特許第6387199号(P6387199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6387199
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】硬質表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/02 20060101AFI20180827BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20180827BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180827BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180827BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09D133/02
   C09D125/08
   C09D133/26
   C09D7/47
   C09D5/16
   C09K3/00 R
   C11D3/37
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-11859(P2018-11859)
(22)【出願日】2018年1月26日
【審査請求日】2018年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓也
(72)【発明者】
【氏名】城籔 将虎
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−060784(JP,A)
【文献】 特表2007−517927(JP,A)
【文献】 特表2004−503370(JP,A)
【文献】 特表2001−515134(JP,A)
【文献】 特開2016−172814(JP,A)
【文献】 特開2011−219652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜201/10
C09K3/00,3/18
C11D1/00〜17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)と(メタ)アクリル酸塩(a2)との共重合体(A)、および、スルホン酸塩を有する繰り返し単位を含む重合体(B)、を含み、前記重合体(B)が、スチレンスルホン酸塩系重合体および(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸塩系重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、硬質表面処理剤。
【請求項2】
前記重合体(B)に対する前記共重合体(A)の質量比が、(A)/(B)=0.05〜10である、請求項1に記載の硬質表面処理剤。
【請求項3】
さらに界面活性剤(C)を含む、請求項1または2に記載の硬質表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、陶器や磁器、ガラスなどの硬質表面に防汚性を付与するための硬質表面処理剤として、親水性ポリマーを含む処理液が用いられている。例えば、特許文献1には、ベタイン基を有する特定の構成単位とカチオン基を有する特定の構成単位を含む共重合体を含有する表面処理剤が提案されている。
【0003】
しかしながら、一般に親水性ポリマーは水とともに流れ落ちやすく、そのため防汚性が低下しやすい、即ち防汚耐久性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−190381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、防汚耐久性に優れる硬質表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る硬質表面処理剤は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)と(メタ)アクリル酸塩(a2)との共重合体(A)、および、スルホン酸塩を有する繰り返し単位を含む重合体(B)、を含み、前記重合体(B)が、スチレンスルホン酸塩系重合体および(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸塩系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であるものである。
【発明の効果】
【0007】
上記硬質表面処理剤であると、硬質表面に付着しやすく、形成された塗膜により硬質表面に防汚性を付与することができる。また、該塗膜は水ですすいでも流れ落ちにくく、そのため防汚耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る硬質表面処理剤は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)と(メタ)アクリル酸塩(a2)との共重合体(A)、および、スルホン酸塩を有する繰り返し単位を含む重合体(B)、を含むものであり、硬質表面に防汚性を付与するために用いられる。共重合体(A)は、(a1)の持つカチオン基により、陶器や磁器、ガラスなどの無機物の硬質表面に付着しやすく、硬質表面に形成された塗膜の耐久性を向上することができると考えられる。また、(a2)の持つアニオン基により親水性の塗膜が形成され、油汚れに対する防汚性を発揮することができ、防汚耐久性に優れると考えられる。また、スルホン酸塩を有する重合体(B)を併用することにより、防汚耐久性を更に向上することができる。
【0009】
[共重合体(A)]
共重合体(A)において、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)としては、ジアリルジメチルアンモニウムハライドでもよく、ジアリルジアルキルアンモニウムクロライドでもよく、具体的にはジアリルジメチルアンモニウムクロライドが好適である。
【0010】
(メタ)アクリル酸塩(a2)とは、アクリル酸塩及び/又はメタクリル酸塩を意味し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。好ましくは、アクリル酸ナトリウムなどのアクリル酸アルカリ金属塩である。
【0011】
