(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る路肩検出システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
本第1実施形態は、2つの路肩検出部のスキャン方向が平行とされた実施形態である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る路肩検出システム100を示す概略図である。
図2は、路肩検出システム100に用いられる鉱山用運搬車両として、車両1であるオフロードダンプトラックを示す概略斜視図である。
図3は、車両1の路肩検出部2a,2bのスキャン方向を示す概略平面図である。
図4は、車両1の路肩検出部2aを示す概略斜視図である。
【0019】
<構成>
車両1は、
図2に示すように、鉱山に予め設けられた走行路等の路面Aを自律運転で走行可能な無人走行式とされている。鉱山の路面Aの側部には、路面Aに沿って検出対象物である路肩Bが設けられている。路肩Bは、少なくとも車両1が走行する側、例えば走行方向左側に設けられ、所定の高さ寸法および幅寸法を有する構造の盛土であり、車両1の走行位置から例えば30mほど離れている。鉱山には、
図1に示すように、車両1との間で所定の情報を送受信するための交通管制システムを有する交通管制センタ200が設置されているとともに、車両1に土砂等の積載物を積載させるための油圧ショベル(図示せず)が用いられる。
【0020】
車両1は、
図1に示すように、車両本体1aと、車両本体1aの前側上方に設けられた運転席1bと、車両本体1a上に起伏可能に設けられた作業部としてのベッセル1cと、車両本体1aを走行可能に支持する左右の前輪1dおよび後輪1eとを備えた構成とされている。前輪1dは従動輪とされ、後輪1eは駆動輪とされている。
【0021】
運転席1bは、オペレータが運転席に乗り込む等するための略平板状の上側デッキ1f上に設置されている。上側デッキ1fは、前輪1dを覆うように、前輪1dの上端部より上方に設けられている。また、上側デッキ1fは、車両本体1aの前側に設けられ、車両本体1aの幅方向の全体に亘った大きさとされている。上側デッキ1fの下側の中央部には、一対の建屋1gが所定間隔を空けて設けられ、これら建屋1g間にラジエータ等の熱交換装置1hが設置されている。
【0022】
一対の建屋1gの外側には、エアクリーナ1iがそれぞれ取り付けられている。各エアクリーナ1iは、上側デッキ1fの下側であって、上側デッキ1fと建屋1gとにて仕切られた角部に取り付けられている。各エアクリーナ1iには、空気中のダストを捕捉するための円筒状のフィルタエレメント1jが取り付けられている。各フィルタエレメント1jは、一端側を上側デッキ1fの前側の端部よりも前方に突出させた状態とされて各エアクリーナ1iに取り付けられている。
【0023】
各建屋1gの内側には、車両本体1aの走行方向Mの一側、例えば走行方向左側に存在する路肩Bの一部の相対位置を検出するための計2台の路肩検出部2a,2bがそれぞれ取り付けられている。路肩検出部2a,2bは、車両本体1aの走行方向Mに対して車両本体1aよりも前方の路面を走査する。これら路肩検出部2a,2bは、上側デッキ1fの下側であって、上側デッキ1fと建屋1gとにて仕切られたエアクリーナ1i上に取り付けられている。すなわち、これら路肩検出部2a,2bは、これら路肩検出部2a,2bにて路肩Bを検出する際のスキャン面40a,40b内に、車両本体1aの前面に突出して設けられている各フィルタエレメント1jが入り込まない位置に取り付けられている。また、各路肩検出部2a,2bは、前輪1dの上端部より高い位置であって、車両本体1aの走行方向側である前側左右に、等しい高さ位置で設置されている。具体的に、各路肩検出部2a,2bは、例えば前輪1dの下端部から4mほどの高さ位置に設置されている。これら路肩検出部2a,2bは、異なる高さ位置に設置してもよい。
【0024】
路肩検出部2a,2bは、それぞれの路肩検出部2a,2bを中心としてレーザ光を所定の角度毎に照射して路面Aを扇状にスキャンして走査し、物体からの反射光によって対象物までの距離と方向とを測定することができるレーザスキャナ等である。路肩検出部2a,2bの具体的な構成例として、
図4に路肩検出部2aが検出窓2cを備えた構成を示す。各路肩検出部2a,2bは、
図2に示すように、検出窓2c,2dの長手方向を車両本体1aの左右方向に沿わせつつ、検出窓2c,2dの長手方向の中心位置を斜め下方に向けた状態として取り付けられている。
【0025】
一方、路肩検出システム100は、路肩Bに対する車両本体1aの向き、および路肩Bまでの距離を計測するための路肩検出装置21と、車両本体1aの位置および姿勢を計測するための自己位置計測装置22と、路面の路幅や対向車の存在により、車両本体1aの路肩Bからの距離や速度を変更させる車体運動制御装置23と、交通管制センタ200との間で通信を行うための通信装置24とを備えている。
【0026】
路肩検出装置21は、路肩検出部2a,2bと、各路肩検出部2a,2bによる測定結果に基づき、路肩Bに対する車両本体1aの向きと、路肩Bまでの距離とを計測する路肩計測部である路肩計測装置21aと、路面Aの周囲の外部座標系での路肩位置、すなわち直線状の路肩または曲線状の路肩等や、路肩そのものの形状についての路肩形状に関する路肩データを基準路肩形状として記憶する記憶部としての路肩記憶部21bとを備えている。
