(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
前記分散液を、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、キャスティング、またはこれらの任意の組み合わせにより前記親水性表面に塗布する、請求項10に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
種々の炭素源に由来する炭素のアセンブリは、多数の現在および将来の商業的、工業的および先端技術的な用途を有する。例えば、通常はルースパウダー、粒子または不規則な凝集体の形態である活性炭または活性炭素は、濾過および触媒担体において種々の用途を有する。また、炭素材料は、最近、イオン交換媒体またはキャパシタ電極材料としてエネルギー貯蔵用途にも適用されている。種々の形態の黒鉛は、例えば、ブレーキライニングにおける耐火材料、およびアーク炉の電極として、多数の用途を有する。インターカレートグラファイトおよび膨張黒鉛は、難燃剤および高温用途として使用するために研究されてきた。これらの凝集炭素アセンブリは、耐化学侵食性、耐高温性、ならびに活性炭素の場合には高表面積、ならびに黒鉛の場合には導電率および潤滑性などの多くの望ましい特性を有する。しかしながら、これらの材料は、典型的には、良好な機械的強度および集結度を有する所望の形状および大きさのアセンブリに形成するためにバインダーまたはマトリックス材料を要する。
【0003】
さらに最近では、種々の形態のカーボンナノチューブ(CNT)のアセンブリが多くの関心を集めており、多様な用途についての研究および開発がなされている。このようなアセンブリは、「バッキーペーパー」または「バッキーディスク」として文献で言及されてきた。例えば、Dharapらは、「Nanotube film based on single-wall carbon nanotubes for strain sensing」、Nanotechnology 15(2004)、379〜382頁(非特許文献1)で、機械的歪みセンサとしてのランダムに配向したCNTの等方性フィルムの使用を研究している。Caoらは、「Random networks and aligned arrays of single-walled carbon nanotubes for electric device applications」、Nano Research 1,4(2008)、259〜272頁(非特許文献2)で、薄膜トランジスタとしてのCNTのランダムネットワークまたは整列配列の使用を考察している。Maらは、「Methods of making carbide and oxycarbide containing catalysts」、米国特許第7,576,027B2号明細書(特許文献1)で、ランダムに絡み合ったCNT凝集体から作られた流体相の化学反応のための触媒担体を開示している。そして、Liuらは、「Electrochemical capacitor with carbon nanotubes」、米国特許出願公開第2009/0116171A1号明細書(特許文献2)で、自立型CNTフィルムから作られた電極を有する電解コンデンサを開示している。
【0004】
Smalleyらは、「Method for producing self-assembled objects comprising single-wall carbon nanotubes and compositions thereof」、米国特許第7,048,999B2号明細書(特許文献3)に、CNTのエンドキャップの除去および誘導体化の複雑なプロセスにより形成されたCNTアセンブリを開示している。この文献中に開示されているバッキーペーパーは、基板上に支持されている緩く組織化したCNTフェルトまたはマットである。分子配列および自己組織化した単層などのこの文献中に開示されている他の構造は、樹脂、金属、セラミックまたはサーメットなどの基板またはマトリックス材料を要すると記載されている。さらに、この文献中に開示されている自己組織化した構造は、CNTを結合するための機能性薬剤を含み、この薬剤は構造の電気的特性に有害な影響を及ぼし得る。
【0005】
Tohjiらは、「Carbon nanotubes aggregate, method for forming same, and biocompatible material」、米国特許出願公開第2007/0209093A1号明細書(特許文献4)で、フッ素ガスへの暴露、引き続いて高温高圧での焼結を含むCNT凝集体を形成する方法を開示している。凝集体は脆いと特徴づけられている。
【0006】
Liuらは米国特許出願公開第2009/0116171A1号明細書(特許文献2)で、またHataらは「Aligned carbon nanotube bulk aggregates, process for production of the same and uses thereof」、米国特許出願公開第2009/0272935A1号明細書(特許文献5)で、CVDプロセスにより基板上に成長させたCNTフォレストの使用を必要とする、CNTアセンブリを調製する方法を開示している。これらの方法は、溶媒洗浄、加圧および/または乾燥という一連の工程を含んでおり、出発CNTフォレストの規模に制限される。さらに、これらのアセンブリは、異方性および主に一方向性の特性を有するアセンブリを与えるCNTの優勢な配向または配列を特徴とする。
【0007】
Whitbyらは、「Geometric control and tuneable pore size distribution of buckypaper and bucky discs」、Carbon 46(2008)、949〜956頁(非特許文献3)で、高圧も必要とするCNTアセンブリを形成するためのフリット圧縮方法を開示している。また、CNTはアセンブリ内に均一に分布しておらず、アセンブリは大きなマクロ孔および非常に大きい空隙率(>80%)を有する。
【0008】
単層CNTの硫酸超酸中溶液を形成する方法は、Davisらの「Phase Behavior and Rheology of SWNTs in Superacids」、Macromolecules 37(2004)、154〜160頁(非特許文献4)により開示されている。エーテル中での急冷および濾過によりCNTロープの絡み合ったマットを製造する方法も開示されている。
【0009】
R.Signorelliらは、The 19th International Seminar on Double Layer Capacitors and Hybrid Energy Storage Devices(2009年12月7〜9日、Deerfield Beach、フロリダ、米国)で発表された「High Energy and Power Density Nanotube Ultracapacitor Design, Modeling, Testing and Predicted Performance」(非特許文献5)および「Electrical Double-Layer Capacitors Using Carbon Nanotube Electrodes Structures」、Proceedings of the IEEE 97,11(2009)、1837〜1847頁(非特許文献6)で、バインダーを含まない電極として使用することを意図した垂直に整列した単層CNT(SWCNT)および多層CNT(MWCNT)「フォレスト」型アセンブリを開示している。しかしながら、これらのアセンブリは、0.45g/cm
3以下(SWCNTの場合は0.1g/cm
3)の低い嵩密度を示し、十分なキャパシタ性能のためには非実用的に高い容積の材料を要する。製造目的のためのこれらのCNTフォレストのスケーラビリティは疑わしく、これらは集電装置として使用するための機械的特性が劣っている。
【0010】
キャパシタ電極として使用することを意図した二層CNT(DWCNT)から製造された同様のフォレスト型アセンブリが、ICAC2010、The 2010 International Conference on Advanced Capacitors(2010年5月31日〜6月2日、京都、日本)で発表されたT.Asariの「Electric Double-Layer Capacitor Using Carbon Nanotubes Grown Directly on Aluminum」(非特許文献7)により開示されている。このアセンブリは、Signorelliのものと同様の欠点;すなわち、低い密度、非スケーラビリティおよび劣った機械的特性を有する。
【0011】
A.Izadi-Najafabadiらは、Advanced Materials,n/a.doi:10.1002/adma.200904349の「Extracting the Full Potential of Single-Walled Carbon Nanotubes as Durable Supercapacitor Electrodes Operable at 4V with High Power and Energy Density」(2010年6月18日にオンラインで発表)(非特許文献8)で、バインダーを含まないアセンブリに加工された高純度SWCNTフォレストに基づくキャパシタ電極を記載している。このアセンブリは、実験室条件下で試験すると、電極としての魅力的な電子性能特性を示す。しかしながら、液体電解質に含浸させると過度に膨潤するために、このアセンブリを使用して密閉キャパシタ装置を製造することはできなかった。このことはアセンブリの機械的強度および集結度が低かったことを示している。
【0012】
CNT技術を、「スーパーキャパシタ」または「ウルトラキャパシタ」とも呼ばれる電気化学二重層キャパシタ(EDLC)に適用することに関心が集まっている。このタイプのキャパシタは、標準的なキャパシタの出力密度よりも多少低いが、標準的なキャパシタとほぼ近い出力密度を有するが、標準的電池に近い、はるかに高いエネルギー密度を有する。EDLCは、大衆消費電子製品における多くの用途を有し、ハイブリッドガス−電気自動車および全電気自動車に使用するのに魅力的である。活性炭素は、EDLCに電極として現在使用されている最も一般的な材料である。しかしながら、その性能は、技術的限界に達してきており、より高いエネルギーおよび出力密度が可能な材料が、特に自動車用途で望まれている。
【0013】
