(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性表面層ポリマーコーティングが、前記離型フィルムに離型可能に接着した良好に融着した熱可塑性粒子である不連続の複数のビーズである、請求項1に記載の方法。
前記熱可塑性表面層ポリマーコーティング形成後、熱可塑性表面層ポリマーを焼きなますまたは結晶化するために前記成形型に熱を適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂の組成は、それらの粘性が熱硬化性樹脂組成よりも比較的高いため、繊維強化材料中に含浸させることがより難しい。他方、熱可塑性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物に勝るいくつかの恩典を提供する。例えば、熱可塑性プレプレグは、物品により迅速に製造することが可能であり、繊維強化熱可塑性複合材料での製造は、生成速度を増すために、繊維強化熱可塑性複合材料の成形型上へのロボットによる自動化敷設テープ配置を利用し得る。これは、繊維強化熱可塑性複合材料の後続の層の加熱およびその頂部への敷設前に、繊維強化熱可塑性複合材料の先行層を事前加熱する複数ステップのロボットアームを介し得る。
【0004】
熱可塑性樹脂は、融解したときに高度の粘性が高く、その流れ動作がしばしば非ニュートン的である高分子量の長鎖ポリマーである。したがって、熱硬化性物質は、100〜5,000センチポイズ(0.1〜5Pa
*s)の範囲の粘性を有するが、熱可塑性物質は、5,000〜20,000,000センチポイズ(5〜20,000Pa
*s)、より一般的には20,000〜1,000,000センチポイズ(20〜1000Pa
*s)の範囲の融解粘性を有する。熱硬化性物質と熱可塑性物質との間の3桁の粘性の差にもかかわらず、一部のプロセスは、繊維性物質を積層するために、双方の種類のマトリックスに適用されてきた。
【0005】
繊維強化プラスチック材料は、最初に繊維強化に樹脂を含浸させてプレプレグを形成し、次に、オプションとしてはさらなる形成ステップで、2つ以上のプレプレグをラミネートに固結させることによって製造され得る。いくつかのプロセスが、直接に繊維に対して融解を適用する。テープは、コリメート繊維の乾燥織布にポリマーをコーティングして、ポリマーを繊維の中および周りに押しやる加熱プロセスを適用することによって作ることが可能である(例えば、米国特許第4,549,920号および同第4,559,262号を参照)。コリメート繊維の乾燥織布をコーティングして含浸する別のプロセスは、織布を熱可塑性ポリマー粒子の水性スラリー中で引いて、それにより、ポリマー粒子をフィラメントの束内で捕獲するようにすることによる。このプロセスでの後続の熱および圧力が、水を沸騰させ、次にポリマーを融解させて、それをフィラメントの束の中および周りに押しやる。このプロセスは、米国特許第6,372,294号、同第5,725,710号、同第4,883,552号、および同第4,792,481号に説明されている。水性スラリー含浸プロセスに対する修正は、ポリマー粒子用の薬剤を分散させる際の水および界面活性剤の使用をやめて、その代わりに、空気の流動床で粒子を帯電させて、粒子をフィラメントの束に捕獲することである。米国特許第5,094,883号に示すように、後続の熱および圧力のゾーンが、ポリマーを融解させて、フィラメントの束をコーティング/含浸させる。したがって、当業者には、利用可能なプロセス装置が与えられ、ポリマーの生成物形態(フレーク、微粉末、膜、不織布ベイル、ペレット)および融解粘性が適切に選択されれば、繊維状基板をコーティングおよび/または含浸させる複数の方法が存在する。
【0006】
熱可塑性および熱硬化性の双方の複合材は、テープと呼ばれる薄い可撓性のシートまたは条片に形成することが可能である。これは、複合材の構成要素を、複合材テープを成形型に敷設することによって形成することを許容するが、構成要素の厚さは、形成された複合材構成要素の最終的な構造的特性を制御するために、敷設された複合材の層の数と、また、制御可能であるテープの1つ以上の層の方向とによって局所的に変動する。敷設された構成要素は、次に、「固結される」が、これは、この場合では熱硬化性または熱可塑性マトリックスが1つの一体化されたマトリックスを形成するに十分な程度に軟化するように複合材構造を加熱し、軟化したマトリックスに十分な圧力を印加して、あらゆる捕獲された空気をマトリックスから駆逐することを伴うプロセスである。
【0007】
最終的な構造特性という点では、熱可塑性複合材は、熱硬化性複合材よりも優れた衝撃特性および耐損傷特性を有し、一般に、より靱性があり、化学攻撃に対してより耐久性があるが、これらはすべて、航空宇宙応用分野では好ましい特性である。さらにその上、熱可塑性複合材は、繰り返し再加熱し、再成形し得るため、それらは、本質的にリサイクル可能であるが、これはますます重要に考慮されるものである。
【0008】
しかしながら、熱硬化性複合材テープは敷設プロセスに関連して航空宇宙複合材構成要素で用いられる際に現在選定される材料とされる、1つの特性を有する。この特性は、熱硬化性テープは、本質的に粘着性である、すなわちネバネバさを有すると言われる。このネバネバさによって、熱硬化性テープは、航空宇宙産業内では複合材構成要素にとって、また、熱硬化性テープの個別の層にとって、いったん最初の層が金型表面に適用されると互いに接着するために必要とされる複雑形状の金型の双方の表面に接着することを可能とし、これで、敷設プロセスが、物理的に管理するには比較的容易で便利なものとなる。
【0009】
対照的に、熱可塑性複合材テープは、ネバネバさは有しない。結果として、熱可塑性複合材テープを敷設プロセス中に複雑な金型表面に付着させるには問題がある。既存の伏せ値技法は、熱可塑性複合材料の局所固結と融解とを組み合わせて、最初の基礎層が、基礎層が成形型の表面に堅固に保持される間だけ構築されることを可能とする。この問題に対
する前に提案したソリューションは、個別の両面接着テープを最初の層として、熱可塑性複合材テープの第1の層が次に接着される金型表面に適用することを含んでいた。同様に、接着剤を金型の表面に溶射することも提案された。提案された双方のソリューションは、熱可塑性複合材テープの最初の層を複雑形状の金型表面に連続して適用することを許容するとはいえ、それらは、敷設プロセスが完了したときに、構成要素は金型表面に効果的に結合しているために、次いで、形成された複合材構成要素を金型からどのようにして除去するかというそれ自身の問題を導入する。結果として、未だ現在のところ、熱可塑性複合材料によって提供される優れた物理的特性にもかかわらず、熱硬化性複合材料を用いることが望ましい。
