(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリニアアレーアンテナ1の電気的構成図である。このリニアアレーアンテナ1は、例えば基地局装置において1.9GHz、2.1GHz、2.5GHzの各周波数帯で使用されることを想定した、並列給電方式の3段コリニアであり、同軸端子2からの無線送信信号は、給電ケーブル4a〜4cを通じてそれぞれのダイポールアンテナユニット5a〜5cに導かれて放射される。ダイポールアンテナユニットの数は、例えば2個以上配設されていればよい。
【0015】
同軸端子2は、基地局装置とケーブル(不図示)で接続され、無線周波信号の受け渡しをする端子であり、例えば50オームのN型コネクタである。なおこのリニアアレーアンテナ1は送受両方に使用するので、インピーダンスは50オームに設計されている。基地局装置が各周波数帯の信号を別個に入出力するものである場合、基地局装置とリニアアレーアンテナ1との間にアンテナ共用器が設けられる。
【0016】
分配器7は、同軸端子2からの信号を3分配するもので、本例では、λ/4線路による多段変成器を用いて、同軸端子2側の50オームを、より低いインピーダンスに変換後、T接続(3分岐)により電力を等分配する。分配器7はプリント基板で構成され、3分配は分岐点に給電ケーブル4a〜4cを直接はんだ付けすることで実現する。なお広帯域のインピーダンス変換には、公知技術を利用してもよい。給電ケーブル4a〜4cの特性インピーダンスは、例えば50オームである。
【0017】
給電ケーブル4a〜4cは、所定のインピーダンスを有する、略等しい長さの同軸ケーブルであり、給電ケーブル4b,4cは、余長処理のため分配器寄りで巻いてある。リニアアレーアンテナ1のメインビームを所望のチルトにするため、ケーブル長は調整される。
【0018】
ダイポールアンテナユニット5a〜5cは、略円柱状の外形を成し、略同軸上に連結しやすい構造を有する、ダイポールアンテナの1つ分のユニットである。
【0019】
図2は、リニアアレーアンテナ1のダイポールアンテナユニット5aの分解図である。
なおダイポールアンテナユニット5a〜5cは全て同一の構成であるので、個々を区別しないときはダイポールアンテナユニット5と呼ぶ。ダイポールアンテナユニット5は、上側素子8と、下側素子9と、支持部材10とからなる。
【0020】
上側素子8と下側素子9とは、例えば電気分極方向といったリニアアレーアンテナ1の長さ方向において略一直線状に配設さているダイポールアンテナを構成する1対の素子として機能している。上側素子8と下側素子9とは、周面が形成されるように筒状に丸められている。詳細には、上側素子8と下側素子9とは、電気分極方向に延びる円筒状となるように形成されている。ただし丸めた両端は接しておらず、この円筒の側面は一部開いている。このような上側素子8と下側素子9とは、例えば、略2/3円筒形状を有している。
【0021】
なお
図5に示すように、上側素子8と下側素子9とは、少なくとも90度以上の中心角度θ1を有していれば本実施形態における「円筒形」に含まれるものとする。つまり、筒状に丸める角度は90°以上あればよい。中心角度θ1は、上側素子8と下側素子9との横断面において、前記した両端の一端と上側素子8及び下側素子9の中心と前記した両端の他端とによって形成される角度を示す。また上側素子8と下側素子9とは、同じ所定の外径を有している。なお開いている側を、ダイポールアンテナユニット5の背面とする。上側素子8と下側素子9とは、給電ケーブル4との半田付け部を除き、同一の形状である。上側素子8と下側素子9とは、金属板によって形成される。
【0022】
支持部材10は、上側素子8と下側素子9とを保持する合成樹脂製の成形部材であり、上側素子8と下側素子9とを装着した状態で、外径が30mmの筒状カバーに挿通できるような外形形状を有する。
【0023】
支持部材10は、ダイポールアンテナユニット5の上面及び底面を成し、上側素子8や下側素子9が係止される側板部101及び102と、側板部101,102を所定間隔で平行に保って連結するチャネル部103と、チャネル部103の中央に設けられて給電ケーブル4と上側素子8等との接続部を収納する箱部104と、箱部104からダイポールアンテナユニット5の前面側に延び、上側素子8等の給電板を覆って保護するフィーダ保持部105と、から構成されている。
【0024】