リチウムイオンは、カーボンナノチューブの用途にとって特に関心の高い1つの電池型である。最近のLiイオン電池は、典型的には、炭素系負極、LiCoO
2、LiFePO
4、LiNiCoAlO
2などの酸化物を含む正極と、有機溶媒中にリチウム塩を含む電解液とを含む。Liイオン電池は、大衆消費電子製品に広く使用されており、ハイブリッドガス−電気自動車および全電気自動車に使用するのに魅力的である。しかしながら、広範な自動車用途のために電池性能の改善が必要とされている。具体的には、増加したエネルギー密度、出力密度、より軽い重量およびより優れた信頼性が望ましい。電池用途のためのより低い電気抵抗、より効率的なイオン輸送能力、および十分な機械的強度を有するより薄いかつ/または軽い電極材料が特に魅力的である。
【0014】
標準的燃料電池では、水素を酸素と結合させて電流および副産物としての水を発生させる。現在高い関心を集めている1つの燃料電池型は、プロトン交換膜または高分子電解質膜(PEM)燃料電池である。この設計は、膜電極接合体(MEA)を含み、これが今度は中心プロトン交換膜(PEM)およびPEMの両側に電極を含む。各電極は、触媒層およびガス拡散層(GDL)を含む。触媒層は、典型的には加圧カーボンブラックなどの多孔質担体材料上の金属微粒子または粉末(負極には白金、正極には通常ニッケル)で構成されている。触媒層と反対面上で金属集電装置と接触するGDL層は、通常はカーボン紙または炭素布で構成されている。Liイオン電池の場合のように、特に自動車における広範な用途のために、PEM燃料電池性能の改善も必要とされている。優れた導電率を有し、より効率的な電気化学反応を提供する、より強力かつより軽量の材料が、触媒担体および/またはGDLのいずれかとして、電極材料として使用するために望ましい。
【0015】
キャパシタ、燃料電池および電池を含む種々のエネルギー貯蔵装置では、金属板を含む集電装置を、典型的には電極の露出(外部に面している)面に付着して、装置により生成された電流を回収し、これを装置が電力を供給している機械または機器に向けて伝導する。アルミニウムおよび銅が、集電装置として使用される典型的な金属である。エネルギー貯蔵装置の重量および複雑さを減らすことが望ましく、1つのこのような手法は、単一材料で電極の機能と集電装置の機能を組み合わせることである。これは、材料の導電率と機械的強度および集結度の両方が伝統的な集電装置のものと十分近くなり、結果として装置の性能が低下しない場合にのみ達成され得る。実際、複合電極/集電装置を使用することによる装置性能の強化が理想的であるであろう。
【0016】
国際公開第2010/102250号(特許文献6)は、炭素を液体ハロゲン(例えば、臭素)に分散させ、引き続いて液体を実質的に除去することにより、凝集炭素アセンブリを調製することを開示している。しかしながら、臭素は極めて有毒性であり、高価である。臭素はまた大半の金属に極めて腐食性であり、常金属容器または金属表面で炭素のハロゲン系液体中分散液と接触し得るものはないので、その分散媒体としての有用性を有意に低下させる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一態様は、凝集炭素アセンブリを調製する方法に関する。この方法は、(a)粉末、粒子、フレークまたは疎凝集体の形態の炭素出発材料を得るステップと、(b)有機溶媒に炭素出発材料を所定の比で分散させて分散液を調製するステップと、(c)制御された方法で有機溶媒を実質的に除去して、それによって凝集炭素アセンブリを形成するステップとを含む。
【0025】
凝集アセンブリは、本明細書において、炭素が均一に分布した自己組織化モノリシック構造として定義され、凝集アセンブリは自立して明確な形状および大きさを有する。凝集アセンブリはさらに、任意の他の材料または表面に付着せず、任意の他の材料による機械的支持を必要とせず、その強度および集結度を保持するためにバインダー材料の存在も必要としない十分な機械的強度および集結度を有するものとしてさらに定義される。凝集アセンブリはまた、その構造、形状および大きさを保持しながら、方々に移動させることもできる。凝集アセンブリは、構成される炭素の個々の単位の特定の配向または整列を示さず、一方向性または配向した機械的または電気的挙動を示さない。
【0026】
凝集アセンブリは、上記のような初期形態の炭素が液体媒体に完全に分散された後には、凝集アセンブリを形成するために追加の化学修飾、物理的変化または機械的力を炭素に印加することなく、自己組織化する。
【0027】
炭素出発材料は、カーボンナノチューブ(CNT、例えば、SWCNT、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT))、グラフェン、黒鉛、膨張黒鉛、剥離黒鉛、無定形炭素、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される炭素材料を含む。一実施形態では、炭素出発材料はSWCNTを含む。
【0028】
一実施形態では、炭素出発材料は、粉末、粒子、フレーク、疎凝集体、または有機溶媒に分散することができる任意の適切な形態の形態で得られる。別の実施形態では、炭素出発材料を、有機溶媒に分散する前に、適切な形態の炭素出発材料を得るための1種または複数の標準的技術で、粉砕、微粉砕または機械的変化させてもよい。例えば、CNTは製品名「Elicarb SW」でThomas Swan and Co.,Ltd(Consett、County Durham、英国)から市販されているSWCNTなどの、商業的供給源から購入してもよい。この材料は、ウェットケーク(水性混合物中の疎凝集体)の形態でまたは乾燥粒子として供給される。典型的には最大寸法が5mmより小さい粒子を、凝集炭素アセンブリの調製に未処理で使用してもよい。任意選択により、この材料をより小さい粒子または粉末に粉砕し、次いで凝集炭素アセンブリの調製に使用してもよい。ウェットケーク材料を任意の標準的方法により乾燥し、次いで粒子または疎凝集体に機械的に壊し、次いで凝集炭素アセンブリの調製に使用してもよい。任意選択により、乾燥したウェットケーク材料をより小さい粒子または粉末にさらに粉砕し、次いで凝集炭素アセンブリの調製に使用してもよい。一般的に言うと、本発明の方法に使用する炭素の粉末、粒子、フレークまたは疎凝集体は、最大寸法が1cmより小さく、より好ましくは最大寸法が3mmより小さく、さらにより好ましくは最大寸法が1mmより小さい。
【0029】
本方法に使用する有機溶媒は、実質的に純粋な有機化合物または2種以上の有機化合物の混合物であり得る。適切な有機溶媒としては、それだけに限らないが、トルエン、o−ジクロロベンゼン(ODCB)、イソプロピルアルコール(IPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、置換もしくは非置換ベンゼン、クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、クロロホルム、一級アミン、二級アミン、三級アミン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0030】
好ましくは、有機溶媒は、トルエン、ODCB、IPA、DMF、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、有機溶媒は、トルエン、ODCB、またはこれらの組み合わせである。
【0031】
ステップ(b)では、有機溶媒に炭素出発材料を所定の比で分散させる。炭素出発材料と有機溶媒との所定の比とは、有機溶媒中に炭素を分散させて分散液とし、有機溶媒の除去後に凝集アセンブリを形成させる比として定義される。特定のタイプの炭素出発材料に対して、実験的に決定されている所定の比の範囲が存在する。そのタイプの炭素出発材料は、この所定の比の範囲内で有機溶媒に分散し、制御された方法で有機溶媒を除去すると凝集アセンブリを形成することができる。
【0032】
炭素出発材料と有機溶媒との量の比が、その特定のタイプの炭素出発材料の所定の比の範囲から外れている場合、凝集炭素アセンブリは形成しない。例えば、炭素出発材料と有機溶媒との比が高すぎる場合、炭素出発材料が有機溶媒に完全に分散することができず、粉末、粒子、フレークまたは疎凝集体として残り、これらが有機溶媒に浮遊または懸濁しているように見えるか、あるいはこれらが容器内の有機溶媒の底に沈降し得る。炭素出発材料と有機溶媒との比が低すぎる場合、炭素出発材料は完全に分散することができる。その後、炭素出発材料は、有機溶媒の除去中にアセンブリを形成することができるが、工程の最後に粉砕される可能性がある。あるいは、分散した炭素は粒子またはフレークに組織化することができるが、モノリシック凝集アセンブリに組織化することはできない。あるいは、分散した炭素は、有機溶媒を除去すると、単に容器内に粉末、粒子、フレークまたは疎凝集体として残る可能性もある。
【0033】
一実施形態では、炭素出発材料と有機溶媒の所定の比は、有機溶媒1g当たり約0.015〜約200mgの間、有機溶媒1g当たり約0.01〜約50mgの間、有機溶媒1g当たり約0.05〜約50mgの間、有機溶媒1g当たり約0.1〜約20mgの間、または有機溶媒1g当たり約0.1〜約10mgの間であり得る。本明細書で使用する「約」は、列挙した値の±10%を指す。
【0034】
一実施形態では、o−ジクロロベンゼンを含む有機溶媒に、SWCNTを含む炭素出発材料を、o−ジクロロベンゼン1g当たり炭素出発材料約0.1〜約20mgの間の所定の比で分散させる。
【0035】
別の実施形態では、トルエンを含む有機溶媒に、SWCNTを含む炭素出発材料を、トルエン1g当たり炭素出発材料約0.1〜約20mgの間の所定の比で分散させる。
【0036】
本明細書で使用する、分散させることは、安定な炭素の有機溶媒中懸濁液を形成することである。安定な懸濁液は、機械的攪拌を加えない場合に、目に見える粉末、粒子、フレークもしくは疎凝集体が有機溶媒から沈殿せず、混合物の底に沈降もしない。一実施形態では、炭素を有機溶媒に分散させるために、最初に炭素を容器内の有機溶媒と混ぜ合わせて混合物を形成し、次いで混合物を、1種または複数の標準的方法、例えば、それだけに限らないが、機械的攪拌および/または超音波処理および/または顕微溶液化により機械的に攪拌する。
【0037】
ステップ(b)における炭素出発材料の有機溶媒への分散は、有機溶媒が液体形態である適切な圧力下での適切な温度、すなわち、適切な圧力下での有機溶媒の融点および沸点で行うことができる。一実施形態では、炭素出発材料を、0℃〜100℃の間、周囲室温〜約45℃の間または10℃〜30℃の間の温度で有機溶媒に分散させる。周囲室温(約20℃)および圧力が典型的に適切な条件である。