一実施形態において、共重合体(A)は、下記式(1)で表される繰り返し単位(a10)と、下記式(2)で表される繰り返し単位(a20)とを含むものであり、(a10)がモノマー(a1)に対応する繰り返し単位であり、(a20)がモノマー(a2)に対応する繰り返し単位である。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、好ましくはメチル基である。Xは、ハロゲン化物イオンを表し、好ましくはClである。式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又はアルカノールアミンのオニウムイオンを表し、好ましくはNa、Kなどのアルカリ金属イオンである。
【0014】
共重合体(A)において、(a1)および(a2)の含有率は特に限定されないが、例えば、共重合体(A)を構成する全モノマー中にジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)を30質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。(a1)の含有率を高めることにより、防汚耐久性の向上効果を高めることができる。(a1)の含有率の上限は、例えば、98質量%以下でもよく、95質量%以下でもよく、93質量%以下でもよい。
【0015】
共重合体(A)を構成する全モノマー中における(メタ)アクリル酸塩(a2)の含有率としては、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上でもよく、7質量%以上でもよい。また、その上限は、例えば70質量%以下でもよく、50質量%以下でもよく、30質量%以下でもよく、20質量%以下でもよい。
【0016】
共重合体(A)における(a2)に対する(a1)の質量比(a1)/(a2)は特に限定されないが、例えば0.5以上であることが好ましく、1以上でもよく、2以上でもよく、3以上でもよい。質量比(a1)/(a2)を高くすることにより、防汚耐久性の向上効果を高めることができる。質量比(a1)/(a2)は、また、50以下であることが好ましく、30以下でもよく、20以下でもよく、15以下でもよく、10以下でもよい。
【0017】
共重合体(A)を構成するモノマーは、基本的には(a1)及び(a2)のみであるが、本実施形態による効果を損なわない範囲で、(a1)及び(a2)以外のモノマーを含有してもよい。
【0018】
共重合体(A)の分子量は特に限定されず、例えば重量平均分子量(Mw)が1万〜100万でもよく、10万〜50万でもよい。重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。
【0019】
共重合体(A)はランダム共重合体であることが好ましい。
【0020】
共重合体(A)の合成方法は特に限定されず、公知の重合方法により合成することができ、例えばラジカル重合により合成することができる。なお、(メタ)アクリル酸塩(a2)について、(メタ)アクリル酸の中和は、重合前、重合中、重合後のいずれの段階で行ってもよい。
【0021】
共重合体(A)の含有量は、特に限定されず、硬質表面処理剤の全量に対して、0.01質量%以上でもよく、0.03質量%以上でもよく、0.05質量%以上でもよい。また、3質量%以下でもよく、1質量%以下でもよく、0.7質量%以下でもよく、0.5質量%以下でもよい。
【0022】
[重合体(B)]
重合体(B)は、繰り返し単位にスルホン酸塩を有する親水性のアニオン性ポリマーである(以下、重合体(B)をスルホン酸塩系重合体ということがある。)。重合体(B)は、スルホン酸塩を有する繰り返し単位のみからなる重合体でもよく、当該繰り返し単位とともに他の繰り返し単位を含む共重合体でもよい。なお、スルホン酸塩は−SO(ここで、Mはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又はアルカノールアミンのオニウムイオンを示す。)で表される基であり、スルホン酸ナトリウム塩、スルホン酸カリウム塩などのスルホン酸アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0023】
スルホン酸塩系重合体(B)の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸塩、およびスチレンスルホン酸塩と他のビニルモノマーとの共重合体などのスチレンスルホン酸塩系重合体; ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸塩、および(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸塩と他のビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸塩系重合体; 並びに、ポリビニルスルホン酸塩、およびビニルスルホン酸塩と他のビニルモノマーとの共重合体などのビニルスルホン酸塩系重合体などが挙げられる。これらはいずれか1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記他のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。なお、スルホン酸塩系重合体(B)が共重合体の場合、重合体(B)はスルホン酸塩を有する繰り返し単位を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0024】
スルホン酸塩系重合体(B)の分子量は特に限定されず、例えば重量平均分子量(Mw)が5000〜100万でもよく、1万〜70万でもよい。重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。
【0025】
スルホン酸塩系重合体(B)の含有量は、特に限定されず、硬質表面処理剤の全量に対して、0.01質量%以上でもよく、0.03質量%以上でもよく、0.05質量%以上でもよい。また、3質量%以下でもよく、1質量%以下でもよく、0.7質量%以下でもよく、0.5質量%以下でもよい。
【0026】
硬質表面処理剤におけるスルホン酸塩系重合体(B)に対する共重合体(A)の質量比は、(A)/(B)=0.05〜10であることが好ましく、防汚耐久性の向上効果を高めることができる。質量比(A)/(B)の下限は、より好ましくは0.1以上であり、更に好ましくは0.15以上であり、また上限は、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは6以下である。
【0027】
[界面活性剤(C)]
