(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1〜5を用いて、第1実施形態に係るマイクロニードル・アレイ10の構造を説明する。マイクロニードル・アレイ10は、皮膚に刺さる複数のマイクロニードル11の集合であり、任意の支持面上に配置される。本実施形態では、マイクロニードル・アレイ10はシート状のマイクロニードル・デバイス1の一部である。
【0022】
マイクロニードル・デバイス1は、皮膚を穿刺することで活性成分を経皮投与するための器具である。このマイクロニードル・デバイス1は、円形のシート20を打ち抜いて多数のマイクロニードル11を形作り、そのマイクロニードル11をシート面から斜め方向に立ち上げることで出来上がる。
図4に示すように、すべてのマイクロニードル11は主面(支持面)20a側に立ち上げられる。各マイクロニードル11と主面20aとの成す角度(すなわち、傾斜角度)は、鋭角であれば何度でもよい。主面20aはマイクロニードル・デバイス1の使用時に皮膚と向かい合う面である。シート20の裏面20bは主面20aの裏側であって、マイクロニードル・デバイス1の使用時に、穿刺するために指又は任意の補助器具が触れる面である。
【0023】
シート20及びマイクロニードル11の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタラート(PET)、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、または生体吸収性素材のいずれかによりシート20及びマイクロニードル11を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてシート20およびマイクロニードル11を作製してもよい。
【0024】
マイクロニードル・アレイ10はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば、薬液でそのシートを打ち抜くことで多数のマイクロニードル11を形成し、そのマイクロニードルを斜め方向に起こすことでマイクロニードル・アレイ10を形成することができる。シートが非金属であれば、レーザーでそのシートを打ち抜くことで多数のマイクロニードル11を形成し、金属シートの場合と同様にそのマイクロニードル11を起こせばよい。これらのようにエッチングを用いる場合には、各マイクロニードル11の周囲に空隙が生ずる。もちろん、エッチング以外の任意の手法によりマイクロニードル・アレイ10を形成してもよい。
【0025】
シート20の寸法は限定されず、使用目的や使用部位などに応じて任意に設定してよい。例えば、シート20の径の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、径の上限は生体の大きさを考慮して定められる。例えば、径の下限は0.1cmでも1cmでもよく、径の上限は60cm、50cm、30cm、または20cmでもよい。本実施形態ではシート20を打ち抜くことでマイクロニードル11を形成するので、シート20の厚さはマイクロニードル11の穿刺性能を考慮して定められる。例えば、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。
【0026】
マイクロニードル11に関するパラメータも限定されない。例えば、マイクロニードル11の長さの下限は10μmでも100μmでもよく、その長さの上限は10000μmでも1000μmでもよい。ここで、マイクロニードル11の長さとは、マイクロニードル11の底辺(主面20aから立ち上がる根元の部分)から頂部までの距離である。上記の通り、本実施形態ではマイクロニードル11の厚さはシート20の厚さに依存する。マイクロニードル11の密度の下限は0.05本/cm
2でも1本/cm
2でもよく、その密度の上限は10000本/cm
2でも5000本/cm
2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数及び面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
【0027】
図1〜3に示すように、マイクロニードル・アレイ10は、それぞれがシート20の径方向に沿って延びる複数の列12の集合である。各列12は複数のマイクロニードル11から成る。複数の列12はシート20の中心付近から放射状に延びている。本実施形態では隣り合う2列の成す角度がすべて30°であるが、この角度は限定されるものではない。例えば、その角度は10°、15°、45°、60°、90°、120°、あるいは180°であってもよい。また、その角度は不均一であってもよい。
【0028】
マイクロニードル・アレイ10の全体を見ると、すべてのマイクロニードル11が向く方向は、時計回り又は反時計回りの方向に統一される。本実施形態では、マイクロニードル・デバイス1を裏面20b側から見ると、マイクロニードル・アレイ10は全体として時計回りの方向を向いている。一つの列12内にある複数のマイクロニードル11の先端はすべて同じ方向を向いている。
