【文献】
Microbiology, 2014.3.1, Vol. 160, No. 3, pp. 502-513
【文献】
PNAS, 2011, Vol. 108, No. 50, pp. 20142-20147
【文献】
Appl.Environ.Microbiol., 2005, Vol. 71, No. 8, pp. 4875-4878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(1)のORFにおけるgenomic isletが、ECNA114_4208、EC55989_4085、EC55989_0018、ECNA114_1457、EC55989_1089、LF82_085、ECS4731、ECS2436、ECNA114_0460、ECS0053、EC55989_0068、EC55989_0189、EC55989_0636、EC55989_0699、EC55989_0830、EC55989_1577、EC55989_1649、EC55989_1821、EC55989_2719、EC55989_4248、EC55989_4374、EC55989_4548、ECABU_c34730、ECNA114_0007、ECNA114_0140、ECS0914、ECS3904、ECS4280、ECS4300、ECS4827およびLF82_248からなる群より選ばれる少なくとも4種の遺伝子である請求項1に記載の大腸菌のクローン同定法および/又は菌株識別のための方法。
前記(2)のORFにおけるgenomic islandがECS1190、Z2415、Z1432、ECS3501、ECH74115_1587、EC55989_2129、Z1797、EC55989_2641、ECH74115_2877、ECH74115_1791、ECNA114_0874、EC55989_1406、ECNA114_2097、ECNA114_3979、ECNA114_4026、ECNA114_1225、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、ECH74115_3039、ECH74115_2899、ECH74115_3056、ECH74115_3024、Z2404、ECH74115_3237、ECS1189、Z1456、ECH74115_2915、Z2384、ECS1527、ECH74115_1860、Z1854、Z3358、Z3362、、EC55989_0314、EC55989_0547、EC55989_0685、EC55989_0762、EC55989_0766、EC55989_0799、EC55989_0805、EC55989_1022、EC55989_1258、EC55989_1399、EC55989_1636、EC55989_2099、EC55989_2104、EC55989_2188、EC55989_2249、EC55989_2256、EC55989_2311、EC55989_3358、EC55989_3371、EC55989_3396、EC55989_3400、EC55989_3509、EC55989_4034、EC55989_4038、EC55989_4041、EC55989_4278、EC55989_4878、EC55989_4903、EC55989_4941、EC55989_4958、EC55989_4963、EC55989_4969、EC55989_4972、EC55989_5004、EC55989_5006、ECS0288、ECS0797、ECS0813、ECS1102、ECS1176、ECS1299、ECS1301、ECS1516、ECS1564、ECS1592、ECS1597、ECS1662、ECS1663、ECS1694、ECS1933、ECS1937、ECS2171、ECS2283、ECS2792、ECS2927、ECS2996、ECS4458、ECS5272、ECS5304、ECS5305、ECSF_3727、ECSF_4152、ECSF2757、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、P423_16715c、P423_16735c、P423_16745c、P423_16780c、ECNA114_4753、P423_10825c、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382、配列番号383、配列番号384、配列番号385、配列番号386、配列番号387、配列番号388、配列番号389、配列番号390、配列番号455、配列番号456、および配列番号461からなる群より選ばれる少なくとも4種の遺伝子である、請求項1に記載の大腸菌のクローン同定法および/又は菌株識別のための方法。
前記(1)のORFにおけるgenomic isletが、ECNA114_4208、EC55989_4085、EC55989_0018、ECNA114_1457、EC55989_1089、LF82_085、ECS4731、ECS2436、ECNA114_0460およびECS0053からなる10種の遺伝子、及び/又はECNA114_4208、EC55989_4085、EC55989_1089、LF82_085、ECS4731、ECNA114_0460およびECS0053からなる7種の遺伝子であり、前記(2)のORFにおけるgenomic islandがECS1190、Z2415、Z1432、ECS3501、ECH74115_1587、EC55989_2129、Z1797、EC55989_2641、ECH74115_2877、ECH74115_1791からなる10種の遺伝子、及び/又はECNA114_0874、EC55989_1406、ECNA114_2097、EC55989_2129、ECNA114_3979、ECNA114_4026、ECNA114_1225、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66からなる11種の遺伝子、及び/又はECNA114_0874、P423_10825c、EC55989_2129、ECNA114_4026、P423_16715c、配列番号63、配列番号376、配列番号380、配列番号381、配列番号389、配列番号390および配列番号461からなる12種の遺伝子である、請求項1に記載の大腸菌のクローン同定および菌株識別法。
配列表の配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10または配列番号413と414、配列番号11と12または配列番号415と416、配列番号13と14または配列番号417と418、配列番号15と16、配列番号17と18または配列番号419と420、配列番号19と20または配列番号421と422に示された15組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失及び/又は挿入を有していてもよい)からなる10組のプライマーを用いて、PCR法により前記(1)のORFの検出を行い、配列番号76と77、配列番号78と79、配列番号80と81、配列番号82と83、配列番号84と85、配列番号86と87、配列番号88と89、配列番号90と91、配列番号92と93、配列番号94と95、配列番号96と97、配列番号98と99、配列番号100と101または配列番号403と404、配列番号102と103、配列番号104と105、配列番号108と109、配列番号110と111または配列番号391と392、配列番号112と113、配列番号114と115、配列番号116と117、配列番号393と394、配列番号395と396、配列番号397と398、配列番号401と402、配列番号405と406、配列番号407と408、配列番号462と463、および配列番号464と465に示された30組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失及び/又は挿入を有していてもよい)からなる29組のプライマーを用いて、PCR法により前記(2)のORFの検出を行う、請求項1から4の何れか1項に記載の大腸菌のクローン同定法および/又は菌株識別のための方法。
配列表の配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10または配列番号413と414、配列番号11と12または配列番号415と416、配列番号13と14または配列番号417と418、配列番号15と16、配列番号17と18または配列番号419と420、配列番号19と20または配列番号421と422に示された15組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失及び/又は挿入を有していてもよい)からなる10組のプライマーと、配列番号76と77、配列番号78と79、配列番号80と81、配列番号82と83、配列番号84と85、配列番号86と87、配列番号88と89、配列番号90と91、配列番号92と93、配列番号94と95、配列番号96と97、配列番号98と99、配列番号100と101または配列番号403と404、配列番号102と103、配列番号104と105、配列番号108と109、配列番号110と111または配列番号391と392、配列番号112と113、配列番号114と115、配列番号116と117、配列番号393と394、配列番号395と396、配列番号397と398、配列番号401と402、配列番号405と406、配列番号407と408、配列番号462と463および配列番号464と465に示された30組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失及び/又は挿入を有していてもよい)からなる29組のプライマーを含む、クローン同定法および/又は菌株識別のためのプライマーセット。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る大腸菌のクローン同定法および/又は菌株識別のための方法は、大腸菌の染色体上の(1)genomic isletを構成するORF、および(2)genomic islandを構成するORFの有無を任意の順で検出し、これらORFの有無の組み合わせにより遺伝子型別分類を行うステップを含む、これら2種類の由来の異なるORFの保有の有無の組み合わせにより遺伝子型別分類を行うステップを有することを特徴としている。以下、これらのORFについて説明する。
【0030】
[(1)genomic isletを構成するORF]
(大腸菌の遺伝的特徴)
大腸菌の遺伝的バックグラウンドを系統的に分類する方法として、multilocus sequence typing(MLST)解析が利用されている。大腸菌のMLST解析にはフランス、パスツール研究所が開発した方法と、Achtmanらが開発した方法(Molecular Microbiology 2006, 60:1136-1151)及びWhittamらが開発した方法(www.shigatox.net)があるが、ここではAchtmanらが開発した方法に従って解析した。
【0031】
MLST解析では7カ所のハウスキーピング遺伝子(adk, fumC, gyrB, icd, mdh, purA, recA)の塩基配列を決定し、sequence type (ST)を決定する。また近縁なSTの集団を集めたclonal complex (CC)とすることで、遺伝的バックグラウンドが同一の株、すなわちクローンをまとめることが可能であり、疫学調査には欠かせない。なお、CCを推定するにはgenomic isletの保有パターンを検出することが有効であることが黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及びアシネトバクターでは示されていたが、大腸菌でも同様の手法が有効であるか否かはこれまでは不明であった。
【0032】
大腸菌にはさまざまな遺伝的バックグラウンドを持つものが存在する。実際の野生株における遺伝的バックグラウンドの調査結果(種々のORFの検出結果を含む)は文献として個々の研究施設における断片的な情報として利用できるが、それのみでは、最低限のORFを検出することにより流行クローンを同定できるクローン同定法を開発するには十分でない。
【0033】
そこで本発明者は、臨床分離された大腸菌を収集しMLST解析を行い、それらの遺伝的バックグラウンドの調査を行った。その結果、日本で臨床分離される大腸菌には多様なCCに分類される株が存在することが判明し、分離株を大別するにはCCを識別できる程度の菌株識別能を実現する必要がある。
【0034】
(genomic isletを構成するORF)
前記のCC型を区別するためには、大腸菌においてもgenomic isletを構成するORFを検出することが有用であることがわかった。表1に遺伝子データベース上の全ゲノム解析株におけるgenomic islet保有パターンを示す。genomic isletとは、細菌のゲノム同士を比較した場合に、5kbp程度、またはそれ以下の大きさで配列が異なる部分を言い、これはゲノム全体に散在しており、個体の生存確率に影響せず、進化の過程で取り残されたものと考えられる。
