(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の制御ゾーンに区分され、各制御ゾーンに一又は複数のモータ内蔵ローラが設けられ、個々の制御ゾーン又は複数の制御ゾーンのモータ内蔵ローラを制御するためのコントローラを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のローラコンベア装置。
複数のコントローラと、当該コントローラに対する上位制御装置を有し、上位制御装置の指令に基づいて各コントローラからパルス信号の間隔に関する情報が上位制御装置に発信されることを特徴とする請求項4に記載のローラコンベア装置。
コントローラが、パルス信号の間隔を検知する間隔検知手段と、間隔検知手段が検知したパルスの間隔の中で最大のものを選択する選択手段を備え、最大の間隔に関する情報を上位制御装置に発信し、上位制御装置で遅延現象が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項4又は5に記載のローラコンベア装置。
遅延現象であるか否かは、任意のパルス信号の間隔nwと、その直前のパルス信号の間隔mwを比較し、両者の差が閾値TS以上であるか否かによって判定し、当該閾値TSは、モータ内蔵ローラの取り付けにガタ付き等が無い条件でモータ内蔵ローラを回転させ、モータ内蔵ローラへの給電を停止する直前のパルス信号の間隔を基準間隔tsとしたとき、基準間隔tsの3倍から10倍であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のローラコンベア装置。
遅延現象であるか否かは、任意のパルス信号の間隔nwと、その直前のパルス信号の間隔mwを比較し、両者の差が直前のパルス信号の間隔mw又は特定のパルス信号の間隔nwを基準として所定の割合以上であるか否かによって判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のローラコンベア装置。
モータ内蔵ローラは、永久磁石を備えた回転子を備えており、当該回転子には複数の極があり、前記極の近接・離反を検知して信号を発生させる信号発生手段を複数有し、モータが回転している際には幾つかの信号発生手段が同時期に信号を発生させ、各信号発生手段に由来する信号に基づいて各信号発生手段に由来するパルスを発生させるパルス生成回路を有し、パルスの由来を区別せずに、パルス信号の間隔を検出することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のローラコンベア装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示された設備診断方法は、モータの無負荷運転での電流値を、健全な状態と稼働中の状態とで比べているだけである。そのため消耗品の交換時期と判断された場合でも、機器において、どの部品を交換するべきかが明確でない。そのため、機器内の部品を順番に点検する必要があり、手間である。
【0010】
また特許文献2に開示された設備診断方法では、ローラコンベア装置が正常に機能している場合における電流と時間との関係のプロファイルを取得する必要があり、ローラコンベア装置の施工現場で基準情報を取得する必要がある。そのため専門の施工業者による作業が必要となり、汎用性が低いという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、故障箇所や不具合箇所の特定が容易であり、且つ基準情報を取得する作業も不要なローラコンベア装置を開発することを課題とするものである。特に本発明は、モータ内蔵ローラの取り付け部の緩みやガタ付きの有無を検出することができるローラコンベア装置を開発することを課題とするものである
。