【0027】
各路肩検出部2a,2bは、路肩計測装置21aにそれぞれ接続され、路肩計測装置21aは、路肩記憶部21bに接続されている。路肩検出部2a,2bは、
図2および
図3に示すように、これら各路肩検出部2a,2bから照射するレーザ光が到達する路面A上の計測点がなす直線である走査線としての交線L1a,L1bが、それぞれ路面Aの幅方向(路幅方向)に沿い、これら路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bが互いに平行となるように設定されている。また、路肩検出部2a,2bは、各路肩検出部2a,2bからのレーザ光の照射方向41a,41bを予め定めた所定の角度、例えば0.25度毎に変化させて路面A上の計測点を走査していき、これら各路肩検出部2a,2bによるレーザ光の走査面であるスキャン面40a,40bにおいて、所定の角度毎の路面Aまでの距離を計測する。すなわち、各路肩検出部2a,2bは、例えば0.25度の角度分解能を有し、30m離れた地点での計測点間の間隔が1mである。
【0028】
さらに、路肩計測装置21aは、各路肩検出部2a,2bにて検出した路肩情報と、路肩記憶部21bに記憶させた路肩データとを比較する比較部21cを備え、比較部21cでの比較に基づき路肩Bに対する車両本体1aの向きと、路肩Bまでの距離とを計測する。
【0029】
自己位置計測装置22は、車両本体1aの、例えば前輪1dの回転速度を計測するための車輪速計測部22aと、車両本体1aの運転席1bに設けられたハンドル(図示せず)の操舵角度を計測するための操舵角計測部22bと、車輪速計測部22aにて計測した回転速度結果および操舵角計測部22bにて計測した操舵角結果に基づいて、車両本体1aの走行速度、前輪1dの角速度、地面に固定された座標系での車両本体1aの位置および姿勢を算出するための自己位置演算装置22cとを備えている。車輪速計測部22aは、車両1の走行速度を検出するための速度検出部であって、例えば前輪1dの回転速度を検出するための回転速度センサ等である。操舵角計測部22bは、ハンドルの操舵角を検出することができる変位センサ等である。
【0030】
自己位置計測装置22は、車両本体1aの自己位置を補正するための自己位置補正装置22dを備えている。自己位置補正装置22dは、車両本体1aの位置および姿勢をより高精度に計測するためのものであり、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)や、GPS(Global Positioning System)等で構成されている。車輪速計測部22a、操舵角計測部22bおよび自己位置補正装置22dは、自己位置演算装置22cにそれぞれ接続されている。
【0031】
車体運動制御装置23は、車両本体1aの走行速度を低下させたり停止させたりするための制動装置23aと、車両1の後輪1eに対する回転トルク指令値を制限するための駆動トルク制限装置23bと、車両本体1aの路肩Bからの距離を変更するための操舵制御装置23cと、走行路の経路やその路面Aの路幅、対向車情報等の地図データが記憶されたデータ記憶部23dと、制動装置23aによる制動量、駆動トルク制限装置23bによる制限量、および操舵制御装置23cによる制御量を算出するための車両制御装置23eを備えている。車両制御装置23eは、データ記憶部23dに記憶された地図データに基づき、車両本体1aの路肩Bまでの距離や走行速度を制限することを目的として、制動装置23aによる制動量、駆動トルク制限装置23bによる制限量、および操舵制御装置23cによる制御量を算出する制御部である。
【0032】
制動装置23aは、例えば後輪1eの回転を制動させるディスクブレーキ等の機械的構造のメカニカルブレーキである。駆動トルク制限装置23bは、例えば後輪1eの回転に対して電気的な抵抗を掛けて制動させる電気ブレーキ等のリターダブレーキである。データ記憶部23dに記憶された地図データとしては、走行路の側部に設けられている路肩形状等の路肩情報も記憶されている。車両制御装置23eには、データ記憶部23dに記憶されている地図データ、自己位置演算装置22cにて演算された自己位置情報、および路肩計測装置21aにて計測された路肩情報が入力される。車両制御装置23eは、制動装置23a、駆動トルク制限装置23bおよび操舵制御装置23cのそれぞれに接続されている。
【0033】
通信装置24は、自己位置演算装置22cに接続され、自己位置演算装置22cにて演算した車両1の自己位置情報を交通管制センタへ送信する。通信装置24は、路肩記憶部21bおよびデータ記憶部23dに接続され、路肩記憶部21bに記憶されている路肩位置データや、データ記憶部23dに記憶されている地図データを、通信装置24を介して出力できる構成とされている。
【0034】
交通管制センタ200は、車両1に搭載された通信装置24との間で情報を送受信するための通信装置31と、走行路の路肩形状等の路肩形状マップが記憶される路肩データ記憶部32と、車両1の通信装置24から通信装置31に送信されてくる路肩形状情報と、路肩データ記憶部32に記憶されている路肩形状マップとを比較する比較部としての路肩形状比較装置33と、路肩形状比較装置33での比較により路肩形状情報が路肩形状マップと相違する場合に、その路肩形状情報のうちの路肩形状変化情報を記憶させるための変化データ記憶部34とを備えている。
【0035】
<路肩検出処理>