【0036】
表1からわかるように、大腸菌のST型の異なる株ではgenomic islet (ECNA114_4208〜LF82_248)の保有パターンが異なっている。
【0037】
臨床分離株におけるgenomic islet保有状況を調査した結果を表2に示す。
【0039】
臨床分離株におけるgenomic islet検出パターンを精査し、最適なORFを選び出すことで、クローン同定ならびに特定の流行クローンによらない集団感染の解析においては、10個以下と比較的少ない数のgenomic islet検出によるタイピングにおいても十分な菌株識別能が得られる。
【0040】
なお、たとえば前記ECNA114_4208はGenBankにおいて公開されているNA114株(Accession No. CP002797)の4208番目の遺伝子、EC55989_4085 はE. coli 55989株(Accession No.CU928145)の4085番目の遺伝子、LF82_085はLF82株(Accession No.CU651637)の85番目の遺伝子、ECS4731はSakai株(Accession No.BA000007)の4731番目の遺伝子、ECABU_c34730はABU83972株(Accession No.CP001671)の3473番目の遺伝子である、ということを意味するが、この遺伝子はNA114株、E. coli 55989株、LF82株、Sakai株、ABU83972株のみにしか存在しないわけではなく、それから派生した菌株や、それとは異なる系統の大腸菌においても存在する可能性がある。
【0041】
なお、遺伝子ECNA114_4208は、配列表の配列番号1(フォワード)および2(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4085は、配列表の配列番号3(フォワード)および4(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0018は、配列表の配列番号5(フォワード)および6(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_1457は、配列表の配列番号7(フォワード)および8(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_1089は、配列表の配列番号9(フォワード)および10(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号413(フォワード)および414(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子LF82_085は、配列表の配列番号11(フォワード)および12(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号415(フォワード)および416(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS4731は、配列表の配列番号13(フォワード)および14(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号417(フォワード)および418(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2436は、配列表の配列番号15(フォワード)および16(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_0460は、配列表の配列番号17(フォワード)および18(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号419(フォワード)および420(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS0053は、配列表の配列番号19(フォワード)および20(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号421(フォワード)および422(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能である。
【0042】
遺伝子EC55989_0068は、配列表の配列番号21(フォワード)および22(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0189は、配列表の配列番号23(フォワード)および24(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0636は、配列表の配列番号25(フォワード)および26(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0699は、配列表の配列番号27(フォワード)および28(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0830は、配列表の配列番号29(フォワード)および30(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_1577は、配列表の配列番号31(フォワード)および32(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_1649は、配列表の配列番号33(フォワード)および34(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_1821は、配列表の配列番号35(フォワード)および36(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2719は、配列表の配列番号37(フォワード)および38(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4248は、配列表の配列番号39(フォワード)および40(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4374は、配列表の配列番号41(フォワード)および42(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4548は、配列表の配列番号43(フォワード)および44(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECABU_c34730は、配列表の配列番号45(フォワード)および46(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_0007は、配列表の配列番号47(フォワード)および48(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_0140は、配列表の配列番号49(フォワード)および50(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS0914は、配列表の配列番号51(フォワード)および52(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS3904は、配列表の配列番号53(フォワード)および54(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS4280は、配列表の配列番号55(フォワード)および56(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS4300は、配列表の配列番号57(フォワード)および58(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS4827は、配列表の配列番号59(フォワード)および60(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子LF82_248は、配列表の配列番号61(フォワード)および62(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能である。
上記ORFを検出することで、容易にCC型の区別ができる。
【0043】
またこれらを、後述するPCRおよび電気泳動を利用して検出した場合には、DNAが増幅しやすく、またエクストラバンドが現れにくい。
【0044】
以上では、PCR法によりgenomic isletのORF(1)を検出することを主に説明してきたが、genomic isletのORF(1)はその他の方法によっても検出可能であり、たとえばハイブリダイゼーションによって検出可能である。
【0045】
[(2)genomic islandを構成するORF]
大腸菌の中には、腸管出血性大腸菌O157など病原性の高いクローンやST131など薬剤耐性遺伝子保有率の高いクローンが存在し、集団感染の原因となりやすいことが知られている。このような集団感染で問題となりやすいクローンによる集団感染の調査には、クローン識別より高い識別能力が必要な菌株識別法が必要となる。
【0046】
近年ゲノムの解読が進み、大腸菌には5〜100個の外来遺伝子からなる遺伝子クラスターが見いだされる。このクラスターをgenomic islandという。genomic islandには溶原ファージや病原アイランド、耐性アイランドに加え機能が不明なものが含まれる。個々のgenomic islandはおよそ5kbp程度、またはそれ以上の大きさで、5〜100個のORFから構成されている。大腸菌のgenomic islandはモザイク状にORFが組み合わされ、genomic island内のORFの構成に多様性が見られる場合が多い。
【0047】
しかし、大腸菌にはさまざまな株が存在する。実際の野生株における遺伝子型の調査結果(種々のORFの検出結果を含む)は文献あるいはゲノム塩基配列データベースとして個々の断片的な情報として利用できるが、それのみでは最低限のORFを検出することによる大腸菌の菌株同定法を開発するには十分でない。
【0048】
そこで本発明者はGenBankの大腸菌についての公開遺伝子情報を利用し、多くのgenomic islandのORFを検出するためのプライマーを設計し、多様な遺伝的バックグラウンドを持つ大腸菌について、それらの保有するgenomic island遺伝子のORFの構成について検討した。
【0049】
ゲノムデータベース登録株における全ゲノムデータの精査、および臨床分離株によるORF保有確認実験を繰り返した結果、genomic island遺伝子のORFをいくつか組み合わせて検出することが、大腸菌の菌株識別にきわめて有効であることが明らかとなった。
【0050】
その結果、ECS1190、Z2415、Z1432、ECS3501、ECH74115_1587、EC55989_2129、Z1797、EC55989_2641、ECH74115_2877、ECH74115_1791、ECNA114_0874、EC55989_1406、ECNA114_2097、EC55989_2129、ECNA114_3979、ECNA114_4026、S0497、ECNA114_1225、配列番号63、配列番号64、配列番号65,配列番号66、ECH74115_3039、ECH74115_2899、ECH74115_3056、ECH74115_3024、Z2404、ECH74115_3237、ECS1189、Z1456、ECH74115_2915、Z2384、ECS1527、ECH74115_1860、Z1854、Z3358、Z3362、、EC55989_0314、EC55989_0547、EC55989_0685、EC55989_0762、EC55989_0766、EC55989_0799、EC55989_0805、EC55989_1022、EC55989_1258、EC55989_1399、EC55989_1636、EC55989_2099、EC55989_2104、EC55989_2188、EC55989_2249、EC55989_2256、EC55989_2311、EC55989_3358、EC55989_3371、EC55989_3396、EC55989_3400、EC55989_3509、EC55989_4034、EC55989_4038、EC55989_4041、EC55989_4278、EC55989_4878、EC55989_4903、EC55989_4941、EC55989_4958、EC55989_4963、EC55989_4969、EC55989_4972、EC55989_5004、EC55989_5006、ECS0288、ECS0797、ECS0813、ECS1102、ECS1176、ECS1299、ECS1301、ECS1516、ECS1564、ECS1592、ECS1597、ECS1662、ECS1663、ECS1694、ECS1933、ECS1937、ECS2171、ECS2283、ECS2792、ECS2927、ECS2996、ECS4458、ECS5272、ECS5304、ECS5305、ECSF_3727、ECSF_4152、ECSF2757、S0692、S0913、S1482、S2103、S3222、S4314、、S4832、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、P423_10825c、P423_16715c、P423_16735c、P423_16745c、P423_16780c、ECNA114_4753、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382、配列番号383、配列番号384、配列番号385)、配列番号386、配列番号387、配列番号388、配列番号389、配列番号390、配列番号455、配列番号456、および配列番号461を検出の対象とすると、大腸菌の菌株を高精度で分類することができることを本発明者は見出した。上記のORFを検出することによって汎用性が高く広範なクローンに対する菌株識別が可能となっている。これらのgenomic islandを構成するORFをすべて検出することで最大の菌株識別能力を実現する。