また同様の課題を解決することができる機械装置の異常検知方法を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決することを目的として、本発明者らが鋭意研究したところ、モータ内蔵ローラの取り付け金具に緩みが生じた場合に、モータ内蔵ローラが発生する信号に基づいて生成されたモータパルス信号に特有の変化が現れることを発見した。
即ちブラシレスモータは、ホール素子等の検知手段によって回転子の回転位置を検知している。そしてホール素子等が発生させる信号を外部に取り出し、この信号に基づいて内部のモータの固定子に供給する電流を切り換える。
本発明者らは、ホール素子等が発生させる信号からパルス信号を生成し、パルス信号の間隔を観察した。
ここでローラコンベア装置が停止している場合には、当然、パルス信号は生成されない。ローラコンベア装置を回転させると、ホール素子等が信号を発生し、パルス信号が生成される。そしてモータ内蔵ローラの回転数が増加することに伴って、パルス信号の間隔が短くなり、一定の時間が経過すると、パルス信号の間隔が安定する。
【0013】
現に駆動しているローラコンベア装置を停止する際には、パルス信号の間隔が次第に延びる。そしてモータ内蔵ローラの回転が完全に停止すると、ホール素子等からの信号が停止するからパルス信号は発生しなくなる。即ちローラコンベア装置を停止する際には、パルス信号の間隔が次第に延び、遂にはパルス信号の間隔が無限大となる。
これに対してモータ内蔵ローラの取り付け金具に緩みがある場合は、モータ内蔵ローラが発生するモータパルスの間隔が一旦広がり、その後にパルス信号の間隔が短くなって停止に至るという固有現象が生じる。
【0014】
本発明の一つの様相は、この知見に基づいて開発されたものであり、フレームと、フレームに取り付けられた複数のローラを有し、前記ローラの少なくとも一つが、ローラ本体内にモータが内蔵されたモータ内蔵ローラであり、前記モータ内蔵ローラの回転子の回転に応じてパルス信号を発生させるパルス信号発生手段を有し、モータ内蔵ローラの回転を停止させる際におけるパルス信号の間隔を検出し、停止に至るまでの間にパルス信号の間隔が一定以上となる遅延現象の発生を検知する遅延現象検知機能を備え
ており、停止に至るまでに発生するパルス信号の間隔の発生数よりも、停止から所定数少ない発生数に至るまでパルス信号の間隔を監視し、この間に遅延現象が発生したか否かを判定することを特徴とするローラコンベア装置である。
また、本発明の他の様相は、フレームと、フレームに取り付けられた複数のローラを有し、前記ローラの少なくとも一つが、ローラ本体内にモータが内蔵されたモータ内蔵ローラであり、前記モータ内蔵ローラの回転子の回転に応じてパルス信号を発生させるパルス信号発生手段を有し、モータ内蔵ローラの回転を停止させる際におけるパルス信号の間隔を検出し、停止に至るまでの間にパルス信号の間隔が一定以上となる遅延現象の発生を検知する遅延現象検知機能を備えており、パルス信号の間隔が一旦広がり、その後にパルス信号の間隔が短くなって停止に至る固有現象の発生を検知する固有現象検知機能を備えたことを特徴とするローラコンベア装置である。
【0015】
ここでパルス信号のどの部分を基準として「パルス信号の間隔」を検知するかは任意であり、パルスの発生間隔でもよく、パルスの中心の間隔でもよく、パルス信号の終端同士の間隔でもよく、パルスの切り替わり間隔でもよい。即ち、一つのパルスの立ち上がり時刻から、次のパルスの立ち上がり時刻までの時間(パルスの発生間隔)を「パルス信号の間隔」としてもよい。一つのパルスの立ち下がり時刻や消滅時刻を起点とし、次のパルスの立ち下がり時刻や消滅時刻(パルスの消失間隔)を「パルス信号の間隔」としてもよい。あるいは一つのパルスの立ち下がり時刻や消滅時刻を起点とし、次のパルスの立ち上がりまでの時間(パルスの片側切り替わり間隔)を「パルス信号の間隔」としてもよい。一つのパルスの立ち上がり時刻を起点とし、次のパルスの立ち下がりまでの時間(パルスの片側切り替わり間隔)を「パルス信号の間隔」としてもよい。
さらに、一つのパルスの立ち下がり時刻又は立ち上がり時刻を起点とし、他のパルスの立ち上がり又は立ち下がりまでの時間(パルスの往復切り替わり間隔)を「パルス信号の間隔」としてもよい。