次いで、路肩検出システム100による路肩検出処理について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、車両1の路肩検出部2a,2bによる路肩検出を示す図であり、(a)は路肩検出時のスキャン状態を示す概略斜視図で、(b)は路肩検出位置を示すグラフである。ここで、
図5(a)は、車両1が走行路上の路肩Bを検出しながら走行している様子を示しており、
図5(a)中の破線は、路肩検出部2a,2bおよび路肩計測装置21aにて求められる路肩位置を示す。なお、路肩Bとは、必ずしも
図5に示すように車両1の片側にのみ存在するものではなく、車両1の両側に存在する場合もあり、また後述する
図8に示すように片側が斜面(法面)の場合もあり、この斜面もまた路肩Bである。
図6は、車両1による路肩検出処理を示すフローチャートである。
【0036】
まず、左右の各路肩検出部2a,2bにて路面Aおよび路肩Bを検出し、これら路肩検出部2a,2bによりこれら路面Aおよび路肩Bの測距データを取得する(ステップS1、以下単に「S1」等と示す。)。このS1にて取得した測距データに基づいて、
図5(a)および
図5(b)に示すように、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとが交差する各交線L1(L1a,L1b)を、路肩計測装置21aにて算出する(S2)。同時に、各路肩検出部2a,2bから取得した測距データ中の路肩Bの傾斜面B1上の測定点から、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路肩Bの傾斜面B1との交線L2(L2a,L2b)を、路肩計測装置21aにて算出する(S3)。
【0037】
この後、路肩計測装置21aは、S2にて算出した交線L1a,L1bと、S3にて算出した交線L2a,L2bとの交点を、路肩検出点P(Pa,Pb)とする(S4)。すなわち、
図5(a)に示すように、交線L1aと交線L2aとが交わる点を、路肩検出点Paとし、交線L1bと交線L2bとが交わる点を、路肩検出点Pbとする。
【0038】
さらに、路肩記憶部21bに記憶させている路肩データを参照し、この路肩データ中の路肩形状と、各路肩検出部2a,2bにて検出した測距データに基づく車両1の自己位置と、路肩検出点Pa,Pbとを比較し、これら路肩形状、自己位置および路肩検出点Pa,Pbの相対位置関係、すなわち、路肩検出点Pa,Pbの車両1に対する相対位置から、車両1の路肩Bに対する向きαと、路肩Bまでの距離Dとを路肩計測装置21aにて算出する(S5)。
【0039】
ここで、車両1の現在位置は、例えば、GPSに基づいて推定されたり、車輪速計測部22aにて計測した回転速度結果と、操舵角計測部22bにて計測した操舵角結果とに基づき、自己位置補正装置22dにて補正された車両1の走行速度、前輪1dの角速度、地面に固定された座標系での車両1の位置および姿勢が自己位置演算装置22cにて算出されて推定されたりしている。そして、自己位置演算装置22cにて演算された車両1の位置および姿勢に基づき算出される車両1の向きおよび路肩までの距離が、S5にて算出した向きαおよび距離Dと等しいか判断される(S6)。
【0040】
S6により、自己位置演算装置22cにて求めた向きおよび距離が、S5にて算出した向きαおよび距離Dと等しい(Yes)と判断された場合は、
図6に示す路肩検出処理が終了となる。一方、S6により、自己位置演算装置22cにて求めた向きおよび距離が、S5にて算出した向きαおよび距離Dと異なる(No)と判断された場合は、S5にて算出した向きαおよび距離Dが、予め定めた所定の範囲内で連続的に変化しているか判断される(S7)。
【0041】
S7により、S5にて算出した向きαおよび距離Dが所定の範囲内で連続的に変化している(Yes)と判断された場合は、S4にて求めた路肩検出点Pa,Pbの外部座標系での検出位置を路肩計測装置21aにて算出し、この算出した検出情報を、通信装置24を介して交通管制センタ200の通信装置31へ送信する(S8)。一方、S7により、S5にて算出した向きαおよび距離Dが所定の範囲内で連続的に変化しておらず不連続(No)と判断された場合は、自己位置計測装置22での計測、すなわち自己位置演算装置22cでの車両1の位置および姿勢の演算に異常が生じているとし、車体運動制御装置23の車両制御装置23eにて制動装置23aおよび駆動トルク制限装置23bを制御して車両1の走行を停止、すなわち停車させる(S9)。
【0042】
<自律走行処理>
次いで、路肩検出システム100による自律走行処理について、
図7を参照して説明する。
図7は、車両1による自律走行処理を示すフローチャートである。
【0043】
自己位置計測装置22にて計測した車両1の自己位置情報を、車体運動制御装置23の車両制御装置23eにて取得する(S11)。次いで、データ記憶部23dに記憶させている地図データを参照し、この地図データ中の路面Aの路幅情報と、S11にて取得した自己位置情報とに基づいて、路肩Bに対する向き、および路肩Bまでの距離を取得する(S12)。
【0044】
この後、路肩検出装置21の路肩計測装置21aにて計測された路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dに関する情報を、車両制御装置23eにて取得する(S13)。そして、S12にて取得した向きおよび距離と、S13にて取得した向きαと距離Dとを車両制御装置23eにて比較し、算出した向きαおよび距離Dが自己位置演算装置22cにて演算した向きおよび距離に等しいか判断する(S14)。