【0038】
炭素出発材料の有機溶媒への分散は、1種または複数の型の機械的攪拌の存在下で行うことができる。分散ステップは、2段階以上の機械的攪拌を含んでもよい。各段階で、1種または複数の型の機械的攪拌を行ってもよい。異なる段階で行われる同じ型の機械的攪拌は、同じまたは異なるパラメータを有し得る。一実施形態では、分散ステップは、3段階の機械的攪拌を含む。例えば、第1段階の機械的攪拌は超音波処理の存在下10000rpmで30分間の機械的混合を含み、第2段階の機械的攪拌は超音波処理の存在下5000rpmで10分間の機械的混合を含み、第3段階の機械的攪拌は45℃で2時間の超音波処理を含む。
【0039】
機械的攪拌は、固定子として知られている固定部品、または回転子および固定子の整列と共に回転子または羽根車を含む高せん断ミキサーを用いて適切な混合速度(例えば、約500rpm〜約50000rpm)で行うことができる。ミキサーは、混合すべき炭素出発材料および有機溶媒混合物を含むタンク中でまたはせん断を生み出すために混合物が通過するパイプ中で使用する。一実施形態では、第1期間中(例えば、約30分間)第1の速度(例えば、約10000rpm)で始まり、引き続いて第2期間中(例えば、約10分間)第2の速度(例えば、約5000rpm)の2段階混合プロセスを採用する。
【0040】
超音波処理は、市販の装置を使用して種々の方法で行うことができ、例としては、それだけに限らないが、プローブもしくはワンドおよび超音波槽もしくはタンクを有する超音波処理装置が挙げられる。超音波処理は、適切な温度において適切なエネルギーレベルで適切な期間行うことができる。一実施形態では、適切な期間は約0.1〜約100時間の間、約0.1〜約10時間の間、または約130分である。適切なエネルギーレベルは溶媒1g当たり少なくとも0.01W、または溶媒1g当たり0.16W〜溶媒1g当たり1.6Wの間である。適切な温度は上記と同じである。
【0041】
一実施形態では、SWCNTを含む炭素出発材料を、機械的攪拌および/または超音波処理により有機溶媒に分散させる。
【0042】
ステップ(b)における炭素出発材料の有機溶媒への分散は、炭素出発材料を分散させるために界面活性剤化学物質を必要としないという点で、炭素分散、特に、CNT分散の一般的に知られている方法とは異なる。一実施形態では、炭素出発材料を、界面活性剤を実質的に含まない有機溶媒に分散させる。界面活性剤は、典型的には、炭素、より具体的にはカーボンナノチューブを液体に分散させるために使用され、炭素アセンブリを調製する既知の方法では、界面活性剤が通常、残渣として存在する。これらの界面活性剤の例としては、それだけに限らないが、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(NaDDBS)、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェノール(Triton X−100)およびポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80)が挙げられる。本明細書で使用する「界面活性剤を実質的に含まない」は、アセンブリを調製するために使用する炭素出発材料の重量に対して10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満(w/w)の界面活性剤が存在することを意味する。本発明の方法により炭素を有機溶媒に分散させる場合、炭素を有機溶媒に分散させるためにこのような界面活性剤は必要とされない。
【0043】
典型的には、CNTを水系溶液または有機溶媒などの液体媒体に有効に分散させるためには、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(NaDDBS)、コール酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのイオン性界面活性剤、あるいはポリオキシエチレン(10)オクチルフェノール(Triton X−100、Dow Chemical Co.)およびポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80、ICI Americas,Inc.)などの非イオン性界面活性剤が必要とされる。これらの界面活性剤は、CNTを分散させるために使用する場合、残渣として残るので、最終CNT由来製品の電気的または機械的特性を低下させる恐れがある。凝集アセンブリは、本方法により調製すると、界面活性剤を含む必要はない。そのため、本発明の方法は、CNTを有機溶媒に分散させるための既存の技術に対する実質的な改善を表す。
【0044】
さらに、炭素出発材料を、結合材料(例えば、ポリマー、無機またはハイブリッド材料)を実質的に含まない有機溶媒に分散させる。工業用途では、炭素モノリスを形成するためにこのような結合材料が典型的には必要とされる。例えば、電気化学二重層キャパシタ(EDLC)に使用するための活性炭素のモノリスを形成するために、炭素粒子を結合するためにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのポリマー結合材料が必要とされる。同様に、カーボンエアロゲルモノリスを形成することは、典型的にはバインダーとして作用し、次いで後で熱分解により除去される有機系エアロゲルに含浸させることを要する。本発明の方法では、モノリスとして凝集炭素アセンブリを形成するために、このような材料が必要とされない。本明細書で使用する「結合材料を実質的に含まない」は、アセンブリを調製するために使用する炭素出発材料の重量に対して10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満(w/w)の結合材料が存在することを意味する。
【0045】
特定の実施形態では、炭素−有機溶媒分散液を、ステップ(b)の後に表面に塗布することができる。表面は、皿、ビーカー、シリンダー、タンク等などの容器内部のものであり得る。一実施形態では、表面は疎水性表面である。このような疎水性表面は、種々の疎水化処理またはコーティングのいずれかを容器または基板材料の表面に施すことにより、分散液を表面に塗布するのに先立って調製することができる。例えば、Yanらの米国特許第6,395,331B1号明細書に記載されている疎水化処理溶液、またはほかのジメチル含有もしくはフッ化ジメチル含有処理溶液を使用して疎水性表面を調製してもよい。別の例として、容器または基板をTeflon(登録商標)などの疎水性材料でコーティングしてもよい。疎水化処理またはコーティングを施してもよい基板または容器材料は、ポリマー、ガラス、金属またはセラミックであり得る。
【0046】
別の実施形態では、表面は、親水性表面(例えば、金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、銀、白金および電極もしくは集電装置として典型的に使用される他の金属)、ガラス、ケイ素、プラスチック、およびセラミック)を含む。
【0047】
自立(自己層間剥離)凝集炭素アセンブリを得るために、本方法は、炭素−有機溶媒分散液を、少なくとも約80°の水接触角を有する疎水性表面に塗布するステップをさらに含む。フィルムとしての接着性凝集炭素アセンブリを得るために、本方法は、炭素−有機溶媒分散液を、約80°未満の水接触角を有する親水性表面に塗布するステップをさらに含む。
【0048】
分散液を、任意の既知の方法、例えば、それだけに限らないが、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、キャスティング、またはこれらの組み合わせにより表面に塗布することができる。スピンコーティングは、少なくとも約5秒間、約10rpm〜約10000rpmまたは約300rpm〜約5000rpmの回転速度で行うことができる。ディップコーティングは、約0.01〜約1.0cm/秒、約0.1〜約0.4cm/秒または約0.2cm/秒の引抜き速度で行うことができる。
【0049】
ステップ(c)では、制御された方法で分散液の有機溶媒を実質的に除去する、すなわち、有機溶媒の99%超を除去し、それによって炭素の凝集アセンブリを形成する。凝集アセンブリが形成するために、制御された方法で有機溶媒を除去しなければならない。本明細書で使用する「制御された方法で除去する」とは、分散した炭素が、炭素の凝集アセンブリに自己組織化し、アセンブリが除去工程の間、および有機溶媒の除去が完了した後で単一の凝集モノリスとして無傷のままであるような速度および方法で有機溶媒を除去することを指す。炭素の凝集アセンブリへの自己組織化を可能にし、アセンブリが有機溶媒の除去が完了した後で凝集アセンブリ(モノリス)のままであることを可能にする制御された方法で有機溶媒を除去する任意の方法が本発明の範囲に含まれる。有機溶媒を除去するための制御された方法の例としては、遅い蒸発、容器からの有機溶媒の遅い排出、またはこれらの組み合わせが挙げられる。炭素が凝集アセンブリ(モノリス)を形成するのを妨害するまたは阻止するほど急速に有機溶媒を除去しないことが重要である。除去工程中に混合物を攪拌しないことも重要である。
【0050】
有機溶媒を除去する制御されていない方法の例としては、容器を傾けて中身を出す(デカントする)ことにより有機溶媒を流し出す方法が挙げられる。この理由は、この方法は、凝集アセンブリの形成を明らかに妨害し、モノリシック形態が得られないためである。制御されていない方法の別の例は、有機溶媒を沸騰させるものである。付随する蒸気泡生成および結果としての混合物の攪拌が凝集アセンブリを明らかに妨害し、モノリスが形成するのを阻止するためである。制御されていない方法の第3の例は、例えば、チューブまたはパイプを通して吸引または吸収することにより、容器中の露出上面でまたはこの面を通して液体を直接物理的に除去するものであるであろう。チューブまたはパイプにより液体の表面が破壊されることにより、炭素のモノリスへの自己組織化が明らかに妨害されるであろう。
【0051】
一実施形態では、有機溶媒の制御された除去を、緩慢な蒸発により行う。この蒸発の初期段階中、分散した炭素が最初に有機溶媒の上面上で核形成し、次いで液体の表面上で組織化または合体して炭素の「島」になり始める。蒸発が進行すると、島は成長および結合してより大きな島を形成し、最終的に合わさって炭素の単一のモノリシックディスク、ウエハーまたはフィルム、すなわち凝集アセンブリになる。
