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特許6387219タンゲレチン及びEGCGを含有する皮膚外用剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387219
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】タンゲレチン及びEGCGを含有する皮膚外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20180827BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61P17/00
   A61Q19/00
   A61K36/752
   A61K36/82
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-15044(P2013-15044)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155174(P2013-155174A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0009469
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】劉 世 眞
(72)【発明者】
【氏名】金 恩 惠
(72)【発明者】
【氏名】白 錫 潤
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−117613(JP,A)
【文献】 特開2003−183120(JP,A)
【文献】 特開2001−122765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A16K 36/00−36/9068
A61Q 1/00−90/00
A61P 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、ミカンの皮抽出物及び緑茶抽出物を共に含有し、
前記ミカンの皮抽出物は、乾燥されたミカンの皮を室温で冷浸抽出して1次濾過した後、遠心分離して上層液を取り、これを再び2次濾過し、さらに、1,3−ブチレングリコール、フェノキシエタノール及びエチルヘキシルグリセリンの混合液を加えて抽出した後、3次濾過して得たものであり、
前記緑茶抽出物は、乾燥された茶葉を室温で冷浸抽出して1次濾過した後、遠心分離して上層液を取り、これを再び2次濾過し、さらに、1,3−ブチレングリコール、フェノキシエタノール及びエチルヘキシルグリセリンの混合液を加えて抽出した後、3次濾過して得たものであることを特徴とする角質除去用皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
前記ミカンの皮抽出物は、組成物の総質量に対して、0.001〜40質量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
前記緑茶抽出物は、組成物の総質量に対して0.001〜40質量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンゲレチン及びEGCGを含有することにより、美白効果を有する皮膚外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人の肌色を決めるには様々な要因が関与するが、その中でも、メラニン色素を作るメラノサイト(melanocyte)の活動性、血管の分布、皮膚の厚さ、及びカロチノイドとビリルビンなど人体内外の色素の含有の有無などが重要な要因となる。
【0003】
その中で、特に最も重要な要因は、人体内のメラノサイトでチロシナーゼなどの様々な酵素が作用して生成されるメラニンという黒色の色素である。このメラニン色素の形成には、遺伝的な要因、ホルモンの分泌、ストレスなどに関連する生理的要因と、紫外線照射などのような環境的要因などが影響を及ぼす。
【0004】
身体皮膚のメラニン細胞から生成されるメラニン色素は、黒い色素とタンパク質の複合体の形態を有するフェノール系高分子物質であって、太陽から照射される紫外線を遮断して、真皮以下の皮膚器官を保護するとともに、皮膚生体内に生じたフリー・ラジカルなどを捉えてくれるなど、皮膚内のタンパク質と遺伝子を保護する有用な役割を担当する。
【0005】
このように、皮膚内、外部のストレスのような刺激によって生じたメラニンは、ストレスが消えても、皮膚角質化を通じて外部に排出されるまでは、なくならない安定した物質である。しかしながら、メラニンが必要以上に多くできると、シミ、ソバカス及びほくろなどのような過色素沈着症を誘発して、美容上に良くない結果をもたらすことになる。
【0006】
今日、東洋の女性たちは、白くてきれいな白玉肌を好み、これを美しさの重要な基準としているため、過色素沈着に対する治療及び美容上の問題を解決しようとする要求が増えることになった。
【0007】