【0010】
複合材物品を製造するために周知の方法は、手動製造と自動化製造を含む。手動製造は、マンドレルの表面に対して技師が材料を手動で切削して配置することを伴う。この製造方法は、時間がかかり、費用集約的で、結果として敷設が不均一になりかねない。
【0011】
自動化製造技法は、平坦テープラミネート機械(FTLM)および輪郭テープラミネート機械(CTLM)を含む。一般的に、FTLMとCTLMとの双方は、複合材料が適用される工作物表面上を走行する孤立複合材料ディスペンサを用いる。複合材料は、一般的には、所望の幅および長さの層を作製するために、一時に1つの行(の複合材料)が敷設される。さらなる層は、その後で、先行する層の上に構築されて、所望の厚さを持つ敷設物を提供し得る。FTLMは一般的には、複合材料を平坦な転送シートに適用するが、転送シートおよび敷設は、次いでFTLMから除去されて、金型、型、またはマンドレル上に配置される。対照的に、CTLMは、一般的に、複合材料を、金型、型、またはマンドレルの作業表面上に直接に適用する。FTLMおよびCTLM機械はまた、自動化テープ敷設(ATL)機械および自動化繊維配置(AFP)機械としても周知であり、ディスペンサは、通常、テープヘッドと呼ばれる。
【0012】
ATL機械/AFP機械の生産性は、機械のパラメータ、複合材部分の敷設特徴、および材料の特徴によって異なる。開始/停止時間、コース遷移時間、および切削/追加のプライなどの機械のパラメータは、ATL/AFP上のテープヘッドが材料をマンドレル上に敷設する合計時間を決定する。局所化されたプライの構築物および部分寸法などの複合材の敷設特徴もまた、ATL機械/AFP機械の合計生産性に影響する。
【0013】
熱可塑性部分を作製する理想的なプロセスは、部分が、熱可塑性材料を1つのステップで成形型上にロボットで配置して固結することによって作製される原位置での製造である。熱可塑性複合材料はネバネバさを欠いており、これが、手動および自動化された敷設動作、特に、成形型表面に対する最初のプライのそれの使用を複雑化する。
【0014】
ATL機械/AFP機械の生産性に影響する重要な材料要因は、熱可塑性のマトリックス複合材と比較したときに熱硬化性樹脂のマトリックスの場合は類似しているが、なおも、いくつかの重要な相違がある。熱硬化性樹脂のマトリックス複合材の場合、重要な要因は、含浸水準、表面樹脂被覆率、および「ネバネバさ」である。ネバネバさは、金型または敷設物上のテープ/トウの位置を、それが堆積された後で維持するために必要な接着水準である。熱硬化性樹脂の不反応性のために、ATL/AFPプロセスは、一般に、室温で実施されるが、しかし、材料のネバネバさ水準に対する湿度敏感さのために、湿度制御室で実施される。他の衝撃の中では、ネバネバさは、材料の第1のプライを金型上に敷設する能力に影響する。熱可塑性材料の第1のプライの敷設は、第1の層を金型に対して保持するにはネバネバさが欠けるために、複雑化する。
【0015】
任意の金型に対して配置される第1の複合材のプライは、材料を位置付けしてそれを重力もしくは材料の固さに対向して保持するなんらかの接着力または他の力を必要とする。
熱硬化性材料を用いるとき、敷設ヘッドでT
gを超えるポリマーは、この力を提供する。マトリックス樹脂が高性能の熱意可塑性物質であるとき、温度T
gは、室温よりも実質的にしかもかなり高い。金型を加熱すること、真空源を提供すること、より低い温度のフィルムを使用すること、または規制力を提供するために溶媒和熱可塑性ポリマーを用いることはすべて、現在用いられている方法である。これらの方法の各々が、経費、金型の複雑さ、部分の寸法に対する変更という点で制限を有するまたは実施のための厄介な危険な溶媒を必要とする。
【0016】
熱可塑性物質製造での低いネバネバさという制限を克服する周知の方法は、多孔性材料から作られた成形型を提供し、陰圧を多孔性材料に印加して、金型表面に陰圧を作製することであり、そうすることにより、熱可塑性複合材料は、熱可塑性複合材料の最初の層が金型表面上に敷設されたときに金型表面での陰圧のために金型表面に対して保持される。その後で、熱可塑性材料は、固結して、加熱されて、熱可塑性複合材料を形成し得る(例えば、米国特許出願公開第2011/0005666号を参照)。
【0017】
熱可塑性マトリックス複合材は、熱硬化性マトリックス複合材と類似のATL機械/AFP機械生産性の重要な要因を有するが、熱可塑性ポリマーテープは、周囲条件ではネバネバさが欠ける。熱可塑性物質は、一般に、低い表面エネルギー、高いガラス遷移温度(「T
g」)を有し、室温では接着しにくい。さらにその上、高性能熱可塑性マトリックスは、室温でガラス状態にあって、ネバネバさのための分子拡散機構を事実上不可能とする。したがって、ネバネバさは、熱可塑性複合材においては、熱、超音波、光(レーザー)、および/または電磁(誘導)という形態のさらなるエネルギーを敷設物および入ってくるテープに対して動的に適用して、材料の温度をその軟化温度および/または融解温度を超えて上昇させて、2つの表面間でポリマー鎖の分子拡散を発生しやすくすることによって達成される。いったんポリマー鎖が表面全体にわたって拡散すると、材料に印加されたさらなるエネルギーは、いったんATLヘッド/AFPヘッドからのラミネート圧力が除去されたら、ラミネート化された敷設物の歪みを防止する水準にまで除去する必要がある。敷設物中へのおよびこれからのエネルギーのこの急速な流れは、エネルギー使用および敷設速度という点では、結果として得られる複合材部分の温度性能を犠牲にすることなく、このプロセスステップを、できる限り低い温度およびエネルギーで実施することを好ましいものとする。
【0018】
固結は、繊維に樹脂を含浸させるために用いられてきたプロセス中に繊維の束、樹脂がトウ、または粗紡から空気を完全に排除することが不可能な結果として発生する空隙を除去するために一般的に必要である。個々に含浸された粗紡ヤーン、トウ、プライ、またはプレプレグの層は、通常は、オートクレーブに圧縮することによって熱および圧力で固結される。固結ステップは、一般に、非常に高い圧力および高い温度を真空下で比較的長い時間にわたって印加することが必要であった。さらにその上、オートクレーブまたはオーブンを用いる固結プロセスステップは、空気の除去のために真空を適用し、オートクレーブ中での固結を達成するために必要な圧力差を提供することを可能とするために金型上に密閉された膜を持つ敷設物を提供する「袋詰め」動作を必要とする。このプロセスはまた、複合材部分動作の全生産性をさらに減少させる。したがって、熱可塑性複合材の場合、ATL機械/AFP機械で基板にテープをラミネートしながら、低空隙複合材に原位置で固結することが利点であり得る。このプロセスは、一般的には、原位置ATL/AFPと呼ばれ、そのプロセスで用いられる材料は、原位置グレードテープと呼ばれる。