なお「パルスの往復切り替わり間隔」は、パルスの立ち上がりと立ち下がりの両方を基準として間隔を検知するものであるから、間隔の検知個数は、発生するパルス数の2倍となる。他の方策による場合は、間隔の検知個数は、発生するパルス数と同数(厳密にはマイナス1)となる。
遅延現象検知機能によって遅延現象が検知されると、モータ内蔵ローラの取り付け部位に緩みがあることが疑われる。
【0016】
停止に至るまでに発生するパルス信号数よりも、3パルス以上少ない回数に至るまでのパルス信号の間隔を監視し、この間に遅延現象が発生したか否かを判定することが望ましい。
【0017】
また停止に至るまでに発生するパルス信号の間隔の発生数よりも、所定数少ない発生数に至るまでパルス信号の間隔を監視し、この間に遅延現象が発生したか否かを判定することが望ましい。
【0018】
モータ内蔵ローラに対する通電を停止した後、パルス信号の間隔の発生数が一定数となるまでパルス信号の間隔を監視し、この間に遅延現象が発生したか否かを判定することが望ましい。
【0019】
パルス信号の間隔が一旦広がり、その後にパルス信号の間隔が短くなって停止に至る固有現象の発生を検知する固有現象検知機能を備えることが望ましい。
【0020】
固有現象検知機能によって固有現象が検知されると、モータ内蔵ローラの取り付け部位に緩みがある可能性がさらに高くなる。
【0021】
複数の制御ゾーンに区分され、各制御ゾーンに一又は複数のモータ内蔵ローラが設けられ、個々の制御ゾーン又は複数の制御ゾーンのモータ内蔵ローラを制御するためのコントローラを有していることが望ましい。
【0022】
本発明のローラコンベア装置は、分散制御を採用するものである。
【0023】
複数のコントローラと、当該コントローラに対する上位制御装置を有し、上位制御装置の指令に基づいて各コントローラからパルス信号の間隔に関する情報が上位制御装置に発信されることが望ましい。
【0024】
本様相では、上位制御装置の指令に基づいて故障診断が行われるので、作業効率が良い。
【0025】
コントローラが、パルス信号の間隔を検知する間隔検知手段と、間隔検知手段が検知したパルスの間隔の中で最大のものを選択する選択手段を備え、最大の間隔に関する情報を上位制御装置に発信し、上位制御装置で遅延現象が発生したか否かを判定するものであることが望ましい。
【0026】
本様相では、コントローラ側でパルスの間隔の中で最大のものを選択し、この情報に基づいて上位制御装置で遅延現象が発生したか否かを判定する。そのため上位制御装置が実行する処理量が少なく、比較的能力の低い上位制御装置を使用しても、故障診断を行うことができる。
【0027】
遅延現象が発生したことを条件として、モータ内蔵ローラのフレームに対する取り付けに緩みが生じたことを知らせる報知手段を
備えたことが望ましい。
【0028】
本様相のローラコンベア装置では、報知手段によってモータ内蔵ローラのフレームに対する取り付けに緩みが生じたことを知らせることができる。
【0029】
また遅延現象の程度に応じて報知手段の報知内容が変わることが望ましい。
【0030】
いずれかのパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりから、他のパルス信号の立ち下がり又は立ち下がりまでの切り替わり間隔を検出し、当該切り
替わり間隔をパルス信号の間隔として検出し、停止に至るまでの間にパルス信号の切り替わり間隔が一定以上となる遅延現象の発生を検知する遅延現象検知機能を備えたこと
が望ましい。
【0031】
本様相は、パルスの往復切り替わり間隔を「パルス信号の間隔」として採用するものである。本発明によると、モータ内蔵ローラが一回転する間に検出される「パルス信号の間隔」の数が多い。そのため、遅延現象の発生をいち早く検知することができる。
【0032】
