【実施例】
【0016】
図1は、硬口蓋10からの多成分脳系生体信号100と、標準的な頭皮EEG脳波信号との比較図である。硬口蓋10に連結された又はその近傍にある基準電極11及び左側信号電極12を含むセンサを使用して、多成分脳系生体信号100を検出する。幾つかの実施例において、センサは、右側信号電極13を含んでもよい。多成分脳系生体信号100は、生の硬口蓋生体電位信号である。生のフィルタリングされていない頭皮EEG信号200は、右側乳様突起上の基準電極を用いてF4A2電極20(国際10−20法基準で頭皮のF=前側、4=右側)から検出される。多成分脳系生体信号100は、生の頭皮EEG信号200と比較してあまり目立たない生の硬口蓋生体電位信号のパターンを示す。多成分脳系生体信号100は、生の頭皮EEG信号200と比較すると極めて大きい電圧範囲を有する(後者が10μVであるのに対して前者は100μV)。これは、硬口蓋10の多成分脳系生体信号100の副成分、特に脳系副成分信号を判定するために硬口蓋10の多成分脳系生体信号100に対して特別な分析を行うことが必要であることを示している。
【0017】
基準電極11は、口内脳系信号との頭皮EEGの混合を避けるように硬口蓋10に載置される。左側信号電極12及び右側信号電極13は、コットンガーゼで覆われた金製の又は金メッキされた電極であってもよい。幾つかの実施例において、食塩水を使用してガーゼを湿らせてもよい。
【0018】
図2は、硬口蓋10からの多成分脳系生体信号100が、本発明の実施例によって処理された後、様々な副成分信号に分割される様子を示す。副成分信号は、8〜14Hz脳波副成分信号101、眼球運動副成分信号103、心臓副成分信号104及び呼吸副成分信号105を含みうる。
【0019】
図3は、硬口蓋で検出された8〜14Hz脳波副成分信号102と8〜14Hz脳波頭皮EEG信号201との間の強い相関を示す。
【0020】
図4は、被験者が100から7ずつ逆算する(つまり、100,93,86,79等)精神活動を行っているときの、被験者の硬口蓋で検出された3.5〜30Hz脳波副成分信号102と3.5〜30Hz脳波頭皮EEG信号202との間の強い相関を示す。被験者は、照明の明るい環境的に制御された一室に着席させていた。
【0021】
図5は、被験者が視線を素早く上下に動かしているときの、硬口蓋10で検出された80μV範囲の多成分脳系生体信号100と、EOG電極30により被験者の右側の頭皮で検出された53μVの脳波EOG信号300との強い相関を示す。この実施例では、多成分脳系生体信号100の副成分に対するフィルタリングや分離は必要なかった。
【0022】
図6は、被験者が視線を素早く左右に動かしているときの、硬口蓋10で検出された50μV範囲の多成分脳系生体信号100と、EOG電極30により被験者の右側の頭皮で検出された558μVの脳波EOG信号300との間の相関を示す。この実施例では、多成分脳系生体信号100の副成分に対するフィルタリングや分離は必要なかった。
【0023】
図7は、硬口蓋10で脳波副成分信号104の0.5〜249Hzで検出された心臓信号と、ECG電極40により検出されたフィルタリングされていないECG信号400の心臓信号との間の相関を示す。被験者は、記録中、照明の明るい環境的に制御された一室に着席させていた。この適用例では、DCオフセットを除去するために多成分脳系生体信号100をフィルタリングした。
【0024】
図8は、被験者が速い深呼吸501を行った後、息502を20秒間止めていた間の、硬口蓋10で検出された脳系多成分生体信号から抽出された1.5Hz〜249Hzでの呼吸副成分信号106と、1.5Hz〜249Hzでフィルタリングされた頭皮EEG信号203及び右眼EOG信号301と、鼻カニューレでの呼吸信号500との間の相関を示す。このグラフは、頭皮でのEEG及びEOGが変化すると同時に硬口蓋での生体電位が変化することを示し、硬口蓋での多成分生体信号と頭皮での関連する信号との間に強い時間的関係があることを示している。
【0025】
