特許第6387414号(P6387414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6387414自己穿孔リベット及び自己穿孔リベット留めする方法及び自己穿孔リベット留め接合部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387414
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】自己穿孔リベット及び自己穿孔リベット留めする方法及び自己穿孔リベット留め接合部
(51)【国際特許分類】
   B21J 15/00 20060101AFI20180827BHJP
   B21J 15/10 20060101ALI20180827BHJP
   F16B 19/08 20060101ALI20180827BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B21J15/00 U
   B21J15/10 C
   F16B19/08 A
   F16B5/04 B
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-538594(P2016-538594)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公表番号】特表2017-506158(P2017-506158A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2014072452
(87)【国際公開番号】WO2015086203
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】102013020504.2
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】バーティグ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスリング マティアス
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/087984(WO,A1)
【文献】 特開2004−060855(JP,A)
【文献】 特表2013−502550(JP,A)
【文献】 特開2013−215807(JP,A)
【文献】 特開平09−317730(JP,A)
【文献】 米国特許第06325584(US,B1)
【文献】 特開2006−17207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/00
B21J 15/10
F16B 5/04
F16B 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面において切頭円錐形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さいことを特徴とする、自己穿孔リベット(10)
【請求項2】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が長手方向断面においてアーチ形であり、
前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)と前記シャンク径(DS)との比が0.3より小さいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)
【請求項3】
前記凹所(22)が長手方向断面において尖頭アーチ形であることを特徴とする、請求項に記載の自己穿孔リベット(10)
【請求項4】
前記凹所(22)が円筒形部分を有しないことを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)
【請求項5】
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きいことを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)
【請求項6】
頭部径(DH)を有する頭部(12)及びシャンク径(DS)を有するシャンク(14)を備え、前記シャンク(14)は前記頭部(12)とは反対側の足端部(18)に軸線方向深さ(LB)をもった軸線方向凹所(22)を有し、前記足端部(18)において前記シャンク(14)が平面部分(20)を有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベット(10)において、
