【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実用化開発/マイクロ波プラズマ燃焼エンジンの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、レシプロエンジンやロータリーエンジンなどの内燃機関における混合気の点火は、火花放電を行う点火プラグを用いて行われている。しかし、火花放電によって発生する電磁ノイズが車両に搭載されている電子機器の誤動作の原因となることなどから、火花放電によらず、数ギガヘルツ(GHz)の周波数を有する電磁波、すなわち、マイクロ波を用いて点火する点火装置が従来より提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1乃至特許文献4には、燃焼・反応室(シリンダ内)にマイクロ波導波管を連結するとともに、この燃焼・反応室内にマイクロ波放電のための放電電極を設けて構成した点火装置が記載されている。
【0004】
この点火装置においては、マイクロ波発生装置(マグネトロン)により発生されたマイクロ波パルスをマイクロ波導波管を介して燃焼・反応室内に伝送させ、放電電極においてマイクロ波コロナ放電を生じさせて、燃焼・反応室内の混合気に点火するようにしている。
【0005】
また、例えば、特許文献5には、燃焼・反応室(シリンダ内)に高周波電界発生装置(マグネトロン)を設け、機関の圧縮行程中に該高周波電界発生装置により燃焼室内に高周波電場を形成し、該燃焼室内の混合気を誘電加熱して着火燃焼するようにしたガソリン内燃機関が記載されている。
【0006】
また従来、環境対策技術分野で用いられているプラズマ装置は、低圧力下で放電により発生したプラズマへの入力エネルギーを高めて、高温の平衡プラズマを生成し、その熱で有害排出物、化学物質、浮遊粒子状物質、スス等を高温状態に加熱して、酸化・分解しているものがほとんどであった。
【0007】
近年、大気圧・非平衡のプラズマをマイクロ波放電して発生させる手法(同軸共振器型プラズマ生成)が研究されている。発生するプラズマの電子温度は数万度、ガス温度は常温乃至1000°Cの反応性プラズマである。また、プラズマによって生成されたOHラジカルやO3(オゾン)等の強い化学反応作用を利用して医療・衛生分野での減菌・殺菌・消臭用プラズマ装置の開発もなされている(イノベーションジャパン2005年;http://ccr.ccr.tokushima-u.ac.jp/topic/050927-01.pdf)。
【0008】
マイクロ波を用いたプラズマ装置としては、大気圧に近いガスをマイクロ波で励起させプラズマガスを発生するものであった。
【0009】
例えば、特許文献6及び特許文献7には、マイクロ波プラズマ装置が記載されている。このマイクロ波プラズマ装置においては、中心導体の中心にそってガス流路用の非金属パイプを配置しており、一方端から注入されたガスが中心導体で覆われていないギャップでマイクロ波により励起され他方端からプラズマ化して放出(同軸共振器型プラズマ生成)するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年においては、レシプロエンジン、ロータリーエンジン、ジェットエンジンやガスタービンなどの熱機関またはプラズマ装置においては、燃費消費率の改善が望まれている。燃費消費率の改善を図るためには、混合気中の燃料の割合を下げて薄い混合気を燃焼・反応させることが考えられる。しかしながら、従来の内燃機関等において混合気中の燃料の割合を下げると、サイクル変動が生ずるなど、燃焼・反応の安定性が損なわれ、出力低下等の問題が生ずる。
【0012】
したがって、熱機関またはプラズマ装置において燃費消費率の改善を図るためには、混合気中の燃料の割合を下げて薄い混合気を燃焼・反応させる場合においても、安定、かつ、高効率の燃焼・反応が行えるようにする必要がある。
【0013】
そして、前述のようなマイクロ波コロナ放電を用いた点火装置は、従来の火花放電を用いる点火方式に比較して、燃費消費率の改善や燃焼・反応の安定性が望めるわけではないため、ほとんど実用化されていない現状にある。
【0014】
また、前述のような高周波電界発生装置を用いたガソリン内燃機関は、エンジンに直接マグネトロンを取り付けることによる、耐久性、耐振動、取り付けスペースに対する制約、雰囲気温度(エンジンが高温となる)、電磁波の漏れによる制御系の誤動作防止などさまざまな支障が生じるため、ほとんど実用化されていない。
【0015】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、レシプロエンジン、ロータリーエンジン、ジェットエンジンやガスタービンなどの熱機関またはプラズマ装置において、混合気中の燃料の割合を下げて薄い混合気を燃焼・反応させる場合においても、安定、かつ、高効率の燃焼・反応が行えるようにして、出力の向上、排気ガスの清浄化、燃費消費率の改善を図ることができる点火装置を提供しようとするものである。
【0016】
さらにガソリン内燃機関において、エンジンに直接マグネトロンを取り付けることによる、耐久性、耐振動、取り付けスペースに対する制約、雰囲気温度(エンジンが高温となる)、電磁波の漏れによる制御系の誤動作防止などさまざまな支障を解決することができる内燃機関を提供しようとするものである。
【0017】
また、本発明は、前述のような本発明に係る点火装置を適用するに好適な内燃機関を提供しようとするものであり、さらに、本発明は、前述のような本発明に係る点火装置に適用するに好適な点火プラグを提供しようとするものである。
【0018】
