(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定部は、周波数の異なる複数の交流信号を順にテスト信号として前記磁界を介して供給して当該テスト信号を供給するたびに測定した前記Q値の統計量を前記測定値として前記異物検知部に供給する
請求項1乃至3のいずれかに記載の給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(閾値を受信してQ値の測定値と比較する例)
2.第2の実施の形態(可変容量を制御してQ値を測定し、閾値と比較する例)
3.第3の実施の形態(閾値を受信してQ値の測定値と比較し、フィルタ回路を介して給電する例)
4.第4の実施の形態(Q値の低下量を受信して閾値を求め、Q値の測定値と比較する例)
【0028】
<1.第1の実施の形態>
[非接触給電システムの構成例]
図1は、第1の実施の形態における非接触給電システムの一構成例を示す斜視図である。この非接触給電システムは、磁界を介して電気的に非接触で電力を供給するためのシステムである。非接触給電システムは、給電装置100と、受電装置400および401とを備える。なお、受電装置の個数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0029】
給電装置100は、受電装置400および401に対して、磁界を介して電気的に非接触で電力を供給するものである。このような非接触給電により、ユーザは、AC(Alternating Current)アダプタ等への端子接続を行わなくとも、給電装置100に受電装置401や401を置くなどの容易な操作で充電を行うことができる。このような充電方式は、ユーザの負担を軽減させる。
【0030】
給電装置100は、例えば、一定面積の平面を備える形状に形成される。この平面(以下、「給電面」と称する。)の下部や表面には、磁界を発生する給電コイルが配置される。給電面の平面は、受電装置400および401などの受電装置を複数置くことができるように、それらの装置の受電面の面積より十分に大きいことが望ましい。ここで、受電面は、磁界を介して供給された電源を受電する受電コイルが下部や表面に配置された平面である。給電面上に、複数の受電装置を置くことにより、非接触給電システムは、これらの装置を同時または順に充電することができる。
【0031】
なお、給電面の面積を受電面の面積より大きくする構成としているが、この構成に限定されない。それらの面積が同程度であってもよいし、給電面の面積の方が受電面より小さくてもよい。また、受電装置400を近接させるだけでも充電することができるため、給電装置100の形状は、平面を備える形状に限定されない。例えば、給電装置100は、卓上ホルダやクレードルといったスタンド型の形状であってもよい。
【0032】
給電装置100は、電源が投入されると受電装置400が給電装置100の給電面に配置されたか否かを検知する。受電装置400が置かれたか否かは、給電面の抵抗値や重量の変化などから検知される。
【0033】
給電装置100が置かれると、給電装置100は、受電装置400に対して、データを送受信するのに必要な最小限の電力量W1を給電する。そして、受電装置400および401から、設定値を示すデータを受信し、その設定値に基づいて磁界内の異物の有無を検知する。設定値の内容については後述する。磁界内に異物がない場合には、給電装置100は、受電装置400に対して、電力量W1より大きい電力量W2の給電を開始する。この電力量W2は、受電装置400が二次電池の充電を行うのに十分な電力量に設定される。この電力量W2を給電することを以下、「本給電」と称する。一方、異物がある場合には、給電装置100は、受電装置400に対する給電を停止する。これにより、異物の発熱が防止される。
【0034】
ここで、異物が検知される磁界の範囲は、例えば、給電側と受電側との間の電力伝送効率が、所定値より高くなる範囲である。
【0035】
なお、給電装置100は、受電装置400が給電面に配置されたときに、異物の検知を行う構成としているが、この構成に限定されない。例えば、給電装置100に電源が投入されたときや、給電を開始するための操作(スイッチの押下など)が行われたときに、異物の検知を行う構成であってもよい。また、給電装置100は、給電を要求するコマンドを受電装置400から受信したときに異物の検知を行う構成としてもよい。あるいは、給電装置100は、一定時間ごとに異物の検知を行ってもよい。
【0036】
受電装置400は、給電装置100から磁界を介して供給された電力を受電するものである。例えば、携帯電話端末や電子スチルカメラなどの電子機器が、受電装置400として用いられる。この受電装置400は、電力量W1を受電すると、設定値を示すデータを給電装置100へ送信する。そして、電力量W2を受電すると、受電装置400は、その電力量W2を使用して二次電池の充電などを行う。受電装置401の構成は、受電装置400と同様である。なお、受電装置400や401は、電気自動車など、電子機器以外の機器であってもよい。
【0037】
[給電装置の構成例]
図2は、第1の実施の形態における給電装置100の一構成例を示すブロック図である。この給電装置100は、共振回路110、給電制御部120、通信部130、測定部140および異物検知部160を備える。
【0038】
共振回路110は、コンデンサ111および給電コイル112を備える。給電コイル112の一端は、信号線117を介して給電制御部120および通信部130に接続され、他端はコンデンサ111に接続される。また、コンデンサ111の一端は、給電コイル112に接続されるとともに、信号線119を介して測定部140にも接続される。コンデンサ111の他端は信号線116を介して給電制御部120に接続されるとともに、信号線118を介して測定部140にも接続される。
【0039】
給電コイル112は、給電制御部120から交流電力を受け取り、アンペールの法則に従って磁界を発生するものである。この磁界を介して受電装置400に交流電力が供給される。
【0040】
給電コイル112は、例えば、導電性の線材を巻くことにより形成され、それぞれの巻き数は、任意である。なお、給電コイル112は、導電性の線材を巻く方法以外の方法により形成してもよい。例えば、プリント配線板やフレキシブルプリント基板などに導電性のパターンにより形成してもよい。このようなコイルは、パターンコイルやパターンループと呼ばれる。パターンコイルは、導電性材料を基板に印刷ないし蒸着したものや導電性の板金やシート等を加工することによっても形成することができる。受電側のコイルについても同様である。
【0041】
コンデンサ111は、電気エネルギーを蓄積または放出する素子である。コンデンサ111の容量値は、共振回路110の共振周波数f1が、受電側の共振周波数f2と略一致するように、もしくは共振周波数f2の近傍の周波数となるように設定される。
