(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
(ベローズポンプの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。本実施形態のベローズポンプ装置は、例えば半導体製造装置において薬液や溶剤等の移送流体を一定量供給するときに用いられる。このベローズポンプ装置は、ベローズポンプ1と、当該ベローズポンプ1に加圧空気(作動流体)を供給するエアコンプレッサ等の空気供給装置2と、前記加圧空気の圧力を調整するレギュレータ3と、2個の切換バルブ4,5と、ベローズポンプ1の駆動を制御する制御部6と、圧力計(圧力検出部)7と、電空レギュレータ8とを備えている。
【0016】
図2は、ベローズポンプ1の断面図である。本実施形態のベローズポンプ1は、ポンプヘッド10と、このポンプヘッド10の左右方向(水平方向)の両側に取り付けられる2個のポンプケース11,12と、各ポンプケース11,12の内部において、ポンプヘッド10の左右方向の側面に取り付けられる2個のベローズ13,14と、各ベローズ13,14の内部において、ポンプヘッド10の左右方向の側面に取り付けられる4個のチェックバルブ15,16と、を備えている。
【0017】
(ベローズの構成)
ポンプケース12の内部には、ポンプヘッド10の一側部(図中の右側部)に移送用ベローズ14が取り付けられている。また、ポンプケース11の内部には、ポンプヘッド10の他側部(図中の左側部)に調整用ベローズ13が取り付けられている。
各ベローズ13,14は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂により有底筒形状に形成され、その開放端部に一体形成されたフランジ部13a,14aはポンプヘッド10の側面に気密状に押圧固定されている。これにより、各ベローズ13,14の内部には、移送流体が一時貯留される流体室41,42が形成されている。
【0018】
各ベローズ13,14の周壁は蛇腹形状に形成され、互いに独立して水平方向に伸縮変形自在に構成されている。具体的には、ベローズ13(14)は、後述する作動板19の外面がポンプケース11(12)の底壁部11a(12a)の内方側面に当接する最伸長状態と、後述するピストン体23の内方側面が対応するポンプケース11(12)の底壁部11a(12a)の外方側面に当接する最収縮状態との間で伸縮するようになっている。
各ベローズ13,14の底部の外面には、ボルト17及びナット18により作動板19が連結部材20の一端部とともに固定されている。
【0019】
(ポンプケースの構成)
ポンプヘッド10の一側部には移送用ポンプケース12が取り付けられ、ポンプヘッド10の他側部には調整用ポンプケース11が取り付けられている。
各ポンプケース11,12は、有底円筒状に形成されており、その開口周縁部は、対応するベローズ13(14)のフランジ部13a(14a)に気密状に押圧固定されている。これにより、各ポンプケース11,12の内部には気密状態が保持された吐出側空気室21が形成されている。
【0020】
各ポンプケース11,12には吸排気ポート22がそれぞれ設けられており、吸排気ポート22は、切換バルブ4(5)及びレギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2からレギュレータ3及び切換バルブ4(5)及び吸排気ポート22を介して吐出側空気室21の内部に加圧空気を供給することで、ベローズ13(14)が収縮するようになっている。
【0021】
また、各ポンプケース11,12の底壁部11a,12aには、前記連結部材20が水平方向に摺動可能に支持されており、この連結部材20の他端部にはピストン体23がナット24により固定されている。ピストン体23は、前記底壁部12aの外方側面に一体に設けられた円筒状のシリンダ体25の内周面に対して、気密状態を保持しながら水平方向へ摺動可能に支持されている。これにより、前記底壁部11a(12a)、シリンダ体25、及びピストン体23とによって囲まれた空間は、気密状態が保持された吸込側空気室26とされている。
【0022】
前記シリンダ体25には吸込側空気室26に連通する吸排気口25aが形成されており、この吸排気口25aは、前記切換バルブ4(5)及びレギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(
図1参照)。これにより、空気供給装置2からレギュレータ3及び切換バルブ4(5)及び吸排気口25aを介して吸込側空気室26の内部に加圧空気を供給することで、ベローズ13(14)が伸長するようになっている。
各ポンプケース11,12の底壁部11a,12aの下方には、移送流体の吐出側空気室21への漏洩を検知するための漏洩センサ40が取り付けられている。
【0023】