また、これら従来のプラズマ発生方式においては、高温プラズマを持続的に発生するために多大のエネルギーを消費し、装置自体も非常に高価(300万円以上)で、運転コストも割高であり、かつ装置自体も大きなもので運搬が困難であった。また、大気圧・非平衡のプラズマ利用技術は、その研究開発がまだ緒についたばかりであり、プラズマ着火に前述した中心導体間の放電を利用するが、持続的に安定したプラズマを発生するにはまだ大きな出力(数百W乃至5kW程度)が必要である。現在、これらプラズマ装置を用いた環境対策技術、医療・衛生分野への適用技術に関し、同様の対策技術の製品性能としては、例えば、年間1トン未満のVOC小型処理装置では、装置費30万円以下/台、電気代3万円/月程度の低価格製品が必要とされている(経済産業省、平成16年;化学物質リスク削減技術目標)。
【0019】
本方式のプラズマは低温・大気圧・空気のマイクロプラズマであり、有害排出物、化学物質、浮遊粒子状物質、スス等を高温に加熱するのではなく、そのプラズマによる生成物(OHラジカル、オゾン(O3))を利用して化学的に酸化、反応させ、有害物等を削減、低減、無害化するものであり、従来の高温プラズマ利用技術とは全く異なる新規性、有効性を備える。従来、有害物を処理するプラズマを生成させるのに多くのエネルギーと大規模な装置が必要であった。また、大気圧の空気で簡単にプラズマ化ができ、ラジカルが多量に発生する安価で小型の装置はほとんど無かった。
【0020】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、大気圧で簡単にプラズマ化ができ、ラジカルが多量に発生する安価で小型のプラズマ装置を提供しようとするものである。
【0021】
また、これらエンドオブパイプ対策技術のみならず、インプラント対策技術への適用も可能とするプラズマ装置を提供しようとするものである。種々の燃焼器においても、安定、かつ、高効率の燃焼が行えるようにして、出力の低下なく、燃焼プロセスの改善(強いOHラジカルによる化学的に酸化、反応させ、体積着火、希薄燃料の燃焼限界の拡大による省エネルギー化)、未燃焼燃料の分解・完全燃焼による有害排出物の削減・低減を図る好適なプラズマ装置を提供しようとするものである。
【0022】
さらに、低コストで連続的に活性なOHラジカル、O3を多量に発生することで、効果的な排ガス分解装置、オゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る点火装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0024】
〔構成1〕
熱機関またはプラズマ装置において反応性ガスと酸化ガスとの混合気が存在しこの混合気の燃焼・反応、または、プラズマ反応が行われる燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段と、前記燃焼・反応領域における混合気に対し放電させ、着火する着火手段と、前記マイクロ波放射手段及び前記着火手段を制御する制御手段とを備え、前記マイクロ波放射手段及び前記着火手段は、前記制御手段によって制御されることにより、前記マイクロ波放射手段が前記燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射して該燃焼・反応領域でプラズマ放電をさせた後、前記着火手段が前記混合気に対し放電、着火し、次に前記マイクロ波放射手段が前記燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射して該燃焼・反応領域でプラズマ放電をさせるというサイクルを繰り返すことを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係る内燃機関は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0026】
〔構成2〕
シリンダ及びピストンから構成され、反応性ガスと酸化ガスとの混合気が供給されこの混合気の燃焼・反応、または、プラズマ反応が行われる燃焼・反応室と、前記燃焼・反応室内にマイクロ波を放射し、該燃焼・反応室でプラズマ放電をさせるマイクロ波放射手段とを備え、前記ピストンの前記シリンダ内壁に摺接する外周面には、前記マイクロ波の漏洩を防止するための凹部が形成され、前記マイクロ波の波長をλとしたときに、前記凹部の溝幅は、λ/8以下であることを特徴とするものである。
【0027】
〔構成3〕
シリンダ及びピストンから構成され、反応性ガスと酸化ガスとの混合気が供給されこの混合気の燃焼・反応、または、プラズマ反応が行われる燃焼・反応室と、前記燃焼・反応室内にマイクロ波を放射し、該燃焼・反応室でプラズマ放電をさせるマイクロ波放射手段とを備え、前記ピストンの前記シリンダ内壁に摺接する外周面には、前記マイクロ波の漏洩を防止するための凹部が形成され、前記ピストンの前記シリンダ内壁に摺接する外周面では、前記凹部として、前記外周面を囲む円環状の溝が断続していることを特徴とするものである。
【0028】
〔構成4〕
シリンダ及びピストンから構成され、反応性ガスと酸化ガスとの混合気が供給されこの混合気の燃焼・反応、または、プラズマ反応が行われる燃焼・反応室と、前記燃焼・反応室に設けられた吸気口及び排気口を開閉するバルブとを備え、前記バルブの前記燃焼・反応室内に臨む面には、前記バルブのシャフトを介して伝送されたマイクロ波が共振する周期構造が形成され、前記バルブの前記燃焼・反応室内に臨む面に前記マイクロ波が伝送されると、スパークが生じ混合気が着火されることを特徴とするものである。
【0029】
さらに、本発明に係る点火プラグは、以下の構成を有するものである。
【0030】
〔構成5〕
熱機関またはプラズマ装置において反応性ガスと酸化ガスとの混合気が存在しこの混合気の燃焼・反応が行われる燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射アンテナと、電圧を印加される陽極端子とグランド端子部との間においてスパーク放電を行い、前記燃焼・反応領域における混合気に対し着火する点火・放電部とを備え、前記マイクロ波放射アンテナ及び点火・放電部は、一体的に構成された碍子部内に内蔵されていることを特徴とするものである。
【0031】