側板部101及び102は、例えばイチョウの葉に似た形状をしており、円板の板を原型とし、辺縁の1か所にチャネル部103の断面と同じ凹部101a,102aを有している。凹部101a,102aの反対側にあたる円板の半分は、所定の幅L1,L2だけ棒状に残してその両側を取り除いてある。また、残った半円部101c,102cの辺縁は、上側素子8や下側素子9が係止する部分のみ、半径がわずかに小さくなるよう段差部101b,102bが設けられる。これにより、半円部101c,102cの辺縁と棒状部101d,102dの先端とが、上側素子8及び下側素子9の内周面に当接して、位置が固定される。元の円板の中心に当たる位置には、側板部101及び102に垂直に三角柱状の突起部106,107が設けられる。突起部106は、
図2において不図止である。
【0025】
チャネル部103は、U字状の断面を有し、この内側に給電ケーブル4が挿通される。金属を含む給電ケーブル4の引き回しはアンテナの特性に広く影響を与えるが、このチャネル部103は、影響の少ない背面寄り中央に給電ケーブル4を拘束することで、特性のばらつきを抑えている。分極方向の両端には、他の支持部材10と連結するための多角柱(本実施形態では3角柱状)の前記した突起部106,107が設けられている。また、側板部101及び102との接続部には3個の3角形状リブ101eをそれぞれ設けている。
【0026】
箱部104は、チャネル部103の幅及び深さを大きくして直方体に形成したもので、また半田付けの作業性を確保するため側面の一方を取り除いてある。
【0027】
フィーダ保持部105は、上側素子8及び下側素子9の給電板18,19(後述する)が挿通可能な穴部や溝部を有しており、上側素子8や下側素子9の裏面に当接するまで前面側に向かって伸びている。その先端は、舌状に突出し、上側素子8と下側素子9との間のギャップに挟まれる。これによりフィーダ保持部105は、上側素子8及び下側素子9の繊細な給電点付近を正確に支えている。給電板18,19もアンテナ特性へ影響を与えるので、フィーダ保持部105は、給電板18,19がアンテナの分極軸に対して垂直に配設されるように、給電板18,19を保持する。なお保持した給電板18,19がフィーダ保持部105から抜けないよう、返しを設けたり接着剤で固定することが望ましい。
【0028】
次に、
図3ないし
図6を参照して、上側素子8と下側素子9とについて詳述する。
図3は上側素子8及び下側素子9に共通の背面図、
図4は上側素子8及び下側素子9に共通の側面図、
図5は下側素子9の底面図、
図6は上側素子8の展開図である。本例のダイポールアンテナは、略2.0GHzで共振する(或いはVSWRが最小となる)ように設計しており、その周波数での真空中の波長λcを基準にして寸法を表現する。
【0029】
図5等に示されるように、上側素子8及び下側素子9は、例えば、半径が0.06λc、中心角度θ1が220度の円弧上の断面を有する円筒を基本する形状を有する。
【0030】
上側素子8は、信号の放射に主に寄与する筒状本体8aと、この筒状本体8aの前面側中央下部(給電点付近)から背面へ向かう帯状の給電板18とからなり、当該筒状本体8aの上端寄りの中央に、棒状部101dと嵌合する例えば横長の矩形の孔部20が設けられる。給電板18は、長さが例えば0.09λcであり、背面の開口から若干突出する終端部には、
図6に示されるように、給電ケーブル4の中心導体を半田付けするための穴部22が設けられる。給電板18は、筒状本体8aと一体である。
【0031】
下側素子9も同様に、筒状本体9aと、当該筒状本体9aの前面側中央上部から背面へ向かう帯状の給電板19とからなり、当該筒状本体9aの下端寄りの中央に、棒状部102dと嵌合する例えば横長の矩形の孔部21が設けられる。なお下側素子9は、給電板19の終端部に、穴部22に代えて、給電ケーブル4の外側導体を半田付けするためのU字状の切れ込み部23が設けられる点でのみ、上側素子8と異なる。給電板19は、筒状本体9aと一体である。
【0032】
筒状本体8a,9aは、周面が形成されるように筒状に丸められている。詳細には、筒状本体8a,9aは、電気分極方向に延びる円筒状となるように形成されている。ただし丸めた両端は接しておらず、この円筒の側面は一部開いている。このような筒状本体8a,9aは、例えば、略2/3円筒形状を有している。また筒状本体8a,9aは、円筒以外の多角形状としてもよい。
【0033】