図9は、口内組織の形状に適合して快適性及び生体適合性を提供する、硬口蓋からの多成分生体信号を検出するのに使用できる様々な電極の実施例を示す。柔軟な材料(ガーゼ又は発泡体)によって、機械的安全性を提供し、電極の周囲に電解質を維持させてもよい。所望の他の材料を電極に使用してもよい。電極組立体50は、金属電極51と温度センサ52とを含む。温度センサ52との電極51の組み合わせは、口腔又は他の身体部位のためのものである。電極は、組織からの電流を検出し、温度センサは、口内温度、運動アーチファクト(温度は生体電位測定ではないため)及び口内空気流の判定を可能とする。口内温度の平均値は、サーミスタ、半導体IC、熱電対又は他の適切なセンサを用いて推定することができる。空気流により生じる温度の変動を用いて、前処理の一部として、又は、マイクロコントローラ(μCU)により空気流の有無を判定できる。電極の一実施例は、リード線を有する金属電極61と、温度センサ62と、柔軟な吸収性カバー面63とを含んでもよい凸状の電極組立体60とすることができる。電極の他の実施例は、リード線を有する金属電極71と、温度センサ72と、柔軟な吸収性カバー面73とを含んでもよい凹状の電極組立体70とすることができる。電極の第3の実施例は、リード線を有する金属電極81と、柔軟な吸収性カバー82とを含んでもよい平坦な電極組立体80とすることができる。基準電極11は円形状の金属電極とすることができる。
【0026】
図10は、口内部ユニット601と外部ユニット650とを含む、睡眠障害を検出するためのシステム600の概略図である。口内部ユニット601は、硬口蓋の中央近傍に位置付けられる凸状の電極60と、歯茎近傍の左側及び/又は右側に位置付けられる1つ又は2つの凹状の電極70とを含んでもよい。
【0027】
口内部ユニット601は、センサユニット602と、電源603と、電力管理部604と、マイクロコントローラ605と、送信ユニット606とを含んでもよい。口内部ユニット601は、図示のような又はデータ管理マイクロコントローラ(μCU)の一部としての専用の回路を使用して、多成分生体信号を増幅、フィルタリング及び/又はデジタル化してもよい。デジタル信号は、遠隔地の受信器、例えば、スマートフォンやコンピュータ、クラウド等へ送信するために、高周波(RF)モジュールを通過させてもよい。
【0028】
多成分脳系信号の検出は、脳系多成分生体信号の検出を自動で(又は手動で)開始できる適切な体腔内に内部ユニット601を載置することによって実現してもよい。信号の検出は通常直ちに開始される。しかしながら、温度センサ部を追加して、適切な運転条件を確保するために環境温度を監視したり、データ収集中の温度を監視したりしてもよい。また、温度センサを使用して口中内の空気流の変化を監視することもできる。また、追加のセンサを追加することによって、光学PPGセンサ/モニタや、加速度計、ジャイロスコープ、GPS、圧力、カメラ、生理的/化学的モニタ等から、酸素飽和度を含む様々な追加の生理的変数を監視することもできる。脳系の検出器は、脳波を含む多パラメータ生理的信号を監視する。
【0029】
検出器(すなわちセンサ)は、以下のセンサのいずれかに基づくものとすることができる:抵抗モード電極、容量モード電極、電流モード電極、パッシブ電極、アクティブ電極、磁性モード検出器(magnetic mode detectors)、誘導モード検出器(inductive mode detectors)、音響モード検出器(acoustic mode detectors)、光学又は電気光学モード検出器(optical or electro−optic mode detectors)、化学又は生化学モード検出器(chemical or biochemical mode detectors)、生物学モード検出器(biological mode detectors)及び脳系検出器アレイ(脳系検出器は、異なる幾何学的平面に配向された複数のセンサを備えてもよい)。センサは、様々な形状のものとすることができ、様々な金属、金属塩若しくは金属合金、半導体、ポリマー、炭素化合物、導電性織物、複合体、グラフェン、非金属を含むことができる。また、センサは、剛性、半剛性又は他の可撓性材料を備える。センサは、マイクロエレクトロニクス技術を利用してもよい。センサは、使い捨て可能且つ/又は再利用可能なものとすることができる。センサは、遠隔センサを含んでもよい。センサは、その位置及び/又は性能を調節可能として、脳系多成分生体信号の検出を最適化できるようにしてもよい。