前記凹所(22)が凹所容積を有し、前記凹所容積の、前記シャンク(14)の体積に対する比が0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きいことを特徴とする自己穿孔リベット(10)。
【請求項7】
前記平面部分(20)は、環状面部分(20)として設計されかつ断面において半径方向幅(BF)を有しており、前記環状面部分(20)の前記半径方向幅(BF)の、前記シャンク径(DS)に対する比が0.05より大きい、及び/又は0.25より小さいことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)
【請求項8】
前記自己穿孔リベット(10)が、少なくとも500HV10の硬度を有する鋼から製造されたものであることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)
【請求項9】
自己穿孔リベット留め接合部(30)であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物(34)及び下部加工物(36)と、自己穿孔リベット、特に請求項1〜請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)が変形した自己穿孔リベット(10*)とを有し、該リベットの頭部(12*)が前記上部加工物(34)に当接することを特徴とする、自己穿孔リベット留め接合部(30)
【請求項10】
前記上部加工物(34)の軸線方向厚さ(L34)が、未変形状態における自己穿孔リベット(10)の前記凹所(22)の軸線方向深さ(LB)以上であることを特徴とする、請求項9に記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)
【請求項11】
打抜きピース(38)が前記上部加工物(34)から切り離されており、前記打抜きピース(38)の体積の50%未満、特に25%未満が、前記変形した自己穿孔リベット(10*)の凹所(22*)内に位置することを特徴とする、請求項9〜請求項10のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)
【請求項12】
前記変形した自己穿孔リベット(10*)のシャンク(14*)が、前記頭部(12*)の方向の力に対してアンダーカット(42)を形成し、前記アンダーカット(42)の、シャンク径(DS)に対する比が、0.1より小さい、及び/又は0.01より大きいことを特徴とする、請求項9〜請求項11のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)
【請求項13】
変形後の前記自己穿孔リベット(10*)の軸線方向長さ(LR*)の、変形前の自己穿孔リベット(10)の軸線方向長さ(LR)に対する比が、0.8より大きい、及び/又は0.95より小さいことを特徴とする、請求項9〜請求項12のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)
【請求項14】
自己穿孔リベット留め接合部(30)、特に請求項9〜請求項13のいずれかに記載の自己穿孔リベット留め接合部(30)を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物(34、36)を有する加工物配置(32)を準備するステップと、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の自己穿孔リベット(10)を打抜き力(52)により前記加工物配置(32)内へ駆動するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記加工物配置(32)は、少なくとも前記下部加工物(36)がその中に駆動される容積を有するダイ(50)上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベット(10)の体積に対する比が1.0以上及び/又は1.5以下であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部径を有する頭部及びシャンク径を有するシャンクを有する、高強度鋼を接続するための自己穿孔リベットであって、頭部の反対側の足端部においてシャンクが軸線方向深さを有する軸線方向凹所を有し、足端部においてシャンクが平面部分を有する、自己穿孔リベットに関する。
【0002】
さらに、本発明は、自己穿孔リベット留め接合部であって、少なくともその一方が高強度鋼から形成された上部加工物及び下部加工物と、上述のタイプの変形した自己穿孔リベットとを有し、該リベットの頭部が上部加工物に当接する、自己穿孔リベット留め接合部に関する。
【0003】
