特許第6387113号(P6387113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387113
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】自動物体搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20180827BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   B25J19/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-565599(P2016-565599)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2014006477
(87)【国際公開番号】WO2016103299
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 潤
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】水本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−51048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0013109(US,A1)
【文献】 特開2014−128860(JP,A)
【文献】 特開2000−198091(JP,A)
【文献】 特開昭60−20874(JP,A)
【文献】 特開昭58−77466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を連結するための連結具及び当該連結具を吊り下げる吊り下げ部材を含む吊り具と、当該吊り具を移動させる移動機構とを備える吊り下げ移動装置と、
前記物体に取り付けられ、前記連結具と連結することが可能なように構成された仲介具と、
物を保持するアームを備えるロボットと、を備え、
前記連結具は、
前記吊り下げ部材の先端部に連結される基部と、
前記基部に取り付けられ、開口部を有する鈎状に形成されている吊下保持部であって、前記仲介具に引っ掛ける吊下保持部と、
前記基部に取り付けられ、前記ロボットのアームに保持される接続保持部と、
退避位置と、当該退避位置から前記基部に対して下方向に相対的に移動した進出位置との間を移動する複数の押圧部であって、該複数の押圧部は上下方向からみて互いに異なる位置に設けられている複数の押圧部と、
前記ロボットに制御されて前記複数の押圧部を前記退避位置と前記進出位置との間で移動させる押圧部駆動部と、を含み、
前記仲介具は、
前記進出位置に位置する前記複数の押圧部とそれぞれ嵌合する複数の嵌合部、を含み、
該押圧部駆動部が前記押圧部を前記進出位置に位置させることによって、前記吊下保持部を引っ掛けている前記連結具の前記吊下保持部の前記開口部に向かう移動を規制し、
前記ロボットが所定の第1位置に配置された前記連結具を保持し、当該保持した連結具と前記物体に取り付けられた前記仲介具とを連結するようにして、当該保持した連結具と所定の第2位置に配置された前記物体とを連結し、前記吊り下げ移動装置が前記連結具と連結された前記物体を前記移動機構によって前記吊り具と一緒に移動させるよう構成されている、自動物体搬送システム。
【請求項2】
前記仲介具は、前記進出位置に位置する前記押圧部及び前記吊下保持部によって挟持される、請求項1に記載の自動物体搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動物体搬送方法、及び自動物体搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からバランサの把持部に重量ワークを把持させ、ロボットがバランサの把持部を把持して重量ワークを所定の搬送軌跡に従って移動させる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この方法は、作業者がバランサの把持部を所定位置にセットしてある重量ワークに誘導し、当該把持部に重量ワークを把持させる。そして、ロボットの把持部でバランサを把持し、ロボットの把持部を搬送軌跡に従って搬送位置に移動させる。これにより、小容量のロボットで重量ワークを簡単な構成で搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−1492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、ワークを人手によってバランサの把持部に把持させる必要があった。つまり、従来技術では、バランサとロボットとを協調させてワークを搬送する場合において、ワークの把持をも含めてワークを自動搬送することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る自動物体搬送方法は、物体を連結するための連結具及び当該連結具を吊り下げる吊り下げ部材を含む吊り具と当該吊り具を移動させる移動機構とを備える吊り下げ移動装置と、物を保持するアームを備えるロボットと、を用いる自動物体搬送方法であって、前記吊り具の前記連結具を所定の第1位置に配置するステップと、前記物体を所定の第2位置に配置するステップと、前記ロボットが前記第1位置に配置された前記連結具を保持し、当該保持した連結具と前記第2位置に配置された物体とを連結するステップと、前記吊り下げ移動装置が前記連結具と連結された物体を前記移動機構によって前記吊り具と一緒に移動させるステップと、を含む。