【0042】
なお、共振回路110は、特許請求の範囲に記載の給電部の一例である。また、給電装置100は、共振回路110を1つ備える構成としているが、共振回路110を複数備える構成としてもよい。
【0043】
給電制御部120は、共振回路110に交流電力を供給するとともに、その電力量を制御するものである。受電装置400が給電面に置かれると、給電制御部120は、信号線116および117を介して交流信号を一定期間の間、テスト信号として送信する。このテスト信号はQ値を測定するための信号であり、テスト信号により供給される電力量は、電力量W1より低いものとする。
【0044】
テスト信号の送信が終了すると、給電制御部120は、電力量W1の電力を共振回路110に供給する。
【0045】
そして、給電制御部120は、異物検知部160から、異物の検知結果を受け取り、異物がない場合には本給電を行う。すなわち、給電制御部120は、電力量W2の電力を共振回路110に供給する。一方、異物がある場合には、給電制御部120は、共振回路110への給電を停止する。
【0046】
通信部130は、受電装置400との間でデータを送受信するものである。通信部130は、例えば、給電コイル112を介して、負荷変調方式により交流信号に重畳されたデータを受電装置400との間で送受信する。受電装置400から受信する受信データには、設定値として閾値を示すデータが含まれる。この閾値は、受電装置400に加えて、異物が磁界内にあるときにおける、共振回路110のQ値である。受電装置400の種類により導体の量は異なるため、閾値は、その量に基づいて予め受電装置400において設定される。Q値の定義や測定方法については、後述する。通信部130は、受信した閾値を異物検知部160に供給する。
【0047】
なお、通信部130は、特許請求の範囲に記載の受信部の一例である。また、通信部130は、給電コイル112を介してデータを送受信する構成としているが、この構成に限定されない。例えば、給電装置100が給電コイル112と別に、通信を行うための通信コイルやアンテナを備え、通信部130は、その通信コイル等を介してデータを送受信してもよい。
【0048】
また、通信部130は、閾値を示すデータの送信を要求する送信要求コマンドを受電装置400に送信してもよい。この場合、受電装置400は、送信要求コマンドにより要求されたデータを送信し、通信部130が、そのデータを受信する。
【0049】
また、通信部130は、充電完了の通知や給電を要求するコマンドなどを受信してもよい。充電完了の通知を受信した場合、給電装置100は給電を停止する。また、通信部130は、異物の検知結果を受電装置400に送信してもよい。異物がある旨を示す検知結果を受信した受電装置400は、二次電池への充電の停止や、その受電装置内の負荷への給電の停止などを行う。
【0050】
また、通信部130は、設定値として閾値を受信しているが、設定値は、受電装置400に含まれる導体の量に基づいて予め設定された値であればよく、閾値に限定されない。例えば、第2の実施の形態において後述するように、通信部130は、受電装置400内の導体の面積や体積を設定値として受信してもよい。ここで、設定値は、例えば、受電装置400の筐体に含有される導体の量に基づいて設定される。ただし、この構成に限定されず、例えば、設定値は、受電装置400の内部の回路や部品などに用いられる導体の量に基づいて設定された値であってもよい。また、設定値は、筐体、回路や部品等、受電装置400全体に含まれる導体の量に基づいて設定された値であってもよい。
【0051】
測定部140は、共振回路110の品質係数、いわゆるQ値を測定するものである。ここで、Q値は、非接触給電システムにおける給電(1次)側と受電(2次)側とのコイル間の電力伝送効率(コイル間効率)に関連する電気特性値である。
【0052】
このコイル間効率の理論最大値E
maxは、次の式により表される。
【数1】
上式においてSは、次の式により表される。
【数2】
【0053】
上式においてQ
totalは、非接触給電システム全体のQ値である。また、kは、1次側のコイルと2次側のコイルとの電磁結合の度合いを示す結合係数であり、1次側および2次側のそれぞれのコイルの位置関係などにより変動する。Q
1は、1次側のQ値(すなわち、共振回路110のQ値)であり、Q
2は2次側のQ値である。式1および式2より、コイル間効率E
maxは、結合係数kと、1次側および2次側のそれぞれのQ値とから、理論的に一意に求められる。また、式1および式2は、結合係数k、Q
1およびQ
2のそれぞれの値が大きいほど、コイル間効率E
maxは高くなることを示す。このため、結合係数kが低くても、給電側のQ
1や受電側のQ
2が高ければ、高効率での電力伝送を行うことができる。
【0054】
また、Q
1は、給電装置100が供給する磁界内に、金属片などの異物があると変動する。これは、磁界内の磁力線が金属片を通過して金属片に渦電流が発生するためである。この渦電流の発生により、等価回路上は、金属片と給電コイル112とが電磁的に結合して、給電コイル112に抵抗負荷がついたように見える。このため、給電コイル112を含む共振回路110のQ値(Q
1)は低下する。したがって、共振回路110のQ値から、給電装置100は、異物の有無を検知することができる。
【0055】
測定部140は、共振回路110のQ値を測定するものである。測定部140は、テスト信号が送信されている間において、共振回路110のQ値を測定する。具体的には、測定部140は、コンデンサ111の両端のうち給電制御部120側の電圧V1と、コンデンサ111の両端のうち給電コイル112側の電圧V2とを測定する。V1およびV2の単位は、例えば、ボルト(V)である。そして、測定部140は、V1およびV2から、次の式を使用して共振回路110のQ値(Q
1)を求める。測定部140は、測定したQ値を測定値として異物検知部160に供給する。
Q
1=V2/V1=2πfL/rs ・・・式3
【0056】
上式において、fは、給電コイル112に供給される交流信号(テスト信号など)の周波数を示し、単位は例えばヘルツ(Hz)である。rsは、周波数fにおける実効抵抗値を示し、単位は例えば、オーム(Ω)である。Lは、共振回路110のインダクタンスであり、単位は例えばヘンリー(H)である。
【0057】
前述したように、給電コイル112の発生する磁界内に異物があると、実効抵抗値rsが増加する。実効抵抗値rsが増加すると、式3よりQ
1が低下する。すなわち、異物が磁界内にあると、Q
1が低下する。
【0058】
異物検知部160は、閾値とQ値の測定値とから、磁界内の異物を検知するものである。異物検知部160は、その閾値と測定値とを比較し、測定値が閾値以下である場合には異物があると判断し、そうでない場合には異物がないと判断する。異物検知部160は、検知結果を給電制御部120に供給する。
