特許第6387216号(P6387216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社誠和の特許一覧

特許6387216温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム
<>
  • 特許6387216-温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム 図000002
  • 特許6387216-温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム 図000003
  • 特許6387216-温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム 図000004
  • 特許6387216-温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387216
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】温室用カーテン開閉機構の制御装置、温室用カーテン開閉機構及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   A01G9/24 L
   A01G9/24 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-237140(P2014-237140)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-96788(P2016-96788A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】神戸 康弘
(72)【発明者】
【氏名】島田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】杉山 淳哉
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−119634(JP,A)
【文献】 特開昭57−174030(JP,A)
【文献】 米国特許第04290242(US,A)
【文献】 登録実用新案第3134955(JP,U)
【文献】 実公昭51−008842(JP,Y1)
【文献】 特開平01−191620(JP,A)
【文献】 特開2014−212775(JP,A)
【文献】 特開2002−315448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置を備えた温室用カーテン開閉機構における前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置であって、
前記制御装置が、
前記カーテンを開放動作させる開放動作開始時か否かを判定する開放動作開始時判定手段と、
前記開放動作開始時判定手段により開放動作開始時と判定された場合に、温室外気温が、前記カーテンの動作モードを選択する基準となる予め設定した所定の有効外気温に至っているか否かを判定する外気温判定手段と、
前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温以下と判定された場合に、前記カーテンが段階的に開放動作する段階開放動作モードとなるように前記カーテン用駆動装置に制御信号を出力する制御信号出力手段と
を有することを特徴とする温室用カーテン開閉機構の制御装置。
【請求項2】
前記段階開放動作モードでの開放動作中の温室内気温を現在気温T2として逐次測定し、前記カーテンの開放動作開始時に測定した温室内気温である開放動作開始時気温T1との気温差を求め、前記気温差が所定値以上か否かを判定する気温差判定手段をさらに有し、
前記制御信号出力手段は、前記気温差判定手段により前記気温差が所定値以上と判定された場合に、前記段階開放動作モードから、前記カーテンを閉鎖方向に動作させる閉鎖動作モードに切り替える制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する請求項1記載の温室用カーテン開閉機構の制御装置。
【請求項3】
前記制御信号出力手段は、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温を上回ると判定された場合に、前記カーテンを全閉状態から全開状態に至るまで通常開放動作モードで開放する制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する請求項1記載の温室用カーテン開閉機構の制御装置。
【請求項4】
温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置と、前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置とを備えた温室用カーテン開閉機構であって、
前記制御装置として、請求項1〜3のいずれか1に記載の制御装置が用いられていることを特徴とする温室用カーテン開閉機構。
【請求項5】
