(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のCAES発電装置には、熱媒タンクを複数設けることについては記載されておらず、これにより熱媒の温度を高く維持することについても考慮されていない。
【0007】
本発明は、複数の高温熱媒タンクを備えるため、高温の熱媒が低温の熱媒と混合することを防止できる圧縮空気貯蔵発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続され、需要先へ供給する電力を発電する発電機と、前記圧縮機で圧縮された空気と熱媒とで熱交換し、熱媒を加熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で熱交換した熱媒の温度を測定する温度センサと、前記第1熱交換器と流体的に接続され、前記第1熱交換器で熱交換して昇温した熱媒を温度別に貯蔵する複数の高温熱媒タンクと、前記第1熱交換器からいずれの前記複数の高温熱媒タンクに熱媒を供給するか切り替えるための高温蓄熱切替弁と、前記複数の高温熱媒タンクと流体的に接続され、前記複数の高温熱媒タンクから供給される熱媒と前記膨張機に供給される圧縮空気とで熱交換し、圧縮空気を加熱するための第2熱交換器と、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器と流体的に接続され、前記第2熱交換器で熱交換して降温した熱媒を貯蔵する低温熱媒タンクと、前記温度センサ及び前記高温蓄熱切替弁と電気的に接続され、前記温度センサで測定された温度に基づいて熱媒を温度別に貯蔵するために、前記第1熱交換器からいずれの前記高温熱媒タンクに熱媒を供給するか前記高温蓄熱切替弁を切り替える制御装置とを備える圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、複数の高温熱媒タンクを備えるため、高温の熱媒が低温の熱媒と混合することを防止できる。具体的には、第1熱交換器で昇温した熱媒の温度に基づいて高温蓄熱切替弁を切り替えることで、複数の高温熱媒タンクに温度別に熱媒を貯蔵しているため、高温熱媒タンクに貯蔵されている熱媒の温度を維持できる。
【0010】
前記第1熱交換器は、前記高温熱媒タンク及び前記第2熱交換器に対して流体的に接続され、前記制御装置に電気的に接続され、前記第1熱交換器から前記高温熱媒タンク又は前記第2熱交換器のいずれに熱媒を供給するか切り替える直接流入切替弁をさらに備え、前記制御装置は、前記圧縮機の圧縮と前記膨張機の膨張が同時に行われる場合に前記直接流入切替弁を切り替えて、前記第1熱交換器から前記第2熱交換器に熱媒を直接供給することが好ましい。
【0011】
これにより、高温熱媒タンクを介することなく、第1熱交換器から第2熱交換器に熱媒を直接供給できるため、高温熱媒タンクで熱媒を貯蔵している間に温度が低下して熱エネルギーの損失が生じることを防止できる。特に、再生可能エネルギーの1時間未満程度の変動である短周期変動を平準化する場合、圧縮機と膨張機が同時に駆動されることが多く、この場合熱媒の利用待機時間が短い又はゼロであるため有効である。さらに、直接流入切替弁の切り替えで、熱媒を第1熱交換器から直接第2交換器に供給できるため、従来と同様の装置を使用でき、大掛かりな装置改良を必要としないため、コストアップ及び装置の大型化を防止できる。ここで、「直接」とは、高温熱媒タンクを介することなく第1熱交換器から第2熱交換器に熱媒が供給されることを示す。
【0012】
複数の前記第2熱交換器が前記膨張機に対して直列に流体的に接続され、前記高温熱媒タンクからいずれの前記第2熱交換器に熱媒を供給するか切り替える熱交換切替弁をさらに備え、前記制御装置は、前記熱交換切替弁を切り替えて、前記高温熱媒タンクに温度別に貯蔵された熱媒のうち温度の低いものから順に上流側の前記第2熱交換器に供給することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第2熱交換器において、低温の熱媒から高温の熱媒の順に圧縮空気と熱交換させることで、圧縮空気の温度を低下させることなく順に上昇できるため、高温の熱媒を有効に利用できる。
【0014】