最後に、本発明は、そのような自己穿孔リベット留め接合部を作製する方法であって、少なくとも1つの上部加工物及び1つの下部加工物を有する加工物配置を準備するステップと、上述のタイプの自己穿孔リベットを打抜き力により加工物配置内へ駆動するステップと、を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
上述の形態の自己穿孔リベットは、特許文献1から公知である。この文書では、高強度鋼で作られた少なくとも2つの接合部分を有する自己穿孔リベット留め接合部を提供することが提案されており、これら接合部分は、半管状の自己穿孔リベットにより互いに接続され、該自己穿孔リベットは、鋼で形成され、リベット頭部と端部側にリベット足部を有する隣接のリベットシャンクとを有しており、該リベット足部は、接合動作前の初期状態では切頭された設計である。自己穿孔リベットの形状は、この場合には、軽量金属加工物を接合するためのものとしても知られる自己穿孔リベットの形状、詳細には特許文献2のものと同一であることが意図されている。リベット足部の切頭設計は、高強度接合部分を接合する際の半管状自己穿孔リベットの好適な変形挙動を達成することを意図したものであり、リベットシャンクが拡張しようとする傾向は、尖ったリベット足部と比べて低減される。拡張は、この場合、リベットシャンクがリベット足部により下部接合部分を穿孔するときにのみ生じることが意図されている。接合部分は、500N/mm2より大きい、1500N/mm2までの引張り強さを有することが意図されている。用いられる半管状自己穿孔リベットの引張り強さは、1200N/mm2と1400N/mm2との間の範囲に入ることが意図されているが、2000N/mm2までの値に達することもあり得る。
【0005】
適切な拡張挙動を保証するためには、シャンクキャビティの軸線方向深さとリベット足部の外径との比率は0.3と0.7との間になければならない。シャンクキャビティの軸線方向深さが小さすぎると、リベットシャンクは、上部鋼板を穿孔した後で十分に拡張しない。
【0006】
さらなる半管状自己穿孔リベットは、特許文献3から公知である。ここではシャンクに中央止まり穴ボアが設けられ、ボアの領域でのシャンクの外径と内径との間の差の、シャンクの外径に対する比は、0.47から0.52の範囲内にあることが意図されている。
【0007】
さらに、特許文献4は、高強度及び超高強度鋼を接続するための半管状自己穿孔リベットを開示し、ここで頭部径は一般にシャンク径の1.3倍以下である。
【0008】
しかしながら、前述のように、高強度又は超高強度鋼を接続する従来技術の自己穿孔リベット留め接合部は、様々な問題を有し得る。第一に、拡張の広がりがリベット軸線に対して対称ではない場合がある。さらに、シャンクが圧縮されてねじれる場合がある。場合によっては、リベットを加工物配置の中に押し込むことすらできず、自己穿孔リベットが破損することすらある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 229 254 A2号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 833 063 A1号公報
【特許文献3】国際公開第2007/132194 A1号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第2 314 890 A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景に対して、本発明の目的は、高強度及び超高強度鋼を接続するのに適した、改善された自己穿孔リベット、改善された自己穿孔リベット留め接合部及び改善された自己穿孔リベット留め方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、冒頭に言及した自己穿孔リベットにおいて、凹所の軸線方向深さとシャンク径との比が0.3より小さい、特に0.28より小さい、特に好ましくは0.25より小さい、さらには0.2より小さいときに達成される。
【0012】
凹所の軸線方向深さとシャンク径との比は、好ましくは0.05より大きく、好ましくは0.1より大きく、特に0.12より大きい。
【0013】
さらに、上記目的は、少なともその一方が高強度鋼で形成された上部加工物及び下部加工物と、その頭部が上部加工物に当接した変形した自己穿孔リベットとを有する、自己穿孔リベット留め接合部により達成され、ここで自己穿孔リベットは、特に本発明による自己穿孔リベットである。
【0014】
最後に、上記目的は、少なくとも1つの上部加工物及び少なくとも1つの下部加工物を有する加工物配置を準備するステップと、本発明によるタイプの自己穿孔リベットを打抜き力により加工物配置内へ駆動するステップとを含む、自己穿孔リベット留め接合部、特に上述のタイプの自己穿孔リベット留め接合部を作製する方法により達成される。
