(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうちの少なくともいずれか1つの用途に用いられる請求項1〜6のうちいずれか一項記載の積層構造体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
(積層構造体)
本発明の積層構造体は、樹脂層(A)と、樹脂層(A)を介してフレキシブルプリント配線板に積層される樹脂層(B)と、を有するものである。ここで、本発明の積層構造体において、樹脂層(A)および樹脂層(B)は、それぞれ実質的に、接着層および保護層として機能する。本発明の積層構造体は、樹脂層(B)が、アルカリ溶解性樹脂、光重合開始剤、熱反応性化合物およびブロック共重合体(block copolymer,「BCP」とも称する)を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなるとともに、樹脂層(A)が、アルカリ溶解性樹脂および熱反応性化合物を含むアルカリ現像型樹脂組成物からなる点に特徴を有する。
【0020】
本発明においては、2層の樹脂層が積層されてなる積層構造体のうち上層側の樹脂層(B)にブロック共重合体を含有させたことで、これまで以上に高い屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性、および優れた耐熱性をバランスよく実現することが可能となった。
【0021】
なお、このような本発明の積層構造体は、フレキシブル基板に銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板上に、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを順に有し、上層側の樹脂層(B)が光照射によりパターニング可能な感光性熱硬化性樹脂組成物からなるものであって、下層側の樹脂層(A)が光重合開始剤を含まなくても、樹脂層(B)と樹脂層(A)とが現像によりパターンを一括形成することが可能となるものである。
【0022】
その理由は、プリント配線板側の樹脂層(A)が光重合開始剤を含まない場合、一般に、この樹脂層(A)は単層ではパターニングが不可能であるが、本発明の積層構造体においては、露光時には、その上層の樹脂層(B)に含まれる光重合開始剤から発生したラジカル等の活性種が直下の樹脂層(A)に拡散することで、両層は同時にパターニングすることが可能となるためである。
【0023】
[樹脂層(A)]
(アルカリ現像型樹脂組成物)
樹脂層(A)を構成するアルカリ現像型樹脂組成物としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基のうち1種以上の官能基を含有し、アルカリ溶液で現像可能なアルカリ溶解性樹脂と、熱反応性化合物とを含む組成物であればよい。好ましくはフェノール性水酸基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物を含む樹脂組成物が挙げられ、公知慣用のものが用いられる。
【0024】
例えば、従来からソルダーレジスト組成物として用いられている、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する化合物と、熱反応性化合物を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0025】
ここで、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂、および、エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の化合物が用いられ、
また、熱反応性化合物としては、樹脂層(B)において用いる熱反応性化合物と同様の環状(チオ)エーテル基などの熱による硬化反応が可能な官能基を有する公知慣用の化合物が用いられる。
【0026】
このような樹脂層(A)は、光重合開始剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、光重合開始剤を含む場合に使用する光重合開始剤としては、樹脂層(B)において用いる光重合開始剤と同様のものを挙げることができる。
【0027】
また、本発明においては樹脂層(B)にブロック共重合体を含有させることが必要であるが、樹脂層(A)にも、本願発明の効果、すなわちソルダーレジストおよびカバーレイ双方の要求性能に影響を及ぼさない程度にブロック共重合体を含有させてもよい。この場合のブロック共重合体としては、樹脂層(B)において用いるブロック共重合体と同様のものを用いることができる。樹脂層(A)におけるブロック共重合体の配合量は、好ましくは、アルカリ溶解性樹脂100質量部に対して15質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、特に好ましくは、樹脂層(A)にはブロック共重合体を含有させず、樹脂層(B)にのみ含有させる。ブロック共重合体の配合量が15質量部以下であれば、現像性、屈曲性、クラック耐性および耐熱性に影響を及ぼさない。
【0028】
[樹脂層(B)]
(感光性熱硬化性樹脂組成物)
樹脂層(B)を構成する感光性熱硬化性樹脂組成物は、アルカリ溶解性樹脂と、光重合開始剤と、熱反応性化合物と、ブロック共重合体とを含むものである。
【0029】
(アルカリ溶解性樹脂)
アルカリ溶解性樹脂としては、上記樹脂層(A)と同様の公知慣用のものを用いることができるが、耐屈曲性、耐熱性などの特性により優れる、イミド構造およびアミド構造の少なくともいずれか一方を有するカルボキシル基含有樹脂を好適に用いることができる。
このイミド構造およびアミド構造の少なくともいずれか一方を有するカルボキシル基含有樹脂としては、(1)イミド構造およびアミド構造を有するカルボキシル基含有樹脂と、(2)イミド構造を有しアミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂と、(3)アミド構造を有しイミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂と、が挙げられ、これらの樹脂は単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。本発明においては、イミド構造およびアミド構造の少なくともいずれか一方を有するカルボキシル基含有樹脂のうちでも、イミド構造およびアミド構造を有するカルボキシル基含有樹脂を用いることが好ましい。