【0030】
センサユニット602は、電極により捕捉された硬口蓋からの電気信号を検出してもよく、その電気信号に対して増幅及びフィルタリングを行って運動アーチファクト又は他のアーチファクトを除去して、更なる処理・記憶及び伝送のために、SPIバスを介してマイクロコントローラ(μCU)605に伝達してもよい。
【0031】
信号及び電力の管理スケジューリングがμCU605によって行われる。使い捨て可能又は再充電可能な電力原603から消費されたエネルギーは、μCU605が、データ収集装置、伝送モジュール606及びμCU605自体の作動時間及びデューティサイクルを制御することによって、最小限に抑えることができる。インテリジェント電力管理(intelligent power management)によって、電源603の大きさ及び複雑さを低減することができ、電力線運転システム(power line−operated system)の必要性を除去できる。
【0032】
送信ユニット606によるデータ伝送は、Bluetooth(登録商標)(BT)やBluetooth(登録商標) LE(Low Energy:低エネルギー)(BLE)等の周知の標準的な通信プロトコル、又は、固有のプロトコル又は周波数を介して行うことができる。標準的なプロトコルを使用することによって、より容易な伝送後処理が確実となる。送信ユニット606は、スマートフォン及び他の装置でアクセス可能なBT及びBLEの両方に対応していてもよい。送信ユニット606のアンテナは、
図12〜15に示すように、口内器具取付装置の側壁及び/又は前壁内に組み込んでもよい。
【0033】
外部ユニット650は、受信器ユニット651と、前処理ユニット652と、独立成分解析(「ICA」)プロセッサ700と、生脳系多成分生体信号用の成分アナライザ750とを含む。
【0034】
受信器ユニット651は、送信ユニット606からの信号を受信するように構成することができる。前処理ユニット652は、信号ノイズを出来るだけ除去する。ICAプロセッサ700は、標準的なICAアルゴリズムを使用して、個々の副成分信号を抽出・分離することができる。生の脳系硬口蓋信号の成分を良好に推定することを確実にするために、脳波フィルタ1〜N‐751,752及び753、眼球運動信号プロセッサ710、心臓信号プロセッサ720及び呼吸信号プロセッサ730がある。
【0035】
生の脳系硬口蓋多成分生体信号の副成分を良好に推定することを確実にするために、前処理ユニット652によりできるだけ多くの信号ノイズを除去することが重要である。前処理ユニット652は、フィルタリングと、電極又はセンサプラットフォーム内に組み込まれたセンサ(サーミスタ)とを用いて非生理的ノイズを除去してもよい。電極は、その後面側において、口内取付装置によって遮蔽されて、舌及び/又は内側顔面筋による外乱を防止するようにしてもよい。また、サーミスタは、組織に対する装置の移動を検出する手段を提供するとともに、呼吸による温度の大きな変化を補正する手段を提供する。追加の処理としては、ローパスフィルタリング等のデータフィルタリングがある。追加の前処理としては、センタリング及びホワイトニングがある。センタリングは、実データからデータの平均を除算することによって各成分からその平均を除去する。データのホワイトニングは、生データを相関のないものにして、各副成分が出来るだけ独立したものにすることを確実にするために行われる。前処理は、各電極により検出される生信号内に有意な差異を生成するような電極の特殊な配置(左右)によって、眼球運動を特定できる。二乗平均平方根値を判定することができ、閾値検出器を組み込んでもよい。
【0036】