さらに、本発明に係るプラズマ装置は、以下の構成を有するものである。
【0032】
〔構成6〕
所定のマイクロ波帯域を発生するマイクロ波発振装置と、所定のマイクロ波帯域を共振するマイクロ波共振空洞と、前記マイクロ波共振空洞内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段と、前記マイクロ波共振空洞内の気体に対して部分放電して気体をプラズマ化するプラズマ着火手段とを備え、前記マイクロ波放射手段は、前記プラズマ着火手段によるプラズマ生成領域にマイクロ波による電界場を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
構成1を有する点火装置においては、マイクロ波放射手段が燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射して燃焼・反応領域における混合気の温度を上昇させた後に、該燃焼・反応領域でプラズマ放電をさせラジカル濃度を上昇させて火炎着火特性の向上及び火炎伝播速度の促進を図り、着火手段が混合気に対し着火し、次にマイクロ波放射手段が燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射して混合気の燃焼・反応を促進させるので、混合気中の燃料の割合を下げて薄い混合気または不均一混合気を燃焼・反応させる場合においても、安定、かつ、高効率の燃焼・反応が行われる。
【0034】
構成2、3を有する内燃機関においては、ピストンのシリンダ内壁に摺接する外周面に、マイクロ波の漏洩を防止するための凹部が形成されているので、前述の点火装置を用いた場合においても、マイクロ波の漏洩を防止することができる。
【0035】
構成5を有する点火プラグにおいては、マイクロ波放射アンテナ及び点火・放電部が、一体的に構成された碍子部内に内蔵されているので、従来のスパークプラグやグロープラグ等、プラズマ源と互換的に使用しつつ、前述の点火装置を構成することができる。
【0036】
構成6を有するプラズマ装置においては、所定のマイクロ波帯域を発生するマイクロ波発振装置と、所定のマイクロ波帯域を共振するマイクロ波共振空洞(キャビティ)と、キャビティ内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段(マイクロ波放射アンテナ)とを備えており、プラズマの生成領域にマイクロ波による強電界場を形成する形状、寸法のマイクロ波放射アンテナを有することで効率のよい低温プラズマを発生することができる。
【0037】
構成6を有するプラズマ装置においては、キャビティ内の気体に対し部分放電して気体をプラズマ化するプラズマ着火手段を備えており、プラズマの生成領域にマイクロ波による強電界場を形成する形状、寸法のマイクロ波放射アンテナを有することで効率のよい低温プラズマを発生することができる。
【0038】
すなわち、本発明は、レシプロエンジン、ロータリーエンジン、ジェットエンジンやガスタービンなどの熱機関またはプラズマ装置において、混合気中の燃料の割合を下げて薄い混合気を燃焼・反応させる場合においても、安定、かつ、高効率の燃焼・反応が行われることを可能とし、着火の安定化、燃焼速度の向上、不均一混合気の燃焼促進、燃費消費率の改善を図ることができる点火装置を提供することができるものである。
【0039】
また、本発明は、前述のような本発明に係る点火装置を適用するに好適な内燃機関を提供することができるものであり、さらに、本発明は、前述のような本発明に係る点火装置に適用するに好適な点火プラグを提供することができるものである。なお、この点火プラグは、内燃機関のみならず、燃焼・反応機器の点火装置として用いることができる。これにより、火炎の安定化と燃費向上、燃焼・反応効率の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、本発明は、例えば、有害排出物(CO2、NOX、未燃炭化水素)、揮発性有害化学物質(VOC)、浮遊粒子状物質(PM)、スス等の削減、低減のための処理装置、電気集塵機への応用、およびタール、汚泥、排水の処理・再利用などの環境(インプラント、エンドオブパイプ)対策技術分野、および滅菌、殺菌、洗浄技術など医療・衛生分野で用いられるプラズマ装置、排ガス分解装置、有害物質処理装置、オゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置において、大気圧で簡単にプラズマ化ができ、OHラジカルやO3が大量に発生する安価で小型の装置を提供することができるものである。
【0041】
また、エンドオブパイプ対策技術のみならず、インプラント対策技術への適用もできるものである。ガスタービン、火炉、産業廃棄物焼却炉、熱分解炉など種々の燃焼器においても、安定、かつ、高効率の燃焼が行えるようにして、出力の低下なく、燃焼プロセスの改善(希薄燃料の燃焼限界の拡大による省エネルギー化)、未燃焼燃料の分解・完全燃焼による有害排出物の削減・低減を図る好適なプラズマ装置を提供することができるものである。
【0042】
また、安価で、容易に、大量のO3を高効率、かつ省エネルギーで発生するオゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0045】
〔点火装置の第1の実施の形態〕
熱機関またはプラズマ装置において、反応性ガスと酸化ガスとの混合気が存在しこの混合気の燃焼・反応が行われる燃焼・反応領域、例えば、エンジンの燃焼・反応室において、マイクロ波による混合気の昇温や点火を行う場合には、昇温や点火のために要するエネルギを燃焼・反応室内に効率よく伝送する必要がある。そのため、燃焼・反応室の形状や混合気の誘電率(ε)などによって決まる共振周波数と、マイクロ波の周波数とが一致していることが望ましい。一方、マイクロ波を発生させるマグネトロンとしては、水分子に共振する発振周波数2.45GHzのものが、すでに家電製品用として多数生産され使用されている。また、魚群探知機やレーダー用のものとしては、さらに高周波のマグネトロンが実用化されている。