【0007】
この構成によれば、吊り具の連結具及び物体の位置が既知であるので、ロボットが当該吊り具の連結具及び物体の位置を取得することにより、連結具を保持してこれを物体に装着することができる。これにより、 物体と移動機構との連結を自動化することができる。
【0008】
前記連結具と連結することが可能なように構成された仲介具が前記物体に取り付けられており、前記連結具と前記物体とを連結するステップは、前記ロボットが、前記第1位置に配置された前記連結具を保持し、当該保持した連結具と前記物体に取り付けられた前記仲介具とを連結するようにして、当該保持した連結具と前記第2位置に配置された物体とを連結するステップであってもよい。
【0009】
この構成によれば、物体の形状に関わらず連結具を物体に連結することができる。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る自動物体搬送システムは、物体を連結するための連結具及び当該連結具を吊り下げる吊り下げ部材を含む吊り具と、当該吊り具を移動させる移動機構とを備える吊り下げ移動装置と、物を保持するアームを備えるロボットと、を備え、前記ロボットが所定の第1位置に配置された前記連結具を保持し、当該保持した連結具と所定の第2位置に配置された前記物体とを連結し、前記吊り下げ移動装置が前記連結具と連結された物体を前記移動機構によって前記吊り具と一緒に移動させるよう構成されている。
【0011】
この構成によれば、吊り具の連結具及び物体の位置が既知であるので、ロボットが当該吊り具の連結具及び物体の位置を取得することにより、連結具を保持してこれを物体に装着することができる。これにより、 物体と移動機構との連結を自動化することができる。
【0012】
前記連結具と連結することが可能なように構成された仲介具が前記物体に取り付けられており、前記ロボットが、前記第1位置に配置された前記連結具を保持し、当該保持した連結具と前記物体に取り付けられた前記仲介具とを連結するようにして、当該保持した連結具と前記第2位置に配置された物体とを連結するよう構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、物体の形状に関わらず連結具を物体に連結することができる。
【0014】
前記連結具は、前記吊り下げ部材の先端部に連結される基部と、前記基部に取り付けられ、開口部を有する鈎状に形成されている吊下保持部であって、前記仲介具に引っ掛ける吊下保持部と、前記基部に取り付けられ、前記ロボットのアームに保持される接続保持部と、退避位置と、当該退避位置から前記基部に対して下方向に相対的に移動した進出位置との間を移動する複数の押圧部であって、該複数の押圧部は上下方向からみて互いに異なる位置に設けられている複数の押圧部と、前記ロボットに制御されて前記複数の押圧部を前記退避位置と前記進出位置との間で移動させる押圧部駆動部と、を含み、前記仲介具は、前記進出位置に位置する前記複数の押圧部とそれぞれ嵌合する複数の嵌合部、を含み、該押圧部駆動部が前記押圧部を前記進出位置に位置させることによって、前記吊下保持部を引っ掛けている前記連結具の前記吊下保持部の前記開口部に向かう移動を規制してもよい。
【0015】
この構成によれば、押圧駆動部が押圧部を進出位置に位置させることによって、仲介具を連結具に留めることができ、且つ吊り具の物体に対する相対的な位置関係及び姿勢を固定することができる。
【0016】
よって、吊り具の位置及び姿勢に基づいて物体の位置及び姿勢を判定することができ、また、物体の位置及び姿勢が変化した場合、物体の位置及び姿勢に基づいて吊り具の位置及び姿勢を判定することができる。これによって、物体の運搬作業を効率よく行うことができる。
【0017】
前記仲介具は、前記進出位置に位置する前記押圧部及び前記吊下保持部によって挟持されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、更に確実に吊り具の物体に対する相対的な位置関係及び姿勢を固定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、物体と移動機構との連結を自動化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る自動物体搬送システムの構成例を概略的に示す図である。