【0051】
なお、たとえば前記ECS1190は、GenBankにおいて公開されているSakai株(Accession No. BA000007)の1190番目の遺伝子、Z2415はEDL933株(Accession No. AE005174)の2415番目の遺伝子、ECH74115_1587はEC4115株(Accession No. CP001164)の1587番目の遺伝子、EC55989_2129はE. coli 55989株(Accession No. CU928145)の2129番目の遺伝子、ECNA114_0874はNA114株(Accession No. CP002797)の874番目の遺伝子、S0497はShigella flexneri 2a str. 2457T株(Accession No. AE014073)の497番目の遺伝子、ECSF_3727はSE15株(Accession No. AP009378)の3727番目の遺伝子である、P423_16715cはJJ1886株(Accession No. CP006784)の3343番目の遺伝子ということを意味するが、この遺伝子はそれぞれSakai株、EDL933株、EC4115株、55989株、NA114株、Shigella flexneri 2a str. 2457T株、SE15株、JJ1886株のみにしか存在しないわけではなく、菌株によって保有している場合と、保有していない場合がある。
【0052】
表3に全ゲノムデータ株におけるgenomic island保有パターンを示す。表3からわかるように、菌株ごとに異なるORF構成パターンが得られる。
【0054】
表4に全ゲノムデータ株におけるgenomic islandを構成するORF保有パターンを示す。表4からわかるように、表4に掲載したgenomic islandを構成するORFはST131クローンの菌株識別に特に有効であり、特にST131クローンの菌株ごとに異なるORF構成パターンが得られる。
【0056】
臨床分離株におけるgenomic island保有状況を調査した結果を表5に示す。臨床分離株においても菌株に特異的なORF保有パターンとなった。臨床分離株におけるgenomic island検出パターンを精査し、最適なORFを選び出すことで、汎用性高く広範なクローンにおいて集団感染の解析する際に、12個以下と比較的少ない数のgenomic island検出によるタイピングにおいても十分な菌株識別能が得られる。
【0058】
臨床分離株におけるP423_10825c、P423_16715c、P423_16735c、P423_16745c、P423_16780c、ECNA114_4753、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382、配列番号383、配列番号384、配列番号385)、配列番号386、配列番号387、配列番号388、配列番号389、配列番号390、配列番号455、配列番号456、および配列番号461の24種のgenomic island保有状況を調査した結果を表6に示す。表6に掲載したgenomic islandを構成するORFはST131クローンの菌株識別に特に有効であり、臨床分離株においても菌株に特異的なORF保有パターンとなった。臨床分離株におけるgenomic island検出パターンを精査し、上記genomic islandを構成するORFと組み合わせ、最適なORFを選び出すことで、特に薬剤耐性菌で問題となるST131クローンの集団感染の解析の際に、15個以下と比較的少ない数のgenomic island検出によるタイピングにおいても十分な菌株識別能が得られる。
【0060】
なお、遺伝子ECS1190は、配列表の配列番号76(フォワード)および77(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z2415は、配列表の配列番号78(フォワード)および79(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z1432は、配列表の配列番号80(フォワード)および81(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS3501は、配列表の配列番号82(フォワード)および83(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_1587は、配列表の配列番号84(フォワード)および85(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z1797は、配列表の配列番号86(フォワード)および87(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2641は、配列表の配列番号88(フォワード)および89(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_2877は、配列表の配列番号90(フォワード)および91(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_1791は、配列表の配列番号92(フォワード)および93(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_0874は、配列表の配列番号94(フォワード)および95(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_1406は、配列表の配列番号96(フォワード)および97(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号399(フォワード)および400(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_2097は、配列表の配列番号98(フォワード)および99(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号411(フォワード)および412(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2129は、配列表の配列番号100(フォワード)および101(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号403(フォワード)および404(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_3979は、配列表の配列番号102(フォワード)および103(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号409(フォワード)および410(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_4026は、配列表の配列番号104(フォワード)および105(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S0497は、配列表の配列番号106(フォワード)および107(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_1225は、配列表の配列番号108(フォワード)および109(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号63は、配列表の配列番号110(フォワード)および111(リバース)のプライマー、または配列表の配列番号391(フォワード)および392(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号64は、配列表の配列番号112(フォワード)および113(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号65は、配列表の配列番号114(フォワード)および115(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号66は、配列表の配列番号116(フォワード)および117(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_3039は、配列表の配列番号118(フォワード)および119(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_2899は、配列表の配列番号120(フォワード)および121(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_3056は、配列表の配列番号122(フォワード)および123(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_3024は、配列表の配列番号124(フォワード)および125(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z2404は、配列表の配列番号126(フォワード)および127(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_3237は、配列表の配列番号128(フォワード)および129(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1189は、配列表の配列番号130(フォワード)および131(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z1456は、配列表の配列番号132(フォワード)および133(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_2915は、配列表の配列番号134(フォワード)および135(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z2384は、配列表の配列番号136(フォワード)および137(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1527は、配列表の配列番号138(フォワード)および139(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECH74115_1860は、配列表の配列番号140(フォワード)および141(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z1854は、配列表の配列番号142(フォワード)および143(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z3358は、配列表の配列番号144(フォワード)および145(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子Z3362は、配列表の配列番号146(フォワード)および147(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0314は、配列表の配列番号148(フォワード)および149(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0547は、配列表の配列番号150(フォワード)および151(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0685は、配列表の配列番号152(フォワード)および153(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0762は、配列表の配列番号154(フォワード)および155(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0766は、配列表の配列番号156(フォワード)および157(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0799は、配列表の配列番号158(フォワード)および159(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_0805は、配列表の配列番号160(フォワード)および161(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_1022は、配列表の配列番号162(フォワード)および163(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_1258は、配列表の配列番号164(フォワード)および165(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_1399は、配列表の配列番号166(フォワード)および167(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_1636は、配列表の配列番号168(フォワード)および169(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_2099は、配列表の配列番号170(フォワード)および171(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり
遺伝子EC55989_2104は、配列表の配列番号172(フォワード)および173(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2188は、配列表の配列番号174(フォワード)および175(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2249は、配列表の配列番号176(フォワード)および177(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2256は、配列表の配列番号178(フォワード)および179(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_2311は、配列表の配列番号180(フォワード)および181(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_3358は、配列表の配列番号182(フォワード)および183(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_3371は、配列表の配列番号184(フォワード)および185(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_3396は、配列表の配列番号186(フォワード)および187(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_3400は、配列表の配列番号188(フォワード)および189(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_3509は、配列表の配列番号190(フォワード)および191(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4034は、配列表の配列番号192(フォワード)および193(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4038は、配列表の配列番号194(フォワード)および195(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4041は、配列表の配列番号196(フォワード)および197(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4278は、配列表の配列番号198(フォワード)および199(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4878は、配列表の配列番号200(フォワード)および201(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4903は、配列表の配列番号202(フォワード)および203(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4941は、配列表の配列番号204(フォワード)および205(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4958は、配列表の配列番号206(フォワード)および207(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4963は、配列表の配列番号208(フォワード)および209(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4969は、配列表の配列番号210(フォワード)および211(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_4972は、配列表の配列番号212(フォワード)および213(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_5004は、配列表の配列番号214(フォワード)および215(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子EC55989_5006は、配列表の配列番号216(フォワード)および217(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS0288は、配列表の配列番号218(フォワード)および219(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS0797は、配列表の配列番号220(フォワード)および221(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS0813は、配列表の配列番号222(フォワード)および223(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1102は、配列表の配列番号224(フォワード)および225(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1176は、配列表の配列番号226(フォワード)および227(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1299は、配列表の配列番号228(フォワード)および229(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1301は、配列表の配列番号230(フォワード)および231(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1516は、配列表の配列番号232(フォワード)および233(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1564は、配列表の配列番号234(フォワード)および235(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1592は、配列表の配列番号236(フォワード)および237(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1597は、配列表の配列番号238(フォワード)および239(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1662は、配列表の配列番号240(フォワード)および241(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1663は、配列表の配列番号242(フォワード)および243(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1694は、配列表の配列番号244(フォワード)および245(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1933は、配列表の配列番号246(フォワード)および247(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS1937は、配列表の配列番号248(フォワード)および249(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2171は、配列表の配列番号250(フォワード)および251(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2283は、配列表の配列番号252(フォワード)および253(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2792は、配列表の配列番号254(フォワード)および255(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2927は、配列表の配列番号256(フォワード)および257(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS2996は、配列表の配列番号258(フォワード)および259(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS4458は、配列表の配列番号260(フォワード)および261(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS5272は、配列表の配列番号262(フォワード)および263(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS5304は、配列表の配列番号264(フォワード)および265(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECS5305は、配列表の配列番号266(フォワード)および267(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECSF_3727は、配列表の配列番号268(フォワード)および269(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECSF_4152は、配列表の配列番号270(フォワード)および271(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECSF2757は、配列表の配列番号272(フォワード)および273(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S0692は、配列表の配列番号274(フォワード)および275(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S0913は、配列表の配列番号276(フォワード)および277(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S1482は、配列表の配列番号278(フォワード)および279(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S2103は、配列表の配列番号280(フォワード)および281(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S3222は、配列表の配列番号282(フォワード)および283(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S4314は、配列表の配列番号284(フォワード)および285(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子S4832は、配列表の配列番号286(フォワード)および287(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号67配列表の配列番号288(フォワード)および289(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号68 は配列表の配列番号290(フォワード)および291(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号69 は配列表の配列番号292(フォワード)および293(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号70) は配列表の配列番号294(フォワード)および295(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号71は配列表の配列番号296(フォワード)および297(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号72 は配列表の配列番号298(フォワード)および299(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号73 は配列表の配列番号300(フォワード)および301(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号74 は配列表の配列番号302(フォワード)および303(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号75 は配列表の配列番号304(フォワード)および305(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能である。
