【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、光リンクの異なるセクションにより独立に生成される非線形ひずみの総和として全部の伝送リンクの非線形ひずみを表現する考えに基づいている。
【0006】
本発明の態様は、カー非線形性に起因する信号ひずみが加法性ガウス雑音としてモデル化されてもよいという観察に由来している。
【0007】
本発明の態様は、波長分散が非線形雑音の発生に強く影響する主な物理現象であるという考えに由来している。
【0008】
本発明の態様は、基本ファイバセクションの後で生成される非線形雑音の分散が入力累積分散およびそのセクションのファイバのタイプに直接関連されることがあるという考えに由来している。
【0009】
本発明の態様は、再使用される事前に計算した非線形ひずみの共分散行列をメモリに記憶することによって伝送品質の推定器の計算コストを削減するという考えに基づいている。
【0010】
本発明の態様は、伝送リンク最適化のためのエンジニアリング規則を開発することを可能にするために伝送性能の高速推定を提案するという考えに基づいている。この推定は、SSFMおよび/または他の方法を使用することにより得られる推定よりも好ましくは早くなる。
【0011】
第1の目的にしたがって、本発明は、光伝送のための伝送品質の推定器を作り出すための方法を提供し、方法は:
− 局所分散値を規定するステップと、
− 例えば、基本セクション長にわたって、局所分散値と同一の符号を有する分散増分を規定するステップと、
− 整数が0から0以上の上限までの範囲である複数の整数の各々について、伝播モデルおよび/または実験により伝播計算を実行するステップであって、各伝播計算および/または実験が基本セクションに沿った光信号の伝播を扱い、基本セクションが局所分散値によって特徴付けられる伝播媒体であり、基本セクション長が分散増分に対応し、基本セクションに入ってくる光信号が事前に規定した前置補償分散と分散増分の整数倍との総和に等しい累積分散値により以前に影響を受けている、実行するステップと、
− 各基本セクションについて、雑音の分散を決定するステップであって、雑音が基本セクション内のカー非線形場寄与に起因するひずみを表す、決定するステップと、
− 基本セクションの各組について、基本セクションの組の間の雑音の共分散を決定するステップと、
− 局所分散値と累積分散値との第1の組および局所分散値と累積分散値との第2の組とともに、対応する局所分散値および累積分散値とともに雑音の各々の決定した分散および雑音の各共分散を含むルックアップテーブルをデータリポジトリに格納するステップと
を含む。
【0012】
ある実施形態によれば、方法は、光伝送の最小累積分散として前置補償分散を規定するステップも含む。
【0013】
実施形態によれば、このような方法は、下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0014】
利用されることがある多くの種類の伝播モデルがある。好ましい実施形態では、伝播モデルは、SSFMである。ある実施形態では、伝播モデルは、半経験的なモデルである。ある実施形態では、伝播モデルは、解析的モデルである。
【0015】
本明細書においては光路パラメータと呼ばれ、光信号の伝播計算のための入力データとして利用されることがある多くのパラメータがある。伝播モデルは、局所分散値および光路に沿った累積分散値を考慮する。加えて、光路パラメータは、下記のリスト:ネットワークトポロジのパラメータ、送信元ノードおよび宛先ノードのパラメータ、光路に沿ったノードの数、ノード位置、トランスポンダタイプ、ファイバ長、光路長、ファイバタイプ、ファイバモード、ファイバ屈折率、ファイバの周波数占有、分散管理、変調フォーマット、チャネル間隔、等の中で選択されることがある。
【0016】
光信号のいくつかの本質的な特徴も、伝播計算のための光路特性:多重化タイプ、キャリア周波数、変調フォーマット、等としてやはり考慮されることがある。加えて、伝播モデルは、光信号の振幅またはパワーを考慮する。
【0017】
