特許第6387258号(P6387258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387258
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】シートバックフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20180827BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20180827BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60N2/64
   A47C7/40
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-142428(P2014-142428)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-16817(P2016-16817A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 明俊
(72)【発明者】
【氏名】石橋 朋
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 弘明
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−118279(JP,A)
【文献】 実開昭53−154524(JP,U)
【文献】 特開2010−115313(JP,A)
【文献】 特開2014−008841(JP,A)
【文献】 特開2013−010423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックにおける左右の側部に設けられ、前記車両用シートのシートクッションに設けられたシートクッションフレームの後端部に各下端部が連結される左右のサイドフレームと、
板金により形成され、前記左右のサイドフレームの下部における後端部間にシートバック前後方向を厚さ方向として架け渡され、前記左右のサイドフレームに固定されると共に、シート幅方向に凹凸が交互に並ぶように曲げられた凹凸形状部を有する背面パネルと、
を備え
前記凹凸形状部は、前記背面パネルのシート幅方向中央部に設けられており、前記凹凸形状部の凹凸形状が前記背面パネルの上端から下端まで延びているシートバックフレーム。
【請求項2】
前記凹凸形状部は、シート幅方向に対して20度〜70度の範囲内で傾斜した複数の傾斜部を含んで構成されている請求項1に記載のシートバックフレーム。
【請求項3】
前記背面パネルは、シート幅方向に延びる一般部を有し、前記凹凸形状部は、前記一般部に対してシートバック前方側へ凸をなしている請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレーム。
【請求項4】
前記背面パネルは、左右一対の前記凹凸形状部を有すると共に、当該一対の凹凸形状部の間には、シート幅方向に延びる一般部が設けられており、当該一般部には、前記背面パネルの背面側に取り付けられる空調機構の空気吹出部を挿通させるための開口が形成されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシートバックフレーム。
【請求項5】
シートクッションフレームが設けられたシートクッションと、
前記左右のサイドフレームの各下端部が前記シートクッションフレームの後端部に連結された請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のシートバックフレームと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートバックに設けられるシートバックフレーム及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された乗物用シートは、乗員が着座する着座部のフレームである着座フレームと、着座フレームに支持されたシートバックフレームとを備えている。シートバックフレームは、上下方向に延在するパイプを有し左右に離間して配置されたサイドフレームと、左右のサイドフレームの下部の間に渡されるように配置され、左右のサイドフレームを接続する板金からなる下部接続部材とを備えている。下部接続部材は、サイドフレームに接続して支持される後壁部と、後壁部の上端から前方で下方に延びる前壁部とを有している。この前壁部の前面は、側面視においてサイドフレームのパイプの延在する方向と平行または当該延在する方向に対し上向くように斜めになっている。これにより、後面衝突時に下部接続部材が乗員に与える当たり感を緩和するようにしている。なお、下記特許文献2には、上記同様の乗物用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−136058号公報
