【文献】
村上幸二郎他,地方都市都心部における住宅地導入の可能性評価に関する研究,日本建築学会計画系論文集,日本建築学会,2015年 1月,第80巻,第707号,p.107-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不動産評価値算出手段は、前記需給均衡点を同一エリアにおいて用途毎に相対評価することによって、前記不動産の評価値をエリア毎に算出することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の不動産評価システム。
前記不動産評価値出力手段は、地図上に表示された前記エリアに対応して、前記用途に応じた不動産の評価値を表示することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の不動産評価システム。
前記不動産評価値算出手段は、前記エリア毎に算出された前記用途に応じた不動産の評価値と前記不動産の第2の評価値とに基づいて、前記不動産の総合評価値を算出することを特徴とする、請求項6に記載の不動産評価システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の不動産評価システムおよび不動産評価方法では、過去の売買取引実績または全国の流通機構などが保有している情報を用いているが、一昔前の実績である可能性があったり、他者のシステムで算出された情報であったりするため、現在の評価に際して適正なものでない可能性がある。
【0010】
さらに、ユーザが評価する項目が多岐に及んでいるため、全て正確に評価された情報を取得できれば信憑性は高まるが、ユーザにとっては非常に手間が掛かかる。また、多岐に及ぶ項目であるため、ユーザとしては全てを評価することが苦痛になることもあり、項目によっては、正確でない評価をしてしまう可能性も考えられる。
【0011】
非特許文献1に記載された評価方法では、過去の売買取引実績を用いることはなく、ユーザのアンケートに基づいて土地を評価しているが、おおよそ高額な取引となる土地の売買を想定したアンケートであるため、ユーザの中には現実味が湧かずにアンケートに回答していることも考えられる。
【0012】
それ故に、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出することによって不動産を適正に評価することができる不動産評価システムおよび不動産評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0014】
本発明の一局面に係る不動産評価システムは、不動産を評価する不動産評価システムであって、不動産を借用可能な需要者からの需要者情報および貸与可能な不動産を有する供給者からの供給者情報を取得する需要供給情報取得手段と、前記需要者情報および前記供給者情報に基づいて、用途に応じた不動産の需要賃料と需要者数と供給賃料と供給者数とをエリア毎に集計する需要供給情報集計手段と、前記需要賃料と前記需要者数とから需要曲線を算出し、前記供給賃料と前記供給者数とから供給曲線を算出し、当該需要曲線と供給曲線とから導かれる需給均衡点に基づいて、前記用途に応じた不動産の評価値を前記エリア毎に算出する不動産評価値算出手段と、前記用途に応じた不動産の評価値を前記エリア毎に出力する不動産評価値出力手段とを備え、前記需要者情報および前記供給者情報は、エリア情報と、不動産の使用目的を示す用途情報と、需要賃料または供給賃料とを含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、近年、不動産売買取引が少なくても(皆無であったとしても)、不動産を借用可能な需要者からの需要者情報および貸与可能な不動産を有する供給者からの供給者情報に基づいて、不動産の評価値を算出するため、不動産を適正に評価することができる。
換言すれば、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出するため、不動産を適正に評価することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記需要者は、所定以上の収入が見込めることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、需要者を所定以上の収入が見込める需要者に絞ることによって、より信憑性の高い需要者情報を取得することができる。その結果、より信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記供給者は、実際に貸与している不動産か貸与していた不動産を所有していることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、供給者を実際に貸与している不動産か貸与していた不動産を所有している供給者に絞ることによって、より信憑性の高い供給者情報を取得することができる。その結果、より信憑性の高い供給者情報および需要者情報に基づいて不動産の評価値を算出することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記不動産評価値算出手段は、前記需給均衡点を同一エリアにおいて用途毎に相対評価することによって、前記不動産の評価値をエリア毎に算出することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、需給均衡点を同一エリアにおいて用途毎に相対評価するため、どのエリアを将来どの用途として整備すれば最も効率が良いかを把握することができる。
