度維持率とがともに優れているのは、実施例1〜5のみである(
図3参照)。
【0083】
さらに、(w−2x−y)/wと格子定数aの関係を
図4に示す。(w−2x−y)/wが、0.47<(w−2x−y)/w<0.51であり、格子定数aが2.870Å以上で、高いエネルギー密度と高いエネルギー密度維持率が実現できたことがわかる。