温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置を備えた温室用カーテン開閉機構における前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置として機能するコンピュータを、
前記カーテンを開放動作させる開放動作開始時か否かを判定する開放動作開始時判定手段と、
前記開放動作開始時判定手段により開放動作開始時と判定された場合に、温室外気温が、前記カーテンの動作モードを選択する基準となる予め設定した所定の有効外気温に至っているか否かを判定する外気温判定手段と、
前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温以下と判定された場合に、前記カーテンが段階的に開放動作する段階開放動作モードとなるように前記カーテン用駆動装置に制御信号を出力する制御信号出力手段と
して機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、さらに、前記段階開放動作モードでの開放動作中の温室内気温を現在気温T2として逐次測定し、前記カーテンの開放動作開始時に測定した温室内気温である開放動作開始時気温T1との気温差を求め、前記気温差が所定値以上か否かを判定する気温差判定手段として機能させ、
前記制御信号出力手段は、前記気温差判定手段により前記気温差が所定値以上と判定された場合に、前記段階開放動作モードから、前記カーテンを閉鎖方向に動作させる閉鎖動作モードに切り替える制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する請求項5記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記制御信号出力手段は、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温を上回ると判定された場合に、前記カーテンを全閉状態から全開状態に至るまで通常開放動作モードで開放する制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する請求項5記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内において所定高さに配置され、温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉する温室用カーテン開閉機構の制御装置、制御方法及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、プラスチックフィルム等からなる保温用、遮光用のカーテンを、温室内の上方に配置し、これを開閉することにより、室内温度等を調整する温室用カーテン開閉機構が開示されている。カーテンは、通常、基端縁が固定され、その反対側の端縁(先端縁)に先導パイプが連結され、カーテンの開閉方向に沿って配設した駆動ロープをこの先導パイプに連結している。駆動ロープは、適宜数のプーリに掛け回されており、モータの駆動によってプーリ間を動くようになっている。このモータ及び駆動ロープによって駆動機構が構成され、カーテンを閉じる際には、モータの駆動によって駆動ロープを一方向に動かして先導パイプでカーテンを牽引して展開し、カーテンを開ける際には、モータの駆動によって駆動ロープを逆方向に動かして、先導パイプによってカーテンを寄せ集めて開放する。
【0003】
一方、特許文献3では、イチゴ栽培ハウス内の温度、日射量、湿度を検出するセンサ群と、イチゴ栽培ハウス外の外気温、日射量、降雨量、風向、風速を検出するセンサ群を用い、これらのセンサの検出データに基づいて、暖房機、カーテンの開閉機構、給水ポンプ、換気窓の開閉機構などの制御を、コントローラを介して行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−304780号公報
【特許文献2】特開2002−238370号公報
【特許文献3】特開2011−101630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3では、イチゴ栽培ハウス内の温度管理の精度を上げることを目的としている。具体的には、例えば、イチゴを栽培している高設ベンチを加温する際には、暖房機を駆動して可撓性ダクトから温風を供給すること、夜間のように外気温が低い場合には、電熱線テープを発熱させてベンチを温めること、さらに、カーテンを開閉制御して所定の保温状態を維持すること、日中、日差しが強い場合には、遮光カーテンを開閉制御すること、あるいは、液体噴霧ノズルから液体を噴霧してハウス内を冷却することが記載されている。
【0006】