【0052】
有機溶媒をあまりに急速に蒸発させると、炭素の凝集アセンブリが形成できないだろう。このような場合、炭素は液体の上面上で核形成することができず、その代わりに容器内に粉末または粒子残渣として残る可能性がある。あるいは、炭素は表面上で核形成し、島が形成し始めるが、合体してモノリシック凝集アセンブリにならず、凝集アセンブリではなく炭素のランダムに形成された凝集体として残る可能性がある。あるいは、島は合体してモノリスになるが、次いで後で壊れてより小さく粉々になり得る。
【0053】
炭素の凝集アセンブリを形成する有機溶媒の制御された除去のための具体的な条件は、炭素出発材料および有機溶媒の型に依存し、実験的に決定することができる。例えば、有機溶媒は、適切な圧力、適切な温度、適切な時間の蒸発により除去される。適切な圧力は約5000トル〜約0.001トルの間、約1500トル〜約0.01トルの間、約800トル〜約0.01トルの間、大気圧(約760トル)〜0.01トルの間、約100トル〜約0.01トルの間、約10トル〜約0.1トルの間、または約1トル〜約0.1トルの間であり得る。適切な温度は−20℃〜約200℃の間、室温(約20℃)〜約180℃の間、または約40℃〜約80℃の間であり得る。適切な時間は約5秒〜約100時間の間、約10秒〜約100時間の間、約10分〜約40時間の間、または約1時間〜約20時間の間であり得る。
【0054】
一実施形態では、有機溶媒を大気圧より低い圧力で、閉鎖系で除去する。別の実施形態では、有機溶媒を大気圧での蒸発により除去する。蒸発速度を、炭素の凝集アセンブリの形成が妨害も阻止もされないよう制御する限り、いずれの条件も、加熱して有機溶媒の蒸発を加速させることを伴ってよい。
【0055】
有機溶媒の制御された除去はまた、溶媒中で泡を形成せず、溶媒が沸騰しない温度および圧力で起こり得る。
【0056】
あるいは、有機溶媒の蒸発速度を監視し、これをアセンブリの形成を阻止も妨害もしない範囲内に維持することにより、有機溶媒の蒸発を制御して凝集アセンブリを形成することができる。非常に低い速度により凝集アセンブリを製造するには実用的ではないような長い時間がかかる場合を除いて、蒸発速度の実施可能な範囲の下限は特に制限されない。有機溶媒の蒸発は、典型的には、Thomas.K.Sherwoodが「The Drying of Solids-I」、Industrial Engineering and Chemistry 21,1(1929)、12〜16および「The Drying of Solids-II」、Industrial Engineering and Chemistry 21,10(1929)、976〜980で初めて提案した多孔質体の2段階乾燥の古典的な周知の理論に従う。一定速度期としても知られている第1の乾燥段階中、蒸発速度は、好ましくは約0.01〜約10ミリリットル/分(ml/分)の間、より好ましくは約0.10〜約1.0ml/分の間である。減速期としても知られている第2の乾燥段階中、蒸発速度は、好ましくは約5×10
−5ml/分〜約5×10
−2ml/分の間、より好ましくは約5×10
−4ml/分〜約7×10
−3ml/分の間である。
【0057】
典型的には、有機溶媒の99%超を蒸発により除去する。任意の残っている有機溶媒は、任意選択により、凝集アセンブリをエタノールまたはイソプロパノールなどの有機溶媒ですすぎ、次いで室温でまたはオーブン中での温和な加熱により乾燥することにより、蒸発後に除去することができる。
【0058】
形成した凝集炭素アセンブリは、手動でまたは希酸もしくは有機溶媒などの流体を用いて容器の内部表面を軽くすすぐことにより容器から除去することができる。次いで、生成物アセンブリは、温和な加熱により達成され得る大気圧または真空下で最終乾燥され得る。
【0059】
特定の実施形態では、本方法により形成された凝集炭素アセンブリに、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)または熱質量分析法(TGA)により検出可能な有機溶媒が残留していない。
【0060】
特定の実施形態では、除去した有機溶媒を回収することができる。例えば、LN2トラップを使用して除去した有機溶媒を回収することができる。回収した有機溶媒を、直接または必要に応じて精製後に本方法に再利用してもよい。
【0061】
[凝集炭素アセンブリの特性評価]
本発明の方法により調製された凝集炭素アセンブリは、調製中および最終生成物中の界面活性剤の実質的な非存在を特徴とする。
【0062】
本発明の方法により調製されたCNTを含む凝集炭素アセンブリは、他の既知のCNTアセンブリに比べて高い有効炭素充填密度を特徴とする。凝集炭素アセンブリは、典型的には少なくとも約0.5g/cm
3の有効CNT充填密度を有し、通常は1.0g/cm
3より高い密度を有し、1.5g/cm
3くらいの密度を示した。例えば、凝集炭素アセンブリは、約0.3〜1.9g/cm
3の間、好ましくは約0.5〜1.5g/cm
3の間、より好ましくは約0.8〜1.5g/cm
3の間または1.0〜1.5g/cm
3の間の有効CNT充填密度を有する。この高い密度は、これらのアセンブリに優れた機械的強度および集結度を与える。この高い密度はまた、その優れた電気的特性、特に他の既知のCNTアセンブリに比べて低い抵抗率に寄与する。
【0063】
CNT由来炭素アセンブリの有効CNT充填密度を決定するために、最初に、標準的化学天秤を使用してアセンブリの重量を慎重に測定し、次いでデジタルミクロメーターまたは光学もしくは走査型電子顕微鏡を使用してアセンブリの寸法を測定し、次に寸法から試料の体積を計算し、重量を体積で割ることによりアセンブリの見かけ密度を決定する。この計算により、アセンブリの見かけ密度が得られる。あるいは、密度バランスおよびアルキメデスの原理を使用して見かけ密度を決定してもよい。次いで、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、中性子放射化分析(NAA)または熱質量分析法(TGA)などの種々の方法の1つを利用して、アセンブリ中の炭素(すなわち、CNT)の重量分率を決定することができる。最後に、見かけ密度にアセンブリ中の炭素の重量分率を掛けることにより、CNTの有効充填密度を計算する。
【0064】
アセンブリは、アセンブリを調製するための使用する炭素の量、ならびに炭素アセンブリを調製する容器の大きさおよび形状により決定される、所望の大きさまたは形状に製造することができる。これにより、アセンブリを、種々の形状および大きさの炭素アセンブリを要する種々の用途に使用することが可能になる。有機溶媒を分散液から除去すると、炭素アセンブリは、典型的には、水平面に容器の底の形状および大きさに自己組織化し、使用する炭素の量および容器の大きさにより決定される垂直厚さ、すなわち、直交厚さを有する。炭素が多い場合、より厚いウエハーまたはディスク状凝集アセンブリが製造される一方、炭素が少ない場合、より薄いフィルム状アセンブリが製造される。アセンブリを調製するために使用する容器の直径または横断面積を減少または増加させることもアセンブリ厚さに同様の効果を与える。特定の実施形態では、アセンブリは、約0.02μm〜約2000μm、または約0.1μm〜約500μmの厚さを有する。一実施形態では、アセンブリは、約0.1μm〜約2000μm、約1μm〜約500μm、または約10μm〜約50μmの厚さを有する自己層間剥離アセンブリである。別の実施形態では、アセンブリは、約0.02μm〜約2000μm、約0.02μm〜約500μm、または約0.02μm〜約50μmの厚さを有する接着性アセンブリである。
【0065】
本発明の方法により調製された凝集炭素アセンブリはまた、他の炭素アセンブリに比べて低い電気抵抗率を特徴とする。これらのアセンブリは、典型的には約0.1Ω・cm未満、約0.02〜0.05Ω・cmの抵抗率、および約2000Ω/スクエア未満または約8〜約17Ω/スクエアの間の電気シート抵抗を有する。機械的強度および集結度と共にこの低い電気抵抗率は、例えば、電池もしくはスーパーキャパシタ用の電極として、または電磁干渉(EMI)遮蔽材料としてのこれらのアセンブリの種々の用途を可能にすることができる。この低い抵抗率は、有効炭素充填密度が増加するにつれて、ナノチューブ、管束または黒鉛小板などの個々の炭素実体間の空の空間が減少し、これらの炭素実体間の接触面積が増加するという点で、アセンブリの高い有効炭素充填密度に関連している。これは当然、アセンブリに、より効率的かつより高い電流を流れさせ、それによってその抵抗率を減少させる。
【0066】
凝集アセンブリの抵抗率は、以下ように決定される。各アセンブリから、全ての辺が1cm超の長さを有する長方形または正方形幾何学の試料を切断する。試料を試料台に載せ、2つの電気接点対(2つの電流通電および2つの電圧検出)を、標準的ケルビンタイプ(4点)プローブ配置で試料に直接押し付ける。4点プローブの4つの金属チップが試料を貫通することなく試料と直接接触するように、試料を配置する。
【0067】
高インピーダンス電流源を使用することにより、定電流が試料の長さを流れるようにする。電流源を、典型的には0.1×10
−3A、1×10
−3A、10×10
−3Aまたは100×10
−3Aの電流を印加するよう設定する。高インピーダンスデジタル電圧計を使用して、試料にわたる電圧降下を測定する。試料の表面(シート)抵抗、Rs(Ω)(またはΩ/sq)は、以下の式に示すように、電圧計に示されている安定電圧、Vと電流源の出力電流の値、Iの比に、形態係数π/ln2≒4.53を掛けることにより求められる。
R
s=4.53(V/I)
【0068】
側面計、デジタルミクロメーターまたは走査型電子顕微鏡を使用して試料の厚さ(t)を測定することにより、試料の電気抵抗率ρ(Ω・cm)を、下記の式
ρ=R
s(t)
を使用して計算することができる。
【0069】
さらに、CNT(例えば、SWCNT)を含む炭素出発材料を使用して本発明の方法により調製された凝集炭素アセンブリは、炭素出発材料ほどの欠陥を示さない。CNTの質、すなわち、その中に含まれている構造欠陥および無定形炭素不純物の濃度を評価するのに有用な既知の技術は、G/D比と呼ばれる2つの特徴的ラマン赤外スペクトルピークの強度比を測定することによる。Gラインは黒鉛層の特徴的な特徴であり、炭素原子の接線方向の振動に相当する。Dラインは欠陥のある黒鉛構造に典型的なサインである。ラマン分光法によりCNT試料の質のレベルを決定する場合、GおよびDバンドピークの絶対強度は特に関連しない。むしろ、2つのピークの強度の比が関連する尺度である。これらの2つのピークの強度の比を比較することにより、CNT試料の質の尺度が与えられる。一般的に、G/D比は良いCNTピークと悪いCNTピークの比である。したがって、高いG/Dを有するCNTは少量の欠陥およびより高レベルの質を示す。