【0018】
また、好ましくは、前記不動産評価値出力手段は、地図上に表示された前記エリアに対応して、前記用途に応じた不動産の評価値を表示することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、地図上に表示された前記エリアに対応して不動産の評価値を表示するため、視覚的にも把握し易く、容易に周辺エリアの不動産の評価値とも比較することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記需要供給情報取得手段は、不動産を購入可能な需要者からの第2の需要者情報および売却可能な不動産を有する供給者からの第2の供給者情報を取得し、前記需要供給情報集計手段は、前記第2の需要者情報および前記第2の供給者情報に基づいて、前記不動産の需要価格と需要者数と供給価格と供給者数とをエリア毎に集計し、前記不動産評価値算出手段は、前記需要価格と前記需要者数とから第2の需要曲線を算出し、前記供給価格と前記供給者数とから第2の供給曲線を算出し、当該第2の需要曲線と第2の供給曲線とから導かれる第2の需給均衡点に基づいて、前記不動産の第2の評価値を前記エリア毎に算出し、前記不動産評価値出力手段は、前記不動産の第2の評価値を前記エリア毎に出力し、前記第2の需要者情報および前記第2の供給者情報は、エリア情報と、需要価格または供給価格とを含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、不動産を購入可能な需要者からの第2の需要者情報および売却可能な不動産を有する供給者からの第2の供給者情報に基づいて、不動産の第2の評価値を算出するため、不動産を適正に評価することができる。
換言すれば、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、不動産の売買を検討している需要者および供給者からの信憑性の高い第2の需要者情報および第2の供給者情報に基づいて第2の不動産の評価値を算出するため、不動産を適正に評価することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記不動産評価値算出手段は、前記エリア毎に算出された前記用途に応じた不動産の評価値と前記不動産の第2の評価値とに基づいて、前記不動産の総合評価値を算出することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る不動産評価システムによれば、賃貸借に応じた不動産の評価値と、売買に応じた不動産の第2の評価値とに基づいて、不動産の総合評価値を算出するため、不動産をより適正に評価することができる。
【0021】
さらに、上述した本発明の一局面に係る不動産評価システムが行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与える不動産評価方法として捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、所定のサーバからダウンロードする形態で、プログラムが格納された所定のサーバにインターネット経由でアクセスする形態で、もしくはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。また、上述した本発明の一局面に係る不動産評価システムを構成する一部又は全部の機能ブロックは、集積回路であるLSI(Large−Scale Integration)等として実現されてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出することによって不動産を適正に評価することが可能な不動産評価システムおよび不動産評価方法を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る不動産評価システム100における各機能を示す機能ブロック図であり、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る不動産評価システム100が実行する不動産評価方法200を示すフローチャートである。
【0026】