図5に示す矢印Da〜Dlは各列12のマイクロニードル11の先端方向を示している。これらの矢印からわかるように、任意の二列について、一方の列(第1の列)12内のマイクロニードル(第1のマイクロニードル)11の先端が向く方向(第1の方向)は、他方の列(第2の列)12内のマイクロニードル(第2のマイクロニードル)11の先端が向く方向(第2の方向)とは異なる。なお、マイクロニードル11の先端方向が互いに異なる二列は少なくとも一組あればよく、したがって、ある特定の複数列についてマイクロニードル11の先端方向が同じであってもよい。
【0029】
マイクロニードル・アレイ10におけるマイクロニードル11の長さは均一でなくてもよい。例えば、シート20の周縁部に位置するマイクロニードル11よりもシート20の中心部に位置するマイクロニードル11の方が長くてもよい。この更なる変形として、それぞれの列12において、シート20の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル11が次第に長くなっていくように個々のマイクロニードル11が形成されてもよい。あるいは、シート20の周縁部に位置するマイクロニードル11よりもシート20の中心部に位置するマイクロニードル11の方が短くてもよい。この更なる変形として、それぞれの列12において、シート20の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル11が次第に短くなっていくように個々のマイクロニードル11が形成されてもよい。
【0030】
マイクロニードル・アレイ10において、マイクロニードル11と主面20aとの成す角度(すなわち、傾斜角度)は均一でなくてもよい。例えば、シート20の周縁部に位置するマイクロニードル11よりもシート20の中心部に位置するマイクロニードル11の方が、傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列12において、シート20の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル11の傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル11が形成されてもよい。上記のように個々のマイクロニードル11の長さを異ならせる場合には、マイクロニードル11の高さが同じかまたはほぼ同じになるように、個々のマイクロニードル11の傾斜角度を設定してもよい。ここで、マイクロニードル11の高さとは、主面20aからマイクロニードル11の頂部までの距離である。
【0031】
マイクロニードル・アレイ10において、マイクロニードル11の長さおよび傾斜角度の双方が均一でなくてもよい。例えば、シート20の周縁部に位置するマイクロニードル11よりもシート20の中心部に位置するマイクロニードル11の方が、長さおよび傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列12において、シート20の周縁部から中心部に進むに従ってマイクロニードル11の長さおよび傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル11が形成されてもよい。あるいは、シート20の周縁部に位置するマイクロニードル11よりもシート20の中心部に位置するマイクロニードル11の方が、短くかつ傾斜角度が大きくてもよい。この更なる変形として、それぞれの列12において、シート20の周縁部から中心部に進むに従って、マイクロニードル11が短くなる一方で傾斜角度が次第に大きくなっていくように個々のマイクロニードル11が形成されてもよい。
【0032】
上述した例のように、シート20の周縁部におけるマイクロニードル11とシート20の中心部におけるマイクロニードル11との間で長さまたは傾斜角度を変えることで、シート20の中心部に位置するマイクロニードル11をより確実に皮膚に刺すことができる。
【0033】
個々のマイクロニードル11の先端は、該マイクロニードル11の回転方向を示す仮想円の接線方向に向いてもよい。
図2,3に示す例はその一態様である。あるいは、個々のマイクロニードル11の先端は、その接線方向よりもシート20の中心側の方に向いてもよい。この場合には、穿刺時に個々のマイクロニードル11に掛かる抵抗を減らすことができる。
【0034】
次に、
図6〜10を用いて、マイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。
【0035】