このような要求に応じて、従来から、アスコルビン酸、コウジ酸、アルブチン、ハイドロキノン、グルタチオン若しくはこれらの誘導体、又はチロシナーゼ阻害活性を有する物質を、化粧料や医薬品に配合して使用してきたが、これらの不充分な美白効果、皮膚に対する安全性の問題、化粧料に配合する際に現れる剤形及び安定性の問題などにより、その使用が制限されている。したがって、皮膚に、より安全ながらも優れた美白効果を有する組成物の開発が切実に要請されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の発明者は、多様な実験を繰り返して、ミカンの皮抽出物に含まれたタンゲレチン(tangeretin)と緑茶抽出物に含まれたEGCG(Epigallocatechin gallate)を共に使用することにより、皮膚に対して安全ながらも優れた美白効果を提供することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は、タンゲレチン及びEGCGを有効成分として含有する皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、タンゲレチン及びEGCGを有効成分として共に含有する美白用の皮膚外用剤の組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、タンゲレチンにEGCGをさらに含有することにより、優れた皮膚美白効果を示し、これを通じて化粧品又は医薬分野で多様に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】タンゲレチンとEGCGの抗酸化シナジー効果の試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚外用剤組成物は、タンゲレチン及びEGCGを有効成分として共に含有する。また、本発明は、ミカンの皮抽出物に含まれたタンゲレチン及び緑茶抽出物に含まれたEGCGを使用することにより、皮膚に刺激を与えず、安全ながら皮膚美白効果を有する皮膚外用剤組成物を提供する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するタンゲレチンは、ミカンの皮抽出物に含まれたものが好ましい。タンゲレチンは、シトラスフラボノイド系であり、O−ポリメトキシレートフラボン(O−polymethoxylated flavones)の構造を有し、本発明で使用するタンゲレチンは、シトラスフラボノイド系であり、O−ポリメトキシレートフラボン(O−polymethoxylated flavones)の構造を有する。フラボン(flavones)類の中で、ポリメトキシフラボン(polymethoxyflavone)類は、他の野菜および果物には殆どなく、ミカン類の特徴的な成分であって、フラボノイド(flavonoid)に5個のメトキシが置換されている物質である。タンゲレチンは、下記の化学式1で表現される。
【0015】
【化1】
【0016】
本発明の一実施例において、前記ミカンの皮抽出物は、組成物の総質量に対して0.001〜40質量%に含まれてもよい。ミカンの皮抽出物が0.001質量%未満に含まれると、前記成分による効能、効果が微弱であり、40質量%を超えると、皮膚刺激による安全性の問題又は剤形上の安定度の問題があるためである。
【0017】
本発明で使用するEGCGは、緑茶抽出物に含まれたものが好ましい。EGCGは、タンニン又はポリフェノールの構成成分であり、強力な美白効果を有し、下記の化学式2の構造で表現される。
【0018】
【化2】
【0019】
また、本発明の一実施例において、前記緑茶抽出物は、組成物総質量に対して0.001〜40質量%に含まれてもよい。緑茶抽出物が0.001質量%未満に含まれると、前記成分による効能、効果が微弱であり、40質量%を超えると、皮膚刺激のような安全性問題又は剤形上の安定性問題があるためである。
【0020】
本発明で使用されたタンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物及びEGCGを含有する緑茶抽出物を製造する方法は、特別に制限されるものではなく、本発明の一実施例において前記抽出物は、原料を有機溶媒に沈漬して抽出した後、濾過、減圧及び濃縮して得られた濃縮物を使用することができる。又は、前記濃縮物を再び乾燥して製造した浸剤、前剤、丁幾及び流動エキスを使用することができる。前記沈漬物は、ミカンの皮又は緑茶溶媒を用いて、冷浸、パーコーレーション(percolation)、温浸などの任意の方法を通じて沈漬し、有効成分を含有する沈漬物を得ることができる。前記有機溶媒は、C1〜C4の無水又は含水アルコール、アセトン、エチルアセテート、クロロホルム、グリセリン、プロピレングリコール及びブチレングリコールの中から選択された一つ以上のものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
一方、本発明の一実施例において、前記組成物は、皮膚紅斑防止用又は肌色改善用であってもよい。また、本発明の一実施例において、前記組成物は、皮膚老化防止、皮膚弾力増大、皮膚シワ改善、血色改善、毛穴収縮、皮膚刺激緩和、恒常性向上、スリミング、アトピー、抗菌、アレルギー、弾力、にきび、再生、皮脂、老廃物、角質改善効果、皮膚収斂及び整頓の効果を有するだけでなく、肥満、糖尿改善用であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明による皮膚外用剤組成物は、一般的に皮膚外用に使用する組成物の全般を包括する概念であり、例えば、化粧料組成物、薬学組成物である。
【0023】