本実施形態に係る硬質表面処理剤には、共重合体(A)およびスルホン酸塩系重合体(B)とともに界面活性剤(C)が含まれることが好ましい。界面活性剤(C)としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、アルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレート塩、ポリカルボン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホネート塩等が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノアルキルピリジニウム塩、ジアシロキシエチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
両性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウムなどのベタイン型両性界面活性剤; β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤; ラウリルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド型両性界面活性剤などが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
これらの界面活性剤の中でも、非イオン界面活性剤(C1)および両性界面活性剤(C2)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが、防汚耐久性の向上効果を高めることができ、好ましく、より好ましくは両性界面活性剤(C2)を用いることである。なお、アニオン界面活性剤については、硬質表面処理剤に洗浄性を付与する観点から併用してもよい。また、カチオン界面活性剤については、硬質表面処理剤に抗菌性を付与する観点から併用してもよい。
【0033】
界面活性剤(C)の含有量は、特に限定されず、硬質表面処理剤の全量に対して、0.1質量%以上でもよく、0.3質量%以上でもよく、0.5質量%以上でもよい。また、15質量%以下でもよく、10質量%以下でもよく、8質量%以下でもよい。
【0034】
共重合体(A)に対する界面活性剤(C)の含有比は、特に限定されず、例えば、質量比(C)/(A)=0.01〜70であることにより、濡れ性と防汚耐久性をより向上することができ、好ましい。質量比(C)/(A)は、0.1以上でもよく、0.5以上でもよく、1以上でもよく、2以上でもよい。また、質量比(C)/(A)は、50以下でもよく、40以下でもよく、30以下でもよい。
【0035】
[硬質表面処理剤]
本実施形態に係る硬質表面処理剤は、共重合体(A)、スルホン酸塩系重合体(B)、および任意成分である界面活性剤(C)とともに、水を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態に係る硬質表面処理剤は固形状であってもよいが、好ましい一実施形態に係る硬質表面処理剤は、水溶性ポリマーである共重合体(A)とともに、スルホン酸塩系重合体(B)を含む水溶液であり、そのため硬質表面処理液と称することもできる。
【0036】
水の含有量は、硬質表面処理剤の全量に対して、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。水の含有量の上限は、特に限定されず、例えば99.98質量%以下でもよく、99.88質量%以下でもよく、99質量%以下でもよい。水の含有量が80質量%以上であることにより、硬質表面処理剤の粘度を抑えて、噴霧などにより硬質表面に処理する際の取り扱い性を向上することができる。
【0037】
本実施形態に係る硬質表面処理剤には、上記成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で、通常の硬質表面処理剤に配合されている各種添加剤、例えば、キレート剤、有機溶剤、抗菌剤、香料などを配合してもよい。
【0038】
本実施形態に係る硬質表面処理剤は、共重合体(A)、スルホン酸塩系重合体(B)、および必要に応じて界面活性剤(C)、水、およびその他の成分を加えて、公知の方法により攪拌、混合することにより調製することができる。
【0039】
本実施形態に係る硬質表面処理剤は、硬質表面を処理するために用いられる。硬質表面としては、例えば、陶器、磁器、ガラス、琺瑯、タイル、セラミックス、アルミニウム、ステンレスなどの無機物固体表面が挙げられる。好ましい一実施形態として、トイレの便器の表面に防汚性を付与するための表面処理剤として用いてもよく、例えば、便器表面を洗浄するとともに、便器表面に親水性の皮膜を形成して親水化することで防汚性を付与するための表面処理剤として用いてもよい。
【0040】
硬質表面の処理方法としては、特に限定されず、本実施形態に係る硬質表面処理剤を硬質表面に接触させればよい。例えば、硬質表面処理剤を硬質表面に噴霧または塗布する方法が挙げる。また、硬質表面処理剤に硬質表面を浸漬させる方法が挙げられる。
【0041】
硬質表面処理剤を硬質表面に噴霧または塗布する方法において、噴霧または塗布した後に乾燥してもよい。また必要に応じて、噴霧した後、水ですすいでもよく、また噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
【0042】
硬質表面に噴霧または塗布する硬質表面処理剤の量は、特に限定しないが、例えば、硬質表面10cmあたり1〜100mgでもよい。硬質表面に処理する際の硬質表面処理剤の温度は、例えば、5℃以上でもよく、10℃以上でよく、15℃以上でよい。また、50℃以下でもよく、40℃以下でもよく、30℃以下でもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
下記表1に示す配合(質量部)に従い、各原料を混合することにより硬質表面処理剤を得た。表1中の配合は、水以外の成分については固形分としての割合であり、水の配合量については、水以外の成分に含まれる水の量も含めた硬質表面処理剤全体での量である。
【0045】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・(A−1)共重合体1:下記合成例1により得られた共重合体
・(A−2)共重合体2:下記合成例2により得られた共重合体
・(B−1)スルホン酸塩系重合体1:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(商品名:ポリナスPS−5、東ソー有機化学株式会社社製、重量平均分子量=5万)
・(B−2)スルホン酸塩系重合体2:ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸ナトリウム(商品名:アロンA−6012、東亞合成株式会社製、重量平均分子量=1万)