図1において、不動産評価システム100は、需要供給情報取得手段110と、需要供給情報集計手段120と、不動産評価値算出手段130と、不動産評価値出力手段140とを備える。
図2において、不動産評価方法200は、需要供給情報取得ステップS210と、需要供給情報集計ステップS220と、不動産評価値算出ステップS230と、不動産評価値出力ステップS240とを含む。
【0027】
需要供給情報取得ステップS210において、需要供給情報取得手段110は、不動産を借用可能な需要者からの需要者情報および貸与可能な不動産を有する供給者からの供給者情報を取得する。具体的には、需要供給情報取得手段110は、需要者情報および供給者情報として、エリア情報、ユーザ情報、用途情報、および希望賃料を取得する。
【0028】
エリア情報とは、賃貸借される不動産の所在地を所定の範囲で示す情報であって、例えば、人口や面積、その他地理的事情を考慮して、都道府県単位、市区町村単位、駅やランドマークを中心とする地域単位、およびその他任意に分割される地域単位で設定される。
【0029】
また、エリア情報は、段階的に選択されるようにしても構わない。後述する不動産の評価値をエリア毎に算出するが、広域単位および狭域単位など複数段階に及んで不動産の評価値を算出したい場合には、予めエリア情報を段階的に選択されるように設定しておけばよい。どの単位でどのようにエリア情報を設定するかは、不動産評価システム100の管理、保守、運営する責任者が設定し、および状況に応じて変更可能としても構わない。
【0030】
ユーザ情報とは、不動産の賃貸借において、不動産を借用する需要者か不動産を貸与する供給者かを示す情報である。例えば、需要者は、主に土地などの不動産の利用を検討している、または利用を所望しているユーザであり、供給者は、主に土地などの不動産を所有しており、当該不動産の貸与を検討している、または貸与を所望しているユーザである。
【0031】
用途情報とは、賃貸借される不動産の使用目的を示す情報であって、本実施形態では、住宅用と商業用とを例示しているが、これらに限定されるものではなく、例えば、工場等の工業用やこれら複数の混在型用などを含むようにしても構わない。
【0032】
希望賃料とは、賃貸借される不動産の賃料を示す情報であって、例えば、地代や家賃などを含む概念である。ユーザが需要者の場合には希望需要賃料であり、希望需要賃料は、需要者が当該不動産を借りても良いと考える最高賃料である。ユーザが供給者の場合には希望供給賃料であり、希望供給賃料は、供給者が当該不動産を貸しても良いと考える最低賃料である。
【0033】
ここで、需要供給情報取得ステップS210において、需要供給情報取得手段110が各情報を取得する手順を詳しく説明する。
図3は、不動産評価方法200における各ステップのうち、需要供給情報取得ステップS210の詳細な処理を示すフローチャートである。
図3において、需要供給情報取得ステップS210は、エリア情報取得ステップS211と、ユーザ情報取得ステップS212と、需要者適格判定ステップS213と、供給者適格判定ステップS214と、用途情報取得ステップS215と、希望賃料取得ステップS216とを含む。
【0034】
エリア情報取得ステップS211において、ユーザによって選択されたエリア情報を取得する。例えば、ユーザが徳島県の徳島駅周辺で賃貸者される不動産を対象としている場合には、当該エリアを選択するようにすればよい。
【0035】
ユーザ情報取得ステップS212において、ユーザによって選択されたユーザ情報を取得する。例えば、ユーザが不動産の借用を検討している場合には、需要者を選択し、ユーザが貸主であり当該不動産の貸与を検討している場合には、供給者を選択する。
【0036】
需要者適格判定ステップS213において、ユーザ情報取得ステップS212で需要者を選択したユーザに需要者適格があるかを判定する。例えば、需要者は不動産を借用するため、当該不動産の賃料が支払える程度の収入が見込めるかを判定する。現在および/または直近数ヶ月(または1年)の収入を確認したり、現在の金融資産を確認したり、その他見込める収入があるかを確認したりすればよい。
【0037】
このように需要者適格を確認することにより、当該ユーザに現実味が増し、当該ユーザ(需要者適格のあるユーザ)からの需要者情報がより信憑性の高いものとなる。
【0038】
供給者適格判定ステップS214において、ユーザ情報取得ステップS212で供給者を選択したユーザに供給者適格があるかを判定する。例えば、供給者は不動産を貸与するため、実際に貸与可能な不動産を有しているかを判定する。
【0039】
このように供給者適格を確認することにより、当該ユーザに現実味が増し、当該ユーザ(供給者適格のあるユーザ)からの供給者情報がより信憑性の高いものとなる。
【0040】
また、供給者が所有している不動産が現在貸与している不動産であるか、および過去貸与していた不動産であるかを確認するようにすれば、当該ユーザにより現実味が増し、さらにより信憑性の高い供給者情報を取得することができる。
