特許第6387344号(P6387344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6387344ユーザーが定義した計測器コマンドシーケンスを複数のハードウェア及び分析モジュールを用いて実行するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387344
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ユーザーが定義した計測器コマンドシーケンスを複数のハードウェア及び分析モジュールを用いて実行するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20180827BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20180827BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20180827BHJP
   G06F 11/22 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01R31/28 Y
   G01R31/28 H
   H04B17/15
   H04B17/29
   G06F11/22 673U
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-516016(P2015-516016)
(86)(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公表番号】特表2015-526700(P2015-526700A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】US2013037530
(87)【国際公開番号】WO2013184242
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】13/488,742
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507308186
【氏名又は名称】ライトポイント・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LitePoint Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】エルスロウギ、ナビル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン、トーマス・トールドボルグ
(72)【発明者】
【氏名】シルター、ロマン
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/140233(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/001462(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/114654(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/044421(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/023554(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0199047(US,A1)
【文献】 米国特許第08138778(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G06F 11/22
H04B 17/15
H04B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFスイッチ構造体を介して接続される複数の試験デバイス(DUT)を試験する試験システムであって、
通信セッションから複数のコマンドを受信するためのシーケンス処理モジュールを備え、
該シーケンス処理モジュールは、計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤ、複数のハードウェアモジュール、及びイベントレジスタを備え
前記通信セクションから受信した前記コマンドは、前記複数のハードウェアモジュール及び前記イベントレジスタのそれぞれへの通信のためのコマンドを含み、
前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤは、前記コマンドを、前記複数のハードウェアモジュールのそれぞれのためのコマンドのサブセット及び前記イベントレジスタのためのコマンドの他のサブセットに分解し、前記コマンドのサブセットを前記複数のハードウェアモジュールに、前記コマンドの他のサブセットを前記イベントレジストに渡し、
前記複数のハードウェアモジュールは、渡された前記コマンドのサブセットを格納して保留状態となり、渡された前記コマンドの他のサブセットを格納した前記イベントレジスタが前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤからの保留解除メッセージを受信したときに、前記コマンドのサブセットを実行する、試験システム。
【請求項2】
シーケンス処理モジュールは、
グローバルリソーススケジューラをさらに備え
前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤは前記通信セッションからの前記コマンドを前記グローバルリソーススケジューラから受信し
それぞれが前記コマンドのサブセットを受信する、前記複数のハードウェアモジュールのうちの第1の複数のハードウェアモジュールと、
前記複数のハードウェアモジュールのうちの第2の複数のハードウェアモジュールと、ここで、該第2の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、前記第1の複数のハードウェアモジュールのそれぞれ対応する1つと通信し、前記コマンドのサブセットを格納し、
を備え、
前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤは、前記第1の複数のハードウェアモジュール及び前記イベントレジスタと通信し、
前記イベントレジスタは、前記第2のハードウェアモジュールと通信する、請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記第2の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、対応するFIFOレジスタを備え、該FIFOレジスタに前記コマンドの前記サブセットを格納する、請求項2に記載の試験システム。
【請求項4】
前記第1の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、対応する個別のハードウェアインターフェイースモジュール(HWIM)と関連付けられる、請求項2に記載の試験システム。
【請求項5】
前記試験システムが、さらに測定及び試験結果を格納する計測キャプチャ及び結果用データベースを備え、
