(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。
【0023】
本実施形態に係るアンテナ装置は、ほぼ正方形をなす第1の反射板11を備える。第1の反射板11は金属導体からなり、例えば板金を用いて製作される。この第1の反射板11上には、第2の反射板12が垂直に立設される。この第2の反射板も金属導体からなり、上記第1の反射板11に対し直接又はケーブルを介して接続されることで、当該第1の反射板11と直流的に同電位になるように構成される。
【0024】
また、第2の反射板12の一側辺の先端部には、図示しない絶縁部材を介して素子13が取着される。この素子13は短冊状をなし、上記第2の反射板12の一側辺から上記第1の反射板11と平行する方向に延伸するように配置される。上記第2の反射板12の一側辺先端部には給電点Fが設けられ、この給電点Fは給電ケーブルを介して図示しない無線回路に接続される。
【0025】
ところで、本実施形態のアンテナ装置は、例えば2.4〜2.5GHzを共振周波数帯域とする。そして、そのために上記第2の反射板12の垂直方向の長さを、上記共振周波数帯域の下端周波数(2.4GHz)に対応する波長をλとするとき、約0.25λに設定している。また、第2の反射板12の水平方向における導体長を0.15λに設定し、これにより第2の反射板12と素子13の水平方向における導体長の合計が0.3λ以下となるようにしている。
【0026】
このような構成であるから、第2の反射板12と素子13とがモノポール素子として動作し、これにより第1の反射板11と平行する方向、つまり図中水平方向に偏波Hが形成される。また、第2の反射板12は第1の反射板11と直流的に同電位に設定され、かつ第2の反射板12の垂直方向の高さが約0.25λに設定されると共に水平方向における導体長が0.15λに設定されたことで、第2の反射板12及び素子13の水平方向における導体長の合計を0.3λ以下に短くすることが可能となる。その結果、アンテナ装置のより一層の小型化を図ることが可能となる。
【0027】
ちなみに、一般的な反射板付きダイポールアンテナでは、例えば
図2に示すように給電点Fに対しダイポール素子14a,14bを水平方向に配置することで水平方向Hに偏波を形成する。このため0.5λの素子長が必要となり、これ以上のアンテナの小型化は困難だった。また、反射板11の上方に当該反射板11から離間した状態でダイポール素子14a,14bを配置するために、支持部材(図示せず)を別途用意する必要がある。このため、部品点数が増えコストアップの増加が避けられなかった。
【0028】
[第2の実施形態]
図3は、この発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図1と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0029】
第1の反射板11上には、垂直板状アンテナが立設される。この垂直板状アンテナは、1枚の金属導体板にその上辺から下辺に向かい下辺部の一部を残してスリット15cを形成したもので、これにより長方形をなす第2の反射板15aと、逆L型をなすアンテナ素子15bを構成している。第2の反射板15aは、上記第1の反射板11に対し直接又はケーブルを介して接続され、これにより第1の反射板11と直流的に同電位になるように構成される。また、第2の反射板15aの一側辺先端部には給電点Fが設けられ、この給電点Fは給電ケーブルを介して図示しない無線回路に接続される。
【0030】
上記第2の反射板15aの上端からスリット15cの底部までの長さは、共振周波数帯域の下端周波数(2.4GHz)に対応する波長をλとするとき、約0.25λに設定される。また、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計は0.3λ以下に設定される。
【0031】
このような構成であるから、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bは長さが0.5λの迂回回路Eを介して接続されることになる。このため、第2の反射板15a、迂回回路E及びアンテナ素子15bがモノポール素子として動作し、これにより第1の反射板11と平行する方向、つまり図中水平方向に偏波が形成される。
【0032】
また、第2の反射板15a、迂回回路E及びアンテナ素子15bは第1の反射板11と直流的に同電位に設定される。そして、第2の反射板15aの垂直方向の高さが約0.25λに設定されたことで、第2の反射板12とアンテナ素子13の水平方向における導体長の合計を0.3λ以下に設定することができる。このため、一般的な反射板付きダイポールアンテナに比べ素子長を短くすることができ、これによりアンテナ装置の小型化が可能となる。
【0033】
しかも、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bは一枚の金属板により一体的に製作される。このため、単一部品によりアンテナ素子を構成することができ、これによりコストダウンが期待できる。
【0034】
[第3の実施形態]
図4は、この発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図3と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0035】