発光デバイスの特徴も、伝播計算のための光路特性としてやはり考慮されることがあり、下記のリスト:チャープ、発光モード、発光周波数、発光スペクトル帯域幅、ジッタ、等の中で選択されることがある。
【0018】
検出器の特徴も、伝播計算のための光路特性としてやはり考慮されることがあり、下記のリスト:感度、光検出雑音、ショット雑音、熱雑音、アバランシェフォトダイオードに固有の雑音、等、の中で選択されることがある。
【0019】
実施形態では、雑音は、任意の非線形場寄与、ならびに/または下記のリスト:二次高調波発生、周波数混合、光パラメトリック増幅および発振、自発的パラメトリックダウンコンバージョン、SPDCに基づくもつれ光子のソース、四波混合、ラマン散乱、自発的誘導ラマン散乱、ラマン増幅、ブリルアン散乱、および2光子吸収、からの非線形場寄与の連携、にさらに起因するひずみを表すことができる。
【0020】
ある実施形態では、方法は:
− 各基本セクションについて、伝播モデルまたは実験において利用した入力パワーを決定するステップと、
− 決定するステップにおいて基本セクションに対して決定した各分散について、基本セクションに対して利用した入力パワーの2乗により分散を割り算するステップと、
− 決定するステップにおいて基本セクションの組に対して決定した各共分散について、組の第1の基本セクションに対して決定した入力パワーおよび組の第2の基本セクションに対して決定した入力パワーにより共分散を割り算するステップと
を含む無次元化するステップをさらに含む。
【0021】
ある実施形態では、方法は、各基本セクションについて、受信機側のところの信号パワーを決定するステップと、受信機側のところでの信号パワーの平方根で割り算した受信信号に等しい規格化した信号を決定するステップであって、分散が規格化した信号の全体にわたって計算される、規格化した信号を決定するステップとをさらに含む。
【0022】
ある実施形態では、局所分散値は、光ファイバに対応する。
【0023】
ある実施形態では、光ファイバは、下記のリスト:シングルモードファイバ、分散補償ファイバ、LEAF、マルチファイバ、多芯ファイバ、マルチモードファイバ、偏波保持ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、マルチモードグレーデッドインデックス光ファイバ、ノンゼロ分散シフトファイバ、トゥルーウェーブリデューストスロープ、トゥルーウェーブクラシック、テラライトおよびSMF−LSの中で選択されるタイプを有する。
【0024】
ある実施形態では、ルックアップテーブルは、基本セクション内で発生したカー非線形場寄与に起因する雑音の共分散行列を含む。
【0025】
ある実施形態では、分散増分は、長さが100mと20kmとの間に含まれる光リンクのセクションに沿って伝播する光信号によって累積される分散に対応する。分散増分が小さいほど、伝送品質の推定はより正確である。分散増分が大きいほど、計算は安価である。これらの特徴のおかげで、光ネットワークシステム;特に、短いファイバ長および/またはファイバタイプ不均一性および/または異なるタイプの分散管理および/または異なる増幅スキームを有する光ネットワークシステムの性能を予測することができる伝送品質の推定器を実装することが可能である。
【0026】
本発明は、光伝送のための伝送品質の推定装置も提供し、装置は:
− 複数の分散エントリσ
nnを含むルックアップテーブルが格納されているデータリポジトリであって、各分散エントリが、対応する局所分散値および対応する累積分散値とともに格納され、累積分散値が、事前に規定した前置補償分散と0から0以上の上限までの範囲である整数で掛け算した事前に規定した分散増分との総和から構成される累積分散値のセットの中で選択され、
ルックアップテーブルが複数の共分散エントリをさらに含み、各共分散エントリが局所分散値と累積分散値との第1の組および局所分散値と累積分散値との第2の組とともに格納される、データリポジトリと、
− 光伝送システムデスクリプション(description)を受信するための入力インターフェースであって、システムデスクリプションが、複数のシステムセグメントS
k、ならびに、各システムセグメントS
kについて、システムセグメントの入力パワーP
