(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベータに設置された地震感知器からの地震の検知信号と前記地震感知器の固有の情報とから、地震発生時における所定の領域の地震検知の分布図を作成するエレベータ地震検知分布図生成手段と、
前記所定の領域における地震の強度情報に基づいて、地震発生時における当該所定の領域の地震強度の分布図を作成する地震強度分布図生成手段と、
前記エレベータ地震検知分布図生成手段にて作成された地震検知の分布図と前記地震強度分布図生成手段にて作成された地震強度の分布図とを蓄積する記憶部と、
地震発生時における地震検知の分布図と前記記憶部に蓄積された過去の地震検知の分布図との近似度を計算して、近似する過去の地震検知の分布図を選定する近似度算出手段と、
前記近似度算出手段により選定された地震検知の分布図と地震発生時における地震検知の分布図との差分を抽出する差分抽出手段と、
前記差分抽出手段により抽出された差分について、地震発生時における地震強度の分布図と前記選定された地震検知の分布図に対応する過去の地震強度の分布図とを比較する地震強度比較手段と、
前記差分抽出手段に基づく抽出結果と前記地震強度比較手段に基づく比較結果とを表示する表示部と、
を具備したエレベータ管理装置。
前記判定手段にて地震感知器が故障と判定された場合に、前記選定された地震検知の分布図または対応する過去の地震強度の分布図に基づいて、当該地震感知器を設置したエレベータ制御装置に地震管制指令を出力する地震管制指令出力部を更に有する、
請求項2に記載のエレベータ管理装置。
前記津波退避指令出力部は、津波が到達するまでの到達時間を予測した、津波到達予測情報を取得し、前記到達時間が所定の時間以内になった場合に前記津波退避指令を前記津波の警戒エリアに出力する、請求項5に記載のエレベータ管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、エレベータ管理装置およびエレベータ管理システムの実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態のエレベータ管理装置100およびエレベータ管理システム200のブロック図である。エレベータ管理装置100は
図1の一点鎖線にて囲まれた範囲であり、エレベータの状態を監視する装置である。エレベータ管理装置100は通常、監視センタに配置されている。
【0011】
エレベータは、当該エレベータの乗りかごを制御するエレベータ制御装置1を有している。エレベータ制御装置1は地震感知器2と通信機器3と接続されている。地震感知器2はエレベータの昇降路内や機械室などに配置されており、地震を検知するとエレベータ制御装置1に地震の検知情報を送信する。通信機器3はエレベータ管理装置100と通信網4を介して接続されている。通信機器3はエレベータ制御装置1が地震感知器2から受信した地震の検知情報(エレベータ地震検知情報5)を、通信網4にてエレベータ管理装置100に送信する。通信網4は一例として電話回線などがある。ただし通信網4は電話回線に限定はされず、例えば無線通信を用いてもよい。
【0012】
エレベータ管理装置100は記憶部7と、エレベータ地震検知分布図生成手段8と、地震強度分布図生成手段11と、近似度算出手段13と、差分抽出手段14と、地震強度比較手段15と、表示部16と、を有している。エレベータ地震検知分布図生成手段8と地震強度分布図生成手段11と近似度算出手段13と差分抽出手段14と地震強度比較手段15とはコンピュータの中央演算装置(CPU)内に構成されていてもよく、また、それぞれ個々の回路にて構成されていてもよい。
【0013】
記憶部7はエレベータ情報6を記憶している。エレベータ情報6は地震感知器2が設置された位置の情報(設置位置情報)や、地震感知器2が設置された建物の情報および地震感知器2の型式などの情報(地震感知器情報)であり、地震感知器2の固有の情報である。
【0014】
更に記憶部7は後述のエレベータ地震検知分布図生成手段8にて作成された地震検知分布図(9B、9C…)と、地震強度分布図生成手段11にて作成された地震強度分布図(12B、12C…)とを蓄積している。ここで、記憶部7はHDDなどの磁気ディスクや、メモリ装置などである。ただし、本実施形態および以下の実施形態において、記憶部7は磁気ディスクやメモリ装置に限定はされない。