第1の反射板11上には垂直板状アンテナが立設される。この垂直板状アンテナは、絶縁基板16の一方の面に、第2の反射板15aを構成する長方形の第1の導電パターンと、アンテナ素子15bを構成するL型の第2の導電パターンを形成している。第1の導電パターンと第2の導電パターンとの間にはその下端部を一部残してスリット15cが形成され、これにより迂回回路Eが構成される。
【0036】
一方、上記絶縁基板16の他方の面には、上記第2の反射板15aを構成する第1の導電パターンに対し背中合わせとなる位置に、L字型をなすマイクロストリップライン15dが第1の反射板11に対し水平方向に形成されている。このマイクロストリップライン15dは給電経路の一部を構成するもので、その一端には給電部Fが、他端には給電ケーブル接続点Gがそれぞれ設けられている。給電部Fはスルーホールを介して上記アンテナ素子15bの給電点に接続され、給電ケーブル接続点Gには図示しない給電ケーブルが接続される。
【0037】
上記第2の反射板15aの上端からスリット15cの底端までの長さは、共振周波数帯域の下端周波数(2.4GHz)に対応する波長をλとするとき、約0.25λに設定される。また、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計は0.3λ以下に設定される。
【0038】
このような構成であるから、上記第2の実施形態と同様に、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bは長さが0.5λの迂回回路Eを介して接続されることになる。このため、第2の反射板15a、迂回回路E及びアンテナ素子15bがモノポール素子として動作し、これにより第1の反射板11と平行する方向、つまり図中水平方向に偏波が形成される。
【0039】
また、第2の反射板15a、迂回回路E及びアンテナ素子15bは第1の反射板11と直流的に同電位に設定される。そして、第2の反射板15aの垂直方向の高さが約0.25λに設定されたことで、第2の反射板12と素子13の水平方向における導体長の合計を0.3λ以下に設定することができる。このため、一般的な反射板付きダイポールアンテナに比べ素子長を短くすることができ、これによりアンテナ装置の小型化が可能となる。
【0040】
さらに、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bはエッジング等により簡単に形成することができるので、安価に製造できる利点がある。しかも、絶縁基板16の他面側にはマイクロストリップライン15dを形成し、これを給電経路の一部として使用しているので、給電ケーブル長を短縮すると共に垂直板状アンテナと重なる部位における給電ケーブルの引き回しスペースを不要にすることができる。
【0041】
[第4の実施形態]
図5は、この発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図4と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0042】
この第4の実施形態の前記第3の実施形態と異なる点は、絶縁基板16の裏面側に、逆L型をなすマイクロストリップライン15fを第1の反射板11に対し垂直方向に形成し、その下方端に給電ケーブル接続点Gを設けたことである。
【0043】
このマイクロストリップライン15fは第2の反射板15aに対し背中合わせに配置され、その一端部には給電部Fが、他端には給電ケーブル接続点Gがそれぞれ設けられている。給電部Fはスルーホールを介して上記アンテナ素子15bの給電点に接続され、給電ケーブル接続点Gには図示しない給電ケーブルが接続される。
【0044】
このような構成であるから、第3の実施形態と同様にマイクロストリップライン15fを給電経路の一部として使用しているので、給電ケーブル長を短縮すると共に垂直板状アンテナと重なる部位における給電ケーブルの引き回しスペースを不要にすることができる。また、本実施形態ではマイクロストリップライン15fを垂直方向に配置し、その下端に給電ケーブル接続部Gを設けているので、給電ケーブルを第1の反射板11上に沿って配線するだけで、上記給電ケーブル接続部Gに接続できる利点がある。
【0045】
なお、マイクロストリップライン15fの線幅を部分的に広く設定し、当該幅広部をスタブとして機能させるようにしてもよい。このスタブによりアンテナのインピーダンス整合を実現できる。
【0046】
[第5の実施形態]
図6は、この発明の第5の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図4と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0047】
この第5の実施形態の前記第4の実施形態と異なる点は、絶縁基板16の裏面側に、逆L型をなすマイクロストリップライン15fを第1の反射板11に対し垂直方向に形成すると共に、その給電点Fにスタブ15gを形成したことである。このスタブ15gは、アンテナ素子15bに対し背中合わせに配置される。スタブ15gは、オープンスタブ又はショートスタブとして、インピーダンス整合のために用いられる。
【0048】
このような構成であるから、第4の実施形態と同様にマイクロストリップライン15fを給電経路の一部として使用しているので、給電ケーブル長を短縮すると共に垂直板状アンテナと重なる部位における給電ケーブルの引き回しスペースを不要にすることができる。さらに、アンテナ素子15bに対し背中合わせとなる位置にスタブ15gを設けたことで、インピーダンス整合を行うことができる。
【0049】
[第6の実施形態]