なお、イミド構造およびアミド構造の少なくともいずれか一方を有するカルボキシル基含有樹脂は、さらに、フェノール性水酸基を有していてもよい。
【0030】
(1)イミド構造およびアミド構造を有するカルボキシル基含有樹脂
イミド構造およびアミド構造を有するカルボキシル基含有樹脂は、ポリアミドイミド樹脂であることが好ましく、例えば、少なくともカルボキシル基含有ジアミンを含むジアミンと、少なくとも3個のカルボキシル基を有しそれらのうち2個が無水化している酸無水物を含む酸無水物(a1)とを反応させてイミド化物を得た後、得られたイミド化物とジイソシアネート化合物とを含む反応原料を反応させて得ることができる。上記反応原料には、後述するように、上記イミド化物およびジイソシアネート化合物に加えてさらに、少なくとも3個のカルボキシル基を有しそれらのうち2個が無水化している酸無水物(a2)を、含有させることが好ましい。
【0031】
ここで、上記ポリアミドイミド樹脂の合成に使用されるジアミンとしては、少なくともカルボキシル基含有ジアミンを含むが、エーテル結合を有するジアミンを併用することが好ましい。
カルボキシル基含有ジアミンとしては、例えば、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類、3,5−ビス(3−アミノフェノキシ)安息香酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸等のアミノフェノキシ安息香酸類、3,3’−メチレンビス(6−アミノ安息香酸)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物等を挙げることができ、これらを単独でまたは適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
また、エーテル結合を有するジアミンとしては、ポリオキシエチレンジアミンや、ポリオキシプロピレンジアミン、その他、炭素鎖数の異なるオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンジアミンなどが挙げられる。
エーテル結合を有するジアミンの分子量は、200〜3,000であることが好ましく、400〜2,000であることがより好ましい。
ポリオキシアルキレンジアミン類としては、米ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511などのポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000などのポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ533、XTJ536などのポリテトラメチレンエチレン基を有するものなどが挙げられる。また、エーテル結合を有するジアミンとして、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを使用してもよい。
【0033】
このようなジアミンとしては、さらに、それ以外のジアミンを併用してもよい。併用可能な他のジアミンとしては、汎用の脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどを、単独でまたは適宜組み合わせて使用することができる。具体的には、他のジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン(PPD)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、ベンゼン核1つのジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0034】
上記ポリアミドイミド樹脂の合成に使用される酸無水物(a1)としては、少なくとも3個のカルボキシル基を有し、それらのうち2個が無水化している酸無水物を含む。かかる酸無水物としては、芳香族環および脂肪族環のうちの少なくともいずか一方を有するものが挙げられ、芳香族環を有するものとして無水トリメリット酸(トリメリット酸無水物)(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸1,2−無水物,TMA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物等、脂肪族環を有するものとして水素添加トリメリット酸無水物(シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物,H−TMA)等を好適に挙げることができる。これらの酸無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、カルボン酸二無水物を併用してもよい。カルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの、テトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0035】
上記ポリアミドイミド樹脂の合成に使用されるジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネートおよびその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類およびその異性体などのジイソシアネートや、その他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらのジイソシアネート化合物は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0036】
上述したように、ポリアミドイミド樹脂は、イミド化物とジイソシアネート化合物とを含む反応原料を反応させて得ることができるが、さらに、イミド化物を得る際に用いたのと同様の酸無水物(a2)を含有させてもよい。この酸無水物(a2)としては、上述した酸無水物(a1)と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。この場合の反応原料中の酸無水物(a2)の含有量については、特に限定されない。
【0037】