図6に示されるように、上側素子8及び下側素子9の筒状本体8a,9aは、例えば分極軸方向の長さが0.2λc、横幅が0.227λcの矩形となるように、展開されている。また相手側の素子と対向する1辺の中央部から給電板18,19が垂直に突き出している。この形状は1枚の金属板を打ち抜いて製作できる。この1辺は、一直線ではなく左右それぞれ2回の面取りによるテーパ形状が成形されている。つまり、給電板18の両側で約3mm真横に広がった後、1回目の例えば10度のテーパが始まり、側端に近づいた付近で2回目の例えば45度のテーパが始まる。
図4を参照すると、2回目のテーパは中心角が約180度に開いたところで開始すると言える。後述するようにこのテーパは、ダイポールアンテナの広帯域化に寄与する。
【0034】
このように、上側素子8と下側素子9との一方は、リニアアレーアンテナ1の長さ方向において、この一方の素子に隣り合うように配設されている上側素子8と下側素子9との他方に対向して配設され、第1のテーパ部201と第2のテーパ部203とを有するテーパ部200を有している。テーパ部200は、互いに対向しあう上側素子8及び下側素子9の端面に配設されている。
【0035】
第1のテーパ部201は、上側素子8及び下側素子9が並んでいる方向に直交している方向に沿って配設されている直交平面部205に隣り合っている。直交平面部205は、幅方向において給電板18,19の両側に配設されている。第1のテーパ部201は、直交平面部205と連接している。直交平面部205には、切れ込み部18a,19aが配設されている。また第2のテーパ部203は、上側素子8と下側素子9とが並んでいる方向に直交する方向である素子の幅方向において、第1のテーパ部201の外側に配設されている。
【0036】
第1のテーパ部201は、第2のテーパ部203とも連接している。第1のテーパ部201は直交平面部205に対して傾斜しており、第2のテーパ部203は第1のテーパ部201に対してさらに傾斜している。第1のテーパ部201は、上側素子8と下側素子9とが並んでいる方向において、配設されている素子とは逆側に傾斜しており、第2のテーパ部203は第1のテーパ部201と同じ側に傾斜している。直交平面部205に対する第1のテーパ部201の傾斜角度θ2は、直交平面部205と平行な平面に対する第2のテーパ部203の傾斜角度θ3よりも小さい。
【0037】
上側素子8に配設されている第1のテーパ部201と下側素子9に配設されている第1のテーパ部201とは、互いに対向して配設されることで両者の隙間を広げ、同様に上側素子8に配設されている第2のテーパ部203は下側素子9に配設されている第2のテーパ部203と対向して配設されている。
【0038】
なおテーパ部200が有するテーパ部の数は、2つに限定される必要はなく、少なくとも1つのテーパ部が配設されていればよい。
【0039】
また、給電板18,19の付け根には、給電板18の横幅のまま矩形の内側に向かう約1.5mmの切れ込み部18a,19aを設ける。切れ込み部18a,19aは、給電板18,19の両側に配設されており、給電板18,19の長さ方向に沿って配設されている。給電板18及び19は、この切れ込み部18a,19aの間で略直角に曲げられて形成されるので、
図4に示されるように、相手側の素子との対向間隔は、筒状本体の最接近部のそれよりも広くなる。
【0040】
次に、
図7ないし
図9を参照して、2段階テーパ形状の作用を説明する。
図7は、テーパ部200が配設されず、テーパ形状を設けない場合のダイポールアンテナ単体のVSWR特性を示す図である。
図7においてVSWR<2となるのは1.63GHz〜2.46GHzである。
【0041】
図8は、第1のテーパ部201のみが配設され、1段のテーパ形状を設けた場合のダイポールアンテナ単体のVSWR特性を示す図である。
図8においてVSWR<2となるのは1.57GHz〜2.85GHzである。
【0042】
図9は、第1のテーパ部201と第2のテーパ部203が配設され、2段のテーパ形状を有する上側素子8及び下側素子9を用いたダイポールアンテナ単体のVSWR特性を示す図である。
図9においてVSWR<2となるのは1.57GHz〜2.96GHzである。
図8との比較により、2段目のテーパには、使用可能帯域を上側に広げる作用が推定される。
なお、
図7ないし
図9のVSWR特性は、シミュレーションにより求めた。
【0043】
図10は、リニアアレーアンテナ1の正面図である。なおリニアアレーアンテナ1は、分配器7の基板の接地面側を正面とする。
図10に示されるように、ダイポールアンテナユニット5a〜5cは、連結部材である連結棒11a,11bによって一直線に連結され、隣接するダイポールアンテナユニット5の素子と所定の間隔を保つ。本実施形態のダイポールアンテナユニット5それぞれの中心の間の距離(ダイポール素子間隔)は0.6λcとなる。連結棒11a,11bは、突起部106,107の形状に対応する内側形状を有する筒状に成形された合成樹脂製の部材であり、突起部106,107に挿し込まれる。