マイクロニードル・デバイス1を使う際の活性成分の準備方法は限定されない。例えばその準備方法として、マイクロニードル・デバイス1自体に予め活性成分をコーティングしておく手法と、マイクロニードル・デバイス1を皮膚上に置く前に、その皮膚に活性成分を塗布しておく手法と、マイクロニードル・デバイス1を皮膚に穿刺した後にその皮膚に活性成分を塗布する手法とが考えられる。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。生分解性のシートを用いる場合には、そのシート自体に活性成分を内包させることも可能である。あるいは、活性成分を内包したリザーバないしゲルを裏面20bに備えてもよい。さらに、穿刺後ないし穿刺中に、ばね、圧力、電気、磁気などのエネルギーを用いて薬物を皮内に送達してもよい。
【0036】
まずユーザは、主面20aを皮膚Sに向けた状態でマイクロニードル・デバイス1を皮膚上に置くことで、
図6,7に示すように各マイクロニードル11の先端を皮膚Sに当てる。以下では、マイクロニードル11が当たっている皮膚Sの一点を「接触点」という。
【0037】
続いて、
図8に示すように、ユーザは裏面20bを押さえ、マイクロニードル11の先端が向いている方向Dにマイクロニードル・デバイス1を回転させつつそのマイクロニードル・デバイス1を皮膚に向けて押し込む。この回転及び押し込みにより、各マイクロニードル11は皮膚Sの表面に沿って回転移動しながら、
図9に示すように接触点Cから皮膚Sに刺さる。このとき、接触点Cは
図9に示すように距離Aだけ移動するが、これは、その接触点Cの周辺の皮膚Sが伸ばされるかまたは縮められることを意味する。したがって、各マイクロニードル11は、それ自体により皮膚Sを変形させながらその皮膚Sに刺さるといえる。
【0038】
ユーザはこのようにマイクロニードル・デバイス1をねじることで、活性成分を自身の体内に投与することができる。したがって、マイクロニードル・デバイス1はねじり型マイクロニードル・デバイスということができる。なお、ユーザは穿刺後すぐにマイクロニードル・デバイス1を皮膚から抜くのではなく、その穿刺状態を維持したままマイクロニードル・デバイス1を手で、あるいはテープなどの補助具で所定時間押さえ続けてもよい。
【0039】
放射状に延びている各列12は所定の角度をおいて該シート20に配置されているので、マイクロニードル・デバイス1を回転させた際のマイクロニードル11の移動方向は列12毎に異なる。この相違は、
図10における各列12の移動ベクトルVa1およびVb〜Vlの向きが異なることから明らかである。さらに、シート20は回転するので、一つの列12内における各マイクロニードル11の移動距離は互いに異なる。この相違は、例えば
図10における一つの列12内の各マイクロニードル11の移動ベクトル(同図では移動ベクトルVa1〜Va7のみ示す)の長さが異なることから明らかである。このように、移動の方向または距離が接触点C毎に異なるので、マイクロニードル・デバイス1が適用された範囲の皮膚は部分的に伸ばされるか、または部分的に縮められる。いずれにしても、マイクロニードル・デバイス1を皮膚に適用する際には、その適用範囲における皮膚は各マイクロニードル11により全体として変形する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、互いに向きが異なるマイクロニードル11のそれぞれが各マイクロニードル11の先端方向に沿って動くので、ある一つの列12内のマイクロニードル11が当てられた箇所と別の一つの列12内のマイクロニードル11が当てられた箇所との間で移動方向が異なる。さらに、円形のマイクロニードル・デバイス1が回転することで穿刺が行われるので、マイクロニードル・デバイス1の径方向に沿って延びる一つの列12内における各マイクロニードル11の移動距離が互いに異なる。このような方向または距離の相違が皮膚の変形を引き起こすので、マイクロニードル11は、変形された皮膚に刺さることになる。このように、マイクロニードル11そのものにより皮膚を変形させることで、その変形を実現するための他の部材又は機構が不要になるので、その分、穿刺装置を小型化することができる。
【0041】
(第2実施形態)
図11〜15を用いて、第2実施形態に係るマイクロニードル・アレイ30の構造を説明する。本実施形態において、マイクロニードル・アレイ30はシート状のマイクロニードル・デバイス2の一部である。以下では、第1実施形態と異なる事項について特に説明する。
【0042】
図11〜15に示すように、本実施形態におけるマイクロニードル・デバイス2は、二つの矩形のシート40a,40bのセットを備える。シート40aの主面は第1の支持面に相当し、シート40bの主面は第2の支持面に相当するから、これら二つの主面(支持面)は互いに独立している。
【0043】
シート40a,40bはそれぞれ、第1実施形態と同様の手法により形成された多数のマイクロニードル11を備える。本実施形態におけるマイクロニードル・アレイ30は、シート40a上の複数のマイクロニードル11aとシート40b上の複数のマイクロニードル11bとの集合である。シート40a,40bのそれぞれの中では、二次元上に配されたマイクロニードル11がすべて同じ方向を向いている。しかし、マイクロニードル・デバイス2の使用時には、マイクロニードル(第1のマイクロニードル)11aとマイクロニードル(第2のマイクロニードル)11bとは互いに異なる方向を向く。