【0015】
本発明の自己穿孔リベットによる構造により、自己穿孔リベット留め方法の間に、リベットシャンクの拡張にあまり焦点を合わせたものではない自己穿孔リベットの変形が生成される。むしろ、凹所の比較的短い軸線方向により達成される効果は、接続部がリベットのアップセット動作により形成されることであり、該アップセット動作は、特に加工物配置の高強度鋼の逆圧により引き起こされる。これにより形成されるアンダーカットは、この場合には比較的小さいものになり得る。しかしながら、材料が高強度なので、比較的小さいアンダーカットであっても必要とされる接続強度を実現するには十分である。
【0016】
これに加えて、凹所の比較的小さい軸線方向深さにより達成される効果は、自己穿孔リベットが著しく高い安定性を獲得することであり、これにより高強度及び超高強度鋼を穿孔することさえ可能になる。
【0017】
自己穿孔リベット留め接合部を生成する新規手法に対する寄与は、足端部における平面部分によってもたらされる。換言すれば、切れ刃とも呼ばれる足端部の概ね環状の端部側は、少なくとも比例的に平坦な設計であることが好ましく、詳細には自己穿孔リベットの長軸に対して垂直に配向していることが好ましい。
【0018】
加工物配置の上部加工物は、鋼から製造されることが好ましく、好ましくは800N/mm2より大きい、特に1000N/mm2より大きい引張り強さを有する。少なくとも上部加工物の引張り強さは、1500N/mm2まで及びそれより大きくすることができる。
【0019】
下部加工物の引張り強さは、加熱なしで、およそ600N/mm2までに限定されることが好ましい。
換言すれば、熱処理前は微細構造が特にフェライト−パーライト構造からなる「Usibor(登録商標)」の名称で知られるような加工用鋼(forming steel)でさえ、本発明による自己穿孔リベットにより必要な接続強度で接合することができる。
【0020】
自己穿孔リベットの強度又は硬度は、対応して適合されることは言うまでもない。さらに、自己穿孔リベットは、具体的には回転対称に及び/又は鋼から一体構造で製造される半管状自己穿孔リベットであることは言うまでもない。
【0021】
取付け力を可能な限り小さく保つために、シャンクから頭部への移行部には0.5mm以下の小半径が設けられることが好ましい。
【0022】
最小リベット長は、上部加工物の厚さに、ある長さ、好ましくは2mmより長い、特に3mmに等しい長さを加えたものであることが好ましい。最大リベット長は、加工物配置の厚さの範囲内にあることが好ましい。
このようにして目的が完全に達成される。
【0023】
凹所は、長手方向断面において切頭円錐形であることが特に好ましい。
この選択肢において、足端部領域における凹所の直径は、凹所の底部の領域における直径よりも大きいことが好ましい。この実施形態において、凹所の底部は好ましくは平坦であるが、凹面状又は凸面状に湾曲させることもできる。
【0024】
さらに好ましい実施形態によれば、凹所は長手方向断面においてアーチ形である。
アーチ形は、ここで単一の半径により生成することができ、したがって凹所は長手方向断面において円弧の形状になる。
【0025】
しかしながら、凹所は、長手方向断面において尖頭アーチ又はゴシックアーチであることが特に好ましい。
このようなアーチ形状は、円から作図される2つの弧により生成され、点を有する。
点は、ここでは適切な方式で半径により丸みを帯びていることが好ましい。
さらに、尖頭アーチ形の場合、それぞれに割り当てられた弧の、それぞれの弧の中心点は、長手方向断面で見たときに各々が自己穿孔リベットの長手方向中心軸線の異なる側にあることが好ましい。
【0026】
上述の切頭円錐形及びアーチ形の2つの実施形態において、頭端部から作用する打抜き力が足端部へ適切に導入されることが有利である。
【0027】
全体として、凹所は円筒形部分を有しないことがさらに好ましい。
凹所内の円筒形部分は、不安定性をもたらすことがあり、非常に高い打抜き圧力において破損を生じさせる可能性がある。
凹所内の円筒形部分を省くことにより、自己穿孔リベットの安定性を全体として向上させることができる。
【0028】
請求項1の特徴づけに先立つ節との組合せで別個の発明を構成するさらなる実施形態において、凹所は凹所容積を有し、凹所容積の、シャンクの体積に対する比は、0.25より小さい、特に0.18より小さい、及び/又は0.05より大きい、特に0.1より大きい。
【0029】
この場合の凹所容積は、自己穿孔リベットの足端部から始めて計算される。シャンクの体積は、シャンクが均一な外径を有するところの体積であり、すなわち自己穿孔リベットの可能な移行部分を除くが、結果としてシャンクの体積に含まれる凹所容積を含む。
【0030】
