(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387220
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】フィラグリン発現促進剤およびそれを用いた化粧品、皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20180827BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20180827BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20180827BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K31/355
A61P17/16
A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-39015(P2013-39015)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166964(P2014-166964A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年12月29日
【審判番号】不服2017-15088(P2017-15088/J1)
【審判請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391045554
【氏名又は名称】株式会社クラブコスメチックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 喬裕
(72)【発明者】
【氏名】坂口 育代
【合議体】
【審判長】
關 政立
【審判官】
井上 明子
【審判官】
冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/053127(WO,A1)
【文献】
特開2003−146886(JP,A)
【文献】
特開2010−184908(JP,A)
【文献】
フレグランスジャーナル臨時増刊 No.15,1996年 3月 1日,p.169−178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus、JST7580(以上JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜3重量%のdl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するフィラグリン発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トコフェロールを有効成分として含有するフィラグリン発現促進剤に関する。本発明はまた、本発明のフィラグリン発現促進剤を含む化粧品、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の水分保持において角質層は重要な役割を果たしている。その役割を担う因子の1つとして、遊離アミノ酸などから構成される天然保湿因子natural moisturing factor(NMF)がある(たとえば、Eleonora Candi et al.,「The Cornified Envelope:A Model Of Cell Death In The Skin」,Nature Reviews Molecular Cell Biology,6(4):328−340,2005(非特許文献1)を参照。)。このNMF中の遊離アミノ酸は表皮顆粒層に発現しているフィラグリンが前駆物質であり、フィラグリンが正常に発現および分解されることで適切に供給される(たとえば、Noriaki Nakagawa et al.,「Relationship Between NMF(Lactate and Potassium) Content and the Physical Properties of the Stratum Corneum in Healthy Subjects」,The Journal of Investigative Dermatology,122(3):755−763,2004(非特許文献2)を参照。)。NMFは角層に水分を与えるため、角層に柔軟性を与え、また落屑に関与する酵素の働きも正常化する(たとえば、山本明美、皮膚アレルギーフロンティア、8(1):13−17、2010(非特許文献3)を参照。)。
【0003】
フィラグリンは角質水分量を保持するNMFの前駆物質として重要な役割を果たすだけでなく、角質細胞の形成に際して、ケラチン線維同士を凝集させて細胞全体を扁平化させ、また、その一部はトランスグルタミナーゼによって他のタンパクに架橋され、細胞膜上での辺縁帯形成に寄与している(たとえば、須賀康、「表皮保湿因子とその機能;とくにフィラグリンを中心に」、日本香粧品学会誌、34(1):19−23、2010(非特許文献4)を参照。)。
【0004】
角層中の遊離アミノ酸の低下は、乾燥肌および角層バリア機能の低下を誘導し、尋常性魚鱗癬およびアトピー性皮膚炎などの病態形成に深く関わり、これら疾患の乾燥した皮膚ではフィラグリン発現の低下が認められる(たとえば、I.Horii et al.,「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」,British Journal of Dermatology,121(5):587−592,1989(非特許文献5)およびAlan D.Irvine et al.,「Breaking the (Un)Sound Barrier:Filaggrin Is a Major Gene for Atopic Dermatitis」,Journal of Investigative Dermatology,126(6):1200−1202,2006(非特許文献6)を参照。)。また、アトピー性皮膚炎では角層pHが弱酸性(正常)から中性に上昇し(たとえば、Knor T et al.,「Stratum corneum hydration and skin surface pH in patients with atopic dermatitis」、Acta Dermatovenerol Croat,19(4):242−247,2011(非特許文献7)を参照。)、角質層キモトリプシン酵素(SCCE)などの角層プロテアーゼの至適pHとなり、バリア機能が低下することも報告されている(たとえば、Akiharu Kubo et al.,「Epidermal barrier dysfunction and cutaneous sensitization in atopic diseases」,The Journal of Clinical Investigation,122(2):440−447,2012(非特許文献8)を参照。)。さらに、老人性乾皮症の角層ではその重症度に応じて遊離アミノ酸量が低下し、それにはフィラグリンの発現低下によるNMF、すなわち、遊離アミノ酸の不足が示されている(たとえば、上述した非特許文献5、Tony M Jacobson et al.,「Effects of Aging and Xerosis on the Amino Acid Composition of Human Skin」,The Journal of Investigative Dermatology,95(3):296−300,1990(非特許文献9)を参照。)。これらの報告からも、フィラグリンが角質層の水分保持および角層バリア機能に関っていることが分かる。