【0061】
遺伝子P423_16715cは、配列表の配列番号397(フォワード)および配列番号398(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子P423_16735cは、配列表の配列番号423(フォワード)および配列番号424(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子P423_16745cは、配列表の配列番号425(フォワード)および配列番号426(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子P423_16780cは、配列表の配列番号427(フォワード)および配列番号428(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子P423_10825cは、配列表の配列番号464(フォワード)および配列番号465(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
遺伝子ECNA114_4753は、配列表の配列番号429(フォワード)および配列番号430(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号376は、配列表の配列番号407(フォワード)および配列番号408(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号377は、配列表の配列番号431(フォワード)および配列番号432(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号378は、配列表の配列番号433(フォワード)および配列番号434(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号379は、配列表の配列番号435(フォワード)および配列番号436(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号380は、配列表の配列番号401(フォワード)および配列番号402(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号381は、配列表の配列番号393(フォワード)および配列番号394(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号382は、配列表の配列番号437(フォワード)および配列番号438(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号383は、配列表の配列番号439(フォワード)および配列番号440(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号384は、配列表の配列番号441(フォワード)および配列番号442(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号385は、配列表の配列番号443(フォワード)および配列番号444(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号386は、配列表の配列番号445(フォワード)および配列番号446(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号387は、配列表の配列番号447(フォワード)および配列番号448(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号388は、配列表の配列番号449(フォワード)および配列番号450(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号389は、配列表の配列番号405(フォワード)および配列番号406(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号390は、配列表の配列番号395(フォワード)および配列番号396(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号455は、配列表の配列番号451(フォワード)および配列番号452(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号456は、配列表の配列番号453(フォワード)および配列番号454(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能であり、
配列番号461は、配列表の配列番号462(フォワード)および配列番号463(リバース)のプライマーを使用することで、PCRにより検出可能である。
【0062】
またこれらを、後述するPCRおよび電気泳動を利用して検出した場合には、DNAが増幅しやすく、またエクストラバンドが現れにくい。
【0063】
以上では、PCR法によりgenomic islandを構成するORF(2)を検出することを主に説明してきたが、genomic islandを構成するORF(2)はその他の方法によっても検出可能であり、たとえばハイブリダイゼーションによって検出可能である。
【0064】
[ORF検出手段]
上述した、大腸菌の染色体上の、genomic isletを構成するORF(1)およびgenomic islandを構成するORF(2)の保有の有無の検出は、任意の順で行うことができる。具体的には、これらORFを各ORF毎に任意の順に検出してもよく、または、複数のORF毎に任意の順にまとめて検出してもよく、あるいは、全てのORFを同時に検出してもよい。ORFを検出する手段としては、PCRおよびハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0065】
<PCR>
各ORF毎に別々に検出する場合には、たとえば、検出対象のORF毎にそれぞれ対応する1組のプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)を用いて、独立した系で、大腸菌のDNA抽出サンプルとともに、real time PCR反応などを行い、PCR増幅産物の生成シグナル蛍光などをリアルタイムに検出する。
【0066】
また、複数のORF毎にまとめて検出する場合には、たとえば、大腸菌マーカーとしてyhbX(例えばE. coli 55989株のEC55989_3592に相当)を検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)を加えた、複数のORFにそれぞれ対応する複数組のプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマーの組)を混合し、同一の反応系に入れてPCR反応を行うマルチプレックスPCRが実施可能である。この場合には、各ORFに対応するPCR増幅産物の有無は、反応後の液を電気泳動、たとえば、アガロースゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動などで泳動して得られたバンドの有無によって確認する。
【0067】
全てのORFを同時に検出する場合には、たとえばmicro arrayを応用してORFを検出する。micro arrayによる検出では、各ORFとハイブリダイズするプローブをmicro arrayの各wellに作成しておき、培養菌からカラム抽出あるいはフェノール−クロロホルム抽出によって精製されたDNAをハイブリダイズさせ、未反応のDNAを洗浄した後、2本鎖DNAと結合する蛍光色素でラベルし、蛍光を捉える機械で測定することで目的のORFが検出可能となる。
これらのうちでは、複数のORFを簡便な手法で効率よくまとめて検出できる点から、マルチプレックスPCRが好ましい。
【0068】
(プライマーの設計)
上記genomic isletを構成するORF(1)およびgenomic islandを構成するORF(2)については塩基配列が90%程度相同なORFが臨床分離株やデータベース上に見られることから、これらの相同なORFも検出できるよう変異の少ない部分にプライマーを設計することで、臨床分離されることの多いほとんどの大腸菌に汎用的に使用できるとともに突然変異の影響を受けにくいプライマーとする。
【0069】
上記genomic isletを構成するORF(1)およびgenomic islandを構成するORF(2)に加え、大腸菌マーカーとしてのyhbXを検出するプライマー、phylogenetic group決定のプライマー、および薬剤耐性遺伝子検出のプライマーのそれぞれに対応するプライマーの設計にあたっては、プライマー自身が折れ曲がって相補的になっている部分が結合して2重鎖を形成したり、異なるプライマー同士が、互いに相補的になっている部分において結合して2量体またはそれ以上の結合体を形成したりしないような配列にする。
【0070】
さらに、マルチプレックスPCRで検出することを考慮し、プライマーのGC比をおよそ50%とし、Tm値を合わせるよう工夫することが好ましい。また、増幅効率と、電気泳動の際に短時間で分離可能なよう、PCR増幅産物サイズがおよそ50bp〜700bp、好ましくは70bp〜600bpとなるように調整することが望ましい。なお、同じ反応系で検出するORFにおいては、PCR増幅産物のサイズが同じにならないようにプライマーを設計することが重要である。
【0071】
上記のような条件を設定することでマルチプレックスPCRにおいて再現性の高い増幅結果が得られるプライマーおよびプライマーセットを得ることができる。このようなプライマーの設計は、市販のソフトウェアあるいはウエブを通じて自由に入手し利用可能なソフトウェアにより行うことができるが、ソフトウェアが出力する多くのプライマー候補のなかから、同時検出するORF間の相互作用による増幅効率の悪化、および各ORFの増幅効率の適正化を検証するため、臨床分離株を用いた試行錯誤によって、最適なプライマーを見つけ出した。
【0072】
具体的には、上記(1)〜(2)のORFの項目でそれぞれ述べたように、
(1)genomic isletを構成するORFのためのプライマーとして36組のプライマー、
(2)genomic islandを構成するORFためのプライマーとして144組のプライマー、の合計180組のプライマー(配列表の配列番号1〜62、76〜305、391〜454、462〜465)を本発明者は設計した。
【0073】
なお、上記プライマーセットを用いてマルチプレックスPCRを行う場合には、下記表7にprimer mixtureとして示すように、10組のプライマーセットに大腸菌のマーカーとしてのyhbXを検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)および大腸菌の遺伝子型大分類としてのphylogenetic groupを決定するプライマー(配列表の配列番号308と309、配列番号310と311および配列番号312と313)を加えた14組のプライマーを組み合わせて混合した反応系、および下記表8にprimer mixtureとして示すように、10組のプライマーセットに大腸菌のマーカーとしてyhbXを検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)を加えた11組のプライマー、下記表9にprimer mixtureとして示すように、12組のプライマーセットに大腸菌のマーカーとしてyhbXを検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)を加えた13組のプライマー、下記表10にprimer mixtureとして示すように、11組のプライマーセットに大腸菌のマーカーとしてyhbXを検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)を加えた12組のプライマー、および下記表11にprimer mixtureとして示すように、9組のプライマーセットに大腸菌のマーカーとしてyhbXを検出するプライマー(配列表の配列番号306と307)、および薬剤耐性遺伝子(CTX−M−1グループおよびCTX−M−9グループ)を検出するプライマー(配列番号457と458、および配列番号459と460)を加えた12組のプライマーを組み合わせて混合した反応系にてPCRを実施することが望ましい。なお、クローン同定と菌株識別は同時に実施しても、別々に実施しても良い。また菌株識別は腸管出血性大腸菌や種々のクローンの大腸菌などでは、それぞれ表8に示したプライマーセットあるいは表9に示したプライマーセットのどちらかを片方だけでも良い。ST131クローンの菌株識別には表8、および表9に示したプライマーセットに加えて、表10および表11に示したプライマーセットも同時に実施すると効果的である。また、配列番号100と101は表6及び表7に示したプライマーセットの両方に含まれ、配列番号1と2および配列番号3と4は表7及び表10に示したプライマーセットの両方に含まれ、配列番号106と107は表9及び表10に示したプライマーセットの両方に含まれ、、配列番号94と95および配列番号104と105は表9及び表11に示したプライマーセットの両方に含まれる。