【0041】
なお、ユーザに需要者適格がない場合(ステップS213でNo)、またはユーザに供給者適格がない場合(ステップS214でNo)には、不動産評価システム100を終了させるようにしても構わない。このようにすれば、信憑性の低い需要者情報および供給者情報を取得する可能性が低減されて、結果として信頼性の高い適正な不動産の評価値を算出することができる。
【0042】
用途情報取得ステップS215において、ユーザによって選択された用途情報を取得する。本実施形態では、ユーザは、住宅用または商業用を選択する。例えば、ユーザが需要者であって(ステップS212で「需要者」を選択)、当該不動産を住宅用として使用を検討している場合には住宅用を選択し、商業用として使用を検討している場合には商業用を選択する。
【0043】
一方、ユーザが供給者であって(ステップS212で「供給者」を選択)、当該不動産を住宅用として貸与することを検討している場合には住宅用を選択し、商業用として貸与することを検討している場合には商業用を選択する。供給者は、自身が保有する不動産がどのような用途で使用されるかについて、こだわりがある場合も考えられるため当該選択肢を設定しているが、こだわりがない場合には両方を選択するか、特に当該項目をスキップするようにしても構わない。
【0044】
希望賃料取得ステップS216において、ユーザによって入力された希望賃料を取得する。例えば、ユーザが需要者である場合(ステップS212で「需要者」を選択)、当該不動産をいくらで借用したいか(いくらまでなら高い賃料で借用できるか)を示す希望需要賃料を入力する。ユーザが供給者である場合(ステップS212で「供給者」を選択)、当該不動産をいくらで貸与したいか(いくらまでなら安い賃料で貸与できるか)を示す希望供給賃料を入力する。
【0045】
なお、本実施形態では、希望賃料(希望需要賃料および希望供給賃料)は、1坪当たりの1ヶ月分の賃料として例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、1平米当たりや1年分の賃料や各エリアの標準的な賃貸借土地面積を乗じた賃料などを用いても構わない。
【0046】
需要供給情報取得ステップS210が完了し、次に、需要供給情報集計ステップS220に進む(
図3の「end」)。
【0047】
需要供給情報集計ステップS220において、需要供給情報集計手段120は、需要供給情報取得ステップS210で取得された需要者情報および供給者情報に基づいて、用途に応じた不動産の需要賃料と需要者数と供給賃料と供給者数とをエリア毎に集計する。
【0048】
具体的には、ユーザが需要供給情報取得ステップS210に従って入力した各情報を、例えば、メモリやデータベース(DB)に記録して蓄積する。
図4は、需要供給情報取得ステップS210で取得した需要者情報および供給者情報を集計した需要供給情報集計結果400を示す図である。
【0049】
図4において、需要供給情報集計結果400は、集計結果の一部を示しているが、それぞれエリア毎に、需要者における用途(住宅用および商業用)に応じた需要賃料と、供給者における用途(住宅用および商業用)に応じた供給賃料とを集計している。
【0050】
具体的には、需要者情報として、駅周辺エリアでは、住宅用で需要賃料¥600、¥550、¥900、¥800、¥760が蓄積され、商業用で需要賃料¥600が蓄積されている。また、供給者情報として、駅周辺エリアでは、住宅用で供給賃料¥700、¥850、¥900が蓄積され、商業用で供給賃料¥1100、¥950が蓄積されている。
【0051】
また、中央町エリア、南海エリア、北山エリアも同様に需要者情報および供給者情報が蓄積されている。
【0052】
これらの蓄積される需要者情報および供給者情報は、上述した需要者適格や供給者適格があれば、複数の情報を同一ユーザによって蓄積されても構わないし、特定のユーザによるバイアスがかからないように、1ユーザ当たりの数に制限を掛けても構わない。
【0053】
なお、1ユーザで複数の需要者情報および/または供給者情報を入力(選択)する際、同一画面などで複数項目を入力(選択)できるようなインタフェースを設定していても構わない。
【0054】
蓄積される需要者情報および供給者情報が多ければ、算出される不動産の評価値(後述する)の信頼性が向上することは言うまでもないが、上述したように1ユーザで複数の需要者情報および/または供給者情報の入力(選択)を可能とすれば、蓄積される情報量が多くなるという点では効果がある。
【0055】
不動産評価値算出ステップS230において、不動産評価値算出手段130は、蓄積された需要者情報および供給者情報に基づいて、用途に応じた不動産の評価値をエリア毎に算出する。
【0056】