遅延現象であるか否かは、任意のパルス信号の間隔nwと、その直前のパルス信号の間隔mwを比較し、両者の差が閾値TS以上であるか否かによって判定し、当該閾値TSは、モータ内蔵ローラの取り付けにガタ付き等が無い条件でモータ内蔵ローラを回転させ、モータ内蔵ローラへの給電を停止する直前のパルス信号の間隔を基準間隔tsとしたとき、基準間隔tsの3倍から10倍であることが望ましい。
【0033】
モータ内蔵ローラは、永久磁石を備えた回転子を備えており、当該回転子には複数の極があり、前記極の近接・離反を検知して信号を発生させる信号発生手段を複数有し、モータが回転している際には幾つかの信号発生手段が同時期に信号を発生させ、各信号発生手段に由来する信号に基づいて各信号発生手段に由来するパルスを発生させるパルス生成回路を有し、パルスの由来を区別せずに、パルス信号の間隔を検出することが望ましい。
【0034】
本発明の本質的部分をコントローラに応用することも
考えられる。
コントローラに関する
本発明の関連発明は、ローラ本体内にブラシレスモータが内蔵されたモータ内蔵ローラを制御するコントローラであって、前記ブラシレスモータは回転子の回転位置に応じて信号を発生させる信号発生手段を有し、前記信号に応じてブラシレスモータの固定子に供給する電流を切り換えるコントローラにおいて、前記信号発生手段によって発生した信号に基づいてパルスを発生させるパルス生成回路と、パルス生成回路によって生成されたパルス信号の間隔を検知する間隔検知手段と、間隔検知手段が検知したパルスの間隔の中で最大のものを選択する選択手段を備え、最大の間隔に関する情報を外部に発信する発信手段を有することを特徴とする。
【0035】
機械装置の異常を検知する機械装置の異常検知方法に関する発明は、前記機械装置は、ローラ本体内にモータが内蔵されたモータ内蔵ローラが使用されており、前記モータ内蔵ローラは、ローラ本体内にモータが内蔵されたものであってモータの回転によってローラ本体を回転させるものであり、前記モータ内蔵ローラ内のモータの回転に応じてパルス信号を発生させ、モータ内蔵ローラの回転を停止させる際におけるパルス信号の間隔を検出し、
パルス信号の間隔が一旦広がり、その後にパルス信号の間隔が短くなって停止に至ったことを条件として機械装置に異常があると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明のローラコンベア装置
、及び機械装置の異常検知方法
によると、モータ内蔵ローラのフレームに対する取り付けに緩みが生じたことを検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下さらに本発明の実施形態のローラコンベア装置1について説明する。
本実施形態のローラコンベア装置1は、分散制御と称される制御方式を採用するものであり、複数の制御ゾーンに区分され、搬送物を上流側のゾーンから下流側のゾーンに向かって搬送することができる。即ち本実施形態のローラコンベア装置1は、分散制御による搬送機能を備えている。
また本実施形態のローラコンベア装置1は、上記した搬送機能に加えてモータ内蔵ローラの取り付け部の緩みやガタの有無を検出する故障診断機能を備えている。
最初に、ローラコンベア装置1の機械的構成と、分散制御による搬送機能について説明する。
【0039】
ローラコンベア装置1は、
図1に示すように、複数のゾーンコンベア2(2a,2b,2c・・・)が搬送方向に直列に配置されたものである。各ゾーンコンベア2(2a,2b,2c・・・)は、主に搬送ローラ5と、在荷センサS(Sa,Sb,Sc・・・)と、ゾーンコントローラ10(10a,10b,10c・・・)とによって構成されており、それぞれのローラコンベア装置1が搬送機能を備えている。なお、各ゾーンコンベア2(2a,2b,2c,2d・・・)の機械的構造やサイズは、いずれも同一であるから、代表として図面中央のゾーンコンベア2bの構造について説明する。
【0040】
ゾーンコンベア2bは、
図2で示されるように、平行に配置された左右の一対のサイドフレーム3,3間に搬送物を搬送する複数の搬送ローラ5が搬送方向に所定間隔で軸支されたものである。