前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤは、前記計測キャプチャ及び結果用データベースと、前記複数のハードウェアモジュールとに通信する、請求項2に記載の試験システム。
【請求項6】
複数の被試験デバイス(DUT)を試験するための試験システムによって遂行される方法であって、
(a)複数のコマンドのシーケンスを試験システムに発行するステップと、
(b)前記試験システムのリソース利用可能性を判定するステップと、
(c)前記複数のコマンドのシーケンスを、前記試験システムのリソースのうちそれぞれ対応するハードウェアモジュールのためのコマンドのサブセット及びイベントレジスタのためのコマンドの他のサブセットに分解するステップと、
(d)前記コマンドのサブセットを前記ハードウェアモジュールに利用可能になるときに渡し、前記コマンドの他のサブセットを前記イベントレジスタに渡すステップと、
)前記コマンドのサブセットを、前記ハードウェアモジュールに読み込み、前記コマンドの他のサブセットを前記イベントレジスタに読み込むステップと、
f読み込まれた前記コマンドのサブセットを、前記試験システムのリソースのそれぞれ対応する前記ハードウェアモジュールに、イベントnとして格納し、保留するステップと、
g)前記コマンドのサブセットがそれぞれ対応する前記ハードウェアモジュールに読み込まれ、格納されると、前記イベントレジスタに保留解除を通知するステップと、
h保留解除の通知後、前記イベントnとして格納された前記コマンドのサブセットを実行するステップと、を含む、システムを試験する方法。
【請求項7】
i)ステップ(a)〜(i)を、複数のコマンドの追加的シーケンスのために自動的に繰り返すステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ハードウェアモジュールはFIFOレジスタである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
複数のコマンドを通信セッションから受信するためのシーケンス処理モジュールを備える試験システムであって、
該シーケンス処理モジュールは、
グローバルリソーススケジューラと、
該シーケンスモジュールから複数のハードウェアモジュール及びイベントレジスタのそれぞれのためのコマンドを受信し、前記複数のハードウェアモジュールのそれぞれのためのコマンドのサブセット及び前記イベントレジスタのためのコマンドの他のサブセットに分解する、計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤと、
前記複数のハードウェアモジュールのうちの第1の複数のハードウェアモジュールと、ここで前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーと通信して、該第1の複数のハードウェアモジュールのそれぞれが、それぞれのための前記コマンドのサブセットを受信し、
前記複数のハードウェアモジュールのうちの第2の複数のハードウェアモジュールと、ここで、該第2の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、前記第1の複数のハードウェアモジュールのそれぞれ対応する1つと通信して、前記コマンドのサブセットを格納して保留状態とし、前記イベントレジスタは前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤと通信して、前記コマンドの他のサブセットを受信し、前記イベントレジスタは、前記第2の複数のハードウェアモジュールと通信し、
前記計測プロセッサ兼シーケンスプレーヤと通信する、計測の結果を格納する計測キャプチャ及び結果用データベースと、
RFスイッチ構造体を介して前記第2の複数のハードウェアモジュールと通信する
、複数の被試験デバイス(DUT)と、
を備え
前記イベントレジスタが、保留解除メッセージを受信したとき、前記第2の複数のハードウェアモジュールは前記コマンドのサブセットを実行する、試験システム。
【請求項10】
前記第2の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、対応するFIFOレジスタを備える、請求項に記載の試験システム。
【請求項11】
前記第1の複数のハードウェアモジュールのそれぞれは、対応する個別のハードウェアインターフェイースモジュール(HWIM)と関連付けられている、請求項に記載の試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電子機器を試験するためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、複数のハードウェアモジュール及び分析モジュールが同時に動作することが可能な、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアそれぞれの構成要素からなる試験プラットフォームを用いた無線デバイスを試験するためのシステム及び方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯用デバイスの多くは、通話、デジタルデータ転送、地理的位置決め等に無線「接続」を利用している。周波数スペクトル、変調方法、及びパワースペクトル密度における差異があるにもかかわらず、無線接続性の規格は、同期させたデータパケットを使用してデータを伝送し、これを受信する。一般に、これらの無線接続性能力の全ては、それらの接続性能力を有するデバイスが順守しなければならないパラメータ及び制限を特定する業界承認規格(例えば、IEEE 802.11及び3GPP LTE)によって定義される。
【0003】
一連のデバイス開発に沿ったいずれかの時点において、デバイスがその規格の仕様内で動作するということを試験し、かつ検証する必要があり得る。そのようなデバイスの殆どは、送受信機であり、すなわち、無線RF信号を送受信するものである。このようなデバイスを試験するように設計された専用システムは、典型的には、デバイスがその規格に従って無線信号を受信及び処理しているかどうかを判定するために、デバイスが送信する信号(例えば、ベクトル信号分析器、又はVSA)を受信及び分析し、業界に認定された規格に従う信号(例えば、ベクトル信号生成器又はVSG)を送信するように設計された、サブシステムを含む。
【0004】
現行のテスターには、単独のVSA及びVSGを有し、1つの無線規格に関連する物理的特性を試験するように設計されているものがある。また、複数のVSA及びVSGを有し、互いに干渉しない2つ以上の異なる規格に関する無線物理特性を同時に試験するように設計されているようなテスターもある。
【0005】
複数のVSA及びVSGを有し、同時並行で試験を実行するように設計されたテスターは、典型的には、ユーザーにより定義された試験プログラムを実行する外部又は内部の制御サブシステムによって制御される。しかしながら、上記のようなテスターは、ハードウェアリアルタイム試験プログラム又は計測用プロセッサとして実行するようには設計されていない。すなわち、上記のようなテスターは、ユーザーが任意で定義した、標準的計測器コマンドのシーケンスを、テスターの、すべての独立モジュールにわたって、被試験デバイスと直接的リアルタイムでの相互作用するための、テスターのファームウェア及びハードウェア構成要素の内部的にコーディネートされた相互作用を通じて、自動的に、不可分かつ決定的な様式で実行するようには設計されていない。
【0006】