【0044】
このように、例えば、連結棒11aがダイポールアンテナユニット5aに配設されている突起部107と突起部107に対向するようにダイポールアンテナユニット5bに配設されている突起部106とに連結することで、ダイポールアンテナユニット5aはダイポールアンテナユニット5bと連結することとなる。ダイポールアンテナユニット5bとダイポールアンテナユニット5cとの連結についても、略同様である。ダイポールアンテナユニット5cと分配器7は、給電ケーブル4a〜4cによって連結することとなる。
なお、挿し込んだ連結棒11が突起部106,107から容易に抜けないよう、爪などの係止手段が突起部106,107或いは連結棒11に設けられることが望ましい。
【0045】
連結されたダイポールアンテナユニット5a〜5cの向きは、分極軸を中心に任意の角度例えば120度間隔で回転されている。
図10においては、上段のダイポールアンテナユニット5aの正面は分極軸を中心に右に任意の角度例えば150度回転され、中段のダイポールアンテナユニット5bの正面は分極軸を中心に右に任意の角度例えば30度回転され、下段のダイポールアンテナユニット5cの正面は分極軸を中心に左に任意の角度例えば90度回転された位置に固定される。前述したように突起部106,107は3回回転対称な形状のため、120度単位で容易に回転できる。つまり、必要とする方向を保持する形状であれば特に形状は問わない。
【0046】
このように、一方のダイポールアンテナユニットの正面はリニアアレーアンテナ1の長手軸の軸回り方向において他方のダイポールアンテナユニットの正面に対して任意の角度例えば120度ずれて配設されるように、一方のダイポールアンテナユニットはリニアアレーアンテナ1の長手軸の軸回り方向において他方のダイポールアンテナユニットに対して任意の角度例えば120度ずれて配設されている。
【0047】
ダイポールアンテナユニット5a〜5cに給電する給電ケーブル4a〜4cは、支持部材10のチャネル部103を通しながら、上記回転に従いらせん状に連結棒11に巻回している。給電ケーブル4a〜4cの絶縁外皮は、分配器から出る直前の箇所で剥かれ、露出した外側導体(編組線)を3本まとめて、分配器の接地面(ベタグラウンド)に半田付けされる。またダイポールアンテナユニット5cの下側素子9の下端付近及び上側素子8の上端付近においても外皮が向かれ、外側導体が互いに半田付けで接続される。半田付けは、例えばVSWRを1.5以下にするために実施している。
組立の際は、下段から上段に向かって給電ケーブル4c,4b,4aの順で取り付ける。従って、給電ケーブル4aが、リニアアレーアンテナ1の中心軸から一番外よりに配置される。
【0048】
次に
図11ないし14を参照して、本例のリニアアレーアンテナ1で達成された特性を説明する。
図11は、実測により得たリニアアレーアンテナ1のVSWR特性図である。VSWR<2となる使用可能帯域は1.505GHz〜3.05GHz超で、比帯域は68%となっており、3段リニアアレーにしても、広帯域性が維持されていることが分かる。
【0049】
図12〜15は、実測により得たリニアアレーアンテナ1の指向性パターン図であり、それぞれの図で周波数が異なる。最大方向利得及び水平面指向性偏差は、周波数が低いほど悪くなる傾向にあるが、それぞれ4.5dBi以上及び1.9dB以下を維持している。
【0050】
上記実施形態で示したように、リニアアレーアンテナ1の素子としてダイポールアンテナユニット5を利用しており、ダイポールアンテナユニット5において直径が0.15λ程度の円筒状に丸まるように、上側素子8と下側素子9とを3次元的に折り曲げている。さらにテーパ部200が配設されている。これにより本実施形態では、所望の性能を維持しつつ、使用可能な周波数帯域を広くすることができる。これは素子としてバイコニカルアンテナを用いた場合より、小径で広帯域なものであり、例えば携帯電話用無線といった無線基地局の複数の周波数帯域で動作可能な比帯域を有することとなる。
【0051】
また本実施形態では、第2のテーパ部203が配設されることで、使用可能な周波数帯域をさらに広くすることができる。またアンテナカバーに収納した状態でダイポールアンテナユニット5の外径を略22mm以下としたことで、従来のアンテナと互換性を持たせ、交換が容易になる。円筒状に丸める際の中心角度θ1は、上記外径以下という条件において220度前後が最適であったが、少なくとも半円(180度)以上あれば、使用可能な周波数帯域を確実に広くすることができる。