【0046】
そこで、燃焼・反応室の共振周波数を、例えば、この周波数(2.45GHz)に一致させることができれば、大量に流通し安価である発振周波数2.45GHzのマグネトロンを使用することができ、装置の製造の容易化や製造コストの低廉化の観点から望ましい。
【0047】
しかし、シリンダの内部形状及びピストンの形状によって決まる燃焼・反応室の形状は、共振周波数以外の様々な要因によって決定されるため、すべての機関において共振周波数が一定となるような形状とすることは困難である。
【0048】
そこで、本発明に係る点火装置においては、燃焼・反応室内に水及び/又は排気ガスを導入することにより、混合気の誘電率(ε)を制御して、燃焼・反応室内の混合気の共振周波数をマイクロ波の周波数に一致させるようにしている。
【0049】
すなわち、この点火装置は、誘電率制御手段を有している。この誘電率制御手段は、熱機関またはプラズマ装置において反応性ガスと酸化ガスとの混合気が存在しこの混合気の燃焼・反応が行われる燃焼・反応領域(燃焼・反応室等)に対して、水及び/又は該燃焼・反応領域から排気された排気ガスを導入して、燃焼・反応領域内における混合気の誘電率を制御するものである。
【0050】
燃焼・反応室内の混合気の誘電率(ε)は、燃焼・反応室内に噴射するガソリン量を変えることによる空燃比(A/F値)の変化によっても変化するが、
図1に示すように、混合気とは別に、燃焼・反応室内に水(水蒸気)を導入することによっても、変化させることができる。そこで、誘電率制御手段によって、燃焼・反応室内に水を導入することにより、燃焼・反応領域内における混合気の誘電率を制御することができる。燃焼・反応室内に水を導入することは、例えば、タンクに蓄えた水をポンプによって燃焼・反応室内に送り出すことによって行うことができる。
【0051】
また、燃焼・反応室から排気された排気ガスを燃焼・反応室に再導入することは、いわゆる「EGR」(エキゾースト・ガス・リターニング)として従来より行われていることであるので、排気ガスを燃焼・反応室に再導入する具体的な機構としては周知の機構を使用することができる。
【0052】
誘電率制御手段は、これら水及び/又は排気ガスを燃焼・反応室内に導入することによって、燃焼・反応室内の水蒸気量や温度を制御し、これらによって混合気の誘電率(ε)を制御する。そして、この誘電率制御手段は、燃焼・反応室内の混合気の共振周波数を、後述するマイクロ波放射手段により放射されるマイクロ波の周波数に一致させる。
【0053】
そして、この点火装置は、燃焼・反応領域内にマイクロ波を放射し、この燃焼・反応領域における混合気の温度を上昇させるマイクロ波放射手段を有している。このマイクロ波放射手段としては、発振周波数が2.45GHzの一般的なマグネトロンを使用することができる。発振周波数2.45GHzのマグネトロンは、いわゆる「電子レンジ」において使用されているものであり、大量に生産され流通しているものである。一方、マグネトロンに限らず、携帯電話等に用いられる高周波帯域の発信機等を使用しても良く、この場合は、より小型で携帯可能な装置を提供できる。そして、このマイクロ波放射手段は、マイクロ波をマイクロ秒のパルス、あるいは一、または、二以上の断続的として放射するものであることが望ましい。マイクロ波を断続的にすることにより、消費電力を増大させることなく、瞬間的には大きなパワーのマイクロ波によりプラズマを生成することができる。
【0054】
さらに、本発明の適用対象物に対して、マイクロ波の発振形態をこれらパルス、断続、連続の組み合わせで最適となるよう構成して制御することもできる。
【0055】
なお、断続的なマイクロ波の持続時間(パルス幅)は、それぞれの熱機関またはプラズマ装置により適宜最適化することができ、
図2に示すように、例えば、インバータ付きの電子レンジの機構を応用するのであれば、16msec程度の周期で3μsec乃至18μsec程度のパルス幅のマイクロ波を放射することが可能となる。なお、断続的なマイクロ波の振幅及び周期は任意に設定できる。
【0056】
この点火装置において、マイクロ波放射手段より発せられるマイクロ波は、同軸ケーブルを介して、燃焼・反応室内に伝送されるようになっている。
【0057】
さらに、この点火装置は、燃焼・反応室内の混合気に対して着火する着火手段を有している。この着火手段は、ガソリンエンジンにおいて一般的に使用されているスパークプラグや、ディーゼルエンジンにおいて一般的に使用されているグロープラグなどの点火・放電部を有するものを使用することができる。
【0058】
なお、この点火装置においては、着火手段として、スパークプラグやグロープラグを使用することなく、マイクロ波放射手段が着火手段をも兼ねるようにしてもよい。さらにマイクロ波によるプラズマ発生を容易にするための着火手段として、レーザ光、ライター・バーナーなどの火炎、ヒータ加熱、高温の金属片などの手段を用いて熱的に電子を供給しても良い。
【0059】
この点火装置においては、誘電率制御手段は、燃焼・反応室内における混合気の燃焼・反応が行われる前に、この混合気の誘電率(ε)を制御することにより、燃焼・反応室内における混合気の共振周波数をマイクロ波放射手段によって放射されるマイクロ波の周波数に一致させる。この状態で、マイクロ波放射手段によってマイクロ波が放射されると、燃焼・反応室全体が共振し、燃焼・反応室内の混合気が効率良く昇温され、着火が容易な状態となる。
【0060】
このように燃焼・反応室内の混合気が昇温された状態で、着火手段によって着火を行うことにより、混合気が良好に燃焼・反応することになる。この着火においては、マイクロ波による共振を利用して、いわゆる「体積着火」を行ってもよく、あるいは、局所領域において「点着火」を行ってもよく、さらに、多段の着火を行ってもよい。すなわち、この点火装置は、着火前、着火時、着火後に、マイクロ波によるプラズマ生成を行うことができるシステムである。