【0019】
一般に、熱可塑性複合材は、高い処理温度(現在、約400℃)、高い圧力、および良品質ラミネートを生成するのに必要な長い成形時間を含む様々な要因のために、今までは限られた成功を有してきた。努力のほとんどが、高性能ポリマーを、プロセス問題を悪化させてきただけの構造繊維に合成させることに焦点が合わされてきた。プレプレグプライ
を適切に固結させるために一般的に必要とされた時間の長さのため、最小時間で最良の固結を達成することが望まれ得る。その上、より低い固結の圧力もしくは温度ならびにより短い固結時間は、結果として、成形および他の製造上の恩典によって、一個当たりの低下したエネルギー消費によりより安価の生産プロセスとなる。
【0020】
したがって、軽量で、靱性のある複合材を生成するために現在利用可能な繊維強化熱可塑性材料および方法は、さらなる改善が必要である。自動化敷設機械上での改善したプロセス速度およびより低い処理温度を有し、かつ、オートクレーブもしくはオーブンステップを有しない熱可塑性材料は、技術上有用な進歩であり、とりわけ、航空宇宙および高性能自動車産業で最終的には急速に受け入れられるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、成形面に対する第1のプライの熱可塑性繊維強化複合材料の接着性を向上させるために、成形型の離型側部成形面に適用された表面層ポリマーコーティングを有する準備された成形型を提供する。
【0035】
図1aは、シボ仕上げ成形面(30)を持つ非多孔性金属成形型(20)、離型フィルム(40)、および離型フィルムに離型可能に適用された表面層ポリマーコーティング(50)を含む、準備された金型(10)の構成を提供するような本発明の実施形態を示す。
図1bは、プラズマ溶射によって適用された実質的に溶着した熱可塑性粒子として示す表面層ポリマーコーティング(50)を詳細に示す準備された金型(10)を提供するような本発明の実施形態を示す。
【0036】
重要なことに、表面層ポリマーコーティング(50)は、原位置での自動化テープ敷設中にプラズマ溶射を用いて成形型(20)の離型側部成形面に適用され得る。繊維強化複合材料(60)の先行するプライの頂部上への自動化テープ敷設中の表面層ポリマーの継続したプラズマ溶射は、結果として得られる複合部分に対する靱性などの恩典ある特性を付与することが可能な熱可塑性層間層(90)を提供する。
【0037】
図2aは、非多孔性金属成形型(20)上へのプラズマ溶射ヘッド(70)からの熱可塑性粒子などの表面層ポリマーコーティング(50)の原位置での適用と、その後の、熱可塑性繊維強化複合材料(60)の適用およびATL敷設ローラ(80)による詰め込みと、を示す。
【0038】
図2bは、自動化テープ敷設中でのプラズマ溶射ヘッド(70)による表面層ポリマーの継続したプラズマ溶射により、熱可塑性層間層(90)を提供し、次に、ATL敷設ローラ(80)によって詰め込まれた熱可塑性繊維強化複合材料(60)の後続のプライを適用することをさらに示す。前のプライの熱可塑性繊維強化複合材料(60)と、次の、ATL敷設ローラ(80)によって適用され、詰め込まれた後続のプライの熱可塑性繊維強化複合材料(60)と、に対するプラズマ溶射ヘッド(70)からの熱可塑性物質などの表面層ポリマーコーティングの継続的な適用は、自動化テープ敷設中に、熱可塑性繊維強化複合材料と、次いで適用された熱可塑性繊維強化複合材料との層間に、原位置適用された層間熱可塑性層(90)を提供する。
【0039】
熱可塑性層間層(90)および表面層ポリマーコーティング(50)は各々が、高性能熱可塑性ポリマーであり、同一または異なる材料であり得るし、同一または異なる多機能性添加物を含み得る。特定の高性能熱可塑性ポリマーの選択におけるこの融通性は、表面層コーティング(50)および層間層(90)のための最適な材料の選択を許容する。
【0040】
同様に、第1のプライの繊維強化複合材料(60)および後続のプライの繊維強化複合材料(60)は各々が、コンパティブルな材料であるが、しかし、各々の層にとって望まれる特性次第では同一または異なる組成物であり得る。
【0041】
代替例では、本発明は、成形型の成形面に対する第1のプライの熱可塑性繊維強化複合材料の接着性を向上させ、かつ、結果として得られる複合材部分に恩典ある層間層をさらに提供するために、熱可塑性繊維強化複合材プレプレグ材料の1つ以上の表面に直接に適用された表面層ポリマーコーティングを有する準備されたプレプレグを提供する。
【0042】
図3は、繊維強化複合材料(60)の表面上に対してプラズマ溶射ヘッド(70)からの熱可塑性粒子をプラズマ溶射し、それにより、準備されたプレプレグ(100)を形成することによって、熱可塑性繊維強化複合材料(60)の双方の表面に表面層ポリマーコーティング(50)を適用することによって準備されたプレプレグ(100)を示す。求められ、結果として得られた複合材部分の性能次第では、表面層ポリマーコーティングは、準備されたプレプレグ(100)の各々の側面上で同一または異なり得る。
【0043】
本発明の準備された金型(10)は、成形型(20)の成形面に離型可能に接着された表面層ポリマーコーティング(50)を組み込む。好ましくは、離型フィルム(40)は、成形型(20)の成形面と表面層ポリマーコーティング(50)との間に介装される。加えて、成形面に対する表面層ポリマーコーティング(50)の接着を最適に制御するために、成形型(20)の成形面は、シボ仕上げ表面(30)である。準備された金型(10)は、所望次第で手動でまたはATLによって繊維強化複合材料の敷設のために利用され得る。準備された金型(10)は、手でまたはATLでの適用中に、第1のプライの繊維強化複合材料の最適な制御された接着を提供する。
【0044】
図2aは、成形型(20)の成形面上への自動化テープ敷設配置による第1のプライの繊維強化複合材料(60)の敷設を示す。テーププレプレグを繊維強化複合材料(60)として用いるとき、プラズマ溶射ヘッド(70)は、成形面上に熱可塑性粒子を溶射して、成形型(20)の成形面の準備のために成形面上に表面層ポリマーコーティング(50)を形成する。次いで、ATL敷設ローラ(80)は、テーププレプレグ繊維強化複合材料(60)を成形型(20)の成形面上の表面層ポリマーコーティング(50)上に敷設して離型可能に接着させる。このプロセスの継続した適用を
図2bに示すが、ここでは、繊維強化複合材料(60)に後続の層が、プラズマ溶射ヘッド(70)を用いて繊維強化複合材料(60)の前に接着された層の表面上に熱可塑性粒子を溶射し、次に、繊維強化複合材料の後続のプライをATL敷設ローラ(80)で適用することによって、熱可塑性層間層(90)を作製する。この熱可塑性層間層(90)は、所望次第で、恩典ある靱性または他の多機能性の恩典を提供することが可能である。