【0044】
各シート40a,40bの寸法は限定されず、使用目的や使用部位などに応じて任意に設定してよい。2枚のシート40a,40bの寸法は統一されていてもよいし、互いに異なってもよい。本実施形態においても、シート40a,40bの長さ及び幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さ及び幅の上限は生体の大きさを考慮して定めることができる。シート40a,40bの厚さ、及びマイクロニードル11の寸法・密度は第1実施形態と同様に定めることができる。
【0045】
シート40aとシート40bとの位置関係については、それら2枚のシート40a,40bの移動方向(スライド方向)を考慮して様々な態様が考えられる。
【0046】
図11に示す例では、マイクロニードル11aとマイクロニードル11bとが背中合わせになるようにシート40a,40bが配置されている。すなわち、マイクロニードル11aの先端の方向Maとマイクロニードル11bの先端の方向Mbとは互いに180度異なる。シート40a,40bはそれぞれ、マイクロニードル11の先端方向に沿って動かされるので、方向Maはシート40aの移動方向でもあり、方向Mbはシート40bの移動方向でもある。この例では、2枚のシート40a,40bはそれぞれ、一つの共通の軸Xcに沿って並んでおり、この軸Xcに沿ってそれぞれ方向Ma,Mbへ移動する。したがって、シート40a,40bはその移動に伴って互いに離れていく。
【0047】
図12に示す例では、マイクロニードル11aとマイクロニードル11bとが向い合わせになるようにシート40a,40bが配置されている。すなわち、マイクロニードル11aの先端の方向(シート40aの移動方向)Maとマイクロニードル11bの先端の方向(シート40bの移動方向)Mbとは互いに180度異なる。この例では、2枚のシート40a,40bはそれぞれ、一つの共通の軸Xcに沿って並んでおり、この軸Xcに沿ってそれぞれ方向Ma,Mbへ移動する。したがって、シート40a,40bはその移動に伴って接近する。
【0048】
図13に示す例では、マイクロニードル11aの先端方向Maに沿った軸Xaとマイクロニードル11bの先端方向Mbに沿った軸Xbとが交差するようにシート40a,40bが配置されている。二つの移動軸Xa,Xbが成す角度は0°より大きくかつ180°より小さい。この例では、シート40aとシート40bが互いに離れていくようにこれら2枚のシート40a,40bが移動する。
【0049】
図14に示す例でも、シート40aの移動軸Xaとシート40bの移動軸Xbとが交差するようにこれらのシート40a,40bが配置されている。二つの移動軸Xa,Xbが成す角度は0°より大きくかつ180°より小さい。この例では、シート40aとシート40bが接近するようにこれら2枚のシート40a,40bが移動する。
【0050】
図15に示す例でも、シート40aの移動軸Xaとシート40bの移動軸Xbとが交差するようにこれらのシート40a,40bが配置されている。シート40aの移動軸Xaとシート40bの移動軸Xbとが成す角度は0°より大きくかつ180°より小さい。この例では、シート40aはシート40bの初期位置に近づくように移動し、シート40bはシート40aの初期位置から離れるように移動する。
【0051】
図11〜15の例では2枚のシート40a,40bを平行移動させるが、シートの移動方法はこれに限定されない。例えば、一方のシートを平行移動させる一方で他方のシートを弧を描くように移動させてもよい。あるいは、双方のシートのそれぞれを、弧を描くように移動させてもよい。
【0052】
マイクロニードル・デバイス2は、互いに分離された状態で提供されて使用時に
図11〜15のように配置される2枚のシート40a,40bのみから成ってもよい。
図12,14のように、マイクロニードル11の先端方向と直交する方向に2枚のシート40a,40bが並ぶ場合には、マイクロニードル・デバイス2は、それぞれがスライドできるように互いにはまり合った2枚のシート40a,40bから成ってもよい。あるいは、マイクロニードル・デバイス2は、
図11〜15のいずれかのように配置されて移動する2枚のシート40a,40bを支持する任意の支持部材(例えば、シート40a,40bをスライドさせるためのレール)を備えていてもよい。
【0053】
次に、
図16,17を用いて、マイクロニードル・デバイス2の使用方法を説明する。以下では、
図11に示すマイクロニードル・デバイス2を使用者自身が指で動かす例を説明する。
【0054】
まずユーザは、
図16に示すように、2枚のシート40a,40bの主面(マイクロニードル11が突き出ている方の面)を皮膚Sに向けた状態でマイクロニードル・デバイス2を皮膚上に置くことで、各マイクロニードル11の先端を皮膚Sに当てる。