化粧料組成物としては、例えば、基礎化粧料、メーキャップ化粧料、毛髪用の化粧料、ボディー用の化粧料などがあり、その剤形は特別に制限されず、目的とするところにより適切に選択することができる。
【0024】
例えば、前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されてもよいが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、ローション、ボディーローション、栄養クリーム、マッサージクリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ゲル、パッチ、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型などの基礎化粧料、リップスティック、メーキャップベース又はファンデーションなどの色調化粧料、シャンプー、リンス、ボディークレンザー、歯磨き又は口腔清浄剤などの洗浄料、ヘアトニック、ゲル又はムースなどの整髪剤、養毛剤又は毛染め剤などの毛髪用の化粧料組成物に剤形化されてもよい。
【0025】
前記化粧料組成物は、化粧品学的に許容可能な媒質又は基剤を含有する。これは局所適用に適したすべての剤形であって、例えば、溶液、ゲル、固体又は練り無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球若しくはイオン型(リポソーム)及び/又は非イオン型の小胞分散剤の形態であり、若しくは、クリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシールスティックの形態で提供される。これらの組成物は、当該分野の通常的な方法により製造される。
【0026】
本発明において、剤形が溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレン・グリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレン・グリコール又はソルビタン脂肪酸エステルがある。
【0027】
本発明において、剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノール若しくはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、若しくはポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微少結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天又はトラカントなどが利用される。
【0028】
本発明において、剤形がペースト、クリーム又はゲルである場合には、担体成分として、動物性の油、植物性の油、ワックス、パラピン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などが利用される。
【0029】
本発明において、剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム又はポリアミドパウダーが利用されてもよく、特に、剤形がスプレーである場合には、さらにクロロフルオロハイドロカーボン、プロパン、ブタン又はジメチルエーテルのような推進体を含んでもよい。
【0030】
本発明において、剤形が界面活性剤を含有するクレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸モノエステール、イセチオン酸、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレイト(methyltaurate)、サルコシネイト(sarcosinate)、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体又はエトキシ化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用される。
【0031】
本発明の一実施例において、前記化粧料組成物にさらに増粘剤を含有することができる。本発明の化粧料組成物に含まれる増粘剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシグアニン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウム、セテアリルアルコール、ステアリン酸、カラギナンなどを使用してもよい。好ましくは、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウムの中で1種以上を使用してもよく、最も好ましくは、カルボキシビニルポリマーを使用してもよい。
【0032】
本発明の一実施例において、前記化粧料組成物は、必要に応じて適切な各種の基剤と添加剤を含有してもよく、これら成分の種類と量は、発明者によって容易に選ばれることができる。必要に応じて許容可能な添加剤を含有してもよく、例えば、当業界に通常の防腐剤、色素、添加剤などの成分をさらに含んでもよい。より詳しくは、防腐剤は、フェノキシエタノール(Phenoxyethanol)又は1,2−ヘキサンジオール(1,2−Hexanediol)等であってもよく、色素は、人工香料などであってもよい。
【0033】
