(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6387501
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】屋内動物忌避装置および屋内動物忌避方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/10 20110101AFI20180903BHJP
【FI】
A01M29/10
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-221096(P2017-221096)
(22)【出願日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年12月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515056325
【氏名又は名称】アイ・エヌ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】毛利 豊文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀吉
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−060412(JP,A)
【文献】
米国特許第09414581(US,B1)
【文献】
特開2003−284482(JP,A)
【文献】
特開2010−220542(JP,A)
【文献】
実開昭61−017977(JP,U)
【文献】
特開2013−230123(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3198676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から放射された光の一部を集光させる集光部と、
前記集光部の前記光源に対する相対位置を変化させて、床に形成される集光部からの光の照射領域を変位させる第1変位部と、
を備え、
前記集光部は凸レンズを備えることを特徴とする屋内動物忌避装置。
【請求項2】
前記第1変位部は回転機構を有し、前記回転機構によって前記集光部は回転運動をする、請求項1に記載の屋内動物忌避装置。
【請求項3】
前記集光部を2個以上有し、
前記回転機構により、前記集光部は回転運動する、請求項2に記載の屋内動物忌避装置。
【請求項4】
前記光源が複数ある、請求項1から3のいずれか一項に記載の屋内動物忌避装置。
【請求項5】
複数の前記光源の少なくとも一つは、前記回転機構の回転軸からずれた位置に配置される、請求項4に記載の屋内動物忌避装置。
【請求項6】
前記光源は点滅する、請求項1から5のいずれか一項に記載の屋内動物忌避装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載される屋内動物忌避装置を天井に取り付けて、前記屋内動物忌避装置により床に形成される光の照射領域を変位させる、屋内動物忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
屋内動物忌避装置に関し、具体的には、屋内配置物に夜間に被害を及ぼす動物が忌避するような光を放出する装置
および屋内動物忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物品に近づく動物を、動物が忌避する色のLED光により忌避させて、物品を動物の被害から護ることができるようにした動物忌避方法において、二以上のLEDが収容された筐体を、前記物品の近くであって動物が通る通路又は前下がり傾斜の傾斜台の上に設置し、電源スイッチをONにして前記二以上のLEDから、動物が忌避する二色以上の光を点灯時間17msec程度、点滅間隔1.6sec程度の点滅光にして出射させ、前記点滅光を前記物品の近くであり動物が通る通路に斜め下向きに照射して、当該通路の上方に反射させると共に周囲に広げ、反射して広がった点滅光が前記通路から前記物品に近づく動物により感知され易くして動物に忌避され易くした、ことを特徴とする動物忌避方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5946994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、
屋内で動物が忌避する装置
および屋内動物忌避方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)光源と、前記光源から放射された拡散光の一部を集光させる集光部と、前記集光部の前記光源に対する相対位置を変化させて、床に形成される集光部からの光の照射領域を変位させる第1変位部と、を備え
、前記集光部は凸レンズを備えることを特徴とする屋内動物忌避装置。
(2)前記第1変位部は回転機構を有し、前記回転機構によって前記集光部は回転運動をする、上記(1)に記載の屋内動物忌避装置。
(3)前記集光部を2個以上有し、前記回転機構により、前記集光部は回転運動する、上記(2)に記載の屋内動物忌避装置。
(4)前記光源が複数ある、上記(1)から(3)のいずれかに記載の屋内動物忌避装置。