【0045】
本発明のプレプレグ(100)は、繊維強化複合材料(60)の原位置敷設の前または最中に繊維強化複合材料(60)の一方または双方の表面上に直接的に表面層ポリマーコーティング(50)を適用することによって準備される。繊維強化複合材料(60)の流れは、繊維強化複合材料(60)の一方または双方の側面に表面層ポリマーコーティング(50)を適用する1つ以上のプラズマ溶射ヘッド(70)間を通過し、それにより準備されたプレプレグ(100)を形成する。この準備されたプレプレグ(100)は次に、所望次第で手でまたはATLで成形型または準備された金型(10)に直接的に適用することが可能であり、また、成形型または準備された金型(10)の成形面に離型可能に接着される。準備されたプレプレグ(100)は、成形型(20)の成形面に隣接する表面層ポリマーコーティング(50)を有する第1のプライの繊維強化複合材料を適用するための個別のプラズマ溶射ヘッド(70)に対する必要性なく、
図2aに示すようにATL敷設ローラによってテーププレプレグとして適用することが可能である。成形面は、好ましくはシボ仕上げの成形面(30)である。準備されたプレプレグ(100)は、同一の潜在的な多機能的恩典を提供しながらも、製造経費を節約し、より均一な製造条件を作成することが可能である。表面層ポリマーコーティング(50)が繊維強化複合材料(60)の双方の表面に適用されると、各々の表面上の表面層ポリマーコーティング(50)は
、同一または異なる組成物を有し得る。
【0046】
とりわけ、溶媒ベースのポリマー溶液を金属成形型の成形面上に溶射すること、水ベースのスラリーを手動適用すること、プラズマ溶射を適用すること、または静電紛体コーティングして溶着する方法などの、表面層ポリマーコーティング(50)を適用する様々な方法が利用可能であり技術上周知である。
【0047】
本発明の1つの特に好ましい実施形態は、成形型(20)の成形面上に表面層ポリマーのプラズマ溶射を適用して、
図1aおよび1bに示すように準備された金型(10)を形成する、または、
図3に示すように繊維強化複合材料(60)上に直接的に適用して準備されたプレプレグ(100)を形成する。表面層ポリマーコーティング(50)がプラズマ溶射ガンを用いて適用されるとき、表面層ポリマーは、固体粒子、好ましくは、90〜180μm、より好ましくは150〜185μmのD
90直径を持つ熱可塑性粒子(ここで、容積で、粒子の90パーセントはこの数値より小さい)という形態でプラズマガンに導入される。粒子は、低速、高温プラズマを用いて適用される。
【0048】
好ましい高性能ポリマー表面層ポリマー粒子は、PEEKポリマーである。
【0049】
表面層ポリマーコーティング(50)は、実質的に連続しているが、しかし、特に、それが適用されるシボ仕上げ表面(30)の粗さの水準次第では、成形面に沿ってより低い厚さの水準では不連続となり得る。成形面の少なくとも50%、より好ましくは成形面の少なくとも90%、最適には成形面の少なくとも98%にわたって連続していることが望ましい。表面層ポリマーコーティング(50)を適用するためにプラズマ溶射ヘッド(70)を利用するとき、加熱された熱可塑性粒子は、融解した粒子として成形面に衝突して接着し、結果として得られる表面層コーティング(50)は、良好に溶着された熱可塑性粒子である不連続な複数のビーズのように見え得るが、しかし、全てが一緒に溶着しているわけではなくて、部分的に不連続なフィルムを形成する。
【0050】
高性能ポリマー粒子のサイズは、約100μm〜約400μmのD
90である。好ましくは、ポリマー粒子のサイズは、約125μm〜約250μmのD
90であり、最適なプラズマ溶射適用の結果のためには、最も好ましくは、約150μm〜約200μmである。適用されたとき、高性能ポリマー粒子は、プラズマ溶射アプリケータの通気ポートノズルセクションで約350〜約400m/秒の速度で約1800°F〜約2000°Fの範囲のプラズマ溶射ヘッド温度に曝される。
【0051】
有用な市販のプラズマ溶射アプリケータは、Praxair SG10プラズマ溶射アプリケータまたはSulzer Metcoプラズマ溶射アプリケータを含む。高性能ポリマー粒子は、固体粒子としてプラズマ溶射ヘッド中に導入される。プラズマ溶射アプリケータは、次に、固体粒子をプラズマジェット流の中に方向付けて、粒子を加熱して高速度に加速する。
【0052】
最良の性能のためには、金属金型(20)は、約250°F(121℃)に事前加熱して、表面層ポリマーコーティング(50)を成形型(20)の成形面に接着させるのを支援する。
【0053】
準備された成形型の準備のためには、プラズマ溶射は、表面層ポリマーコーティング(50)を、0.001〜0.010インチ厚さの層の範囲の厚さで成形型(20)の成形面に溶射すべきである。一部の実施形態では、表面層ポリマーコーティング(50)の厚さは、より好ましくは約0.002インチである。この厚さは、結果として得られる複合材部品に対してあまり重量を加えることなく、第1のプライの接着を支援することを意図
する。
【0054】
準備されたプレプレグ(100)の準備において、プラズマ溶射は、表面層ポリマーコーティング(50)を繊維強化熱可塑性複合材料(60)上に、層当たり約0.0005〜約0.010インチの厚さで適用すべきである。一部の実施形態では、層当たり表面層ポリマーの厚さは、約0.001〜約0.008インチであり得る。
【0055】
表面層ポリマーコーティング(50)は、結果として得られる複合材部分の成形型の成形面からの効果的な離型を許容するために、成形型(20)の成形面に離型可能に適用することが可能である。熱可塑性繊維強化複合材料の自動化テープ敷設に伴う困難は、成形型の成形面に対する第1のプライの非効果的な接着であるが、熱可塑性表面層ポリマーコーティングは、除去しようとしたときに、熱可塑性表面層ポリマーコーティングが犠牲になって、結果として得られる熱可塑性複合部分が損傷を受けるように成形型の成形面にあまり強く接着すべきではない。これは、熱可塑性表面層ポリマーコーティングが、結果として得られる熱可塑性複合材部分の表面特性をさらに向上させるために、本明細書に記載するような任意の多機能性剤を含むときには、特に重要である。
【0056】
本発明の目的のために、熱可塑性表面層ポリマーコーティングは、熱可塑性表面層ポリマーコーティングを持つ成形型上に作られた結果として得られる熱可塑性複合材部分が小さいか控えめな圧力で成形型から離型するときに離型可能に適用されると言われるが、他方、表面層ポリマーコーティングは、熱可塑性繊維強化複合材料の自動化された原位置敷設中には外れない。