比較的小さい凹所容積は、第一に自己穿孔リベットの大きな安定性をもたらす。第二に、上部加工物から切り離される打抜きピースは、凹所内に受け入れられるのではなく、打抜き動作中にリベットによりリベットの前方で押されることになる。この手段によって有利に達成することができる効果は、より大きな材料変形が、凹所内での変形の代わりに自己穿孔リベット留め工具のダイの中で生じることである。
【0031】
さらに好ましい実施形態によれば、平面部分は環状面部分として設計されかつ断面において半径方向幅を有しており、環状面部分の半径方向幅の、シャンク径に対する比は、0.05より大きい、及び/又は0.25より小さい。
【0032】
自己穿孔リベットは、好ましくは少なくとも500HV10(1630MPa)の硬度、特に少なくとも650HV10、特に少なくとも700HV10の硬度を有する鋼から製造される。硬度は、一般に800HV10より小さい。
【0033】
本発明による自己穿孔リベット留め接合部において、上部加工物の軸線方向厚さは、未変形状態における凹所の軸線方向深さ以上であることが好ましい。
【0034】
さらに、本発明による自己穿孔リベット留めされた接続部の場合、打抜きピースが上部加工物から切り離されており、打抜きピースの体積の50%未満、特に30%未満、好ましくは25%未満、特に好ましくは20%未満が、変形した凹所内に位置することが有利である。
この結果、実質的にアップセットされるような方式で設計された自己穿孔リベットが得られ、その結果として凹所の容積が削減され、したがって打抜きピースが自己穿孔リベット留め動作中にリベットの前方で実質的に押されることになる。
これにより下部加工物の材料は、打抜きピースによってダイ内で適切に移動することができるようになり、したがって該材料は、自己穿孔リベットのシャンク内のアンダーカットの後方に流れる。
【0035】
全体として、変形した自己穿孔リベットのシャンクは、頭部の方向の力に対してアンダーカットを形成し、アンダーカットの、シャンク径に対する比は、0.1より小さい及び/又は0.01より大きいことがさらに有利である。
この結果、アンダーカットの広がりは比較的小さくなる。しかしながら、このような小さいアンダーカットは、高強度鋼を接続するときには必要な接続強度を実現するのに十分である。
【0036】
自己穿孔リベット留め接合部のさらに好ましい実施形態によれば、変形後の自己穿孔リベットの軸線方向長さの、変形前の自己穿孔リベットの軸線方向長さに対する比は、0.8より大きい、及び/又は0.95より小さい。
この結果、その所定の硬度ゆえに比較的小さい程度までしかアップセットしない自己穿孔リベットが得られ、これは同様に半径方向に比較的小さいアンダーカットをもたらす。
【0037】
またこの結果、自己穿孔リベットの最小長さは、上部加工物の厚さに好ましくは3又は3.5mmの値を加えて得ることが好ましく、それに対して、自己穿孔リベットの最大長さは、好ましくは加工物配置の全厚さに1mmを加えて計算されるか又は加工物配置の全厚さに等しい。
【0038】
本発明による方法の場合、加工物配置は少なくとも下部加工物がその中に駆動される容積を有するダイ上に支持され、ダイ容積の、自己穿孔リベットの体積に対する比は、1.0以上及び/又は1.5以下であることが有利である。
【0039】
ダイ容積は、少なくとも下部加工物の材料が自己穿孔リベット留め動作の間に流れ込む容積であり、この目的で設けられたダイ凹所の上縁部は、支持面に対して実質的に面一である。ダイ凹所の形状は、好ましくは切頭円錐であり、支持面領域内で比較的大きい直径を有し、ダイ容積の底部領域内でより小さい直径を有する。
【0040】
全体として、以下のことにさらに注目することができる。従来の自己穿孔リベット留めの場合、アンダーカットの形成は、接続強度の品質に関連する特徴である。本発明によるリベットは高強度なので、この特徴はもはやそれ自体当てはまらない。リベットは、比較的強い上部加工物を必要とし、そしてその打抜きピースが、加工中にリベットをアップセットさせてこれをいくらか押し広げる。従来技術のリベットとは対照的に、接続部のアンダーカットは、従来の拡張によって生成されるのではなく、むしろリベットのアップセット動作によって生成され、このアップセット動作は高強度鋼の逆圧により生じる。従来のリベットと区別するさらなる基準は、原則として上部加工物の引張り強さ800N/mm2、特に1000N/mm2でのみ始まる使用範囲である。この強度カテゴリの鋼は、車両製造での用途が見いだされており、それは超高強度板で作られた軽量構造の使用が増大しているためである。本発明による自己穿孔リベットの使用範囲の下方は、高強度加工物配置を穿孔/穿刺するための力である最小打抜き力の8kNで限られることが好ましい。その力を上回ると、自己穿孔リベットの十分なアップセット(拡張が主ではない)が始まり、必要なアップセット度、好ましくは少なくとも0.15mmが達成される。接続品質を評価するためには、アンダーカットの形成に加えてアップセットの程度も考慮に入れるべきである。アップセット度は、変形前の自己穿孔リベットの軸線方向長さから変形後の、すなわち固定状態の自己穿孔リベットの軸線方向長さを差し引くことで計算される。