【特許文献2】特開2012−136059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような乗物用シートでは、後面衝突時にシート後方側へ慣性移動する乗員からの過大な荷重が下部接続部材に入力されると、下部接続部材がシート後方側へ変形し、下部接続部材と左右のサイドフレームとの固定部に引張り荷重が発生する。その結果、上記固定部が破損すると共に、左右のサイドフレーム等の他の部材に荷重が伝達され、当該他の部材が破損する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、後面衝突時における破損の抑制に寄与するシートバックフレーム及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るシートバックフレームは、車両用シートのシートバックにおける左右の側部に設けられ、前記車両用シートのシートクッションに設けられたシートクッションフレームの後端部に各下端部が連結される左右のサイドフレームと、板金により形成され、前記左右のサイドフレームの下部における後端部間にシートバック前後方向を厚さ方向として架け渡され、前記左右のサイドフレームに固定されると共に、シート幅方向に凹凸が交互に並ぶように曲げられた凹凸形状部を有する背面パネルと、を備え、前記凹凸形状部は、前記背面パネルのシート幅方向中央部に設けられており、前記凹凸形状部の凹凸形状が前記背面パネルの上端から下端まで延びている。
【0007】
請求項1に記載のシートバックフレームでは、左右のサイドフレームの下部における後端部間に架け渡されて両者に固定された板金製の背面パネルを備えている。この背面パネルは、シート幅方向に凹凸が交互に並ぶように曲げられた凹凸形状部を有している。このため、後面衝突時にシート後方側へ慣性移動する乗員からの過大な荷重が背面パネルに入力された際には、背面パネル部が凹凸形状部において伸長されることにより上記の荷重が分散され、背面パネルと左右のサイドフレームとの固定部に加わる引張り荷重が低減される。これにより、当該固定部及び左右のサイドフレーム等の他の部材が破損することを防止又は抑制できる。したがって、後面衝突時における破損の抑制に寄与する。
【0009】
しかも、このシートバックフレームでは、背面パネルにおいて、後面衝突時に乗員からのシート後方側への荷重が入力されるシート幅方向中央部に、凹凸形状部が設けられている。これにより、凹凸形状部を良好に伸長させることができる。
【0010】
請求項に記載の発明に係るシートバックフレームは、請求項1に記載のシートバックフレームにおいて、前記凹凸形状部は、シート幅方向に対して20度〜70度の範囲内で傾斜した複数の傾斜部を含んで構成されている。
【0011】
請求項に記載のシートバックフレームでは、背面パネルの凹凸形状部が上記のように構成されているため、背面パネルに対してシート後方側への荷重が入力された際には、上記複数の傾斜部の両端部に対してシート幅方向(シート左右方向)の分力を効率的に作用させることができる。これにより、凹凸形状部を良好に伸長させることができる。
【0012】
請求項に記載の発明に係るシートバックフレームは、請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレームにおいて、前記背面パネルは、シート幅方向に延びる一般部を有し、前記凹凸形状部は、前記一般部に対してシートバック前方側へ凸をなしている。
【0013】
請求項に記載のシートバックフレームでは、背面パネルの凹凸形状部が上記のように形成されているため、シートバックの背面側に凹凸形状部の配置スペースを確保する必要がない。
【0014】
請求項に記載の発明に係るシートバックフレームは、請求項1〜請求項の何れか1項に記載のシートバックフレームにおいて、前記背面パネルは、左右一対の前記凹凸形状部を有すると共に、当該一対の凹凸形状部の間には、シート幅方向に延びる一般部が設けられており、当該一般部には、前記背面パネルの背面側に取り付けられる空調機構の空気吹出部を挿通させるための開口が形成されている。
【0015】
請求項に記載のシートバックフレームでは、背面パネルの背面側に取り付けられる空調機構の空気吹出口が、背面パネルの一般部に形成された開口に挿通される。この一般部は、左右一対の凹凸形状部の間に設けられているため、背面パネルに対してシート後方側への荷重が入力された際には、左右の凹凸形状部がそれぞれ伸長されることにより、荷重をシート幅方向に効率的に分散することができる。
【0016】
請求項に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッションフレームが設けられたシートクッションと、前記左右のサイドフレームの各下端部が前記シートクッションフレームの後端部に連結された請求項1〜請求項の何れか1項に記載のシートバックフレームと、を有している。
【0017】
請求項に記載の車両用シートでは、請求項1〜請求項の何れか1項に記載のシートバックフレームを備えているため、請求項1〜請求項の何れか1項と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係るシートバックフレーム及び車両用シートでは、後面衝突時における破損の抑制に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの骨格をシート斜め後方側から見た状態で示す斜視図である。
図2】同車両用シートのシートバックフレームにおける背面パネル周辺の構成を示す平面図である。
図3】同背面パネルに設けられた凹凸形状部が、後面衝突時における乗員からのシート後方側への荷重によって伸長された状態を示す図2に対応した平面図である。
図4】比較例に係る車両用シートの骨格を示す図1に対応した斜視図である。
図5】比較例に係る車両用シートのシートバックフレームにおける背面パネル周辺の構成を示す平面図である。
図6】比較例に係るシートバックフレームにおける背面パネル周辺の構成を示す背面図である。