より詳細には、需要供給情報集計ステップS220で集計(蓄積)された需要者情報から、エリア毎に用途(住宅用および商業用)に応じた需要賃料と需要者数とから需要曲線を算出する。同様に、需要供給情報集計ステップS220で集計(蓄積)された供給者情報から、エリア毎に用途(住宅用および商業用)に応じた供給賃料と供給者数とから供給曲線を算出する。そして、算出された需要曲線と供給曲線との交点となる需給均衡点を導く。
【0057】
図5は、住宅用需要曲線D1と住宅用供給曲線S1とから住宅用需給均衡点B1を導く様子と、商業用需要曲線D2と商業用供給曲線S2とから商業用需給均衡点B2を導く様子とを示す図である。
図5において、縦軸に需要者数/供給者数を設定し、横軸に需要賃料/供給賃料を設定している。
図4に示した駅周辺エリアの住宅用を例に挙げて説明すると、需要賃料を¥600と入力した需要者数、¥550と入力した需要者数、・・・から住宅用需要曲線D1を求める。同様に、供給賃料を¥700と入力した供給者数、¥850と入力した供給者数、・・・から住宅用供給曲線S1を求める。そして、住宅用需要曲線D1と住宅用供給曲線S1との交点となる住宅用需給均衡点B1を導き、駅周辺エリアの住宅用需給均衡点B1が、例えば、¥800円と算出されることになる。
【0058】
なお、住宅用需要曲線D1および住宅用供給曲線S1を求める際には、回帰分析を用いることが好ましい。回帰分析を用いることで、サンプルデータに基づいて正確な住宅用需要曲線D1および住宅用供給曲線S1を求めることができる。ここで、需要者が入力する賃料とは、当該入力する賃料以下であれば借用するという意であると解することが適当であって、例えば、需要者が需要賃料¥600と入力した場合、当該需要者にとっては、当然¥600以下であれば良いということになる。同様に、供給者が入力する賃料とは、当該入力する賃料以上であれば貸与するという意であると解することが適当であって、例えば、供給者が供給賃料¥600と入力した場合、当該供給者にとっては、当然¥600以上であれば良いということになる。
【0059】
したがって、住宅用需要曲線D1は、ある需要賃料を考えると当該需要賃料以上と入力した全需要者数をカウントし、住宅用供給曲線S1は、ある供給賃料を考えると当該供給賃料以下と入力した全供給者数をカウントすることによって導くようにすれば良い。
【0060】
さらに、駅周辺エリアの商業用需要曲線D2、商業用供給曲線S2、および商業用需給均衡点B2についても、上記住宅用と同様の方法で算出可能であることは言うまでもなく、同様に、中央町エリアの住宅用および商業用の需給均衡点、南海エリアの住宅用および商業用の需給均衡点、北山エリアの住宅用および商業用の需給均衡点もそれぞれ算出される。
【0061】
次に、算出された用途別の需給均衡点に基づいて、不動産の評価値を算出する。ここで、不動産の評価値は、上述のように算出された需給均衡点の絶対値をそのまま評価値としても構わないが、例えば、周辺エリアや同一エリア内での他用途との比較するために相対値を用いるようにしても構わない。
【0062】
例えば、不動産の評価値を(住宅用需給均衡点)/(商業用需給均衡点)として表すようにすれば、現在、商業用として利用しているエリア(地域)を、将来住宅用として利用する価値上昇がどの程度あるか、を計量的に把握することができる。現在、国を挙げて推奨している「都心居住」について、地方再生や高齢者が歩いて暮らせる街づくりに向けて、どのエリアを将来住宅用として整備すれば最も効率が良いかを把握することができる。
【0063】
より具体的には、疲弊する地方都市の都心の一部を住宅用(エリア)として利用すると、現在の商業用(エリア)としての利用よりも価値が上がるかまたは下がるかなど、将来的な利用価値という観点も踏まえて、不動産の価値を把握することができる。仮に、駅周辺エリアの住宅用需給均衡点B1が、¥800円と算出され、商業用需給均衡点B2が、¥700円と算出された場合、不動産の評価値は、(住宅用需給均衡点)/(商業用需給均衡点)=1.14となる。
【0064】
また、不動産の評価値を(商業用需給均衡点)/(住宅用需給均衡点)として表すようにすれば、現在、住宅用として利用しているエリア(地域)を、将来商業用として利用する価値がどの程度あるか、を把握することができることは言うまでもない。
【0065】
また、例えば、全ユーザが入力した需要賃料および供給賃料の平均賃料を基準値(1.0)として、その相対値を評価値とする。仮に、平均賃料が¥650である場合、上記駅周辺エリアの住宅用の評価値は、1.23となる。
【0066】
なお、ここでは上記平均賃料を基準値に設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、昨年1年間の賃貸借実績から、それらの平均賃料を基準値にしても構わない。実際に売買取引は数少ない可能性があるが、賃貸借取引は進行中の契約などもあり一定数の取引実績は見込めるため、信頼性の高い情報であると言える。