k、システムセグメントの局所分散値およびシステムセグメントの入力累積分散を規定する、入力インターフェースと、
− 計算ユニット(114)であって:
− 各システムセグメントS
kについて、システムセグメントS
kの局所分散および入力累積分散が分散エントリσ
match(k)match(k)に関係する局所分散値および累積分散値に実質的に一致するように、ルックアップテーブル内の分散エントリσ
match(k)match(k)を選択するステップと、
− 各組のシステムセグメントS
kおよびS
k’について、システムセグメントS
kの局所分散および入力累積分散が共分散エントリに関係する第1の組に実質的に一致するように、かつシステムセグメントS
k’の局所分散および入力累積分散が共分散エントリに関係する第2の組に実質的に一致するように、ルックアップテーブル内の共分散エントリσ
match(k)match(k’)を選択するステップと、
− 伝送品質の推定値
【数1】
を計算するステップであって、
ここで、Nが光伝送システムデスクリプション内のシステムセグメントの数である、
計算するステップと
を実行するように構成された、計算ユニット(114)と、
− 計算した伝送品質の推定値を送信するための出力インターフェースと
を備える。
【0027】
本発明の態様は、必要なところでの光再生器の数および位置を決定するためにおよび/または予期しないリンク故障のケースではネットワーク内の代替パスを決定するためにおよび/またはネットワーク内での需要を満足させる最短のパスを決定するためにおよび/またはソフトウェア定義ネットワークフレーム内のアプリケーション駆動型再構成ネットワークのケースでは新たなパスを決定するために、伝送性能の、例えば、数秒以下のリアルタイム推定値を計算する考えに基づいている。
【0028】
ある実施形態では、ルックアップテーブルは共分散行列を含む。
【0029】
光信号は、任意の多重化方法、例えば、WDM多重化および/または空間多重化および/または偏波多重化にしたがって多重化されることがある。
【0030】
出力インターフェースは、多様な方式で実装されることがある。ある実施形態では、出力インターフェースは、例えば、コンピュータファイルまたは紙プリントアウトとして、ネットワーク設計での使用のために適したフォーマットで光伝送のための伝送品質の推定器をユーザに提供する。
【0031】
第2の目的にしたがって、本発明は、光伝送システムデスクリプションを決定するための方法も提供し、方法は:
− 光伝送システムの分散マップを決定するステップと、
− 分散マップ上へと別個の累積分散のセットを置くステップと、
− 光伝送システムの複数の連続的なシステムセグメントS
kを規定するステップであって、各システムセグメントは、入力累積分散が別個の累積分散のセットの累積分散に一致する光伝送システム内の点に対応する入力点を有する、規定するステップと、
− 各システムセグメントS
kについて、システムセグメントの入力パワーP
k、およびシステムセグメントの局所分散値を決定するステップと、
− 各システムセグメントS
kについて、システムセグメントS
kのシーケンス番号を格納するステップと、システムセグメントS
kの入力累積分散に関係して決定した入力パワーおよび局所分散値をデータリポジトリに格納するステップと
を含む。
【0032】
これらの特徴のおかげで、光システムの伝送品質を得るために十分な情報をそれにもかかわらず含む光システムの簡潔な記述(デスクリプション)を得ることが可能である。
【0033】
これらの特徴のおかげで、伝送品質の推定装置の大きな使用を提供する任意の種類の光システムに適用可能な表示フォーマットを得ることが可能である。例えば、光ネットワーク内の2つの連続するノード間の各接続に上記の方法を実行することは、これらの接続の各々に対して伝送推定装置を使用することを、したがって光ネットワーク内の任意の接続の伝送品質を予想することを可能にさせる。
【0034】
これらの特徴のおかげで、非常に速くかつ効率的な方式で光伝送システムの品質を推定するための伝送品質の推定装置を使用することを可能にする。
【0035】
これらの特徴のおかげで、伝送品質の推定器において光システムを使用するために任意の光システムのコンパクトな表現を得ることが可能である。