【0055】
続いて、
図17に示すように、ユーザはシート40a,40bの裏面を押さえ、皮膚Sの表面に沿ってシート40aを方向Maに移動させシート40bを方向Mbに移動させつつ、その2枚のシート40a,40bを皮膚Sに向けて押し込む。このとき、2枚のシート40a,40bは互いに離れていく。この平行移動及び押し込みにより、各マイクロニードル11が接触点付近で皮膚Sを変形させながらその皮膚Sに刺さる。
【0056】
本実施形態でも上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。具体的には、互いに向きが異なるマイクロニードル11a,11bのそれぞれがその先端方向に沿って動くので、各マイクロニードル11は皮膚を変形しながらその皮膚に刺さる。このように、マイクロニードル11そのものにより皮膚を変形させることで、その変形を実現するための他の部材又は機構が不要になるので、その分、穿刺装置を小型化することができる。
【0057】
ただし、第2実施形態(
図11など)のように互いに独立したマイクロニードル・アレイを穿刺するためには、マイクロニードル・アレイが皮膚上を動く距離が必要である。しかし、第1実施形態(
図1)のマイクロニードル・アレイであれば皮膚上を回転するだけなので、移動のための追加スペースが必要にならない。すなわち、第1実施形態のマイクロニードル・アレイ(ねじり型マイクロニードル・アレイ)は小型化により適している。また、第2実施形態のマイクロニードル・アレイに比べて、第1実施形態のマイクロニードル・アレイは弱い力でも穿刺することができる。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0059】
上記各実施形態に関し、マイクロニードル11の列の形状は直線状に限定されず、任意に定めてよい。一例として、
図18に示すマイクロニードル・デバイス3(マイクロニードル・アレイ10A)では、複数の列12Aがシート20の中心付近から放射状に延び、且つ各列12Aが弧状を呈している。
図18の例では、それぞれの弧は時計回りの方向に凸となっている。
【0060】
上記各実施形態に関し、シートの形状は円および矩形に限定されず、正方形、星形、楕円、他の多角形などの任意の形状であってよい。マイクロニードル・アレイの態様(マイクロニードル11の配置)は、シートの形状に応じて任意に定めることができる。一例として、
図19に示すマイクロニードル・デバイス4は、正方形のシート50を用いて作成されている。この例では、マイクロニードル11の先端方向が同じであるいくつかの列12を1グループとすると、マイクロニードル・アレイ10Bは、その先端方向が互いに90°ずつ異なる4グループの集合であるといえる。
図19では、マイクロニードル・アレイ10Bが全体として反時計回りの方向を向いているが、その向きは時計回りであってもよい。また、各グループの先端方向の相違は90°に限定されず、任意の角度に異ならせてよい。
【0061】
ねじり型のマイクロニードル・デバイス3,4においても、マイクロニードル11の長さおよび傾斜角度の双方は均一でなくてもよく、第1実施形態と同様に個々のマイクロニードル11の長さまたは傾斜角度を互いに異ならせてもよい。
【0062】
上記第2実施形態ではマイクロニードル・アレイ30が2枚のシートのマイクロニードル11で構成されていたが、3枚以上のシートのマイクロニードルによりマイクロニードル・アレイを構成してもよい。
【0063】
図20に示すようなマイクロニードル・アレイも本発明の一態様である。このマイクロニードル・アレイは、マイクロニードル・デバイス5の一部である。
【0064】
マイクロニードル・デバイス5は、円形の内側シート61と輪形(ドーナツ形)の外側シート62とのセットを備える。したがって、内側シート61の主面(第1の支持面)61aと外側シート62の主面(第2の支持面)62aとは互いに独立している。外側シート62の内径は内側シート61の外径よりも大きいので、内側シート61を外側シート62の内側に入れることが可能である。内側シート61の外周部には、径方向外側に延びる複数の突起63が設けられる。外側シート62の内周部には、径方向内側に延びる複数の突起64が設けられる。一つの突起64には一つの突起63が対応する。マイクロニードル・デバイス5を使用する際には突起63,64の一方を他方に当てる必要があるので、突起63,64はシート61,62より厚くてもよい。
図20の例では、突起63,64は周方向に沿って90°毎に4個ずつ設けられているが、突起63,64の個数および設置間隔はこれに限定されない。例えば、突起63,64は120°毎に3個ずつ設けられてもよいし、60°毎に6個ずつ設けられてもよい。
【0065】