このような温度管理は、作物の生長を促すために行われるが、単に温室内外の温度に対応して上記制御を行うだけでは十分とは言えない。例えば、カーテンは夜間の栽培温度を保つために通常全閉され、日の出とともに作物に日照を当てるため全開動作させることが行われる。しかし、気温の低い季節において日の出とともにカーテンの開放動作を行うと、カーテン上方の冷気が急激に作物生長点に下降し作物にストレスを与えてしまう場合がある。そこで、このような寒い時期では、カーテンを開放動作させるタイミングを日の出よりも所定時間遅れるようにタイマを設定して対応するのが一般的である。しかし、開放動作のタイミングを遅らせても、その遅らせたタイミングにおける外気温が依然として低い場合には、冷気が作物生長点に急激に下降して悪影響を与えることに変わりはない。また、カーテンの開放動作のタイミングを遅らせれば、その分、作物にあたる日射量が少なくなる。また、カーテンの開放タイミングを、外気温に従わせて制御する事例もあるが、外気温に従って開放動作した途端、作物が栽培されているカーテンの下方空間で急激な気温低下が起こり、結果的に作物に悪影響を与える要因となる場合もある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、カーテンを開放動作させた際の、下方空間の栽培植物への冷気によるストレスを抑制でき、特に寒い時期におけるカーテンの開放動作を所望の時間、例えば日の出にできるだけ近いタイミングから実施することができる温室用カーテン開閉機構の制御装置、制御方法及びコンピュータープログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明の温室用カーテン開閉機構の制御装置は、温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置を備えた温室用カーテン開閉機構における前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置であって、前記制御装置が、前記カーテンを開放動作させる開放動作開始時か否かを判定する開放動作開始時判定手段と、前記開放動作開始時判定手段により開放動作開始時と判定された場合に、温室外気温が、前記カーテンの動作モードを選択する基準となる予め設定した所定の有効外気温に至っているか否かを判定する外気温判定手段と、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温以下と判定された場合に、前記カーテンが段階的に開放動作する段階開放動作モードとなるように前記カーテン用駆動装置に制御信号を出力する制御信号出力手段とを有することを特徴とする。
【0009】
前記段階開放動作モードでの開放動作中の温室内気温を現在気温T2として逐次測定し、前記カーテンの開放動作開始時に測定した温室内気温である開放動作開始時気温T1との気温差を求め、前記気温差が所定値以上か否かを判定する気温差判定手段をさらに有し、前記制御信号出力手段は、前記気温差判定手段により前記気温差が所定値以上と判定された場合に、前記段階開放動作モードから、前記カーテンを閉鎖方向に動作させる閉鎖動作モードに切り替える制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する構成とすることが好ましい。
前記制御信号出力手段は、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温を上回ると判定された場合に、前記カーテンを全閉状態から全開状態に至るまで通常開放動作モードで開放する制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力する構成とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明の温室用カーテン開閉機構は、温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置と、前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置とを備えた温室用カーテン開閉機構であって、前記制御装置として、前記いずれかの制御装置が用いられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のコンピュータプログラムは、温室内を上方と下方とに仕切り、栽培植物が設置される下方空間を保温する機能を有するカーテンを開閉動作させるカーテン用駆動装置を備えた温室用カーテン開閉機構における前記カーテン用駆動装置を制御する制御装置として機能するコンピュータを、前記カーテンを開放動作させる開放動作開始時か否かを判定する開放動作開始時判定手段と、前記開放動作開始時判定手段により開放動作開始時と判定された場合に、温室外気温が、前記カーテンの動作モードを選択する基準となる予め設定した所定の有効外気温に至っているか否かを判定する外気温判定手段と、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温以下と判定された場合に、前記カーテンが段階的に開放動作する段階開放動作モードとなるように前記カーテン用駆動装置に制御信号を出力する制御信号出力手段として機能させることを特徴とする。
前記コンピュータを、さらに、前記段階開放動作モードでの開放動作中の温室内気温を現在気温T2として逐次測定し、前記カーテンの開放動作開始時に測定した温室内気温である開放動作開始時気温T1との気温差を求め、前記気温差が所定値以上か否かを判定する気温差判定手段として機能させ、前記制御信号出力手段は、前記気温差判定手段により前記気温差が所定値以上と判定された場合に、前記段階開放動作モードから、前記カーテンを閉鎖方向に動作させる閉鎖動作モードに切り替える制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力することが好ましい。