なお、本実施形態のベローズポンプ装置では、吸込側空気室26の内部全体に加圧空気が充填されるまでの時間は、吐出側空気室21の内部全体に加圧空気が充填されるまでの時間よりも短くなっている。つまり、ベローズ13(14)が最収縮状態から最伸長状態まで伸長する伸長時間(吸込時間)は、当該ベローズ13(14)が最伸長状態から最収縮状態まで収縮する収縮時間(吐出時間)よりも短くなっている。
【0024】
以上の構成により、
図2左側の吐出側空気室21が形成された調整用ポンプケース11と、
図2左側の吸込側空気室26を形成するピストン体23及びシリンダ体25とにより、調整用ベローズ13を最伸長状態と最収縮状態との間で連続して伸縮変形動作させる調整用エアシリンダ部(調整用駆動部)27が構成されている。
また、
図2右側の吐出側空気室21が形成された移送用ポンプケース12と、
図2右側の吸込側空気室26が形成されたピストン体23及びシリンダ体25とにより、移送用ベローズ14を最伸長状態と最収縮状態との間で連続して伸縮変形動作させる移送用エアシリンダ部(移送用駆動部)28が構成されている。
【0025】
調整用エアシリンダ部27のシリンダ体25には、一対の近接センサ29A,29Bが取り付けられ、ピストン体23には各近接センサ29A,29Bにより検知される被検知板30が取り付けられている。被検知板30は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ29A,29Bに交互に近接することにより検知される。
【0026】
近接センサ29Aは、調整用ベローズ13の最収縮状態を検知するものであり、調整用ベローズ13が最収縮状態のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。近接センサ29Bは、調整用ベローズ13の最伸長状態を検知するものであり、調整用ベローズ13が最伸長状態のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。各近接センサ29A,29Bの検知信号は制御部6に送信される。本実施形態では、上記一対の近接センサ29A,29Bにより、調整用ベローズ13の伸縮状態を検知する調整用検知部29が構成されている。
【0027】
同様に、移送用エアシリンダ部28のシリンダ体25には、一対の近接センサ31A,31Bが取り付けられ、ピストン体23には各近接センサ31A,31Bより検知される被検知板32が取り付けられている。被検知板32は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ31A,31Bに交互に近接することにより検知される。
【0028】
近接センサ31Aは、移送用ベローズ14の最収縮状態を検知するものであり、移送用ベローズ14が最収縮状態のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。近接センサ31Bは、移送用ベローズ14の最伸長状態を検知するものであり、移送用ベローズ14が最伸長状態のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。各近接センサ31A,31Bの検知信号は制御部6に送信される。本実施形態では、一対の近接センサ31A,31Bにより、移送用ベローズ14の伸縮状態を検知する移送用検知部31が構成されている。
【0029】
空気供給装置2によって生成された加圧空気は、移送用検知部31の一対の近接センサ31A,31Bが被検知板32を交互に検知することで、移送用エアシリンダ部28の吸込側空気室26と吐出側空気室21とに交互に供給される。これにより、移送用ベローズ14は連続して伸縮変形動作する。このように、移送用ベローズ14は、伸縮変形動作を繰り返すことで、移送用ベローズ14内の流体室42への移送流体の吸込と吐出とが交互に行われ、当該移送流体が移送されるようになっている。
【0030】
また、前記加圧空気は、調整用エアシリンダ部27の吸込側空気室26及び吐出側空気室21にもそれぞれ供給される。これにより、調整用ベローズ13が伸縮変形動作し、前記流体室41の容量が変化するようになっている。
したがって、本実施形態では、調整用ポンプケース11は、移送流体を一時貯留する流体室41が内部に形成される容器とされている。また、調整用ベローズ13は、前記容器内において流体室41の容量を変化させるために伸縮変形自在に設けられた隔壁として機能する。さらに、調整用エアシリンダ部27は、前記隔壁を伸縮変形動作させる隔壁駆動部として機能する。
【0031】
(ポンプヘッドの構成)
ポンプヘッド10は、PTFEやPFA等のフッ素樹脂から形成されている。ポンプヘッド10の内部には、移送流体の吸込通路34と吐出通路35とが形成されており、この吸込通路34及び吐出通路35は、ポンプヘッド10の外周面において開口し、当該外周面に設けられた吸込ポート(図示省略)及び吐出ポート38(
図1参照)に接続されている。吸込ポートは移送流体の貯留タンク等に接続され、吐出ポート38は吐出配管39(