【0070】
G/D比は、典型的にはラマン分光法技術を使用して決定する。種々の市販の装置のいずれかを使用してGおよびDバンド強度を測定し、G/D比を計算することができる。このような装置の1つの例は、モデル名LabRAM ARAMISでHORIBA Jobin Yvon Inc.、(Edison、ニュージャージー)から市販されている。
【0071】
CNT試料では、G/D比は処理後に変化し得る。本方法は、形成された凝集炭素アセンブリのG/D比が炭素出発材料のG/D比とほぼ同じであるか、またはこれより大きいという利点を有し、この方法が工程中に構造欠陥を導入しないことを示している。
【0072】
本発明の方法は、炭素アセンブリを組み立てる、特にこのようなアセンブリを、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、白金、金、銀、チタン、これらの合金などで作られた金属基板または裏打ちシート上に接着性ウエハーまたはフィルムとして組み立てる既存の方法に対しての追加の明確な利点を提供する。
【0073】
最初に、本方法は、分散溶媒としてハロゲンを利用する他の既知の方法に比べて、分散した炭素を流延または堆積させることができる金属容器または表面の使用を可能にする。臭素などのハロゲンは、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄などの電気部品に一般的に使用されるものを含む多くの金属にとって極めて腐食性であることは周知である。特に、アルミニウムは、キャパシタ、電池および他のエネルギー貯蔵装置の集電装置用に一般的に使用されている材料である。臭素はアルミニウムと接触すると激しく反応してAlBr
3を生成する。そのため、カーボンナノチューブまたは他の形態の炭素のための分散溶媒として臭素を利用して、金属容器内で凝集アセンブリを製造するまたは凝集炭素フィルムを金属基板上に堆積させることは適切でない。分散媒体として金属にとって非腐食性の選択された有機溶媒を使用する本方法により、金属容器内での炭素の凝集アセンブリまたは金属基板上の凝集フィルムとしての組み立てが可能になる。
【0074】
第2に、本方法により、炭素アセンブリを金属基板に付着させるための任意の結合材料を使用することなく、前記基板上に接着性凝集炭素アセンブリを調製することが可能になる。例えば、電気化学二重層キャパシタ(EDLC)のアセンブリにおいて、炭素系電極を金属裏打シートに付着させる標準的工業法は、典型的には結合材料の使用を伴う。これらの材料は、その電気抵抗率を減少させるための導電性添加剤を含むことができるが、典型的にはポリマー系であり、炭素アセンブリと金属裏打シートの両者よりも本質的に導電性が低い。そのため、結合材料を用いて炭素アセンブリを金属に付着させる工程は、炭素と金属との間の接触抵抗の増加および装置全体の性能を低下させる。対照的に、本方法は、金属基板上で接着性炭素アセンブリを組み立てることを可能にし、結合材料を含まない、炭素と金属との間の接触抵抗が減少した、金属基板に付着した炭素アセンブリを含む物品を提供する。これにより、EDLC、燃料電池、電池等などの、この物品を使用する装置の性能が改善される。
【0075】
[凝集炭素アセンブリの用途]
本発明の別の態様は、基板と基板の少なくとも1つの表面上にコーティングされた凝集炭素アセンブリとを含む物品であって、凝集炭素アセンブリは上記方法により調製された物品に関する。
【0076】
特定の用途のための性能を強化するために、凝集炭素アセンブリを、その組み立て後に別段処理してもよい。例えば、燃料電池電極としての用途のためには、白金などの金属粒子のコーティングがその触媒性のために有利となり得る。電池電極用途のためには、鉄、白金、パラジウム、ニッケル、リチウムまたは他の適切な金属などの金属粒子コーティングが望まれ得る。このような粒子コーティングは、これにより参照により組み込まれる、Grigorianらの米国特許出願公開第2009/0015984A1号明細書に開示されている方法を使用して達成することができる。
【0077】
本発明の凝集炭素アセンブリは、電気化学キャパシタ、燃料電池または電池の電極または集電装置として使用するための、他の型の炭素アセンブリに対する特別の利点を有する。これらの利点としては、その固有の機械的強度および集結度、低い電気抵抗率、所望の形状および大きさに組み立てられるおよび/またはさらに修飾される能力、ならびに優れたエネルギー貯蔵容量(すなわち、出力密度およびエネルギー密度)を提供する高い炭素充填密度が挙げられる。
【0078】
凝集炭素アセンブリは、電気的および機械的特性の望ましい組み合わせのために、この用途で互換的に使用されるキャパシタまたはキャパシタセルの電極として使用するのに適切である。キャパシタは、絶縁材料により分離されている2つの電極を含む任意の型のものであってよい。キャパシタは、バルク誘電体材料が2つの導電電極を分離している単純な静電コンデンサであっても、電極の一方または両方が電解液を含む電解コンデンサであってもよい。凝集炭素アセンブリは、時々「スーパーキャパシタ」または「ウルトラキャパシタ」と呼ばれる電気化学二重層キャパシタ(EDLC)の電極として使用するのに特に適している。
【0079】
凝集炭素アセンブリ、特にカーボンナノチューブを含むアセンブリを、本発明の方法による組み立て後に、キャパシタセル中に直付けするのに適した大きさまたは形状の電極に変更してもよい。電極はディスク形状、すなわち、円形または卵形であってもよく、3つ以上の辺を有する多角形であってもよい。大きさおよび形状は、それが使用されるキャパシタ装置の大きさおよび形状によってのみ決定される。電極の厚さは特に限定されないが、特定の厚さがキャパシタ装置に使用するために好ましいものとなり得る。電極が厚すぎると、電極の抵抗率が高くなりすぎる恐れがあるまたはエネルギー輸送が非効率的になるであろう。電極が薄すぎると、電極はキャパシタ用途に必要な機械的集結度またはエネルギー貯蔵能力を有さないであろう。一般的に、厚さは、好ましくは約0.02μm〜約2000μmの間、または約0.1μm〜約500μmの間である。一実施形態では、アセンブリは、約0.1μm〜約2000μm、約1μm〜約500μm、または約10μm〜約50μmの厚さを有する自己層間剥離アセンブリである。別の実施形態では、アセンブリは、約0.02μm〜約2000μm、約0.02μm〜約500μm、または約0.02μm〜約50μmの厚さを有する接着性アセンブリである。
【0080】
凝集炭素アセンブリは、任意選択によりキャパシタ電極として使用する前に金属不純物を精製してもよい。具体的には、カーボンナノチューブを含むアセンブリについては、CNT合成工程の残渣である金属不純物の除去により、アセンブリの電気およびエネルギー貯蔵特性が改善され得る。この精製は、種々の手段により達成することができ、ハロゲンガス、特に塩素ガスによる処理が好ましい方法である。この処理工程のパラメータは、炭素が工程中に損傷または分解しない限り、特に限定されない。
【0081】
一実施形態では、凝集炭素アセンブリからの金属不純物の除去は、石英管炉などの制御雰囲気炉中、高温での塩素ガスによる処理により達成される。塩素ガスは、典型的には、窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性キャリアガスとの混合物の形態で使用される。混合物中の塩素含量は、典型的には1〜20%(v/v)の間、好ましくは2〜10%の間、より好ましくは約5%である。処理中の炉内の温度は、典型的には800℃〜1200℃の間、好ましくは900℃〜1100℃の間である。処理に必要とされる時間は、処理すべき材料の量、使用するガスの型、炉設計およびガス輸送法等などの種々の因子に依存する。しかしながら、典型的には、処理の時間は、約15〜180分の間、好ましくは30〜90分の間である。ガス混合物の流量も、言及したものを含む種々の因子に依存するが、石英管炉の例の例示実施形態では、ガスの直線流量は、典型的には0.1〜20cm/分の間、好ましくは0.25〜10cm/分の間である。
【0082】
キャパシタ電極としての凝集炭素アセンブリの性能を評価するために、1つの電極が非対称キャパシタセル中に凝集炭素アセンブリを含んでも、2つの電極がそれぞれ対称キャパシタセル中に凝集炭素アセンブリを含んでもよい。キャパシタ電極としての凝集炭素アセンブリの性能を評価する方法は特に限定されず、種々の標準的方法が当技術分野で知られている。典型的には、絶縁材料により分離された2つの電極を含むキャパシタセルを、電極の外表面に付着した集電装置として金属板と組み立てる。次いで、このセルを適切な電解液に沈め、電圧を印加する。EDLCについては、大衆消費電子製品および自動車用途のための性能を評価するための好ましい印加電圧(絶対値)は0〜2ボルトの間、または0〜4ボルトの間である。電極性能を評価するために使用する分析法としては、漏洩電流測定、電気化学インピーダンス分光法(誘電分光法としても知られている)、市販の試験装置を使用した充放電サイクルなどが挙げられる。
【0083】
キャパシタ電極としての凝集炭素アセンブリの性能利点を決定するために、測定した特性を、活性炭素などの他の標準的材料の電極、またはCNTフォレスト由来材料などの他の型のCNT系電極を含むキャパシタの特性と比較する。本方法により調製された炭素の凝集アセンブリは、一般に、活性炭素電極および他の型のCNT系電極に比べて優れたキャパシタ電極としての電力性能を示す。優れた性能としては、低い漏洩電流および速い放電時間、および出力密度とエネルギー密度の優れた組み合わせ、電気自動車および大衆消費電子製品用途にとって重要なパラメータが挙げられる。さらに、凝集アセンブリは、密閉キャパシタセルに直接パッケージするのに必要な機械的集結度を有する一方で、他のCNT系電極は有さない。
【0084】
キャパシタと同様に、本発明の凝集炭素アセンブリは、電池の電極としての使用にも適している。電池は、電解液により分離された2つの電極を含む任意の型のものであってよい。特に興味深いのは、凝集炭素アセンブリが負極もしくは正極材料、または両方として使用するのに適したLiイオン電池型である。キャパシタ用途に関する限りは、凝集炭素アセンブリを含む電池電極の大きさ、形状および厚さは特に限定されない。好ましい厚さもキャパシタ電極についての厚さと同様である。