【0067】
また、不動産の評価値は必ずしも数値で表す必要はなく、例えば、上記需給均衡点や相対値に基づいて、所定範囲毎にランクを設定し、A、B、C、・・・などで表すようにしても構わない。
【0068】
最後に、不動産評価値出力ステップS240において、不動産評価値出力手段140は、用途に応じた不動産の評価値をエリア毎に出力する。
図6は、地図上において分割されたエリア毎に用途に応じた不動産の評価値を表示している様子を示す図である。
図6において、地図上にエリアが分割されており、エリア毎に住宅用の不動産の評価値が棒グラフとともに表示されている。
【0069】
地図上で分割されたエリアに、不動産の評価値と、その評価値に対応する棒グラフとを表示しているため、一見して視覚的にも把握し易く、容易に周辺エリアの不動産の評価値とも比較することができる。
【0070】
なお、ここでは、不動産の評価値を(住宅用需給均衡点)/(商業用需給均衡点)として表示しているが、その他不動産の評価値として、住宅用および商業用の不動産の評価値を併記するようにしても構わないし、単に住宅用と商業用とを合わせた不動産の評価値を表示するようにしても構わない。
【0071】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る不動産評価システム100および不動産評価方法200によれば、信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出することによって不動産を適正に評価することができる。
【0072】
不動産売買の場合には、需要者の立場では高額な購入価格となり、供給者の立場では高額な売却価格になる上に自身が保有する不動産を手放すことになるため、需要者および供給者にとって現実味を感じ難く、需要者から需要者情報および供給者からの供給者情報には信憑性が高くない可能性がある。一方、賃貸借の場合には、需要者の立場では借用可能な範囲であり、供給者の立場では自身が保有する不動産を手放すことがなく、身近に想定され得る状況であるため、需要者から需要者情報および供給者からの供給者情報には信憑性が高くなる。
【0073】
つまり、本発明の第1の実施形態に係る不動産評価システム100および不動産評価方法200によれば、近年、不動産売買取引や新規の賃貸借契約に関する事例が少なくても(皆無であったとしても)、不動産を借用可能な需要者からの需要者情報および貸与可能な不動産を有する供給者からの供給者情報に基づいて、不動産の評価値を算出するため、不動産を適正に評価することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、需要者適格判定ステップS213において、ユーザの収入や金融資産などから需要者適格を判定していたが、さらに、当該ユーザの収入や金融資産と、希望賃料取得ステップS216において当該ユーザが入力した希望需要賃料と比較することによって、需要者適格を判定しても構わない。当該ユーザの収入や金融資産から希望需要賃料を、支払い可能か否かを判定すればよい。
【0075】
また、用途情報取得ステップS215において商業用が選択された場合には、当該ユーザが商売の経験者であるか、実際にどのような商売を予定しているか、当該商売の計画が具体的かなどによって、需要者適格を判定しても構わない。そうすれば、当該ユーザに現実味が増し、当該ユーザ(需要者適格のあるユーザ)からの需要者情報がより信憑性の高いものとなる。
【0076】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した賃貸借に加えて不動産の売買も考慮して、不動産の評価値を算出する不動産評価システムおよび不動産評価方法を説明する。本実施形態では、加味される不動産の売買に関して、本発明の第1の実施形態に追加される点を中心に説明する。
【0077】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る不動産評価システム700における各機能を示す機能ブロック図である。
図7において、
図1に示した本発明の第1の実施形態に係る不動産評価システム100と同一の構成については、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。また、本発明の第2の実施形態に係る不動産評価方法は、本発明の第1の実施形態に係る不動産評価方法200と同様であるため、適宜、
図2のフローチャートを援用しながら説明する。
【0078】
図7において、不動産評価システム700の需要供給情報取得手段710は、不動産を購入可能な需要者からの第2の需要者情報および売却可能な不動産を有する供給者からの第2の供給者情報を取得する(需要供給情報取得ステップS210)。具体的には、需要供給情報取得手段110は、第2の需要者情報および第2の供給者情報として、不動産の売買を想定したエリア情報、ユーザ情報、用途情報、および希望価格を取得する。