図1参照)を介して移送流体の移送先に接続される。また、吸込通路34及び吐出通路35は、それぞれポンプヘッド10の左右両側面に向けて分岐するとともに、ポンプヘッド10の左右両側面において開口する吸込口36及び吐出口37を有している。各吸込口36及び各吐出口37は、それぞれチェックバルブ15,16を介してベローズ13,14内部の流体室41,42と連通している。
【0032】
(チェックバルブの構成)
各吸込口36及び各吐出口37には、チェックバルブ15,16が設けられている。
吸込口36に取り付けられたチェックバルブ15(以下、「吸込用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース15aと、このバルブケース15aに収容された弁体15bと、この弁体15bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ15cとを有している。バルブケース15aは有底円筒形状に形成されており、その底壁にはベローズ13,14の内部に連通する貫通孔15dが形成されている。弁体15bは、圧縮コイルバネ15cの付勢力により吸込口36を閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮変形に伴う移送流体の流れによる背圧が作用すると吸込口36を開放(開弁)するようになっている。
これにより、吸込用チェックバルブ15は、自身が配置されているベローズ13,14が伸長したときに開弁して、吸込通路34からベローズ13,14内部に向かう方向(一方向)への移送流体の吸引を許容し、当該ベローズ13,14が収縮したときに閉弁して、ベローズ13,14内部から吸込通路34に向かう方向(他方向)への移送流体の逆流を阻止する。
【0033】
吐出口37に取り付けられたチェックバルブ16(以下、「吐出用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース16aと、このバルブケース16aに収容された弁体16bと、この弁体16bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ16cとを有している。バルブケース16aは有底円筒形状に形成されており、その底壁にはベローズ13,14の内部に連通する貫通孔16dが形成されている。弁体16bは、圧縮コイルバネ16cの付勢力によりバルブケース16aの貫通孔16dを閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮変形に伴う移送流体の流れによる背圧が作用するとバルブケース16aの貫通孔16dを開放(開弁)するようになっている。
【0034】
これにより、吐出用チェックバルブ16は、自身が配置されているベローズ13,14が収縮したときに開弁して、ベローズ13,14内部から吐出通路35に向かう方向(一方向)への移送流体の流出を許容し、当該ベローズ13,14が伸長したときに閉弁して、吐出通路35からベローズ13,14内部に向かう方向(他方向)への移送流体の逆流を阻止する。
【0035】
(ベローズポンプの動作)
次に、本実施形態のベローズポンプ1の動作を
図3〜
図6を参照して説明する。なお、
図3〜
図6においては各ベローズ13,14の構成を簡略化して示している。
図3に示すように、移送用ベローズ14が伸長した場合、ポンプヘッド10の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、移送用ベローズ14による吸引作用によって各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開くとともに、吐出用チェックバルブ16が閉じ、吸込通路34から移送用ベローズ14内の流体室42に移送流体が吸い込まれる。
【0036】
次に、
図4に示すように、移送用ベローズ14が収縮した場合、ポンプヘッド10の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、移送用ベローズ14内の流体室42の移送流体から圧力を受けて各バルブケース15a,16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉じるともに、吐出用チェックバルブ16が開き、移送用ベローズ14内の流体室42の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ排出される。
以上の伸縮動作を繰り返し行うことで、移送用ベローズ14は、移送流体の吸引と排出とを行うことができる。
【0037】
一方、
図5に示すように、調整用ベローズ13が伸長した場合、ポンプヘッド10の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、調整用ベローズ13による吸引作用によって各バルブケース15a,16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開くとともに、吐出用チェックバルブ16が閉じ、吸込通路34から調整用ベローズ13内の流体室41に移送流体が吸い込まれる。