そして、本発明の一実施例において、化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草エキスからなる群より選択された組成物を含んでもよい。それ以外に添加可能な配合成分としては、油脂成分、保湿剤、エモリアント剤、界面活性剤、有機又は無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0034】
また、それ以外に添加可能な配合成分は、これに限定されるものではなく、また、前記のいずれの成分も、本発明の目的及び効果を損しない範囲内で配合することができる。
【0035】
本発明の一実施例において、薬学組成物は、タンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物及びEGCGを含有する緑茶抽出物を共に有効成分とし、常用の無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液状の形態で、非経口投与剤に製剤化することができる。前記非経口投与のための製剤としては、点滴剤、軟膏、ローション、ゲル、クリーム、パッチ、スプレー、懸濁剤及び油剤からなる群より選択された経皮投与型剤形であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
各剤形による皮膚外用剤組成物において、上記した本発明の組成物以外の他の成分を、その他の皮膚外用剤の剤形又は使用の目的などによって、当業者が困難なく適宜選定して配合することができ、この場合、他の原料と同時に適用すると、相乗効果が起こることがある。
【0037】
また、本発明による組成物が薬学組成物として使用される場合、防腐剤、安定化剤、水化剤若しくは油化促進剤、浸透圧調節のための塩若しくは緩衝剤などの薬学的補助剤、又はその他の治療的に有用な物質をさらに含有することができ、通常の方法により多様な経口又は非経口投与の形態で剤形化することができる。
【0038】
有効成分の実際の投与量は、症状の重症度、選択された投与経路、対象の年齢、性別、体重及び健康状態などの様々な関連因子によって決定すべきものとして理解しなければならない。
【0039】
一般的に有効成分の投与量は、約0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は、0.5mg/kg/日〜2.5mg/kg/日である。
【実施例】
【0040】
以下、試験例及び剤形例を挙げて、本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。しかしながら、これらの試験例及び剤形例は、本発明に関する理解を助けるために例示の目的で提供されたもので、本発明の範疇及び範囲が下記の例によって制限されるものではない。
【0041】
[参考例1]タンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物の製造
ミカンの皮を精製水で洗浄した後、乾燥の過程を経る。水気が除去されたミカンの皮を粉砕して40〜48時間、室温で冷浸抽出法を通じて有効成分を抽出する。抽出された内容物を250μm meshで1次濾過した後、遠心分離過程を通じて上層液を取る。その内容物をさらに3μm、1μm、0.5μm meshの濾過紙で順に濾過する。1,3−ブチレングリコール(Butylene glycol)10%、フェノキシエタノール(phenoxyethanol)0.5%、エチルヘキシルグリセリン(Ethylhexylglycerin)0.05%を追加し、さらに0.2〜0.3μmの濾過紙で濾過してミカンの皮抽出物を得る。
【0042】
[参考例2]EGCGを含有する緑茶抽出物の製造
茶葉を精製水で洗浄した後、乾燥の過程を経る。水気が除去された茶葉を粉砕して40〜48時間、室温で冷浸抽出法を通じて有効成分を抽出する。抽出された内容物を250μm meshで1次濾過した後、遠心分離過程を通じて上層液を取る。その内容物をさらに3μm、1μm、0.5μm meshの濾過紙で順に濾過する。1,3−ブチレン・グリコール10%、フェノキシエタノール0.5%、エチルヘキシルグリセリン0.05%を追加し、さらに0.2〜0.3μm濾過紙で濾過して緑茶抽出物を得る。
【0043】
[試験例1]メラニン生成抑制効果
人間メラノマ細胞のHM3KO細胞(Y.Funasaka,Department of dermatology,Kobe university school of medicine,5−1 Kusunoki−cho 7−chrome,Chuo−ku,Kobe 650,Japan)をウシ胎児血清が10%入ったMEM(Minimum Essential Medium)に入れて、37℃、5%のCO2条件下で培養する。このように培養した細胞を、細胞数が各フラスコ当たり3×105になるように75フラスコに敷いて、一夜の間、細胞が器壁につくことを待ち、細胞がよくついたことを確認した後、培地を下記の表1の各試験物質が10ppm入っている新しい培地に取り替える。このとき、対照群は添加されない培地を使用し、ミカンの皮抽出物及び緑茶抽出物を共に使用したものを実施例1、美白効果を示すものと知られたコウジ酸を比較例1、ミカンの皮抽出物を比較例2、緑茶抽出物を比較例3とする。2〜3日ごとに一回ずつ試料が入っている新しい培地に取り替えながら、細胞がフラスコに満ちるまで培養する。細胞が成長し終えた後、集めて、対照群と実施例1、比較例1〜3の細胞の色をそれぞれ比較した。また、培養液を除去してPBSで洗浄した後、1N水酸化ナトリウムで溶かして500nmで吸光度を測定した後、下記の数学式1によりメラニン生成抑制率を計算し、その結果を下記の表1に示した。