図7は、この発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図6と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0050】
第1の反射板11aは長方形をなし、当該第1の反射板11a上には2つの垂直板状アンテナ10a,10bが一定の距離を隔てて平行に立設されている。これらの垂直板状アンテナ10a,10bは、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが形成された面が同一方向を向くように配置され、アンテナの磁界面をスタックした状態で使用される。
【0051】
上記垂直板状アンテナ10a,10bにおいて、第2の反射板15aの上端からスリット15cの底端までの長さは、前記第6の実施形態と同様に共振周波数帯域の下端周波数(2.4GHz)に対応する波長をλとするとき、約0.25λに設定される。また、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計は0.3λ以下に設定される。
なお、上記第1の反射板11aの長手方向の長さ、及び垂直板状アンテナ10a,10bの配置間隔は、いずれもアンテナ装置に発生させようとする指向性に応じて適宜設定される。
【0052】
また、
図9は本実施形態に係るアンテナ装置の設置例を示す斜視図である。この例はアンテナ装置を壁面に設置する場合を示したもので、第1の反射板11aが壁面取付金具7aを用いて壁面にねじ止めにより固定される。なお、8aはカバーを、また9aは入出力部をそれぞれ示している。
【0053】
このような構成であるから、垂直板状アンテナ10a,10bを磁界面スタック化したことにより双方のアンテナの特性が合成され、これにより高利得な指向性アンテナ装置を提供することが可能となる。また、垂直板状アンテナ10a,10bの水平方向の長さは0.3λ以下に設定可能であるため、第1の反射板11aの短辺方向(幅方向)の長さを0.5λ以下にすることができ、これによりアンテナ装置の幅方向のサイズを小型化することができる。
【0054】
[第7の実施形態]
図8は、この発明の第7の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図7と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0055】
第1の反射板11bは長方形をなし、当該第1の反射板11b上には2つの垂直板状アンテナ10a,10bが直線上に並べられた状態で立設されている。これらの垂直板状アンテナ10a,10bは、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが形成された面が同一方向を向くように配置され、アンテナの電界方向にスタックした状態で使用される。
【0056】
このような構成であるから、垂直板状アンテナ10a,10bを電磁面スタック化したことにより双方のアンテナの特性が合成され、これにより高利得の指向性アンテナ装置を提供することが可能となる。また、垂直板状アンテナ10a,10bの幅方向の長さはいずれも0.3λ以下に設定可能であるため、垂直板状アンテナ10a,10bのスタック間隔を0.6λ以下に設定することができ、これにより指向性の調整範囲を拡大することが可能となる。
【0057】
なお、
図8では同一構成の垂直板状アンテナ10a,10bを横一列に配置した場合を例示した。しかし、それに限らず、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの形成位置が左右反対となるように構成された垂直板状アンテナ10a,10bを用意し、これらの垂直板状アンテナ10a,10bを横一列に配置するようにしてもよい。このように構成することで、アンテナ装置としての利得をさらに高めることができる。
【0058】
[第8の実施形態]
図10は、この発明の第8の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図6と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0059】
本実施形態に係るアンテナ装置は、第1の反射板11cに、磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10bの対と、同じく磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10c,10d2の対を、相互に90度向きを異ならせた状態で配置したものである。垂直板状アンテナの各対10a,10b及び10c,10dは、いずれも第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが形成された面が同一方向を向くように配置されている。
【0060】
また、上記垂直板状アンテナの各対10a,10b及び10c,10dに設けられた給電点Fは、対ごとに給電ケーブル18a,18b及び18c,18dを介して混合器19,19により混合され、これらの混合器19,19からそれぞれ図示しない給電ケーブルを介して無線回路の異なる系統に接続される。
【0061】
さらに、共振周波数帯域の下端周波数(2.4GHz)に対応する波長をλとするとき、上記垂直板状アンテナ10a〜10dはいずれも、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計が0.3λ以下となるように構成される。また、垂直板状アンテナの各対10a,10b及び10c,10dの配置間隔はいずれも0.5λとなるように設定される。