【0057】
成形型(20)の成形面上の表面層ポリマーコーティング(50)は、いったんそれが樹脂の濃い熱可塑性表面層ポリマーコーティング、向上した表面シボ、および内部に組み込むことが可能なオプションの多機能性添加物の量のために成形型から除去されると、結果として得られる熱可塑性複合材部分の表面品質および特性を向上させることが可能である。
【0058】
表面層ポリマーコーティング(50)は、遅速結晶化する半結晶ポリマーまたは非晶質ポリマー(またはこれらの混合物)から選定された高性能ポリマーを含み得るが、そのため、熱可塑性表面層ポリマーコーティング(50)は、繊維強化熱可塑性複合材料(60)の高性能熱可塑性ポリマーとの混和性および/またはコンパティブルなブレンドを形成する。表面層ポリマーコーティング(50)は、本明細書に記載するように第1のプライの敷設の向上した処理のために成形型(20)の成形面に適用されるまたは成形型への適用前に熱可塑性繊維強化複合材料(60)の一方または双方の表面に直接に適用される、本明細書に記載する高性能熱可塑性ポリマーのうちの任意の一つであり得る。
【0059】
高性能熱可塑性ポリマーの形態は、非晶質および/または遅速結晶性(すなわち、低結晶化度―一般的には、20%未満の結晶化度)の半結晶性ポリマーであり得る。非晶質ポリマーと半結晶性ポリマーとのブレンドもまた、表面層ポリマーコーティング(50)としての用途が想定される。ある実施形態では、表面層ポリマーコーティング(50)用の高性能熱可塑性ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、PEIおよび/またはポリエーテルサルホン(PES)および/またはポリフェニルサルファイド(PPS)とのPAEKコポリマー、およびPEI、PES、PPS、および/またはポリイミドのうちの1つ以上とのPAEKブレンドから選定される。
【0060】
特定の実施形態では、例えば、熱可塑性表面層ポリマーコーティングは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択され
るPAEKおよび、これに限られないが、ジフェニルスルフォン等とのブレンドを含む。熱可塑性表面層ポリマーがPEKKを含むとき、PEKKのT:I比は、表面層ポリマーの遅速結晶加速度を維持するために、約0:100〜約70:30の範囲である。特定の実施形態では、熱可塑性表面層ポリマーのT:I比は、約0:100〜約70:30のT:I比を有するCYPEK(登録商標)DSを用いる。本発明で用いることが可能な適切なPEKKポリマーは、これに限られないが、CYPEK(登録商標)DS−EまたはCYPEK(登録商標)DS−MおよびCYPEK(登録商標)HTなどの、Cytec Industries Inc.Woodland Park NJから市販されているものを含む。
【0061】
表面層ポリマーコーティング(50)は、導電率、靱性、酸素透過性、結晶加速度、および/または結果として得られる熱可塑性複合材部分の溶媒抵抗性などの、結果として得られる熱可塑性複合材部分を向上させるために選定される1つ以上の多機能性剤をさらに含み得る。このような多機能性剤は、金属コーティングおよび/またはマイクロ粒子および/またはナノ粒子の形態であり得る。
【0062】
オプションの表面層ポリマーコーティング(50)の多機能性剤は、これに限られないが、衝撃改質剤、離型剤、潤滑油、チキソトロピック、酸化防止剤、UV吸収装置、熱スタビライザー、難燃剤、顔料、着色剤、衝撃損害インジケータ用の層をなした着色剤、非繊維強化剤およびフィラー(ナノグラファイト血小板)、結晶加速度を向上させ、収縮を軽減するために、溶媒抵抗を向上させるナノクレイ、ナノ金属(ニッケルフィブリルなど)、衝撃靱性用の粒子インターリーブ、OML落雷用のインターリーブ中のCVDベイル織物、衝撃性能を向上させる繊維もしくはポリマー、ATL機械に圧力印加された場合の空気除去支援する表面仕上げ、およびプライ間領域全体にわたるレプテーション回復を加速する大流量表面コーティングなどの材料のうちの1つ以上を含み得る。
【0063】
成形型(20)は、金属を含む任意の非多孔性高温金型であり得る。当業者に周知なように、好ましくはステンレス鋼、インバール、または低炭素鋼である金属金型は、すべて適切である。成形型(20)の成形面は、熱可塑性繊維強化複合材部分製造および低CTEのために必要とされる高処理温度に耐え得るステンレス鋼であり得るが、好ましくはインバールである。高温金型は、最大で800°F(427℃)の処理温度に耐えることが可能である。成形型(20)は、0.120インチ厚304の鋼板または0.63インチのインバール36であり得る。しかしながら、ステンレス鋼板は、より高いディファレンシャルCTEのためにインバールほど効果的ではあり得ないが、これが、熱可塑性繊維強化複合材料の処理中に成形型の成形面からの剥離を生じかねない。
【0064】
成形型(20)は、非多孔性である不透水性材料である固体であるべきである。成形型(20)は、その成形面が空気または気体の流れを許容すべきではない。
【0065】
シボ仕上げ成形面(30)は、成形型(20)の成形面からの熱可塑性繊維強化複合材料(60)および表面層ポリマーコーティング(50)のCTEディファレンシャル剥離を克服する目的で、成形型(20)に対する表面層ポリマー(50)の機械的接着性を向上させるためには、好ましくは、成形型(20)の成形面上に作製される。シボ仕上げ成形面(30)は、成形型(20)と表面層ポリマーコーティング(50)との間に機械的インターロックを提供し、接着性を向上させて、表面層ポリマーコーティング(50)と成形型(20)との間での熱膨張係数の差を克服するものと信じられている。過度に少ないシボおよび機械的インターロックは、CTEディファレンシャルを克服するには不十分であり、その結果、製造中に、表面層ポリマーコーティング(50)が、成形型(20)から容易に剥離することになる。シボ仕上げ成形面(30)の過度の粗さは、結果として、結果として得られる複合材部分を成形型から除去しようとするときに、表面層ポリマー
コーティング(50)に損傷を与えることなく離型させて除去するのが困難となりかねない表面層ポリマーコーティング(50)をもたらしかねない。
【0066】