【0045】
S14により、算出した向きαおよび距離Dが自己位置演算装置22cにて演算した向きおよび距離と異なる(No)と判断された場合は、自己位置計測装置22での計測、すなわち自己位置演算装置22cでの車両1の位置および姿勢の演算に異常が生じているとし、車両制御装置23eにて制動装置23aおよび駆動トルク制限装置23bを制御して車両1を停車させる(S15)。
【0046】
一方、S14により、算出した向きαおよび距離Dが自己位置演算装置22cにて演算した向きおよび距離に等しい(Yes)と判断された場合は、データ記憶部23dに記憶されている地図データを取得する(S16)。そして、この取得した地図データ中の走行路の経路情報と、S11にて取得した自己位置とを車両制御装置23eにて比較し、これら経路情報と自己位置とのずれに基づいて、車両制御装置23eにて操舵制御装置23cや駆動トルク制限装置23b等を適宜制御して車両1の走行位置を、予め定めた所定の走行位置に走行制御する(S17)。
【0047】
<作用効果>
以上により、上記第1実施形態に係る路肩検出システム100においては、車両本体1aの走行方向前の左右に路肩検出部2a,2bをそれぞれ設置し、これら計2台の路肩検出部2a,2bのそれぞれにて走行方向左側の路肩Bまでの距離を検出する。そして、これら2台の路肩検出部2a,2bにて検出した検出情報に基づき、路肩Bに対する車両1の向きと、車両1から路肩Bまでの距離とのそれぞれを路肩計測装置21aにて計測する構成としている。
【0048】
すなわち、車両本体1aの前側に設置された計2台の路肩検出部2a,2bのそれぞれにて路肩Bまでの距離を検出するため、1台の路肩検出部にて検出した検出情報に基づく場合に比べ、2台の路肩検出部2a,2bにて検出した検出情報に基づくため、これら2台の路肩検出部2a,2bによる検出情報を複合的に考慮したり、相互補完させたり、これら2つの検出情報を用いた補正等が可能となるから、路肩計測装置21aによる路肩Bに対する車両1の向きと路肩Bまでの距離との計測精度を向上できる。そして、路肩計測装置21aによる計測精度を向上できるため、車両1からの路肩検知をより精度良くでき、車体運動制御装置23の車両制御装置23eによる車両1の自律走行をより適切かつ精度良くできる。
【0049】
特に、路肩計測装置21aにおいては、路肩記憶部21bに記憶させている路肩データを参照し、この路肩データ中の路肩形状と、各路肩検出部2a,2bにて検出した測距データに基づく車両1の自己位置と、路肩検出点Pa,Pbとを比較部21cにて比較し、これら路肩形状、自己位置および路肩検出点Pa,Pbの相対位置関係から、車両1の路肩Bに対する向きαと、路肩Bまでの距離Dとを路肩計測装置21aにて算出する構成としている。すなわち、2つの路肩検出部2a,2bによる路肩検出点Pa,Pbの車両1に対する相対位置を考慮しつつ、路肩記憶部21bに記憶させている路肩データ中の路肩形状に基づき、路肩計測装置21aにて路肩Bに対する車両1の向きと、路肩Bまでの距離とを計測するため、路肩計測装置21aによる路肩Bに対する車両1の向きと路肩Bまでの距離との計測をより精度良くできる。
【0050】
さらに、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとが交差する各交線L1a,L1bと、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路肩Bの傾斜面B1との交線L2a,L2bとの交点を、路肩検出点Pa,Pbとする構成としている。すなわち、スキャン面40a,40bと路面Aとが交差する各交線L1a,L1bと、スキャン面40a,40bと路肩Bの傾斜面B1との交線L2a,L2bとの交点を算出するのみで、路肩検出点Pa,Pbを計測して算出できるため、例えば、これら交線L1a,L1bおよび交線L2a,L2bに加え路肩Bの幅寸法等を考慮し路肩Bの幅方向の中心位置を路肩検出点とする場合に比べ、路肩計測装置21aによる路肩Bまでの距離の計測処理をより容易にでき、路肩計測装置21aによる路肩Bに対する車両1の向きをより精度良く計測できる。
【0051】
ここで、
図8は、車両1の路肩検出部2a,2bの取り付け位置に伴う作用を示す図であり、(a)は前輪1dの高さ位置より低い位置に路肩検出部2a,2bを取り付けた場合の状況図で、(b)は前輪1dの高さ位置より高い位置に路肩検出部2a,2bを取り付けた場合の状況図である。すなわち、走行路が乾いた土の場合は、この走行路を車両1が走行する際に、車両1の前輪1dまたは後輪1eの回転によって、土埃Eが撒き上がり、
図8に示すように、対向車両Fが撒き上げた土埃Eが車両1と路肩Bとの間に漂うおそれがある。この状況において、
図8(a)に示すように、車両1の下部に路肩検出部2a,2bが設置されている場合には、路肩検出部2a,2bと路肩Bとの間に土埃Eが介在してしまうため、路肩検出部2a,2bにて路肩Bまでの距離を正確に検出できないだけではなく、路肩検出部2a,2bの検出窓2c,2dが土埃Eにて汚れてしまい、路肩Bまでの距離を検出できなくなるおそれがある。
【0052】