【0052】
また本実施形態では、連結棒11a,11bによってダイポールアンテナユニット5a〜5cを容易に連結できる。また一方のダイポールアンテナユニットの正面はリニアアレーアンテナ1の長手軸の軸回り方向において他方のダイポールアンテナユニットの正面に対して120度ずれて配設されている。360°/素子段数として設定することによって水平面無指向性の性能向上ができる。また給電ケーブル4は、連結棒11a,11bをらせん状に巻回しているため、連結強度を向上でき、リニアアレーアンテナ1をコンパクトにできる。
【0053】
また、給電ケーブル4や給電板18,19を前記したような位置関係に配設することで、放射素子以外の金属類の影響を軽減し、良好なアンテナ特性といった帯域効果を給電板18,19に容易に付加できる。
【0054】
また、ダイポールアンテナユニット5や連結棒11a,11bなどの部材をスタック間で共通化したことで、部品種類を減らすことができ、挿し込み構造を用いたことで、主要なパーツを挿し込むだけで組み立てることができる。
【0055】
また本実施形態では、テーパ部200や給電板18,19を含む上側素子8と下側素子9とを1枚の金属板から一体に容易に作製できる。
【0056】
また本実施形態では、ダイポールアンテナユニット5の長さ方向に直交する方向において、給電板18,19が筒状本体8aの内周面から中心軸を挟んで反対側に突出しているため、上側素子8と下側素子9とを容易に支持部材10に固定できる。また給電板18,19が上記直交する方向(半径方向)に突出した状態でフィーダ保持部105によって保護されているため、給電板18,19が折れ曲がらず、給電ケーブル4a〜4cへの影響を極力取り除くことができる。
【0057】
また本実施形態では、給電板18,19をフィーダ保持部105に挿し込む、棒状部101d,102dを孔部20,21に挿し込む、給電ケーブル4a〜4cをチャネル部103に載置する、連結棒11a,11bを突起部106,107に挿し込む、といった簡単な作業で容易に組み立てることができる。これにより、本実施形態では、保持や取り付けのための別部品を不要にできる。なお、突起部106,107に替えて、連結棒11を差し込める穴部を設けてもよい。
【0058】
なお実施形態では、ダイポールアンテナユニット5の数である段数を3としたがこれに限るものではなく、例えば6段や9段とすることは容易である。また一般にn段とする場合、ダイポールアンテナユニットを360/n)度間隔で回転させて配置すればよい。
また素子の直径は、求められる比帯域や、アンテナカバーの径に応じて変更可能である。
ダイポールアンテナユニット5は、上側素子8と下側素子9が対称なものに限らず、下側素子9の径をより大きくしたり、テーパの形状を異ならせたりした不平衡ダイポール素子を用いると、比帯域を更に大きくできる可能性がある。
ダイポールアンテナユニット5の中心軸は一直線のものに限らず、指向性を改善する目的で意図的に偏芯させてもよい。
【0059】
次に
図15Aと
図15Bとを参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。前記した実施形態とは異なる部分のみ説明する。
【0060】
本実施形態では、上側素子8の外径は下側素子9の外径と同一であり、上側素子8の内径は下側素子9の内径と同一である。しかしながら本変形例では、上側素子8と下側素子9との一方の内径は、一方の端部の内周面が上側素子8及び下側素子9が並んでいる方向において一方の端部に隣り合う上側素子8と下側素子9との他方の端部の外周面をオーバーラップするように、上側素子8と下側素子9との他方の外径よりも大きくなっている。つまり、一方の径は、他方の径よりも大きくなっている。言い換えると、一方は、他方の端部に隣り合う一方の端部に配設され、他方の端部の外周面をオーバーラップするオーバーラップ部301を有する。
図15Bに示すように、下側素子9の径方向において、オーバーラップ部301と他方の端部との間には、隙間部303aが形成される。
【0061】
本変形例では、一例として、例えば下側素子9の端部の内周面が上側素子8の端部の外周面をオーバーラップするように、下側素子9の内径は、上側素子8の外径よりも大きくなっていることを用いて説明する。上側素子8と下側素子9とは、ねじ部材25によって支持部材10に固定される。
【0062】