図7】比較例に係るシートバックフレームにおける背面パネル周辺が、後面衝突時における乗員からのシート後方側への荷重によって破損した状態を示す図6に対応した背面図である。
図8】後面衝突時に凹凸形状部に作用する分力を説明するための説明図である。
図9図8に示される斜角と入力荷重に対する各分力の大きさとの関係を示す線図である。
図10】背面パネルの他の実施例を示す図2に対応した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図10を用いて本発明の実施形態に係るシートバックフレーム10及び車両用シート12について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印RHは車両右方向を示している。以下、前後左右上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート12は、乗員Pが着座するシートクッション14の骨格をなすシートクッションフレーム16と、乗員Pの腰部及び背部を支持するシートバック18の骨格をなすシートバックフレーム10とを備えている。これらのシートクッションフレーム16およびシートバックフレーム10には、それぞれ表皮によって覆われたパッド材(何れも図示省略)が取り付けられる構成になっている。この車両用シート12の前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。
【0022】
シートクッションフレーム16は、シートクッション14の左右の側部においてシート前後方向に延在した左右一対のサイドフレーム20と、左右のサイドフレーム20の前部における上端部間に架け渡されたフロントフレーム22と、左右のサイドフレーム20の後端部間に架け渡されたリヤフレーム24とを備えている。
【0023】
左右のサイドフレーム20は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向がシート前後方向に沿い且つ厚さ方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されている。フロントフレーム22は、例えば板金によって略矩形状に形成され、厚さ方向がシート上下方向に沿う姿勢で配置されており、シート幅方向の両端部が左右のサイドフレーム20の前部に溶接等の手段によって固定されている。リヤフレーム24は、金属製のパイプによって形成され、軸線方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されており、シート幅方向の両端部がカシメ等の手段によって左右のサイドフレーム20の後端部に回転可能に連結されている。
【0024】
左右のサイドフレーム20は、上記のリヤフレーム24を含んで構成された周知のリフタ機構26、及び周知のシートスライド機構28を介して車体床部に連結されており、車体床部に対する車両上下方向の位置および車両前後方向の位置を調節可能とされている。また、左右のサイドフレーム20の後端部には、周知のリクライニング機構30を介してシートバックフレーム10がリクライニング可能に連結されている。
【0025】
シートバックフレーム10は、シートバック18の左右の側部においてシートバック上下方向(シートバック18の高さ方向)に延在した左右一対のサイドフレーム32と、左右のサイドフレーム32の上端部間に架け渡されたアッパフレーム34と、左右のサイドフレーム32の下部の後端部間に架け渡された背面パネル36とを備えている。
【0026】
左右のサイドフレーム32は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向がシートバック上下方向に沿い且つ厚さ方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されている。左右のサイドフレーム32の上下方向中間部間には、上下一対のSばね38が架け渡されている。これらのSばね38は、シート幅方向の両端部が左右のサイドフレーム32に係止されており、シートバック18のパッド材をシート後方側から支持している。
【0027】
左右のサイドフレーム32の下端部におけるシート幅方向外側面には、前述したリクライニング機構30が備える左右のリクライナ33(図1では図示省略:図6及び図7参照)が溶接等の手段によって固定されている。左右のリクライナ33のシート幅方向外側面には、リクライニング機構30が備える左右のブラケット31が溶接等の手段によって固定されている。これらのブラケット31は、ボルト締結等の手段によってサイドフレーム20の後端部に固定されている。これにより、左右のサイドフレーム32の下端部がリクライニング機構30を介して左右のサイドフレーム20の後端部に連結されている。
【0028】
アッパフレーム34は、例えば金属製のパイプが曲げ加工されることにより形成されており、シート正面視で略逆U字状をなしている。このアッパフレーム34は、シートバック18の左右の側部においてシートバック上下方向に延びる部位の下端部が、左右のサイドフレーム32の上端部に溶接等の手段によって固定されている。このアッパフレーム34の上端部には、図示しないヘッドレストを連結するための左右一対のヘッドレストサポートブラケット40が取り付けられている。
【0029】
背面パネル36は、板金によって長尺状に形成されており、長手方向がシート幅方向に沿い且つ厚さ方向がシートバック前後方向(シートバック18の前後方向)に沿う姿勢で配置されている。この背面パネル36のシート幅方向両端部は、図2に示される左右の固定部42において、左右のサイドフレーム32の下部における後端部に溶接等の手段により固定されている。この背面パネル36は、車両用シート12に着座した乗員Pの腰部と同等の高さに位置するように設けられている。