前記高温熱媒タンクからいずれの前記第2熱交換器に熱媒を供給するか切り替える熱交換切替弁をさらに備え、前記膨張機は1段目膨張機本体と2段目膨張機本体を備え、前記制御装置は、前記熱交換切替弁を切り替えて、前記1段目膨張機本体と前記2段目膨張機本体のうち、p−h線図上の等エントロピー線の傾斜が小さい方に対して流体的に接続された前記第2熱交換器に、前記高温熱媒タンクに温度別に貯蔵された熱媒のうち温度の高い熱媒を供給することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、1段目膨張機と2段目膨張機本体のうちエントロピー線の傾斜が小さい方に対して設置された第2熱交換器に、高温の熱媒を供給することで効率よく発電できる。エントロピー線の傾斜が小さい方の膨張機本体の方が同じ圧力の低下に対してもエンタルピーの減少が大きいため、より大きな熱エネルギーを供給する必要があるためである。
【0016】
前記第1熱交換器から前記高温熱媒タンク又は前記低温熱媒タンクのうちのいずれに熱媒を供給するか切り替えるための低温熱媒切替弁をさらに備え、前記制御装置は、前記温度センサ及び前記低温熱媒切替弁と電気的に接続され、前記温度センサで測定された前記第1熱交換器において圧縮熱を回収した熱媒の温度が所定の温度以下である場合、前記低温熱媒切替弁を切り替えて、前記低温熱媒タンクに熱媒を供給することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、低温熱媒切替弁を使用して高温の熱媒と低温の熱媒の混合を防止している。具体的には、第1熱交換器から高温熱媒タンクに供給される熱媒により、高温熱媒タンクに蓄熱している熱媒の温度を低下させることがないため、熱エネルギーの損失を防止できる。
【0018】
また、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続され、需要先へ供給する電力を発電する発電機と、前記圧縮機で圧縮された空気と熱媒とで熱交換し、熱媒を加熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で熱交換した熱媒の温度を測定する温度センサと、前記第1熱交換器と流体的に接続され、前記第1熱交換器で昇温した熱媒を貯蔵する高温熱媒タンクと、前記高温熱媒タンクと流体的に接続され、前記高温熱媒タンクから供給される熱媒と前記膨張機に供給される圧縮空気とで熱交換し、圧縮空気を加熱する第2熱交換器と、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器と流体的に接続され、前記第2熱交換器で降温した熱媒を貯蔵する低温熱媒タンクと、前記第1熱交換器から前記高温熱媒タンク又は前記低温熱媒タンクのうちのいずれに熱媒を供給するか切り替えるための低温熱媒切替弁と、前記温度センサ及び前記低温熱媒切替弁と電気的に接続され、前記温度センサで測定された前記第1熱交換器において圧縮熱を回収した熱媒の温度が所定の温度以下である場合、前記低温熱媒切替弁を切り替えて、前記低温熱媒タンクに熱媒を供給する、制御装置とを備える圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の高温熱媒タンクを備えるため、高温の熱媒が低温の熱媒と混合することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1は、圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置2の概略構成図を示している。このCAES発電装置2は、再生可能エネルギーを利用して発電する場合に、需要先である電力系統4への出力変動を平準化するとともに、電力系統4における需要電力の変動に合わせた電力を出力する。
【0023】
図1及び
図2を参照して、CAES発電装置2の構成を説明する。
【0024】
CAES発電装置2は、空気経路と熱媒経路を備える。空気経路には、主に圧縮機6と、蓄圧タンク8と、膨張機10とが設けられており、これらが空気配管14により流体的に接続され、その内部には空気が流れている(
図1の破線参照)。熱媒経路には、主に第1熱交換器16と、熱媒タンク18と、第2熱交換器22とが設けられており、これらが熱媒配管24により流体的に接続され、その内部には熱媒が流れている(
図1の実線参照)。
【0025】
まず、
図1を参照して空気経路について説明する。空気経路では、吸い込まれた空気は、複数の圧縮機6で圧縮され、蓄圧タンク8に貯蔵される。蓄圧タンク8に貯蔵された圧縮空気は複数の膨張機10に供給され、発電機36の発電に使用される。
【0026】