【0059】
なお、異物検知部160は、閾値とQ値とを直接比較しているが、この構成に限定されない。閾値は、予め受電装置400に設定された値であるが、製品ばらつきや、コイルの位置ずれなどの原因により、設定時の閾値が適切な閾値からずれてしまうおそれがある。そこで、異物検知部160は、受信した閾値を、それより少し低い値に調整してから測定値と比較してもよい。閾値の調整は、閾値から所定値を減算したり、1未満の所定の係数を閾値に乗算したりすることにより行われる。
【0060】
また、異物検知部160は、閾値とQ値との比較結果から異物を検知しているが、この構成に限定されない。異物検知部160は、共振回路110におけるQ値以外の電気特性値と、閾値とを比較して、その比較結果から異物を検知してもよい。例えば、測定部140がQ値の代わりに共振回路110のインダクタンスを測定し、異物検知部160が、そのインダクタンスと閾値との比較結果から異物を検知してもよい。異物の材質によっては、インダクタンスの変化の方が、Q値の変化よりも大きいこともあるため、異物検知部160は、インダクタンスと閾値との比較から、そのような異物を検知することができる。
【0061】
また、測定部140がQ値の代わりに共振回路110の共振周波数を測定し、異物検知部160が、その測定値と閾値との比較結果から異物を検知してもよい。
【0062】
図3は、第1の実施の形態におけるQ値と異物金属サイズとの関係を示すグラフの一例である。同図の縦軸は、磁界内に異物金属が置かれた場合における給電装置100における給電コイル112のQ値であり、横軸は、異物金属のサイズである。
【0063】
ここで、異物金属として、例えば、上面および底面が正方形である6面体の鉄の試料が用いられる。異物金属の底面から上面までの距離(厚さ)は、例えば、1ミリメートル(mm)である。上面および底面の一辺の長さが、
図3の横軸における異物金属のサイズを示す。
【0064】
また、丸印は、受電装置Aを磁界内に設置した場合において測定した、異物金属サイズごとのQ値の測定値をプロットしたものである。四角印は、受電装置Bを磁界内に設置した場合において測定した各測定値をプロットしたものである。三角印は、受電装置Cを磁界内に設置した場合において測定した各測定値をプロットしたものである。バツ印は、受電装置Dを磁界内に設置した場合において測定した各測定値をプロットしたものである。これらの受電装置A、B、CおよびDの筐体の表面における導体の面積は、Aの面積が最も小さく、Bが2番目に小さく、Cが3番目に小さく、Dが最も大きいものとする。
【0065】
なお、異物や受電装置の配置された位置によってもQ値は変動するが、それらの位置は、各測定において同一であるものとする。また、この他、Q値を変動させうる各種の測定条件は、各測定において、同じであるものとする。
【0066】
図3に例示するように、異物がない状態、すなわち異物金属サイズが0ミリメートルのときのQ値が受電装置の種類によって大きく異なっている。受電装置Aであれば、このときのQ値は80以上であるが、受電装置DのQ値は40以下である。このように同じ条件でQ値が異なるのは、受電装置のそれぞれに含まれる導体の量が異なるためである。例えば、スマートフォンのようなモバイル機器は、筐体も含め、かなりの部分に金属などの導体が使用されることがある。磁界内の磁力線がそれらの導体を通過することを、完全に防止することは困難である。このような受電装置内の導体を磁力線が通過すると、電磁誘導効果により渦電流が流れてしまう。このメカニズムは、異物が発熱するメカニズムと全く同様であるため、受電装置内の導体に渦電流が流れたのか、金属異物が混入して渦電流が流れたのかを、給電側から判断するのは非常に難しい。
【0067】
このような背景により、異物の有無を判断する閾値は、受電装置に含まれる導体の量に基づいて設定する必要がある。仮に、閾値を各受電装置について同じにすると、異物を正確に検知することができないおそれがある。例えば、異物がないときの受電装置CのQ値は55くらいなので、検知対象サイズ5ミリメートルに対応する閾値を仮に45に決定したとする。一方、受電装置Aについての測定結果において、45の閾値に対応する異物金属サイズは12ミリメートルである。このため、受電装置Cについての閾値を受電装置Aに適用すると、受電装置Aを充電する際に、12ミリメートルより大きな異物しか検知できなくなってしまう。
【0068】
そこで、受電装置A、B、CおよびDのそれぞれについて、異なる閾値が設定される。例えば、検知対象サイズS1を5ミリメートル(mm)程度とし、受電装置A、BおよびCを設置した場合のS1に対応するQ値が閾値Th_A、Th_BおよびTh_Cとして設定される。しかし、受電装置Dを設置した場合において検知対象サイズS1に対応するQ値は、異物がない場合におけるQ値とほとんど変わらない。このため、受電装置Dについては、例外的にS1より大きいS2が検知対象サイズとされ、そのS2に対応するQ値が閾値Th_Dとして設定される。
【0069】
なお、検知対象サイズに対応するQ値を閾値として設定しているが、異物を検知することができる閾値を、受電装置内の導体の量に基づいて設定することができるのであれば、この設定方法に限定されない。例えば、異物がない状態で受電装置を設置した場合のQ値を求め、そのQ値から所定値を減算した値を閾値として設定してもよい。あるいは、異物がない状態で受電装置を設置した場合のQ値に、1未満の所定の係数を乗算した値を閾値として設定してもよい。
【0070】
受電装置400は、その装置内の導体の面積に応じて、
図3に例示するように、予め設定された閾値を記憶しておき、その設定値を示すデータを給電装置100に送信する。
【0071】
[給電制御部の構成例]
図4は、第1の実施の形態における給電制御部120の一構成例を示すブロック図である。この給電制御部120は、スイッチング制御部121およびスイッチ部122を備える。スイッチ部122は、トランジスタ123、124、125および126を備える。
【0072】
スイッチング制御部121は、スイッチ部122のスイッチング動作を制御するものである。スイッチング制御部121は、給電装置100の電源が投入されると、スイッチ部122に制御信号を供給して、一定のスイッチング周波数でスイッチ部122のスイッチング動作を開始させる。このスイッチング動作において、トランジスタ123および124の組と、トランジスタ125および126の組との一方の組がオン状態に制御され、他方の組がオフ状態に制御される。オン状態に制御する組は、スイッチング周波数に対応する周期で変更される。これにより、トランジスタ123および124と、トランジスタ125および126とが交互にオンオフする。
【0073】
スイッチング制御部121は、まず、スイッチング周波数をn(nは2以上の整数)個の異なる周波数に、一定間隔で順に制御して共振周波数を探索する。これにより、周波数の異なる複数のテスト信号が順に生成されて給電制御部120から出力される。このように、周波数を一定間隔で順に変更する制御は周波数スイープと呼ばれる。