【0015】
エレベータ地震検知分布図生成手段8はエレベータに設置された地震感知器2からの地震の検知信号(エレベータ地震検知情報5)と地震感知器2の固有の情報(エレベータ情報6)とから、地震発生時における所定の領域のエレベータ地震検知分布
図9Aを作成する回路である。
【0016】
地震強度分布図生成手段11は、地震感知器2が配置された所定の領域における地震の地震強度情報10に基づいて、地震発生時における当該所定の領域の地震強度分布図を作成する回路である。地震強度情報10は気象庁などのエレベータ管理装置100の外部から発令される各地の地震の強度の情報であり、例えば震度情報などである。
【0017】
近似度算出手段13は、地震発生時におけるエレベータ地震検知分布
図9Aと記憶部7に蓄積された過去の地震検知分布図(9B、9C…)との近似の度合い(近似度)を計算して、近似する過去の地震検知分布図を選定する回路である。
【0018】
差分抽出手段14は、近似度算出手段13により選定されたエレベータ地震検知分布図(9Xとする)と地震発生時におけるエレベータ地震検知分布
図9Aとの差分を抽出する回路である。
【0019】
地震強度比較手段15は、差分抽出手段14により抽出された差分について、地震発生時における地震強度分布
図12Aと、選定されたエレベータ地震検知分布
図9Xに対応する過去の地震強度分布
図12(12Xとする)と、を比較する回路である。
【0020】
表示部16は、差分抽出手段14に基づく抽出結果と地震強度比較手段15に基づく比較結果とを表示する。
【0021】
故障判定手段17は、差分抽出手段14に基づく抽出結果と地震強度比較手段15に基づく比較結果とから、地震感知器2が故障しているか判定をする。判定結果を表示部16に表示させても良い。
【0022】
図2は第1の実施形態であるエレベータ管理システム200の制御の流れ図である。
【0023】
地震検知器は地震が発生したか判定し(ステップS1)、地震が発生したと判定した場合(ステップS1のYES)、エレベータ管理装置100はエレベータ地震検知情報5を取得し(ステップS2)、エレベータ地震検知分布
図9Aを作成する(ステップS3)。
【0024】
本実施形態のエレベータ管理装置100は、エレベータ地震検知分布
図9Aの作成と並行して、地震強度情報10を取得し(ステップS4)、地震強度分布
図12Aを作成する(ステップS5)。
【0025】
本実施形態のエレベータ管理装置100は、エレベータ地震検知分布
図9Aを作成した後、近似度算出手段13にて、記憶部7に記憶されている過去のエレベータ地震検知分布
図9(9B、9C…)と今回作成されたエレベータ地震検知分布
図9Aとを比較し、近似度を算出する(ステップS6)。
【0026】
近似度を算出した後、当該近似度が予め設定した所定の値以上にあるか判定をする(ステップS7)。近似度が所定の値以上にない場合、即ち、今回の地震と似た地震が過去に発生していない場合(ステップS7のNO)、エレベータ管理装置100はフローを終了する。近似度が所定の値以上にある場合(ステップS7のYES)、差分抽出手段14にて、今回のエレベータ地震検知分布
図9Aと過去のエレベータ地震検知分布
図9(9X)との差分を抽出する(ステップS8)。
【0027】
地震強度比較手段15にて、今回の地震強度分布
図12Aと過去の地震強度分布
図12(12X)とを比較し(ステップS9)、表示部16に差分を表示する(ステップS10)。差分の表示は、例えば、差分抽出手段14にて過去に地震を検知していたが、今回は地震を検知していないエリアがある場合、当該エリアについて地震強度を比較する。
【0028】
図3は本実施形態に係るエレベータ地震検知分布および地震強度分布について、今回と過去との比較図である。
図3(a1)は今回のエレベータ地震検知分布
図9Aであり、
図3(a2)は過去のエレベータ地震検知分布図(9B、9C…)の内で近似度の高いもの、エレベータ地震検知分布
図9Xである。
図3(a1)、(a2)は各エレベータの地震感知器2が検出した地震の検出について3段階の検知のレベル(検知なし、低検知、高検知)に分けて分布を表示している。
【0029】
「検知なし」の領域は地震の検知が無かった地震感知器2を表している。「低検知」の領域は低い地震の検知をした地震感知器2を表している。「高検知」の領域は高い地震の検知をした地震感知器2を表している。これらの3段階のレベルはガル(gal)値に応じて分類する。