そこで、上記第1実施形態に係る車両1においては、走行路の路面A上に舞い上がった土埃Eが、路肩検出部2a,2bの検出窓2c,2dに付着する頻度を抑えつつ、舞い上がった土埃Eの上方から路肩Bまでの距離を検出できるように、路肩検出部2a,2bを車両1の前輪1dの上端部よりも高い位置に設置している。この結果、対向車両Fのみならず、自車両1または他車両の走行時に土埃Eが撒き上がった場合であっても、この撒き上がった土埃Eの上方から各路肩検出部2a,2bにて路肩Bまでの距離を検出できるため、路肩検出部2a,2bによる路肩検出をより確実にできる。また同時に、路肩検出部2a,2bの検出窓2c,2dへの土埃Eの付着頻度を抑制できるため、路肩検出部2a,2bによる路肩Bまでの距離の検出精度の低下を抑制できる。
【0053】
さらに、上側デッキ1fからのアクセスが容易な位置、すなわち上側デッキ1fの下側であって、上側デッキ1fと建屋1gとにて仕切られたエアクリーナ1i上に路肩検出部2a,2bを設置しているため、上側デッキ1fから路肩検出部2a,2bを点検等でき、これら路肩検出部2a,2bのメンテナンス性を確保している。また、計2台の路肩検出部2a,2bを等しい高さ位置に設置し、これら2台の路肩検出部2a,2bの検出結果に対称性を持たせている。したがって、これら2台の路肩検出部2a,2bの高さ位置を異ならせる場合に比べ、これら2台の路肩検出部2a,2bによる路面A上での分解能の相違を無くすことができ、これら路肩検出部2a,2bによる検出誤差を少なくできる。
【0054】
[第2実施形態]
図9は、発明の第2実施形態に係る車両1を示す概略構成図である。
図10は、車両1の路肩検出部2a,2bのスキャン方向を示す概略平面図である。
図11は、車両1の路肩検出部2a,2bによる路肩検出時のスキャン状態を示す概略斜視図である。本第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bが互いに平行となるように設定されているのに対し、第2実施形態は、これら交線L1a,L1bが交差するように設定されている。なお、本第2実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0055】
各路肩検出部2a,2bのスキャン面40a,40bは、一定角度毎に距離を測定する構成であるため、車両1から路肩Bが離れるにつれて、路肩Bまでの距離を検出する際の検出間隔が大きくなる。そこで、本第2実施形態に係る車両1では、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bを、車両1前方位置で交差させる。そのため、本第2実施形態においては、
図9に示すように、上側デッキ1fの前端側の幅方向の両側縁に路肩検出部2a,2bを設置しており、
図9および
図10に示すように、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとが交差する交線L1a,L1bが交差し、この交線L1a,L1bの交点Gが、車両1の幅方向の中心位置を通過し車両1の走行方向前方に位置するように、これら路肩検出部2a,2bのスキャン方向が設定されている。
【0056】
この結果、
図10および
図11に示すように、車両1と路肩Bとの間の距離Dが大きくなるに連れて、各路肩検出部2a,2bによるスキャン間隔毎の路肩の計測点Niと計測点Ni+1との間の距離が大きくなるとともに、一方の路肩検出部2aにて検出した路肩検出点Paと、他方の路肩検出部2bにて検出した路肩検出点Pbとの間の距離Wが大きくなる。すなわち、これら路肩検出部2a,2bによる一定角度毎のレーザ照射による計測点間の間隔が、路肩Bまでの距離に応じて大きくなり、路肩検出点Pa,Pb間の距離Wもまた同様に大きくなる。これに対し、上記第1実施形態の場合においては、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bが平行であるため、
図3に示すように、路肩検出部2a,2bによる一定角度毎のレーザ照射の計測点間の間隔が、路肩Bまでの距離に応じて大きくなるものの、路肩検出点Pa,Pb間の距離Wは変化せず一定である。
【0057】
一般に、車両1から路肩Bまでの距離Dが比較的近い(
図10中の破線で示す路肩B1)場合は、車両1から路肩B1までの距離D1が小さく、車両1が路肩B1に接触等してしまう可能性が高いため、車両1前方の近接位置における高精度な路肩B1の位置および向きの検出が必要となる。一方、車両1から路肩Bまでの距離Dが比較的遠い(
図10中の実線で示す路肩B2)場合は、車両1から路肩B2までの距離D2が大きく、車両1が路肩B2に接触等する可能性が低いため、検出精度よりも、より広範囲に亘った路肩B2の位置および向きの検出が求められる。
【0058】
そこで、上記第2実施形態のように、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bを車両1前方で交差させることにより、
図10に示すように、車両1から路肩B1までの距離D1が近い場合は、路肩検出部2aによる路肩検出点Pa1と、路肩検出部2bによる路肩検出点Pb1との間の距離W1が小さくなり、この小さな距離W1において路肩B1の位置および向きを検出するため、車両1前方の近接位置における路肩B1のより高精度な検出が可能となる。これに対し、車両1から路肩B2までの距離D2が遠い場合は、路肩検出部2aによる路肩検出点Pa2と、路肩検出部2bにて検出した路肩検出点Pb2との間の距離W2が大きくなり、走行方向前方の路肩B2の離れた路肩検出点Pa2,Pb2間の路肩B2の向きαを考慮して路肩B2に対する車両1の向きαを計測でき、より広範囲に亘る路肩B2を考慮した路肩検出が可能となる。よって、車両1から路肩Bまでの距離Dに応じた適切な路肩検出が可能となり、車両1のより適切な自律走行制御が可能となる。