【0074】
ここで、共振周波数は、給電装置100内の部品品質のばらつき、給電コイルおよび受電コイルの位置関係、給電コイルや受電コイルと筐体に含有される金属との間の位置関係のばらつき、異物の位置やサイズなどにより変動する。そこで、異物がなく、各種の位置関係にずれがないなどの理想的な状態における共振周波数を設計値として、その設計値を含む一定の範囲の周波数帯域内で周波数スイープを行って、実際の共振周波数を探索する必要がある。
【0075】
例えば、設計値が100キロヘルツ(kHz)である場合、88乃至105キロヘルツの帯域において、400ヘルツのステップで42個の周波数について、周波数スイープが行われる。これらの周波数のうち、共振回路110のQ値が最も高い周波数が共振周波数として取得される。
【0076】
また、周波数スイープにおいて周波数を変えると、過渡応答により、テスト信号の振幅が一定レベルになるのにある程度の時間がかかる。このため、測定部140においては、周波数が変更されてから、振幅が一定レベルになるまでの一定時間が経過したときに、測定が開始される。
【0077】
スイッチング制御部121は、周波数スイープを行った後に、共振周波数によりスイッチ部122に給電量W1の電力を供給させる。給電量は、例えば、スイッチ部122に供給する制御信号の電圧により制御される。
【0078】
給電量W1の電力を供給した後に、スイッチング制御部121は異物の検知結果を異物検知部160から受け取り、異物があった場合にはスイッチ部122のスイッチング動作を停止させる。これにより、給電が停止する。一方、異物がない場合には、スイッチング制御部121は、共振周波数によりスイッチ部122をスイッチング動作させて、給電量W2の電力により本給電を行わせる。
【0079】
トランジスタ123、124、125および126は、スイッチング制御部121の制御に従ってオン状態またはオフ状態に遷移するスイッチング素子である。トランジスタ123、124、125および126として、例えば、MOSトランジスタが用いられる。トランジスタ123および124のゲートは、スイッチング制御部121に接続され、ソースは接地端子に接続され、ドレインはコンデンサ111に接続される。トランジスタ125および126のゲートは、スイッチング制御部121に接続され、ソースは接地端子に接続され、ドレインは給電コイル112に接続される。
図4において、スイッチング制御部121と、スイッチ部122内の各トランジスタとの間を接続する信号線は省略されている。
【0080】
図5は、第1の実施の形態における測定部140の一構成例を示すブロック図である。この測定部140は、バッファ回路141および142と、整流部143および144と、A/D変換部145と、Q値取得部146とを備える。
【0081】
バッファ回路141は、共振回路110から信号線118を介して受け取ったテスト信号の電圧を一定の比率で分圧して整流部143に供給するものである。バッファ回路142は、共振回路110から信号線119を介して受け取ったテスト信号の電圧を一定の比率で分圧して整流部144に供給するものである。例えば、アッテネータなどが、バッファ回路141および142として用いられる。
【0082】
整流部143および144は、交流のテスト信号を直流信号に整流するものである。これらの整流部143および144は、整流した直流信号をA/D変換部145に供給する。
【0083】
A/D変換部145は、アナログの直流信号をデジタル信号に変換してQ値取得部146に供給するものである。
【0084】
Q値取得部146は、直流信号の電圧からQ値を求めるものである。Q値取得部146は、整流部143からの直流信号の電圧を電圧V1とし、整流部144からの直流信号の電圧を電圧V2として、式3を使用してQ値を算出してメモリ(不図示)などに保持する。Q値取得部146は、テスト信号の周波数が変更されるたびに、Q値を算出する。例えば、n個の周波数について周波数スイープが行われると、n個のQ値が算出される。
【0085】
ただし、前述したように、過渡応答によって、周波数を変更してから一定期間の間は振幅が一定レベルにならない。このため、この一定期間を経過してから次に周波数が変更されるまでの測定期間においてQ値取得部146は、Q値の算出を行う。
【0086】
Q値取得部146は、n個のQ値を算出すると、それらのQ値のうち最大値を選択し、その最大値を測定値として異物検知部160に供給する。
【0087】
なお、測定部140は、整流した直流信号の電圧を測定してQ値を求めているが、整流前の交流信号の振幅を測定してQ値を求めてもよい。
【0088】
図6は、第1の実施の形態におけるQ値と交流周波数との関係の一例を示すグラフである。同図の縦軸は、給電(1次)側のQ値であり、横軸は、テスト信号の交流周波数である。同図に示すように、給電装置100は、n個の交流周波数のそれぞれについて、周波数スイープを行い、Q値をn回測定する。Q値は、交流周波数が、共振周波数fpに略一致するときに最大となる。給電装置100は、この共振周波数fpのときの測定値Qpと、閾値とを比較し、その比較結果から異物を検知する。
【0089】
図7は、第1の実施の形態におけるテスト信号の周波数と信号レベルの変化の一例を示す図である。同図において縦軸は、テスト信号の信号レベルであり、横軸は時間を示す。同図に示すように、テスト信号の周波数は、一定時間ごとに変更される。そして、ある周波数に制御されてから、例えば、Xミリ秒(ms)が経過すると、テスト信号の振幅が一定レベルになる。このXミリ秒(ms)が経過したときから、さらにYミリ秒(ms)が経過するまでの測定期間内において、給電装置100は、Q値を測定する。そして、測定期間が経過すると、テスト信号の周波数は、次の周波数に制御される。
【0090】
[受電装置の構成例]
図8は、第1の実施の形態における受電装置400の一構成例を示すブロック図である。この受電装置400は、共振回路410、充電制御部420、通信部430、記憶部440および二次電池450を備える。
【0091】
共振回路410は、給電装置100から供給された電力を磁界を介して受電するものである。この共振回路410は、コンデンサ411および受電コイル412を備える。受電コイル412の一端は、充電制御部420および通信部430に接続され、他端はコンデンサ411に接続される。また、コンデンサ411の一端は、受電コイル412に接続され、他端は充電制御部420に接続される。
【0092】
受電コイル412は、給電装置100から供給された電力を磁界を介して受電するものである。この受電コイル412は、給電装置100から磁界が供給されると、電磁誘導の法則に従って、その磁界の磁束の変化に応じた誘導電圧を発生する。
【0093】