【0044】
【数1】
【0045】
【表1】
【0046】
前記表1の結果から、ミカンの皮抽出物と緑茶抽出物を共に使用した実施例1を使用すると、美白効果が非常に優れたものと知られているコウジ酸と類似するメラニン生成抑制率を有することが分かった。また、ミカンの皮抽出物と緑茶抽出物をそれぞれ使用した比較例2及び比較例3に比べて、4〜5倍に達する非常に優れたメラニン生成抑制率を示した。これは、ミカンの皮抽出物に含まれたタンゲレチンと緑茶抽出物に含まれたEGCGのシナジー効果により、メラニン生成抑制効果が上昇したものである。
【0047】
[製造例1及び比較製造例1〜4]
下記の表2に記載された組成により、製造例1及び比較製造例1〜4の化粧料組成物を製造した。その製造過程を詳細に調べると、原料1〜9を混合して70℃で溶解し、水相パートとし、一方、原料10〜15を70℃で溶解してオイルパートとする。オイルパートを前記水相パートに添加してホモミキサー(日本Tokushu Kika社)で撹拌して1次乳化し、原料16及び17を添加して増粘した。気泡を除去した後、室温で冷却して製造例1及び比較製造例1〜4の化粧料を製造した(単位:質量%)。
【表2】
【0048】
[試験例2]人体皮膚に対する美白効果
人体皮膚に対する美白効果と皮膚刺激性を調べるために、平均年齢35.2歳の元気な30人の男性及び女性を対象にして、被検者の上腕部位に直径1.5cmの穴6個があけられた不透明テープを付着した後、各被検者の最小紅斑量(Minimal Erythema Dose)の1.5〜2倍程度の紫外線(UVB)を照射して皮膚の黒化を誘導し、試験物質を塗布して、二ヶ月後、色差計を利用して皮膚の明暗を測定した。これら被検者に前記製造例1及び比較製造例1〜4の化粧料を朝、夕方2回ずつ毎日塗るようにした。
【0049】
効果の判定は、皮膚の明暗を示す「L」の値を求めて決めた。参考として、人為的に焼いていない韓国人の肌色は、一般的に50〜70の値を示す。色差計(ミノルタCR2002)を用いて皮膚の白黒程度を測定し、効果を判定した。色を表示するにはL*a*b*表色系を使用するが、本発明では主にL*値(明度)を指標とした。L*値は標準白板で校正して、測定は1つの部位に5回以上の測定を繰り返すことにより、色素沈着部を均等に測定した。塗布開始時点と完了時点における肌色の差(△L*)を下記の数学式2により計算し、これを下記の表3に示した。美白効果は、試料塗布部位と対照群部位の△L*の比較から判定するが、△L*値が2程度であれば、沈着された色素の美白化が明確であると判定し、1.5程度以上であれば、美白効果があると判定することができる。
【0050】
【数2】
【0051】
試験物質を塗布して効果のある場合には、L値が順次増加することになり、試験物質の比較は、塗布開始時点と完了時点(塗布開始二ヶ月後)における肌色の差(△L)を前記数学式2により計算し、その結果を下記の表3に示した。
【0052】
[試験例3]人体皮膚に対する皮膚刺激感の調査
前記試験例2の被検者を対象にして、製造例1及び比較製造例1〜4の化粧料を二ヶ月間使用するようにした後、皮膚刺激感を比較した。このとき、判断基準は、被検者が刺激感の程度により点数を1〜5まで付与して比較したもので、1に近いほど刺激がなく、5に近いほど刺激が多いことを意味し、それぞれの平均点数を下記の表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
前記表3の結果から分かるように、本発明によるミカンの皮抽出物と緑茶抽出物を混合して使用した製造例1の化粧料の方が、比較製造例1よりも美白効果が優れており、同時に皮膚刺激がコウジ酸を同量で使用する時と類似値を有することを確認することができた。また、ミカンの皮抽出物と緑茶抽出物を混合して使用した製造例1の方が、比較製造例3及び4の化粧料よりも、やはり約4〜5倍以上の顕著に優れた美白効果を有するだけでなく、皮膚刺激感も非常に減少したことが分かった。これは、ミカンの皮抽出物に含まれたタンゲレチンと緑茶抽出物に含まれたEGCGとの混合による相乗効果によるものであると判断される。
【0055】
[試験例4]角質量の変化
本発明による美白化粧料組成物の角質量減少効果を調べるために、製造例1及び比較製造例1〜4から製造した化粧料の皮膚角質量の変化を調べてみた。
皮膚疾患のない20〜30代の成人男女50人の下膊内側に製造例1及び比較製造例1〜4の化粧料組成物を塗布した後、24時間が経過して、チャームビュー(Charm view;Moritex,Japan)を利用して角質減少量を測定した。あらかじめ塗布開始前、恒温、恒湿条件(24℃、湿度40%)でチャームビューを利用して初期皮膚角質量を測定して基本値とし、24時間経過後の変化を測定した。その結果を下記の表4に示した。
【0056】
【表4】
【0057】
前記表4の結果から、本発明による美白化粧料組成物の製造例1が比較製造例1〜4に比べて皮膚角質減少効果が優れていることが分かる。また、ミカンの皮抽出物と緑茶抽出物とを混合して製造した製造例1の場合、シナジー効果によって最も優れた皮膚角質減少効果を有することが分かる。
【0058】
したがって、本発明によるタンゲレチンにEGCGをさらに含有する組成物は、皮膚に安全ながら優れた美白効果とともに、皮膚刺激を最小化して優れた皮膚安全性を提供できることを確認することができた。