前処理ユニット652によるデジタル化を電子的に行うことによって、効率的なデジタル処理並びに信号の増幅、及び/又は、必要であれば生体信号の減衰を可能とする。また、前処理は、電気的ノイズや音響的ノイズ、機械的ノイズ、他のアーチファクト、異種金属によるガルバニ電流又は舌のアーチファクト等の望ましくない生理的及び/又は非生理的信号をフィルタリング、遮蔽、遮断、又はアルゴリズムによって排除又は除去することによって、望ましくないノイズを除去することを図る。生体信号に含まれる望ましくないアーチファクトは、記録を妨害しうる。信号の正規化もこの段階で行われる。
【0037】
ICAプロセッサ700は、生の硬口蓋多成分生体信号の個々の副成分信号を、それぞれの成分を予め知ることなく判定する。各副成分を効果的に判定するために、検出器(センサ)の数は個々の信号成分の数以上とすべきである。実施例は、生体電位を検出するのに、それぞれが全体で6つの検出器を提供する
内蔵サーミスタを有する3つの電極を利用してもよい。この実施例は、4つの副成分生体信号を検出することができる。成分を分離するために、JADEアルゴリズム(Joint Approximate Diagonalization Eignen Matrices:小さいデータセットに対して最も良好に働く傾向がある)を組み込むことができ、これは、コンピュータのICAプロセッサ700又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって使用される。
【0038】
検出された多成分脳系信号の抽出、分離及び個々のパラ副成分信号への分割には、脳系多成分信号を抽出し、分離し、それを構成する物理的信号及び/又は他の所望の信号へ分割する適切な手段を使用することができる。
【0039】
一次副成分信号は、脳系生体電磁信号、心臓生体電磁生体信号、EEG、局所組織生体電磁信号、眼球双極子生体電気生体信号、筋肉生体電磁生体信号、舌生体電磁生体信号、心臓血管系脈動生体信号(例えば、血液量パルス)、呼吸系脈動生体信号、運動系生体信号、生体機械的生体信号及び/又は生体音響生体信号を含んでもよい。各副成分信号は、一般に、複数の周波数を含み、重なっている場合もある異なるダイナミックレンジを有しうる。幾つかの実施例において、心拍数、呼吸量、心拍変動、脈波伝搬速度、動脈圧を含む追加の生理的パラメータを導出できる。
【0040】
様々な信号処理又は信号分析手段(アルゴリズムで実施される)を利用して、上述の副成分生体信号を抽出することができる。副成分生体信号の抽出は、適宜、パターン認識、独立成分解析、主成分分析、線形解析、周波数領域解析、相関次元(CD)等の時間周波数・非線形技術、位相空間プロット、微分エントロピー、ウェーブレット基底ヒルベルト・ホアン変換(HHT)、及び同様の手段の使用を含んでもよい。
【0041】
幾つかの用途において、信号の分離又は抽出は、必要でない場合がある。例えば、眼球運動信号は、他の口内信号よりも大きい傾向があるため、眼球運動の用途では、他の信号の抽出が不要な場合がある。
【0042】
幾つかの実施例において、データ点、閾値及び/又はデータの傾き等の鍵となる副成分信号特性が、対象の信号から抽出又は分離される。これは、脳系信号パターンの特定と、該当する特性を抽出する命令への変換、又は、タスクを実行する命令の発行を伴う。所望のアルゴリズムを使用して、幾つかの関連する鍵となる値により信号を表す値を自動的に推定/計算してもよい。加算、減算、乗算、除算等の簡単な方法から、時間に基づく手法や周波数に基づく手法、主成分分析、サポートベクタマシン、遺伝的アルゴリズム、特性感受性学習ベクトル量子化(Distinctive sensitive leaning vector quantization)等を伴う他の複雑な技術まで、非常に様々なアルゴリズムを実施することができる。
【0043】
幾つかの実施例において、副成分生体信号の鍵となる特徴は、命令に分類又は変換してもよい。分類工程は、クラスを信号から抽出された一組の特徴に割り当てる。クラスは、特定された精神状態の種類に対応している。この工程は、「特徴変換」として示すこともできる。
【0044】
鍵となる特徴に関する情報は、ユーザ/オペレータに提供又は表示してもよく、且つ/又は、抽出された副成分生体信号を基線信号(baseline signal)のデータベースと比較して装置を制御したり、病気、疾患又は状態の診断を補助したり、且つ/又は、装置機能の状態を報告したりするといったタスクを実行するために使用してもよい。