図2図1の自動物体搬送システムの吊り具及び仲介具の構成例を示す正面図であり、吊り具の連結具と仲介具とを切り離した状態を示す図である。
図3図1の自動物体搬送システムの吊り具及び仲介具の構成例を示す側面図であり、吊り具の連結具と仲介具とを切り離した状態を示す図である。
図4図1の自動物体搬送システムの吊り具及び仲介具の構成例を示す正面図であり、吊り具の連結具と仲介具とを連結した状態を示す図である。
図5図1の自動物体搬送システムの吊り具及び仲介具の構成例を示す側面図であり、吊り具の連結具と仲介具とを連結した状態を示す図である。
図6図1の自動物体搬送システムの動作例を示す図である。
図7図1の自動物体搬送システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明に到達した経緯)
従来技術において人手に頼る原因は、ロボットがバランサの把持部及び重量ワークの位置を認識できないことにある。ロボットに、バランサの把持部及び重量ワークの位置を認識するための認識装置(例えばカメラ)を設けることが考えられるが、構成が複雑になる。また、認識装置を備えたとしても、バランサの把持部が揺動するので、正確にその位置を認識することは困難である。そこで、本発明を想到した。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0023】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る自動物体搬送システム100の構成例を概略的に示す図である。
【0024】
自動物体搬送システム100は、例えば、ワーク(物体)Wの運搬を行うシステムである。
【0025】
図1に示すように、自動物体搬送システム100は、例えば製造ラインに設置され、吊り下げ移動装置1と、ロボット2とを備える。吊り下げ移動装置1は、吊り具3及び移動機構4を備える。また、ワークWには仲介具12が取り付けられている。
【0026】
自動物体搬送システム100が設置されている製造ラインは、例えば、連結具載台6が配置されている。連結具載台6は、吊り具3の後述する連結具10が載置される台である。連結具載台6に載置された吊り具3の連結具10が位置する位置が第1位置P1を構成する。
【0027】
また、自動物体搬送システム100が設置されている製造ラインは、ワーク置場Sが設定されている。ワーク置場Sは、ワークWが載置される場所である。ワークWをワーク置場Sに配置したときに、ワークWが位置する位置が第2位置P2を構成する。更に、このときにワークWに取り付けられている仲介具12が位置する位置が第3位置P3を構成する。このように、第2位置P2と第3位置P3の位置関係は固定されているので、一方から他方の位置を算出することができるように構成されている。
【0028】
第1位置P1及び第3位置P3は、互いに離れた場所に設定(配置)されている。第1位置P1及び第3位置P3は、何れもロボット2の後述する動作領域内に位置するように設定されている。
【0029】
[吊り具]
図2は、吊り具3及び仲介具12の構成例を示す正面図であり、吊り具3の連結具10と仲介具12とを切り離した状態を示す図である。図3は、吊り具3及び仲介具12の構成例を示す側面図であり、吊り具3の連結具10と仲介具12とを切り離した状態を示す図である。図4は、吊り具3及び仲介具12の構成例を示す正面図であり、吊り具3の連結具10と仲介具12とを連結した状態を示す図である。図5は、吊り具3の構成例を示す側面図であり、吊り具3の連結具10と仲介具12とを連結した状態を示す図である。
【0030】
図2及び図3に示すように、吊り具3は、連結具10及びワイヤーロープ(吊り下げ部材)11を備える。
【0031】
連結具10は、ワークWを連結(make a junction with)するためのものであり、ワークWに取り付けられた仲介具12と連結されるものである。連結具10は、基部41と、吊下保持部42と、連結具側接続保持部(接続保持部)45(図3参照)と、複数の押圧部43と、押圧部駆動部44とを含む。
【0032】
基部41は、連結環51及び基部本体52を備える。連結環51は、基部本体52に固定された環状体である。基部本体52は、後述するように、吊下保持部42、連結具側接続保持部45、押圧部43、及び押圧部駆動部44を所定の位置関係に配置する。
【0033】
吊下保持部42は、基部41の基部本体52に取り付けられ、開口部53(図3参照)を有する鈎状に形成されている。そして、吊下保持部42は、仲介具12の後述する連結具取付部65に引っ掛けることができるように構成されている。
【0034】