前記制御信号出力手段は、前記外気温判定手段によって前記温室外気温が前記有効外気温を上回ると判定された場合に、前記カーテンを全閉状態から全開状態に至るまで通常開放動作モードで開放する制御信号を前記カーテン用駆動装置に出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーテンの開放動作を行う際に、温室外気温が、有効外気温に至っているか否かを判定し、有効外気温以下の場合には、カーテンを段階的に開放動作させる構成である。段階的に開放動作させるため、冷気が、カーテンの下方の作物の栽培領域に徐々に流入していくことになり、温室内気温(作物の栽培領域付近の気温であり、カーテンで仕切られている際のカーテン下方空間の気温)が一気に低下することを抑制できる。このため、温室外気温が所定以下の寒い時期にカーテンの開放動作を行っても、カーテンの下方で生育されている栽培植物の生長点に冷気が急激に下降してストレスを与えることが抑制される。従って、例えば、寒い時期において日の出とともに開放動作を行うことが可能となり、光合成の促進、成長促進に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一の実施形態で用いた温室用カーテン開閉機構の要部を示した概略斜視図である。
図2図2は、上記実施形態の温室用カーテン開閉機構を採用した温室の概略構成を示した図である。
図3図3は、上記実施形態に係る温室用カーテン開閉機構の制御装置の構成を模式的に示した図である。
図4図4は、上記実施形態に係る温室用カーテン開閉機構の制御装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。まず、図1及び図2に示した本発明の一の実施形態に係る温室用カーテン開閉機構100を例にとり、カーテン110,120の開閉動作の仕組みについて説明する。なお、本発明が適用可能なカーテン開閉機構は、この実施形態で説明するものに限定されるものではないことはもちろんである。
【0015】
図1に示したように、温室用カーテン開閉機構100は、カーテン110,120、棚線130、駆動ロープ140を有している。例えば図2に示したように、妻面方向から見て、頂部を中心として山形の形状の温室において、棚線130が、一方の側部と他方の側部との間に掛け渡されている。そして、この棚線130に下面が支えられるように、カーテン110,120が配設される。
【0016】
一方のカーテン110の基端縁が一方の側部付近に固定され、その反対側の端縁(先端縁)が、温室の頂部の下方である幅方向中央部方向に向かうことができるようになっており、他方のカーテン120の基端縁が他方の側部付近に固定され、その反対側の端縁(先端縁)が同じく温室の幅方向中央部方向に向かうことができるようになっている。
【0017】
一方のカーテン110の先端縁には第1の先導パイプ111が取り付けられ、他方のカーテン120の先端縁には第2の先導パイプ121が取り付けられている。具体的には、各先導パイプ111,121に各カーテン110,120の先端縁を被覆しあるいは巻き付け、その状態で、パッカーと称される合成樹脂製の略半管状部材160を、各カーテン110,120の外面に装着する。この略半環状部材160は、先導パイプ111,121にカーテン110,120の外面を被覆しあるいは巻き付けたときの外径よりも若干小さな内径で形成されており、装着した際には、各カーテン110,120の外面を各先導パイプ111,121方向に押さえつける方向に弾性が作用する。これにより、各カーテン110,120の先端縁が各先導パイプ111,121に固定される。
【0018】
駆動ロープ140は、各カーテン110,120の開閉方向である棚線130に沿って、温室の各側部付近に配置された滑車部材を介して張設されている。そして、その適宜部位が各先導パイプ111,121に、駆動ロープ締結部品150を介して連結されている。すなわち、駆動ロープ締結部品150は、駆動ロープ140を連結する駆動ロープ連結部150aと、駆動ロープ140の張設方向に直交する方向に沿って先導パイプ挿通部150bが設けられており、この先導パイプ挿通部150aに先導パイプ1を挿通するように配置することで、両者を連結する。これにより、カーテン用駆動装置である駆動モータ200を駆動して、駆動ロープ140を一方向又は他方向に移動させることにより、先導パイプ111,121が該駆動ロープ140の動作方向に移動し、カーテン110,120を開閉動作させる。
【0019】
カーテン用駆動装置である駆動モータ200は、図2に示したように、制御装置300によって駆動制御される。制御装置300はコンピュータからなり、温室内に設置された気温、湿度、二酸化炭素量、日射量などを測定する各種の温室内センサ400、外気温、風速、風向、降雨量などの温室外気象を観測する外気象センサ500からのデータを受信可能になっている。なお、栽培植物は、カーテン110,120の下方に配置されるため、温室内センサ400に含まれる温度センサは、カーテン110,120の下方における栽培植物の生長点付近に設置され、その検出結果が温室内気温として測定される。
【0020】