【0045】
副成分生体信号を抽出した後、個々の副成分生体信号は、バイタルサインの計算、他の装置を制御する命令の一部、又は、特定の特徴の抽出等の追加処理を実行するといった他の目的のために表示又は利用することができる。
【0046】
個々の副成分信号に分離した後、生脳系信号は、更に分析又はバンドパスフィルタ750を用いて様々な周波数帯域に分離し、その後、表示したり命令を発行するために使用したりできる。これは、脳波フィルタ1〜N−751を含んでもよい。フィルタは、対象の帯域752,753に応じて、ハードウェア内で、プログラムするか又は維持してもよい。
【0047】
眼球運動副成分信号710は、急速眼球運動(REM)を観察して睡眠ステージを判定するために表示することができる。
【0048】
心臓信号720は、基本心拍数を示すことができ、またR波ピーク及び心拍変動を判定するのに使用できる。
【0049】
呼吸信号730は、呼吸量を判定するために表示することができる。
【0050】
様々なデータは、口内部ユニット及び/又は外部ユニットに組み込まれたデータ記憶装置に記憶してもよい。
【0051】
幾つかの実施例において、本システムは組織刺激装置を含んでもよい。
【0052】
幾つかの用途において、脳系生体信号マップを展開して、体内部位についての電気的活動のトポグラフィマッピングを実現ができる。
【0053】
酸素飽和度、加速度計を介した頭部位置、温度及び脳系信号等のための複数のセンサを組み込んだ代替の実施例を
図11に示す。
【0054】
図12は、硬口蓋の中心に接触するように構成された凸状の電極60と、歯茎に接触するように構成された凹状の電極70とを含む口内部ユニット800の実施例を示す。口内部ユニット800は、マウスガードプラットフォームとすることができ、義歯接着剤と同様の歯列及び/又は口内組織との接触を維持するための生体適合性接着剤を組み込んでもよい。幾つかの実施例において、口内部ユニット800は、上述の機能の幾つか又は全てを実行する電子回路601を備えてもよい。電極は、歯茎及び硬口蓋に対してわずかなばね力を加えて電極が口内組織と接触した状態を確保する構造体内に位置付けられてもよい。
【0055】
図13は、硬口蓋と、電極11,12,13及び温度センサ52との接触を維持するための可撓性横断支持バンド901を組み込んだ口内取付装置900を示す。口内取付装置900は、電子機器601と送信ユニット606とを含んでもよい。
【0056】
図14は、下顎とフレキシブル電子回路との接触を維持するための生体適合性接着剤を組み込んだ薄い可撓性プラットフォームを含む口内取付装置1000を示す。電極11,12及び13は、歯茎及び硬口蓋に対してわずかなばね力を加えて電極が口内組織と接触した状態を確保する構造体内に位置付けられる。幾つかの実施例は、
センサ52、電子機器601及び送信ユニット606を含んでもよい。
【0057】
図15は、硬口蓋の左右側部に接触する電極と、硬口蓋に接触する1つの電極と、伝送システムとを有する口内取付マウスガード800の一例及び外部ユニット650の例示的な実施例と共に人の頭部の矢状面図を示す。外部ユニットは、スマートフォン、コンピュータ又は他の計算装置とすることができる。
【0058】
本発明の実施例は、脳系多成分生体信号の副成分信号を、閉塞性睡眠時無呼吸症(「OSA」)のスクリーニング、診断及び監視に利用してもよい。OSAは、舌による移動及び上気道の閉塞や鼻、口及び喉内の軟組織による上気道の狭化が原因で睡眠中に起こる呼吸疾患である。この現象は、吸入中に上気道内で空気流が周期的に遮断されることにより、いびきや再発性の呼吸の中断を引き起こす。
【0059】
OSA及び他の睡眠障害の診断における現在の技術水準では、眠っている患者のEEG、呼吸信号、心臓信号、筋緊張、眼球運動及び脚運動を評価するのに多チャネル睡眠ポリグラフ検査を使用する。これは、頭皮への複数のEEGリード線の取り付け、並びに、患者の様々な部位に取り付けられる、マイクロフォン等の他のトランスデューサ、心電計(「ECG」)電極、筋電計(「EMG」)電極及びパルスオキシメータの取り付けが必要であり厄介である。家庭での使用を意図した測定できるパラメータの少ない装置も入手可能であるが、それでも複数の接続が必要である。