【0059】
[第3実施形態]
図12は、本発明の第3実施形態に係る車両1の路肩検出部2a,2bのスキャン方向を示す概略平面図である。本第3実施形態が前述した第2実施形態と異なるのは、第2実施形態は、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bが車両1前方の中心位置で交差するように設定されているのに対し、第3実施形態は、これら交線L1a,L1bが車両1前方の中心位置よりも路肩B側に寄った位置で交差するように設定されている。なお、本第3実施形態において、第2実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0060】
本第3実施形態においては、
図12に示すように、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとが交差する交線L1a,L1bが交差しており、この交線L1a,L1bの交点G1が、路面A上の車両1が走行する側、例えば左側通行の場合には、車両1の幅方向の中心位置よりも左側に寄った位置となるように、これら路肩検出部2a,2bのスキャン方向が設定されている。さらに、交点G1は、車両本体1aの両側部より内側、具体的には路肩検出部2a,2b間の間隔Cの範囲内となるように設定されており、走行側に位置する路肩B寄りとされている。
【0061】
以上により、本第3実施形態においては、路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点がなす交線L1a,L1bが、路肩検出部2a,2b間の間隔C内であって、この車両1前方の中心位置よりも走行側の路肩B寄りの位置で交差するように路肩検出部2a,2bのスキャン方向が設定されている。すなわち、これら路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点は、路肩検出部2a,2b間の間隔C内になり得ないため、交線L1a,L1bの交点G1が路肩検出部2a,2b間の間隔C内であれば、これら路肩検出部2a,2bによる路面A上の計測点、すなわちスキャン方向を、検出対象である路肩B側に寄せることにより、路肩検出部2aによる路肩検出点Paと、路肩検出部2bによる路肩検出点Pbとの間の距離Wを小さくでき、この小さな距離Wにおいての路肩Bの位置および向きを検出するため、車両1前方のより近接する部分の路肩Bを高精度に検出することができる。また同時に、交点G1を路肩B寄りにすることにより、各路肩検出部2a,2bによる走査範囲を狭くすることも可能であり、これら路肩検出部2a,2bによるスキャン角度やスキャン範囲を狭くすることも可能となる。
【0062】
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態に係る路肩検出システムを示す概略図である。本第4実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、1台の車両1にて計測した路肩形状情報を交通管制センタ200に送信するのに対し、第4実施形態は、複数の車両1,1A〜1Cにて計測した路肩形状情報を逐次、交通管制センタ200に送信する。なお、本第4実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0063】
本第4実施形態においては、
図13に示すように、路肩検出装置21および車体運動制御装置23に加え、自己位置計測装置22が各車両1に搭載されており、計測された路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dに関する情報や、路肩検出点Pa,Pbの外部座標系での検出位置情報等の路肩形状情報が、通信装置24を介して交通管制センタ200の通信装置31へ送信される。他の車両1A〜1Cも同様に、路肩検出装置21、自己位置計測装置22、車体運動制御装置23および通信装置24を備え、これら各車両1A〜1Cにて計測された路肩形状情報が、通信装置24を介して交通管制センタ200に送信される。
【0064】
交通管制センタ200は、各車両1,1A〜1Cから送信される路肩形状情報を、路肩データ記憶部32に記憶されている路肩形状マップと路肩形状比較装置33にて比較し、路肩形状比較装置33での比較により路肩形状情報が路肩形状マップと相違する場合に、その路肩形状情報のうちの路肩形状変化情報を変化データ記憶部34に記憶させる。
【0065】
以上により、本第4実施形態においては、路肩検出装置21、自己位置計測装置22、車体運動制御装置23および通信装置24を各車両1,1A〜1Cに備えさせることにより、各車両1,1A〜1Cから送信されてくる路肩形状情報に基づき、路肩データ記憶部32に記憶されている路肩形状マップとの相違箇所である路肩形状変化情報を変化データ記憶部34に記憶させ、路肩形状マップを逐次更新できる。
【0066】
[第5実施形態]
図14は、本発明の第5実施形態に係る路肩検出システム100を示す概略図である。本第5実施形態が前述した第4実施形態と異なるのは、第4実施形態は、車両1にて計測した路肩形状情報を交通管制センタ200に送信するものに対し、第5実施形態は、計測した路肩形状情報を交通管制センタ200へ送らず車両1内で用いる。なお、本第5実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0067】