【0074】
なお、配列番号306と307で示された増幅ORFのyhbXとは、hydrolaseをコードする遺伝子であり、大腸菌に普遍的に見出されるので、大腸菌を識別する共通マーカーとして用いることができる。
【0080】
以上に示した具体的なプライマーは、標的ORFを増幅するために最適化された配列であり、これらのプライマーに2塩基程度の付加、置換、欠失及び/又は挿入といった変更があっても、プライマーとしての機能は失われず、PCRによって標的ORFを増幅することができる。付加とは、表に示されたプライマーの5’側または3’側の末端に塩基が追加されることをいい、挿入とは、前記の末端ではなく、プライマーの内側において、塩基と塩基の間に塩基が追加されることを言う。
【0081】
プライマーとして高い性能を発揮する観点からは、前記変更は、2塩基以下の付加、置換、欠失、挿入であることが好ましく、2塩基以下の付加または2塩基以下の5’側または3’側の末端における欠失であることがより好ましく、1塩基以下の標的ORFと相補的な塩基の付加または5’側または3’側の末端における1塩基以下の欠失であることが特に好ましい。一般的に、5’側の変更はプライマーとしての機能を失わせにくく、3’側の変更はプライマーの機能を失わせやすい傾向がある。
【0082】
<ハイブリダイゼーション>
ハイブリダイゼーションによりORFを検出する場合には、まず培養菌(大腸菌)からカラム抽出あるいはフェノール−クロロホルム抽出によって精製されたDNAをアルカリ変性し、ナイロンメンブレン、セルロースメンブレンあるいはマイクロプレートに定着させる。本発明で検出する各々のORFとハイブリダイズするプローブを作成する。プローブは人工合成DNAでも、上記で説明したプライマーを利用したPCRで作成しても良い。プローブはビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光色素などを用いてラベルしておく。菌抽出DNAとプローブをハイブリダイズし、プローブのラベルに応じて、酵素付加、発色、発光などさせ、シグナルを捉える。これを各々の検出ORFについて実施する。
【0083】
[ORF検出によるクローン同定、及び菌株識別法の実施方法]
以下、マルチプックスPCRを行い、上記(1)〜(2)のORFのうち、上述した検出対象として好ましいORFを検出する場合を一例とし、本発明の大腸菌のクローン同定法、及び菌株識別法の手順を説明する。
【0084】
(菌種の同定)
便、血液、尿などの患者由来の検体あるいは患者に使用したカテーテルやガーゼ等の医療器具などの材料から、血液寒天培地(一般細菌分離用)、マッコンキー培地などの大腸菌を分離可能な培地を用いて大腸菌様の菌を分離する。その後、グラム染色による形態の確認、および生化学性状の確認により、大腸菌と同定する。
【0085】
大腸菌であると同定された菌株を、大腸菌を増殖可能な液体培地(Luria-Bertani broth、Brain Heart Infusion培地、トリプトソイブイヨン等)、あるいは寒天培地(Luria-Bertani寒天培地、Brain Heart Infusion寒天培地、トリプトソイ寒天培地、普通寒天培地等)を用いて37℃で一晩培養する。
【0086】
(DNA抽出)
培養した菌体から、熱抽出、フェノール抽出、市販のDNA抽出キットによるDNA抽出、あるいは蒸留水またはTris-EDTAバッファーなどに菌体を懸濁し加熱して得られる熱抽出法などの方法でDNAを抽出し、PCR反応用の試料(テンプレート)とする。
【0087】
(PCR反応)
マルチプレックスPCRで上記表7、8、9、10および11に記載の、genomic isletを構成するORF 10個、genomic islandを構成するORF 29個に加え、大腸菌マーカーとしてyhbX、Phylogenetic group検出部位としてchuA、yjaAおよびTspE4.C2および薬剤耐性遺伝子(CTX−M−1グループおよびCTX−M−9グループ)の検出を行う。具体的には、検出対象のORF群に対応する数のプライマーの組(フォワードプライマー及びリバースプライマー)を、14組、11組、13組、12組、および12組の5群に分け、それぞれの組毎に同一の反応チューブに入れ一括してPCR反応を行う。なお、クローン同定と菌株識別は同時に実施しても、別々に実施しても良い。
【0088】
(電気泳動)
およそ50bp〜600bpのDNA断片が充分に分離されるような条件下でアガロースゲルなどのゲルを用い、PCR増幅産物を電気泳動する。泳動距離は約5〜6 cmでよく、ミニゲルの場合100V、60分程度で充分分離可能である。電気泳動後、エチジウムブロマイドやサイバーグリーンなどで染色して写真撮影を行う。また、たとえばAgilent 2100 バイオアナライザや島津製作所MultiNAのような各種のキャピラリー型電気泳動装置等を用いてPCR産物を分離し画像化することも可能である。
【0089】
(結果判定)
それぞれ最大14本、11本、13本、12本、または12本のバンドが現れる。本発明の遺伝子型タイピング法ではバンドサイズがあらかじめわかっているため、それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定する。場合によっては目的のサイズ以外の非特異的なバンドが現れることがあるが、非特異バンドは無視する。目的のサイズのバンド(各ORFに対応するバンドおよびポジティブコントロールに対応するバンド)が増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として2進法のコードを作成する。
【0090】
このコードは(1)〜(2)の各ORF毎に作成してもよいし、または、すべてをまとめて一つのコードとして作成してもよいし、あるいは(1)〜(2)のORFの一部をまとめて作成するなどしてもよい。本発明のクローン同定法が実際の医療の現場で使用される場合には、(1)〜(2)のORFすべてをまとめて一つのコードとして作成すると、桁数が大きくなって見にくいことから、いくつかのORFの結果はまとめて一つのコードとして作成することが好ましい。
【0091】
ここで上述のとおり、遺伝子型の分類上、大腸菌は、clonal complex (CC)型にまとめると理解がしやすく流行クローンを同定する上でも有用である。(1)のORFの保有パターンはCC型との相関が高く、CCを推定するのに役立つ。(2)のORFの保有パターンを比較することで菌株識別が可能となる。
【0092】
したがって、(1)のORF検出結果を一つのコードとして作成することが好ましく、(2)のORF検出結果はそれぞれ一つまたは二つまたは三つのコードとして作成することが好ましいが視認性の良さを考慮すると三つのコードとして作成することがより好ましい。
【0093】
そして、たとえばこのようにして作成された2進法のコードを、より桁数を少なくして見やすくするため、たとえば10進法に変換し、遺伝子型コードとする。以上のコード作成の一例を下記表12および表13に示す。表12の例は表1および表3のEDL933株に対して、表7、8および9記載のプライマーセットを用いたものである。表13の例は表1、表3および表4のNA114株に対して、表10および表11記載のプライマーセットを用いたものである。
【0094】
表8に示したプライマーセットは特に腸管出血性大腸菌において菌株識別能力が高く、表9に示したプライマーセットは腸管出血性大腸菌以外の広範なクローンの大腸菌で菌株識別能を発揮する。また表10および表11に示したプライマーセットはクローンを大別すると同時に、ST131クローンに対して高い菌株識別能を発揮するが、表8、表9、表10および表11にあげた検出ORFはそれぞれ腸管出血性大腸菌やST131に限定されるわけではなく、全てのクローンにおいて使用可能である。また、プライマーセットを表8、表9、表10および表11のように分けることで、検出された大腸菌の血清型などが判明している場合は、表8、表9、表10または表11に示したプライマーセットのいずれか1種類を実施するだけでも、必要な効果が得られる。
【0097】
まず、適切なプライマーを使用したPCRおよび電気泳動により、試験対象の大腸菌における各ORFの有無を検出し、それを2進法によりコード化する。そして、このコードを10進法に変換し、遺伝子型コードを得る。表12の例ではコードは429−476−19−1、表13の例ではコードは71−20−166となる。
【0098】
表12および13に示された例において、コード1およびコード5は(1)のORFの検出結果をまとめたものであるので、複数の大腸菌株について遺伝子型コードを作成した場合に、大腸菌のCCに相当する数値となる。この数値からMLST相当のクローナリティを判断することができる。コード2とコード3とコード4とコード6とコード7の組み合わせは菌株に固有のコードであり、計算上2
29種類の遺伝子型に分けることが可能である。コード2は特に腸管出血性大腸菌における菌株識別能が高くなるようORFが選択されており、コード3およびコード4は腸管出血性大腸菌以外の大腸菌における菌株識別能が高くなるようORFが選択されており、多くのクローンにおいて菌株識別が可能である。コード6とコード7はST131クローンに対して菌株識別能が高くなるようにORFが選択されており、薬剤耐性大腸菌の菌株識別に有効である。
【0099】
具体的には、たとえば、大腸菌臨床分離株24株における(1)のORF 10個(ECNA114_4208〜ECS0053)の保有の有無を、上記と同様にして2進法コード化、さらに10進法コード化すると、下記表14のとおりである。
【0101】
表14において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目及び5番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型およびclonal complex (CC)型である。なお、菌株番号16〜19のO157:H7はすべてST11、CC11、菌株番号20〜22のO26:H11またはO26:HNMは全てST21、CC29、菌株番号23および24のO111:H-はすべてST16、CC29と考えられる。
このように判定結果をコード化すると遺伝的に近縁な株や血清型が同じ株では同一値となり、近縁関係がわかる。また、市販血清による血清型が決められない場合においても、遺伝子型が得られるため、汎用性の高いデータが得られる。さらに得られた遺伝子型コード同士を比較することで、異なる時期や施設で分離された菌株の特定であっても、容易かつ客観的に行うことができる。
【0102】
さらに(2)genomic islandを構成するORFのうちコード2を構成するORFの検出を行うと表15のとおりである。
【0104】
表15において一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目及び5番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型およびclonal complex (CC)型である。
24株は19種類の遺伝子型に細分された。
【0105】
さらに(2)genomic islandを構成するORFのうちコード3およびコード4を構成するORFの検出を行うと表16のとおりである。
【0107】
表16において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型である。
24株は19種類の遺伝子型に細分された。
【0108】
具体的には、たとえば、ST131を中心とした大腸菌臨床分離株24株における(1)genomic isletを構成するORF、および(2)genomic islandを構成するORFを組み合わせ、コード5、コード6およびコード7を構成するORFの検出を行うと表17のとおりである。
【0110】