【0062】
このような構成であるから、磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dの対により、それぞれ指向性が90度異なる方向に、第1の反射板11cと平行する方向の偏波が生成される。また、各垂直板状アンテナ10a〜10dはいずれも、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計が0.3λ以下となるように構成されているため、2対の磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dを配置する際に、アンテナ対間のアイソレーションを維持した上でアンテナ装置のサイズを小型化することが可能となる。
【0063】
[第9の実施形態]
図11は、この発明の第9の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すもので、(a)はその平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図10と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0064】
本実施形態の前記第8の実施形態と構成を異にする点は、対をなす垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dをそれぞれ平行に配置する際に、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが形成された面が反対方向(
図11ではいずれも外側方向)を向くように設定したことである。また、この配置に対応するために、対をなす垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dの給電位相は反転されており、合成時に再度反転させて同位相とした後合成するようにしている。
【0065】
また、
図12は本実施形態に係るアンテナ装置の設置例を示す斜視図である。この例はアンテナ装置を壁面に設置する場合を示したもので、第1の反射板11cが壁面取付金具7bを用いて壁面にねじ止めにより固定される。なお、8bはカバーを、また9bは入出力部をそれぞれ示している。
【0066】
このような構成であるから、前記第8の実施形態と同様に、各垂直板状アンテナ10a〜10dの第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計は0.3λ以下となるように構成されているため、2対の磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dを配置する際に、アンテナ対間のアイソレーションを維持した上でアンテナ装置のサイズを小型化することが可能となる。
【0067】
[第10の実施形態]
図13及び
図14はこの発明の第10の実施形態に係るアンテナ装置の全体構成を示すもので、
図13は斜め上方から見た斜視図、
図14は斜め下方から見たときの斜視図である。また
図15(a)は同アンテナ装置の平面図、(b)〜(e)は異なる四方向から見たときの側面図である。なお、同図において前記
図10及び
図12と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0068】
本実施形態に係るアンテナ装置では、第1の反射板11dに、磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10bの対と、同じく磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10c,10d2の対を、相互に90度向きを異ならせた状態で配置している。垂直板状アンテナの各対10a,10b及び10c,10dは、いずれも第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが形成された面が同一方向を向くように配置されている。
【0069】
また、上記垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dの上方(
図13,
図14では前方)となる位置には、第1の反射板11dに対し支持部材22により支持された状態で水平板状アンテナ20が配置される。この水平板状アンテナ20は、羽根型をなす2対の水平板状素子21a,21bを交差させた状態で、つまり相互に90度向きを異ならせた状態で配置したもので、各水平板状素子21a,21bの配置位置は上記垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dの垂直上方となるように、つまり垂直板状アンテナ10a〜10dが水平板状素子21a,21bの下に隠れるように設定されている。
水平板状素子21aは、羽根状の対称な1対の板で構成され、対称性の中心付近(1対の板が最も近接する箇所)に給電点を有する。
なお、図中7cは壁面取付金具、8cはカバー、9bは入出力部、23a,23bは給電ケーブルを示している。
【0070】
ところで、垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dは2400〜2500MHzの周波数帯域(高域周波数帯)を共振帯域とし、水平板状アンテナ20は700〜2200MHzの周波数帯域(低域周波数帯)を共振帯域としている。
【0071】