【0061】
なお、着火時については、「着火遅れ時間」(イグニッション・ディレイ)を考慮して、着火は、ピストンが上死点に至り燃焼・反応室の容積が最も縮小される時点の所定時間前に行うことが望ましい。燃料の濃度(空燃比)や着火のタイミングは、それぞれの熱機関またはプラズマ装置により最適化することにより、最大の出力が得られるようにすることができる。
【0062】
また、この点火装置においては、燃焼・反応室内に導入する水の量、再循環する排気ガスの量、燃料の量などを適宜最適化することにより、混合気の誘電率を的確に制御することができる。なお、これらの最適化は、燃焼・反応室内の酸素濃度、混合気の温度、残留ガスの濃度などによる影響も考慮して、適切に定めることでできる。
【0063】
このようにして、この点火装置は、従来の熱機関またはプラズマ装置における点火装置に比較して、混合気中の燃料の割合が低い場合であっても混合気濃度が不均一状態であっても、安定した燃焼・反応を実現することができる。
【0064】
なお、この点火装置は、燃焼・反応領域として閉鎖された燃焼・反応室を有さないジェットエンジンなどにおいても使用できる。ジェットエンジンなどにおいては、エンジン内の連続した空間において、吸気、混合、燃焼・反応及び排気がそれぞれ連続して行われるが、この点火装置は、燃焼・反応が行われる領域において、前述したように、混合気の誘電率の制御、マイクロ波放射及び着火を連続的に、または、断続的に行う。
【0065】
そして、この点火装置において、マイクロ波放射手段は、発振周波数2.45GHzのマグネトロンに限定されず、燃料中の炭化水素分子、炭素分子、または、水素分子等に共振する周波数において発振するマグネトロンを用いてもよい。この場合には、燃焼・反応領域内に水を導入する必要はない。
【0066】
〔点火装置の第2の実施の形態〕
この実施形態における点火装置は、前述の第1の実施の形態における点火装置と同様に、マイクロ波放射手段と、着火手段とを有している。そして、この点火装置においては、マイクロ波放射手段及び着火手段を制御する制御手段を備えている。
【0067】
制御手段は、マイクロ波放射手段及び着火手段を制御して、
図3に示すように、マイクロ波放射手段により燃焼・反応室8内にマイクロ波を放射して燃焼・反応室における混合気の温度を上昇させ、または、ラジカル生成をさせた後に、着火手段により混合気に対し着火させ、次に、マイクロ波放射手段により燃焼・反応室内にマイクロ波を放射させて燃焼・反応室における混合気の燃焼・反応を促進させるというサイクルを繰り返して実行する。
【0068】
すなわち、この点火装置においては、マイクロ波発生タイミング及びマイクロ波の出力(投入エネルギー)をコントロールすることによって、混合気の昇温及びラジカル生成、着火、火炎伝播促進という燃焼・反応サイクルを実現する。このとき、燃焼・反応前の混合気に対しては、前述の第1の実施の形態と同様に、水及び/又は排気ガスを導入することとしてもよい。
【0069】
また、この点火装置においては、例えば、4段階のマルチ着火を行うことができる。第1段階では、着火前の混合気にマイクロ波を放射することにより、混合気における水の温度を上昇させる。第2段階では、着火前の混合気にマイクロ波を放射することにより、燃焼・反応領域でプラズマ放電を起こし、ラジカル濃度を上昇させる。これら第1段階及び第2段階により、混合気の着火特性を向上させ、着火が容易な状態とする。第3段階では、燃焼・反応領域における混合気に対し放電させ、着火を行う。このとき、既存のスパークプラグを用いた着火でもよい。第4段階では、着火後の混合気にマイクロ波を放射することにより、燃焼・反応領域でプラズマ放電を起こし、ラジカル濃度を上昇させ、または、マイクロ波を放射することにより、マイクロ波から定在波を発生させることによって、火炎伝播を促進させる。
【0070】
なお、4段階のマルチ着火におけるマイクロ波のパルス幅及びマイクロ波の出力(投入エネルギー)は、
図4に示すように、各段階のマイクロ波の出力及びパルス幅をそれぞれの熱機関またはプラズマ装置おいて最適化することにより、最大の出力が得られるようにすることができる。また、マイクロ波の出力と断続波の振幅及び周期との制御により、このマイクロ波の放射によって、混合気の昇温、OHラジカルなどのラジカルの生成、着火及び火炎伝播促進のいずれをも行うことができる。
【0071】
この点火装置においては、このようにして燃焼・反応が促進されることにより、従来の点火装置を用いた場合には燃焼・反応させることができなかった燃料の希薄な混合気をも効率良く燃焼・反応させることができ、出力を維持したままで、燃焼・反応消費率の改善、燃焼・反応室の小型化、出力の向上、排気ガスの清浄化を図ることができる。また、この点火装置においては、非完全燃焼・反応が防止され、完全燃焼・反応が実現されるので、大気汚染物が発生を抑制することができ、環境保護にも資することができる。
【0072】
〔点火プラグの実施の形態〕
本発明に係る点火プラグは、
図5中の(a)に示すように、マイクロ波放射手段となるマイクロ波放射アンテナ1と、着火手段となる点火・放電部2とを備えており、これらマイクロ波放射アンテナ及び先端部がグランド端子との間で点火・放電部を形成する陽極端子が、一体的に構成された碍子部内に内蔵されているものである。この点火プラグは、従来のガソリンエンジンやディーゼルエンジンにおいて一般的に使用されているスパークプラグやグロープラグと互換的に使用することにより、前述した本発明に係る点火装置を構成することができるものである。
【0073】
この点火プラグにおいて、マイクロ波放射アンテナ1には、同軸ケーブル3を介して、図示しないマグネトロンより、マイクロ波が伝送される。そして、この点火プラグは、マイクロ波放射アンテナ1を囲むようにして、円筒状のグランド端子部4を有している。点火・放電部2は、図示しない電源より電圧を印加される陽極端子5の先端部と、円筒状のグランド端子部4の先端部との間に形成されている。