表17において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目及び5番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型およびclonal complex (CC)型である。
なお、菌株番号55、57〜60および75〜87の株はすべてST131であると考えられる。また同一クローン(ST131)と考えられる17株は14種類の遺伝子型に細分された。
このように(1)genomic isletを構成するORF、および(2)genomic islandを構成するORFを組み合わせることで、クローンの同定と菌株識別を同時に行うことが可能となる。
【0111】
さらに、本発明で検出の対象としているORFの大部分は、大腸菌の病原性等に関連しないORFである。病原性に関連するなど、特定の機能を有する遺伝子は、その大腸菌が宿主内で増殖する確率を上げたり、あるいはその遺伝子産物が宿主の免疫システムのターゲットとなり、反対に生存確率を下げたりすることがある。つまりこのような遺伝子は、大腸菌の多くが持っている、あるいは反対にほとんど持っていないと考えられる。本発明では、このようなバイアスがかからないように適切なORFを選択して遺伝子型別分類を行っているのである。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0112】
実施例1
腸管出血性大腸菌、病院で臨床分離された大腸菌および健常者から分離された大腸菌の合計24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
【0113】
<ORF検出によるクローン同定>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0114】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0115】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0116】
プライマーは14組を組み合わせ1本の反応チューブを使用し、14個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は下記表18のとおりである。
【0117】
【表18】
【0118】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0119】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0120】
(結果判定)
1反応につき最大14本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図1および表14に示す。
【0121】
表9において、前述のようにコードから近縁な株が判明するが、たとえば菌株1,2および3はコードが587であることからESBL産生菌が多いとされるST131であることがわかる。また、菌株番号16〜19のO157:H7はすべてST11、CC11、菌株番号20〜22のO26:H11またはO26:HNMは全てST21、CC29、菌株番号23および24のO111:H-はすべてST16、CC29と考えられる。
【0122】
実施例2
先の実施例と同じ大腸菌の合計24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
<ORF検出(コード2)による菌株識別>
(大腸菌の培養)
臨床分離された腸管出血性大腸菌24株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0123】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0124】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0125】
プライマーは11組を組み合わせ1本の反応チューブを使用し、11個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は下記表19のとおりである。
【0126】
【表19】
【0127】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0128】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0129】
(結果判定)
1反応につき最大11本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図2および表15に示す。
【0130】
表15において、において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型である。 24株は19種類の遺伝子型に細分された。
【0131】
実施例3
先の実施例と同じ大腸菌の合計24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
【0132】
<ORF検出(コード3および4)による菌株識別>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0133】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0134】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0135】
プライマーは13組を組み合わせ1本の反応チューブを使用し、13個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は下記表20のとおりである。
【0136】
【表20】
【0137】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0138】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0139】
(結果判定)
1反応につき最大13本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図3および表16に示す。
【0140】
表16において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型である。
24株は19種類の遺伝子型に細分された。
【0141】
実施例4
以下、プライマー配列に2塩基程度の変更があった場合の実施例についてさらに具体的に説明する。
先の実施例と同じ大腸菌24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
<プライマー配列に2塩基程度の変更があった場合の実施例>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0142】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0143】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0144】
プライマーは14組あるいは11組あるいは13組を組み合わせ3本の反応チューブを使用し、38個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ(primer mixture 1、2および3)、及びその最終濃度は下記表21、表22および表23のとおりである。
【0145】
【表21】
【0146】
【表22】
【0147】
【表23】
【0148】
配列番号314は配列番号1に対して1塩基の置換したものであり、配列番号315は配列番号2に対して2塩基の付加したものであり、配列番号316は配列番号3に対して2塩基の置換したものであり、配列番号317は配列番号4に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号318は配列番号5に対して1塩基の置換したものであり、配列番号319は配列番号6に対して1塩基の置換したものであり、配列番号320は配列番号7に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号321は配列番号8に対して1塩基の置換したものであり、配列番号322は配列番号9に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号323は配列番号10に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号324は配列番号11に対して2塩基の付加したものであり、配列番号325は配列番号12に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号326は配列番号13に対して1塩基の置換したものであり、配列番号327は配列番号14に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号328は配列番号15に対して2塩基の付加したものであり、配列番号329は配列番号16に対して2塩基の付加したものであり、配列番号330は配列番号17に対して1塩基の付加と1塩基の欠失したものであり、配列番号331は配列番号18に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号332は配列番号19に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号333は配列番号20に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号334は配列番号76に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号335は配列番号77に対して2塩基の欠失したものであり、配列番号336は配列番号78に対して2塩基の置換したものであり、配列番号337は配列番号79に対して1塩基の付加したものであり、配列番号338は配列番号80に対して2塩基の欠失したものであり、配列番号339は配列番号81に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号340は配列番号82に対して2塩基の置換したものであり、配列番号341は配列番号83に対して1塩基の置換したものであり、配列番号342は配列番号84に対して2塩基の置換したものであり、配列番号343は配列番号85に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号344は配列番号100に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号345は配列番号101に対して2塩基の付加したものであり、配列番号346は配列番号86に対して2塩基の置換したものであり、配列番号347は配列番号87に対して2塩基の付加したものであり、配列番号348は配列番号88に対して1塩基の置換したものであり、配列番号349は配列番号89に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号350は配列番号90に対して1塩基の付加したものであり、配列番号351は配列番号91に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号352は配列番号92に対して1塩基の置換したものであり、配列番号353は配列番号93に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号354は配列番号94に対して2塩基の置換したものであり、配列番号355は配列番号95に対して2塩基の置換したものであり、配列番号356は配列番号96に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号357は配列番号97に対して2塩基の付加したものであり、配列番号358は配列番号98に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号359は配列番号99に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号360は配列番号102に対して2塩基の付加したものであり、配列番号361は配列番号103に対して2塩基の置換したものであり、配列番号362は配列番号104に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号363は配列番号105に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号364は配列番号106に対して2塩基の置換したものであり、配列番号365は配列番号107に対して1塩基の付加したものであり、配列番号366は配列番号108に対して2塩基の置換したものであり、配列番号367は配列番号109に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号368は配列番号110に対して1塩基の挿入したものであり、配列番号369は配列番号111に対して2塩基の置換したものであり、配列番号370は配列番号112に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号371は配列番号113に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号372は配列番号114に対して1塩基の付加したものであり、配列番号373は配列番号115に対して2塩基の置換したものであり、配列番号374は配列番号116に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号375は配列番号117に対して2塩基の欠失したものである。