そして、そのために先ず上記垂直板状アンテナ10a〜10dについては、低域周波数帯の上端周波数(2200MHz)に対応する波長をλ
Bとするとき、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計が0.3λ
B以下となるように設定される。また、高域周波数帯の下端周波数(2400MHz)に対応する波長をλ
Cとするとき、垂直板状アンテナの各対10a,10b及び10c,10dの配置間隔はいずれも0.5λ
Cとなるように設定される。さらに、上記垂直板状アンテナ10a〜10dの第2の反射板15aの上端からスリット15cの底端までの長さは、約0.25λ
Cに設定される。
【0072】
一方、水平板状アンテナ20については、低域周波数帯の下端周波数(700MHz)に対応する波長をλ
Aとするとき、水平板状素子21a,21bの導体長が0.35λ
Aに設定され、また水平板状素子21a,21bの幅は上記高域周波数帯の下端周波数(2400MHz)に対応する波長λ
Cに対し0.3〜0.4λ
Cに設定される。さらに、第1の反射板11dと水平板状アンテナ20の垂直方向の間隔は通常、低域周波数帯の中のいずれかの周波数において1/4波長となるように選ばれる。例えば、λ
Aを基準にすると0.15λ
Aと表される。なお、第1の反射板11dに対する水平板状アンテナ20の垂直方向の配置位置は、上記高域周波数帯の下端周波数(2400MHz)に対応する波長λ
Cに対し0.5λ
C付近(0.3〜0.7λ
C)設定してもよい。
【0073】
このような構成であるから、高域周波数帯域(2400〜2500MHz)に対して、磁界面スタック化された垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dの対によりそれぞれ指向性が90度異なる方向に、第1の反射板11cと平行する方向の偏波が生成される。また、それと共に低域周波数帯域(700〜2200MHz)に対して、水平板状アンテナ20の水平板状素子21a,21bによりそれぞれ指向性が90度異なる方向に、第1の反射板11cと平行する方向の偏波が生成される。
【0074】
その際に、上記垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dにおいて、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計が0.3λ
B以下となるように、つまり低域周波数帯域(700〜2200MHz)の上端周波数2200MHzに対応する波長より短くなるように設定されている。このため、垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dが低域周波数帯域(700〜2200MHz)に対し共振しないようにすることができる。すなわち、垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dと、水平板状アンテナ20の水平板状素子21a,21bとの間のアイソレーションを十分に確保することができ、これにより上記高域周波数帯域(2400〜2500MHz)と低域周波数帯域(700〜2200MHz)とを共用するアンテナ装置を提供することができる。
【0075】
しかも、上記垂直板状アンテナ10a〜10dの第2の反射板15aの上端からスリット15cの底端までの長さ、つまり垂直板状アンテナ10a〜10dの高さを約0.25λ
Cに設定している。すなわち、第1の反射板11dから水平板状アンテナ20までの距離0.5λ
Cに対し、約1/2に設定している。この結果、水平板状アンテナ20の各水平板状素子21a,21bを垂直板状アンテナ10a〜10dの導波器として機能させることが可能となり、これにより高域周波数帯域に対する利得を改善することができる。
【0076】
[第11の実施形態]
図16はこの発明の第11の実施形態に係るアンテナ装置の構成を斜め上方から見たときの斜視図、
図17及び
図18はそれぞれその平面図及び側面図である。
【0077】
本実施形態に係るアンテナ装置は、ほぼ正方形をなす第1の反射板30を備える。この第1の反射板30は金属導体からなり、例えば板金を用いて製作される。この第1の反射板30の中央部の垂直上方位置には、水平板状アンテナ40が配置される。水平板状アンテナ40は、
図17に示すように、羽根型をなす2対の水平板状素子41a,41bを有する。これらの水平板状素子41a,41bは、互いに交差するように、つまり向きが互いに90度異なる状態を維持し、上記第1の反射板30の四辺に対し45度偏角させた状態で配置される。
【0078】
上記水平板状素子41a,41bは、その左右の素子片ごとに2本の支持部材42,43を用いて上記第1の反射板30に固定支持される。
図24及び
図25はその支持構造を示す分解斜視図である。同図に示すように支持部材42,43の一方42は樹脂製の六角柱からなり、他方43は板金で折り曲げ成形された金属部材からなる。なお、この金属の支持部材43は第1の反射板30の一部を切り抜いて立ち上げたものを用いてもよい。このように構成すると、支持部材43の部品点数を減らしてさらに安価にすることができる。
【0079】
また、上記第1の反射板30上の4箇所の角部には第1の補助反射板31a,31bが立設されている。第1の補助反射板31a,31bは、板金等の金属導体をL型に折曲形成したもので、折り曲げた内側面が上記水平板状素子41a,41bの先端部と対向するように配置される。第1の補助反射板31a,31bは、第1の反射板30と直流的に同電位に設定される。この第1の補助反射板31a,31bにより、広帯域の素子において第1の反射板30との間隔が波長に対し狭い周波数帯域(低域周波数帯域)においても良好なインピーダンスを維持する。