以上説明したようなポリアミドイミド樹脂は、特に、カルボキシル基含有ジアミンおよびエーテル結合を有するジアミンと、脂環式のトリメリット酸であるH−TMAとを用いることが、アルカリ溶解性が高まり、現像性が向上する点でより好ましい。また、同じ理由から、このようなポリアミドイミド樹脂は、2段階目の反応において脂肪族のジイソシアネート化合物を用いることも好ましい。これにより、脂肪鎖や脂環構造を有効に構造内に取り込むことで、特性を大きく低下させることなくアルカリ溶解性を高めることが可能になる。
【0038】
なお、イミド構造およびアミド構造を有するカルボキシル基含有樹脂としては、下記一般式(1)で示される構造および下記一般式(2)で示される構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いることができる。
【0039】
ここで、X
1は炭素数が24〜48のダイマー酸由来の脂肪族ジアミン(a)の残基である。X
2はカルボキシル基を有する芳香族ジアミン(b)の残基である。Yはそれぞれ独立にシクロヘキサン環または芳香環である。
【0040】
具体的には、このような構造を有するポリアミドイミド樹脂としては、下記一般式(3)で示されるようなものが挙げられる。
【0041】
上記一般式(3)中、Xはそれぞれ独立にジアミン残基、Yはそれぞれ独立に芳香環またはシクロヘキサン環、Zはジイソシアネート化合物の残基である。nは自然数である。
【0042】
(2)イミド構造を有しアミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂
イミド構造を有しアミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基とイミド環とを有する樹脂であれば特に限定されない。イミド構造を有しアミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成には、カルボキシル基含有樹脂にイミド環を導入する公知慣用の手法を用いることができる。例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分および/またはイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。イミド化は熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して製造することができる。
【0043】
ここで、カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体を含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0044】
テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3−フルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’”,4,4’”−クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3””,4,4””−キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、3,3’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)などが挙げられる。トリカルボン酸無水物としては、例えば、トリメリット酸無水物や核水添トリメリット酸無水物などが挙げられる。
【0045】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミン、カルボン酸を有するジアミン、フェノール性水酸基を有するジアミンなどを用いることができるが、これらのアミンに限定されるものではない。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0046】
ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン(PPD)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンなどのベンゼン核1つのジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン(o−トリジン)、2,2’−ジメチルベンジジン(m−トリジン)、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどのベンゼン核2つのジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミンなどの芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミンが挙げられ、脂肪族ポリエーテルアミンとしては、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系の多価アミン等が挙げられる。
【0047】
カルボキシル基を有するアミンとしては、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類、3,5−ビス(3−アミノフェノキシ)安息香酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸等のアミノフェノキシ安息香酸類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルフォン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルフォン化合物等を挙げることができる。
【0048】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネートおよびその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類およびその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0049】
ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート及びその異性体、多量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、あるいは前記芳香族ジイソシアネートを水添した脂環式ジイソシアネート類及び異性体、もしくはその他汎用のジイソシアネート類が挙げられる。
【0050】