コンデンサ411は、電気エネルギーを蓄積または放出する素子である。コンデンサ411の容量値は、共振回路410の共振周波数f2が、給電側の共振周波数f1と略一致するように、もしくは共振周波数f1の近傍の周波数となるように設定される。
【0094】
なお、共振回路410は、特許請求の範囲に記載の受電部の一例である。また、受電装置400は、共振回路410を1つ備える構成としているが、共振回路410を複数備える構成としてもよい。
【0095】
充電制御部420は、二次電池450を充電するものである。充電制御部420は、共振回路410を介して受電した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を使用して二次電池450を充電する。また、充電制御部420は、二次電池450の充電中において、その充電電力の一部を、通話機能や表示機能などの各種の機能を有する負荷回路(不図示)に供給する。
【0096】
通信部430は、給電装置100との間でデータを送受信するものである。通信部430は、例えば、受電コイル412を介して、負荷変調方式などにより交流信号に重畳したデータを受電装置400との間で送受信する。共振回路410を介して電力量W1を受電すると通信部430は、記憶部440から閾値を読み出し、その閾値を示すデータを交流信号に重畳して給電装置100に送信する。
【0097】
なお、通信部430は、特許請求の範囲に記載の送信部の一例である。また、通信部430は、受電コイル412を介してデータを送受信する構成としているが、この構成に限定されない。例えば、受電装置400が受電コイル412と別に、通信を行うための通信コイルやアンテナを備え、通信部430は、その通信コイル等を介してデータを送受信してもよい。
【0098】
また、通信部430は、閾値を示すデータの送信を要求する送信要求コマンドを給電装置100から受信してもよい。この場合、通信部430は、送信要求コマンドにより要求されたデータを送信する。
【0099】
また、通信部430は、充電完了の通知や給電を要求するコマンドなどを送信してもよい。また、通信部130は、異物の検知結果を受電装置400から受信してもよい。
【0100】
記憶部440は、閾値を記憶するものである。二次電池450は、充電制御部420により充電された電力を蓄えるものである。例えば、リチウムイオン電池などが二次電池450として用いられる。
【0101】
[給電装置の動作例]
図9は、第1の実施の形態における給電装置100の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば、受電装置400が給電面に設置されたことを給電装置100が検知したときに開始する。
【0102】
給電装置100は、まず、Q値を測定するQ値測定処理を実行する(ステップS910)。そして、給電装置100は、受電装置400が通信可能な最小限の電力量W1を磁界を介して給電する(ステップS901)。
【0103】
そして、給電装置100は、受電装置400から、閾値を示すデータを受信する(ステップS902)。給電装置100は、測定したQ値と閾値とを比較し、Q値が閾値より高い(すなわち、異物がない)か否かを判断する(ステップS903)。
【0104】
Q値が閾値より高い場合には(ステップS903:Yes)、給電装置100は、電力量W1より高い電力量W2の電力を給電する(ステップS904)。一方、Q値が閾値以下である場合には(ステップS903:No)、給電装置100は、給電を停止する(ステップS905)。ステップS904またはS905の後、給電装置100は動作を停止する。
【0105】
図10は、第1の実施の形態におけるQ値測定処理の一例を示すフローチャートである。給電装置100は、テスト信号を供給し、供給開始から一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS913)。一定時間が経過していなければ(ステップS913:No)、給電装置100は、ステップS913に戻る。
【0106】
一定時間が経過したのであれば(ステップS913:Yes)、給電装置100は、電圧V1およびV2を測定する(ステップS914)。そして、給電装置100は、それらの電圧から、式3を使用してQ値を算出する(ステップS915)。給電装置100は、測定回数がn回に達したか否かを判断する(ステップS916)。
【0107】
測定回数がn回未満である場合(ステップS916:No)、給電装置100は、テスト信号の交流周波数を変更し(ステップS917)、ステップS913に戻る。一方、測定回数がn回に達した場合(ステップS916:Yes)、給電装置100は、n個のQ値の中から最大値を選択して、最終的な測定値とする(ステップS918)。ステップS918の後、給電装置100は、Q値測定処理を終了する。
【0108】
[受電装置の動作例]
図11は、第1の実施の形態における受電装置400の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば、電力量W1の電力を受電装置400が受電したときに開始する。
【0109】
受電装置400は、閾値を示すデータを給電装置100に送信する(ステップS951)。そして、受電装置400は、電力量W2の電力を受電したか否かを判断する(ステップS952)。電力量W2の電力を受電していなければ(ステップS952:No)、受電装置400は、ステップS952に戻る。
【0110】
電力量W2の電力を受電したのであれば(ステップS952:Yes)、受電装置400は、その電力を使用して二次電池の充電などを行う(ステップS953)。ステップS953の後、受電装置400は動作を終了する。
【0111】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、給電装置100は、受電装置内の導体の量に基づいて設定された閾値を受信してQ値の測定値と比較するため、様々な受電装置を使用するシステムにおいて磁界内の異物を正確に検知することができる。
【0112】
[変形例]
第1の実施の形態では、給電装置100は、設定値として、Q値の閾値を受信していたが、受電装置内の導体の量に基づいて設定された値であれば、閾値以外の値を設定値として受信してもよい。例えば、給電装置100は、受電装置400の筐体の表面に占める導体の表面積を設定値として受信することもできる。第1の実施の形態の変形例の給電装置100は、受電装置400における導体の表面積を設定値として受信する点において第1の実施の形態と異なる。
【0113】
図12は、第1の実施の形態の変形例における異物検知部160の一構成例を示すブロック図である。この異物検知部160は、閾値テーブル161、閾値取得部162および比較部163を備える。
【0114】