【0030】
エレベータ地震検知分布
図9Aとエレベータ地震検知分布
図9Xとの近似度の算出(
図2のステップS6)は例えば、検知のレベル(検知なし、低検知、高検知)ごとに差異のあるエリアの個数にて判定する。差異のあるエリアの個数が小さい場合は近似値が高いと判定する。また、各検知レベルについて、図形として比較をして差分が小さい場合は近似値が大きいとしても良い。
【0031】
図3(b1)は今回の地震強度分布
図12Aであり、
図3(b2)はエレベータ地震検知分布
図9Xに対応する、地震強度分布
図12Xである。地震強度分布
図12Xは、過去の地震強度分布
図12(12B、12C…)の内で近似度の高いものである。
【0032】
図3(b1)、(b2)は各エレベータの地震感知器2が検出した地震強度ついて3段階のレベル(Level1.0未満、Level1.0以上3.0未満、Level3.0以上)に分けて分布を表示している。これらの3段階のレベルは震度に応じたレベルである。一例として、Level1.0は震度1、Level3.0は震度3とする。ただし、本実施形態および以下の実施形態においてレベルに応じた震度はこれらの数値には限定はされない。
【0033】
差分抽出手段14は、
図3(a1)今回のエレベータ地震検知分布
図9Aと(a2)近似度の高い過去のエレベータ地震検知分布
図9Xとを比較して差異のある領域(破線で囲まれた領域D1、D2、D3)を抽出する。
【0034】
地震強度比較手段15は領域D1、D2、D3のそれぞれについて、(b1)今回の地震強度分布
図12Aと(b2)過去の地震強度分布
図12Xとを比較する。領域とは過去に地震の揺れを検知したが、今回は地震の揺れの検知をしていない(「検知なし」)領域とする。
【0035】
故障判定手段17による故障の判定において、領域D1は地震強度分布
図12A、12Xより、Level1.0未満の領域と、Level1.0以上、Level3.0未満の領域との境界に位置するため、領域D1の地震感知器2は地震の揺れが無かったため、検知をしていない可能性がある。即ち、領域D1の地震感知器2は故障している可能性が低い。
【0036】
領域D2は地震強度分布
図12A、12XよりLevel1.0以上、Level3.0未満の領域に位置し、領域D1のように境界には位置していない。この場合、領域D2の地震感知器2は故障により地震の揺れを検知していない可能性がある。ただし、耐震構造または免震構造の建物に地震感知器2を設置した場合、地震の検知を検出するガル(gal)値は低く検出することがある。このため、領域D2の地震感知器2は故障していない可能性がある。即ち、領域D2の地震感知器2は故障している可能性が低いものの、領域D1よりは可能性が高い。
【0037】
領域D3は地震強度分布
図12A、12XよりLevel3.0以上の領域に位置している。この場合、領域D3の地震感知器2は、耐震構造または免震構造の建物に地震感知器2が設置されたことによる揺れの非検知よりも、故障により地震の揺れを検知していない可能性が高い。即ち、領域D3の地震感知器2は故障している可能性が領域D2よりも高い。
【0038】
本実施形態では表示部16にてエレベータ地震検知分布
図9Aと9Xとを表示し、更に地震強度分布
図12Aと12Xとを対比して表示することができる。また、エレベータ地震検知分布
図9Aと9Xとの差分であるD1〜D3の点線を表示することができる。なお、D1〜D3の点線表記については
図3に限定はされず、地震感知器2の故障の可能性に分けて表示の方法に差異を持たせてもよい。例えば、地震感知器2の故障の可能性が高いD3は点線表記を濃くしたり、色付けしたりしても良く、故障の可能性が低いD1は点線の表記を無くしてもよい。
【0039】
これにより、本実施形態のエレベータ管理装置は、エレベータ地震検知分布
図9と地震強度分布
図12の今回と過去との対比により、地震感知器2の故障の可能性の高低を知ることができる。更に、地震感知器2の故障の可能性の高いものから優先的に保守点検作業をすることができる。
【0040】
なお、本実施形態および以下の実施形態において、3段階によるエレベータ地震検知分布
図9および地震強度分布
図12の表示は一例であり、段階の数および表示方法はこれに限定はされない。
【0041】