【0074】
また、この点火プラグは、
図5中の(b)に示すように、マイクロ波放射アンテナ1を円筒状に形成し、このマイクロ波放射アンテナ1内に陽極端子5を配置して構成してもよい。この場合には、グランド端子部4は、棒状に形成し、マイクロ波放射アンテナ1の外側に配置する。この場合においても、陽極端子5の先端部とグランド端子部4の先端部との間には、点火・放電部2が形成される。
【0075】
この点火プラグにおいては、これらマイクロ波放射アンテナ1と点火・放電部2とは、
図6に示すように、従来の一般的なスパークプラグと互換的な形状として一体的に構成される。そして、この点火プラグにおいては、着火手段としてのスパーク(放電)と、マイクロ波放射手段としてのマイクロ波の放射とが可能であり、前述した点火装置を構成することが容易となる。
なお、
図5及び
図6に示した各点火プラグにおいては、前述の点火装置の第2の実施の形態である4段階マルチ着火ができる構造である。
【0076】
〔内燃機関の第1の実施の形態〕
本発明に係る内燃機関は、
図7に示すように、シリンダ6及びピストン7から構成され燃料と空気との混合気が供給されこの混合気の燃焼・反応が行われる燃焼・反応室8を有し、また、点火装置として、前述した実施の形態におけるマイクロ波放射アンテナ1を備えている。そして、この内燃機関は、ピストン7のシリンダ6内壁に摺接する外周面に、マイクロ波の漏洩を防止するための凹部9が形成されているものである。
【0077】
この凹部9は、円柱状のピストン7の外周面に、この外周面を囲む円環状の溝が断続した形状として形成されている。この凹部9の幅(溝幅)Lは、シリンダ6の内壁とピストンの隙間をDとし、マイクロ波の波長をλとしたとき、8D以上、λ/8以下とすることが望ましい。また、この凹部9の深さ(溝深さ)は、λ/4とする。
【0078】
また、この凹部9は、
図7(a)に示すように、マイクロ波の波長に乱れがない場合には、ピストン7の外周面の全周(360度)に対する約80%の範囲に形成することにより、このマイクロ波がシリンダ6から漏洩しないようにすることができる。そして、この凹部9は、
図7(b)に示すように、マイクロ波の波長に乱れがある場合には通過させるので、選択的に特定の周波数のマイクロ波をトラップし、チャンバ内を安定させることができる。
【0079】
〔内燃機関の第2の実施の形態〕
本発明に係るこの内燃機関は、
図8に示すように、シリンダ及びピストンから構成され燃料と空気との混合気が供給されこの混合気の燃焼・反応が行われる燃焼・反応室8と、この燃焼・反応室8に設けられた吸気口10及び排気口11を開閉するバルブ12とを有し、また、点火装置として、前述した実施の形態におけるマイクロ波放射手段を備えている。このマイクロ波放射手段は、前述したように、燃焼・反応室8内にマイクロ波を放射し、少なくとも燃焼・反応室8内の混合気の温度上昇を行う。
【0080】
そして、この内燃機関においては、各バルブ12の燃焼・反応室8内に臨む面には、マイクロ波に共振し、マイクロ波を一、または、二以上のバルブ底面、すなわち、エンジン燃焼室側に集中させる周期構造(例えば、リムボーン、ベーンストラップ、コルゲート)13が形成されている。この周期構造13は、窒化物などによって、マグネトロンにおける共振器と同形状の突条として形成されているものである。なお、この周期構造13をなす突条間の凹部となる部分は、セラミック等の絶縁材料によって埋められており、各バルブ12の燃焼・反応室8内に臨む面は、平坦な形状となされている。
【0081】
この内燃機関においては、マグネトロンからのマイクロ波は、各バルブ12のシャフト部14を介して、各バルブ12の燃焼・反応室8内に臨む面に伝送される。そして、このマイクロ波は、各バルブ12の周期構造13において共振し、電流に変換される。したがって、各バルブ12の周期構造13にマイクロ波が伝送されると、この周期構造13においてスパークを生ずる。すなわち、この内燃機関においては、スパークプラグを使用しなくとも、スパークによる混合気に対する着火を行うことができる。なお、各バルブ12のシャフト部14は、マイクロ波の漏洩を防止するため、直径を8mm以下とすることが望ましい。
【0082】
この内燃機関においては、従来のようなスパークプラグを設ける必要がなく、空間的な余裕ができるので、吸気口10及び排気口11を大型化して燃焼・反応効率の向上を図ることができる。また、内燃機関においては、各バルブ12の燃焼・反応室8内に臨む面の略全面において多点着火を行うことができ、安定した燃焼・反応を実現することができる。
【0083】
なお、この内燃機関においても、マイクロ波の全てのエネルギーがスパークに消費されるわけではなく、マイクロ波の出力やパルス幅等を適宜最適化することにより、マイクロ波のうちのスパークとして消費されるエネルギーと、燃焼・反応室8内にマイクロ波として放射されるエネルギーとの割合を調整することができ、前述したような点火装置を構成することが可能である。
【0084】
また、この内燃機関においては、
図9に示すように、マイクロ波が伝送されるバルブ12のシャフト部14の回りに磁石15を設けて、磁界および電界を発生させることにより、プラズマ生成及び火炎伝播促進による燃焼・反応の促進を図ることができる。
【0085】
さらに、この内燃機関においては、
図10に示すように、燃焼・反応室8の内壁部に、マイクロ波に共振する周期構造13(窒化物などによってマグネトロンにおける共振器と同形状の突条として形成したもの)を設け、この周期構造13に電流を供給することにより、この周期構造13においてマイクロ波が発生されるようにしてもよい。
【0086】
〔プラズマ装置の第1の実施の形態〕
本発明に係るプラズマ装置は、