シボ仕上げ成形面(30)は、砂吹き、ミリング、ブランシャール摩擦、ガラスビーズ吹き、刻み付け、または、離型フィルム(40)を受け入れるために成形面をシボ仕上げする他の手段などの多くの手段によって付加され得る。シボ仕上げ成形面(30)の作製は、約20の粒度〜約180の粒度、より好ましくは40の粒度〜120の粒度の粒度サイズでの砂吹きなどの方法によって遂行することが可能である。特に、約120の粒度の酸化アルミまたは約40〜60の粒度のガラスビーズは、表面上に均一なシボを提供し、好ましくは、40〜60の粒度のガラスビーズが最適である。適切なシボを提供する好ましい方法は、120の粒度の酸化アルミまたは40〜60の粒度のガラスビーズでの砂吹きである。
【0067】
成形型(20)の成形面と表面層ポリマーコーティング(50)との特定の組み合わせのための適切なシボは、特定の表面層ポリマーコーティング(50)および成形型(20)のためのシボの最も適切な水準を特定するために、当業者によって最適化することが可能である。当業者は、結果として得られる複合材部品の離型性を維持しながらも、十分な接着性を支持するために伴われるCTEディファレンシャルを克服するために、成形型材料および表面層ポリマーコーティング材料の種類のためのシボの最も適切な水準を特定することが可能である。
【0068】
シボの適切な水準を定量化する1つの方法は、シボ仕上げ成形面(30)のプロファイル素子を測定することである。プロファイル素子のより大きい平均間隔とプロファイル素子のより大きい深さとの双方は、シボの好ましい水準を識別する適切な方法である。双方のプロファイル素子は、シボが適切であるためには適切である必要がある。
【0069】
高温成形型および熱可塑性表面層ポリマーコーティング、すなわち、PEKK表面層ポリマーコーティングを持つ0.63インチのインバール36シートが、Time Group Inc.のTR200ダイアモンドスタイラス先端表面形状測定装置、誘導型表面粗さテスターによって試験された。表面形状測定装置は、材料の特徴を検出するためにサンプルの表面上を制御された速度で移動するダイアモンドスタイラスを用いる。これらのパラメータは、サンプルの頂部上にデバイスを静止させることによって平坦なサンプル上で測定される。これは、試験は、標準の室温および湿度で実施され、試験される成形型は、室温にあるべきである。表面形状測定装置は、x方向(試験台のエッジに対して平行であると定義される)でサンプル上に設定され、試験は、プレイの矢印キーを用いて始められ、全てのパラメータは、X方向に対して記録される。表面形状測定装置は、次に、前の試験に対して直角に再位置付けられ、試験は、Y方向に対して全てのパラメータを記憶するように繰り返される。
【0070】
このRsm計算を式1に示し、Ryは式2に示す。表1から分かるように、最大のピークツーピーク測定プロファイル高さは、最適なシボの最良の特徴であると分かった。表1に示すものを超える値が、得られ用いられ得る。しかしながら、より大きい値は、機械的接着性、衝撃の結果として得られる複合材部品寸法、および歪み耐性を不利に増し得る。
【表1】
【0071】
成形離型フィルム(40)は、成形型(20)の成形面を均一に、そして一様に被覆するために成形型に対してシボ仕上げ成形面(30)を適用した後で、成形型(20)の成形面に適用することが可能である。成形離型フィルム(40)は、成形型(20)の成形面に対する表面層ポリマーコーティング(50)の適切な離型可能な接着をさらに提供する。成形離型フィルム(40)は、それが、成形離型製造業者によって推奨されるそれを被覆する限り、成形型(20)のシボ仕上げ成形面(30)を部分的に被覆するだけであり得る。
【0072】
成形離型フィルム(40)は、成形型(20)のシボ仕上げ成形面(30)と表面層ポリマーコーティング(50)との間の界面として機能する。成形離型フィルム(40)はまた、成形面上の表面層ポリマーコーティング(50)を抑制し、それにより、熱可塑性繊維強化複合材料の適用中に、成形面上の表面層ポリマーコーティングの最適な接着性および後続の離型性を維持するために、化学結合を提供する。成形離型フィルム(40)はまた、いったん結果得られた複合材部品が硬化すると、成形型(20)から表面層ポリマーコーティング(50)を分離するために、それが離型層を提供するように、敷設プロセスからの強烈な熱および条件に耐えるに十分靱性がある。
【0073】
成形離型フィルムは、市販されており、処理後に成形型から離型することが可能であると宣伝されている。適切な市販の成形離型フィルムは、Hysol Frekote 800、AXEL 21RM、AXEL 21LS、およびAXEL W−4005を含む。離型剤は、好ましくは、製造業者の仕様に従って適用され、適合された高温AXEL W−4005である。
【0074】
成形型(20)は、成形離型フィルム(40)と一緒に、次に、加熱して、供給者によって推奨されるように「味付けする」ことが可能である。
【0075】
シーラーは、表面層ポリマーコーティング(50)の離型可能な接着性をさらに増し、結果として得られる複合材部品の成形面からの離型を許容するために、成形離型フィルム(40)の適用に先立って、成形型製造業者によって推奨されるように成形型(20)に成形面に、オプションとして適用することが可能である。
【0076】
繊維強化複合材料(60)は、適切な高性能熱可塑性ポリマーマトリックス樹脂を事前含浸させた構造強化繊維材料である。これらは、一般に、テープ、織布、不織布、紙、およびこれらの混合物として分類される。
【0077】
繊維強化用の適切な構造強化繊維は、炭素繊維、Kevlar(登録商標)繊維、ガラ
ス繊維、アラミド繊維、およびこれらの混合物などの市販の構造繊維のうちの任意のものを含む。好ましい実施形態では、繊維状構造強化繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)ベースの炭素繊維である。
【0078】
繊維状構造強化物は、一方向性テープ(単一テープ)織布、不織布マットもしくはベイル、繊維トウ、または繊維材料として構成することが可能である。テーププレプレグは、一般に、条片材料の1つの軸に沿って延在する一方向性構造強化繊維のことである。テーププレプレグは、一般に、ATL敷設応用分野で用いられる。「布」という用語は、一般に、条片材料内の少なくとも2つの異なる軸に沿って敷設された構造強化繊維のことである。布は、それぞれ2、3、または4の異なる軸上で延在する繊維を示す2軸、3軸、または4軸のそれとして市販されている。繊維は、オプションとして、互いに織られ得るし、または不織布として製造され得る。布プレプレグ材料は、一般に、手動敷設応用分野で用いられる。
【0079】
繊維強化複合材料(60)は、当業者には周知の任意の製造/含浸方法を介して少なくとも1つの高性能熱可塑性ポリマーを含浸させた、本明細書に記載する繊維状構造強化繊維のうちの任意のものを含む。適切な含浸方法が当業者には周知であり、例えばそして制限なく、熱融解含浸、水性スラリー含浸、粉末コーティング、押し出しフィルムラミネート化、およびこれらの組み合わせを含む。