【0005】
フィラグリンは皮膚の保水機能に関わるだけでなく、さらなる多面的な機能を有することが報告されている(たとえば、上述した非特許文献4を参照。)。
【0006】
フィラグリンは角層においてアミノ酸にまで分解された後に、その一部はウロカニン酸に代謝され、皮膚の紫外線障害を防御する役割も担っていると考えられている(たとえば、Caterina Barresi et al.,「Increased Sensitivity of Histidinemic Mice to UVB Radiation Suggests a Crucial Role of Endogenous Urocanic Acid in Photoprotection」,Journal of Investigative Dermatology,131(1):188−194,2011(非特許文献10)、Ian R.Scott,「Factors controlling the expressed activity of histidine ammonia−lyase in the epidermis and the resulting accumulation of urocanic acid」,Biochemical Journal,194(3):884−886,1995(非特許文献11)を参照。)。フィラグリンは天然のサンスクリーン作用を示すウロカニン酸の供給源でもある。
【0007】
また、フィラグリンが10〜12個つながった構造を有するプロフィラグリンに存在するN末端ドメインは、酵素によって切り離された後に核移行して、表皮の最終角化過程、すなわち、角化に伴う脱核現象(アポトーシス)に寄与することが示唆されている(たとえば、David J.Pearton et al.,「Functional Analysis of the Profilaggrin N−Terminal Peptide:Identification of Domains that Regulate Nuclear and Cytoplasmic Distribution」,The Journal of Investigative Dermatology,119(3):661−669,2002(非特許文献12)を参照。)。
【0008】
以上のことから、表皮顆粒層で発現するフィラグリンの発現促進を通じて、角質層の水分保持を高めるとともに紫外線から皮膚を守り、角化を促進させて、皮膚を健康な状態に保つことができると考えられる。
【0009】
これまで、フィラグリン発現促進剤として、たとえばカンゾウ抽出物(たとえば特開2002−363054号公報(特許文献1)を参照。)、天然植物中に含まれるフラバノン配糖体リクイリチン(たとえば特開2003−146886号公報(特許文献2)を参照。)、ワイルドタイム抽出物、チョウジ抽出物、サルビア抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シイタケ抽出物、ジオウ抽出物、カミツレ抽出物、アルニカ抽出物、アロエ抽出物、オウゴン抽出物またはオウバク抽出物(たとえば特開2006−16337号公報(特許文献3)を参照。)、シラカンバ抽出物(たとえば特開2007−217325号公報(特許文献4)を参照。)、ヒトリシズカ抽出物(たとえば特開2008−88075号公報(特許文献5)を参照。)、ロスマリン酸およびエリオジクチオール(たとえば特開2010−90037号公報(特許文献6)を参照。)、クラゲ液化物(たとえば特開2011−116672号公報(特許文献7)を参照。)、ダビジゲニン(たとえば特開2012−102040号公報(特許文献8)を参照。)、サクランボ抽出物(たとえば特開2012−176048号公報(特許文献9)を参照。)、ハッカ抽出物(たとえば特開2012−188399号公報(特許文献10)を参照。)などが知られている。
【0010】
一方、dl−α−トコフェロールに関しては、抗酸化作用を中心に血流促進、抗炎症、抗動脈作用などが報告されている(たとえば、Joan M.Cook−Mills et al.,「Isoforms of Vitamine E Differentially Regulate Inflammation」,Endor Metab Immune Disord Drug Targets,10(4):348−366,2010(非特許文献13)を参照。)。皮膚に関しては、(たとえばSlobodanka Tamburic et al.,「Moisturizing Potential of d−α−Tocopherol」,Allured’s Cosmetics & Toiletries magazine.114(5):73−82,1999(非特許文献14)を参照。)dl−α−トコフェロールによる抗酸化作用を介した作用ではあるものの、dl−α−トコフェロールによる紫外線防御、シワ防止、老化予防、保湿に関する報告がある。
【0011】
近年では、α−、β−などの各種トコフェロールがヒト表皮角化細胞のperoxisome proliferator−activated receptors(PPARs)−γの発現を高め、そのターゲット遺伝子であるトランスグルタミナーゼ−1の発現を増加させることを示した報告がなされている(たとえば、M.Clara De Pascale et al.,「Increased expression of transglutaminase−1 and PPARγ after vitamin E treatment in human keratinocytes」,Archives of Biochemistry and Biophysics,447:97−106,2006(非特許文献15)を参照。)。これに関連して、PPAR−γの発現増加および活性化は転写因子AP−1、MAPキナーゼの1種p38の活性を高め、インボルクリンの発現を増加させることも報告されている(たとえば、Xiuju Dai et al.,「PPARγ is an important transcription factor in 1α,25−dihydroxyvitamin D3−induced involucrin expression」,Journal of Dermatological Science, 50:53−60,2008(非特許文献16)を参照。)。
【0012】
しかしながら、dl−α−トコフェロールによるフィラグリン発現の促進作用、NMF産生促進、角層アミノ酸増加に関しては未だ報告されていない。また、皮膚外用剤の有効成分として、安全性などの観点から、生体に存在している成分によるフィラグリン発現を促進させる成分の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−363054号公報