すなわち、吊下保持部42は、上下方向に延びる板体であり、基端部が基部41の基部本体52に固定され、先端部の内部に仲介具12の後述する連結具取付部65と当接し係合する係合部54が形成されている。そして、吊下保持部42の側縁が切り欠かれ、吊下保持部42の側縁と係合部54とが接続されている。当該切り欠かれた部分が開口部53を構成している。したがって、図5に示すように、仲介具12の後述する連結具取付部65を吊下保持部42の開口部53を通して吊下保持部42の内部に位置させることができ、仲介具12の連結具取付部65と連結具10の係合部54とを当接させ、係合させることができる。係合部54は、仲介具12の後述する連結具取付部65の底面に対応する形状に形成され、仲介具12の連結具取付部65の底面と嵌合する。したがって、係合部54と仲介具12の連結具取付部65とを係合させることによって、互いの位置関係が固定され、位置決めが行われる。また、係合部54は、窪んだ形状に形成されており、係合部54の開口部53が位置する側の端部は、当該端部よりも係合部54の開口部53が位置する側の端部と反対側の端部寄りの部分よりも上方に位置する。したがって、係合部54と係合する仲介具12の後述する連結具取付部65が吊下保持部42から外れることを防止している。
【0035】
そして、図2に示すように、本実施の形態において、吊下保持部42は、一対設けられ、連結具10がワイヤーロープ11に吊り下げられた状態において、水平方向に並ぶように配置されている。この一対の吊下保持部42が並ぶ方向が第1方向を構成する。
【0036】
複数の押圧部43は、それぞれ退避位置Paと進出位置Pbとの間を移動するように構成されている。進出位置Pbは、退避位置Paから基部41に対して下方向に相対的に移動させた位置である。本実施の形態において、退避位置Paは、基部41の基部本体52の下方に設定されている。複数の押圧部43は、上下方向から見て、互いに異なる位置に設けられている。本実施の形態において、押圧部43は二つ設けられ、これらは第1方向に並ぶように配置されている。そして、押圧部43は、上下方向に延びる筒状に形成され、大径部43aと、大径部43aの先端に大径部43aよりも径寸法の小さな小径部43bとを有する。そして、押圧部43の大径部43aと小径部43bとの間には段差部(図示せず)が形成されている。
【0037】
押圧部駆動部44は、ロボット2の制御によって複数の押圧部43を退避位置Paと進出位置Pbとの間で移動させるように駆動軸を進退駆動させる。押圧部駆動部44は、基部41の基部本体52の上面に取り付けられ、基部本体52に形成された図示しない挿通孔に駆動軸が挿通されている。そして、押圧部駆動部44の駆動軸から押圧部43が垂れ下がるように、駆動軸に押圧部43が固着されている。本実施の形態において、押圧部駆動部44は、押圧部43に対応して二つ設けられ、これらは第1方向に並ぶように配置されている。押圧部駆動部44は、例えば、周知のエアシリンダ装置で構成されるので、詳細な説明を省略する。
【0038】
連結具側接続保持部45は、基部41の基部本体52に取り付けられ、ロボットアーム側接続保持部33との連結及び切り離しを行うことができるように構成されている。
【0039】
ワイヤーロープ11は、連結具10を吊り下げるものである。ワイヤーロープ11は、線条体であり、下端がクレーンフック13を介して連結具10の連結環51に連結されている。
【0040】
[仲介具]
仲介具12は、連結具10と連結することが可能なように構成されている。そして、仲介具12は、上述の通りワークWに取り付けられている。仲介具12は、進出位置Pbに位置する複数の押圧部43とそれぞれ嵌合する複数の嵌合部61を含む。また、仲介具12は、支持枠62、保持軸63、及び固定部64を備える。
【0041】
支持枠62は、複数の嵌合部61、保持軸63、及び固定部64を後述するように所定の位置関係に配置する。
【0042】
保持軸63は、円筒状の軸であり、連結具10と仲介具12とを連結した状態において、第1方向に延びる。保持軸63の中間部は、支持枠62に固定されて支持されている。保持軸63の両端部は、支持枠62から突出するように形成されている。連結具10の一対の吊下保持部42は、保持軸63の一方の端部と他方の端部にそれそれ引っ掛けられるように構成されており、当該部分が保持軸63の連結具取付部65を構成している。そして、保持軸63には、一対のストッパ66が設けられている。ストッパ66は、保持軸63に嵌められて取り付けられた一対の環状体である。各ストッパ66の一対の環状体は、吊下保持部42の厚み寸法に相当する距離を隔てて第1方向に並んで配置されている。よって、ストッパ66は、連結具取付部65に引っ掛けられた吊下保持部42が第1方向に移動することを規制し、連結具10及び仲介具12の第1方向における位置決めが行われるように構成されている。なお、ストッパ66の周縁の内側(連結具取付部65側)の隅角は面取りが施されている。これによって、吊下保持部42と連結具取付部65とを係合させる際に、吊下保持部42を連結具取付部65に案内することができる。また、ストッパ66は、保持軸63と一体的に成形されていてもよい。
【0043】