【0038】
次に、
図6に示すように、調整用ベローズ13が収縮した場合、ポンプヘッド10の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、調整用ベローズ13内の流体室41の移送流体から圧力を受けて各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉じるともに、吐出用チェックバルブ16が開き、調整用ベローズ13内の流体室41の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ排出される。
以上の伸縮動作を繰り返し行うことで、調整用ベローズ13は、移送流体を一時貯留する流体室41の容量を変化させることができる。
【0039】
(切換バルブの構成)
図1において、調整用切換バルブ4は、空気供給装置2から調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21及び吸込側空気室26への加圧空気の給排を切り換えるものであり、一対のソレノイド4a,4bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド4a,4bは制御部6から指令信号を受けて励磁されるようになっている。
【0040】
調整用切換バルブ4は、両ソレノイド4a,4bが消磁状態のときには中立位置に保持されており、空気供給装置2から調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21(吸排気ポート22)及び吸込側空気室26(吸排気口25a)への加圧空気の供給は遮断され、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21及び吸込側空気室26は、いずれも大気と連通して開放されている。
【0041】
また、調整用切換バルブ4は、ソレノイド4aが励磁されると、図中の下位置に切り換わり、空気供給装置2から調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に加圧空気が供給される。その際、調整用エアシリンダ部27の吸込側空気室26は大気と連通して開放されている。これにより、調整用ベローズ13を収縮させることができる。
【0042】
さらに、調整用切換バルブ4は、ソレノイド4bが励磁されると、図中の上位置に切り換わり、空気供給装置2から調整用エアシリンダ部27の吸込側空気室26に加圧空気が供給される。その際、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21は大気と連通して開放されている。これにより、調整用ベローズ13を伸長させることができる。
【0043】
移送用切換バルブ5は、空気供給装置2から移送用エアシリンダ部28の吐出側空気室21及び吸込側空気室26への加圧空気の給排を切り換えるものであり、一対のソレノイド5a,5bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド5a,5bは制御部6から指令信号を受けて励磁されるようになっている。
【0044】
移送用切換バルブ5は、両ソレノイド5a,5bが消磁状態のときには中立位置に保持されており、空気供給装置2から移送用エアシリンダ部28の吐出側空気室21(吸排気ポート22)及び吸込側空気室26(吸排気口25a)への加圧空気の供給は遮断され、移送用エアシリンダ部28の吐出側空気室21及び吸込側空気室26は、いずれも大気と連通して開放されている。
【0045】
また、移送用切換バルブ5は、ソレノイド5aが励磁されると、図中の下位置に切り換わり、空気供給装置2から移送用エアシリンダ部28の吐出側空気室21に加圧空気が供給される。その際、移送用エアシリンダ部28の吸込側空気室26は大気と連通して開放されている。これにより、移送用ベローズ14を収縮させることができる。
【0046】
さらに、移送用切換バルブ5は、ソレノイド5bが励磁されると、図中の上位置に切り換わり、空気供給装置2から移送用エアシリンダ部28の吸込側空気室26に加圧空気が供給される。その際、移送用エアシリンダ部28の吐出側空気室21は大気と連通して開放されている。これにより、移送用ベローズ14を伸長させることができる。
【0047】
なお、各切換バルブ4,5の上流側には、各エアシリンダ部27、28の吐出側空気室21内、または吸込側空気室26内の加圧空気が大気に開放される際に発生する排気音を消音するためのサイレンサ9が設けられている。
【0048】
(圧力計及び電空レギュレータの構成)
図1に示すように、圧力計7は、吐出配管39の吐出ポート38側の端部に配置され、ポンプヘッド10の吐出通路35(
図2参照)から吐出される移送流体の吐出圧力を検出する。圧力計7の検出値は、制御部6に送信される。