【0060】
本発明の実施例は、多成分脳系生体信号(図
2)の検出を可能とし、その多成分脳系生体信号から、アルファ波及びその他の波(図
3)や眼球運動(図
5)、呼吸(図
8)、ECG(図
7)を含む脳系電気的活動を含む副成分生体信号を抽出することができる。脳の電気的活動副成分信号は、睡眠状態/ステージ及び全体の睡眠時間の判定を可能とすることができる。呼吸副成分生体信号は、無呼吸イベントの判定を可能とすることができる。眼球運動副成分生体信号は、急速眼球運動(REM)の判定を可能とすることができる。また、ECG副成分生体信号は、睡眠中の心拍数の判定を可能とすることができる。これらの副成分生体信号の各々又は組み合わせを分析することによって、手動で又はコンピュータシステム/プログラムを用いて、患者の睡眠パターンを判定してOSAを診断することができる。
【0061】
幾つかの実施例において、センサを含む口内装置に埋設されたコンピュータチップによって行われうる、副成分信号の一部又は全てに対する信号処理(フィルタリング、増幅、デジタル化、記憶等を含む)及び記録が実現できる。得られたデータは、有線又は無線技術(Bluetooth(登録商標)等)により利用できるように受信装置(スマートフォン、コンピュータ又は専用の装置)に送信するか、後で受信装置にアップロードすることができる。
【0062】
他の実施例において、多成分脳系生体信号は、信号処理のために外部の受信装置(スマートフォン、コンピュータ又は専用の装置)に送信される。多成分脳系生体信号は、センサによって検出されたときに送信してもよいし、後で検索できるように口内装置内の記憶装置に記録してもよい
【0063】
必要であれば、更なる実施例において、多成分脳系生体信号を検出するセンサに追加の二次センサ(すなわち、加速度計、熱電対、O
2飽和センサ、CO
2センサ、空気流量計等)を補足してもよく、多成分脳系生体信号と組み合わせて使用することにより、睡眠中の頭部位置や酸素脱飽和及び他のイベントを判定してもよい。
【0064】
幾つかの実施例において、口内装置は、患者の口から取り外した時に自動で
オフにしてもよい。他の実施例において、口内装置は、手動でオフにしてもよい。その後、装置に記憶された信号を、信号データを解釈するためのソフトウェアプログラムを含むコンピュータシステムにアップロードして、医師又は他の医療従事者が行う診断に利用することができる。
【0065】
幾つかの実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された電気的脳活動副成分信号は、加速度計からの信号と共に使用することによって、軍人、スポーツ参加者、又は危険を伴う職業又は活動に従事する他の人々において脳振とうや脳卒中、発作等の外傷性脳損傷を検出することができる。外傷性脳損傷の検出は、現在の副成分信号を既存の基線信号と比較することによって容易にできる。既存の基線信号は、試験が行われた特定の患者から記録したり、患者から以前に記録された複数の信号を統合したもの若しくは個体群のセグメントから導出された汎用の基線としたりできる。他の実施例において、これらの信号は、パフォーマンスを監視するのに使用できる。
【0066】
幾つかの実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された副成分信号は、競技中のアスリートの能力又は戦場での兵士の能力を向上させるために、彼らのトレーニングを最適化したり、パフォーマンスに関してフィードバックを提供したりできる。検出された脳系多成分信号から抽出された副成分信号は、バイオフィードバック用途に使用してもよい。
【0067】
他の実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された脳波及び筋肉活動副成分信号は、全身麻酔下の患者の意識レベルを判定するのに使用できる。