図4に示すように、複数の嵌合部61は、進出位置Pbに位置する複数の押圧部43とそれぞれ嵌合する。本実施の形態において、嵌合部61は、支持枠62の上面に設けられた孔である。嵌合部61の内周縁は、押圧部43の外周縁に対応する形状に形成され、嵌合部61は、内径が押圧部43の小径部43bの外径と略同一に形成されている。したがって、押圧部43を進出位置Pbに位置させることによって、嵌合部61は、押圧部43の小径部43bと嵌合するように構成されている。よって、押圧部43と嵌合部61とを嵌合させることによって、嵌合部61は、押圧部43の水平方向への移動を規制する。
【0044】
また、嵌合部61の開口縁(上端縁)は、進出位置Pbに位置する押圧部43の大径部43aと小径部43bとの間の段差部(図示せず)に当接するように構成されている。したがって、押圧部43を進出位置Pbに位置させることによって、押圧部43の大径部43aと小径部43bとの間の段差が嵌合部61の開口縁及び支持枠62の上面を押圧する。これによって、図5に示すように、連結具10と仲介具12とを連結した状態において、支持枠62は下方に付勢され、連結具取付部65は、係合部54に押し当てられる。したがって、連結具取付部65の上方への移動が規制され、連結具10が仲介具12に留められるように構成されている。
【0045】
そして、図2に示すように、嵌合部61は、押圧部43に対応して二つ設けられている。このように、嵌合部61及び押圧部43は複数設けられているので、これらを嵌合させることによって、押圧部43の延在方向と直交する面の上(水平面上)で連結具10と仲介具12とが相対的に回転することが規制され、位置決めが行われるように構成されている。
【0046】
すなわち、連結具10と仲介具12とを係合させた状態において、押圧部43を進出位置Pbに位置させることによって、連結具10と仲介具12を連結することができ、更に、連結具10のワークWに対する相対的な位置関係及び姿勢を固定することができる。
【0047】
したがって、連結具10の位置及び姿勢に基づいて仲介具12が取り付けられているワークWの位置及び姿勢を判定することができ、またワークWの位置及び姿勢が変化した場合、ワークWの位置及び姿勢に基づいて連結具10の位置及び姿勢を判定することができる。よって、ワークWの運搬作業を効率よく行うことができる。
【0048】
また、仲介具12は、進出位置Pbに位置する押圧部43及び吊下保持部42によって挟持されるので、連結具10と仲介具12とが相対的に動かないように固定される。これによって、更に確実に連結具10のワークWに対する相対的な位置関係及び姿勢を固定することができる。
【0049】
固定部64は、ワークWを固定する。固定部64にワークWが固定されることによって、仲介具12がワークWに装着される。このように、ワークWに仲介具12が取り付けられているので、物体の形状に関わらず連結具10をワークWに連結することができる。
【0050】
[移動機構]
移動機構4は、吊り具3を移動させるものである。移動機構4は、例えば製造ラインが設置された建屋の天井近くに設けられた天井クレーンである。なお、移動機構4の構成は、天井クレーンに限られない。これに代えて、移動機構4は、例えば、バランサであってもよい。
【0051】
本実施の形態において、移動機構4は、ウインチ23と、トロリ24と、走行レール25を有する。
【0052】
ウインチ23は、ワイヤーロープ11の上端側の部分が巻き掛けられた図示しないドラムを備える。そして、当該ドラムの回転によって、ワイヤーロープ11の巻き取り及び巻き戻しが行われ、これによって、連結具10を昇降させる。ウインチ23はドラムを回転駆動させる図示しない駆動部を有する。ウインチ23の駆動部は、後述するロボット制御部によって制御されるように構成されている。
【0053】
トロリ24は、ウインチ23が取り付けられており、ウインチ23を移動させる車である。トロリ24は、トロリ24に設けられた駆動部によって走行駆動され、ウインチ23を水平方向へ移動させる。走行レール25は、トロリ24を支持して案内誘導するレールである。トロリ24の駆動部は、後述するロボット制御部によって制御されるように構成されている。
【0054】
このように、ウインチ23の駆動部及びトロリ24の駆動部は、ロボット制御部によって制御されるように構成されているので、吊り下げ移動装置1とロボット2とを協調させてワークWを搬送することができる。
【0055】
[ロボット]
図1に示すように、ロボット2は、物を保持するアーム32を備える。
【0056】
本実施の形態において、ロボット2は、例えば、多関節型の産業用ロボットである。ロボット2は、ロボット基部31と、アーム32と、ロボットアーム側接続保持部33と、アーム駆動部(図示せず)と、接続部駆動部(図示せず)と、ロボット制御部(図示せず)と、ロボット記憶部(図示せず)とを有する。ロボット制御部は、ロボット2のアーム駆動部及び接続部駆動部の制御を行う。更に、ロボット制御部は、吊り具3の連結具10の押圧部駆動部44の制御を行う。ロボット記憶部には所定の制御プログラムが記憶されていて、ロボット制御部がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、ロボット2のアーム駆動部及び接続部駆動部、移動機構4のウインチ23の駆動部及びトロリ24の駆動部、並びに連結具10の押圧部駆動部44の制御が行われる。また、ロボット記憶部は、第1位置P1及び第3位置P3を記憶している。