個々の圧縮機6は、モータ(電動機)26を備える。個々のモータ26は、圧縮機6に機械的に接続され、互いに電気的に並列に接続されている。再生可能エネルギーにより発電された電力はモータ26に供給され、この電力によりモータ26が駆動され、圧縮機6が作動する。圧縮機6の吐出口6bは、空気配管14を通じて蓄圧タンク8に流体的に接続されている。圧縮機6は、モータ26により駆動されると、吸込口6aより空気を吸引し、圧縮して吐出口6bより吐出し、蓄圧タンク8に圧縮した空気を圧送する。圧縮機6は、互いに流体的に並列に複数台接続されており、本実施形態ではその数は3台である。ただし、圧縮機6の数はこれに限定されず、1台以上であればよい。
【0027】
蓄圧タンク8は、圧縮機6から圧送された圧縮空気を貯蔵する。従って、蓄圧タンク8には、圧縮空気としてエネルギーを蓄積できる。蓄圧タンク8は、空気配管14を通じて、膨張機10に流体的に接続されている。従って、蓄圧タンク8で貯蔵された圧縮空気は、膨張機10に供給される。蓄圧タンク8から個々の膨張機10に延びる複数の空気配管14には、流量センサ28a〜28c及び切替弁30a〜30cがそれぞれ設けられており、膨張機10に供給される空気量を測定し、必要に応じて切替弁30a〜30cを開閉し、膨張機10への圧縮空気の供給を許容又は遮断できる。
【0028】
膨張機10は、2段型であり、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12を備える。以降、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12を合わせて、単に膨張機10という場合がある。1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12は、共に発電機36を備える。複数台の発電機36はそれぞれ膨張機10と機械的に接続されると共に、互いに電気的に並列に接続されている。吸込口10aから圧縮空気を供給された膨張機10は、供給された圧縮空気により作動し、発電機36を駆動する。発電機36は外部の電力系統4に電気的に接続されており(
図1の1点鎖線参照)、発電した電力は需要先である電力系統4に供給される。また、膨張機10で膨張された空気は、吐出口10bから外部に排出される。膨張機10は、互いに流体的に並列に複数台接続されており、本実施形態ではその数は3台である。ただし、膨張機10の数はこれに限定されず、1台以上であればよい。
【0029】
次に、
図1を参照して熱媒経路について説明する。熱媒経路では、圧縮機6で発生した熱を第1熱交換器16で熱媒に回収している。そして、熱回収した熱媒を熱媒タンク18(第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20)に貯蔵し、第2熱交換器22において膨張機10で膨張する前の圧縮空気に熱を戻している。第2熱交換器22において降温した熱媒は熱媒タンク18(低温熱媒タンク21)に供給される。そして、低温熱媒タンク21から第1熱交換器16に再び熱媒が供給され、このように熱媒は循環している。ここで、熱媒の種類は特に限定されておらず、例えば水、油などであってもよい。
【0030】
第1熱交換器16は、圧縮機6と蓄圧タンク8との間の空気配管14に設けられている。従って、この空気配管14内の圧縮空気と、熱媒配管24内の熱媒との間で熱交換し、圧縮機6による圧縮で発生した圧縮熱を熱媒に回収している。即ち、第1熱交換器16では、圧縮空気の温度は低下し、熱媒の温度は上昇する。ここで昇温した熱媒は、熱媒配管24を通じて熱媒タンク18(第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20)に供給される。
【0031】
第1熱交換器16から熱媒タンク18(第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20)までの熱媒配管24には、第1熱交換器16で熱交換して昇温した熱媒の温度を測定するための温度センサ29a〜29cが設けられている。
【0032】
熱媒タンク18は、第1高温熱媒タンク19と、第2高温熱媒タンク20と、低温熱媒タンク21とを備える。各熱媒タンク19,20,21には、図示しない残量センサが設置され、貯蔵されている熱媒量を検出できる。例えば、残量センサは重量センサ等であってもよい。第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20には、第1熱交換器16で昇温した熱媒が温度別に貯蔵されている。より高い温度の熱媒を貯蔵するものが第1高温熱媒タンク19であり、第1高温熱媒タンク19の熱媒より低い温度の熱媒を貯蔵するものが第2高温熱媒タンク20である。