【0080】
さらに、上記第1の反射板30上の4辺部にはそれぞれ当該辺と平行する状態に第2の補助反射板32a〜32dが設置されている。第2の補助反射板32a〜32dは、板金等の金属導体を折り曲げたもので、上記各辺に2個ずつ並べて配置される。なお、これら2個の反射板は1個の反射板として一体形成してもよい。第2の補助反射板32a〜32dも、第1の反射板30と直流的に同電位に設定される。
【0081】
ところで、上記第1の反射板30、水平板状素子41a,41b、第1の補助反射板31a,31b及び第2の補助反射板32a〜32dの具体的な寸法は、例えば以下のように設定される。すなわち、いま700〜2200MHzの周波数帯域(低域周波数帯)を共振帯域として使用する場合、その下端周波数に対応する波長をλとすると、
図17及び
図18に示すように、水平板状素子41a,41bの導体長を0.36λ以下、幅を0.1λ以下に設定する。また、第1の補助反射板31a,31bの一片の幅を0.08λ以下に、第2の補助反射板32a〜32dの幅を0.49λ以下にそれぞれ設定し、さらに第1の反射板30の一辺の長さを0.54λ以下に設定する。
【0082】
また、第1の反射板30からの水平板状素子41a,41bの距離、つまり高さはそれぞれ0.16λ以下及び0.15λ以下に設定する。さらに、第1の補助反射板31a,31bの高さは0.14λ以下に、また第2の補助反射板32a〜32dの高さは0.08λ以下にそれぞれ設定される。
【0083】
本実施形態に係るアンテナ装置では、上記水平板状アンテナ40の上部にさらに導波器50が装着される。
図19はこの導波器50を装着した状態を示す斜視図、
図20及び
図21はそれぞれその平面図及び側面図である。同図に示すように導波器50は第1反射板30に対し支持部材により固定される。
【0084】
導波器50は、ほぼ正方形をなす絶縁基板51を有し、当該絶縁基板51の表面側には
図22に示すように第1の無給電素子52a,52bが配置されている。また、裏面側には
図23に示すように第2の無給電素子53a〜53dが配置されている。
【0085】
第1の無給電素子52a,52bは、4個の導電パターンからなり、これらの導電パターンが先に述べた水平板状素子41a,41bと対向するように位置決めされる。各導電パターンには、
図22に示すようにく型をなす複数のスリットが設けられている。各導電パターンの長さ及び幅は、共振帯域である低域周波数帯(700〜2200MHz)の下端周波数に対応する波長をλとすると、それぞれ0.11λ、0.05λに設定されている。
【0086】
第2の無給電素子53a〜53dは、上記水平板状素子41a,41bと対向する位置に、
図23に示すように複数の線状の導電パターンを一定の間隔でストライプ状に配置したもので、各線上導電パターンの長さ及び配置間隔はそれぞれ0.09λ、0.04λに設定されている。
【0087】
このような構成であるから、水平板状素子41a,41bにより、低域周波数帯(700〜2200MHz)に対して、90度異なる方向に指向性を持つ2系統の偏波が生成される。これらの偏波は、いずれも第1の反射板30と平行する方向の偏波となる。
【0088】
またその際、第1の補助反射板31a,31b及び第2の補助反射板32a〜32dを設置したことにより、上記2系統の各偏波の指向性をさらに高めることが可能となる。さらに、第1及び第2の無給電素子52a,52b及び53a,53bを備える導波器50を設置したことによって、低域周波数帯における定在波比特性を改善することができる。
【0089】
[第12の実施形態]
この発明の第12の実施形態に係るアンテナ装置は、第1の反射板30上に、2400〜2500MHzの周波数帯域(高域周波数帯)を共振帯域とする垂直板状アンテナ60a〜60dと、700〜2200MHzの周波数帯域(低域周波数帯)を共振帯域とする水平板状アンテナ40と、当該水平板状アンテナ20の指向性に作用する第1及び第2の補助反射板31a,31b及び32a〜32dと、導波器50とを設けたものである。
【0090】
第1の反射板30上には、先ず垂直板状アンテナ60a〜60dが装着される。
図26は当該垂直板状アンテナ60a〜60dが装着された状態を斜め上方から見たときの斜視図、
図27及び
図28はそれぞれその平面図及び側面図である。
【0091】
垂直板状アンテナ60a〜60dは、アンテナ60aと60b、アンテナ60cと60dがそれぞれ対をなし、相互に90度向きを異ならせた状態で、かつ
図27に示すように上記第1の反射板30の四辺に対し45度偏角させた状態で配置される。これらの垂直板状アンテナの対60a,60b及び60c,60dは、それぞれ所定の間隔を隔てて互いに向かい合う状態で平行に配置され、これにより磁界面スタックを構成する。
【0092】
図29及び
図30は、上記垂直板状アンテナ60a〜60dの構成を拡大して示したものである。なお、同図において前記
図6と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0093】
垂直板状アンテナ60a〜60dは、絶縁基板16の一方の面に、第2の反射板15aを構成する長方形の第1の導電パターンと、アンテナ素子15bを構成するL型の第2の導電パターンを形成している。第1の導電パターンと第2の導電パターンとの間にはその下端部を一部残してスリット15cが形成され、これにより迂回回路が構成される。
【0094】