閾値テーブル161は、受電装置の導体の表面積がとりうる複数の範囲のそれぞれについて、閾値を対応付けたテーブルである。閾値取得部162は、受電装置400の導体の面積を通信部130から受け取り、その面積に対応する閾値を閾値テーブル161から読み出すものである。閾値取得部162は、取得した閾値を比較部163に供給する。比較部163は、取得された閾値と、Q値の測定値とを比較して、比較結果から異物を検知するものである。比較部163は、検知結果を給電制御部120に供給する。
【0115】
なお、閾値取得部162は、閾値テーブル161から閾値を読み出しているが、この構成に限定されない。閾値取得部162は、例えば、面積と閾値との関係を示す関係式を使用して、面積から閾値を算出することにより、閾値を取得してもよい。
【0116】
図13は、第1の実施の形態の変形例における閾値テーブル161の一例を示す図である。この閾値テーブル161には、受電装置の導体の表面積がとりうる複数の範囲のそれぞれについて、閾値が対応付けて記載される。例えば、0乃至A1平方ミリメートル(mm
2)の面積の範囲に対応付けて閾値Th_Aが記載され、A1乃至A2平方ミリメートルの面積の範囲に対応付けて閾値Th_Bが記載される。また、A2乃至A3平方ミリメートルの面積の範囲に対応付けて閾値Th_Cが記載され、A3乃至A4平方ミリメートルの面積の範囲に対応付けて閾値Th_Dが記載される。
【0117】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、給電装置100は、スイッチング周波数の制御によりテスト信号の周波数を制御していた。しかし、スイッチング周波数を細かなステップで制御するには高クロックで動作する回路が必要になり、給電装置100の負担が大きくなる。これに対して、共振回路内の容量の制御によりテスト信号の周波数を制御する構成であれば、高クロックの回路が不要となり、給電装置100の負担が小さくなる。第2の実施の形態の給電装置100は、共振回路の容量の制御により、テスト信号の周波数を制御する点において第1の実施の形態と異なる。
【0118】
[給電装置の構成例]
図14は、第2の実施の形態における給電装置100の一構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態の給電装置100は、測定部140の代わりに測定部150を備える点において第1の実施の形態と異なる。また、第2の実施形態では、給電コイル112のコンデンサ111側の一端のみが、測定部150と信号線119を介して接続される。
【0119】
測定部150は、テスト信号を生成し、共振回路の容量の制御によりテスト信号の周波数を制御する。また、測定部150は、周波数を変更するたびにQ値を測定する。
【0120】
また、第2の実施の形態のスイッチング制御部121は、テスト信号を送信しない。スイッチング制御部121は、測定部150がテスト信号を送信している間において、トランジスタ123および124をオフ状態に制御し、トランジスタ125および126をオン状態に制御する。そして、異物がないことを示す検知結果を受け取ると、スイッチング制御部121は、スイッチ部122にスイッチング動作を開始させる。
【0121】
[測定部の構成例]
図15は、第2の実施の形態における測定部150の一構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態の測定部150は、可変容量147、交流電源151および可変容量制御部152をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0122】
可変容量147は、可変容量制御部152の制御に従って、容量が変化する素子である。可変容量147として、可変容量ダイオード(いわゆる、バリキャップ)や、MEMS(Micro Electro Mechanical System)可変容量素子などが用いられる。可変容量147の一端は、バッファ回路141および給電コイル112に接続され、他端は、バッファ回路142および交流電源151に接続される。交流電源151は、固定周波数の交流信号をテスト信号として供給するものである。
【0123】
可変容量制御部152は、可変容量147の容量を一定間隔で順に変更するものである。給電コイル112と可変容量147とは、直列共振回路を構成し、可変容量制御部152が、その回路の容量を変更することにより、この回路を介して出力されるテスト信号の周波数が変更される。
【0124】
このように、第2の実施の形態によれば、給電装置100は、可変容量147の容量を変更してテスト信号の周波数を変更するため、Q値の測定においてスイッチング周波数の制御を行う必要がなくなる。これにより、給電装置100の負担が軽減される。
【0125】
<3.第3の実施の形態>
第1の実施の形態では、給電制御部120は、フィルタ回路を介さずに電力を供給していたが、高調波を軽減するフィルタ回路などを介して電力を供給してもよい。第3の実施の形態の給電制御部120は、フィルタ回路を介して電力を供給する点において第1の実施の形態と異なる。
【0126】
[給電装置の構成例]
図16は、第3の実施の形態における給電装置100の一構成例を示すブロック図である。第3の実施の形態の給電装置100は、測定部140の代わりに測定部155を備え、フィルタ回路170をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。また、第3の実施の形態の給電装置100は、共振回路110においてコンデンサ113をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0127】
フィルタ回路170は、所定の周波数帯域の交流信号を通過させるものである。例えば、カットオフ周波数未満の周波数帯域を通過させるローパスフィルタが、フィルタ回路170として用いられる。フィルタ回路170は、給電制御部120と共振回路110との間に設けられ、給電制御部120は、フィルタ回路170を介して電力を共振回路110に供給する。これにより、給電装置100は、高調波の発生を抑制することができる。
【0128】
コンデンサ113の一端は給電コイル112に接続される。また、コンデンサ113の他端は、信号線117を介してフィルタ回路170に接続され、信号線115を介して測定部155に接続される。
【0129】
また、第3の実施の形態のコンデンサ111のフィルタ回路170側の一端は、信号線114および118を介して測定部155に接続され、他端は、信号線119を介して測定部155に接続される。
【0130】
測定部155は、テスト信号を生成して、そのテスト信号の周波数を一定間隔で変更する。また、測定部150は、周波数を変更するたびにQ値を測定する。
【0131】
第3の実施の形態の給電制御部120は、テスト信号を生成している期間において、給電を停止する。そして、その期間が終了すると、給電制御部120は、電力量W1の電力を供給する。その後に、異物がないことを示す検知結果を受け取ると、給電制御部120は、電力量W2の電力を供給する。