第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20には、それぞれ温度センサ29d,29eが設けられており、内部の熱媒の温度を測定できる。第1熱交換器16から第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20までの熱媒配管24(高温蓄熱切替ライン24a)には、高温蓄熱切替弁31a,31bが設けられている。高温蓄熱切替弁31a,31bは、高温蓄熱切替ライン24aを通じて第1高温熱媒タンク19又は第2高温熱媒タンク20のいずれに熱媒を貯蔵するかを切り替えるためのものである。第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20に貯蔵された熱媒は、熱媒配管24を通じて第2熱交換器22に供給される。
【0033】
第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20から第2熱交換器22に延びる熱媒配管24には、熱交換切替弁32a〜32fが設けられている。熱交換切替弁32a〜32fは、第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20のいずれから、第2熱交換器22に熱媒を供給するか切り替えるためのものである。
【0034】
このように、第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20を備えるため、高温の熱媒が低温の熱媒と混合することを防止できる。具体的には、第1熱交換器16で昇温した熱媒の温度に基づいて高温蓄熱切替弁31a,31bを切り替えることで、第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20に温度別に熱媒を貯蔵しているため、特に第1高温熱媒タンク19に貯蔵されている熱媒の温度を維持できる。本実施形態では、高温熱媒タンク19,20は2基であったが、その数は限定されず、3基以上であってもよい。
【0035】
第2熱交換器22は、蓄圧タンク8と膨張機10との間の空気配管14に設けられている。また、1段目膨張機本体11と2段目膨張機本体12との間にも設けられている。従って、蓄圧タンク8から1段目膨張機本体11に供給される圧縮空気及び1段目膨張機本体11と2段目膨張機本体12間の圧縮空気と、熱媒配管24内の熱媒との間で熱交換し、膨張機10による膨張の前に圧縮空気を加熱している。即ち、第2熱交換器22では、圧縮空気の温度は上昇し、熱媒の温度は低下する。ここで降温した熱媒は、熱媒配管24を通じて低温熱媒タンク21に供給される。
【0036】
第2熱交換器22は、本実施形態の設置方法以外にも様々な設置方法が考えられる。
図2A〜2Cは、第2熱交換器22の設置例である。
図2Aは、本実施形態と同様に、2段型の膨張機10のうち、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12のそれぞれに対して第2熱交換器22が1つずつ流体的に接続されている場合である。
図2Bは、本実施形態とは異なり単段型の膨張機10に1つの第2熱交換器22が流体的に接続されている場合である。
図2Cは、2段型の膨張機10のうち、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12のそれぞれに対して第2熱交換器22が2つずつ直列に流体的に接続されている場合である。これに加えて、第2熱交換器22は、3つ以上が直列に流体的に接続されていてもよい。
【0037】
図3は、2段型の膨張機のp−h線図である。縦軸は圧力、横軸は比エンタルピーを表す。図中、状態P1から状態P2は第2熱交換器22での加熱過程を示し、状態P2から状態P3は1段目膨張機本体11での膨張仕事過程を示している。また、状態P3から状態P4は第2熱交換器22での加熱過程を示し、状態P4から状態P5は2段目膨張機本体12での膨張仕事過程を示している。
図3では、状態P2から状態P3及び状態P4から状態P5は断熱過程を想定した等エントロピー変化である。1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12(
図2A及び
図2C参照)における膨張仕事過程を比較すると、状態P4から状態P5の等エントロピー線の傾斜量が状態P2から状態P3の等エントロピー線の傾斜量よりも小さいことから、より外部にしている仕事量が大きい。従って、