内側シート61および外側シート62はそれぞれ、第1実施形態と同様の手法により形成された多数のマイクロニードル11を備える。マイクロニードル・デバイス5におけるマイクロニードル・アレイは、内側シート61上の複数のマイクロニードル11と外側シート62上の複数のマイクロニードル11との集合である。内側シート61および外側シート62の双方において、複数のマイクロニードル11は上記第1実施形態と同様に配置される。すなわち、各シート61,62において、マイクロニードル11の集合である各列12は放射状に延び、双方のシート61,62におけるすべてのマイクロニードル11が向く方向は、時計回りまたは反時計回りの方向に統一される。第1実施形態と同様に、隣り合う2列の成す角度は任意に設定してよい。各マイクロニードル11の長さおよび傾斜角度は均一でなくてもよく、第1実施形態と同様に個々のマイクロニードル11の長さまたは傾斜角度を互いに異ならせてもよい。
【0066】
マイクロニードル・デバイス5を用いる際には、ユーザはまず、マイクロニードル11が突き出ている方の主面(支持面)61a,62aを皮膚に向けた状態でマイクロニードル・デバイス5を皮膚上におく。この際には、シート61,62の回転方向(マイクロニードル11が向く方向)を基準とした場合に、突起63,64の各組において突起64が突起63よりも前に位置し、かつこれら二つの突起63,64が離れた状態になるように、シート61,62を皮膚上に置く必要がある。
【0067】
続いて、ユーザは内側シート61を皮膚に向けて押しつつ回転させる。この操作により、内側シート61上の各マイクロニードル11が皮膚を変形させながら該皮膚に刺さる。また、内側シート61に設けられた突起63が突起64に当たってその突起64を回転方向に沿って押すので、外側シート62も回転する。その結果、外側シート62上の各マイクロニードル11が皮膚を変形させながら該皮膚に刺さる。このように、マイクロニードル・デバイス5を用いる場合には、内側シート61上のマイクロニードル(第1の支持面に位置するマイクロニードル)11が回転し始めた後に、外側シート62上のマイクロニードル(第1の支持面よりも外側にある第2の支持面に位置するマイクロニードル)11が回転し始める。各組における突起63,64の初期間隔は、このような穿刺を実現するように設定される。
【0068】
このようなマイクロニードル・デバイス5を用いた場合には、デバイスの中心側に位置するマイクロニードルをより確実に皮膚に刺すことが可能になる。
【0069】
なお、マイクロニードル・デバイス5においても、マイクロニードル・デバイス3と同様にマイクロニードルの各列が弧状を呈してもよい。
【0070】
マイクロニードルが突き出た面である主面(支持面)は凸面であってもよく、そのような構造を有するマイクロニードル・アレイも本発明の一態様である。ここで、「支持面が凸面である」とは、支持面の中央部が高くなっていることを意味する。この定義は、支持面が円錐体の側面である態様と、支持面が半球状の面である態様とを含むが、支持面が凸面である態様はこれらに限定されない。また、凸面を規定するパラメータは限定されず、例えば、円錐の中心角や半球の曲率などは任意に定めてよい。
【0071】
図21は、支持面が凸面である場合の一例である。
図21に示すマイクロニードル・アレイは、マイクロニードル・デバイス6の一部である。
【0072】
マイクロニードル・デバイス6は、円錐形のシート70に多数のマイクロニードル11を形成することで得られる。したがって、マイクロニードル11が突き出た面である主面(支持面)70aは円錐体の側面である。マイクロニードル11は第1実施形態と同様の手法で形成することができる。マイクロニードル・デバイス6におけるマイクロニードル・アレイは、それぞれがシート70の母線に沿って延びる複数の列12の集合である。各列12は複数のマイクロニードル11から成る。すべてのマイクロニードル11が向く方向は、時計回りまたは反時計回りの方向に統一される。隣り合う2列の間隔は任意に定めてよい。各マイクロニードル11の長さおよび傾斜角度は均一でなくてもよく、第1実施形態と同様に個々のマイクロニードル11の長さまたは傾斜角度を互いに異ならせてもよい。
【0073】
マイクロニードル・デバイス6を用いる際には、ユーザはまず、主面70aを皮膚に向けた状態でマイクロニードル・デバイス6を皮膚上におく。続いて、ユーザはマイクロニードル11の先端が向く方向にマイクロニードル・デバイス6を回転させつつそのマイクロニードル・デバイス6を皮膚に向けて押し込む。この操作により、各マイクロニードル11が皮膚を変形させながら該皮膚に刺さる。
【0074】
なお、マイクロニードル・デバイス6においても、マイクロニードル・デバイス3と同様にマイクロニードルの各列が弧状を呈してもよい。
【0075】
上記各実施形態ではマイクロニードルが三角形であるが、穿刺できるのであればマイクロニードルの形状は何ら限定されない。また、マイクロニードルはシートを切り抜いて得られる平面状のものでなくてもよく、円錐や角錐などの立体形状であってもよい。
【0076】
上記各実施形態ではマイクロニードル・アレイがシート状の部材により支持されていたが、マイクロニードル・アレイは任意の面上に形成してよい。