サイドフレーム3,3はいずれも断面形状が「コ」の字状の鋼材であり、具体的には溝型鋼や、軽量C型鋼が利用されている。
サイドフレーム3,3には、六角形の孔16が複数設けられている。
【0041】
搬送ローラ5は、自由に回転する従動ローラ5bと、駆動用モータ12(
図2では図示せず、
図3参照)を内蔵するモータ内蔵ローラ5aとからなる。本実施形態では、モータ内蔵ローラ5aは1本だけであり、他の6本の搬送ローラ5はいずれも従動ローラ5bである。
【0042】
モータ内蔵ローラ5aは、例えば
図3に示す様な内部構造を備えている。即ちモータ内蔵ローラ5aは、ローラ本体20内に、駆動用モータ12と減速機13が内蔵され、駆動用モータ12が回転することによってローラ本体20が回転するものである。
本実施形態で採用するモータ内蔵ローラ5aでは、内蔵する駆動用モータ12としてブラシレスモータが採用されている。
即ち本実施形態で採用する駆動用モータ12は、
図5の様なブラシレスモータであり、永久磁石を有する回転子21と、その周囲を取り巻く3系統の固定子用コイル(U,V,W)を有している。また回転子21の位置を検知する回転位置検知手段として3個のホール素子P,G,Oを有している。
【0043】
モータ内蔵ローラ5aは、ローラ本体20の両端から固定軸54,56が突出している。この内、一方の固定軸56は、中空であり、給電線や信号線等の電線群52が挿通されている。
固定軸56は、断面形状が六角形である。即ち一方の固定軸56は、内部の駆動用モータ12の反力に抗するため、サイドフレーム3に回転不能に固定する必要があるから、断面形状は、円形ではない。
【0044】
本実施形態では、モータ内蔵ローラ5aは、
図6、
図7に示すような取り付け金具55によってサイドフレーム3に固定されている。
取り付け金具55は、
図6の様に、本体板57と、中間板58及び外面板60によって構成されている。
前記した本体板57と、中間板58及び外面板60には、いずれも六角形の孔61,62,63が設けられている。
また本体板57には、2本の雄ねじ64a,64bが立設されている。雄ねじ64a,64bの根元には、隆起部67a,67bがある。中間板58及び外面板60には、2本の雄ねじ64a,64bが挿入通される孔65a,65b、66a,66bが設けられている。
【0045】
本体板57は、図示しないネジによってサイドフレーム3の外側に取り付けられている。
そしてサイドフレーム3に設けられた六角形の孔16と、取り付け金具55の各部材に設けられた六角形の孔61,62,63にモータ内蔵ローラ5aの六角形の固定軸56が挿通され、本体板57から立設された2本の雄ねじ64a,64bにナット68a,68bが係合されて中間板58及び外面板60が本体板57に押し付けられる。
ここで本体板57、中間板58及び外面板60に形成された各六角形の孔61,62,63は、中間板58と外面板60が本体板57に押しつけられた際に、僅かにずれた位置で安定する様に、隆起部67a,67bと孔65a,65b,66a,66bが設計されている。そのため、取り付け金具55の各部材に設けられた六角形の孔61,62,63にモータ内蔵ローラ5aの六角形の固定軸56を挿通し、2本の雄ねじ64a,64bにナット68a,68bを係合して締めつけることにより、モータ内蔵ローラ5aの固定軸56が、取り付け金具55の各部材に設けられた六角形の孔61,62,63に締めつけられる。その結果、モータ内蔵ローラ5aが、サイドフレーム3に回転不能に取り付けられる。
【0046】
また、ゾーンコンベア2b内で隣接する搬送ローラ5同士は伝動ベルト6が巻回されている。そのため、モータ内蔵ローラ5aの回転駆動力を全ての従動ローラ5bに伝動することができる。本実施形態では、中央部にモータ内蔵ローラ5aを配している。
【0047】
また、