図3の場合には状態P3から状態P4における加熱量を状態P1から状態P2の加熱量よりも大きくすることが系の効率化の観点からは好ましい。
【0038】
低温熱媒タンク21は、主に第2熱交換器22で熱交換して降温した熱媒を貯蔵する。従って、低温熱媒タンク21内の熱媒は、通常、第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20内の熱媒よりも温度が低い。低温熱媒タンク21に貯蔵されている熱媒は、熱媒配管24を通じて第1熱交換器16に供給される。
【0039】
熱媒は、低温熱媒タンク21の下流の熱媒配管24に設置されたポンプ38により熱媒経路を循環されている。ポンプ38の下流には流量センサ28eが設けられ、ポンプ38による流量の増減を検出できる。ただし、ポンプ38の位置はこれに限定されず、熱媒経路の任意の位置に配置してよい。
【0040】
また、本実施形態のCAES発電装置2は、第1熱交換器16と第2熱交換器22が高温熱媒タンク19,20を介して流体的に接続されていることに加えて、高温熱媒タンク19,20を介することなく流体的に接続されてもいる。このため、第1熱交換器16から第2熱交換器22への熱媒の流動が高温熱媒タンク19,20を介するか否かを切り替えるための直接流入切替弁33a,33bが第2熱交換器22及び高温熱媒タンク19,20の上流の熱媒配管24(直接流入切替ライン24b)に設けられている。また、第1熱交換器16から第2熱交換器22に直接熱媒が流入する直接流入切替ライン24bには流量センサ28dが設けられている。
【0041】
また、本実施形態のCAES発電装置2は、第1高温熱媒タンク19と、低温熱媒タンク21とがタンク間熱媒ライン24cにより流体的に接続されている。同様に、第2高温熱媒タンク20と、低温熱媒タンク21とがタンク間熱媒ライン24cにより流体的に接続されている。これらのタンク間熱媒ライン24cには、タンク間遮断弁34が設けられている。通常運転時は、タンク間遮断弁34によりこれらの間での熱媒の授受は遮断されているが、後述するCAES発電装置2の起動時にはタンク間遮断弁34が開弁され熱媒の授受が可能となる場合がある。同様に、第1高温熱媒タンク19と第2高温熱媒タンク20との間でも熱媒の授受が可能となる場合がある。
【0042】
また、本実施形態のCAES発電装置2は、第1熱交換器16から低温熱媒タンク21に熱媒を供給可能に、流体的に接続されている。このため、高温熱媒タンク19,20、又は、前記低温熱媒タンク21のうちのいずれに前記熱媒を供給するか切り替えるための低温熱媒切替弁35a〜35fが、第1熱交換器16の下流の熱媒配管24に設けられている。
【0043】
以上により、CAES発電装置2の熱媒経路は構成されている。
【0044】
また、CAES発電装置2は、制御装置40を備える。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築されている。制御装置40は、少なくとも個々の弁30a〜35fに電気的に接続されている。個々の弁30a〜35fの動作は制御装置40で制御される。流量センサ28〜28e、温度センサ29a〜29e、及び熱媒タンク18の図示しない残量センサは、制御装置40に測定値を出力する。制御装置40は、これらの測定値に基づいてCAES発電装置2を制御する。
【0045】
次に、CAES発電装置2の制御方法について説明する。
【0046】
本実施形態のCAES発電装置2は、圧縮空気の貯蔵(充電)と圧縮空気を使用した発電(放電)を同時に行う充放電同時の場合と、別々に行う充放電別々の場合の2つの制御方法を有する。ここでは蓄圧タンク8に圧縮空気を貯蔵することを充電といい、蓄圧タンク8の圧縮空気を使用して発電機36で発電することを放電という。充放電同時は、再生可能エネルギーによる発電が短周期変動する場合によく使用される。充放電別々は、再生可能エネルギーによる発電が長周期変動する場合によく使用される。長周期・短周期を分ける明確な定義は無いが、長周期は数時間から数日程度の変動である。一方、短周期は数分から1時間未満程度の変動である。具体的には、例えば太陽光を利用した発電の場合、長周期の出力変動要因は日中と夜間の違いである。短周期の出力変動要因は一時的に太陽が雲に隠れる場合である。一方、風力を利用した発電の場合、長周期の出力変動は強風や無風による発電停止の場合であり、短周期の出力変動は風速の変動による場合である。
【0047】