オーバーラップ部301の長さは、所望に設定される。オーバーラップ部301は、上側素子8の端部を全周に渡ってオーバーラップする必要はない。オーバーラップ部301は、例えば、支持部材10の支持の仕方等に応じて、上側素子8の端部の少なくとも一部をオーバーラップすればよい。このため、下側素子9の周方向において、オーバーラップ部301は複数配設されており、オーバーラップ部301同士の間には隙間部303bが形成されてもよい。オーバーラップ部301は、例えば、筒状本体9aを作成する1枚の金属板から一体に容易に作製される。オーバーラップ部301は、筒状本体9aの端部の少なくとも一部が筒状本体8aの端部をオーバーラップするために筒状本体8aに向かって延びることによって、形成されている。
【0063】
オーバーラップ部301は、下側素子9の周方向である上側素子8及び下側素子9が並んでいる方向に直交している方向において、給電板19の根本部分に隣り合っている。つまりオーバーラップ部301は、幅方向において切れ込み部19aの両側に配設されている。図示は省略するが、オーバーラップ部301に、テーパ部200が形成されていてもよい。
【0064】
本変形例では、オーバーラップ部301によって、静電容量を容易に調整できる。このため、上側素子8と下側素子9との間の間隔を狭める必要がなく、ダイポールアンテナユニット5を容易に加工及び組立でき、加工精度及び組立精度を向上させる手間を省くことができる。
【0065】
なお上側素子8の外径は下側素子9の外径と同一であり、上側素子8の内径は下側素子9の内径と同一であり、オーバーラップ部301のみが他方の外径よりも大きくなるように、オーバーラップ部301が外側に折れ曲がって形成されていてもよい。
【0066】
次に
図16Aと
図16Bとを参照して、本実施形態の第2の変形例について説明する。前記した第1の変形例とは異なる部分のみ説明する。
【0067】
下側素子9は、例えば、T字形状の隙間部305を有している。隙間部305は、下側素子9の厚み方向において、下側素子9を貫通している。隙間部305の一方である第1の隙間部305aは、上側素子8と近接する側(上端)の端部に沿ってその内側に、下側素子9の周方向に沿って配設される。第1の隙間部305aは、オーバーラップ部301よりも筒状本体9aの下端側に配設されている。隙間部305の残りの一方である第2の隙間部305bは、上側素子8及び下側素子9が並んでいる方向に沿って、下側素子9の周方向の中央に配設され、その一端は第1の隙間部305aの中央部と連接し、他端は上側素子8から遠い側(下端)の端まで達している。なお、孔部21は省略され、上側素子8及び下側素子9はねじ部材25によって支持部材10に固定される。
【0068】
この第1の隙間部305により、筒状本体8aは、実質的に2つのダイポールアンテナに分割される。つまり給電信号は、給電板19の根本から円周上に両方向に分岐し、第1の隙間部305aの端部から、下方向(対をなす上側素子8と反対向き)に電流が略90度曲がり、そこから下側素子9内部に広がる。このコーナー部(図中のα点)が、形成された2つのダイポールに直接的に給電している給電点であり、第1の隙間部305aにより形成された、給電板19からα点までの帯状の部分(オーバーラップ部301)が給電線となる。
【0069】
前記した構成は、上側素子8についても略同様である。なお、α点を一致させるために、上側素子8の第1の隙間部305aは、下側素子9のそれと長さ(或いは中心軸からの開き角)を略同一にする。また上側素子8の給電線は、その幅が下側素子9のそれより細く形成されている。これにより上側素子8と下側素子9との給電線は非平衡線路(幅広の下側素子9側をグランドに見立てたストリップライン)を形成する。上側素子8を覆う下側素子9の方を幅広にすることで、無効な電流による損失を抑えやすいと考えられるが、各給電線の幅は試行により最適なものを選択し得る。本変形例では、上側素子8の第1の隙間部305bの幅は、下側素子9のそれより広くしてある。
【0070】
図16Bに示すように、オーバーラップ部301は、上側素子8の第1の隙間部305aがオーバーラップ部301によって覆われずに第1の隙間部305aが露出し、下側素子9の第1の隙間部305aが上側素子8の端部と重ならないように、オーバーラップする。
【0071】
本変形例では、水平方向に広い広帯域ダイポールアンテナを2つ配置しているため、水平面無指向性を高めることができる。なお隙間部305の形状は、特に限定されない。
【0072】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。