もし、複数のVSA及びVSG並びに分析モジュールを備えるテスターが、自動的にコマンドを、その独立モジュールにわたり、不可分かつ決定的な様式で実行するように、そのファームウェア及びハードウェアの構成要素の相互作用をコーディネートするためのシステム及び方法を備え得る場合には、当該テスターは、ばらばらの(例えば、単発の)コマンド及び計測、又は計測に関連するコマンドのシーケンスを、同じ不可分かつ決定的な様式で実行することが可能なはずである。
【0007】
上記の構成を備えたテスターは、単にそのテスターに、その計測器の標準的な計測及び分析コマンドのシーケンスを、任意の順序で与えることによって、プログラムされうるであろう。こうすることで、上記のようなリアルタイムの、決定的な計測システムをプログラムすることが、より簡単に、早くなり、試験効率の向上及び試験全体のコストを引き下げることができるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ本発明は、先行技術のもつ欠点を克服するために、複数のVSA及びVSG、又はその他のタイプのハードウェア分析及び計測モジュールを備えるテスターに関連して、計測器の標準的な、ハードウェア及び分析モジュールコマンドのユーザーが任意で定義したシーケンスを備えるプログラムを実行するためのシステム及び方法を含むことを目的とし、ここで、コマンドの実行及びリソースの利用可能性をコーディネートすることが、その全体的アーキテクチャにもともと備わっている一部として、システムに組み込まれている。それゆえ、コマンドは、通常、ばらばらに実行されるコマンドと同一のものであるが、ここでは、本発明の実施形態のコーディネートされた相互作用を介して、不可分かつ決定的な様式で、自動的にかつ連続的に実行される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の「発明を実施するための形態」を、より良好に理解することができるように、また当該技術への本発明の貢献を、より良好に認識することができるように、本発明の特定の実施形態を、このように、やや広範に概説してきた。当然ながら、以下に説明され、本明細書に添付される特許請求の範囲の主題を形成する、本発明の更なる実施形態が存在する。
【0010】
この点で、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるか又は図面に示される、構成の詳細並びに構成要素の配列に、その用途が限定されないことを理解されたい。本発明は、説明される実施形態以外の実施形態が可能であり、様々な方法で実践及び実施することが可能である。また、本明細書並びに要約書で使用される、表現及び用語は、説明を目的とするものであって、限定として見なすべきではないことも理解されたい。
【0011】
したがって、当業者であれば、本開示が基づくところの概念が、本発明の諸目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基盤として容易に利用可能であることを、理解するであろう。したがって、そのような等価の構成が、本発明の思想及び範囲から逸脱しない限りにおいて、特許請求の範囲は、それらの等価の構成を含むものとして見なされることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下に記載される「発明を実施するための形態」、及び本発明の様々な実施形態の添付図面から、より完全に理解されるが、これらは、本発明を特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、単に説明及び理解のためのものである。
図1図1は、1つの開示される例示的実施形態による、試験システムを描く先行技術の図ある。
図2図2は、1つの開示される例示的実施形態による、SCPIコマンドをばらばらに実施するのを示している、図1の先行技術の図を図示している。
図3図3は、1つの開示される例示的実施形態による、シーケンス処理の実施形態を含む試験システムを図示している。
図4図4は、1つの開示される例示的実施形態による、格納されているコマンドのシーケンスが、どのようにして複数の技術的モジュールと1つのイベントレジスタとに分解されて読み込まれるのかを示している、図3の試験システムを図示している。
図5図5は、1つの開示される例示的実施形態による、シーケンスプレーヤ及び、使用するために、他のコマンド又はシーケンスにより複数のハードウェアモジュールを割り当てるシーケンスコマンドの実行を含んだ、図3の試験システムの例示的動作を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、ここで図面を参照して説明するが、全体を通じて、同様の参照数字は、同様の部分を指す。以下の「発明を実施するための形態」は、特許請求される本発明の、添付図面を参照とする、例示的実施形態のものである。そのような説明は、例示的なものであって、本発明の範囲に関して限定するものではない。そのような実施形態は、主題となる発明を当業者が実践することを可能にするために、十分詳細に説明されるものであり、主題となる発明の思想又は範囲から逸脱することなく、何らかの変型を使用して、他の実施形態を実践することができる点が理解されるであろう。
【0014】
本発明の開示を通じて、内容から反対であるという明確な指示がなければ、説明するような個々の回路要素は、数において単数の場合もあれば複数の場合もあることが理解されるであろう。例えば、「回路」及び「回路機構」という用語は、説明される機能を提供するための、単一の構成要素、あるいは、能動的及び/又は受動的のいずれかであって、一体的に接続されるか若しくは他の方法で結合される(例えば、1つ以上の集積回路デバイスとして)複数個の構成要素のいずれかを含み得る。
【0015】
本発明の説明においては、「信号」という用語は、1つ以上の電流、1つ以上の電圧、又はデータ信号を指す。1つの信号は、時系列または空間系列上の量の任意の流れを包含し得る。信号は、通信、信号処理、及び、より一般的には電気工学の分野に分類し得る。信号は、情報を、変調のようなコード化された形で含み、運ぶ。この場合、実際の量は、最終的には使用されず、検知器又は復調器により復調される。物理的な領域においては、時間を通じて、又は空間にわたって計量可能などんな量であっても信号として用いることができる。人間に関する情報又は機械のデータのセットであれば何でも信号として用いることができる。
【0016】
本発明の説明においては、「FIFO」という用語は、「先入れ先出し(First In,First Out)」を意味する略語であり、データを時間及び優先順位づけに対して組織化し、操作する方法に関連する抽象概念である。この表現は、先着順(FCFS、First−Come,First−Served)の行動原理で順序づける処理により、キュー行列を処理する技術の原理、又は相反する要求に応えるための原理を述べたものである。
【0017】