電空レギュレータ8は、調整用切換バルブ4と、調整用エアシリンダ部27の吸排気ポート22とを接続する配管途中に設けられている。電空レギュレータ8は、制御部6からの電気信号に基づいて、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整するようになっている。
【0049】
(制御部の構成)
図7は、制御部6の内部構成を示すブロック図である。制御部6は、調整用制御部6aと、移送用制御部6bとを有している。
移送用制御部6bは、移送用検知部31(
図2参照)の検知信号に基づいて、移送用切換バルブ5を切り換えて移送用エアシリンダ部28を駆動制御するものである。
調整用制御部6aは、圧力計7(
図1参照)の検出値に基づいて、吐出ポート38から吐出される移送流体の圧力変動を抑制するために、調整用切換バルブ4を適宜切り換えるとともに、電空レギュレータ8を介して吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整して調整用エアシリンダ部27を駆動制御するものである。
【0050】
(ベローズポンプの駆動制御)
図8は、制御部6が行うベローズポンプ1の駆動制御の一例を示すタイムチャートである。
まず、移送用制御部6bによる移送用エアシリンダ部28の駆動制御について説明する。
図8に示すように、移送用制御部6bは、移送用ベローズ14が最収縮状態にあるとき(t0)、移送用切換バルブ5のソレノイド5bを励磁させる。これにより、移送用ベローズ14は最収縮状態から伸長動作を開始し、ポンプヘッド10の吸込通路34から移送用ベローズ14内の流体室42に移送流体が吸い込まれる。
【0051】
その後、移送用ベローズ14が最伸長状態まで伸長した時点(t1)で、近接センサ31Bが検知信号を移送用制御部6bに送信する。移送用制御部6bは、その検知信号を受信すると、移送用切換バルブ5のソレノイド5bを消磁させるとともにソレノイド5aを励磁させる。これにより、移送用ベローズ14は最伸長状態から収縮動作を開始し、移送用ベローズ14内の流体室42の移送流体がポンプヘッド10の吐出通路35からポンプ外へ排出される。
【0052】
その後、移送用ベローズ14が最収縮状態まで収縮した時点(t5)で、近接センサ31Aが検知信号を移送用制御部6bに送信する。移送用制御部6bは、その検知信号を受信すると、移送用切換バルブ5のソレノイド5aを消磁させるとともにソレノイド5bを励磁させる。これにより、移送用ベローズ14は再び最収縮状態から伸長動作を開始し、ポンプヘッド10の吸込通路34から移送用ベローズ14内の流体室42に移送流体が吸い込まれる。
移送用制御部6bは、以上の制御を連続して繰り返し行う。
【0053】
しかし、移送用制御部6bによる上述の制御だけでは、移送用ベローズによる移送流体の吐出圧力は、
図8に示すように、移送用ベローズ14が最収縮状態から伸長するとき(移送流体をポンプ内に吸い込むとき)に急激に落ち込むため、ポンプの吐出側において脈動が発生するおそれがある。そこで、この脈動を抑制するために、移送流体の吐出圧力が一定値となるように、調整用制御部6aにより調整用エアシリンダ部27の駆動制御が行われている。本実施形態の調整用制御部6aは、圧力計7の検知値に基づいて、移送用ベローズ14の収縮時に前記吐出圧力が最大となる圧力値Pに保持するように制御している。
【0054】
以下、調整用制御部6aによる調整用エアシリンダ部27の駆動制御について説明する。なお、ここでは、説明の便宜上、移送用ベローズ14が最伸長状態となっている時点(t1)から説明する。
移送用ベローズ14が最伸長状態の時点(t1)から収縮し始めると、
図8に示すように、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力は、ゼロ付近から徐々に上昇し、所定時点(t2)で最大圧力値Pとなる。この最大圧力値Pは、一定時間(t4−t2)維持されるため、調整用制御部6aは、圧力計7が最大圧力値Pとなった時点(t2)で、調整用切換バルブ4のソレノイド4bを励磁させ、前記一定時間内に調整用ベローズ13を最収縮状態から最伸長状態まで伸長させる。これにより、ポンプヘッド10の吸込通路34から調整用ベローズ13内の流体室41に移送流体が吸い込まれる。
【0055】
調整用ベローズ13が最伸長状態まで伸長した時点(t3)で、近接センサ29Bは検知信号を調整用制御部6aに送信する。調整用制御部6aは、その検知信号を受信すると、調整用切換バルブ4のソレノイド4bを消磁させるとともにソレノイド4aを励磁させる。これにより、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21(
図2参照)に加圧空気が供給されるため、ポンプヘッド10の
図2左側に装着された吐出用チェックバルブ16の弁体16bは、調整用ベローズ13内の移送流体により圧力を受ける。しかし、その圧力よりも、ポンプヘッド10の吐出通路35内における移送用ベローズ14から排出される移送流体の圧力が大きいため、前記弁体16bは、