(3)アミド構造を有しイミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂
アミド構造を有しイミド構造を有さないカルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基とアミド結合とを有する樹脂であれば、特に限定されない。
【0051】
以上説明したような本発明のアルカリ溶解性樹脂として好適に用いられるカルボキシル基含有樹脂は、フォトリソグラフィー工程に対応するために、その酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、60〜150mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が20mgKOH/g以上であると、アルカリに対する溶解性が増加し、現像性が良好となり、さらには、光照射後の熱硬化成分との架橋度が高くなるため、十分な現像コントラストを得ることができる。一方、この酸価が200mgKOH/g以下であると、正確なパターン描画が容易となり、特に、後述する光照射後のPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程でのいわゆる熱かぶりを抑制でき、プロセスマージンが大きくなる。
【0052】
また、このようなカルボキシル基含有樹脂の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、質量平均分子量Mwが100,000以下であることが好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、2,000〜50,000がさらに好ましい。この分子量が100,000以下であると、未露光部のアルカリ溶解性が増加し、現像性が向上する。一方、分子量が1,000以上であると、露光・PEB後に、露光部において十分な耐現像性と硬化物性を得ることができる。
【0053】
(光重合開始剤)
樹脂層(B)において用いる光重合開始剤としては、公知慣用のものを用いることができ、特に、後述する光照射後のPEB工程に用いる場合には、光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤が好適である。なお、このPEB工程では、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用してもよい。
【0054】
光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、後述する熱反応性化合物の重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
このような光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤としては、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメート基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。中でも、オキシムエステル化合物、α−アミノアセトフェノン化合物が好ましく、オキシムエステル化合物がより好ましい。α−アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。
【0055】
α−アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成するものであればよい。
【0056】
オキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。
【0057】
このような光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の光重合開始剤の配合量は、好ましくはアルカリ溶解性樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは、0.3〜15質量部である。0.1質量部以上の場合、光照射部/未照射部の耐現像性のコントラストを良好に得ることができる。また、40質量部以下の場合、硬化物特性が向上する。
【0058】
(熱反応性化合物)
熱反応性化合物としては、環状(チオ)エーテル基などの熱による硬化反応が可能な官能基を有する公知慣用の化合物、例えば、エポキシ化合物などが用いられる。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0059】
上記熱反応性化合物の配合量としては、アルカリ溶解性樹脂との当量比(カルボキシル基などのアルカリ溶解性基:エポキシ基などの熱反応性基)が1:0.1〜1:10であることが好ましい。このような配合比の範囲とすることにより、現像が良好となり、微細パターンを容易に形成することができるものとなる。上記当量比は、1:0.2〜1:5であることがより好ましい。
【0060】
(ブロック共重合体)
ブロック共重合体は、これまで以上に高い屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性、および優れた耐熱性をバランスよく実現するために、本発明の積層構造体を構成する樹脂層(B)において最も特徴的な成分である。
このブロック共重合体としては、一般的に性質の異なる二種類以上のポリマー単位が、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体を意味する。本発明において、ブロック共重合体としては、公知慣用のものを用いることができ、X−Y型またはX−Y−X型のブロック共重合体が好ましく、X−Y−X型ブロック共重合体がより好ましい。X−Y−X型ブロック共重合体におけるXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0061】
また、X−Y型またはX−Y−X型ブロック共重合体のうち、Xが、ガラス転移点Tgが0℃以上のポリマー単位であることが好ましい。より好ましくは、Xが、ガラス転移点Tgが50℃以上のポリマー単位である。また、Yは、ガラス転移点Tgが0℃未満のポリマー単位であることが好ましく、より好ましくはガラス転移点Tgが−20℃以下のポリマー単位である。ガラス転移点Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0062】