(5)複数の前記光源の少なくとも一つは、前記回転機構の回転軸からずれた位置に配置される、上記(4)に記載の屋内動物忌避装置。
(6)前記光源は点滅する、上記(1)から(5)のいずれかに記載の屋内動物忌避装置。
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載される屋内動物忌避装置を
天井に取り付けて、前記屋内動物忌避装置により床に形成される光の照射領域を変位させる、屋内動物忌避方法
。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る装置を用いることにより、屋内配置物に被害を与える動物を屋内から追い出したり、屋内に近づかなくさせたりすることが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係る動物忌避装置の構造および動作を説明する図であり、(b)動物忌避装置が床面に形成する光照射領域をトレースした結果を示す図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る動物忌避装置の構造および動作を説明する図である。
【
図3】本発明の他の一実施形態の変形例に係る動物忌避装置の構造および動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る動物忌避装置
(屋内動物忌避装置)の構造および動作を説明する図である。
【0010】
図1に示される動物忌避装置10は、立体角θの拡散光LSを放射可能な光源11が、筐体12の内部に配置されている。光源11は、LED光源である。筐体12は、鉛直方向(
図1中Z軸方向)を回転軸Axとする回転機構14により回転可能とされている。回転機構14は、取り付け部材15により、建物の天井Sに取り付けられている。本実施形態に係る動物忌避装置10では、筐体12内に配置される光源は一つ(光源11)であり、光源11からの拡散光LSの放射方向の中心軸は、回転軸Axと重なっている。
【0011】
筐体12の上方に配置された光源11からの拡散光LSの照射範囲内であって筐体12の下側には、例えば凸レンズのような集光機能を有する第1集光部13が設けられている。第1集光部は、光源11から放出された拡散光LSの一部を筐体12の外部に集光させることができる。具体的には、第1位置P1に配置された第1集光部13に照射された拡散光LSの一部は、第1集光部13を透過して筐体12の外部に放出され、その際、第1集光部13の集光機能によって、拡散光から集束光LFに変換されて、床面Fに光照射領域SP1を形成する。
【0012】
回転機構14によって筐体12が回転軸Axを中心として回転すると、光源11は変位しないが、第1集光部13は回転軸Axを中心として回転し、例えば、回転機構14によって筐体12が180度回転した時には、第1集光部は第2位置P1aに位置する。その結果、第1集光部13から筐体12の外部に放出される集束光LFaは、光照射領域SP1とは床面Fにおいて異なる領域(光照射領域SP1a)に到達する。
【0013】
回転機構14によって回転する筐体12の第1集光部13から放出される集束光LFが作る光照射領域SP1をトレースすると、
図1(b)に示されるように、環状の領域LTとなる。この領域を周回するように、光照射領域SP1は移動する。
【0014】
本発明者らが検討した結果、特許文献1のように光を点滅させることよりも、光照射領域が床面Fなどの上を移動することが、より効果的に動物を忌避させるとの新たな知見を得た。忌避対象となる動物には、ネズミやモグラなどの哺乳類やカラスなどの鳥類のみならず、ゴキブリやハエなどの昆虫類やクモ類を含む節足動物も含まれる。本実施形態に係る動物忌避装置10は、かかる知見に基づき構成された。光照射領域SP1が床面Fを動き回ると、忌避対象の動物は、光照射領域SP1を自らの捕食者や駆除物などと誤認し、床面Fに近づくことが困難になる。
【0015】
環状の領域LTの全域を光照射領域SP1が移動してもよいし、例えば光源11が点滅することによって、光照射領域SP1が領域LTの一部を移動するようにしてもよい。この点滅を不規則に行えば、光照射領域SP1が環状の領域LT内のみを移動することを忌避対象の動物が気付きにくくなり、動物の忌避の程度が高まる場合もある。なお、本実施形態に係る動物忌避装置10では、筐体12に取り付けられた第1集光部13以外からは光源11からの光が放出しないように、筐体12は構成されている。このように構成することで、筐体12からの漏れ光に集光性の動物(昆虫など)が近づくことが防止できる。
【0016】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る動物忌避装置の構造および動作を説明する図である。
【0017】
図2に示される動物忌避装置10Aは、次の二点において
図1に示される動物忌避装置10と相違する。
【0018】
まず、動物忌避装置10Aは、光源11と同様に立体角θ1の拡散光LS1を放射可能な光源111がさらに筐体12に配置されている。光源111は、光源11と異なり、拡散光LS1の放射中心が回転機構14の回転軸Axからずれた位置にある。したがって、回転機構14によって筐体12が回転すると、光源111も回転軸Ax周りに回転する。
【0019】