【0030】
背面パネル36のシート幅方向中央部(シート幅方向中央およびその周辺部)には、左右一対の凹凸形状部46、48が設けられている。また、この背面パネル36は、左右の凹凸形状部46、48の間に位置する一般部50(以下、中央一般部50と称する)と、左右の凹凸形状部46、48からシート幅方向外側へ延びる一般部52、54(以下、外側一般部52、54と称する)とを一体に備えている。
【0031】
中央一般部50及び外側一般部52、54は、シート幅方向に略平坦状に延びており、左右の外側一般部52、54におけるシート幅方向外側端部が前述した左右の固定部42において左右のサイドフレーム32に固定されている。
【0032】
左右の凹凸形状部46、48は、背面パネル36を構成する板金の一部が、シート幅方向に凹凸を交互に並べたように曲げられて形成されたものであり、当該凹凸形状が背面パネル36の上端から下端まで延びている。これらの凹凸形状部46、48は、本実施形態では、シートバック後方側が開放された断面略W字形に設定されており、中央一般部50および外側一般部52、54に対してシートバック前方側へ凸をなしている。これらの凹凸形状部46、48においては、シート幅方向に対して20度〜70度の範囲内(例えば45度)で傾斜した複数の傾斜部46A、48Aがジグザグ状にシート幅方向に並んでいる。なお、本実施形態では、シート右側の凹凸形状部48は、図示しない周辺部材との関係から、シート左側の凹凸形状部46よりもシート幅方向の寸法が小さく設定されている。
【0033】
これらの凹凸形状部46、48は、背面パネル36のシート幅方向中央部に設定された余長部として捉えることができるものであり、これらの凹凸形状部46、48が設定された分だけ背面パネル36の長手方向(シート幅方向)の寸法が短縮されている。このため、図3に示されるように、背面パネル36に対してシート前方側から過大な荷重Fが入力された際には、凹凸形状部46、48が平坦状に伸長されることにより、背面パネル36の長手方向が増加する構成になっている。
【0034】
上記構成の背面パネル36では、左右の凹凸形状部46、48、中央一般部50および外側一般部52、54の上下両端部がシート前方側へフランジ状に折り曲げられている。これにより、背面パネル36の面剛性が向上している。
【0035】
この背面パネル36の背面側(シートバック後方側)には、図2に示されるように、車両用シート12に着座した乗員Pに対して空気を送風するための空調機構56(図1及び図3では図示省略)が取り付けられている。この空調機構56は、シート幅方向を長手方向とし且つシートバック前後方向に扁平な箱体状に形成された本体部58と、該本体部58の長手方向一端部からシート前方側へ突出した空気吹出部60とを備えている。この空気吹出部60は、中央一般部50に形成された開口62に挿通され、背面パネル36のシートバック前方側へ突出している。
【0036】
なお、凹凸形状部46、48における凹凸の形状、数、高さや、シート幅方向に対する傾斜部46A、48Aの傾斜角度(斜角)などは、上記に限るものではなく、背面パネル36が前述したように凹凸形状部46、48において伸長される際の狙いの伸長寸法や、周辺部材との関係などから適宜変更可能である。
【0037】
但し、背面パネル36の伸長後の状態における長手方向寸法は、背面パネル36の伸長前の長手方向寸法を100%とした場合に、110%〜160%に設定することが好ましい。また、シート幅方向に対する傾斜部46A、48Aの傾斜角度(斜角)は、20度〜70度の範囲内に設定することが好ましく、より好ましくは30度〜60度の範囲内であり、45度が最も好ましい。
【0038】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
上記構成の車両用シート12では、シートバックフレーム10の左右のサイドフレーム32における下部の後端部間には、板金製の背面パネル36が架け渡されている。この背面パネル36は、車両用シート12に着座した乗員Pの腰部と同等の高さに配置されており、シート幅方向両端部が左右のサイドフレーム32に固定されている。この背面パネル36には、シート幅方向に凹凸が交互に並ぶように曲げられて形成された左右一対の凹凸形状部46、48が設けられている。
【0040】
ここで、後面衝突時には、乗員Pが衝撃によってシート後方側へ慣性移動し、左右のサイドフレーム32の間に乗員Pの腰部及び背部が入り込む。この乗員Pの腰部からの過大な荷重F(図3参照)がシートバック18のパッド材を介して背面パネル36に入力された際には、図3に示されるように、背面パネル部36が凹凸形状部46、48において伸長され、シート後方側へ凸をなすように変形する。これにより、上記の荷重Fが分散されると共に吸収され、背面パネル36と左右のサイドフレーム32との固定部42に加わる引張り荷重が低減される。これにより、当該固定部42及び左右のサイドフレーム32等の他の部材が破損することを防止又は抑制することができる。したがって、後面衝突時における破損の抑制に寄与する。
【0041】
上記の効果について、図4図7に示される車両用シート100(比較例)を用いて詳細に説明する。この車両用シート100では、シートバックフレーム102の背面パネル104以外の構成は本実施形態と同様とされている。この背面パネル104は、本実施形態に係る凹凸形状部46、48を備えておらず、全体的に平坦状に形成されているが、それ以外の構成は背面パネル36と同様とされている。