図2に示すように、ゾーンコンベア2bには在荷センサSbが設けられている。在荷センサSbは、サイドフレーム3上に設けられている。なお、在荷センサSbの位置は、搬送方向下流側の端部の近傍である。
【0048】
在荷センサSbは、光電センサであって、対向するサイドフレーム3に発光ダイオードや赤外線ダイオード等の発光素子22が設けられている。これにより、搬送物が搬送されてくると、発光素子22からの光が遮られてオン(Hレベル)信号を出力し、被搬送物が存在しない場合にはオフ(Lレベル)信号を出力する。この様に光電センサがオン/オフされ、搬送物が所定位置まで搬送されたことを検知可能となっている。
【0049】
ゾーンコンベア2bの一方のサイドフレーム3には、
図4で示されるように、モータ内蔵ローラ5a内に内蔵された駆動用モータ12(
図3参照)の駆動制御を行うためのゾーンコントローラ10bが取り付けられている。
【0050】
即ちゾーンコントローラ10bは、
図5の様に、モータ駆動回路部23、ホール素子信号入力部24、センサ信号入力部25、信号入出力部26及び制御部27を有している。
【0051】
ここでモータ駆動回路部23は、駆動用モータ12の固定子用コイル(U,V,W)に順次通電するためのスイッチング回路である。
ホール素子信号入力部24は、駆動用モータ12のホール素子P,G,Oからの信号が入力される回路である。
制御部27は、図示しないCPUとメモリを有し、PWM制御と、回転速度算出と、搬送モード制御を行うものである。
信号入出力部26は、隣接するゾーンコントローラ10a、10cと通信を行うための回路である。本実施形態では、信号入出力部26は、最大の間隔に関する情報を外部に発信する発信手段としても機能する。
【0052】
ゾーンコントローラ10bは、前記した様に駆動用モータ12(
図3参照)の駆動制御を行うものであり、具体的には駆動用モータ12を円滑に回転させる機能と、駆動用モータ12の回転速度を一定に維持する機能と、駆動用モータ12の起動・停止させる機能を有している。
即ち駆動用モータ12は、前記した様にブラシレスモータであり、永久磁石を有する回転子21と、その周囲を取り巻く3系統の固定子用コイル(U,V,W)と、回転位置検知手段及としてのホール素子P,G,Oを有している。
そしてゾーンコントローラ10bは、回転子21の位置(回転姿勢)に応じて固定子用コイル(U,V,W)に順次通電して回転磁界を発生させ、回転子21を円滑に回転させる。即ち回転子21の回転位置に応じてホール素子P,G,Oから信号が発信され、この信号に基づいて電流を供給する固定子用コイル(U,V,W)を切り換え、固定子用コイル(U,V,W)に回転磁界を発生させて回転子21を回転させる。この様にゾーンコントローラ10bは、駆動用モータ12を円滑に回転させる機能を備えている。
【0053】
また本実施形態のゾーンコントローラ10bは、制御部27に、各種の搬送モードに応じたプログラムを内蔵しており、搬送モードに応じて駆動用モータ12を起動・停止させる。
例えば、上流側のゾーンに搬送物が存在し、自己のゾーンに搬送物が存在しないという様な条件が揃った場合に、自己の駆動用モータ12を起動する。また例えば、自己のゾーンから搬送物が搬出されたことを条件として自己の駆動用モータ12を停止する。
なお、搬送モードには各種あるが、詳細な説明は省略する。
【0054】
また、本実施形態のローラコンベア装置1では、隣接するゾーンコンベア2(2a,2b,2c,2d・・・)にそれぞれ設けられたゾーンコントローラ10(10a,・・・10c,・・・10n)同士の間が、
図1,4に示すように、信号線7で相互に接続されている。また、ゾーンコントローラ10(10a・・・10n)のうちの少なくとも一つ(本実施形態ではゾーンコンベア2a)と、上位制御装置50とは、信号線8を介して接続されている。
【0055】
そして、
図4の矢印が示すように、本実施形態のゾーンコントローラ10(ゾーンコントローラ10b)は、搬送物の流れ方向の上流側に隣接するゾーンコントローラ10(ゾーンコントローラ10a)の在荷信号、下流側に隣接するゾーンコントローラ10(ゾーンコントローラ10c)の在荷信号および下流側のゾーンの駆動状態信号が、信号入出力部26を介してゾーンコントローラ10bに入力される。