【0085】
凝集炭素アセンブリを、調製されたままの形態で電池電極として、すなわち、ほぼ純粋な炭素を含むアセンブリとして使用してもよい。あるいは、アセンブリを、例えば、米国特許出願公開第2009/0015984A1号明細書に記載されている方法を使用して金属粒子でコーティングすることにより、組み立て後にさらに処理してもよい。金属コーティングをアセンブリが負極として使用するのに適するように選択してもよいし、アセンブリが陽極として使用するのに適するように選択してもよい。適切な金属コーティングは、セルの全体設計に依存する。
【0086】
調製されたままの形態では、カーボンナノチューブの凝集炭素アセンブリ、より好ましくはSWCNTの凝集アセンブリは、Liイオン電池セルの負極として使用するのに特に適切であり、対応する陽極はLiCoO
2、LiFePO
4、またはLiNiCoAlO
2などの1種または複数のLi含有酸化物を含む。凝集炭素アセンブリを含む電極は、バインダー材料を必要とせず、調製されたままの形態で電池セルに取り付けることができる。
【0087】
凝集炭素アセンブリ電極を含む電池は、Y.NuLiらの「Synthesis and characterization of Sb/CNT and Bi/CNT composites as anode materials for lithium-ion batteries」、Materials Letters 62(2008)、2092〜2095、またはJ.Yanらの「Preparation and electrochemical properties of composites of carbon nanotubes loaded with Ag and TiO
2 nanoparticle for use as anode material in lithium-ion batteries」、Electrochimica Acta 53(2008)、6351〜6355に記載されているような標準的方法を使用して性能を試験することができる。このように、それによって凝集炭素アセンブリ系リチウムイオン電池負極の性能を、黒鉛、硬質炭素(すなわち、ダイアモンド状炭素)、チタン酸塩、ケイ素、ゲルマニウムなどの他の材料で構成されたリチウムイオン電池負極、バインダーもしくは構造支持体を要する他のCNT系電極などの性能と比較する。
【0088】
本発明の凝集炭素アセンブリはまた、燃料電池の電極として使用するのにも適している。PEM型燃料電池では、電極は、触媒担体層およびガス拡散層(GDL)を含む。前記の凝集炭素アセンブリは、低い抵抗率と高い機械的強度および集結度を有する。さらに、これは燃料電池用途のために必要とされるガス種(水素、酸素、水蒸気)の拡散を可能にするのに十分高い細孔容積を示す。SWCNTを含むアセンブリの総細孔容積は、典型的には1.0cm
3/g超、通常1.5cm
3/g超であり、2.0cm
3/gを超えることが観察されている。総細孔容積は空隙率と相関し、ガス透過率とほぼ相関する。そのため、凝集炭素アセンブリ、特にSWCNTアセンブリは、触媒担体もしくはGDLのいずれかとしてまたは同時に両方として使用するのに適切である。
【0089】
燃料電池に使用するための凝集炭素アセンブリの大きさおよび厚さは特に限定されない。しかしながら、厚さは、所望のレベルのガス透過率が維持され、触媒層として使用する場合には、所望のレベルの層を通しての触媒活性が達成されるように選択すべきである。燃料電池の触媒層として使用する場合の本発明の凝集炭素アセンブリの厚さは、典型的には5〜20μm厚さである。燃料電池のGDLとして使用する場合の本発明の凝集炭素アセンブリの厚さは、典型的には100〜300μm厚さである。
【0090】
燃料電池の触媒担体として使用するためには、凝集炭素アセンブリを、典型的には、電気化学反応のための触媒として作用する金属粒子でコーティングする。金属粒子の型は、電極が燃料電離の正極か負極のいずれとなるかに基づいて選択する。例えば、アセンブリを負極にする場合、金属は白金であってもよい。アセンブリを正極とする場合、金属はニッケルであってもよい。コーティングは、任意の適切な方法、例えば、米国特許出願公開第2009/0015984A1号明細書に記載されている方法により、達成され得る。このコーティング法は、以下の2つの必須ステップを含む。(1)アセンブリをヨウ化白金(PtI
2)、ヨウ化ニッケル(NiI
2)、ヨウ化パラジウム(PdI
2)などのハロゲン化前駆体で処理してハロゲン化中間体を形成する、(2)残渣ハロゲンを除去し、アセンブリ上に堆積した金属種を水素ガス処理と組み合わせた加熱により純粋な金属に還元する。
【0091】
触媒担体、GDLまたは両者としての凝集炭素アセンブリの性能を評価するために、PEM型燃料電池を、この部品に典型的に使用される標準的材料の代わりに凝集炭素アセンブリ部品を用いて組み立てる。例えば、凝集炭素アセンブリが触媒担体である場合には、これを触媒金属粒子でコーティングし、次いで標準的触媒担体、通常PtコーティングまたはNiコーティングカーボンブラックの代わりに燃料電池に取り付ける。凝集炭素アセンブリがGDLである場合には、これを標準的GDL、通常はカーボン紙または炭素布の代わりに燃料電池に取り付ける。凝集炭素アセンブリが触媒担体とGDLの両者である場合には、これを両方の標準的部品の代わりに取り付ける。凝集炭素アセンブリを取り付けた燃料電池は、B.Fangらの「Nanostructured PtVFe catalysts:Electrocatalytic performance in proton exchange membrane fuel cells」、Electrochemistry Communications 11(2009)、1139〜1141に記載されているものなどの任意の標準的方法により性能を試験することができる。このようにして、セル電圧および出力密度対電流密度などの性能パラメータを、標準的燃料電池または他の潜在的代替触媒担体/GDL材料を含む燃料電池のパラメータと比較する。
【0092】
キャパシタ、電池および燃料電池などのエネルギー貯蔵装置は、典型的には絶縁材料または電解液の一方側の集電装置および電極と、絶縁材料または電解液の他方側の別の集電装置および別の電極とを含む。例えば、静電コンデンサでは、分離材料は絶縁材料である一方で、EDLC、電池および燃料電池では、分離材料は電解液である。EDLC、電池または燃料電池の電解液は、電極間のイオン伝導を可能にする薄膜により分割されている。本発明の凝集炭素アセンブリは、その低い抵抗率、優れた機械的特性、ならびに所望の形状および大きさに組み立てられる能力のために、これらのエネルギー貯蔵装置の集電装置として使用するのに適切である。
【0093】
凝集炭素アセンブリをさらに、自立電極および集電装置として同時に使用してもよい。本明細書で使用する自立電極とは、唯一の導電材料として凝集炭素アセンブリを含む電極を指す。この利点は、全質量が使用可能な電極容量に寄与することである。これは、活性材料複合層および金属集電装置の質量平均化のために、使用可能な電極容量が減少する従来の電極と対照的である。典型的には、集電装置は、CNT電極の質量密度(約0.7g/cm
3)よりも著しく高い質量密度(AlおよびCuについてそれぞれ2.7および8.8g/cm
3)を有し、同様に有意な重量を装置に付与するアルミニウムまたは銅板である。
【0094】
自立電極のための別の利点は、性能改善につながる可能性のある電極厚さを調節する能力である。例えば、電気化学二重層キャパシタ(EDLC)では、低い抵抗率を有する薄い電極が、高い出力密度を提供する。性能改善へのこの手法は、集電装置の質量%の相対的増加のために従来の設計では実行可能でない。
【0095】
特定のエネルギー貯蔵装置の設計により特異的な他の利点は予見可能である。例えば、電池では、銅基板の除去により、2.5V(銅基板の酸化が始まる典型的電位)未満のサイクルが可能になるので、放電深度が増加し、長期貯蔵のための0ボルト近い充電状態を維持する機会を作り出す。一般に、本発明の凝集炭素アセンブリで金属集電装置を置換することにより、これらの装置の全く新しい設計が可能になる。
【0096】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例を、本発明の範囲をその中に記載する具体的手順または生成物に限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0097】
<実施例1−SWCNTのODCB中分散液>
安定なSWCNTのo−ジクロロベンゼン(ODCB)中分散液を以下のように調製した。
(1)SWCNT(Thomas Swan「Elicarb SW」)600mgをODCB500gと混ぜ合わせて第1の混合物を得た。
(2)第1の混合物を密閉容器中で30分間、高せん断ミキサー(10000rpm)および任意の超音波槽中での同時超音波処理を使用して混合および分散して第2の混合物を得た。
(3)次いで、ミキサー速度を5000rpmに低下させ、溶液が容器の壁に飛び散らないようにした。ODCB100gを、洗浄瓶を用いて容器の壁に噴霧することにより添加して、SWCNTが容器の壁に固着したままにならないようにした。得られた混合物を、10分間、5000rpmおよび任意選択により超音波槽中での同時超音波処理の存在下で混合して第3の混合物を得た。
(4)高せん断ミキサープローブを除去した後に、密閉容器中の第3の混合物を45℃で2時間、超音波槽中で超音波処理して第4の混合物を得た。
(5)第4の混合物をコーティングまたはキャスティングのために使用される準備ができたSWCNT−ODCB分散液とした。
【0098】
あるいは、機械的混合中に超音波処理を行わなかった場合には、第3の混合物を1時間または45℃で4時間、超音波槽中で超音波処理してSWCNT−ODCB分散液を得た。
【0099】
<実施例2−SWCNTの自己層間剥離および自立凝集アセンブリ>
超音波洗浄した直径9cmのペトリ皿をキャスティング用の型として使用した。Yanらの米国特許第6,395,331B1号明細書に記載されているように、ペトリ皿を疎水性コーティング溶液でコーティングした。疎水性コーティングにより、80°以上の水接触角を有する表面が得られた。型上の疎水性コーティングは、ディップコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、またはスプレーコーティング、次いで200℃で1時間の硬化(および乾燥)により調製した。