・(C−1)非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:DKSNL−80、第一工業製薬株式会社製)
・(C−2)アニオン界面活性剤:アルキル硫酸ナトリウム(商品名:モノゲンY−500、第一工業製薬株式会社製)
・(C−3)両性界面活性剤:脂肪酸アミドプロピルベタイン(商品名:アモーゲンCB−H、第一工業製薬株式会社製)
・(a−1)ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:シャロールAN−103P、第一工業製薬株式会社製)
・(a−2)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:シャロールDC−902P、第一工業製薬株式会社製)
・(a−3)ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物(商品名:ユニセンスFPV−1000L、センカ株式会社製)。
【0046】
[合成例1]
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド81g、アクリル酸6.9gおよび水50gを混合し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:48質量%)を用いてpH4に調整し、滴下水溶液を得た。また、過硫酸アンモニウム0.02gおよび脱イオン水20gを混合し、過硫酸アンモニウム水溶液を得た。
【0047】
窒素置換した1リットルの反応容器に、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド9g、アクリル酸0.8g、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.15gおよび脱イオン水275gを入れ、均一溶液とし、塩酸(濃度:5質量%)を用いてpH4に調整し、100℃に加熱した。この水溶液に、上記滴下水溶液と上記過硫酸アンモニウム水溶液とを同時に滴下を開始した。なお、滴下水溶液は60分間かけて滴下し、過硫酸アンモニウム水溶液は0.1mL/分の速度で滴下した。すべての滴下が終了してからさらに100℃で30分間反応した後、メタ重亜硫酸ナトリウム2.6mL(濃度:1質量%)を0.3mL/分で滴下し、さらに100℃で30分間反応したあと、25℃に冷却し、脱イオン水を加えて固形分濃度を20質量%にすることにより、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリル酸ナトリウム共重合体の水溶液(濃度:20質量%、全モノマー中の(a1)の割合:90質量%、(a1)/(a2)=9(重量比))を得た。
【0048】
[合成例2]
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド72g、アクリル酸13.8gおよび水50gを混合し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:48質量%)を用いてpH4に調整し、滴下水溶液を得た。また、過硫酸アンモニウム0.02gおよび脱イオン水20gを混合し、過硫酸アンモニウム水溶液を得た。
【0049】
窒素置換した1リットルの反応容器に、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド8g、アクリル酸1.5g、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.15gおよび脱イオン水275gを入れ、均一溶液とし、塩酸(濃度:5質量%)を用いてpH4に調整し、100℃に加熱した。この水溶液に、上記滴下水溶液と上記過硫酸アンモニウム水溶液とを同時に滴下を開始した。なお、滴下水溶液は60分間かけて滴下し、過硫酸アンモニウム水溶液は0.1mL/分の速度で滴下した。すべての滴下が終了してからさらに100℃で30分間反応した後、メタ重亜硫酸ナトリウム2.6mL(濃度:1質量%)を0.3mL/分で滴下し、さらに100℃で30分間反応したあと、25℃に冷却し、脱イオン水を加えて固形分濃度を20質量%にすることにより、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリル酸ナトリウム共重合体の水溶液(濃度:20質量%、全モノマー中の(a1)の割合:80質量%、(a1)/(a2)=4(質量比))を得た。
【0050】
得られた実施例1〜10および比較例1〜6の各硬質表面処理剤について、以下の方法により、防汚耐久性を評価した。
【0051】
ガラス板の表面の4cm×2.5cmの範囲に、硬質表面処理剤20mgを塗布し、20℃で5分間静置した。これを、流水(20℃、3L/分)で10秒間すすぎ、90°で立てかけ20℃で1時間静置して、ガラス板の表面に塗膜を形成した。次いで、塗膜を形成したガラス板の表面にオリーブ油20mgを滴下した後、流水(20℃、3L/分)で3秒間すすいだ。そして、ガラス板の表面を目視で確認し、下記の基準で評価した。評価がAである場合は、硬質表面処理剤の塗布後で1時間静置する前にガラス板をすすぐ時間を長くして、評価がBになるまで同様に測定した。すすぎ時間は、30秒間、50秒間、100秒間、150秒間、200秒間、300秒間、400秒間とした。
A:ガラス板の表面にオリーブ油が残らない。
B:ガラス板の表面にオリーブ油が残る。
【0052】
【表1】
【0053】
結果は表1に示す通りであり、共重合体(A)とスルホン酸塩系重合体(B)を配合した実施例1〜10であると、比較例1〜4に対して防汚性に優れており、またその持続性にも優れていた。また、実施例1〜10は、比較例5に対して防汚耐久性に優れていた。実施例1と実施例3,5〜10との対比より、共重合体(A)およびスルホン酸塩系重合体(B)とともに非イオン界面活性剤や両性界面活性剤を併用することにより、防汚耐久性を更に向上させることができた。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】防汚耐久性に優れる硬質表面処理剤を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る硬質表面処理剤は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド(a1)と(メタ)アクリル酸塩(a2)との共重合体(A)、および、スルホン酸塩を有する繰り返し単位を含む重合体(B)、を含むものである。共重合体(A)と重合体(B)の質量比は、(A)/(B)=0.05〜10であることが好ましい。該硬質表面処理剤は、さらに界面活性剤(B)を含んでもよい。
【選択図】なし