図11に示すように、マイクロ波発振装置17と、所定のマイクロ波帯域を共振するマイクロ波共振空洞(キャビティ)18と、キャビティ内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段(マイクロ波放射アンテナ)19と、キャビティ内の気体に対し部分放電して気体をプラズマ化するプラズマ着火手段20とを備え、マイクロ波放射アンテナ19は、プラズマ着火手段20によるプラズマ生成領域21にマイクロ波による強電界場を形成するものである。
【0087】
有害排出物、化学物質、浮遊粒子状物質、スス等をプラズマによる生成物(OHラジカル、オゾン(O3))を利用して化学的に酸化、反応させ、無害化するために、マイクロ波共振空洞(キャビティ)内流体22に、高圧場(大気圧、または、0.2MPa以上)の非平衡プラズマを発生させる。大気圧・非平衡プラズマの最大のメリットは、熱・化学平衡の制約を回避して、温度・圧力とほぼ独立に反応速度や原料転換率を制御できる点にある。生成したプラズマと反応させる反応器(リアクタ)の設計自由度が高く、軽量・コンパクト、かつ応答性のよいリアクタを構築することもできる。大気圧・非平衡プラズマは、例えば、メタンからメタノールの直接合成、天然ガスの水蒸気改質、アセチレン合成、天然ガスの液化などへの利用も考えられている。
【0088】
この時、発生するプラズマの圧力は、無害化する有害排出物、化学物質、浮遊粒子状物質、スス等の処理流体のライン圧力で設定される。また、処理量は、ラインを流れる流量で決まる。
【0089】
さて、高圧場のプラズマを生成させるために、発明者は種々の基礎研究を行ってきた。その研究成果からプラズマの種を何らかの方法で着火させ、それにエネルギーを与えることで安定したプラズマの持続が可能であることが判明した。そのため、プラズマ着火手段20に関しては、電極間に誘電体などの絶縁物を挿入するバリア放電、不平等電界を形成するコロナ放電、1μs未満の短パルス電圧を印加するパルス放電のいずれかを用いて非平衡プラズマを着火する。例えば、ガソリン自動車用点火プラグやグロープラグの放電を用い、局所的なプラズマを着火する。この生成したプラズマを成長させるために、マイクロ波発信装置17から発信するマイクロ波(マイクロ波)を用いて、点火プラグやグロープラグの放電箇所近傍のプラズマ生成領域21に強電界場を形成する。これにより、マイクロ波のエネルギーが非平衡プラズマに吸収され、プラズマは成長(体積着火)する。この過程において、活性化学反応を生じるOHラジカルや強い酸化力を有するO3が数百倍のオーダーで多量に増加する。この反応を助長させるには、OHラジカル、O3の元となる水分を加えると良い。また、この反応を促進させるためには、水分子が共振する1GHz以上のマイクロ波を印加させることが効果的である。マイクロ波を発生させるマグネトロンとしては、すでに世界中で多量に生産されている家電製品用(例えば、電子レンジ用の発振周波数2.45GHzのもの)を用いることが、装置の製造の容易化、製造コストの低廉化の観点から望ましい。
【0090】
また、有害物質等の処理対象物に応じて、マイクロ波放射手段19は、発振周波数2.45GHzのマグネトロンに限定されず、燃料中の炭化水素分子、炭素分子、または、水素分子等に共振する周波数において発振するマグネトロンを用いてもよい。この場合には、燃焼領域内に水を導入する必要はない。
【0091】
〔プラズマ装置の第2の実施の形態〕
本発明に係るプラズマ装置は、
図12に示すように、マイクロ波発振装置17と、所定のマイクロ波帯域を共振するマイクロ波共振空洞(キャビティ)18と、前記キャビティ内プラズマ生成領域21にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段(マイクロ波放射アンテナ)19と、前記キャビティ内の気体22に対し部分放電して気体をプラズマ化するプラズマ着火手段20と、プラズマ発生によって生成するOHラジカル、O3の発生量、もしくは発光強度を測定する測定部23とマイクロ波放射手段19及びプラズマ着火手段20の投入エネルギー・パターン制御する制御手段24を備えるものである。図中に示す矢印は、プラズマによって処理もしくは燃焼させる流体25の流れ方向を示す。
【0092】
第1の実施の形態で説明したように、プラズマ発生によって無害化、もしくは酸化、OHラジカルによる化学反応をした流体の成分は、下流側に設けた測定部23において、OHセンサ、O3センサによって、リアルタイムでOHラジカル、O3の発生量、もしくは発光強度を測定する。この測定結果を演算し、ある制御範囲のもとで、マイクロ波放射手段19及びプラズマ着火手段20を任意の値に制御することで、プラズマ装置を貫流する有害物質等の処理量を制御する。
【0093】
〔プラズマ装置の第3の実施の形態〕
本発明に係るプラズマ装置は、
図13に示すように、本発明の第1または第2の実施の形態においてマイクロ波放射手段19を小型、コンパクト、低廉化にするために行うものである。従来から用いられている点火プラグやグロープラグにアンテナ19を組込むことで可能となる。この場合、アンテナ19の先端を分岐して点火・放電部を取り囲むようにして強電界場にする。
【0094】
〔プラズマ装置の第4の実施の形態〕
本発明に係るプラズマ装置は、
図14に示すように、本発明の第1及至第3の実施の形態において、マイクロ波を伝送する同軸ケーブル26と、マイクロ波を分岐、隔離、結合する方向性結合器27と、伝送系全体のインピーダンスを調整する調整器(スタブ)28とを備えるものである。例えば、本発明を自動車用エンジンに適用する場合は、振動が多いエンジン部にマイクロ波発信装置17を設置するのではなく、振動や温度が変動しない箇所に設置することで、マイクロ波発信装置17の耐久性、信頼性を向上させることができる。また、方向性結合器を設けることで、マイクロ波発信装置からのエネルギーを燃焼室やオンラインでの反応炉(プラズマによる有害物質等の無害化を行う箇所)で多点に分岐して処理ムラのない装置を実現することができる。
【0095】
〔プラズマ装置の第4の実施の形態〕
本発明に係るプラズマ装置は、