本発明の説明においては、「3GPPロングタームエヴォルーション(『LTE』と呼ばれる)」という用語で、「4G LTE」として市場では知られている用語は、例えば移動電話や携帯式データターミナル端末を含む電子機器のための高速データ無線通信の規格を指す。当該規格は、かつてはGroupe Special Mobile=GSM(登録商標)と呼ばれていた、移動通信のためのグローバルシステム(Global System for Mobile Communications=GSM(登録商標))のGSM(登録商標)エヴォルーションのための向上したデータ速度(Enhanced Data rates for GSM(登録商標) Evolution=EDGE)、及びユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム(Universal Mobile Telecommunications System=UMTS)の、高速パケットアクセス(High Speed Packet Access=HSPA)ネットワークテクノロジーに基づいて、容量とスピードを、新しい変調技法によって増大させている。前記規格は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3rd Generation Partnership Project=3GPP)によって開発され、その仕様が、当該プロジェクトのリリース8ドキュメントシリーズに公開され、同リリース9に小さな向上点が公開されている。GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications、旧Groupe Special Mobile)は、第2世代(2G)デジタル携帯ネットワークのためのテクノロジーを説明するために、欧州電気通信標準化機構(European Telecommunications Standards Institute=ETSI)によって設定された規格である。EDGE(エンハンストGPRS、Enhanced GPRS=EGPRS、IMTシングルキャリア、IMT Single Carrier=IMT−SC、又はグローバルエボリューションのための向上したデータ速度、Enhanced Data rates for Global Evolutionとしても知られる)は、GSM(登録商標)の下位互換性のある拡張としての、データ転送速度の向上を可能にするデジタル移動電話テクノロジーである。ユニバーサル移動電気通信システム(Universal Mobile Telecommunications System=UMTS)は、GSM(登録商標)規格に基づいたネットワークのための第3世代移動携帯電話テクノロジーである。3GPP(3rd Generation Partnership Project)により開発されたため、UMTSは、国際電気通信連合のIMT−2000という規格のセットの1つの構成要素であり、競合するcdmaOneテクノロジーに基づくCDMA2000というネットワークのための規格のセットと同等であるとみなされている。UMTSは、移動体ネットワークの運営者により高いスペクトラル効率とより広い帯域幅を提供するために広帯域符号分割多元接続(Wideband Code Division Multiple Access=WCDMA(登録商標))という無線アクセステクノロジーを採用している。UMTSは、ネットワークシステム全てを網羅する仕様を公開している。すなわち、無線アクセスネットワーク(UMTS地上波無線アクセスネットワーク、UMTS Terrestrial Radio Access Network=UTRAN)、コアネットワーク(移動通信応用部、Mobile Application Part=MAP)、及びSIM(加入者識別モジュール、Subscriber Identity Module)カードを用いたユーザー認証をカバーしている。高速パケットアクセス(High Speed Packet Access=HSPA)は、高速ダウンリンクパケットアクセス(High Speed Downlink Packet Access=HSDPA)及び高速アップリンクパケットアクセス(High Speed Uplink Packet Access=HSUPA)の2つの移動通話プロトコルを合わせたものであり、既存のWCDMA(登録商標)プロトコルのパフォーマンスを拡張し、改善したものである。
【0018】
本発明の説明においては、「SCPI(Standard Commands for Programmable Instruments=プログラマブル計測器標準コマンド)」は、プログラム可能な試験及び計測用デバイスの制御において用いる構文及びコマンドの規格を指す。前記IEEE 488.2仕様により定義されているので、当該規格は、全ての計測器において用いる共通の構文、コマンド構造、及びデータフォーマットの仕様を定めている。SCPIコマンドは、物理的レイヤ(例えばIEEE−488)を介して計測器に送られるASCII(アスキー)テキストの列である。コマンドとは、その多くがパラメータをとり、典型的にはASCII文字列である、一連の1つ以上のキーワードである。しかしながら、バイナリのフォーマットのものも用いることができる。
【0019】
図面内では、同様の、又は関連する要素は、同様の、又は関連する、英字、数字、若しくは英数字の符号を有する。更に、本発明は、個別の電子回路(好ましくは、1つ又はそれよりも多くの集積回路デバイスの形態)を使用する実施例という関連で説明されているが、このような回路のいかなる部分の機能も、代替的に、処理される信号周波数又はデータ転送速度により、1つ又はそれよりも多くの適切にプログラムされたプロセッサを使用して実施することができる。
【0020】
開示される例示的実施形態に従って、複数のVSA及びVSG、並びに、例えば、関連する双方向ポートを介してスイッチング構造体と接続される多くのDUT(Devices Under Test=被試験デバイス)をインターフェースで接続し試験することができるテクノロジー信号分析モジュール(例えばGSM(登録商標)及びLTE用のもの)を備えるシステムが説明され図示される。開示される実施形態においては、双方向ポートは有線であっても無線であってもよい。図示されている例においては、2つのVSA、2つのVSG、及び2つの分析モジュールが含まれているが、開示されるシステム及び方法において、3つ以上のVSA、3つ以上のVSG、及び3つ以上の分析モジュールが含まれていても構わないことは当事業者には明白であろう。さらに、例示されるシステム及び方法においては、4つの双方向ポートが図示されているが、当該システム及び方法が、前記の通りの4つの双方向ポートよりも多い又は少ない双方向ポートを持ってもよいこともまた、当業者にとっては明白であろう。前記システムは、一方向ポートにより構成されてもよい。開示される実施形態は、例示的なものと意図されており、本発明の範囲を定めるものとして理解されるべきではない。
【0021】