【特許文献2】特開2003−146886号公報
【特許文献3】特開2006−16337号公報
【特許文献4】特開2007−217325号公報
【特許文献5】特開2008−88075号公報
【特許文献6】特開2010−90037号公報
【特許文献7】特開2011−116672号公報
【特許文献8】特開2012−102040号公報
【特許文献9】特開2012−176048号公報
【特許文献10】特開2012−188399号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Eleonora Candi et al.,「The Cornified Envelope:A Model Of Cell Death In The Skin」,Nature Reviews Molecular Cell Biology,6(4):328−340,2005
【非特許文献2】Noriaki Nakagawa et al.,「Relationship Between NMF(Lactate and Potassium) Content and the Physical Properties of the Stratum Corneum in Healthy Subjects」,The Journal of Investigative Dermatology,122(3):755−763,2004
【非特許文献3】山本明美、皮膚アレルギーフロンティア、8(1):13−17、2010
【非特許文献4】須賀康、「表皮保湿因子とその機能;とくにフィラグリンを中心に」、日本香粧品学会誌、34(1):19−23、2010
【非特許文献5】I.Horii et al.,「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」,British Journal of Dermatology,121(5):587−592,1989
【非特許文献6】Alan D.Irvine et al.,「Breaking the (Un)Sound Barrier:Filaggrin Is a Major Gene for Atopic Dermatitis」,Journal of Investigative Dermatology,126(6):1200−1202,2006
【非特許文献7】Knor T et al.,「Stratum corneum hydration and skin surface pH in patients with atopic dermatitis」、Acta Dermatovenerol Croat,19(4):242−247,2011
【非特許文献8】Akiharu Kubo et al.,「Epidermal barrier dysfunction and cutaneous sensitization in atopic diseases」,The Journal of Clinical Investigation,122(2):440−447,2012
【非特許文献9】Tony M Jacobson et al.,「Effects of Aging and Xerosis on the Amino Acid Composition of Human Skin」,The Journal of Investigative Dermatology,95(3):296−300,1990
【非特許文献10】Caterina Barresi et al.,「Increased Sensitivity of Histidinemic Mice to UVB Radiation Suggests a Crucial Role of Endogenous Urocanic Acid in Photoprotection」,Journal of Investigative Dermatology,131(1):188−194,2011
【非特許文献11】Ian R.Scott,「Factors controlling the expressed activity of histidine ammonia−lyase in the epidermis and the resulting accumulation of urocanic acid」,Biochemical Journal,194(3):884−886,1995
【非特許文献12】David J.Pearton et al.,「Functional Analysis of the Profilaggrin N−Terminal Peptide:Identification of Domains that Regulate Nuclear and Cytoplasmic Distribution」,The Journal of Investigative Dermatology,119(3):661−669,2002
【非特許文献13】Joan M.Cook−Mills et al.,「Isoforms of Vitamine E Differentially Regulate Inflammation」,Endor Metab Immune Disord Drug Targets,10(4):348−366,2010
【非特許文献14】Slobodanka Tamburic et al.,「Moisturizing Potential of d−α−Tocopherol」,Allured’s Cosmetics & Toiletries magazine.114(5):73−82,1999
【非特許文献15】M.Clara De Pascale et al.,「Increased expression of transglutaminase−1 and PPARγ after vitamin E treatment in human keratinocytes」,Archives of Biochemistry and Biophysics,447:97−106,2006
【非特許文献16】Xiuju Dai et al.,「PPARγ is an important transcription factor in 1α,25−dihydroxyvitamin D3−induced involucrin expression」,Journal of Dermatological Science, 50:53−60,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、生体に存在している成分によるフィラグリン発現を促進させる成分を用いた新規なフィラグリン発現促進剤、ならびに、それを適用した化粧品、皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のフィラグリン発現促進剤は、トコフェロールを有効成分として含有することを特徴とする。
【0017】
本発明のフィラグリン発現促進剤におけるトコフェロールは、dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