図13に示すように、本発明の第1及至第3の実施の形態において、マイクロ波を伝送する同軸ケーブル26と、マイクロ波を分岐、隔離、結合する方向性結合器27と、伝送系全体のインピーダンスを調整する調整器(スタブ)28とを備えるものである。例えば、本発明を自動車用エンジンに適用する場合は、振動が多いエンジン部にマイクロ波発信装置17を設置するのではなく、振動や温度が変動しない箇所に設置することで、マイクロ波発信装置17の耐久性、信頼性を向上させることができる。また、方向性結合器を設けることで、マイクロ波発信装置からのエネルギーを燃焼室やオンラインでの反応炉(プラズマによる有害物質等の無害化を行う箇所)で多点に分岐して処理ムラのない装置を実現することができる。
【0096】
〔排ガス分解装置の第1の実施の形態〕
本発明に係る排ガス分解装置は、
図12もしくは
図14と基本的構成は同じである。
図12もしくは
図14に示すように、マイクロ波発振装置17と、所定のマイクロ波帯域を共振するマイクロ波共振空洞(キャビティ)18と、前記キャビティ内プラズマ生成領域にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段(マイクロ波放射アンテナ)19と、前記キャビティ内の気体22に対し部分放電して気体をプラズマ化するプラズマ着火手段20と、プラズマ発生によって生成するOHラジカル、O3の発生量、もしくは発光強度を測定する測定部23とマイクロ波放射手段及びプラズマ着火手段の投入エネルギー・パターン制御する制御手段24を備えるものである。図中に示す矢印は、プラズマによって処理もしくは燃焼させる排ガス流体25の流れ方向を示す。
【0097】
第1の実施の形態で説明したように、燃焼・反応室での未燃ガスやスス、NOX等の排ガスは、プラズマ発生に伴うオゾン、OHラジカルの強酸化力によって炭素−炭素結合、炭素−水素結合を切断し、酸化、OHラジカルによる化学反応によりNO2、CO2などの安定した無害な酸化物や炭素へと排ガス成分を無害化する。下流側に設けた測定部6において、OHセンサ、O3センサによって、リアルタイムでOHラジカル、O3の発生量、もしくは発光強度を測定する。この測定結果を演算し、ある制御範囲のもとで、マイクロ波放射手段19及びプラズマ着火手段20を任意の値に制御することで、プラズマ装置を貫流する有害物質等の処理量を制御することができる。
【0098】
〔オゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置の使用例〕
例えば、本発明を航空機用ジェットエンジンに適用する場合は、本装置をジェットエンジン排気コーン近傍に設置することで、水分を含んだ高圧蒸気を本装置で発生する非平衡プラズマにより多量のOHラジカル、O3に変換することができる。これにより従来、飛行中の排気ガスにより大気汚染をしていたが、排気ガスを多量のOHラジカル、O3の強力な酸化力をもって無害なガスに分解するとともに、フロン等で破壊された成層圏のオゾン層修復のために多量のO3を発生させることができる。
【0099】
また、本装置をジェットエンジン高圧コンプレッサ後段に位置する燃焼室内に設置することで、圧縮された混合燃料を強力なラジカル反応で燃焼促進することが可能となる。これにより、大気汚染排出ガスではなくクリーンな排気ガスを放出することで環境保護に貢献することができる。下流側に設けた測定部6において、OHセンサ、O3センサによって、リアルタイムでOHラジカル、O3の発生量、もしくは発光強度を測定する。この測定結果を演算し、ある制御範囲のもとで、マイクロ波放射手段及びプラズマ着火手段を任意の値に制御することで、燃焼室内の燃焼制御により有害物質等の生成量を制御することができる。
【0100】
〔本発明に係わる内燃機関、プラズマ装置の使用例〕
本発明に係わる内燃機関、プラズマ装置の燃料にバイオガス、超希薄メタンガス、超低カロリーガスなどを用いても、プラズマ生成によって発生したOHラジカル、O3の強酸化力を利用して化学的反応を促進させることができ、通常ガスエンジンでは追加ガスとあわせてしか燃焼できなかったところを燃焼可能とするだけでなく、出力向上、発電効率向上なども期待できる。
【0101】
〔本発明に係わるプラズマ装置の使用例〕
本発明のプラズマ装置を大気圧・空気中において使用することにより、空気中に含まれるN2から多量のスペクトル光を発生させることができる。このスペクトルを集光し、ファイバー等で導出することで、従来用いられていた高価なレーザ光源の代わりに安価でコンパクトなN2スペクトル光源、パルス光源を提供することができる。
〔本発明に係わるオゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置の使用例〕
【0102】
本発明の装置を建築現場における建築物内の一角に設置し、建築物を密閉にした状態で動作することによりシックハウス物質の除去や、塗装、接着糊、防腐剤などのさまざまな異臭の脱臭、細菌、ばい菌、アレルギー物質の除菌、消毒を行うことができる。この場合、建築現場等での簡易排気装置の後段に本発明の装置を設置することで後処理した無害の空気を排出できる。あるいは、一般家庭電化製品である掃除機に本装置を組み込むことで、掃除しながら、清掃表面の有害物質を本装置で発生するOHラジカル、O3で分解することも可能である。ここでは、対象物を建築物(公共施設、ビル、体育館、講堂、ショッピングモールなど)として説明したが、同様の効果は、たとえば自動車、電車、貨物、飛行機、船、潜水艦、戦車など任意の密閉空間を有する対象物に対する滅菌、脱臭、消毒に適用することでこの効果を最大限活用することができる。さらにプラズマ発生時にH2O(水分)を添加することで一層、多くのOHラジカル等を発生させ、効果を増すことができる。
【0103】
さらに、公共施設、ビル、体育館、講堂、ショッピングモールや、トンネルなどの施設での火災時の一酸化炭素による中毒防止や、空気清浄化にも適用でき、一酸化炭素から二酸化炭素への変換による無害化、消煙効果、など人命救助に資することができる。