以上により、本実施形態のエレベータ管理装置は、地震発生時における地震感知器の故障に伴う二次災害を防止することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のエレベータ管理装置101は、第1の実施形態のエレベータ管理装置100に地震管制指令を出力する地震管制指令出力部18を更に有したものである。
図4は本実施形態であるエレベータ管理装置101およびエレベータ管理システム201のブロック図であり、地震管制指令出力部18が故障判定手段17の結果を受信するように配置されている。
【0043】
故障判定手段17は近似度算出手段13、差分抽出手段14および地震強度比較手段15の結果より、エレベータ地震検知分布
図9Aと9Xとの領域(D1〜D3)について、今回の地震の検知のレベル(エレベータ地震検知分布
図9A)は過去の地震の検知のレベル(エレベータ地震検知分布
図9X)と同じレベルと推察する。
【0044】
地震管制指令出力部18は、故障判定手段17の推察結果から、地震検知のレベルに応じて、過去に類似する地震により地震の揺れを検知していたが、今回発生した地震では地震の揺れを検知していない領域のエレベータに地震管制指令を、通信網4を介して送信する回路である。
【0045】
地震管制指令は、地震感知器2により揺れを検知したエレベータを制御する専用の信号である。地震管制指令出力部18は、低検知を検出したエレベータを最寄階まで乗りかごを移動させて乗客を乗りかごから避難させた後に、運転を停止させる信号を送信する。地震管制指令出力部18は、高検知を検出したエレベータを緊急停止させて、最寄階までの運転も行わない信号を送信する。例えば、
図3の領域D2には最寄階まで運転させて停止する信号を送信し、領域D3には緊急停止の信号を送信する。
【0046】
図5は第2の実施形態であるエレベータ管理システム201の制御の流れ図である。本実施形態は第1の実施形態から更に、今回の地震強度分布
図12Aと過去の地震強度分布
図12Xとの比較をし(ステップS9)、差分を表示部16に表示(ステップS10)した後に、地震感知器2の故障を判定して地震管制指令出力部18より地震管制指令を出力する(ステップS21)。
【0047】
これにより、本実施形態のエレベータ管理装置は、エレベータ地震検知分布
図9と地震強度分布
図12の今回と過去との対比により、地震感知器2の判定をすることができ、更に地震管制指令を過去の検知のレベルに応じて送信することができる。
【0048】
以上により、本実施形態のエレベータ管理装置は、地震発生時における地震感知器の故障に伴う二次災害を防止することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のエレベータ管理装置102は、第2の実施形態のエレベータ管理装置101に、領域(D1〜D3)の地震検知レベルの算出について、当該領域の周囲の領域から検知レベルを算出する機能を有している。本実施形態のエレベータ管理装置102およびエレベータ管理システム202のブロック図は
図4と同様である。
【0050】
図6は第3の実施形態であるエレベータ管理システム202の制御の流れ図である。本実施形態は第2の実施形態から更に、今回の地震強度分布
図12Aと過去の地震強度分布
図12Xとの比較をし(ステップS9)、差分を表示部16に表示(ステップS10)した後に、検知レベルの境界近傍の地震検知率を算出し、所定の値以上か判定する(ステップS31)。所定の値以上の場合(ステップS31のYES)、当該領域の地震感知器2は故障していると判定し、地震管制指令出力部18より地震管制指令を出力する(ステップS21)。所定の値未満の場合(ステップS31のNO)、当該領域の地震感知器2は故障していないと判定し、地震管制指令は出力しない。
【0051】
図7は本実施形態に係るエレベータ地震検知分布における、地震検知率の算出方法の図である。
図7(a1)は今回のエレベータ地震検知分布
図9Aであり、
図7(a2)は過去のエレベータ地震検知分布
図9Xの内で近似度の高いものである。領域D1は今回のエレベータ地震検知分布では「検知なし」であり、過去のエレベータ地震検知分布
図9Xでは「低検知」である。本実施形態では領域D1の地震感知器2の故障の判定について、領域D1の周囲の領域(点線で囲まれた領域)を元に判定する。
【0052】