【0042】
この背面パネル104に対してシート後方側への荷重F(図3参照:図4図7では図示省略)が入力された際には、背面パネル104がシート後方側へ変形しようとすることにより、左右の固定部42に対してシート幅方向内側への過大な引張り荷重が発生する。その結果、左右の固定部42を含む周辺部材が破損する可能性がある。
【0043】
具体的には、上記引張り荷重によって左右の固定部42に破断や亀裂が生じると共に、上記引張り荷重が左右のサイドフレーム32、リクライニング機構30及び左右のサイドフレーム20に伝達され、これらの部材に変形や破断などが生じる可能性がある。これを防止するため、上記各部材の板厚の増加や材質の強化を図ることが必要になる。
【0044】
これに対し、本実施形態では、前述した如き背面パネル36の伸長によって上述の如き変形や破断などを効果的に防止又は抑制できる。これにより、背面パネル36を含む上記各部材の板厚の減少や材料変更など、材料の適正化を図ることが可能になるため、シートバックフレーム10の構成を簡素化することに寄与する。
【0045】
また、本実施形態では、背面パネル36において、後面衝突時に乗員Pからのシート後方側への荷重Fが入力されるシート幅方向中央部に、凹凸形状部46、48が設けられている。これにより、凹凸形状部46、48が左右均等に伸長し易くなるため、凹凸形状部46、48を良好に伸長させることができる。その結果、乗員Pからの荷重Fを効率的に分散及び吸収することが可能になる。
【0046】
さらに、本実施形態では、凹凸形状部46、48は、シート幅方向に対して20度〜70度の範囲内で傾斜した複数の傾斜部46A、48Aを含んで構成されている。このため、背面パネル36に対してシート後方側への荷重が入力された際には、上記複数の傾斜部46A、48Aの両端部に対してシート幅方向(シート左右方向)の分力を効率的に作用させることができる。これにより、凹凸形状部46、48を良好に伸長させることができる。
【0047】
つまり、凹凸形状部46、48に対してシート後方側への荷重Fが入力された際には、凹凸形状部46、48の各傾斜部46A、48Aに対して図8に示されるように分力が作用する。この図8に示される右方向分力Abと左方向分力Bbは、図9に示されるように、各傾斜部46A、48Aのシート幅方向に対する傾斜角度(斜角)θが20度〜70度の範囲内で大きくなり、45度のときに最大になる。このため、本実施形態のように、凹凸形状部46、48の複数の傾斜部46A、48Aがシート幅方向に対して20度〜70度の範囲内で傾斜していることにより、凹凸形状部46、48を効率的に伸長させることができる。その結果、荷重Fをシート左右方向に効率的に分散することが可能になる。
【0048】
また、本実施形態の背面パネル36は、シート幅方向に延びる中央一般部50および左右の外側一般部52、54を有しており、凹凸形状部46、48が、中央一般部50および外側一般部52、54に対してシートバック前方側へ凸をなしている。このため、シートバック18の背面側に凹凸形状部46、48の配置スペースを確保する必要がないため、凹凸形状部46、48の配置スペースによって、シートバック18の厚さ寸法が増加しないようにすることができる。また、本実施形態のように、背面パネル36の背面側に空調機構56が取り付けられる場合でも、当該空調機構56の配置スペースを容易に確保することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、空調機構56の空気吹出部60が、背面パネル36の中央一般部50に形成された開口62に挿通されている。この中央一般部50は、左右一対の凹凸形状部46、48の間に設けられているため、背面パネル36に対してシート後方側への荷重Fが入力された際には、左右の凹凸形状部46、48がそれぞれ伸長されることにより、荷重Fをシート幅方向に効率的に分散することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、凹凸形状部46、48が背面パネル36の中央一般部50および外側一般部52、54と一体に形成(成形)された構成にしたが、本発明はこれに限らず、図10に示される他の実施例70における背面パネル72のように構成してもよい。この背面パネル72では、外側一般部52、54とは別体に成形された凹凸形状部74のシート幅方向両端部が、外側一般部52、54のシート幅方向内側端部に溶接等の手段によって固定されており、中央一般部50が省略されている。
【0051】
また、上記実施形態では、凹凸形状部46、48の断面形状が略W字形(ジグザグ状)に形成された構成にしたが、本発明はこれに限らず、他の実施例70の凹凸形状部74のように断面ハット形の凹凸がシート幅方向に並んだ形状に形成してもよい。この凹凸形状部74においても、複数の傾斜部74Aがシート幅方向に対して20度〜70度の範囲内で傾斜していることにより、凹凸形状部74を効率的に伸長させることができる。
【0053】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 シートバックフレーム
12 車両用シート
14 シートクッション
16 シートクッションフレーム
18 シートバック
32 サイドフレーム
36 背面パネル
46、48 凹凸形状部
46A、48A 傾斜部
50、52、54 一般部
56 空調機構
60 空気吹出部
62 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10