図4を参照して、運転が開始されると(ステップS4−1)、充放電を同時に行うか否かで制御方法が分かれる(ステップS4−2)。これは、用途に応じてユーザが選択可能としてもよいし、再生可能エネルギーの長周期変動又は短周期変動に応じて決定されてもよい。充放電同時の場合(ステップS4−2)において、需要電力が発電量よりも大きく、高温熱媒タンク19,20の全熱媒が必要な場合(ステップS4−3)、処理Aを行う(ステップS4−4)。そうでない場合(ステップS4−3)、必要分の熱媒と余剰分の熱媒を分離し(ステップS4−5)、必要分の熱媒に対しては処理Aを行い(ステップS4−4)、余剰分の熱媒に対しては処理Bを行う(ステップS4−6)。必要分の熱媒とは、電力系統4から要求される需要電力量を、発電機36に発電可能にさせる熱媒量を表す。熱媒は流量センサ28dの測定値に基づいて分離され、分離は処理A及び処理Bで後述するように直接流入切替弁33a,33bを切り替えて行われる。これらの処理が完了すると、再びステップS4−2に戻り、処理を繰り返す。
【0048】
図5を参照して、処理Aが開始されると(ステップS5−1)、直接流入切替弁33a,33bを切り替え(ステップS5−2)、即ち直接流入切替弁33aを開き、直接流入切替弁33bを閉じ、第1熱交換器16から第2熱交換器22に熱媒配管24を通じて熱媒を直接供給する(ステップS5−3)。そして第2熱交換器22で圧縮空気と熱媒との間で熱交換が行われる(ステップS5−4)。第2熱交換器22で熱交換して温度が低下した熱媒は、熱媒配管24を通じて低温熱媒タンク21に供給され貯蔵される(ステップS5−5)。そして処理Aは終了する(ステップS5−6)。
【0049】
これにより、高温熱媒タンク19,20を介することなく、第1熱交換器16から第2熱交換器22に熱媒を直接供給できるため、高温熱媒タンク19,20で熱媒を貯蔵している間に温度が低下して熱エネルギーの損失が生じることを防止できる。特に、再生可能エネルギーの1時間未満程度の変動である短周期変動を平準化する場合、圧縮機と膨張機が同時に駆動されることが多く、この場合熱媒の利用待機時間が短い又はゼロであるため有効である。さらに、直接流入切替弁の切り替えで、熱媒を第1熱交換器から直接第2交換器に供給できるため、従来と同様の装置を使用でき、大掛かりな装置改良を必要としないため、コストアップ及び装置の大型化を防止できる。ここで、「直接」とは、高温熱媒タンク19,20を介することなく第1熱交換器16から第2熱交換器22に熱媒が供給されることを示す。
【0050】
図6を参照して、処理Bが開始されると(ステップS6−1)、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第1高温熱媒タンク19内の熱媒温度Th1よりも低く(ステップS6−2)、さらに第2高温熱媒タンク20内の熱媒温度Th2よりも低い場合(ステップS6−3)、低温熱媒切替弁35a〜35fを切り替え(ステップS6−4)、即ち低温熱媒切替弁35a〜35cを閉じ、低温熱媒切替弁35d〜35fを開き、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を低温熱媒タンク21に供給し貯蔵する(ステップS6−5)。また、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第1高温熱媒タンク19内の熱媒温度Th1よりも低く(ステップS6−2)、さらに第2高温熱媒タンク20内の熱媒温度Th2以上である場合(ステップS6−3)、高温蓄熱切替弁31a,31bを切り替え(ステップS6−6)、即ち高温蓄熱切替弁31bを開き、高温蓄熱切替弁31aを閉じ、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を第2高温熱媒タンク20に供給し貯蔵する(ステップS6−7)。また、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第1高温熱媒タンク19内の熱媒温度Th1以上である場合、高温蓄熱切替弁31a,31bを切り替え(ステップS6−8)、即ち高温蓄熱切替弁31aを開き、高温蓄熱切替弁31bを閉じ、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を第1高温熱媒タンク19に供給し貯蔵する(ステップS6−8)。第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20に貯蔵されている熱媒は、熱媒配管24を通じて第2熱交換器22に供給される。このとき第2熱交換器が膨張機10に対して複数設けられている場合(ステップS6−10)、処理IIが行われ(ステップS6−11)、そうでない場合(ステップS6−10)、処理Iが行われる(ステップS6−12)。これらの処理が完了すると、処理Bは終了する(ステップS6−13)。