【0100】
実施例1で調製されたSWCNT−ODCB分散液を、周囲条件下で疎水性コーティング型にゆっくり注ぎ込んだ。各型に、皿が5mg〜2gの間のSWCNTを含むように異なる量のSWCNT−ODCB分散液を注ぎ込んだ。
【0101】
キャスティング後に分散したSWCNTが型の壁に付着した場合には、ODCB約5gを噴霧して該SWCNTをキャスティングしたSWCNT−ODCB分散液に流し込んだ。
【0102】
キャスト型を室温の真空オーブンに入れた。オーブン中10分間真空をゆっくりかけて、型中の溶媒の泡も沸騰も生じないようにした。液体窒素蒸気トラップを真空オーブンとポンプとの間に置いた。蒸発した溶媒をトラップに回収した。任意選択により、型を、ピンホールを有するサランラップフィルムで覆って溶媒蒸発を制御した。
【0103】
オーブン温度を30℃に上げ、溶媒蒸発速度を加速させた。溶媒は、約10時間後に型から実質的に除去された。型を真空オーブンから取り出し、電気オーブン中200℃で3時間加熱し、次いで周囲温度に冷却した。
【0104】
蒸発により溶媒を実質的に除去した後、型から容易にすくい上げることができる自立SWCNTアセンブリ(ウエハー)が形成した。
【0105】
結果として生じる凝集SWCNTウエハーの重量および厚さは、最初に型に注ぎ込んだ分散液の量に依存していた。例えば、上記手順により得られた3つの完全SWCNTウエハーは、それぞれ64cm
2の表面積(9cm直径)で、72mg、95mgおよび123mgの重量を有していた。それぞれの厚さは約16、21および27μmであった。
【0106】
<実施例3−基板上の接着性凝集SWCNTアセンブリ(キャスト)>
実施例1により調製されたSWCNT−ODCB分散液約165mgを、アルミニウム箔で裏打ちしたペトリ皿に注ぎ込んだ。ODCB溶媒を実施例2に記載するように蒸発により除去した。約20μm厚さのコーティングフィルムとしての接着性凝集SWCNTアセンブリがアルミニウム箔表面上に形成した。SWCNT−アルミニウム物品を300℃で4時間加熱下後、層間剥離も接着性の喪失も観察されなかった。
【0107】
実施例1により調製されたSWCNT−ODCB分散液約165mgを、洗浄したペトリ皿(疎水性コーティングにより処理していない)にも注ぎ込んだ。ODCB溶媒を実施例2に記載するように蒸発により除去した。接着性凝集SWCNTアセンブリがガラス表面上にコーティングフィルムとして形成した(
図2)。コーティングガラスを400℃で3時間加熱した後も、コーティングガラスをアセトン、ODCBまたはIPAなどの溶媒ですすいだ際にも、層間剥離も接着性の喪失も観察されなかった。
【0108】
ガラス皿中のSWCNTアセンブリを、20%HF溶液中に少なくとも1分間浸漬することにより、ガラス表面から分離した。次いで、これを水ですすぎ、空気中で乾燥させると、自立凝集SWCNTアセンブリが得られた。
【0109】
<実施例4−基板上の凝集SWCNTアセンブリ(スピンコーティング)>
実施例1により調製されたSWCNT−ODCB分散液1mlを、500rpmで30秒間シリコンウエハー基板上にスピンコーティングする。ODCB溶媒を空気中で少なくとも1分間蒸発させることにより除去する。コーティングフィルムとしての凝集SWCNTアセンブリが基板上に形成し、これは約0.5μmの厚さを有する。
【0110】
<実施例5−基板上の凝集SWCNTアセンブリ(ディップコーティング)>
実施例1により調製されたSWCNT−ODCB分散液を少なくとも6インチ幅、1インチ深さおよび5インチ高さで長方形タンクに入れる。十分な量の分散液をタンクに入れてこれを上面の1インチ以内まで満たす。銅、アルミニウム、またはほかの金属基板、またはシリコンウエハーの4×6インチシートを、SWCNT−ODCB分散液のタンク中に降ろす。次いで、基板を0.2cm/秒の速度でタンクから垂直に引き出す。ODCB溶媒を空気中で少なくとも1分間蒸発させることにより除去する。コーティングフィルムとしての凝集SWCNTアセンブリが基板上に形成し、これは約5μmの厚さを有する。
【0111】
<実施例6−基板上の凝集SWCNTアセンブリ(スプレーコーティング)>
実施例1により調製されたSWCNT−ODCB分散液を、アルミニウム箔基板上に噴霧する。ODCB溶媒を、0.25トルおよび50℃の真空オーブンで少なくとも10分間蒸発させることにより除去する。コーティングフィルムとしての凝集CNTアセンブリが基板上に形成し、これは約50μmの厚さを有する。
【0112】
<実施例7−凝集炭素アセンブリの特性評価>
(I)電気シート抵抗および抵抗率
キャパシタ、燃料電池または電池のような装置用の集電装置として有用となるためには、材料は十分に低い抵抗率(10
−2Ω・cm以下程度)および十分な機械的堅牢性(高い引張り強さおよび耐破損性)を有する必要がある。
【0113】
凝集アセンブリが集電装置として使用されるために十分低い抵抗率を有することを確立するために、実施例2および3により調製されたアセンブリの電気シート抵抗および抵抗率を以下のように測定した。
【0114】
各アセンブリから、全ての辺が1cm超の長さを有する長方形または正方形幾何学の試料を切断した。試料を試料台に載せ、2つの電気接点対(2つの電流通電および2つの電圧検出)を、標準的ケルビンタイプ(4点)プローブ配置で試料に直接押し付けた。4点プローブの4つの金属チップが試料を貫通することなく試料と直接接触するように、試料を配置した。
【0115】
高インピーダンス電流源を使用することにより、1mAの定電流が試料の長さを流れるようにした。高インピーダンスデジタル電圧計を使用して、試料にわたる電圧降下を測定した。試料の表面(シート)抵抗、Rs(Ω)(またはΩ/sq)は、以下の式により、電圧計に示されている安定電圧、Vと電流源の出力電流の値、Iの比に、形態係数π/ln2≒4.53を掛けることにより求めた。
R
s=4.53(V/I)
【0116】
側面計、デジタルミクロメーターまたは走査型電子顕微鏡を使用して各試料の厚さ(t)を測定し、次いで、各試料の電気抵抗率ρ(Ω・cm)を以下の式
ρ=R
s(t)
を使用して計算した。
【0117】
実施例2および3により調製されたSWCNTのシート抵抗は8〜17Ω/スクエアの間であった。
【0118】
実施例2および3により調製された凝集炭素アセンブリの抵抗率は約0.02〜0.05Ω・cmの間であった。
【0119】
SWCNTアセンブリの抵抗率は、これらをキャパシタ、燃料電池または電池などの電気貯蔵装置の集電装置として利用することができるほどに十分低かった。さらに、本発明により組み立てられた凝集アセンブリは、集電装置として使用するために必要な機械的特性を有し、アルミニウムまたは銅などの金属製の集電装置に取って代わる。これは、金属板の代わりに集電装置として使用するために必要な堅牢性を有さない、例えば、活性炭素を含む他の型の炭素アセンブリ、およびCNTフォレストから作られたものなどの他のCNT系アセンブリと直接対照的である。
【0120】
(II)ラマンスペクトル
実施例2により調製されたSWCNTアセンブリおよび対応する炭素出発材料を、標準的方法を使用してラマンスペクトルにより特性評価した。SWCNTウエハーは、炭素出発材料の比(未処理のCNT粉末、ラマンG/D比4.6)に比べて改善したウエハーの上面の4.9と底面の7.1のラマンG/D比を示した(
図3)。このことは、カーボンナノチューブと無定形炭素などの他の形態の炭素の比が多少高かったこと、および/またはカーボンナノチューブの欠陥濃度がアセンブリの底に向かって多少低かったことを示唆している。
【0121】
(III)走査型電子顕微鏡(SEM)画像法
実施例2および3により調製されたSWCNTアセンブリをSEM(JSM−7500F、JEOL Ltd.、東京)により画像処理および特性評価した。像は、得られたSWCNTアセンブリが溶媒蒸発工程中に織り合わせナノチューブ構造を形成し、ナノチューブの長さと直径のアスペクト比を保護していることを示した。
【0122】
<実施例8−SWCNTの凝集アセンブリを含むキャパシタ電極>
凝集炭素アセンブリを、実施例2に記載されている手順にしたがって調製した。SWCNTアセンブリは直径約9cmおよび厚さ約20〜35μm(側面計、モデルDektak 150、Veeco Instruments Inc.、Plainview、NYを用いて測定した)であった。直径約0.625インチのディスクを、標準的実験室ブレードを使用してアセンブリから切り抜いた。
【0123】
ディスクのいくつかを室温(約20℃)の炉内の密閉石英管に入れた。20sccmでヘリウムをそこに流すことにより、管を1時間パージした。次いで、ヘリウム流を継続しながら、ディスクを10℃/分で1000℃に炉内で加熱した。温度を1000℃に維持しながら、ヘリウム流を停止し、5%塩素および95%アルゴンの混合物を20sccmで導入した。これらの条件を1時間維持し、次いでガスを20sccmで30分間ヘリウムに切り戻した。次いで、ガスを20sccmで30分間5%水素および95%アルゴンの混合物に変えて残留塩素を除去した。次いで、ガスを20sccmヘリウムに切り戻し、2時間維持した。次いで、炉を自然に室温に冷却した。
【0124】
次いで、上記のように塩素で処理したディスク、およびいくつかの未処理ディスクを、195℃の真空下でさらに使用する直前に12時間乾燥させた。
【0125】
SWCNTディスクと比較するために、製品名Norit DLC Super 30の活性炭素(AC)をNorit Nederland BV(Amersfoort、オランダ)から得た。直径約0.625インチおよび厚さ40〜60μmの間のディスク形状片を、標準的製造法を使用してAC粉末から形成した。ACディスクを60℃でさらに使用する直前に1時間乾燥させた。
【0126】
電気化学二重層キャパシタ(EDLC)セルを、SWCNTおよびACディスクを使用して組み立てた。原型セルを、集電装置として各電極面に対して固定した金属板を使用して乾燥箱中で組み立てた。セルを、電解液として炭酸プロピレン中1.0Mテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(TEATFB)塩を使用して、2.0V定格の対称電気化学キャパシタの電極としての特性および性能を試験した。
【0127】