ブロック共重合体は、さらに、20〜30℃で固体であることが好ましい。この場合、この範囲内において固体であればよく、この範囲外の温度においても固体であってもよい。上記温度範囲において固体であることによって、ドライフィルム化したときや基板に塗布し仮乾燥したときのタック性に優れるものとなる。
【0063】
また、X−Y−X型ブロック共重合体のうちでも、Xが熱反応性化合物との相溶性が高いものが好ましく、Yが熱反応性化合物との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
【0064】
ポリマー単位Xとしては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などが好ましく、ポリマー単位Yとしては、ポリn−ブチル(メタ)アクリレート(PBA)、ポリブタジエン(PB)などが好ましい。また、ポリマー単位Xの一部にスチレンユニット、水酸基含有ユニット、カルボキシル基含有ユニット、エポキシ基含有ユニット、N置換アクリルアミドユニット等に代表されるアルカリ溶解性樹脂との相溶性に優れた親水性ユニットを導入すると、さらに相溶性を向上させることが可能となる。ポリマー単位Xの一部にエポキシ基含有ユニットを導入することが特に好ましい。上記の中でもポリマー単位Xはポリスチレン、ポリグリシジルメタアクリレート、もしくはN置換ポリアクリルアミド、ポリメチル(メタ)アクリレートまたはそのカルボン酸変性物もしくは親水基変性物であることが好ましい。また、Yはポリn−ブチル(メタ)アクリレートまたはポリブタジエンなどであることが好ましい。XおよびYは、それぞれ1種類のポリマー単位から構成されていてもよく、2種以上の成分によるポリマー単位から構成されていてもよい。
【0065】
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特表2005−515281号、特表2007−516326号に記載の方法が挙げられる。
【0066】
X−Y−X型ブロック共重合体の市販品としては、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーが挙げられる。この具体例としては、ポリメチルメタアクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタアクリレートに代表されるX−Y−X型ブロック共重合体(例えば、M51、M52、M53、M22等)、さらにカルボン酸変性されたX−Y−X型ブロック共重合体(例えば、SM4032XM10等)や、親水基変性処理されたX−Y−X型ブロック共重合体(例えば、M52N、M22N、M65N等)が挙げられる。
【0067】
また、ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、通常20,000〜400,000であり、30,000〜300,000の範囲にあるものが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。
【0068】
質量平均分子量が20,000以上であると、組成物の柔軟性や弾性などの機械的性質を備えつつ、粘着性が高くなり過ぎずに、屈曲性やクラック耐性の向上効果が良好となり、タック性も良好となる。一方、質量平均分子量が400,000以下であると、組成物の粘度が高くなり過ぎず、印刷性、現像性が低下しにくい。
【0069】
ブロック共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ブロック共重合体の配合量は、好ましくは、アルカリ溶解性樹脂100質量部に対して1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、特に好ましくは3〜40質量部である。ブロック共重合体の配合量が、1質量部以上であると、屈曲性および耐熱性が向上し、60質量部以下であると、屈曲性および耐熱性のバランスが良好となる。
【0070】
以上説明したような樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、必要に応じて以下の成分を配合することができる。
【0071】
(高分子樹脂)
高分子樹脂は、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に、上述したブロック共重合体を除き、公知慣用のものを配合することができる。このような高分子樹脂としては、セルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマー、ポリビニルアセタール系、ポリビニルブチラール系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系バインダーポリマー、エラストマー等が挙げられる。この高分子樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
(無機充填剤)
無機充填材は、硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために配合することができる。このような無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、無定形シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ノイブルグシリシャスアース等が挙げられる。
【0073】
(着色剤)
着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの公知慣用の着色剤を配合することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0074】
(有機溶剤)
有機溶剤は、樹脂組成物の調製のためや、基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために配合することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0075】
(その他成分)
必要に応じてさらに、メルカプト化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、公知慣用のものを用いることができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0076】