本発明のフィラグリン発現促進剤は、dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種の含有量が1〜3%であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上述した本発明のフィラグリン発現促進剤を含む化粧品についても提供する。
【0020】
本発明はさらに、上述した本発明のフィラグリン発現促進剤を含む皮膚外用剤についても提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフィラグリン発現促進剤およびそれを用いた化粧品、皮膚外用剤によれば、生体にも存在しているトコフェロールを用いているため、高い安全性で、フィラグリン発現の促進作用、NMF産生促進、角層アミノ酸増加などの効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実験例1の結果を示すグラフであり、縦軸は発現比(%)である。
【
図2】実験例2の結果を示すグラフであり、縦軸は発現比(%)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のフィラグリン発現促進剤は、トコフェロールを有効成分として含有することを特徴とする。後述する実験例において立証するように、本発明者らは、ヒト培養皮膚三次元モデルにdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロールを添加して、フィラグリン蛋白の発現を検討した結果、コントロールに対してdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロールを添加するとフィラグリン蛋白の発現が有意に増加することを見出した。これにより、生体に存在しているトコフェロールを用いることで高い安全性を有しながら、フィラグリン発現の促進作用、NMF産生促進、角層アミノ酸増加などの効果が奏される。
【0024】
本発明において、トコフェロールとしては、たとえばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールなどから選ばれる少なくとも1種を特に制限なく用いることができる。中でも、dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、本発明におけるトコフェロールは、たとえばdl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールの混合物であっても勿論よい。
【0025】
本発明のフィラグリン発現促進剤において、dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種の含有量は、特に制限されるものはないが、重量%で、1〜3%の範囲内であることが好ましい。dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種の含有量が1%未満である場合には、フィラグリン発現促進作用が十分に得られずに主に抗酸化作用が発揮される傾向にあるためであり、また、dl−α−トコフェロールおよび酢酸dl−α−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種の含有量が3%を超えたとしても、フィラグリン発現がさらに増加する傾向はない。
【0026】
本発明のフィラグリン発現促進剤は、トコフェロールを有効成分とするのであれば、それ以外の成分については特に制限はなく、本発明の効果を阻害しない範囲で、水、油分、保湿剤、界面活性剤、植物抽出エキス、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、粉末成分、増粘性高分子、色素、pH調整剤、香料などの公知の添加剤を含有していても勿論よい。
【0027】
本発明は、上述した本発明のフィラグリン発現促進剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品は、従来公知の適宜の形態の化粧品であってよく、特に制限されるものではない。また、本発明の皮膚外用剤としても、たとえば軟膏、クリーム、ローションなど皮膚に適用するための外用剤として従来公知の適宜の形態を採用することができ、特に制限されるものではない。
【0028】
<実験例1>
〔1〕フィラグリン蛋白の発現
ヒト三次元培養表皮LabCyte EPI−MODEL(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製)にアッセイ培地(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製)を添加して培養後、1%、2%または3%の濃度のdl−α−トコフェロールを添加し、培養した。dl−α−トコフェロール添加後の表皮モデルを3、6時間後に回収し、ホルマリン固定、パラフィン包埋後、4μmの組織切片を作製した。その組織切片を、抗ヒトfilaggrin mAb−IgGマウス抗体(一次抗体)(Abcam製)、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG/HRP抗体(二次抗体)(Dako製)で処理し、フィラグリン蛋白の免疫染色を実施した。組織像は、高感度CCDカメラにて撮影し、フィラグリン蛋白発現は解析ソフトを用いて計測した。
【0029】
図1は、実験例1の結果を示すグラフであり、縦軸は発現比(%)である。
図1に示した様に、dl−α−トコフェロールを添加するとコントロールと比較してフィラグリン蛋白の発現が増加し、特に添加濃度2%以上で発現が高まった。
【0030】
<実験例2>
ヒト三次元培養表皮LabCyte EPI−MODEL(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製)にアッセイ培地(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製)を添加して培養後、2%の濃度の酢酸dl−α−トコフェロールを添加し、培養した。酢酸dl−α−トコフェロール添加後の表皮モデルを3、6時間後に回収し、ホルマリン固定、パラフィン包埋後、4μmの組織切片を作製した。その組織切片を、抗ヒトfilaggrin mAb−IgGマウス抗体(一次抗体)(Abcam製)、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG/HRP抗体(二次抗体)(Dako製)で処理し、フィラグリン蛋白の免疫染色を実施した。組織像は、高感度CCDカメラにて撮影し、フィラグリン蛋白発現は解析ソフトを用いて計測した。
【0031】
図2は、実験例2の結果を示すグラフであり、縦軸は発現比(%)である。
図2に示した様に、酢酸dl−α−トコフェロールを添加するとコントロールと比較してフィラグリン蛋白の発現が増加した。
【0032】
今回開示された実施形態および実験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。