図2に示す状態、すなわち吐出用チェックバルブ16を閉じた状態で保持される。したがって、調整用制御部6aにより調整用切換バルブ4のソレノイド4aが励磁されても、調整用ベローズ13は最伸長状態に保持される。
【0056】
しかし、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21には加圧空気が供給され続けるため、調整用ベローズ13内の移送流体の圧力は徐々に上昇する。これにより、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は、
図8に示すように、ソレノイド4aが励磁された時点(t3)から徐々に増加し、所定時点(t4)で最大圧力値Pとなる。すなわち、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pに維持される一定時間の終了時点(t4)で、最大圧力値Pとなる。
【0057】
前記吐出圧力が最大圧力値Pに維持される一定時間の終了時点(t4)が経過すると、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力は、最大圧力値Pから徐々に低下し始める。そうすると、調整用ベローズ13内の移送流体の圧力が、ポンプヘッド10の吐出通路35内の移送流体の圧力を上回ることで、前記弁体16bは、
図6に示すように図中右側に移動する。これにより、調整用ベローズ13は最伸長状態から収縮動作を開始し、調整用ベローズ13内の流体室41の移送流体がポンプヘッド10の吐出通路35からポンプ外へ排出される。
【0058】
その際、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は、移送用ベローズ14と同様に、調整用ベローズ13が所定の速度以上で収縮していれば、しばらくの間、最大圧力値Pに維持される。そこで、調整用制御部6aは、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pを維持するのに最低限必要な第1速度V1で調整用ベローズ13が収縮するように、電空レギュレータ8に電気信号を出力して調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整する。本実施形態では、前記第1速度V1は、移送用ベローズ14の収縮速度V0よりも若干遅い速度に設定されている。
これにより、調整用ベローズ13が最伸長状態から収縮動作を開始した時点(t4)から、移送用ベローズ14が最収縮状態となる時点(t5)まで、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は最大圧力値Pに保持される。
【0059】
移送用ベローズ14が最収縮状態まで収縮し、その時点(t5)から移送用ベローズ14が最伸長状態まで伸長する時点(t6)までの間、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力は急激に低下する。このため、調整用ベローズ13を第1速度V1で収縮させるだけでは、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力を最大圧力値Pに保持することができなくなる。
【0060】
そこで、調整用制御部6aは、圧力計7の検出値が最大圧力値Pから少し低下した時点で、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力を上昇させるべく、調整用ベローズ13を第1速度V1よりも速い第2速度V2で収縮するように、電空レギュレータ8に電気信号を出力して調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整する。本実施形態では、前記第2速度V2は、移送用ベローズ14の収縮速度V0よりも速い速度に設定されている。
これにより、移送用ベローズ14が最収縮状態から伸長動作を開始した時点(t5)から、移送用ベローズ14が最伸長状態となる時点(t6)まで、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は最大圧力値Pに保持される。
【0061】
移送用ベローズ14が最伸長状態まで伸長し、その時点(t6)から移送用ベローズ14が収縮し始めると、上述のように、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力は再び上昇し、所定時点(t7)で最大圧力値Pとなる。このため、調整用ベローズ13を第2速度V2で収縮し続けると、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pよりも上昇することになる。
【0062】