【0149】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0150】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0151】
(結果判定)
1反応につき最大14本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図4、5および6に示す。
図1、2および3、表14、15および16と同様の結果が得られた。
【0152】
実施例5
<腸管出血性大腸菌の菌株識別>
(大腸菌の培養)
集団感染2事例由来18株を含む臨床分離された腸管出血性大腸菌24株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0153】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0154】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0155】
プライマーは11組を組み合わせ1本の反応チューブを使用し、11個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は表19のとおりである。
【0156】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0157】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0158】
(結果判定)
1反応につき最大11本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図7および表18に示す。
【0159】
【表24】
【0160】
表24において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型ある。 24株は9種類の遺伝子型に細分された。24株のうち菌株番号26、28、30、32,34、36、38、39、40、41、42、43、44、45、46および47、菌株番号25および33はそれぞれ同一の集団感染事例から採取された菌だが、同一遺伝子型に属することがわかる。
【0161】
実施例6
病院で臨床分離された集団感染3事例由来7株を含む大腸菌および健常者から分離されたST131に相当する大腸菌の合計24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
【0162】
<ST131クローンの菌株識別>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0163】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0164】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0165】
プライマーは13組を組み合わせ1本の反応チューブを使用し、13個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は表20のとおりである。
【0166】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0167】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0168】
(結果判定)
1反応につき最大13本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図8および表25に示す。
【0169】
【表25】
【0170】
表25において、一番上の行は菌株の番号である。24株は14種類の遺伝子型に細分された。24株のうち菌株番号51、53、および55、菌株番号52および54、菌株番号68および70はそれぞれ同一の集団感染事例から採取された菌だが、同一遺伝子型に属することがわかる。
【0171】
実施例7
<クローン同定とST131クローンの菌株識別>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
【0172】
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0173】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0174】
プライマーは12組を組み合わせ2本の反応チューブを使用し、23個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は表26および27のとおりである。
【0175】
【表26】
【0176】
【表27】
【0177】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0178】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0179】
(結果判定)
1反応につき最大12本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表13と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図9、10および表17に示す。
【0180】
表17において、一番上の行は菌株の番号である。
表17において、一番上の行は菌株の番号、上から2番目の行はO血清型、上から3番目の行はH血清型、上から4番目及び5番目の行はMLST解析によるSequence type (ST)型およびclonal complex (CC)型である。
24株は5種類のクローンに分類された。なお、菌株番号55、57〜60および75〜87の株はすべてST131であると考えられる。また同一クローン(ST131)と考えられる17株は14種類の遺伝子型に細分された。
このように(1)genomic isletを構成するORF、および(2)genomic islandを構成するORFを組み合わせることで、クローンの同定と菌株識別を同時に行うことが可能となる。
【0181】
実施例8
以下、表10および表11に示されるプライマー配列に2塩基程度の変更があった場合の実施例についてさらに具体的に説明する。
実施例7と同じ大腸菌24株について、下記の手順により、ORF検出による遺伝子型別分類を行った。
<プライマー配列に2塩基程度の変更があった場合の実施例>
(大腸菌の培養)
大腸菌であると同定された24の菌株を、トリプトソイ寒天培地を用いて37℃で一晩培養した。
(DNA抽出)
培養した菌のおよそ1コロニーに相当する量を、1.5mlのエッペンドルフチューブに入れた、トリス−EDTAバッファー100μl中に懸濁し、100℃で10分間加熱した。次いで、チューブを12,000rpmで3分間遠心分離し、その上清をDNA熱抽出サンプルとした。
【0182】
(PCR反応液の調製)
RocheのFastStart DNA polymeraseを説明書に従って使用した。その際、反応液量は20μlとした。反応液20μlの組成は、10×FastStart Taq Buffer (MgCl
2含有) 2μl、10mM dNTP Mix 0.4μl、25mM MgCl
2 0.8μl、FastStart Taq DNA polymerase 0.2μl、蒸留水14.2μlおよびprimer mixtureを0.4μlである。これに、上記のDNA熱抽出サンプルを2μl(反応液の1/10量)加えた。
【0183】
プライマーは12組を組み合わせ2本の反応チューブを使用し、23個のORFについて、マルチプレックスPCRを行った。プライマーの組み合わせ、及びその最終濃度は表28および29のとおりである。
【0184】
【表28】
【0185】
【表29】
【0186】
配列番号466は配列番号413に対して1塩基の置換したものであり、配列番号467は配列番号414に対して1塩基の置換したものであり、配列番号468は配列番号415に対して1塩基の付加したものであり、配列番号469は配列番号416に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号470は配列番号417に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号471は配列番号418に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号472は配列番号419に対して1塩基の置換したものであり、配列番号473は配列番号420に対して1塩基の付加したものであり、配列番号474は配列番号421に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号475は配列番号422に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号476は配列番号391に対して1塩基の付加したものであり、配列番号477は配列番号392に対して1塩基の置換したものであり、配列番号478は配列番号393に対して1塩基の付加したものであり、配列番号479は配列番号394に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号480は配列番号462に対して2塩基の付加したものであり、配列番号481は配列番号463に対して2塩基の置換したものであり、配列番号482は配列番号395に対して1塩基の置換と1塩基の欠失したものであり、配列番号483は配列番号396に対して1塩基の置換したものであり、配列番号484は配列番号464に対して1塩基の置換したものであり、配列番号485は配列番号465に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号486は配列番号401に対して1塩基の置換したものであり、配列番号487は配列番号402に対して1塩基の置換したものであり、配列番号488は配列番号403に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号489は配列番号404に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号490は配列番号405に対して2塩基の欠失したものであり、配列番号491は配列番号406に対して1塩基の付加したものであり、配列番号492は配列番号407に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものであり、配列番号493は配列番号408に対して1塩基の欠失したものであり、配列番号494は配列番号397に対して1塩基の置換したものであり、配列番号495は配列番号398に対して1塩基の付加と1塩基の置換したものである。
【0187】
(PCR反応)
サーマルサイクラー(Applied Biosytems社製、GeneAmp PCR System 9700)に熱抽出したDNAと反応液の混合液をセットし、最初に95℃で4分間処理し、その後、95℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 90秒のサイクルを30回繰り返したのち、72℃ 7分のファイナルエクステンションを行った。サイクル反応終了後、PCR産物は4℃で保存した。
【0188】
(電気泳動)
アガロースゲル(4% NuSieve 3:1 in TBE buffer)を用い、ミニゲルを作成し、120Vで60分間、5μlのPCR産物を電気泳動した。泳動距離は約5cmであった。電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、写真撮影を行った。
【0189】
(結果判定)
1反応につき最大12本のバンドが現れた。それぞれの菌株及び反応系において目的のサイズのバンドがあるか否かを判定し、目的のサイズのバンドが増幅していれば1、増幅が見られない場合を0として、上記表12と同様の2進法のコードを作成した。さらに2進法のコードを10進法に変換し、遺伝子型コードとした。
結果を
図11および12に示す。
図9および10、表17と同様の結果が得られた。