制御装置300は、温室内センサ400及び外気象センサ500から受信したデータに基づき、温室に備えられた各種の機構、例えば、上記したカーテン110,120のほか、天井部や側部に設けられる換気窓250、給排水設備、冷暖房機構などを制御する。カーテン110,120に関しては、制御装置300は、日射量、外気温、栽培空間内気温等に基づいて、カーテン用駆動装置である駆動モータ200のドライバにそれらの制御信号を出力して駆動制御し、開閉動作を行わせる。なお、本出願において、「カーテン」とは、保温機能を多少なりとも有するカーテンの全てを含む意味であり、保温カーテンと称されて取り扱われるものに限らず、例えば、遮光を主目的とした遮光カーテンとして取り扱われているカーテンやその他のカーテンであっても保温機能を少しでも発揮するものである限り、本出願のカーテンに含まれる。
【0021】
本実施形態の制御装置300は、具体的には、図3に示したように、開放動作開始時判定手段310、外気温判定手段320、制御信号出力手段330、気温差判定手段340等を有しており、インストールされるコンピュータプログラムによって、コンピュータである制御装置300が上記各手段として機能する。
【0022】
開放動作開始時判定手段310は、カーテン110,120を開放方向に動作させるタイミングを判定する。カーテン110,120は、通常、夜間の栽培温度を適切に保つため、保温時の夜間は全閉状態となっており、日の出と共に栽培植物に日光を供給するため、全開動作する。従って、開放動作時判定手段310は、通常、この日の出のタイミングで開放動作開始時と判定するように設定されされる。但し、気温の低い時期においては、日の出から所定時間経過後を開放動作開始時と判定する構成とすることもできる。その他、昼夜間に拘わらず、所定時間全閉した後に、開放動作させるタイミングを適宜に開放動作開始時とすることができる。開放動作開始時は、例えば、翌日の予想日の出時間等を参照して、制御装置300に内蔵の時計手段によりその時間を設定して検出する構成としてもよいし、日射量センサを用いて、所定の日射量に至ったならば、日の出と判定したり、日の出から所定時間経過後と判定したりして、開放動作開始時を検出する構成としてもよい。また、これらを併用することもできる。
【0023】
外気温判定手段320は、まず、外気象センサ500から開放動作開始時の温室外気温TOのデータを取得する手段を有する。開放動作開始時の温室外気温のデータは、開放動作開始時判定手段310により、開放動作開始時と判定された直後のデータのほか、判定直前のデータであってもよい。例えば、開放動作開始時と判定されると外気象センサ500のデータを外気温判定手段320が読み込む構成とすることもできるし、外気象センサ500から所定時間間隔で定期的に(例えば、5分毎)温室外気温のデータが外気温判定手段320に送信される構成としておくこともできる。後者の場合、外気温判定手段320において、判定対象とする開放動作開始時の温室外気温のデータが、開放動作開始時と判定される直前のデータであることもあり得る。いずれにしても、外気温判定手段320は、開放動作開始時に近い時間帯における外気象センサ500から得られる温室外気温TOを開放動作開始時のデータとして取得するが、温室内上方空間は、夜間、カーテン110,120に仕切られているため、温室外に近い気温になっているのが通常であることから、この温室内上方空間の気温を温室外気温TOとして用いることも可能であり、この場合において、「開放動作開始時の温室外気温TO」には温室内上方空間の気温を用いる場合も含まれる。
【0024】
外気温判定手段320は、開放動作開始時の温室外気温TOのデータを取得した後、制御装置300を構成するコンピュータの記憶部に記憶されたカーテン110,120の動作モードを選択する基準となる所定の有効外気温TEに至っているか否かを判定する。本発明における有効外気温TEは、カーテン用駆動装置である駆動モータ200を段階開放動作モードで動かすのに有効な外気温であり、季節、温室の設置場所、栽培植物の種類等を考慮して適宜に設定できる。
【0025】
制御信号出力手段330は、外気温判定手段320によって、開放動作開始時の温室外気温TOと有効外気温TEとを比較し、カーテン用駆動装置である駆動モータ200を動作させる動作モードを選択して、それに応じた制御信号を該駆動モータ200に出力して制御する。具体的には、開放動作開始時の温室外気温TOが有効外気温TE以下の場合には、カーテン110,120を所定量ずつ段階的に、すなわち、所定量開放動作したならば一旦停止して、再度開放動作を行うことを繰り返す段階開放動作モードを選択して駆動モータ200に制御信号を出力し、開放動作開始時の温室外気温TOが有効外気温TEを上回る場合には、カーテン110,120を段階的に途中で一旦停止することなく、一度に開放動作させる通常開放動作モードを選択して駆動モータ200に制御信号を出力する。
【0026】
段階開放動作モードにおいて、カーテン110,120をどのように段階動作させるかは任意に設定できる。例えば、段階動作の段数は、温室の大きさ、季節、温室の設置場所、栽培植物の種類等を考慮して適宜に設定できる。一段当たりの開放動作量(一段隙間量)、開放動作を一段行った後、当該段の開放状態を維持する一段当たりの維持時間(一段維持時間TM2)、段階開放動作モードを実行する最大時間等も同様に任意に設定できる。制御信号出力手段330は、段階開放動作モードの実行中、段階動作開始時からの経過時間である段階動作経過時間TM1と、上記一段維持時間TM2を、制御装置300に内蔵の時計手段を用いて測定する。
【0027】