【0041】
上述した特徴及びまだこれから後述する特徴は、それぞれ記述した組合せのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる組合せにおいて又はそれ自体で有用であることは言うまでもない。
本発明の例示的な実施形態は、図面に示されかつ下記の説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明による自己穿孔リベットの実施形態の長手方向断面図を示す。
図2】本発明による自己穿孔リベットのさらなる実施形態の長手方向断面図を示す。
図3図1の自己穿孔リベットにより作製される自己穿孔リベット留め接合部の長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1において、回転対称の半管状の自己穿孔リベットが長手方向に模式的に描かれ、全般的に10で示されている。
【0044】
自己穿孔リベット10は、強力な鋼で製造され、好ましくは500HVより高い硬度を有する。自己穿孔リベットは、特に圧力変形により製造される。
【0045】
自己穿孔リベット10は、頭部12と該頭部に軸線方向で隣接するシャンク14とを有する。シャンク14は、移行部分16を介して頭部12に連なる。シャンク14の、頭部12の反対側の端部は、足端部として設計され、図1では18で示される。
【0046】
足端部18には平面部分20が形成され、該平面部分は環状面部分として設計され、その外径はシャンク14の外径により限られ、その内径は、足端部18から頭部12の方向に延びる凹所22の縁部により限られている。
【0047】
図1において、凹所22は、切頭円錐設計であり、足端部18から始まり、円錐状に延びる凹所移行部分24と、凹所底部26とを有する。凹所底部26は、図示するように平坦な設計とすることができるが、凹面又は凸面の設計とすることもできる。
【0048】
さらに、以下の寸法が図1に示されており、これら寸法の好ましい値を各場合において以下の表にもプロットする。
【表1】
【0049】
図1の自己穿孔リベットの場合、凹所22の軸線方向深さLBの、シャンク径DSに対する比は、およそ0.18である。
【0050】
半径方向幅BFの、シャンク径DSに対する比は、およそ0.09である。
【0051】
さらに、凹所容積の、シャンク体積に対する比は、およそ0135であり、ここで凹所容積は、近似的に
VB=(LB・π)/3・[(DB/2)2+DB・DB’+(DB’/2)2
で計算され、シャンクの体積は、
VS=π・(DS/2)2・LS
で計算される。
それゆえ、シャンク体積VSは、凹所容積VBを含む。
【0052】
それぞれの寸法及び角度について上記表に示した値は、好ましくは、本発明の範囲内で各々、上方及び下方に少なくとも20%、好ましくは各場合において上方及び下方に10%逸れることができる。
【0053】
凹所移行部分24と凹所底部26との間の移行部に形成される半径RBが図1に示されている。RBの値は、例えば0.35mmとすることができる。DB’の値は、半径方向に見たときの凹所RBのほぼ中央に位置する近似値である。
【0054】
さらに、円錐形移行部分16とシャンク14との間の移行部を形成する半径RHが図1に示されている。RHの値は、例えば0.5mm以下とすることができる。
【0055】
図2には、本発明による自己穿孔リベットの代替的な実施形態が示され、同様に全般的に10で示されている。図2の自己穿孔リベット10は、構造及び機能に関して図1の自己穿孔リベット10に概ね対応する。したがって同一の要素は同じ参照符号で示されている。本質的に、違いを以下で説明する。
【0056】
図2の自己穿孔リベット10の凹所22は、図1の自己穿孔リベット10の場合のように切頭円錐形ではなく、むしろアーチ形設計である。より正確に言うと、図2の凹所22は、縦方向断面において尖頭アーチの形状であり、尖頭アーチは長軸上に点を形成する2つの円弧から組み立てられている。円弧の原点は、どちらの場合も、長軸の、円弧自体とは反対側の側にある。2つの円弧で形成される点の領域において、凹所は、例えば0.5mmとすることができる半径により丸みを付けられている。この半径は、図2において模式的にR1で示される。
2つの円弧の半径は、図2において模式的にR2により示されており、例えばおよそ4mmとすることができる。
【0057】