【0057】
ロボット基部31は、製造ラインの床面等の載置面に載置される台であり、アーム32を支えている。
【0058】
アーム32は、例えば、複数の関節を備え、基端部がロボット基部31に対して回動可能に連結されている。アーム駆動部は、ロボット制御部によって制御され、ロボットアーム側接続保持部33を動作領域内の所定位置に位置させるようにアーム32を駆動する。上述の通りロボット2の動作領域内に第1位置P1及び第3位置P3が含まれるように、ロボット2は配置されている。
【0059】
ロボットアーム側接続保持部33は、アーム32の先端部に取り付けられ、連結具側接続保持部45との連結及び切り離しを行うことができるように構成されている。接続部駆動部は、ロボット制御部によって制御され、ロボットアーム側接続保持部33及び連結具側接続保持部45との連結及び切り離しを行うようにロボットアーム側接続保持部33を駆動する。ロボットアーム側接続保持部33、連結具側接続保持部45、及び接続部駆動部は、例えば周知のツールチェンジャーによって構成される。すなわち、本実施の形態において、アーム32は、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とを連結することによって連結具10を保持するように構成されている。
【0060】
さらに、ロボットアーム側接続保持部33及び連結具側接続保持部45は、これらが連結されることによって、ロボット制御部が押圧部駆動部44を制御する。
【0061】
すなわち、ロボット制御部が押圧部駆動部44に供給されるエアを制御することによって、押圧部駆動部44の動作を制御する。押圧部駆動部44に供給されるエアの流路は、ロボット2からロボットアーム側接続保持部33及び連結具側接続保持部45を介して押圧部駆動部44まで延びている。そして、連結具側接続保持部45とロボットアーム側接続保持部33とが連結されることによって、押圧部駆動部44に供給されるエアの流路のうち、ロボット2側の流路と連結具10側の流路とが連通し、押圧部駆動部44を制御することができる状態になる。また、連結具側接続保持部45とロボットアーム側接続保持部33とが切り離されることによって、押圧部駆動部44に供給されるエアの流路のうち、ロボット2側の流路と連結具10側の流路とが切り離されるように構成されている。
【0062】
そして、押圧部駆動部44は、ロボット2側の流路と連結具10側の流路とが切り離されることによって、駆動軸の位置が固定されるように構成されていてもよい。これによって、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とを切り離しても、連結具10と仲介具12とが連結された状態を維持することができ、例えば、ロボット2がワークWの別の部位を保持し、ワークWを搬送することができる。
【0063】
[動作例]
次に、自動物体搬送システム100の動作例を説明する。
【0064】
図6及び図7は、本発明の実施の形態における自動物体搬送システム100の動作例を示す図である。
【0065】
まず、図1に示すように、吊り具3の連結具10を連結具載台6に載置する。これによって、連結具載台6は、第1位置P1に配置される。
【0066】
次に、ワークWをワーク置場に配置する。これによって、ワークWは第2位置P2に配置され、ワークWに取り付けられた仲介具12は第3位置P3に配置される。
【0067】
次に、図6に示すように、ロボット制御部は、ロボット記憶部から第1位置P1を読み出した上で、アーム32を駆動し、ロボットアーム側接続保持部33を第1位置P1に移動させる。これによって、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とが接続される。なお、このときロボット制御部は、トロリ24の駆動部を制御し、第1位置P1の上方にトロリ24を位置させ、更にウインチ23の駆動部を制御し、ウインチ23から繰り出されるワイヤーロープ11の長さを調節する。
【0068】
次に、ロボット制御部は、接続部駆動部を駆動し、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とを連結する。これによって、連結具10は、ロボット2のアーム32に保持される。
【0069】
次に、図7に示すように、ロボット制御部は、ロボット記憶部から第3位置P3を読み出した上で、アーム32を駆動し、ロボット2のアーム32に保持した連結具10を第3位置P3に移動させ、吊り具3の連結具10をワークWに取り付けられた仲介具12に引っ掛ける。なお、このときロボット制御部は、トロリ24の駆動部を制御し、第3位置P3の上方にトロリ24を位置させ、更にウインチ23の駆動部を制御し、ウインチ23から繰り出されるワイヤーロープ11の長さを調節する。