上記各パターンの寸法は例えば以下のように設定される。すなわち、高域周波数帯(2400〜2500MHz)の下端周波数(2400MHz)に対応する波長をλ
Hとすると、第2の反射板15aとアンテナ素子15bの図中横方向の長さは0.3λ
H以下に、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの上端部における長さはそれぞれ0.15λ
H以下に設定される。また、垂直板状アンテナ60a〜60dの横方向の全長は0.45λ
H以下に設定される。垂直板状アンテナ60a〜60dの縦方向のサイズは、導電パターンの長さが0.31λ
H以下に、また全長が0.32λ
H以下にそれぞれ設定される。
【0095】
一方、上記絶縁基板16の他方の面には、上記第2の反射板15aを構成する第1の導電パターンに対し背中合わせとなる位置に、スタブ付きのマイクロストリップライン15hを形成されている。このスタブ付きマイクロストリップライン15hのマイクロストリップライン部分は給電経路の一部として用いられ、またスタブ部分はオープンスタブ又はショートスタブとしてインピーダンス整合のために用いられる。
【0096】
上記スタブ付きマイクロストリップライン15hの寸法は、例えば
図30に示すように、マイクロストリップライン部分の縦方向が0.24λ
H、横方向が0.07λ
Hにそれぞれ設定され、またスタブ部分の長さが0.23λ
Hに設定される。
【0097】
なお、上記垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dは、その一方の面に形成された第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが反対方向(外側方向)を向くように向きが設定される。すなわち、垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10dをその第2の反射板15a及びアンテナ素子15bが設けられた面が逆位相となるように、機械的に第1の反射板30の中心点に対して回転対称となるように配置している。そして、垂直板状アンテナ10a,10b及び10c,10d間で、それぞれの無線回路から出力された無線信号を逆位相の分配器で合成し、最終的に上記第2の反射板15a及びアンテナ素子15により同位相で合成するようにしている。
【0098】
上記垂直板状アンテナ60a〜60dの上方位置には、水平板状アンテナ40が装着される。
図31はこの水平板状アンテナ40が装着された状態を斜め上方から見たときの斜視図、
図32はその平面図、
図33は側面である。なお、これら
図31〜
図33において前記
図16〜
図18図と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0099】
水平板状アンテナ40は、羽根型をなす2対の水平板状素子41a,41bを有する。これらの水平板状素子41a,41bは、実質的に同一の形状を有し、互いに交差するように、つまり偏波方向が互いに90度異なる状態を維持し、
図32に示すように上記第1の反射板30の四辺に対し45度偏角させた状態で配置される。このとき、垂直板状アンテナ60aと60bが、水平板状素子41aと第1の反射板30の間に挟まれ、垂直板状アンテナ60cと60dが、水平板状素子41bと第1の反射板30の間に挟まれ、このような関係にある水平板状素子41と垂直板状アンテナ60は互いに偏波が直交している。なお、本実施形態では、互いに交差するように配置する都合により、水平板状素子41a,41bは、第1の反射板との距離をわずかに異ならせてある。
【0100】
上記水平板状素子41aは、第10の実施形態と同様に、左右の素子片が最も近接する箇所に給電点を有し、
図24及び
図25に示すように、給電線路基板44から給電される。給電線路基板44は、両面にパターンを有する基板を、所定の特性インピーダンスの平衡線路として用いたものであり、各面のパターンが左右の素子片にそれぞれ接続される。
【0101】
また、上記水平板状素子41aは、その左右の素子片ごとに樹脂製の支持部材42と金属製の支持部材43を用いて上記第1の反射板30に固定支持される。支持部材43は、水平板状素子41aの各素子片の給電点寄りの箇所と接続され、ショートスタブ或いはバランの一部として機能し、広帯域なインピーダンスの整合に寄与している。
【0102】
また、上記第1の反射板30上の4箇所の角部には第1の補助反射板31a,31bが立設されている。第1の補助反射板31a,31bは、板金等の金属導体をL型に折曲形成したもので、折り曲げた内側面が上記水平板状素子41a,41bの先端部と対向するように配置される。第1の補助反射板31a,31bは、第1の反射板30と直流的に同電位に設定される。
【0103】
さらに、上記第1の反射板30上の4辺部にはそれぞれ当該辺と平行する状態に第2の補助反射板32a〜32dが設置されている。第2の補助反射板32a〜32dは、板金等の金属導体を折り曲げたもので、上記各辺に2個ずつ並べて配置される。第2の補助反射板32a〜32dも、第1の反射板30と直流的に同電位に設定される。なお、上記1辺に沿って並べて配置される2個の反射板は、1個の反射板として一体的に成形してもよい。
【0104】
ところで、上記第1の反射板30、水平板状素子41a,41b、第1の補助反射板31a,31b及び第2の補助反射板32a〜32dの具体的な寸法は、例えば以下のように設定される。すなわち、いま700〜2200MHzの周波数帯域(低域周波数帯)を水平板状アンテナ40の共振帯域とする場合、その下端周波数に対応する波長をλ
Lとすると、