【0051】
このように、低温熱媒切替弁35a〜35fを使用して高温の熱媒と低温の熱媒の混合を防止している。具体的には、第1熱交換器16から高温熱媒タンク19,20に供給される熱媒により、高温熱媒タンク19,20に蓄熱している熱媒の温度を低下させることがないため、熱エネルギーの損失を防止できる。また、高温蓄熱切替弁31a,31bを使用して第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20に温度別に熱媒を貯蔵できる。
【0052】
図7を参照して、処理Iは、膨張機10に対して第2熱交換器22が1つのみ設置されている場合である(
図2B参照)。処理Iが開始されると(ステップS7−1)、需要電力が発電量よりも大きく、高温熱媒タンク19,20の全熱媒が必要な場合(ステップS7−2)、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS7−3)、第1高温熱媒タンク19及び第2高温熱媒タンク20の熱媒を第2熱交換器22に供給する(ステップS7−4)。そして第2熱交換器22で熱交換する(ステップS7−5)。また、そうでない場合(ステップS7−2)であって、第2高温熱媒タンク20が空である場合(ステップS7−6)、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS7−7)、第1高温熱媒タンク19の熱媒を第2熱交換器22に供給する(ステップS7−8)。そして第2熱交換器22で熱交換する(ステップS7−9)。また、第2高温熱媒タンク20が空でない場合(ステップS7−6)、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS7−10)、第2高温熱媒タンク20の熱媒を第2熱交換器22に供給する(ステップS7−11)。そして第2熱交換器22で熱交換する(ステップS7−12)。その後、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS7−13)、第1高温熱媒タンク19の熱媒を第2熱交換器22に供給する(ステップS7−14)。そして第2熱交換器22で熱交換する(ステップS7−15)。いずれの場合でも第2熱交換器22で熱交換して温度が低下した熱媒を低温熱媒タンク21に貯蔵する(ステップS7−6)。そして処理Iを終了する(ステップS7−17)。
【0053】
図8を参照して、処理IIが開始されると(ステップS8−1)、第2熱交換器が複数直列に設置されている場合(ステップS8−2)、処理II−2を実行し(ステップS8−3)、そうでない場合(ステップS8−2)、処理II−1が実行される(ステップS8−4)。これらの処理が完了すると処理IIを終了する(ステップS8−5)。
【0054】
図9を参照して、処理II−1は、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12に対して第2熱交換器22が1つずつ設置されている場合である(
図2A参照)。処理II−1が開始されると(ステップS9−1)、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS9−2)、第1高温熱媒タンク19内の熱媒を等エントロピー線の傾斜が小さい方(
図3参照)の膨張機10に対して設置された高温側第2熱交換器22aに供給し、第2高温熱媒タンク20内の熱媒を等エントロピー線の傾斜が大きい方(
図3参照)の膨張機10に対して設置された低温側第2熱交換器22bに供給する(ステップS9−3)。そして高温側第2熱交換器22a及び低温側第2熱交換器22bで熱交換する(ステップS9−4)。高温側第2熱交換器22a及び低温側第2熱交換器22bで熱交換した熱媒は、熱媒配管24を通じて低温熱媒タンク21に供給され貯蔵される(ステップS9−5)。そして処理II−1を終了する(ステップS9−6)。
【0055】
このように、1段目膨張機本体11と2段目膨張機本体12のうちエントロピー線の傾斜が小さい方に対して設置された第2熱交換器22に、高温の熱媒を供給することで効率よく発電できる。エントロピー線の傾斜が小さい方の膨張機本体の方が同じ圧力の低下に対してもエンタルピーの減少が大きいため、より大きな熱エネルギーを供給する必要があるためである。
【0056】