【0079】
図8は、本発明の第2の実施形態における需要供給情報取得ステップS210の詳細な処理を示すフローチャートである。エリア情報(エリア情報取得ステップS211)、ユーザ情報(ユーザ情報取得ステップS212)、および用途情報(用途情報取得ステップS215)は、本発明の第1の実施形態で説明したものと同様に考えられるが、希望価格(希望価格取得ステップS816)は、不動産の売買を想定した価格となる。
【0080】
ただし、不動産の売買を考慮すると、供給者は、自身の不動産を手放した後、どのような用途で使用されるかについて興味がない場合が多いため、供給者からの用途情報(住宅用または商業用)は取得しなくても構わない。換言すれば、ユーザが供給者の場合には、用途情報取得ステップS215はスキップする。
【0081】
また、需要者適格判定ステップS213では、需要者が不動産を購入可能かどうか、現在および/または直近数ヶ月(または1年)の収入を確認したり、現在の金融資産を確認したり、その他見込める収入があるかを確認したりすればよい。供給者適格判定ステップS214では、供給者は実際に売却可能な不動産を有しているかを判定すればよい。
【0082】
なお、需要供給情報取得手段710は、第1の実施形態に係る不動産評価システム100の需要供給情報取得手段110に含まれていても構わないし、別構成であっても構わない。換言すれば、需要供給情報取得ステップS210において、賃貸借を想定した需要者情報および供給者情報を取得するとともに、売買を想定した第2の需要者情報および第2の供給者情報を取得するようにしても構わないし、それぞれ別個に取得するようにしても構わない。
【0083】
需要供給情報集計手段120は、第2の需要者情報および第2の供給者情報に基づいて、不動産の需要価格と需要者数と供給価格と供給者数とをエリア毎に集計する。
図9は、第2の需要者情報および第2の供給者情報を集計した需要供給情報集計結果900を示す図である。
【0084】
図9において、需要供給情報集計結果900は、集計結果の一部を示しているが、それぞれエリア毎に、需要者における用途(住宅用および商業用)に応じた需要価格と、供給者における供給価格とを集計している。供給者においては用途情報を有しておらず、上述したように用途情報取得ステップS215をスキップしている。そして、これらの各情報は、賃貸借を想定した
図4の情報と同様に、例えば、メモリやデータベース(DB)に記録して蓄積される。
【0085】
不動産評価値算出手段130は、蓄積された第2の需要者情報および第2の供給者情報に基づいて、不動産の評価値をエリア毎に算出する。
図5に示した需要曲線、供給曲線、および需給均衡点と同様に、需要価格と需要者数とから第2の需要曲線を算出し、供給価格と供給者数とから第2の供給曲線を算出し、当該第2の需要曲線と第2の供給曲線とから導かれる第2の需給均衡点を導く。そして、当該第2の需給均衡点に基づいて、不動産の第2の評価値をエリア毎に算出する。
【0086】
不動産評価値出力手段140は、不動産の第2の評価値をエリア毎に出力する。ここで、不動産の第2の評価値は、第1の実施形態で示した不動産の評価値に併記するように表示しても構わないし、加算して不動産の総合評価値として表示するようにしても構わない。
【0087】
また、不動産の総合評価値は、不動産の第2の評価値と第1の実施形態で示した不動産の評価値とを単に加算して算出されることに限定されるものではなく、例えば、それぞれ係数を掛けた後に加算して算出されるようにしても構わない。係数は、それぞれ信憑性に応じて設定しても構わないし、重み付けを設定する等、バイアス掛けるようにしても構わない。
【0088】
さらに、利回り=(1年間の賃料)/(売買価格)に適用しても構わない。具体的には、本発明の第1の実施形態で詳細に説明した需給均衡点から1年間の賃料を算出し、上述した第2の需給均衡点から売買価格を算出すればよい。また、住宅用や商業用など用途に応じた利回りを算出することによって、不動産の評価値を分析すれば、将来、どのエリアにおいてどの用途で利用すれば収益性が高く、不動産としての価値があるかも把握することができる。
【0089】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る不動産評価システム700およびそれが実行する不動産評価方法によれば、信憑性の高い需要者情報および供給者情報に基づいて不動産の評価値を算出することによって不動産を適正に評価することができ、さらに、不動産の売買を検討している需要者および供給者からの信憑性の高い第2の需要者情報および第2の供給情報に基づいて不動産の第2の評価値を算出するため、不動産をより適正に評価することができる。
【0090】
以上、本発明の各実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。