図1に示されているように、先行技術の試験システム100は、それぞれが計測キャプチャ/結果データベース(不図示)を有する複数の計測プロセッサ(不図示)及び、複数の分析モジュールを備える、基本的システム計測アーキテクチャを含み、当該複数の分析モジュールは、前記計測結果データベースと、複数のVSA 103及びVSG 104と、RFスイッチ構造体105と、並びに複数のDUT 107とインターフェースで連結されている複数のコミュニケーションポート106とへのアクセスが可能である。先行技術の試験システム100の構成要素は、互いに通信するよう動作可能に構成されている。かくして、通信セッション101の間に、どこでコマンドが先行技術の試験システム100に入力されるのかが示されている。これらのコマンドは、意図されるハードウェアモジュール(例えば、符号103で示されるVSA1及び符号104で示されるVSG1)に当該コマンドをさらに渡す、計測プロセッサ102によって受信される。計測プロセッサ102は、1つ以上の分析モジュール108からの関連する試験プロセスデータにアクセスすることも可能であり、当該データは、1つ又は複数のパラメータを設定するため、及び/又は計測によって得られた結果を規格が規定する計測値の範囲と比較するために用いられる、又は参照される。複数のDUT 107の1つ(複数のコミュニケーションポート106の1つと接続されている)は、複数のハードウェアモジュールの1つと接続されている。選択されたポートを通じて、DUTが、例えば、符号103で示されるVSA1と相互に接続されると、通信セッション101の間に入力され、さらに符号103で示されるVSA1に渡されたコマンドが実行される。第1のVSA、すなわちVSA1が、自身をリリースすると、現在のコマンドをVSA1が実行する間に、次のコマンドがVSA1に向けて発信される。計測の結果は、計測キャプチャ/結果データベース109に格納され、システム100は、通信セッション101の間の次の計測コマンドを受ける準備ができたことになる。
【0022】
図2は、図1に示されている試験システムアーキテクチャと同じものを図示している。当該基本的システム計測アーキテクチャは先行技術であるが、「vsa:freq 2450MHz」のような試験指向のコマンドを処理するように設計されている。かくして、計測用コマンド202(SCPIフォーマットで記述されている)が、通信セッションの間に、図示されるようにシステムに入力される。例えば、当該コマンドは、「vsa:freq 2450MHz」である。このコマンドは、VSAの周波数を2450MHZに設定するものである。計測プロセッサ102は当該コマンド202を、選択されたVSA(例えば符号103で示されるVSA1)にさらに渡す。いくらかの時間が経過した後で、ばらばらな様式で、別のSCPIコマンド203が、開放されている通信セッション101のいずれかを介して入力される。再びここで、計測プロセッサ102は、当該コマンド204を意図されたハードウェアモジュール(例えば、符号103で示されるVSA1)にさらに渡す。なお、計測プロセッサ102は、試験システム100の中の複数のハードウェアモジュールのどれに対してもコマンドをさらに渡すことが可能である。かくして、仮に次のコマンドがVSGの1つに向けられたコマンド(例えば、vsg:pow −36.6dBm)であれば、そのコマンドは、計測プロセッサ102からさらにVSGハードウェアモジュール(符号104で示されるVSG1)に渡されることになっている。
【0023】
なお、図1及び2の先行技術の試験システム100は、ハードウェアの複数のモジュールにわたって、決定的な順序でコマンドのシーケンスを処理するためのいかなる手段をも有しておらず、そしてその場合には、複数のハードウェアモジュールは、モジュール間を任意の順序で行き来しながらコマンドを実行することになる。その基本的システム計測アーキテクチャは、例えば、複数のSCPIコマンドを、ばらばらな様式で、1つのモジュールに連続して、又はそれぞれのモジュールが他のモジュールと同時並行で実行するよう設計されている。複数のコマンドは、独立して発信され、受信されることができるが、1つのコマンドの発信は、1つのモジュールがそのコマンドのキュー行列から1つのコマンドを引っ張ってきた後で、それ自身をリリースするまでは、ブロックされる。かくして、コマンド「vsa:freq 2450MHz」が実行され、VSA周波数が2450MHzに設定される間、テスターは、「vsa:rlev −25dBm」のような他のコマンドを発行することが可能で、そこでは、当該VSAが参照レベルの−25dBmに設定される。ここで、複数のVSAコマンドが実行されている間に、「vsg:freq 2450MHz」が計測器に送られることができ、VSAコマンドの実行と並行で実行されることができ、さらに、VSG周波数が2450MHzに設定される。当該VSGは、「vsg:pow −45dBm」のような別のコマンドを発行されてもよい。それにより当該VSGは、パワーの設定を、−45dBmにセットする。当該VSGモジュールへのそれぞれのコマンドは、連続してかつ不可分の形で実行される。しかしそれらのコマンドは一緒に、決定的な様式で、複数のVSAコマンドに合わせて実行されない。複数のVSA及びVSGコマンドは、互いに完全に独立に実行されるので、複数のモジュールを横断するリアルタイムの行動は存在しない。かくして、この基本的計測アーキテクチャは、1つのハードウェアモジュールのコマンドシーケンスが連続して実行されるのを保証するものの、それ以外のこと、すなわち、1つのモジュール内で、又は多くのモジュールにまたがってタイミングを合わせるようにはなっていない。
【0024】
図3に示されているように、図1のシステムは、開示される発明の能力を有する改良された試験システム300を提供するために、シーケンス処理モジュール316により拡張されている。シーケンス処理モジュール316は、グローバルリソーススケジューラ301、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302、複数のハードウェアモジュールVSA1、VSG1、VSA2、及びVSG2を備えており、ハードウェアモジュールVSA1、VSG1、VSA2、及びVSG2は、それぞれ別々のハードウェアインターフェースモジュール(HWIMs)303、304、310、及び311と関連付けられている。シーケンス処理モジュール316はさらに、他のハードウェアモジュールも備えている。すなわち、VSA1用FIFOレジスタモジュール308、VSG1用FIFOレジスタモジュール309、VSA2用FIFOレジスタモジュール314、及びVS2用FIFOレジスタモジュール315であるが、これらは、VSA1、VSG1、VSA2、及びVSG2を含むシーケンス処理モジュール316の追加的構成要素にそれぞれ連通して設けられる。VSA1用FIFOレジスタモジュール308、VSG1用FIFOレジスタモジュール309、VSA2用FIFOレジスタモジュール314、及びVS2用FIFOレジスタモジュール315はそれぞれ、以下に述べるように、シーケンシャルコマンドと計測コマンドの両方を読み込むための、FIFOレジスタ306、307、312、及び313を有する。シーケンス処理モジュール316は、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302、並びに、VSA1用FIFOレジスタモジュール308、VSG1用FIFOレジスタモジュール309、VSA2用FIFOレジスタモジュール314、及びVS2用FIFOレジスタモジュール315それぞれのFIFOレジスタ306、307、312、及び313と動作可能に接続されたイベントレジスタ305、をさらに備える。グローバルリソーススケジューラ301は、通信セッション101からコマンドを受けるために、動作可能に接続されていてよい。計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、グローバルリソーススケジューラ301、計測キャプチャ/結果データベース109、1つ以上の複数の技術的モジュール108、ハードウェアモジュールVSA1、VSG1、VSA2及びVSG2、並びにイベントレジスタ305と動作可能に接続され、通信するように構成されていてよい。シーケンス処理モジュール316は、RFスイッチ構造体105及び、例えば複数のコミュニケーションポート106を介して複数のDUT 107に動作可能に接続され通信を行うようになっている。