本実施形態ではD1の周りの領域の内、「検知なし」の領域は5領域であり、「低検知」の領域は3領域である。この時の領域D1における地震検知率は周囲8領域における「低検知」の領域の割合、即ち3/8(地震検出率37.5%)である。
【0053】
図7において、所定の値を4/8(地震検出率50%)とすると、D1は所定の値未満のため、本実施形態のエレベータ管理装置102はD1の地震感知器は故障しておらず、D1の領域は「検知なし」と判定する。なお、所定の値について、本実施形態では50%としたが、これに限定はされない。
【0054】
本実施形態では「検知なし」と「低検知」との境界の他、「低検知」と「高検知」との境界について同様に故障の判定を行ってもよい。この場合、周囲の領域の内、「高検知」が多ければ、当該領域を「高検知」とし、「低検知」が多ければ当該領域を「低検知」とする。
【0055】
これにより、本実施形態のエレベータ管理装置は、エレベータ地震検知分布
図9と地震強度分布
図12の今回と過去との対比により、地震感知器2の故障の判定をすることができ、更に地震管制指令を過去の検知のレベルに応じて送信することができる。
【0056】
以上により、本実施形態のエレベータ管理装置は、地震発生時における地震感知器の故障に伴う二次災害を防止することができる。
【0057】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のエレベータ管理装置103は第1の実施形態乃至第3の実施形態のエレベータ管理装置(100〜102)に、更に、津波情報20を含めた分布図を作成する。
図8は本実施形態のエレベータ管理装置103およびエレベータ管理システム203のブロック図である。
図8は第3の実施形態に津波情報20を含めた分布図を作成する機能を関連付けしたものである。
【0058】
記憶部7は後述の第2の地震強度分布
図19(19B、19C…)を蓄積している。
【0059】
エレベータ管理装置103は地震強度分布図生成手段11にて生成された地震強度分布
図12A(第1の地震強度分布図)に津波情報20を関連付けした第2の地震強度分布
図19Aを作成する。
【0060】
第2の地震分布図は津波分布図として地震強度分布
図12A(第1の地震強度分布図)に地震情報20を付与しても良く、また、地震強度分布
図12Aとは別の分布図として作成してもよい。津波情報20とは、気象庁など、エレベータ管理装置103の外部から発令される報知情報(津波警報、津波注意報)などのである。また、過去の津波情報20の場合、津波の発生、浸水を津波情報20とする。
【0061】
地震強度比較手段15は、差分抽出手段14により抽出された差分について、地震発生時における第2の地震強度分布
図19Aと選定されたエレベータ地震検知分布図に対応する過去の第2の地震強度分布
図19(19B、19C…)とを比較する回路である。
【0062】
表示部16は、差分抽出手段14に基づく抽出結果と地震強度比較手段15に基づく比較結果とを表示する。また、津波情報20について表示をしても良い。
【0063】
津波退避指令出力部21は、津波が発生する可能性がある場合に、各エレベータに津波退避指令を、通信網4を介して送信する回路である。
【0064】
津波退避指令は、過去に津波が発生した場合、又は、津波警報もしくは津波注意報等の報知情報が発令された場合に、エレベータの乗りかごをエレベータの最上階に退避させて、浸水を防止する信号である。
【0065】
図9は本実施形態であるエレベータ管理システム203の制御の流れ図である。本実施形態は、第3の実施形態から更に、地震管制指令出力部18より地震管制指令を出力(ステップS21)した後に、エレベータ管理装置103は過去に地震により津波が発生したかを判定する(ステップS41)。近似度の高い地震強度分布
図19(以下、19Xとする)の地震発生時に津波が発生している場合(ステップS41のYES)、過去に津波が発生した地域に津波退避指令出力部21は津波退避指令を出力する。地震強度分布
図19Xにおいて、津波が不発生の場合(ステップS41のNO)は、津波退避指令を出力しない。
【0066】
図10は本実施形態に係る津波情報20を関連付けした地震強度分布
図19の図である。
図10(c1)は今回の地震強度分布
図12Aに津波情報20(報知情報)を付与した第2の地震強度分布
図19Aである。
図10(c2)は地震強度分布