気温差判定手段340は、まず制御信号出力手段330によって、いずれかの動作モードで開放動作を開始する際の温室内気温を、開放動作開始時気温T1として温室内センサ400から取得する。この開放動作開始時気温T1をコンピュータの記憶部に記憶する。温室内センサ400に含まれる温度センサは、上記のように栽培植物の生長点付近で気温を測定するため、カーテン110,120が閉鎖状態(通常、全閉状態)における開放動作開始時気温T1は、カーテン110,120の下方空間の気温となる。
【0028】
気温差判定手段340は、温室内センサ400から逐次現在気温T2を取得し、コンピュータの記憶部に記憶する。動作モードが、通常開放動作モードの際は、これらの気温データは栽培環境状態を示すデータとして記憶されるだけであるが、動作モードが、段階開放動作モードの場合、現在気温T2を取得する度に、開放動作開始時気温T1と比較される。すなわち、段階動作により徐々に開放していくことにより、カーテン110,120の下方の温室内センサで測定される温室内気温は、上方の冷気と混合されて低下する傾向となるが、この低下温度が所定以上の場合には、栽培植物にダメージを与える可能性がある。そこで、気温差判定手段340は、現在気温T2と開放動作開始時気温T1とを比較して、その気温差(T1−T2)が所定値以上か否かを判定する。そして、気温差が所定値以上と判定されると制御信号出力手段330は、カーテン110,120の開放動作を停止して閉鎖方向に動作させるように、カーテン用駆動装置である駆動モータ200を閉鎖動作モードに切り替える制御信号を出力する。
なお、気温差判定手段340が温室内センサ400から取得する現在気温T2は、瞬時値を用いることもできるが、暖房機600などによって著しく温度変化を生じる場合もあるため、所定時間毎の移動平均で求めた値を用いるようにしてもよい。
【0029】
次に、本実施形態の作用を図4のフローチャートに基づき説明する。図4は、段階開放動作モードを実行するか否かの判定フローを示したものである。まず、制御装置300には、予め、昼間及び夜間における保温条件(カーテン110,120を閉鎖して保温する際の昼間又は夜間における外気温や日射量等の条件)を設定する。また、必要に応じて、段階開放動作モードの機能を有効にするか無効にするかを選択可能とすることもできる。外気温の高い季節では、カーテン110,120の開放による温室内気温の急低下という事態がそもそも発生する事態が少ないため、段階開放動作モードを無効にしておけば、常に、通常開放動作モードで動作可能となる。段階開放動作モードを有効な状態では、栽培植物の種類や季節等に応じて、段階動作の段数(全閉から全開までの設定段数)、一段当たりの開放動作量(一段隙間量:例えば、全動作量の10%相当の動作量)、開放動作を一段行った後、当該段の開放状態を維持する一段当たりの維持時間(一段維持時間TM2)、段階開放動作モードを実行する最大時間等も適宜に設定する。また、温室内気温の開放動作開始時から、どの程度の温度低下(気温差(T1−T2))で閉鎖動作モードに切り替える所定値とするかを設定する。
【0030】
そして、まず、時計手段により計測される段階動作経過時間TM1のカウントを「0」にリセットし(S101)、開放動作を行った段数を「0」にリセットする(S102)。この状態で、夜間、所定の保温条件を満足してカーテン110,120が全閉になっているとすると、開放動作開始時判定手段310が、カーテン110,120を開放方向に動作させるタイミングか否かを定期的に判定する(S103)。この判定は、上記のように時計手段によって日の出までの時間を計測して行ったり、日射量を計測して行ったり、あるいは、これらを組み合わせたりして行われる。判定結果が「No」の場合には、引き続き開放動作のタイミングの計測を継続するが、「Yes」の場合、すなわち、カーテン110,120を開放動作させるタイミングに至ったと判定された場合には、外気温判定手段320により、外気象センサ500から開放動作開始時の温室外気温TOのデータを取得し、有効外気温TEと比較する(S104)。温室外気温TOが有効外気温TEを上回る場合は、S104において「No」となって、この判定フローを脱し、制御信号出力手段330は、通常開放動作モードで駆動する信号を駆動モータ200に出力し、カーテン110,120を一度に開放させる。温室外気温TOが有効外気温TE以下と判定された場合には、S104において「Yes」となり、段階開放動作モードで駆動する信号を駆動モータ200に出力する。
【0031】
S105では、段階動作経過時間TM1が最大時間を超えているか判定される。段階動作経過時間TM1が最大時間を超えている場合(S105において「Yes」の場合)は、制御信号出力手段330は、通常開放動作モードで駆動する信号を出力する。段階動作経過時間TM1が最大時間以下の場合(S105において「No」の場合:ある1日において、段階開放動作モードの最初の実行時は、常に「No」となる)は、制御信号出力手段330は、時計手段を用いて段階動作経過時間TM1の計測を開始する(S106)。
【0032】