本第5実施形態においては、
図14に示すように、通信装置24を除く、他の路肩検出システム100を構成する路肩検出装置21、自己位置計測装置22および車体運動制御装置23のそれぞれが車両1に搭載されている。そして、路肩計測装置21aにて算出した路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dが所定の範囲内で連続的に変化している場合に、路肩計測装置21aにて求めた路肩検出点Pa,Pbの外部座標系での検出位置を、路肩記憶部21bに記憶させている路肩データに対比させ、相違する場合に路肩データを更新させる。
【0068】
車両制御装置23eは、路肩計測装置21aにて算出した路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dに基づき、車両1の走行位置が、予め定めた所定の走行範囲を逸脱したかどうかを判断する構成とされ、所定の走行範囲を逸脱した場合に、駆動トルク制限装置23bや操舵制御装置23cを適宜制御して、車両1の走行位置を所定の走行範囲内とさせる。なお、算出した車両1の走行位置が、予め定めた所定の走行範囲を逸脱していると車両制御装置23eにて判断した場合に、運転席1bに設けた警報装置(図示せず)にてオペレータに音や光等による警報を与える構成としてもよい。
【0069】
以上により、本第5実施形態においては、路肩計測装置21aにて算出した路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dが所定の範囲内で連続的に変化している場合に、路肩計測装置21aにて求めた路肩検出点Pa,Pbの外部座標系での検出位置を、路肩記憶部21bに記憶させている路肩データに対比させ、相違する場合に路肩データを更新させる。
【0070】
また、路肩計測装置21aにて計測した路肩Bに対する車両1の向きα、および車両1から路肩Bまでの距離Dに基づき、車両1の車両制御装置23eにて車両1の走行位置を制御するため、車両制御装置23eによる車両1の自律走行制御をより適切かつ精度良くすることができる。
【0071】
[第6実施形態]
図15は、本発明の第6実施形態に係る車両1の低速走行時の路肩検出部の状態を示す概略図で、(a)は車両1の全体図、(b)は路肩検出部2aの部分拡大図である。
図16は、車両1の高速走行時の路肩検出部2aの状態を示す概略図で、(a)は車両1の全体図、(b)は路肩検出部2aの部分拡大図である。
図17は、車両1の路肩検出部2a,2bのスキャン方向を示す概略平面図である。なお、
図15(a)および
図16(a)においては、路肩検出部2bの記載を省略している。
【0072】
本第6実施形態が前述した第2実施形態と異なるのは、第2実施形態は、路肩検出部2a,2bが上側デッキ1fに固定し、これら路肩検出部2a,2bのスキャン方向を固定しているのに対し、第6実施形態は、これら路肩検出部2a,2bのスキャン方向を変更できる可動式としている。なお、本第6実施形態において、第2実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0073】
<構成>
本第6実施形態においては、
図15(b)および
図16(b)に示すように、上側デッキ1fの前側角部の上側に、側面視三角形状の軸傾斜材2eを取り付けている。軸傾斜材2eは、上側デッキ1fの前側から後側に向けて下方に傾斜した傾斜面2fを有している。この傾斜面2f上に、路肩検出部2aによる路面Aに対する走査方向を変更させる走査方向変更部としての駆動機構2gを取り付けている。駆動機構2gは、略平板状に形成され、この駆動機構2gの上面上に、路肩検出部2aに固定された平板状の支持体2hを取り付けている。支持体2hは、鉛直軸の上側を車両の後方に傾けた軸を回転軸V1として駆動機構2g上に回転可能に取り付けている。路肩検出部2aは、そのスキャン面40aを軸傾斜材2eの傾斜面2fの傾斜角度ほど鉛直方向に対して傾けて取り付けている。よって、路肩検出部2aは、駆動機構2gにて支持体2hを回転させて、
図15(a)および
図15(b)に示すように、路肩検出部2aのスキャン面40aを前後方向に沿わせた位置から、
図16(a)および
図16(b)に示すように、そのスキャン面40aを路面Aの幅方向に沿わせた位置までに亘って、スキャン面40aが変更可能な構成としている。なお、路肩検出部2bも同様に、構成されている。
【0074】
車両制御装置23eは、車輪速計測部22aにて検出した前輪1dの回転速度に基づき、車両1の走行速度を算出し、この算出した走行速度に応じて駆動機構2gの回転駆動を制御する。具体的に、車両制御装置23eは、算出した走行速度が予め定めた所定速度より低い場合に、
図17に示すように、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとの交線L1a1,L1b1の交点G1が、走行方向手前側に移動するように各駆動機構2gにて支持体2hのそれぞれを内側に回転させる。また、車両制御装置23eは、算出した走行速度が予め定めた所定速度以上の場合に、各路肩検出部2a,2bによるスキャン面40a,40bと路面Aとの交線L1a2,L1b2の交点G2が、走行方向前方に移動するように各駆動機構2gにて支持体2hのそれぞれを外側に回転させる。
【0075】
<作用効果>