図32及び
図33に示すように、水平板状素子41a,41bの導体長を0.36λ
L以下、幅を0.1λ
L以下に設定する。なお、
図17に示したように、第1の補助反射板31a,31bの一片の幅は0.08λ
L以下に、第2の補助反射板32a〜32dの幅は0.49λ
L以下にそれぞれ設定され、さらに第1の反射板30の一辺の長さは0.54λ
L以下に設定される。
【0105】
また、
図33に示すように第1の反射板30からの水平板状素子41a,41bの距離、つまり高さはそれぞれ0.16λ
L以下及び0.15λ
L以下に設定する。なお、
図18に示したように第1の補助反射板31a,31bの高さは0.14λ
L以下に、また第2の補助反射板32a〜32dの高さは0.08λ
L以下にそれぞれ設定される。
【0106】
さらに、本実施形態に係るアンテナ装置では、上記水平板状アンテナ40の上部に導波器50が装着される。
図34はこの導波器50を装着した状態を斜め上方から見たときの斜視図、
図35はその平面図、
図36は側面図を示している。なお、これら
図34〜
図36において前記
図19〜
図21図と同一部分には同一符号を付して説明を行う。
【0107】
導波器50は、ほぼ正方形をなす絶縁基板51を有し、当該絶縁基板51の表面側には
図22に示したように第1の無給電素子52a,52bが配置されている。また、裏面側には
図23に示したように第2の無給電素子53a〜53dが配置されている。なお、導波器50は第1反射板30に対し支持部材により固定される。第1の反射板30から導波器50までの距離、つまり導波器50の高さ方向の位置は、
図36に示すように0.18λ
Lに設定される。
【0108】
第1の無給電素子52a,52bは、4個の導電パターンからなり、これらの導電パターンが先に述べた水平板状素子41a,41bと対向するように位置決めされる。各導電パターンには、
図22に示すようにく型をなす複数のスリットが設けられている。各導電パターンの長さ及び幅は、共振帯域である低域周波数帯(700〜2200MHz)の下端周波数に対応する波長をλ
Lとすると、それぞれ0.11λ
L、0.05λ
Lに設定されている。
【0109】
第2の無給電素子53a〜53dは、上記水平板状素子41a,41bと対向する位置に、
図23に示すように複数の線状の導電パターンを一定の間隔でストライプ状に配置したもので、各線上導電パターンの長さ及び配置間隔はそれぞれ0.09λ、0.04λに設定されている。
【0110】
このような構成であるから、水平板状素子41a,41bにより、低域周波数帯(700〜2200MHz)に対して、90度異なる方向に指向性を持つ2系統の偏波が生成される。これらの偏波は、いずれも第1の反射板30と平行する方向の偏波となる。
【0111】
またその際、第1の補助反射板31a,31b及び第2の補助反射板32a〜32dを設置したことにより、上記2系統の各偏波の指向性をさらに高めることが可能となる。さらに、第1及び第2の無給電素子52a,52b及び53a,53bを備える導波器50を設置したことによって、定在波比特性を改善することができる。
【0112】
一方、磁界面スタック化された垂直板状アンテナ60a,60b及び60c,60dの対により、高域周波数帯域(2400〜2500MHz)に対して、それぞれ90度異なる方向に指向性を持つ2系統の偏波が生成される。これらの偏波は、いずれも第1の反射板30と平行する方向の偏波となる。
【0113】
その際、上記垂直板状アンテナ60a,60b及び60c,60dにおいて、第2の反射板15a及びアンテナ素子15bの水平方向における導体長の合計が0.3λ
L以下となるように、つまり低域周波数帯域(700〜2200MHz)の上端周波数2200MHzに対応する波長λ
Lより短くなるように設定されている。このため、垂直板状アンテナ60a,60b及び60c,60dが低域周波数帯域(700〜2200MHz)に対し共振しないようにすることができる。この結果、垂直板状アンテナ60a,60b及び60c,60dと、水平板状アンテナ40の水平板状素子41a,41bとの間のアイソレーションを十分に確保することができ、これにより上記高域周波数帯域(2400〜2500MHz)と低域周波数帯域(700〜2200MHz)とを共用するアンテナ装置を提供することができる。
【0114】
すなわち、98%以上の比帯域特性が得られる低域超広帯域アンテナである水平板状アンテナ40と、19%以上の比帯域特性が得られる高域周波数帯域アンテナである垂直板状アンテナ60a〜60dとを組合せることにより、低域超広帯域アンテナの素子と高域周波数帯域アンテナの素子を周波数帯ごとに配置することなく、3つの帯域を含む広帯域に対応可能な共用アンテナを容易に実現することができる。また、構造の簡略化により低コスト化を実現するとともに、各周波数帯を2系統化し、MIMOに対応するアンテナ装置を提供することができる。さらに、アンテナ利得周波数特性のリップルを軽減し、アンテナ素子間のアイソレーションを良好とするアンテナ装置を提供できる。
【0115】
[その他の実施形態]
前記実施形態ではアンテナ装置を壁面に設置する場合を例にとって説明したが、テーブル面や天井等の水平面に設置するようにしてもよい。その他、垂直板状アンテナ及び水平板状アンテナの素子の形状やサイズ、各素子への給電経路の構造等については、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0116】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。