図2の自己穿孔リベット10の場合、凹所22の最大軸線方向深さは、好ましくはおよそ1.5mmであり、したがっておよそ0.273の比LB/DSが得られる。
直径DS及び軸線方向長さLS並びにその他の寸法も、図1の自己穿孔リベット10のものと同一とすることができる。
【0058】
図3に、図1の自己穿孔リベット10により生成される自己穿孔リベット留め接合部を長手方向に模式的に示し、全般的に30で示す。
自己穿孔リベット留め接合部30は、加工物配置32を接続し、該加工物配置は、少なくとも1つの上部加工物34と1つの下部加工物36とを含み、そのうち少なくとも上部加工物は、高強度又は高強度鋼の鋼板の形態で製造することができる。
【0059】
図3には、自己穿孔リベット留め動作中に、自己穿孔リベット10*が打抜きピース38を上部加工物34から切り抜き、かつ該打抜きピースをその前方に押していることが示されている。打抜きピースの下側と下部加工物36の下側との間の残った底部厚さは、40で示されている。これは、例えば0.5mmより大きい。
【0060】
さらに、図3には、変形したシャンク14*の半径方向アンダーカットが示されている。上部加工物34の材料が比較的硬いので、自己穿孔リベット10*は特に足端部領域においてアップセットされており、したがって自己穿孔リベットの材料は足端部領域内で半径方向外方にいくぶん流れた。自己穿孔リベット10*もまた非常に硬いので、アンダーカット42はいずれにしても非常に小さく、例えば0.5mmより小さくなり得るが、原則として0.05mmより大きい。対応して、アンダーカット42の、シャンク径DSに対する比は、0.1から0.01の範囲にあることが好ましい。
【0061】
最後に、図3は、頭部12*が上部加工物34の上側に対して突き出した、突出長さ44を示す。突出長さ44は、未変形状態の自己穿孔リベット10の軸線方向高さLHより小さいことが好ましい。
【0062】
さらに図3は、変形した自己穿孔リベット10*の軸線方向長さLR*を示す。示した例において、この長さは、例えばおよそ4.4mmとすることができる。変形後の自己穿孔リベット10*軸線方向長さLR*の、変形前の自己穿孔リベット10の軸線方向長さLRに対する比は、0.8より大きい、及び/又は0.95より小さいことが好ましい。
【0063】
前述のように、自己穿孔リベット10*は、足端部領域内でアップセットされており、したがって残った凹所22*の残った容積は比較的小さい。それに応じて、示した実施形態において、打抜きピース38の高々50%の部分、特に高々25%の部分が、変形した凹所22*内に収容される。
【0064】
上部加工物34の軸線方向厚さはL34で示される。この厚さは、未変形状態の自己穿孔リベット10の軸線方向深さLB以上とすることができる。下部加工物36の軸線方向厚さは、L36で示される。この厚さは、L34より厚いことが好ましい。下部加工物36は、上部加工物34より柔らかいことが好ましい。
【0065】
図3は、さらに自己穿孔リベット留め工具のダイ50を模式的に示し、このダイにより軸線方向力(打抜き力)52が自己穿孔リベット留め動作中に自己穿孔リベット10の頭部12の上側に及ぼされる。ダイ50の凹所は、近似的に切頭円錐状設計である。第2の加工物34のいくぶん柔らかい材料が打抜きピース38及びダイ50によって半径方向に押しやられ、この場合にはアンダーカット42の後方に流れて、その結果、自己穿孔リベット留め接合部30は、加工物34、36の間に噛み合う接続部を設けるようになっている。
【0066】
ダイ凹所の容積は、未変形状態の自己穿孔リベット10の体積以上であることが好ましい。特に、ダイ容積の、自己穿孔リベット10の体積に対する比は、1.0以上及び/又は1.5以下であることが好ましい。
【0067】
最小打抜き力52は、好ましくは8kNである。
【0068】
未変形状態における自己穿孔リベット10の最小長さは、厚さL34に、例えば3又は3.5mmとすることができる値を加えて得られる。未変形状態における自己穿孔リベット10の最大長さは、全厚さL34+L36に等しいか、又は全板厚さ+値(例えば1mm)に等しく形成することができる。
【0069】
上部加工物34は、好ましくは800N/mm2より大きい範囲、特に1000N/mm2より大きい範囲の引張り強さを有する。下部加工物36は、好ましくは600N/mm2より小さい引張り強さを有する。自己穿孔リベット10は、650HVより高い(ビッカース)硬度を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10:自己穿孔リベット
12:頭部
14:シャンク
18:足端部
20:平面部分
22:凹所
30:自己穿孔リベット留め接合部
32:加工物配置
34:上部加工物
36:下部加工物
38:打抜きピース
42:アンダーカット
50:ダイ
52:打抜き力
図1
図2
図3