本発明の積層構造体は、屈曲性に優れることから、フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方に用いることができ、さらに、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうちの少なくともいずれか1つの用途として用いることができる。
【0077】
以上説明したような構成に係る本発明の積層構造体は、その少なくとも片面がフィルムで支持または保護されているドライフィルムとして用いることが好ましい。
【0078】
(ドライフィルム)
本発明のドライフィルムは、例えば以下のようにして製造できる。すなわち、まず、キャリアフィルム(支持フィルム)上に、上記樹脂層(B)を構成する組成物および樹脂層(A)を構成する組成物を、それぞれ有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、常法に従い、コンマコーター等の公知の手法で順次塗布する。その後、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、キャリアフィルム上に樹脂層(B)および樹脂層(A)からなるドライフィルムを形成することができる。このドライフィルム上には、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、剥離可能なカバーフィルム(保護フィルム)を積層することができる。キャリアフィルムおよびカバーフィルムとしては、従来公知のプラスチックフィルムを適宜用いることができ、カバーフィルムについては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであることが好ましい。キャリアフィルムおよびカバーフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0079】
(フレキシブルプリント配線基板)
本発明のフレキシブルプリント配線基板は、フレキシブルプリント配線基材上に本発明の積層構造体の層を形成し、光照射によりパターニングし、現像液にてパターンを一括して形成してなる絶縁膜を有するものである。
【0080】
(配線基板の製造方法)
本発明の積層構造体を用いたフレキシブルプリント配線基板の製造は、
図1の工程図に示す手順に従い行うことができる。すなわち、導体回路を形成したフレキシブル配線基材上に本発明の積層構造体の層を形成する工程(積層工程)、この積層構造体の層に活性エネルギー線をパターン状に照射する工程(露光工程)、および、この積層構造体の層をアルカリ現像して、パターン化された積層構造体の層を一括形成する工程(現像工程)を含む製造方法である。また、必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光硬化や熱硬化(ポストキュア工程)を行い、積層構造体の層を完全に硬化させて、信頼性の高いフレキシブルプリント配線基板を得ることができる。
【0081】
また、本発明の積層構造体を用いたフレキシブルプリント配線基板の製造は、
図2の工程図に示す手順に従い行うこともできる。すなわち、導体回路を形成したフレキシブル配線基材上に本発明の積層構造体の層を形成する工程(積層工程)、この積層構造体の層に活性エネルギー線をパターン状に照射する工程(露光工程)、この積層構造体の層を加熱する工程(加熱(PEB)工程)、および、積層構造体の層をアルカリ現像して、パターン化された積層構造体の層を形成する工程(現像工程)を含む製造方法である。また、必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光硬化や熱硬化(ポストキュア工程)を行い、積層構造体の層を完全に硬化させて、信頼性の高いフレキシブルプリント配線基板を得ることができる。特に、樹脂層(B)において、イミド構造およびアミド構造の少なくともいずれか一方を有するカルボキシル基含有樹脂を用いた場合には、この
図2の工程図に示す手順を用いることが好ましい。
【0082】
以下、
図1または
図2に示す各工程について、詳細に説明する。
[積層工程]
この工程では、導体回路2が形成されたフレキシブルプリント配線基材1に、アルカリ溶解性樹脂等を含むアルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層3(樹脂層(A))と、樹脂層3上の、アルカリ溶解性樹脂等を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層4(樹脂層(B))と、からなる積層構造体を形成する。ここで、積層構造体を構成する各樹脂層は、例えば、樹脂層3,4を構成する樹脂組成物を、順次、配線基材1に塗布および乾燥することにより樹脂層3,4を形成するか、あるいは、樹脂層3,4を構成する樹脂組成物を2層構造のドライフィルムの形態にしたものを、配線基材1にラミネートする方法により形成してもよい。
【0083】
樹脂組成物の配線基材への塗布方法は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の公知の方法でよい。また、乾燥方法は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより支持体に吹き付ける方法等、公知の方法でよい。
【0084】
樹脂組成物を配線基材にラミネートする方法としては、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、配線基材表面に凹凸があっても、ドライフィルムが配線基材に密着するため、気泡の混入がなく、また、配線基材表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1〜2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40〜120℃であることが好ましい。
【0085】
[露光工程]
この工程では、活性エネルギー線の照射により、樹脂層4に含まれる光重合開始剤をネガ型のパターン状に活性化させて、露光部を硬化する。後述するPEB工程を用いる組成物の場合には、光塩基発生剤としての機能を有する光重合開始剤または光塩基発生剤を、ネガ型のパターン状に活性化させて塩基を発生させる。
この工程で用いられる露光機としては、直接描画装置、メタルハライドランプを搭載した露光機などを用いることができる。パターン状の露光用のマスクは、ネガ型のマスクである。
【0086】