試験キャパシタセルは、2.0Vで10分間維持し、次いで、2.5mA電流を使用して1.0〜2.0Vの間で30回、電池/キャパシタテスター(モデルBT2000、Arbin Instruments、College Station、テキサス)を使用して充放電サイクルした。次いで、電気性能測定を以下の順で行った:
1.1.0、1.5および2.0Vで30分後の漏洩電流
2.2.0Vバイアス電圧でEIS(電気化学インピーダンス分光法)測定
3.Arbinテスターを使用した一定電流および一定電力充電/放電測定。
【0128】
上記測定の代表的な結果を表1にまとめる。
【0129】
全セルの等価直列抵抗(ESR)は類似していた。
【0130】
未処理およびCl
2処理SWCNTアセンブリの両方から作られた電極を用いて組み立てたセルの30分漏洩電流は、AC電極を用いて組み立てたセルの漏洩電流に比べて優れていた(すなわち、より低かった)。塩素処理SWCNTセルは、非Cl
2処理セルに比べてわずかに優れた漏洩電流を示したが、その差は統計学的に無意味であるであろう。SWCNTセルの漏洩電流がはるかに低いことは、これらをAC系セルに比べて実質的に高い電圧で動作させることができることを示唆している。
【0131】
SWCNTセルは、非常に高い放電率を示し、ACセルについての約2〜3秒に比べて、約0.3〜0.4秒以下程度の完全容量放電時間を有し、これは5A/g電流まで保持された。さらに、ACセルはこの同一電流レベルまで完全容量を保持しなかった。このことは、SWCNTセルがACセルに比べて優れた電力性能を示したことを示している。
【0132】
SWCNTの出力密度は少なくとも100kW/kgと推定された。これは、約10kW/kg以下である典型的な市販されているAC系EDLCの出力密度より優れており、任意の現在市販されているEDLCの電力性能に少なくとも等しい。
【0133】
【表1】
【0134】
試験中の制限により、SWCNTセルの絶対完全容量放電時間および出力密度を決定することができなかった。これらの2つのパラメータについて、SWCNTセルは、試験装置の測定能力を超える電力性能を示した。
【0135】
キャパシタ装置のパルス電力性能の別の強力な指標は、複素インピーダンス位相角が45°に達する周波数である。周波数が高いほど、優れた性能を示す。SWCNT電極から組み立てたキャパシタは2.0〜2.9Hzの45°位相角周波数を示した一方で、ACに基づくキャパシタは0.5Hzの45°位相角周波数を示した。この性能メトリックについて、Cl
2処理および未処理SWCNTセルは同様に働いた。
【0136】
全体として、本発明のSWCNT電極は、パルス電力性能に関して、EDLC装置の標準的電極材料として現在使用されている市販の活性炭素より優れていた。
【0137】
<実施例9−SWCNTの凝集アセンブリを含む電池電極>
凝集炭素アセンブリを、実施例2に記載されている手順にしたがって調製する。SWCNTアセンブリは、直径約9cmおよび厚さ約40〜60μmである。
【0138】
適切な大きさおよび形状のセクションをアセンブリから切り抜き、Y.NuLiのMaterials Letters 62(2008)2092〜2095に記載されている方法を使用して、そのリチウムイオン電池の負極としての性能を試験する。
【0139】
試験方法は以下の必須のステップからなる。(1)凝集SWCNTアセンブリを試験電池セルに取り付ける、(2)セルを放電する、および(3)放電曲線から出力およびエネルギー密度を測定する。
【0140】
次いで、SWCNT負極を有するセルについてのデータを、他の型の負極材料を有する同様のセルのサンプリングから得られた同じデータと比較する。それによって、SWCNTアセンブリ系リチウムイオン電池負極の性能を、黒鉛、硬質炭素(すなわち、ダイアモンド状炭素)、チタン酸塩、ケイ素、ゲルマニウム、バインダーなどの他の材料で構成されたリチウムイオン電池負極または構造支持体を要する他のCNT系電極の性能と比較する。
【0141】
<実施例10−SWCNTの凝集アセンブリを含む燃料電池電極>
凝集炭素アセンブリを、実施例2に記載されている手順にしたがって調製する。SWCNTアセンブリは、直径約9cmおよび厚さ約40〜60μmである(側面計により測定)。
【0142】
SWCNTアセンブリの小片を、Micromeritics Instrument Corp.、Norcross、Georgiaにより製造されているモデルTriStar 3000機器を使用して、窒素吸着/脱着により分析する。アセンブリは、1680m
2/gのBET表面積および1.75cm
3/gの総脱着細孔容積を有する。アセンブリの密度は、寸法および重量測定により約0.5g/cm
3と決定される。それによって、アセンブリの空隙率は約88%と計算される。
【0143】
適切な大きさおよび形状のセクションをアセンブリから切り抜き、次いで、セクションを米国特許出願公開第2009/0015984A1号明細書に記載されている方法にしたがって白金金属粒子でコーティングする。
【0144】
SWCNTアセンブリのPtコーティングセクションを、B.Fangら、Electrochemistry Communications 11(2009)1139〜1141に記載されている方法を使用して、その燃料電池電極としての性能を評価する。次いで、SWCNTアセンブリ系電極を含む燃料電池のセル電圧および出力密度対電流密度挙動を、カーボンブラック、カーボン紙および/または炭素布系電極を含む標準的燃料電池の性能、ならびに他の潜在的代替電極材料を含む燃料電池の性能と比較する。
【0145】
<実施例11−トルエン分散液からのSWCNTの自立凝集アセンブリ>
SWCNTの液体溶媒中分散液を、トルエンをODCBの代わりに分散溶媒として使用し、SWCNT250mgをトルエン217.5g(約250ml)に分散させたことを除いて実施例1(ステップ1〜4)に記載されているのと同様の方法で調製した。結果として生じる混合物はコーティングまたはキャスティングに使用する準備ができた安定なSWCNT−トルエン分散液であった。
【0146】
SWCNT−トルエン分散液各々約43.5g(50ml)を、米国特許第6,395,331B1号明細書に記載されているように疎水性溶液で予め処理した5つの9cm直径ペトリ皿にゆっくり注ぎ込んだ。トルエンを50℃の真空オーブン(約0.25トル以下の圧力)中で約6時間の蒸発により除去した。次いで、乾燥SWCNTを含むペトリ皿を真空オーブンから取り出し、電気オーブン中200℃で3時間加熱し、次いで周囲温度に冷却した。5つの凝集自立SWCNTウエハーが得られた(
図5)。ウエハーは、皿から容易に取り外すことができ、ガラス表面への接着性を示さなかった。各ウエハーの厚さは、SEM横断面測定(
図6)により決定されるように、約19μmであった。
【0147】
<実施例12−トルエン懸濁液からのアルミニウム上SWCNTの凝集接着性フィルム>
SWCNTのトルエン中分散液を実施例11に記載されるように調製した。約25μmの厚さを有するアルミニウム箔をアセトンですすぎ、乾燥窒素ガス流で乾燥させて任意の表面汚染物質を除去した。9cmペトリ皿の底面および側面を覆うのに十分大きい箔の小片を、より光る側を上にしてこの皿の内側に置いた。箔を皿の底面および側面に押し付けることにより、箔を手で成形して、皿の内側に箔の裏打ちを作成した。第2の皿も同様に箔で裏打ちした。SWCNT−トルエン分散液各々約43.5g(50ml)を、2つのアルミニウム箔裏打ちペトリ皿にゆっくり注ぎ込んだ(
図7)。
【0148】
真空オーブン(約0.25トル以下の圧力)中50℃で6時間蒸発させることによりトルエンを除去した後、アルミニウム箔に接着した凝集SWCNTフィルムが形成した。フィルムは、乾燥後、または超高純度アルゴン(<2ppm酸素)中500℃で1時間フィルムを加熱した後のいずれも箔から剥離しなかった。
図8は、アルミニウム箔基板上に形成した凝集接着性SWCNTフィルムを示している。
図9は、両側が目に見えるように変形させた、アルミニウム箔基板上の単一凝集接着性SWCNTフィルムを示している。フィルムは変形後に剥離も接着性喪失もしなかった。
【0149】
<実施例13−凝集SWCNTアセンブリの電気化学インピーダンス分光法>
2つの凝集SWCNTアセンブリ(ウエハー)に電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定を行った。一方は、実施例12に記載されているように調製した、アルミニウム(Al)基板上の接着性SWCNTウエハーとした。他方は、分散溶媒として臭素を使用して、国際公開第2010/102250号に記載されているように調製し、その後、標準的工業法を使用してAl集電装置に結合させた自立SWCNTウエハーとした。両SWCNTウエハーは16.5±1.5μmの同様の厚さを有していた。
【0150】
10mHz〜0.1MHzの周波数範囲にわたる正弦波信号を用いて2VのDCバイアスでEIS測定を行った。結果を、
図10に示す、想像上のインピーダンス(Z’’)対実際のインピーダンス(Z’)のナイキストプロットで示した。典型的なナイキストプロットでは、最小Z’値(各データ曲線の左下)は、装置の等価直列抵抗(ESR)を表す。ESRは、SWCNT−Al界面の接触抵抗、電解液のバルク抵抗、およびAl自体の抵抗の組み合わせの結果である。
【0151】
後者2つのESRへの寄与が、類似の設計および配置の2つの装置についてほぼ同一であると仮定すると、ESRの差は、2つの装置間のSWCNT−Al界面の接触抵抗の差を表す。
【0152】
Al上の接着性SWCNTウエハーは、アルミニウムに結合した自立SWCNTウエハーについての0.70ΩのESRに比べて有意に低い0.36ΩのESRを示した。この例は、自立アセンブリを製造し、次いでこれらを金属に結合するよりむしろ、接着性凝集SWCNT(または他の炭素)アセンブリをアルミニウム(または他の金属)基板に直接適用することの明確な利点を証明している。すなわち、アセンブリと基板との間の接触抵抗は、接着性アセンブリを金属基板上に直接組み立てることにより減少した。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態を上記実施例に記載してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく種々の修正を行うことができることを認識するであろう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内にある。