S107では、気温差判定手段340によって、温室内センサ400から現在気温T2を逐次取得し、開放動作開始時の現在気温T2を開放動作開始時気温T1として記憶する。また、現閉度(全閉が閉度100%、全開が閉度0%で設定)PVから、一段当たりの開放動作量(一段隙間量)を差し引き、目標閉度CV(通常、全開の閉度0%)に到達することの確認を開始する。また、S108において、1段維持時間TM2を「0」にする。なお、1段維持時間TM2は、所定段の開放状態を維持する時間であるため、S104における温室外気温TOと有効外気温TEとの差が所定以下の場合、つまり気温差が小さい場合には、例えば、1段維持時間TM2をその1/2として実施して、全閉までに要する時間を短縮する設定とすることも可能である。
【0033】
S103〜S108のステップは、ほぼ同時に実施され、S104において「Yes」となっている場合には、段階開放動作モードで駆動モータ200が制御され、カーテン110,120は段階的に開放動作していく。
【0034】
次に、気温差判定手段340が、カーテン110,120の段階的な開放動作中、逐次、温室内センサ400から現在気温T2を取得してデータを更新し(S109)、現在気温T2を取得する度に、開放動作開始時気温T1との差を求める(S110)。気温差判定手段340は、さらに、現在気温T2と開放動作開始時気温T1との気温差(T1−T2)が、予め設定した所定値以内の気温低下か否かを判定する。そして、気温差が所定値以上と判定されると制御信号出力手段330は、カーテン110,120の開放動作を停止して閉鎖方向に動作させる制御信号を出力する(S111)。これに対し、気温差(T1−T2)が所定値以内と判定された場合には、一段隙間量に相当する分、カーテン110,120が動いたか否かが確認され、現閉度PVが更新される(S112)。一段隙間量に相当する分に至る前は、S112において「No」と判定され、S109のステップに戻り、引き続き、1段隙間量に相当する開放動作が継続され、気温差の判定が行われる(S110)。一段隙間量に相当する分開放動作した場合には、S112において「Yes」と判定されて現開度PVが更新され、S113において、当該段まで開放された状態で現開度PVを維持する1段維持時間TM2をカウントする。
【0035】
1段維持時間TM2を経過しない場合(S114において「No」の場合)は、S109のステップに戻り、その時点における現開度PVが維持される。1段維持時間TM2が経過した場合(S114において「Yes」の場合)は、S115において、段数が1段更新される。更新された段数が、当初の設定段数に至っている場合(S115において「Yes」の場合)は段階開放動作を終了する。本実施形態では、全閉から全開までを所定の設定段数としているため、設定段数に至ったということは、全開に至ったこと、すなわち、目標開度CVに到達したということになる。
【0036】
一方、更新された段数が、当初設定した段数の上限に至っていない場合には、S115において「No」と判定され、S105のステップに戻る。S105において、段階動作経過時間TM1が最大時間と比較され、最大時間を経過していない場合(S105において「No」の場合)には、上記S106以降のステップが繰り返されるが、最大時間を経過していると判定された場合(S105において「Yes」の場合)には、段階開放動作モードが終了となり、制御信号出力手段330は、駆動モータ200に通常開放動作モードで駆動する制御信号を出力する。それにより、カーテン110,120はその後は一気に全開状態まで開放される。
【0037】
本実施形態によれば、温室外気温が所定以下の場合には、カーテン110,120が段階的に開放動作する。そのため、カーテン110,120の上方空間の冷気による急激な気温変化によって栽培植物に悪影響を及ぼすことを抑制できる。そのため、寒い時期においても、日の出により近いタイミングから開放動作を行うことが可能となり、栽培植物の光合成促進に寄与できる。
【0038】
なお、上記実施形態においては、カーテン110,120を夜間の全閉状態から全開にする場合を例に挙げている。通常、段階開放動作が必要となるのは、カーテン110,120により仕切られて保温状態になっている下方空間と、カーテン110,120の上方空間とにおける気温差が大きいことによるものであることから、全閉状態から全開する場合に適用すれば十分であるが、季節や栽培植物の種類等によっては、目標閉度CVを例えば50%に設定してその間だけ、段階開放動作モードを実施するように設定することも可能である。また、温室内センサ400によって、温室内気温を逐次モニタリングしながら、カーテン110,120を所定の閉度(例えば閉度80%)から目標閉度(例えば閉度20%)まで段階開放動作させることが望ましい場合にも設定パラメータを調整するだけで上記実施形態を適用可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、妻面側から見て屋根部が山型の温室に本発明を適用する場合を例にとり説明しているが、これに限定されるものではないことはもちろんであり、屋根部が略水平の平屋根の温室に本発明を適用することもできるし、温室用カーテン開閉機構も、カーテンが接近方向に向かって水平に張られる場合に限らず、山型に張られるもの等、種々の形式のものに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 温室用カーテン開閉機構
110,120 カーテン
200 駆動モータ
300 制御装置
310 開放動作開始時判定手段
320 外気温判定手段
330 制御信号出力手段
340 気温差判定手段
400 温室内センサ
500 外気象センサ
図1
図2
図3
図4