そこで、調整用制御部6aは、圧力計7の検出値が最大圧力値Pから少し上昇した時点で、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力を低下させるべく、調整用ベローズ13を第2速度V2よりも遅い第3速度V3で収縮するように、電空レギュレータ8に電気信号を出力して調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整する。本実施形態では、前記第3速度V3は、第1速度V1よりも速い速度であって、且つ移送用ベローズ14の収縮速度V0よりも若干速い速度に設定されている。
これにより、移送用ベローズ14が最伸長状態から収縮動作を開始した時点(t6)から、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pとなる時点(t7)まで、調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力は最大圧力値Pに保持される。
調整用制御部6aは、以上の制御を連続して繰り返し行う。
【0063】
以上のように、調整用制御部6aは、移送用ベローズ14による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pから低下しているときに、圧力計7の検出値に基づいて調整用ベローズ13による移送流体の吐出圧力が最大圧力値Pとなるように調整用エアシリンダ部27を駆動制御しているため、
図8に示すように、ポンプ全体の移送流体の吐出圧力を一定値(最大圧力値P)に保持することができる。したがって、本実施形態のベローズポンプ装置によれば、従来のアキュムレータを用いる場合に比べて、装置を大型化することなく吐出側の脈動を効果的に抑制することができる。
【0064】
また、ポンプヘッド10の他側部に設けられたポンプケース11の内部に、移送流体を一時貯留する流体室41が形成されるため、ポンプケースの外部に流体室を形成する場合に比べて、装置全体をコンパクトに構成することができる。
また、隔壁として使用される調整用ベローズ13、及び隔壁駆動部として使用される調整用駆動部(調整用エアシリンダ部)27を、それぞれ移送用ベローズ14及び移送用駆動部(移送用エアシリンダ部)28と同様の構成とすることができるため、装置を容易に製作することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、調整用エアシリンダ部27及び移送用エアシリンダ部28を、それぞれ調整用制御部6a及び移送用制御部6bにより個別に駆動制御しているが、単一の制御部により駆動制御するようにしても良い。
また、調整用制御部6aが制御する吐出圧力の一定値は、最大圧力値Pに限定されるものではなく、任意の圧力値に設定することができる。
【0066】
また、調整用制御部6aは、移送流体の吐出圧力が一定値となるように、調整用ベローズ13の動作速度を調整しているが、調整用ベローズ13の動作及び停止のいずれかを選択して制御するようにしても良い。
また、調整用制御部6aは、移送流体の吐出圧力が一定値となるように、調整用エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給される加圧空気の圧力を調整しているが、吐出側空気室21に供給される加圧空気の供給量を調整するようにしても良い。
【0067】
また、本実施形態のポンプヘッド10には、調整用ベローズ13内の流体室41に移送流体を吸入及び排出するためのチェックバルブ15,16を設けているが、これらのチェックバルブ15,16を設けなくても良い。この場合、調整用ベローズ13内の流体室41には、移送用ベローズ14内の流体室42から排出された移送流体が、吐出通路35を介して吸い込まれることで一時貯留される。
これに対して、本実施形態のように、ポンプヘッド10に上記チェックバルブ15,16を設けている場合は、調整用ベローズ13内の流体室41に一時貯留される移送流体は、ポンプ外の貯留タンク等から吸込通路34を介して吸い込まれるため、調整用ベローズ13が移送流体を吸引するときに、ポンプヘッド10の吐出通路35から吐出される移送流体の流量が減少するのを防止することができる。
【0068】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係るベローズポンプ装置における調整用ポンプケース11の断面図である。
本実施形態のベローズポンプ装置では、第1実施形態の調整用ポンプケース11をベローズポンプ1とは別体に構成したものである。本実施形態の調整用ポンプケース(容器)51は、吐出配管39(
図1参照)における、ポンプヘッド10の吐出ポート38と、圧力計7の接続位置との間に設けられる。
【0069】
調整用ポンプケース51の一側壁51aには、移送流体の吸込通路52と吐出通路53とが形成されている。この吸込通路52及び吐出通路53は、容器51の外周面において開口し、当該外周面に設けられた調整用吸込ポート及び調整用吐出ポート(いずれも図示省略)に接続されている。調整用吸込ポートは、ベローズポンプ1の吐出ポート38に接続され、調整用吐出ポートは移送流体の移送先に接続される。吸込通路52及び吐出通路53は、一側壁51aの内面において開口する吸込口54及び吐出口55を有している。各吸込口54及び各吐出口55は、調整用ベローズ13の内部と連通している。なお、調整用ポンプケース51の他側壁51bは、第1実施形態の調整用ポンプケース11の底壁部11aと同様の機能を有している。