【0068】
他の実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された副成分信号は、糖尿病を患う患者の低血糖症を示す異常な脳波パターンを検出するのに使用できる。
【0069】
他の実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された脳系生体信号、眼球運動、頭部位置、呼吸信号及び他の副成分信号は、様々な装備の動作を操作する副成分信号を解釈する脳‐コンピュータインタフェースを用いた幅広い装備及びツールを精神的に操作することが可能な、身体に障害を有する個人を支援するのに使用できる。装置の動作としては、例えば、車椅子の移動及び監視や、義肢の動作等が挙げられる。
【0070】
他の実施例において、検出された脳系多成分信号から抽出された脳波及び眼球運動副成分信号は、広告又はメディアプログラミング評価のために監視できる。
【0071】
他の実施例において、ユーザは、そのユーザの脳波を変更できるように訓練することによって、検出された脳系多成分信号から抽出された副成分信号を中央コンピュータに送信して、携帯電話やビデオゲームコンソール、テレビ、音楽システム又はDVDプレイヤーを自動的に制御したり、部屋の温度設定を変更したり、アラームシステムを制御したり、台所の電化製品を制御したり、自動車のコンピュータシステムを制御したりできる。例えば、検出された脳系多成分信号から抽出された副成分信号は、呼吸、眼球運動及び他の有用なパラメータに関連する副成分信号を監視することによって、モータ車両のオペレータの眠気や鎮静剤又は薬物関連障害を検出するのに使用できる。この用途のための装置は、車載コンピュータを介して脳系多成分信号を収集及び処理するノーズクリップ、マウスピース又はそれらの組み合わせの形態とすることができ、運転手が運転している最中に眠くなったり寝てしまったりした時に、車載コンピュータがアラームシステムを起動して、通知又は警告を発行するようにできる。
【0072】
他の実施例において、装置は、検出された脳系多成分信号から抽出された眼球運動及び他の生体信号等の副成分信号を利用して、自動車や飛行機等の機械を、思考制御を用いて、特に複雑で迅速且つ緊急の動作を行うように制御することができる。例えば、一用途として、戦闘・ドローンパイロットの反応時間を向上し、高性能又は戦時状況下の航空機の制御を支援することができる。
【0073】
本システムの代替の実施例において、システムのセンサ及び/又は他の構成要素は、軟口蓋又は歯茎等の軟組織内に植設してもよいし、あるいは、歯又は歯科インプラント内に植設してもよい。あるいは第3の代替例として、口腔以外の身体の部分に植設してもよい。例えば、本システムのセンサ及び/又は他の構成要素は、軟口蓋内に植設して、装置内部の圧電材料を介して自己発電させることができる。あるいは、他の例において、本システムのセンサ及び/又は他の構成要素は、皮膚の裏側に植設して、誘導的に、容量的に、光学的に又は他の変更方法で周期的に変化させてもよい。
【0074】
他の代替の実施例において、本システムのセンサ及び/又は他の構成要素は、スイマーや水中ダイバーのマウスピース内に位置付けてもよい。
【0075】
第3の代替の実施例において、本システムのセンサ及び/又は他の構成要素は、個人の鼻孔内に快適に載置できるように設計されたノーズクリップに取り付けてもよい。
【0076】
本明細書で説明した実施例の多くは、口腔への用途を説明しているが、本明細書で説明したシステム及び方法は、身体の開口又は切開部を通じてアクセス可能な他の内部組織に適用してもよい。
【0077】
上述の明細書において、様々な好適な例示的な実施例を添付の図面を参照して説明してきた。しかしながら、それらに対して様々な変形又は変更を行ってもよいこと、また、特許請求の範囲に記載された本発明のより広い範囲から逸脱することなく追加の例示的な実施例を実施してもよいことは明らかであろう。従って、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的なものとしてみなされるべきである。