【0080】
繊維強化熱可塑性複合材料(60)用のマトリックス樹脂としての表面層コーティング(50)および高性能熱可塑性ポリマー用の高性能熱可塑性ポリマーは、同一もしくは異なる材料またはこれらの組み合わせであり得る。
【0081】
「高性能ポリマー」という用語は、280℃以上の融解温度(Tm)および310℃以上のプロセス温度(Tprocess)を有する任意の熱可塑性ポリマーのことを意味する。ある実施形態では、より高性能のポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、PAEKブレンド、ポリイミド、およびポリフェニレンスルフィド(PPS)から選定される。
【0082】
ある実施形態では、PAEKは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、およびポリエーテルケトンケトンエーテルケトン(PEKKEK)から選定される。さらに別の実施形態では、高性能ポリマーは、1つ以上のポリアリールエーテルケトン中に混合されたポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルフィド、および/またはポリエーテルスルフォンを有するPAEKブレンドである。
【0083】
ポリアリールエーテルケトンは、当業者には公知であり、それに限られないが、CytecIndustries Inc.、ニュージャージー州Woodland Parkから全て市販されているAPC−2(登録商標)PEEK、CYPEK(登録商標)−FC、および/またはCYPEK(登録商標)−HTを含む。
【0084】
繊維強化複合材料(60)中の高性能熱可塑性ポリマー樹脂の樹脂含有量は、全体の約26重量%〜約90重量%の範囲にあり、それにより、G
1cで測定したとき、500ksi以上の樹脂係数および600J/m
2以上の層間破壊靱性を持つ複合材料(60)を提供する。高性能ポリマーの粘性は、良好なフィラメントのウエットアウトが得られるように調整される。究極的には、繊維強化複合材料の高性能ポリマーは、ポリマーマトリックスの一部として作用し、材料が接触したときに、表面層ポリマーコーティング(50)とのポリマーブレンドを形成する。本明細書で用いられる「ポリマーブレンド」という用語は、混和性および/またはコンパティブルなポリマーブレンドを含むが、それは、本発
明が係る当業者には周知であり理解されるからである。
【0085】
本発明によって形成された結果として得られる熱可塑性複合材部品は、これに限られないが、補強された翼および胴体の外皮の原位置熱可塑性テープ/トウ配置、補強材製造用の連続加圧成形(CCM)およびロール形成プロセス、固結した平坦パネルおよび航空機床パネルを作るダブルベルトプレス機、原位置フィラメント巻き円筒構造、ならびに複合材アセンブリの溶着結合および溶接を含む急速ラミネート化プロセスおよび形成プロセスを用いて形成される様々な物品であり得る。
【0086】
次の例は、当業者が、本発明のある実施形態をさらに理解するために提供される。これらの例は、図解目的であり、本発明の様々な実施形態の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
例1―金型に適用される溶媒ベースのPEIポリマー溶射された溶液
【0087】
PEIポリマーの配合組成物、すなわち、10%でのGE Utem 1000Pと90%でのDioxilaneとが、離型フィルムを有した鋼成形型の成形面上にHVLPアプリケータを用いてプラズマ溶射された。
【0088】
PEI/Dioxilaneの第1のプライの敷設繊維強化熱可塑性の複合材の転移を試験するために、8プライの疑似等方性パネルが、APC PEKK/AS−4の単一テープ材料を用いて作製された。このパネルは、720°F(382℃)のオートクレーブ温度およびN
2の100psiで羊膜プレートで処理された。パネルは、コーティングされた面上にいくぶんかの表面異常を示した。
例2―金型に手動適用された水ベースのスラリー
【0089】
直接手動適用技法が、次の表面活性剤、水、ハイドロサイズ(サイズ剤)、および熱可塑性物質を用いて試行された:1)サイズ剤90%/PEKK10%。2)D.I水80%/界面活性剤10%/PEI−Diox。事前混合容積10%。3)D.O水80%/界面活性剤10%/PEKK10%。4)サイズ剤80%/PEI粉末10%/界面活性剤10%)。結果得られた水ベーススラリー熱可塑性表面層ポリマーコーティングは、成形型の成形面上で急速に収縮して、金属成形型上への適切な結合を達成しなかった。表面層ポリマーコーティングは、最小の摩擦で非常に容易に剥離した。
例3―成形型にプラズマ溶射されたPEKポリマー
【0090】
シーラーおよび離型フィルムを適用された成形型の成形面上にコーティングを直接に付与するために、プラズマ溶射コーティングがPraxair SG100プラズマガンを用いて実施され、PEKポリマーをジェット流中に導入して、材料を加熱して高速に加速した。最初は、多分成形型と成形型の平滑な成形面上の熱可塑性表面層ポリマーコーティングのCTE(熱膨張係数)の差によって引き起こされて、金型が室温まで冷却したときに、密封された/離型された金型とPEKポリマーとの間に接着性を維持するのが困難であった。外皮コーティングが、金型(Hysol(登録商標)Frekote(登録商標)のGPシーラー剤および離型剤Frekote(登録商標)800)から離型されたようであった。
例4―成形型のシボ仕上げ成形面上へプラズマ溶射されたPEKポリマー
【0091】
プラズマPEKポリマー溶射の接着性を向上させるために、後続のパネルが、120の粒度の酸化アルミを用いて砂吹きされ、Frekote(登録商標)800で離型コーティングされた。遥かに良好なコーティング適用が達成された。
【0092】
PEKプラズマ溶射されたコーティングがラミネートにどのように転移したかを試験す
るため、8プライの疑似等方性パネルが、APC PEKK/AS−4の単一テープ材料を用いて作製された。パネルは、720°F(382℃)のオートクレーブ温度およびN
2の100psiで、羊膜プレートで処理された。
【0093】
結果得られたパネルは、幾分かの不均一な表面シボおよび表面層ポリマーコーティング厚さを示した。表面コーティングの一部の領域は、結果得られた熱可塑性繊維強化複合材部分からこすり落とされ得た。成形型の成形面は、オートクレーブサイクル後では清浄であって、成形離型が効果的であることを示した。
例5―プレプレグ上へのプラズマPEKポリマー溶射されたコーティング
【0094】