図12Xに津波情報20(過去の津波の発生、浸水情報)を関連付けした第2の地震強度分布
図19Xである。津波情報は(c1)の場合、「0」は報知情報なし、「1」は報知情報あり(津波警報、津波注意報)である。津波情報は(c2)の場合、「0」は過去に津波による浸水が無い場合、「1」は浸水があった場合である。
【0067】
本実施形態では過去に近似する地震の第2の地震強度分布
図19Xにて津波による浸水が発生している場合は、過去に浸水した領域(津波警戒エリア、「1」に対応する領域)のエレベータはすべて地震退避指令を受信する。地震感知器2が揺れを検知している領域(「高検知」「低検知」)、検知していない領域(D3)を区別することなく、全て地震退避運転を行う。
【0068】
本実施形態において、過去に地震による浸水が発生していない場合であっても、気象庁より報知情報(津波警報もしくは津波注意報)が発令している場合は、
図10(c1)の「0」の領域であっても、当該領域に津波退避指令を出力しても良い。この場合、「0」から「1」に変更する。
【0069】
なお、
図8〜
図10は第3の実施形態に津波退避指令出力部21を設けた構造について詳述したが、第1の実施形態および第2の実施形態に津波退避指令出力部21を設けてもよい。
【0070】
以上により、本実施形態のエレベータ管理装置は、地震感知器の故障を判定し、更に、津波による被害(浸水、冠水)を防止することができる。
【0071】
(第5の実施形態)
図11は第5の実施形態であるエレベータ管理装置104およびエレベータ管理システム204のブロック図である。本実施形態のエレベータ管理装置104は第4の実施形態から更に、津波到達予測情報22を受信する。津波到達予測情報22は津波警戒エリア(
図10の「1」の領域)に津波が到達するまでの到達時間の予測である。例えば、あと10分で津波が到達する旨の情報等である。
【0072】
本実施形態のエレベータ管理装置104は地震が発生し、津波到達予測情報22を受信すると、津波が到達する予測の時間が所定の時間以内となった場合、津波警戒エリアに対して、津波退避指令を出力する。例えば、津波到達予測時間が10分であり、所定の時間が6分であるとした場合、津波到達予測情報22を受信してから4分後、即ち、残り時間が6分以下となった場合に、津波退避指令を出力する。なお、津波到達予測情報22は気象庁などから受信する。津波到達予測情報22が更新されれば、都度出力をしても良い。
【0073】
図12は本実施形態であるエレベータ管理システム204の制御の流れ図である。本実施形態では、過去に津波が発生したかの判定し、津波が発生していた場合(ステップS41のYES)、津波到達時刻まで所定の時間に達したか判定(ステップS51)を行う。所定の時間にない場合(ステップS51のNO)、所定の時間以内になるまでエレベータの乗りかごを待機させ、利用者を非難させる。所定の時間以内になった場合(ステップS51のYES)、津波退避指令出力部21は、津波退避命令を津波警戒エリアのエレベータに出力し、乗りかごを最上階に移動させる。これにより乗りかごの浸水、冠水を防止する。
【0074】
なお、エレベータ管理装置104は津波到達予測情報22を津波退避指令と合わせて、津波警戒エリアのエレベータに出力しても良い。これにより利用者に津波到達までの予測時間を告知し、避難を促すことが可能である。
【0075】
以上により、本実施形態のエレベータ管理装置は、地震感知器の故障を判定し、更に、津波による被害(浸水、冠水)を防止することができる。更にエレベータの利用者に避難を促すことが可能となる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
エレベータ管理装置は、地震検知の分布図を作成するエレベータ地震検知分布図生成手段と、地震強度の分布図を作成する地震強度分布図生成手段と、地震検知の分布図と地震強度の分布図とを蓄積する記憶部と、地震発生時における地震検知の分布図と記憶部に蓄積された過去の地震検知の分布図との近似度を計算して、近似する過去の地震検知の分布図を選定する近似度算出手段と、選定された地震検知の分布図と地震発生時における地震検知の分布図との差分を抽出する差分抽出手段と、抽出された差分について、地震発生時における地震強度の分布図と選定された地震検知の分布図に対応する過去の地震強度の分布図とを比較する地震強度比較手段と、抽出結果と比較結果とを表示する表示部と、を具備する。