【0070】
以上の構成により、調整用ポンプケース51内の調整用ベローズ13が伸長したときは、吸込通路52から調整用ベローズ13内の流体室41に移送流体が吸い込まれる。そして、調整用ベローズ13が収縮したときは、調整用ベローズ13内の流体室41の移送流体が吐出通路53へ排出される。
【0071】
本実施形態の調整用制御部6aは、圧力計7の検出値に基づいて、調整用ポンプケース51の吐出通路53から吐出される移送流体の圧力変動を抑制するために、当該移送流体の吐出圧力が一定値となるように調整用エアシリンダ部27を駆動制御する。
なお、第2実施形態において説明を省略した点は、第1実施形態と同様である。
【0072】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。また、
図11は、そのベローズポンプ装置におけるベローズポンプ1の断面図である。
本実施形態のベローズポンプ装置は、第1実施形態の変形例であり、ベローズポンプ1の構成が異なる点、及び電空レギュレータ8を備えていない点で第1実施形態と相違する。
【0073】
図11に示すように、本実施形態のベローズポンプ1は、ポンプヘッド10の他側部(図中の左側部)に固定された筒形状の支持部材61と、調整用ポンプケース11内において流体室41の容量を変化させるために伸縮変形自在に設けられた隔壁である円形状のダイヤフラム62とを備えている。
ダイヤフラム62の外周部は、支持部材61の一端部と、調整用ポンプケース11の内周に形成された段差部11bとより挟持された状態で気密状に固定されている。本実施形態では、支持部材61の内周面と、ダイヤフラム62の内面と、ポンプヘッド10の図中の左側面とによって、流体室41が形成されている。
【0074】
ダイヤフラム62の外面の中央部には連結部材63が突設されている。この連結部材63は、調整用ポンプケース11の底壁11aに対して水平方向に摺動可能に支持されている。調整用ポンプケース11の底壁11aの外面には、正逆回転可能な電動モータ(調整用駆動部)64が固定されている。電動モータ64の出力軸(図示省略)は、伝達部材65を介して連結部材63の外端部に接続されている。伝達部材65は、電動モータ64の回転運動を連結部材63の水平方向の直線運動に変換して動力を伝達するものである。
【0075】
以上の構成により、電動モータ64を一方向に回転させると、伝達部材65を介して連結部材63が図中の左方向へ摺動する。これにより、ダイヤフラム62が伸長変形し、流体室41内に移送流体が吸い込まれる。
また、電動モータ64を他方向に回転させると、伝達部材65を介して連結部材63が図中の右方向へ摺動する。これにより、ダイヤフラム62が収縮変形し、流体室41内の移送流体がポンプヘッド10の吐出通路35に排出される。
【0076】
本実施形態の調整用制御部6aは、圧力計7(
図10参照)の検出値に基づいて、吐出ポート38から吐出される移送流体の圧力変動を抑制するために、当該移送流体の吐出圧力が一定値となるように電動モータ64を駆動制御する。その具体的な制御方法は、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0077】
なお、本実施形態のポンプヘッド10には、調整用ポンプケース11内の流体室41に移送流体を吸入及び排出するためのチェックバルブ15,16を設けているが、これらのチェックバルブ15,16を設けなくても良い。この場合、前記流体室41には、移送用ベローズ14内の流体室42から排出された移送流体が吐出通路35を介して吸い込まれることによって一時貯留される。
【0078】
以上、本実施形態のベローズポンプ装置においても、ポンプ全体の移送流体の吐出圧力を一定値に保持することができるため、従来のアキュムレータを用いる場合に比べて、装置を大型化することなく吐出側の脈動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の調整用駆動部は、電動モータ64を使用しているため、第1実施形態のように加圧空気により駆動される調整用エアシリンダ部27を使用する場合に比べて、調整用制御部6aによる調整用駆動部を応答性よく駆動させることができる。その結果、ベローズポンプ装置の吐出側の脈動をさらに効果的に抑制することができる。
なお、第3実施形態において説明を省略した点は、第1実施形態と同様である。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。例えば、上記各実施形態における駆動部27,28は、加圧空気によって駆動させているが、他の流体やモータ等により駆動するようにしても良い。また、上記第1及び第3実施形態における両ポンプケース11,12は、ポンプヘッド10に対して左右反対に配置されていても良い。