【0132】
[フィルタ回路の構成例]
図17は、第3の実施の形態におけるフィルタ回路170の一構成例を示すブロック図である。このフィルタ回路170は、インダクタ171および173とコンデンサ172とを備える。
【0133】
コンデンサ172の一端は、コンデンサ111およびインダクタ171に接続され、他端は、コンデンサ111およびインダクタ173に接続される。インダクタ171の一端は、コンデンサ172およびコンデンサ111に接続され、他端は給電制御部120に接続される。インダクタ173の一端は、コンデンサ172およびコンデンサ113に接続され、他端は給電制御部120に接続される。
【0134】
このように、交流電力が供給される信号線に並列に接続されたコンデンサ172と、その信号線に直列に接続されたインダクタ171および173とにより、2次のローパスフィルタが形成される。
【0135】
[測定部の構成例]
図18は、第3の実施の形態における測定部155の一構成例を示すブロック図である。測定部155は、測定制御部156と、テスト信号供給部157と、トランジスタ158および159とをさらに備える点において第1の実施形態の測定部140と異なる。
【0136】
トランジスタ158および159は、測定制御部156の制御に従ってオン状態またはオフ状態に遷移するスイッチング素子である。トランジスタ158および159として、例えば、MOSトランジスタが用いられる。トランジスタ158のゲートは測定制御部156に接続され、ソースはテスト信号供給部157に接続され、ドレインは信号線114を介してコンデンサ111に接続される。また、トランジスタ159のゲートは測定制御部156に接続され、ソースは接地端子に接続され、ドレインは信号線115を介してコンデンサ113に接続される。
【0137】
テスト信号供給部157は、フィルタ回路170を介さずにテスト信号を供給して、そのテスト信号の周波数を一定間隔で制御する(周波数スイープを行う)ものである。フィルタ回路170を介さずにテスト信号を供給するのは、フィルタ回路170を介してテスト信号を供給すると、フィルタ回路170内の容量成分により、Q値の算出が困難になるためである。
【0138】
測定制御部156は、テスト信号供給部157とトランジスタ158および159とを制御するものである。測定制御部156は、給電面に受電装置400が配置されると、トランジスタ158および159をオン状態に制御し、テスト信号供給部157に周波数スイープを開始させる。そして、周波数スイープが終了すると、測定制御部156は、トランジスタ158および159をオフ状態に制御する。
【0139】
[給電装置の動作例]
図19は、第3の実施の形態におけるQ値測定処理の一例を示すフローチャートである。第3の実施の形態のQ値測定処理は、ステップS911およびS912をさらに実行する点において第1の実施の形態と異なる。
【0140】
給電装置100は、フィルタ回路170を介した給電を停止し(ステップS911)、フィルタ回路170を介さずにテスト信号を出力する(ステップS912)。そして、給電装置100は、ステップS913乃至S918を実行する。
【0141】
このように第3の実施の形態によれば、給電装置100がフィルタ回路170を介さずにテスト信号を供給してQ値を測定するため、フィルタ回路170を備えるシステムにおいて、Q値を容易に測定することができる。
【0142】
[変形例]
第3の実施の形態では、インダクタを2つ備えるフィルタ回路170を用いていたが、フィルタ回路170内のインダクタは1つであってもよい。第3の実施の形態の変形例の給電装置100は、インダクタを1つ備えるフィルタ回路170を用いる点において第3の実施の形態と異なる。
【0143】
[給電装置の構成例]
図20は、第3の実施の形態の変形例の給電装置100の一構成例を示すブロック図である。変形例の共振回路110は、第1の実施の形態と同様である。
【0144】
変形例のフィルタ回路170は、インダクタを1つ備える点において第3の実施の形態のフィルタ回路170と異なる。変形例の測定部155は、信号線115が接続されない点において、第3の実施の形態と異なる。
【0145】
[フィルタ回路の構成例]
図21は、第3の実施の形態の変形例におけるフィルタ回路170の一構成例を示すブロック図である。変形例のフィルタ回路170は、インダクタ173を備えない点において第3の実施の形態と異なる。
【0146】
[測定部の構成例]
図22は、第3の実施の形態の変形例における測定部155の一構成例を示すブロック図である。変形例の測定部155は、トランジスタ159を備えない点において第3の実施の形態と異なる。
【0147】
このように、変形例によれば、フィルタ回路170のインダクタなどの素子数を削減することができる。
【0148】
<4.第4の実施の形態>
第1の実施の形態では、給電装置100は、設定値として、Q値の閾値を受信していたが、受電装置内の導体の量に基づいて設定された値であれば、閾値以外の値を設定値として受信してもよい。例えば、給電装置100は、受電装置400を磁界内に配置したことによるQ値の低下量を設定値として受信することもできる。第1の実施の形態の変形例の給電装置100は、受電装置400を磁界内に配置したことによるQ値の低下量dQを設定値として受信する点において第1の実施の形態と異なる。
【0149】
[異物検知部の構成例]
図23は、第4の実施の形態における異物検知部160の一構成例を示すブロック図である。この異物検知部160は、閾値取得部164および比較部163を備える。
【0150】
閾値取得部164は、受電装置400の磁界内への配置によるQ値の低下量dQに基づいて、閾値を取得するものである。ここで、異物および受電装置400を磁界内に配置していない場合における給電側のQ値を基本値Qsとし、異物がない磁界内に受電装置400を配置した場合の給電側のQ値をQtとする。これらのQsおよびQtの差分が低下量dQとして用いられる。閾値取得部164は、その低下量dQと基本値Qsとから、受電装置400を配置した場合のQtを求める。例えば、基本値QsからdQを減算することにより、Qtが求められる。なお、QsおよびQtの差分の代わりに、Qsに対するQtの比率を低下量として用いてもよい。
【0151】
そして、閾値取得部164は、求めたQtを一定量または一定比率の分、少なくして、その値を閾値とする。例えば、Qtから固定量dQ_fを減算する処理や、Qtに所定の1未満の係数を乗算する処理により、閾値が求められる。閾値取得部164は、取得した閾値を比較部163に供給する。比較部163は、閾値とQ値の測定値とを比較し、その比較結果から異物を検知する。
【0152】