【0025】
グローバルリソーススケジューラ301を構成する要素(ハードウェア的なもの、ソフトウェア的なもののいずれでもよい)は、リソースの利用可能性を判定し、それを計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302に伝達する。他にも利点があるが、中でも上記の点は、多くの通信セッションを同時に作動するように成立させることができる。本発明の開示される実施形態には、シーケンス的に作動する機能を含むようにその機能が拡張された計測プロセッサが含まれている。(なお、開示される実施形態においては、代替的に、計測プロセッサとは別体のプロセッサを設けてもよい。)したがって、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、機能的には、計測とハードウェアが利用可能か否かの状態の両方を処理するようになっている。このように両方の機能を併せ持つことは、単一の集積回路により、又は2つ以上の異なる構成要素により実現される。図示されるように、ハードウェアモジュールVSA1、VSG1、VSA2、及びVSG2はそれぞれ、例えば、個別のハードウェアインターフェイースモジュール(HWIMs)303、304、310、及び311の構成部品と関連付けられている。HWIMs303、304、310、及び311は、関連するハードウェアモジュールVSA1、VSG1、VSA2、及びVSG2に向けられた、計測コマンドのシーケンスを格納するようになっている。HWIMs303、304、310、及び311はまた、他と競合することなく、システムの計測用ハードウェアリソース(例えばVSA及びVSG)を利用できるようサポートするシーケンス処理コマンドを格納するようにもなっている。ハードウェアモジュール内に図示されているのは、追加的構成要素(306、307、312、および313)であり、それらは、シーケンシャルなコマンド及び計測コマンドの両方を、それらのコマンドがコーディネートされた形で実行されるように、読み込むようになっているハードウェアFIFOレジスタである。イベントレジスタ305は、連続する「イベント」を格納し、実際に発生させるためのグローバルなハードウェアレジスタであり、本開示においては「イベントレジスタ」又は「Event Reg」と表記する。開示される実施形態では、イベントレジスタ305は、1つのシーケンスの、特定のコマンドのセットと関連付けられたイベントIDを格納している。
【0026】
図4は、図3で、計測及びシーケンスコマンド、並びに制御がどのように流れるのかを図示している。格納されているコマンドのシーケンスが、VSA1用FIFOレジスタ、VSG1用FIFOレジスタ、及びイベントレジスタにそれぞれ読み込まれるコマンドに分解される。これは、「イベント1ホールドオン=Hold on Event 1」コマンドがリリースされるまでに、「シーケンス1」というコマンドのセットを実行できるようにセットアップする。図示されるように、格納されているコマンドのシーケンス(例えば、符号401で示されるシーケンス1)は、通信セッション101を介して試験システム300に入力される。なお、このシーケンスは、格納されているシーケンスである必要はなく、ユーザーは試験システム300に対してコマンドのシーケンスが作成されているということを通知した上で、コマンドのシーケンスを、単に連続して、複数の個別の計測コマンドを入力して作成してもよい。符号401で示すシーケンス1が入力されると、グローバルリソーススケジューラ301が、必要なハードウェアモジュールが利用できるようになるまで待機する。その後、グローバルリソーススケジューラ301は、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302に、それぞれのハードウェアモジュールに向けたコマンドのサブセットをさらに渡すのを許可する。この場合、VSA向けのコマンド402(例えば、VSA:freq 2450MHz)が、VSA1に送られる。VSG向けのコマンド403(例えば、VSG:pow −36.6dBm)は、VSG1に送られる。コマンド402及び403は、それぞれVSA1用HWIM 303及びVSG1用HWIM 304により受信され、それぞれのハードウェアモジュールにさら渡されて、VSA1用FIFOレジスタモジュール308のFIFOレジスタ306及びVSG1用FIFOレジスタモジュール309のFIFOレジスタ307にそれぞれ格納されてよい。FIFOレジスタ306及び307にそれぞれに向けられたコマンド404及び405が読み込まれると、それぞれは、FIFOハードウェアに読み込みがなされた旨のメッセージを計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302に発行する(すなわち、「HW Loaded Notify」コマンドに従う(例えば、それぞれに向けられたコマンド404及び405の該当するコマンドラインを参照))。入力されたコマンドのシーケンスは、「イベント1(Event 1)」として表され、イベントレジスタ406に格納される。上記のようにして試験システム300は、FIFOレジスタ306及び307にそれぞれ格納されたコマンドのシーケンスを実行するよう用意を整えられる。しかしながらこの例においては、最初のコマンド(シーケンス制御コマンド)、すなわち符号405で示す「FIFO Hold on Event 1」によって、それらは保留状態になっている。

【0027】
図4の例示的実施例に示されるように、ユーザーが要求するシーケンスの実施が必要とするハードウェアモジュールが利用可能となるとすぐに、それらのハードウェアモジュールは、待機シーケンス実施要求に割り当てられ(すなわち、予約され)て、コマンドのシーケンスが、ユーザーの要求したシステムのチャンネル(セッションのコマンド伝達環境)のシーケンスプレーヤに、実行されるために送られる。現在の実施形態では、それは、いくつかの独立した計測用チャンネルの選択肢がある中の、チャンネル1である。計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302のシーケンスプレーヤという構成要素は、コマンドのシーケンスを、VSA1とVSG1とに流すものに分離する。しかしまずは、モジュールVSA1及びモジュールVSG1に、「FIFO HOLD on Event 1」メッセージを送る(なお、イベント1は、いくつかあるチャンネルの中のチャンネル1に対応する)。図示されるように、これらのメッセージはそれぞれ対応する、VSA1用FIFOレジスタ及びVSG1用FIFOレジスタに格納される。こうして、各モジュール用のコマンドシーケンスは、図示されるように、VSA1用FIFOレジスタモジュール308のFIFOレジスタ306及びVSG1用FIFOレジスタモジュール309のFIFOレジスタ307にそれぞれ送られ格納される。そして、「イベント1」がグローバルイベントレジスタ305に格納される。すべてのコマンドがVSA1用FIFOレジスタモジュール308及びVSG1用FIFOレジスタモジュール309に格納され終わると、シーケンスプレーヤは「HW OPC」コマンドを、FIFOレジスタ306及び307の、それぞれ意図されるコマンド404及び405内に格納する。また、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、ハードウェアFIFO読み込み済み通知(例えば、前記「HW Loaded Notify」コマンドを実行した結果)をそれぞれVSA1モジュール及びVSG1モジュールから受信する。そして、試験システム300は、ここで、このコマンドのシーケンスを実行する準備が整うことになるが、「FIFO HOLD on Event 1」コマンドにより、保留状態にされている。