【0070】
次に、ロボット制御部は、押圧部43を進出位置Pbに位置させる。これによって、連結具取付部65が上方(開口部53に向かう方向)へ移動することを規制することができる。そして、押圧部43を進出位置Pbに位置させると、上述の通り、押圧部43の小径部43bと嵌合部61とが嵌合し、連結具10及び仲介具12の相対的な位置関係及び姿勢が固定される。このようにして、連結具10と第3位置P3に位置する仲介具12とが連結され、連結具10と第2位置P2に配置されたワークWとが連結される。
【0071】
次に、ロボット制御部は、接続部駆動部を駆動し、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とを切り離す。
【0072】
次に、吊り下げ移動装置1が連結具10と連結されたワークWを移動機構4によって吊り具3を一緒に搬送する。このようにして、ワークWの搬送を自動で行うことができる。
【0073】
以上に説明したように、本発明の自動物体搬送システム100は、吊り具3の連結具10が連結具載台6に載置され、既知の第1位置P1に位置している。したがって、ロボット制御部は、ロボット記憶部から第1位置P1を読み出すことによって吊り具3の連結具10の位置を取得し、ロボット2のロボットアーム側接続保持部33と連結具10の連結具側接続保持部45とを接続し、ロボット2に連結具10を保持させることができる。
【0074】
そして、自動物体搬送システム100は、第2位置P2に位置するワークWに取り付けられている仲介具12が第3位置P3に配置されている。したがって、ロボット制御部は、ロボット記憶部から第3位置P3を読み出すことによって仲介具12の位置及び第3位置P3と所定の位置関係を有する第2位置P2に配置されているワークWの位置を取得し、連結具10を第3位置P3に配置されている仲介具12に装着し、吊り具3と第2位置P2に配置されているワークWとを連結することができる。これにより、ワークWと移動機構4との連結を自動化することができる。
【0075】
<変形例>
上記実施の形態においては、アーム32は、ロボットアーム側接続保持部33と連結具側接続保持部45とを連結することによって連結具10を保持するように構成されているがこれに限られるものではない。これに代えて、例えば、アーム32の先端に物を把持する把持機構を有するハンドを設け、当該ハンドによって連結具10を把持することによって連結具10を保持してもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、連結具10と仲介具12とを連結することによって、連結具10とワークWとを連結するように構成されているがこれに限られるものではない。これに代えて、例えば、連結具10が磁石によってワークWを吸着することによって、連結具10とワークWとを連結してもよい。また、連結具10が真空吸着装置によってワークWを吸着することによって、連結具10とワークWを連結してもよい。
【0077】
更に、上記実施の形態においては、ロボットアーム側接続保持部33及び連結具側接続保持部45を連結することによって、ロボット2は連結具10を保持するように構成されているが、これに限られない。これに代えて、ロボット2のアーム32の先端に連結具10を把持するためのハンドを設け、当該ハンドで連結具10を把持して連結具10を保持し、連結具10を移動させ、仲介具12に装着してもよい。
【0078】
また、上記実施の形態においては、押圧部駆動部44に供給されるエアの流路はロボットアーム側接続保持部33及び連結具側接続保持部45を通るように構成されているがこれに限られるものではない。これに代えて、押圧部駆動部44に供給されるエアの流路は、ロボット2から、吊り下げ移動装置1を通って押圧部駆動部44まで延びるように構成してもよい。
【0079】
更に、上記実施の形態においては、押圧部駆動部44は、エアシリンダであるがこれに限られない。これに代えて、例えば、モータ、油圧シリンダで構成してもよい。
【0080】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0081】
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
Pa 退避位置
Pb 進出位置
W ワーク
1 吊り下げ移動装置
2 ロボット
3 吊り具
4 移動機構
連結具載台
10 連結具
11 ワイヤーロープ
12 仲介具
13 クレーンフック
23 ウインチ
24 トロリ
25 走行レール
31 ロボット基部
32 アーム
33 ロボットアーム側接続保持部
41 基部
42 吊下保持部
43 押圧部
44 押圧部駆動部
45 連結具側接続保持部
51 連結環
52 基部本体
53 開口部
54 係合部
61 嵌合部
62 支持枠
63 保持軸
64 固定部
65 連結具取付部
66 ストッパ
100 自動物体搬送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7