露光に用いる活性エネルギー線としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるレーザー光または散乱光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく光重合開始剤を活性化させることができる。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、通常は、100〜1500mJ/cm
2とすることができる。
【0087】
[PEB工程]
この工程では、露光後、樹脂層を加熱することにより、露光部を硬化する。この工程により、光塩基発生剤としての機能を有する光重合開始剤を用いるか、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用した組成物からなる樹脂層(B)の露光工程で発生した塩基によって、樹脂層(B)を深部まで硬化できる。加熱温度は、例えば、80〜140℃である。加熱時間は、例えば、10〜100分である。本発明における樹脂組成物の硬化は、例えば、熱反応によるエポキシ樹脂の開環反応であるため、光ラジカル反応で硬化が進行する場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。
【0088】
[現像工程]
この工程では、アルカリ現像により、未露光部を除去して、ネガ型のパターン状の絶縁膜、特には、カバーレイおよびソルダーレジストを形成する。現像方法としては、ディッピング等の公知の方法によることができる。また、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液、または、これらの混合液を用いることができる。
【0089】
[ポストキュア工程]
この工程は、現像工程の後に、絶縁膜を完全に熱硬化させて信頼性の高い塗膜を得るものである。加熱温度は、例えば120℃〜180℃である。加熱時間は、例えば5分〜120分である。なお、ポストキュアの前または後に、さらに、絶縁膜に光照射してもよい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、比較例によって制限されるものではない。
【0091】
<合成例1:ポリイミド樹脂溶液の合成例>
撹拌機、窒素導入管、分留環、冷却環を取り付けたセパラブル3つ口フラスコに、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン22.4g、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを8.2g、NMPを30g、γ−ブチロラクトンを30g、4,4’−オキシジフタル酸無水物を27.9g、トリメリット酸無水物を3.8g加え、窒素雰囲気下、室温、100rpmで4時間撹拌した。次いでトルエンを20g加え、シリコン浴温度180℃、150rpmでトルエンおよび水を留去しながら4時間撹拌して、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有するポリイミド樹脂溶液(PI−1)を得た。
得られた樹脂(固形分)の酸価は18mgKOH、Mwは10,000、水酸基当量は390であった。
【0092】
(実施例1〜6および比較例1〜4)
表1および表2に記載の成分組成に従って、実施例1〜6および比較例1〜4に記載の材料をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、各樹脂層を形成するための樹脂組成物を調製した。表中の値は、特に断りがない限り、固形分の質量部である。
【0093】
<樹脂層(A)の形成>
銅厚18μmの回路が形成されているフレキシブルプリント配線基材を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、前処理を行ったフレキシブルプリント配線基材に、実施例1〜6および比較例1〜4で得られた各樹脂層(A)を構成する樹脂組成物をそれぞれ乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布した。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、樹脂層(A)を形成した。
【0094】
<樹脂層(B)の形成>
上記で形成された樹脂層(A)上に、実施例1〜6および比較例1〜4で得られた各樹脂層(B)を構成する樹脂組成物をそれぞれ乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、樹脂層(B)を形成した。
【0095】
このようにしてフレキシブルプリント配線基材上に実施例1〜6および比較例1〜4に記載された樹脂層(A)と樹脂層(B)からなる未硬化積層構造体を形成した。
【0096】
<屈曲性>
(試験片の作製)
上述のようにして積層構造体を形成した各フレキシブルプリント配線基材上の未硬化の積層構造体に対し、まずメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて、ネガマスクを介して500mJ/cm
2で全面露光した。その後、90℃で30分間PEB工程を行ってから、現像(30℃、0.2MPa、1質量%Na
2CO
3水溶液)を60秒行い、150℃×60分で熱硬化することにより、硬化した積層構造体を形成したフレキシブルプリント配線基板を作製した。
そして、このフレキシブルプリント配線基板を約15mm×約110mmに切断して試験片を作製した。
【0097】
(MIT試験)
得られた各試験片に対し、MIT耐折疲労試験機D型(東洋精機製作所製)を用い、JIS P8115に準拠してMIT試験を行い、屈曲性を評価した。具体的には、
図3に示すように、試験片10を装置に装着し、荷重F(0.5kgf)を負荷した状態で、クランプ11に試験片10を垂直に取り付けて、折り曲げ角度αが135度、速度が175cpmにて折り曲げを行い、破断するまでの往復折り曲げ回数(回)を測定した。なお、試験環境は25℃であった。
評価基準は、下記のとおりである。
◎:200回以上折り曲げられ、折り曲げ箇所の硬化塗膜にクラックが入らなかった。
〇:170〜199回折り曲げられ、同様にクラックが入らなかった。
△:150〜169回折り曲げられ、同様にクラックが入らなかった。
×:折り曲げ回数が149回以下でクラックが入った。
【0098】
(はぜ折り試験)
さらに、得られた各試験片に対し、以下に示す過度な条件でのはぜ折り試験を行った場合の、屈曲性を評価した。具体的には、