【0028】
図5は、試験システム300によるコマンドの実行を図示している。FIFOレジスタ306及び307に読み込みが終わると、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302にその旨をメッセージを介して通知され、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、「保留解除(hold release)」メッセージをイベントレジスタ305に送る。これにより、シーケンス1のコマンドを実行することができるようになる。その実行が完了すると、「オペレーション完了(operation complete)」を示すメッセージがグローバルリソーススケジューラ301に送り返されて、グローバルリソーススケジューラが、該当するハードウェアモジュールを、必要に応じて他のコマンド又はシーケンスで使えるように割り当てることが可能になる。
【0029】
処理の中で、複数の通知メッセージ501(図5を参照)が、それぞれのハードウェアモジュールから、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302に蓄積され、すべてのメッセージを受信すると、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、「VSA1及びVSG1準備完了(VSA1、VSG1 ready)」メッセージ502を、イベントレジスタ305に送る。これは、符号506で示されるイベント1の準備が整ったことを意味する。シーケンス制御コマンド「FIFO HOLD on Event 1」(例えば、図4参照)は終了し、FIFOレジスタ306及び307の、それぞれ意図されたコマンド504及び505により、格納された計測及び制御コマンドのシーケンスが実行され得るようになる(すなわち「保留」解除503)。これらのコマンドが実行されている間、その結果は、計測キャプチャ/結果データベース109に格納され、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302は、VSA1及びVSG1が利用可能であることを示す、ハードウェア作業完了メッセージ(意図されるコマンド504及び505の「HW OPC」)を受信する。計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302から、イベント1のシーケンスが完了したことを示す1つのメッセージがグローバルリソースマネージャ301に送られる。これにより、次のシーケンス(HWIMs 303、304、310、及び/又は311に待ち状態になっている場合がある)が、ハードウェアモジュールFIFOレジスタ306、307、312、及び/又は313に読み込まれることができるようになり、次のコマンドのシーケンス(例えば、イベントシーケンス2(Event Sequence 2))の実行に進めるようになる。
【0030】
本開示および対応する図面から分かるように、先行技術(例えば、図1に示されるようなもの)は、計測コマンドのシーケンスを処理する手段を有していないという指摘をすることは重要である。いつリソースが利用可能になっていそうかと判断するのはユーザー任せであり、複数のコマンドはばらばらに入力される。対照的に、図3〜5に示す実施形態では、コマンドのシーケンスを、それ自身の閉ループシーケンス処理機能に基づいて処理することが可能な、改良された試験システム300が提供されている。したがって、ユーザーがリソースの利用可能性やタイミングについて知る必要は全くない。典型的にこれらに関連するロジスティックの機能は、開示されたシステムにより、それ自身の内部のシーケンス処理能力を用いて実行される。コマンドのシーケンスからなる試験プログラムの全体を、SCPIコマンドのような簡単な試験プロトコルのシーケンスを単に作成することで、まとめあげることができる。これにより試験プログラムの開発は、より容易に、速く、費用も少なくなることで改善される。また、不可分なリアルタイムの作業を実現するため、モジュールをまたがる機能をちょうどよいタイミングで決定的に集成することが可能になる。これにより、ばらばらに機能していた複数のモジュールが、シーケンスが継続する期間にわたり、「その場」で、全体として緊密に結びついたシステムへと変貌する。
【0031】
例えば、1つのチャンネルのシーケンスプレーヤが、イベントレジスタに格納されているイベント1を、イベント1にかかっている「保留」503を解除して、リリースすると、試験システム300は、意図されるコマンド504及び505が、FIFOレジスタ306及び307に読み込まれているそれぞれのコマンドの実行を同時に開始するように促す。そして、そのシーケンスが、特定されたチャンネルのすべての要求されたハードウェアモジュールにわたって実行されるが、その際、ユーザーは、寄せ集められたコマンドのシーケンスを実行するために、その基盤をなすハードウェアモジュールの利用可能性を検知し、スケジュールを立て、同期させ、又はコーディネーションを管理する必要はない。ユーザーは、所望の計測器レベルのコマンドのシーケンスを単に選び格納し、所望のチャンネルを選択するだけで、試験システム300が当該シーケンスを上述のように実行する。そのイベントの「保留」を解除して、保留になっているハードウェアの作業を、多くの独立したハードウェアFIFOにまたがって同時に開始することは、すべてのハードウェアFIFOにコマンドのすべてのシーケンスがあらかじめ読み込まれていることとあわせて、さらに、グローバルシステムクロックのハードウェアタイミングにしたがって、それぞれのコマンドが完全に実行されるという事実を加えて、ユーザーの所望の、直接的にリアルタイムでDUTに働きかけるコマンドのシーケンスが決定的に、しかもユーザーに、1つ1つの指示毎に、プログラムと継続的に相互作用をすることを不要としながら実行されることを保証するものである。ユーザーが、計測のシーケンスを作成するために、どんなハードウェアも、信号分析も、計測器のその他の非ハードウェアコマンドも、任意の順序でどのモジュール上ででも、最大に利用することができるという事実により、試験の対象となるデバイスと直接相互に連結するどんな所望の計測プログラムをもユーザーが作成することが可能になる。ユーザーは、特定の、変更がきかない計測のシーケンスのみに縛られるということはない。このように、開示された発明は、本質的には、不可分で決定的な計測プロセッサであって、指示のコマンドのセットが、「指示セット」として設定されるものである。
【0032】