一般に、車両1の走行速度が低い場合は、例えばカーブ、坂道、凹凸路面等の走行速度を抑える必要のある箇所を走行している場合であり、車両1に近接する部分の路肩Bの位置および向きを正確に検出し、路肩Bへの接触等を適切に防止する必要がある。一方、車両1の走行速度が高い場合は、直線路であり平坦な路面Aを走行している場合であるため、車両1に近接する路肩Bの位置および向きよりも、走行方向前方のより広範囲に亘る路肩検出が求められる。
【0076】
そこで、上記第6実施形態においては、車輪速計測部22aにて検出した前輪1dの回転速度に基づく車両1の走行速度が予め定めた所定速度より低い場合に、車両制御装置23eにて各駆動機構2gをそれぞれ制御して、路肩検出部2aによる路面A上の交線L1a1と、路肩検出部2bによる路面Aの交線L1b1との交点G1の位置を、車両1の走行方向手前側に移動させる。この結果、路肩検出部2aにて検出した路肩検出点Paと、路肩検出部2bにて検出した路肩検出点Pb1との間の距離W1を小さくできるため、車両1に近接する部分の路肩Bをより高精度に検出することができる。さらに、車輪速計測部22aにて検出した前輪1dの回転速度に基づく車両1の走行速度が予め定めた所定速度以上の場合には、車両制御装置23eにて各駆動機構2gをそれぞれ制御して、路肩検出部2aによる路面A上の交線L1a2と、路肩検出部2bによる路面Aの交線L1b2との交点G2の位置を、車両1の走行方向前側に移動させる。この結果、路肩検出部2aにて検出した路肩検出点Paと、路肩検出部2bにて検出した路肩検出点Pb2との間の距離W2を大きくできるため、より広範囲に亘る路肩Bを考慮した路肩検出が可能となる。よって、車両1の走行速度に応じた適切な路肩検出が可能となり、車両1のより適切な自律走行制御が可能となる。
【0077】
[その他]
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0078】
さらに、上記各実施形態においては、鉱山用の自律走行式のオフロードダンプトラックを例として車両1を説明したが、オペレータによる操作にて走行させる有人走行式のダンプトラックや、その他の車両1においても、本発明に係る路肩検出システム100を搭載させて路肩検出を行うこともできる。
【0079】
また、上記各実施形態においては、2台の路肩検出部2a,2bを、車両本体1aの前側の左右方向の中心位置から等間隔離間させた位置に設置したが、これら路肩検出部2a,2bの設置位置としては、路肩Bまでの距離を検出できる位置であれば、どのような位置であってもよい。これら路肩検出部2a,2bとしてレーザスキャナを例として説明したが、路肩Bまでの距離を検出できれば、レーザスキャナ以外でも良い。
【0080】
さらに、上記第6実施形態においては、軸傾斜材2e上に駆動機構2gを取り付けて、路肩検出部2a,2bのスキャン面40a,40bを傾斜させ、これら駆動機構2gにて路肩検出部2a,2bを回転させた際のスキャン面40a,40bの移動距離を確保しているが、
図18(a)〜
図18(c)に示す第7実施形態のように、上側デッキ1fの前側角部の上側に駆動機構2gを取り付け、鉛直軸を回転軸V2とする構成としてもよい。この場合には、駆動機構2gにて支持体2hを水平方向に回転させることにより、路肩検出部2aのスキャン面40aを
図18(b)に示す前後方向から
図18(c)に示す左右方向まで変更させることができる。したがって、上記第6実施形態よりも各路肩検出部2aのスキャン面40aの移動距離が小さいものの、路肩検出部2aによる路面A上の交線L1aと、路肩検出部2bによる路面Aの交線L1bとの交点Gの位置を、車両1の走行方向に沿って移動させることができる。
【0081】
また、上記第6実施形態においては、予め定めた所定速度を基準とし、この所定速度より車両1の走行速度が低い場合に、路肩検出部2a,2bの交線L1a,L1bとの交点Gの位置を、車両1の走行方向手前側に移動させ、所定速度より車両1の走行速度が高い場合に、路肩検出部2a,2bの交線L1a,L1bとの交点Gの位置を、車両1の走行方向前側に移動させる二段階切替式としたが、車両1の走行速度に応じて交点Gの位置をリニアに切り替えるリニア切替式や、車両1の走行速度に応じてステップ状に切り替える多段階切替式としてもよい。
【0082】
さらに、上記第6実施形態においては、路肩Bの検出に際し、
図5に示すように、交線L1、L2を算出しその路肩検出点Pa、Pbを求めたが、各路肩検出部2a,2bにおいて光軸の回転角度とその回転角度における測距結果(各路肩検出部2a,2bと計測点との間の距離)とを対応づけて求め、距離の変化率の変化に基づいて路肩検出点Pa,Pbを求めてもよい。
図19に、本発明の第8実施形態に係る車両1による光軸回転角度に対応した測距結果を示すプロファイルを示す。
図11に示すように、路肩検出部2a,2bの光軸をNi−1、Ni、Ni+1と走査すると、その計測点は車両1に近づき(距離は減少関数を示す)、車両1に最も近づいた後、計測点は車両1から遠ざかる(距離は増加関数を示す)。そして、路肩Bの斜面にレーダが照射されると、路面Aよりも路肩Bの斜面の方がZ軸方向に立ち上がっているため、その高さに応じて光軸との交点(計測点)までの距離が短くなる。したがって、
図19に示すプロファイルでは、レーザの照射位置が路面Aから路肩Bに移動すると、距離の増え方が緩やかになる。そこで、距離の増加率Δdが、正の値の範囲かつ増加率が減少した点を交点Pとして検出してもよい。