【0059】
[試験例5]フリー・ラジカル除去能評価:DPPH assay
DPPH(2,2−Diphenyl−1−picrylhydrazyl,Sigma,D9132)を利用してタンゲレチンとEGCGの混合使用によるフリー・ラジカル消去能を確認するために、DPPH assayを実施した。紫色を帯びているDPPHは、抗酸化物質と反応をすると、抗酸化物質から水素電子を受けることになり、色が変化し、517nmでの吸光度が減少する。
【0060】
まず、DPPHを準備し、実験を始める前にエタノールに溶かして100μMに作って、超音波分解(sonication)を実施して完全に溶かした後、次の順序で処理物質を準備する。
1)タンゲレチン10%溶液〔溶媒:ジメチルスルホキシド(DMSO)〕を処理濃度によりエタノールに希釈する。
2)物質の処理濃度区間ごとに、同じ濃度の処理回数を3回とする。
3)DPPH溶液と反応させる時は、濃度が1/20に低まるので、確認しようとする濃度の20倍の物質を準備する。
【0061】
その後、前記処理物質を処理濃度別に10μLずつ96−ウェルプレートに入れる。陽性対照群にはビタミンCを2.5、5、10ppm濃度で各々10μLずつ入れる。対照群にはエタノールを10μL入れる。その後、100μMのDPPHを190μLずつ入れて、物質に色がある場合には吸光度に影響を及ぼし得るので、物質10μLにエタノールを190μL入れる実験群も作っておく。
【0062】
物質反応は、37℃のインキュベーターで30分間保管した後、分光光度計(Spectra Max 190)を利用して、517nmにおける吸光度を測定する。ビタミンC、EGCGを含有する緑茶抽出物、タンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物、及びタンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物にEGCGを含有する緑茶抽出物を混合して使用した場合を、濃度変化によって吸光度値(O.D.)を測定し、図1に示した。
【0063】
物質の抗酸化力が大きいほど吸光度値は低い。対照群と比較して吸光度値を半分に落とす物質の濃度(IC50:50% Inhibitory activity)を求めた。IC50値が小さいほど抗酸化力が大きいと判断することができる。
【0064】
図1中に記載の「*」は、タンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物(−)と、タンゲレチンを含有するミカンの皮抽出物にEGCGを含有する緑茶抽出物を混合して使用した場合(+)との間に「有意差」があることを示すものであり、実験結果から算出されたp−valueが0.05未満であるため、信頼できる有意性を有しているものと認められる。この図1の結果によれば、すべての濃度で、EGCGとタンゲレチンをそれぞれ単独で処理する時に比べて、この二つを共に処理する時、有意的な差として抗酸化効果があることを確認することができた。
【0065】
また、図1中の写真は、この試験例5のDPPH assayにおける色の変化を表したものである。紫色を帯びたDPPHは、抗酸化物質と反応すると、抗酸化物質から水素電子を受けて、色が変化する。EGCGとタンゲレチンをそれぞれ単独で処理した時に比べて、この二つを共に処理した時には、対照群の濃い紫色が有意に薄くなることが分かった。
したがって、タンゲレチンとEGCGの抗酸化シナジー効果を通じて美白効果だけでなく、皮膚の酸化を防ぎ、皮膚に活気を与えることを確認することができた。
【0066】
下記、本発明に係る化粧料組成物及び薬学組成物の剤形例を説明するが、下記の例示の以外にも様々な剤形に応用が可能であり、これは、本発明を限定しようとするものではなく、単に具体的に説明するためである。
【0067】
[剤形例1]柔軟化粧水(スキンローション)
下記表5に記載された組成により、通常の方法で柔軟化粧水を製造した。
【0068】
【表5】
【0069】
[剤形例2]栄養化粧水(ミルクローション)
下記の表6に記載された組成により、通常の方法で栄養化粧水を製造した。
【0070】
【表6】
【0071】
[剤形例3]栄養クリーム
下記の表7に記載された組成により、通常の方法で栄養クリームを製造した。
【0072】
【表7】
【0073】
[剤形例4]マッサージクリーム
下記の表8に記載された組成により、通常の方法でマッサージクリームを製造した。
【0074】
【表8】
【0075】
[剤形例5]パック
下記の表9に記載された組成により、通常の方法でパックを製造した。
【0076】
【表9】
【0077】
[剤形例6]局所投与用薬剤(パッチ剤)
下記の表10に記載された組成により、通常の方法でパッチ剤を製造した。
【0078】
【表10】
【0079】
本発明が属した分野で通常の知識を有する者であれば、前記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。
【0080】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、具体的な技術は単に好ましい実現例に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されないのは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とその等価物によって定義される。
図1