また、筐体12には、複数の集光部が設けられている。具体的には、第1集光部13に加えて、第2集光部131を含む5つの集光部を有し、残りの4つは、
図2において、集光部132、集光部133、集光部134、集光部135として示してある。これらの集光部は、光源11から放射された拡散光のうち、第1集光部13によって集光される一部の光とは異なる一部の光を集光して、床面Fや壁面Wに光照射領域を形成する。
【0020】
第1集光部13は、光源11から放射される一部の光を集光する光路LP1が光照射領域SP1を床面Fに形成する一方、光源111から放射される光の一部を集光する光路LP2が、光照射領域SP1とは異なる床面Fの位置に光照射領域SP2を形成する。光源11と光源111の位置が異なるため、光照射領域SP1が作る環状の領域LTは、光照射領域SP2が作る環状の領域とは一致しない。したがって、光照射領域SP1と光照射領域SP2とが異なった軌跡で移動し、忌避対象動物に対する忌避効果は高まる。
【0021】
他の集光部(集光部132、集光部133、集光部134、集光部135)からも、光源11に基づく光照射領域、光源111に基づく光照射領域が、床面Fや壁面Wに形成され、これが独自の環状の領域内を移動することになる。このように多くの光照射領域が個別に床面Fや壁面Wを移動すると、忌避対象動物は、光照射領域の軌跡を予測不能となり、パニック状態に陥る。しかも、床面Fだけでなく、壁面Wにも光照射領域が形成されると、忌避対象動物は逃げ道を断たれたと認識し、さらに錯乱状態になる。このため、通常であれば容易に回避可能な粘着型の動物捕獲装置に捕獲されることもある。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、屋内の動物が屋内に留まることができない程度に驚かせる動物忌避装置を提供することが可能になる。
【0023】
図3は、本発明の他の一実施形態の変形例に係る動物忌避装置の構造および動作を説明する図である。動物忌避装置10Aでは、光源11などと第1集光部13などとはいずれも筐体12に固定され、その結果として光源と集光部とは相対位置を等しい状態を維持して回転する。これに対し、本例に係る動物忌避装置10Bでは、光源11、111は基板SB上に配置され、基板SBは、筐体12の内部にあるが、筐体12とは独立に位置し、回転機構14の回転に伴って回転しない。この場合において、各集光部には、光源からの拡散光の一部が常に照射されていなくてもよい。例えば、第2集光部131は、光源11からの拡散光LSの一部が常に照射されるが、光源111からの拡散光LS1が照射されない場合もある。
【0024】
上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0025】
例えば、上記の実施形態では、筐体12は光源11などからの拡散光LSが外部に漏れない構造としたが、これに限定されない。別の観点では、筐体12の内面において拡散光LSが反射可能であってもよい。この場合には、反射光を含めた光が第1集光部13において集光されるため、光照射領域SP1の面積を広げたり、光源を増やすことなく光照射領域を増やしたりすることができる場合がある。
【0026】
第1集光部13は単純に拡散光LSを集束光LFに変換する凸レンズ形状を具体例としたが、これに限定されない。所定の形状(例えば星形)を床面Fに投影するような光学系から構成されていてもよい。複数の光源(光源11、光源111)を点滅させる場合において、各光源の点滅の間隔が異なっていてもよい。点滅によって光照射領域の移動が不規則になることが忌避対象動物にとって効果的であるから、特許文献1のように、点滅の間隔を厳密に制御する必要はない。
【0027】
光源11の色も任意である。異なる色であってもよいし、同一であってもよい。光源11はLEDから構成されていてもよいし、LDからの放射光路に拡散板を設けて光を拡散させてもよい。上記の実施形態において第1集光部13からの集束光の光照射領域SP1を変位させる第1変位部に相当する回転機構14は、第2集光部131からの集束光の光照射領域を変位させる第2変位部と共通であるが、これに限定されず、各集光部からの光照射領域を変位させる変位部が個別に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10、10A、10B :動物忌避装置
11 :光源
12 :筐体
13 :第1集光部
14 :回転機構
15 :取り付け部材
111 :光源
131 :第2集光部
132、133、134、135 :集光部
Ax :回転軸
LF、LFa :集束光
LS、LS1 :拡散光
LT :環状の領域
P1 :第1位置
P1a :第2位置
SP1、SP1a、SP2 :光照射領域
LP1、LP2 光路
S :天井
F :床面
W :壁面
θ :立体角
θ1 :立体角
SB :基板
【要約】
【課題】動物が忌避する装置を提供する。
【解決手段】本発明の動物忌避装置10は、光源11と、光源11から放射された拡散光LSの一部を集光させる第1集光部13と、第1集光部13の光源11に対する相対位置を変化させて第1集光部13からの光の照射領域(光照射領域SP1)を変位させる第1変位部(回転機構14)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1