VSA1及びVSG1のコマンドシーケンスのそれぞれの実行が終了するとすぐに、当該シーケンスに関与していたそれぞれのVSA及び/又はVSGリソースに関連付けられたFIFOレジスタがそれぞれ、あらかじめ読み込まれていた「ハードウェア作業完了(HW OPC)」コマンドを実行し、そうすることで、当該ハードウェアの作業が終了し、当該ハードウェアモジュールが利用可能になったことを示す。ハードウェア作業完了(HW OPC)メッセージは、計測プロセッサ/シーケンスプレーヤ302に送られ、そこに格納され、全てのシーケンスのハードウェアモジュールがハードウェア作業完了(HW OPC)レポートを送ってくるのを待つ。ハードウェア作業完了(HW OPC)レポートがすべて受信されると、グローバルリソーススケジューラ301内のハードウェアモジュールは同時にリリースされ、実行待ちの他のタスク(それが個別のコマンドであれ、他のコマンドのシーケンスであれ)に、即利用できるようになる。もし、それらのタスクが他のチャンネル(図5に開示される例では、これはチャンネル2又はそれ以降のチャンネルである)を使うために待機している場合には、当該チャンネルに向けて待機のタスクが発せられるとともに、そこで必要とされるハードウェアは予約され、以下、前述のサイクルが繰り返される。ユーザーが定義する計測のシーケンスに要求されるすべてのモジュールが予約され、同時にリリースされるという事実、及び、前記ユーザーが定義するシーケンスが、単一の計測チャンネルでのみ実行されるという事実により、ユーザーは、計測する期間にわたって、カスタム化された「計測器」を本質的に定義することが可能になる。したがって、この開示された実施形態により、高度に精密な計測を構成し、さらなる介入やコーディネーションの必要なく、被験デバイスを直接用いて実行することが可能になる。そして、当該計測器は、計測「プロセッサ」に本質的には変貌することとなる。
【0033】
試験システム300は、もしあればデータがハードウェアから戻ってくると、チャンネル1に、分析コマンド及び非ハードウェアモジュールコマンドを続けて実行することを可能にする。したがって、試験システム300は、結果として生じるデータをそのデータベースに格納もする。ユーザーが定義したコマンドのシーケンスがすべて終了するまで、試験システム300は、即座にかつ同時並行で、ハードウェアコマンド、分析コマンド、及び非ハードウェアコマンドを実行し続ける。その時点で、チャンネル1は、シーケンスを実行するタスクが完了したことを宣言し、即座に、次の保留になっている、ユーザーのタスクで当該チャンネルを使用することを要求しているタスクを処理し始める。このプロセスは、上に述べたようなやり方で繰り返される。
【0034】
開示されたグローバルリソーススケジューラ301は、使用中の、および次なるユーザータスクに要求されているリソースを即座に利用できるかどうかに基づいて、システムのチャンネル及びモジュールへの入力経路を、ロックをかけたり、ロックを解除したりするにあたってキーとなる構成要素である。ロックをかけたり解除したりすることは、開示されたコーディネートされたシステムおよび方法にとって、同じシステムのリソースを競合して求める他のユーザーが存在する条件下で、当該システムが、簡単で効率的で適時の、所望のシステム構成要素の集成を利用できることを保証し、ユーザーが定義したシーケンス中のコマンドが、すべてのその要求される独立のモジュールにまたがって不可分に実行されることを保証するためには必要な機能である。グローバルリソーススケジューラ301は、ユーザーのプログラムが、システムのリソースを管理することなく、システムのリソースが利用可能な時には、確かに、即座に利用できるようにする。そのために、グローバルリソーススケジューラ301は、先着順という公平なスケジューリングのアルゴリズムを用いるが、当該分野で広く知られているさまざまな方法で実装することが可能である。
【0035】
本技術において説明されるようなシステム、又はその構成要素のいずれもが、コンピュータシステムの形態で具体化することができる。コンピュータシステムの典型的な例としては、汎用コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路要素、及び本技術の方法を構成する工程を実施することが可能な他のデバイス、若しくはデバイスの配列が挙げられる。
【0036】
このコンピュータシステムは、コンピュータ、入力デバイス、ディスプレイユニット、及び/又はインターネットを含む。コンピュータは、マイクロプロセッサを更に含む。マイクロプロセッサは、通信バスに接続される。コンピュータはまた、メモリも含む。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び読み出し専用メモリ(ROM)を含み得る。コンピュータシステムは、記憶デバイスを更に含む。この記憶デバイスは、ハードディスクドライブ、又はフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブなどのような、取り外し可能記憶ドライブとすることができる。この記憶デバイスはまた、コンピュータシステム内に、コンピュータプログラム又は他の命令を読み込むための、他の同様の手段を用いることもできる。コンピュータシステムはまた、通信ユニットも含む。この通信ユニットにより、コンピュータは、入出力インターフェースを通じて、他のデータベース及びインターネットに接続することが可能になる。この通信ユニットにより、他のデータベースへのデータの転送、並びに他のデータベースからのデータの受信が可能になる。通信ユニットは、データベース、並びにLAN、MAN、WAN、及びインターネットなどのネットワークに、コンピュータシステムが接続することを可能にする、モデム、イーサネット(登録商標)カード、又は任意の同様のデバイスを含み得る。コンピュータシステムは、入出力インターフェースを通じてシステムにアクセス可能な、入力デバイスを通じて、ユーザーからの入力を容易にする。
【0037】
コンピュータシステムは、入力データを処理するために、1つ以上の記憶要素内に記憶された、命令のセットを実行する。この記憶要素はまた、必要に応じて、データ又は他の情報も保持することができる。記憶要素は、情報源、又は処理機械内に存在する物理メモリ要素の形態にすることができる。
【0038】
命令のセットは、処理機械に、本技術の方法を構成する工程などの特定のタスクを実行するように命令する、様々なコマンドを含み得る。命令のセットは、ソフトウェアプログラムの形態にすることができる。更には、このソフトウェアは、個別のプログラムのコレクション、より多くのプログラムを有するプログラムモジュール、又は本技術におけるような、プログラムモジュールの一部分の形態にすることができる。このソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態での、モジュラープログラミングも含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、先行の処理の結果、又は別の処理機械によって作成される要求に応答することができる。
【0039】
上記の説明は、当業者が本技術を作製及び使用することを可能にするために提示される一方で、特許取得のための要件に関連して記載される。本説明は、本技術を実施するための、現時点で想到される最良の方法を記述している。好ましい実施形態への様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本技術の一般的原理は、他の実施形態に適用することができ、本技術の一部の特徴は、対応する他の特徴の使用を伴うことなく、使用することができる。したがって、本技術は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載される原理及び特徴に一致する最も広い範囲が与えられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5