【0036】
実施形態によれば、このような方法は、下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0037】
ある実施形態では、セットの別個の累積分散は、固定累積分散増分によって区切られる。
【0038】
ある実施形態では、方法は:
分散マップの上限および下限を決定するステップと、上限と下限との間の範囲の95%よりも多くをカバーさせる別個の累積分散のセットを選択するステップと
をさらに含む。
【0039】
ある実施形態では、別個の累積分散のセットは、−10
−4ps/nmと10
4ps/nmとの間の累積分散の範囲に含まれる。
【0040】
本発明は、光システムについての伝送品質の推定値を決定するための請求項1の方法を用いて得られる光伝送デスクリプションの使用も提供し、
使用は:
複数の分散エントリσ
nnを含むルックアップテーブル(Σ
1)を提供するステップであって、各分散エントリが、対応する局所分散値および対応する累積分散値(D
1からD
6)とともに格納され、累積分散値が、事前に規定した前置補償分散と0から0以上の上限までの範囲である整数で掛け算した事前に規定した分散増分(14)との総和から構成される累積分散値のセット内で選択され、
ルックアップテーブル(Σ
1)が複数の共分散エントリをさらに含み、各共分散エントリが局所分散値と累積分散値との第1の組および局所分散値と累積分散値との第2の組とともに格納される、提供するステップと、
− 光伝送システムの各システムセグメントS
kについて、システムセグメントS
kの局所分散および入力累積分散が分散エントリσ
match(k)match(k)に関係する局所分散値および累積分散値に実質的に一致するように、ルックアップテーブル内の分散エントリσ
match(k)match(k)を選択するステップと、
− 各組のシステムセグメントS
kおよびS
k’について、システムセグメントS
kの局所分散および入力累積分散が共分散エントリに関係する第1の組に実質的に一致するように、かつシステムセグメントS
k’の局所分散および入力累積分散が共分散エントリに関係する第2の組に実質的に一致するように、ルックアップテーブル内の共分散エントリσ
match(k)match(k’)を選択するステップと、
伝送品質の推定値を:
【数2】
として計算するステップであって、
ここで、Nが光伝送システムデスクリプション内のシステムセグメントの数である、
計算するステップと
を含む。
【0041】
本発明は、変調されたデータを含む情報信号も提供し、変調されたデータは、光伝送システムの連続的なシステムセグメントS
kを表し、
各システムセグメントは、入力累積分散が別個の累積分散のセットの累積分散と実質的に一致する光伝送システム内の点に対応する入力点を有し、
各システムセグメントS
kは、入力パワーP
k値、局所分散値およびシーケンス番号を有する。
【0042】
本発明の態様は、分散情報を基本的に利用するコンパクトなフォーマットで光システムを記述する考えに基づいている。
【0043】
本発明の態様は、分散の情報が光システムの伝送品質の精密な推定を得るために十分であり得る観察に由来する。
【0044】
本発明の態様は、ファイバタイプおよびセクション入力部のところで累積した分散の観点から基本ファイバセクションによりネットワークを特徴付ける考えに基づいている。
【0045】
本発明の態様は、高速な方式でかつ非常に良い精度で接続の実行可能性を容易に評価するために、係数が事前に計算されている基本ファイバセクションを使用することによって全部のネットワーク内の接続をモデル化する考えに基づいている。
【0046】
本発明の態様は、小さなファイバセクションの連鎖として網目化したネットワークの各ファイバを記述する考えに基づいており、ファイバタイプの同じ特性および同じ入力累積分散を有するすべての冗長なファイバセクションを取り除くことによって全部のネットワークを記述するためのデータの最小セットを見出す。
【0047】
本発明のこれらの態様および他の態様は、例として、図面を参照して以降に説明する実施形態から明らかであり、そして実施形態に関連して明らかにされるであろう。