図24は、第4の実施の形態における受電装置ごとのQ値の低下量の一例を示すグラフである。同図の縦軸は、磁界内に異物金属が置かれた場合における給電装置100における給電コイル112のQ値である。同図の横軸は、異物金属のサイズである。
【0153】
異物と受電装置A、B、CおよびDとのいずれも磁界内にない場合の1次側のQ値が、基本値Qsとして予め測定される。また、異物がなく、受電装置Aのみが磁界内にある場合の1次側のQ値が、Qt_Aとして予め測定され、受電装置Bのみが磁界内にある場合の1次側のQ値が、Qt_Bとして測定される。異物がなく、受電装置Cのみが磁界内にある場合のQ値が、Qt_Cとして予め測定され、受電装置Dのみが磁界内にある場合のQ値が、Qt_Dとして測定される。
【0154】
基本値QsとQt_Aとの差分が、受電装置Aの配置による低下量dQ_Aとして設定され、基本値QsとQt_Bとの差分が、受電装置Bの配置による低下量dQ_Bとして設定される。また、基本値QsとQt_Cとの差分が、受電装置Cの配置による低下量dQ_Cとして設定され、基本値QsとQt_Dとの差分が、受電装置Dの配置による低下量dQ_Cとして設定される。
【0155】
受電装置A、B、CおよびDのそれぞれに含まれる導体の量が異なるため、低下量は受電装置ごとに異なる値となる。
【0156】
給電装置100は、その低下量を受け取ると、基本値から、低下量dQおよび固定量dQ_fを減算した値を閾値として取得する。
【0157】
このように、第4の実施の形態によれば、給電装置100は、受電装置の配置によるQ値の低下量を設定値として受信して異物を検知するため、低下量の異なる様々な受電装置を使用するシステムにおいて磁界内の異物を正確に検知することができる。
【0158】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0159】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0160】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【0161】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)受電装置に磁界を介して電力を供給する給電部と、
前記給電部の電気特性値を測定して測定値を生成する測定部と、
前記受電装置に設定された設定値を受信する受信部と、
前記設定値と前記測定値とに基づいて前記磁界内の異物を検知する異物検知部と
を具備する給電装置。
(2)前記設定値は、前記受電装置に含まれる導体の量に基づいて設定された値である前記(1)記載の給電装置。
(3)前記設定値は、前記異物の検知に用いられる閾値であり、
前記異物検知部は、前記閾値と前記測定値とを比較して当該比較結果に基づいて前記異物を検知する
前記(1)または(2)に記載の給電装置。
(4)前記設定値は、前記磁界内に前記受電装置が配置されたことにより前記電気特性値が変化する変化量である前記(1)から(3)のいずれかに記載の給電装置。
(5)前記設定値は、前記導体の表面積である
前記(1)から(4)のいずれかに記載の給電装置。
(6)前記給電部は、周波数の異なる複数の交流信号を順にテスト信号として前記磁界を介してさらに供給し、
前記測定部は、前記複数のテスト信号のいずれかが供給されるたびに前記電気特性値を測定して当該測定した電気特性値の統計量を前記測定値として前記異物検知部に供給する
前記(1)から(5)のいずれかに記載の給電装置。
(7)前記測定部は、周波数の異なる複数の交流信号を順にテスト信号として前記磁界を介して供給して当該テスト信号を供給するたびに測定した前記電気特性値の統計量を前記測定値として前記異物検知部に供給する
(1)から(6)のいずれかに記載の給電装置。
(8)前記給電部は、前記磁界を介して前記電力を供給する給電コイルを含み、
前記測定部は、
前記給電コイルに接続された可変容量と、
所定の周波数の前記交流信号を前記給電部に前記可変容量を介してテスト信号として供給する交流電源と、
前記可変容量の容量を所定回数変更して前記テスト信号の周波数を変更する可変容量制御部と、
前記容量が変更されるたびに前記電気特性値を測定して当該測定した電気特性値の統計量を前記測定値として前記異物検知部に供給する測定値供給部と
を備える前記(1)から(7)のいずれかに記載の給電装置。
(9)交流電力の電力量を制御して前記電力として供給する給電制御部と、
前記給電制御部と前記給電部との間に挿入されたフィルタ回路と
をさらに具備する前記(1)から(8)のいずれかに記載の給電装置。
(10)前記給電部は、共振回路を含み、
前記測定部は、前記共振回路の品質係数を前記電気特性値として測定する
前記(1)から(9)のいずれかに記載の給電装置。
(11)前記測定部は、前記給電部のインダクタンスを前記電気特性値として測定する
前記(1)から(9)のいずれかに記載の給電装置。
(12)給電装置から供給された電力を磁界を介して受電する受電部と、
導体を含有する筐体と、
予め設定された設定値を前記給電装置に送信する送信部と
を具備する受電装置。
(13)前記設定値は、前記受電装置に含まれる導体の量に基づいて設定された値である前記(12)記載の受電装置。
(14)筐体をさらに具備し、
前記導体は、前記筐体に含有される導体である請求項13記載の受電装置。
(15)前記設定値は、前記給電装置における共振回路の品質係数と比較される閾値である
前記(12)から(14)のいずれかに記載の受電装置。
(16)供給された電力を磁界を介して受電する受電部と、予め設定された設定値を送信する送信部とを備える受電装置と、
前記受電装置に磁界を介して前記電力を供給する給電部と、前記給電部の電気特性値を測定して測定値を生成する測定部と、前記送信部から送信された設定値を受信する受信部と、前記設定値と前記測定値とに基づいて前記異物を検知する異物検知部とを備える給電装置と
を具備する給電システム。
(17)前記設定値は、前記受電装置に含まれる導体の量に基づいて設定された値である前記(16)に記載の給電システム。
(18)前記給電部は、共振回路を含み、
前記測定部は、前記共振回路の品質係数を前記電気特性値として測定する
前記(16)または(17)記載の給電システム。
(19)測定部が、受電装置に磁界を介して電力を供給する給電部の電気特性値を測定して測定値を生成する測定手順と、
受信部が、前記受電装置に設定された設定値を受信する受信する受信手順と、
異物検知部が、前記設定値と前記測定値とに基づいて前記異物を検知する異物検知手順と
を具備する給電装置の制御方法。
(20)前記設定値は、前記受電装置に含まれる導体の量に基づいて設定された値である前記(19)記載の給電装置の制御方法。
(21)前記給電部は、共振回路を含み、
前記測定部は、前記測定手順において前記共振回路の品質係数を前記電気特性値として測定する
前記(19)または(20)に記載の給電装置の制御方法。