図10を参照して、処理II−2は、1段目膨張機本体11及び2段目膨張機本体12に対して第2熱交換器22が2つずつ直列に設置されている場合である(
図2C参照)。処理II−2が開始されると(ステップS10−1)、熱交換切替弁32a〜32fを切り替え(ステップS10−2)、第2高温熱媒タンク20内の熱媒を上流側の低温側第2熱交換器22bに供給し、第1高温熱媒タンク19内の熱媒を下流側の高温側第2熱交換器22aに供給する(ステップS10−3)。そして低温側第2熱交換器22bで熱交換し(ステップS10−4)、高温側第2熱交換器22aで熱交換する(ステップS10−5)。高温側第2熱交換器22a及び低温側第2熱交換器22bで熱交換して温度が低下した熱媒は低温熱媒タンク21に供給され貯蔵される(ステップS10−6)。そして処理II−2を終了する(ステップS10−7)。
【0057】
このように、第2熱交換器22において、低温の熱媒から高温の熱媒の順に圧縮空気と熱交換させることで、圧縮空気の温度を低下させることなく順に上昇できるため、高温の熱媒を有効に利用できる。また、第2熱交換器22が3つ以上、直列に流体的に接続されている場合でも、同様に低温の熱媒から高温の熱媒の順に圧縮空気と熱交換させればよい。
【0058】
また、本実施形態のCAES発電装置2は、起動時に最適な制御を行っている。
【0059】
図11を参照して、CAES発電装置2が起動されると(ステップS11−1)、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第1高温熱媒タンク19内の熱媒温度Th1よりも高い場合(ステップS11−2)、タンク間遮断弁34を開弁し(ステップS11−3)、第1高温熱媒タンク19内の熱媒を低温熱媒タンク21に移動させる(ステップS11−4)。そして、第1高温熱媒タンク19内の熱媒を空にし(ステップS11−5)、タンク間遮断弁34を閉弁する(ステップS11−6)。そして高温蓄熱切替弁31a,31bを切り替え(ステップS11−7)、即ち高温蓄熱切替弁31aを開き、高温蓄熱切替弁31bを閉じ、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を第1高温熱媒タンク19に供給し貯蔵する(ステップS11−8)。また、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第1高温熱媒タンク19内の熱媒温度Th1以下である場合(ステップS11−2)であって、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第2高温熱媒タンク20内の熱媒温度Th2よりも高い場合(ステップS11−9)、高温蓄熱切替弁31a,31bを切り替え(ステップS11−10)、即ち高温蓄熱切替弁31bを開き、高温蓄熱切替弁31aを閉じ、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を第2高温熱媒タンク20に供給し貯蔵する(ステップS11−11)。また、第1熱交換器16で熱交換した熱媒の温度T1が第2高温熱媒タンク20内の熱媒温度Th2以下である場合(ステップS11−9)、低温熱媒切替弁35a〜35fを切り替え(ステップS11−12)、即ち低温熱媒切替弁35a〜35cを閉じ、低温熱媒切替弁35d〜35fを開き、第1熱交換器16で熱交換した熱媒を低温熱媒タンク21に供給し貯蔵する(ステップS11−13)。そして通常運転に移行する(ステップS11−14)。
【0060】
これにより、起動時、長時間放置されて装置全体が大気温度となり、第1高温熱媒タンク19に低温の熱媒が存在している場合でも、タンク間遮断弁34を使用してこれらの低温熱媒と、圧縮熱を回収した高温の熱媒とが混合されることを防止できる。そして高温蓄熱切替弁31a,31bを使用して温度別に高温熱媒タンク19,20に熱媒を貯蔵できる。従って、高温熱媒タンク19,20に蓄熱している熱媒の温度を低下させることがないため、熱エネルギーの損失を防止できる。本実施形態では、
図11のステップS11−2からステップS11−5において、所定の条件の下、第1高温熱媒タンク19内の熱媒を低温熱媒タンク21に移動させているが、熱媒の移動はこれに限定されない。即ち、例えば第1高温熱媒タンク19内の熱媒を第2高温熱媒タンク20に移動させて第1高温熱媒タンク19を空にしてもよい。
【0061】
以上により、通常運転時及び起動時において最適な制御が可能である。また通常運転時においては、充放電同時及び充放電別々の場合の制御方法を備えるため、短周期変動及び長周期変動に対応可能である。