添加材料への経路を熱可塑性材料の外側に提供するために、APC単一テープサンプルにプラズマ溶射もまた実行された。2つのコーティングされた分銅が、プロセス制御を試験するために置かれた。テープの1つの側面のみがコーティングされた。横断方向の樹脂収縮およびテープのしわ寄せが、認められた。
【0095】
このプロセスの固有の能力は、セラミック、金属、および他の手段で生成するのは困難であり得るポリマーブレンドを含む材料の組み合わせなどの恩典ある用途を提供する。金属合金コーティングは、落雷およびエッジグローの軽減のために向上した導電性を提供し得る。
例6
【0096】
熱可塑性複合材部分は、高温で処理され、安定した金型材料を必要とする。PEKK−FC単一テープパネルのための処理サイクルは、ステンレス合金金型を必要とする730°F(388℃)を超える。この一連の実験のため、金型は、0.120インチ厚304の鋼板であった。
【0097】
複数の表面仕上げが、実験中に試行された。デフォルトの平滑パネルは、120の粒度のサンドペーパーで擦られた0.125インチ厚のステンレス鋼板であった。用いられたシボ仕上げ表面処理は、120の粒度の酸化アルミおよび40〜60の粒度のガラスビーズ吹きを含んでいた。これらの表面は、離型コーティングされた材料への第1のプライのコーティングの機械的拘束を増した。表面はまた、金型の接着性に対する樹脂収縮の影響を軽減する厚い領域および薄い領域を作製することによって樹脂フィルムを破壊するものと信じられている。ガラスビーズ吹きされた金型は、プラズマ溶射が薦められるが、未だ試行されていない。シボの恩典は、それが処理中にコーティングの保持を支援することである。
【0098】
Zyvax Sealer GPが、ステンレスプレートを密閉するために最初に用いられた。これは、Frekote(登録商標)800と相互作用して、例外的に容易に離型する表面を生成することが分かった。これが、金型上のコーティングが早期スリップを引き起こす。これが発見された後で、シーラーが、全ての表面から機械的に除去されて中止された。
【0099】
評価された最初の成形離型は、Hysol(登録商標)Frekote(登録商標)800であった。この溶媒ベースのシステムは、400℃を超える処理温度では離型を提供することが周知である。離型は、ステンレス鋼表面上に拭い落とされて空気乾燥され、次に、金型は、熱可塑性物質をプラズマ溶射された。初期コーティングは、PEI/dioxilane溶射を用いたが、最小の摩擦で金型から剥離する傾向を示した。Kant−Stik Cure−Fast成形離型が、次に試行されたが、これまた容易に離型する表面を有することが分かった。この離型は、750°F(399℃)を超えて処理するのは困難であることが証明された。
【0100】
AXEL 21RM離型が、次に、シーラーなしで用いられ、前の表面よりも「よりタイトな」表面を有するようであった。それは溶媒ベースのシステムであった。Axel 21RMは、この応用分野にとって好ましい利用可能な離型である。それは、シーラーなしで、あまり滑りやすくならない良好な表面接着性を提供する効果がある。水ベースのバージョンであるW4005もまた、AXEL 21RMと比較するように試行されたが、金型の指による摩擦後で明瞭となった離型の小さい「マーブル」での摩擦に敏感であることが分かった。
【0101】
離型製造業者の推薦と調和して、金型は、離型を金型上に味付けするために、使用温度(735°F、391℃)に加熱された。金型を味付けすることは、離型を、使用されるようになる前に、金型上で硬化することを許容する。このステップは、PEI/dioxilane溶液を用いる第1のプライの敷設からの溶媒が成形離型フィルムを持ち上げることを防止するために含まれた。
例7
【0102】
コーティングを離型コーティングされた金型上に付与するために、プラズマ溶射コーティングが、プラズマガンを用いて実施され、PEKポリマーをジェット流中に導入して、材料を加熱して高速に加速した。PEKポリマーは、流動床フィーダーシステムを用いてプラズマガンに供給される。
【0103】
今回、金型は、金型の表面へのポリマーの接着を支援するために、250°F(121℃)に事前加熱された。Praxair SG100プラズマガンを用いて、約2ミルのPEKポリマーを金型上に堆積した。これは一時的に粉末を金型上に堆積させる。粉末コーティングを持つステンレス鋼金型は、次に、750°F(399℃)で電炉で処理されて、ポリマーを融解して、融解ポリマー層を作製した。
【0104】
プラズマ溶射の接着性を向上させるため、後続のパネルが、120の粒度の酸化アルミを用いて砂吹きされ、Hysol(登録商標)Frekote(登録商標)800で離型コーティングされた。テープのピクチャフレームが、金型上に配置されて、粗い中心パネルおよび平滑な周辺を作製した。このピクチャフレームは、第1のプライの敷設材料に対する表面粗さ遷移効果を示すことが意図された。これもまた、金型過剰溶射を覆い隠す平坦な領域を提供する。
【0105】
PEKプラズマ溶射されたコーティングがどのようにラミネートに転移したかを試験するため、8プライの疑似等方性パネルが、APC PEKK/AS−4の単一テープ材料を用いて作製された。パネルは、720°F(382℃)のオートクレーブ温度およびN
2の100psiで羊膜プレートで処理された。パネルは、幾分かの不均一なシボおよびコーティング厚さを示した。コーティングされた金型表面は、オートクレーブサイクル後では清浄であり、成形離型が効果的であることを示した。
【0106】
2層または3層の原位置熱可塑性テープを用いるフィルムラミネート化:小型プレス機を、290℃と410℃との間で加熱した。Kaptonフィルムに、離型剤をコーティングし、プレス機は所望の温度にあって、2層または3層の構成が、離型剤コーティングされたKaptonフィルムの2つの条片間に挟持され、それにより敷設物を形成する。敷設物は、熱電対と共に、プレス機の2つの3インチ×3インチのステンレス鋼羊膜プレート間に配置される。積層物は、プレス機中に挿入され、1,000ポンドの圧力が印加されて、10〜30秒間にわたって維持される。この圧力および頂部プレートが次に、開放され、積層物が除去されて、冷間プレス機の下で冷却される(1分にわたって1000ポンド)。
【0107】
上記の説明および例に鑑み、当業者は、不要な実験なしで、請求される本開示を実行することが可能であろう。
【0108】
前記の説明は、本教示の基本的で新規な特徴を示し、説明し、指摘したが、図示するような装置の詳細という形態で様々な省略、置換、および変更ならびにそれらの使用は、本教示の範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。結果として、本教示の範囲は、前述の検討に制限されるべきではなく、添付のクレームによって定義されるべきである。