図4に示すように、試験片10を、導体回路および硬化塗膜の形成面Xが外側になるように180°に折り曲げた状態で、2枚の平板12で挟んで荷重G(1kgの標準分銅)を10秒間負荷してはぜ折りした後、光学顕微鏡を用いて折り曲げ箇所の硬化塗膜部20にクラックが生じていないかを確認する動作を1サイクルとして、クラックが生じる手前の回数を記録した。試験環境は25℃であった。
評価基準は、下記のとおりである。
◎:10回以上折り曲げられ、折り曲げ箇所の硬化塗膜にクラックが生じなかった。
〇:6〜9回折り曲げられ、同様にクラックが生じなかった。
△:3〜5回折り曲げられ、同様にクラックが生じなかった。
×:折り曲げ回数が2回以下でクラックが生じた。
これらの評価結果を、表1および表2に併せて示す。
【0099】
<耐熱性>
上述のようにして積層構造体を形成した各フレキシブルプリント配線基材上の未硬化の積層構造体に対し、まずメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて、銅上に直径約2mmから5mmの開口が形成されるネガ型マスクを介して500mJ/cm
2で露光した。その後、90℃で30分間PEB工程を行ってから、現像(30℃、0.2MPa、1質量%Na
2CO
3水溶液)を60秒行い、150℃×60分で熱硬化することにより、硬化した積層構造体を形成したフレキシブルプリント配線基板(試験基板)を作製した。
【0100】
この試験基板にロジン系フラックスを塗布し、あらかじめ260℃および280℃に設定したはんだ槽に10秒浸漬して、硬化塗膜の浮き、膨れ、剥がれの発生について評価した。
評価基準は下記のとおりである。
◎:260℃および280℃のいずれの浸漬でも浮き、膨れ、剥がれの発生がなかった。
〇:260℃の浸漬では浮き、膨れ、剥がれの発生がないが、280℃の浸漬で浮き、膨れ、剥がれが発生した。
×:260℃および280℃のいずれの浸漬でも浮き、剥がれが発生した。
その評価結果は、表1および表2に併せて示す。
【0101】
<解像性>
上述のようにして積層構造体を形成した各フレキシブルプリント配線基材上の未硬化の積層構造体に対し、まずメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用い、ネガマスクを介して500mJ/cm
2で直径200μmの開口を形成するようにパターン露光した。その後、90℃で30分間PEB工程を行ってから、現像(30℃、0.2MPa、1質量%Na
2CO
3水溶液)を60秒で行ってパターンを描き、150℃×60分で熱硬化することにより、開口を有する硬化した積層構造体を形成したフレキシブルプリント配線基板を作製した。得られたフレキシブルプリント配線基板の積層構造体に形成した開口を100倍に調整した光学顕微鏡を用いて観察し、解像性を評価した。
評価基準は、下記のとおりである。
〇:開口が完全に形成できているもの。
×:開口が形成できていないもの。
その評価結果は、表1および表2に併せて示す。
【0102】
【表1】
*1)アルカリ溶解性樹脂1: ZAR−1035:酸変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート,酸価98mgKOH/g(日本化薬(株)製)
*2)ポリイミド樹脂: PI−1:合成例1
*3)光硬化性モノマー: BPE−500:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学(株)製)
*4)エポキシ樹脂: E828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量190,質量平均分子量380(三菱化学(株)製)
*5)光重合開始剤: IRGACURE OXE02:オキシム系光重合開始剤(BASF社製)
*6)ブロック共重合体1: M52N:X−Y−X型ブロック共重合体 質量平均分子量(Mw)約100,000、アルケマ社製、NANOSTRENGTH(登録商標)
*7)ブロック共重合体2: M65N:X−Y−X型ブロック共重合体 質量平均分子量(Mw)約100,000〜300,000、アルケマ社製,NANOSTRENGTH(登録商標)
*8)アルカリ溶解性樹脂2: P7−532:ポリウレタンアクリレート,酸価47mgKOH/g(共栄社化学(株)製)
【0103】
【表2】
【0104】
上記表中に示す評価結果から明らかなように、各実施例の積層構造体においては、上層側の樹脂層(B)にブロック共重合体を含有させたことで、屈曲性、耐熱性および解像性のいずれについても優れた性能が得られていることがわかる。これに対し、単層構造である比較例1および比較例2では、屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性が不十分であり、積層構造体であってもブロック共重合体を含有しない比較例3では、耐熱性については良好な結果が得られているが、屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性が不十分となっている。また、積層構造体の下層側の樹脂層(A)のみにブロック共重合体を含有させた比較例4では、耐熱性については良好な結果が得られているが、屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性と解像性が不十分となっている。
以上より、2層の樹脂層が積層されてなる積層構造体のうち、上層側の樹脂層(B)にブロック共重合体を含有させたことで、解像性などの感光性樹脂組成物本来の特性を維持しつつ、屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性および耐熱性をバランスよく向上させることが可能となった。
【課題】これまで以上に高い屈曲性、特に過度のはぜ折りに対する優れたクラック耐性を有する積層構造体、ドライフィルム、および、その硬化物を保護膜として有するフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】樹脂層(A)と、樹脂層(A)を介してフレキシブルプリント配線板に積層される樹脂層(B)と、を有する積層構造体である。樹脂層(B)が、アルカリ溶解性樹脂、光重合開始剤、熱反応性化合物およびブロック共重合体を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなり、かつ、樹脂層(A)が、アルカリ溶解性樹脂および熱反応性化合物を含むアルカリ現像型樹脂組成物からなる。