また、ゾーンコントローラ10bから出力される在荷信号および駆動状態信号は、信号入出力部26を介して他のゾーンコントローラ10a,10cに伝送される。
ここで、在荷信号は、各制御ゾーンに設けられた在荷センサSa〜Sc(
図1、
図4参照)の検知信号である。
【0056】
本実施形態のローラコンベア装置1では、各ゾーンコントローラ10は、上流側および下流側の在荷信号と、下流側の駆動状態信号とを参照可能となっている。
また、上位制御装置50からの指令信号は、信号線8を介して所定のゾーンコントローラ10(ゾーンコントローラ10a)に伝送され、さらに、この所定のゾーンコントローラ10(ゾーンコントローラ10a)からローラコンベア装置1を構成する全てのゾーンコントローラ10に伝送される(
図4参照)。
そして、各ゾーンコントローラ10は、隣接するゾーンの在荷センサSのオン・オフ状態や、隣接するゾーンの駆動用モータ12が起動しているか否かの情報が交換される。
そして例えば自己のゾーンに搬送物が存在し、下流側のゾーンに搬送物が存在しないといった所定の条件が揃うと、自己のゾーンの駆動用モータ12を起動し、搬送物を下流側のゾーンに送る。
【0057】
また本実施形態のローラコンベア装置1は、特有の機能として、故障検知機能を備え、故障診断モードでの運転を行うことができる。故障検知機能は、上位制御装置50の指令によって実行される。
また故障検知機能は、各ゾーンコントローラ10内のホール素子信号入力部24と、制御部27、及び上位制御装置50の判定プログラム51によって実現される機能である。
即ち本実施形態では、各ゾーンコントローラ10の制御部27内の図示しないメモリに、前記した搬送動作を司るプログラムの他に、パルス信号の間隔を監視するパルス間隔監視プログラム36と、最大パルス間隔選択プログラム37とが格納されている。
また上位制御装置50には、最大のパルス間隔と、予め設定された閾値とを比較して故障か否かを判定する判定プログラム51が格納されている。
【0058】
以下、故障検知機能について説明する。
パルス信号は、ホール素子信号入力部24から入力されたホール素子P,G,Oの信号に基づいて生成される。
【0059】
本実施形態では、パルス信号の切り替わり間隔を「パルス信号の間隔」としている。また切り替わり間隔は、往復の切り替わり間隔を平等に検知する。従って、以下に言う「パルス信号の間隔」は、「パルス信号の発生間隔」の約1/2であり、検知個数は「パルス信号の発生間隔」の約2倍となる。
即ち「パルス信号の発生間隔」は、回転子21の極によって発生する検知信号の間隔である。
本実施形態で採用する駆動用モータ12は、回転子21が永久磁石であり、N,Sをそれぞれ二極ずつ備えている。そのため回転子21が一回転すると、各ホール素子P,G,Oの近傍をN極とS極が二回ずつ通過する。従って、回転子21が一回転すると、各ホール素子P,G,Oからそれぞれ4回起電力が生じる。即ち合計で12回、起電力が生じる。
【0060】
本実施形態のゾーンコントローラ10では、この起電力をホール素子信号入力部24に入力し、パルス生成回路35でパルス信号に変換される。前記した様に、回転子21が一回転すると、12回、起電力が生じるから、回転子21が一回転すると、パルス信号が12回発生する。
そしてパルス間隔監視プログラム36は、ホール素子信号入力部24から入力されたホール素子P,G,Oの信号に基づいて生成されたパルス信号の切り替わり間隔を監視する。
パルス間隔監視プログラム36は、各ホール素子P,G,Oの位置検出信号に基づくパルス信号の切り替わり間隔を検知するものであり、一定の発生個数に限って動作する。
即ち、上位制御装置50から故障判定を実行する指令を受けて、モータ内蔵ローラ5aを停止させ、その停止過程における各ホール素子P,G,Oの位置検出信号の切り替わり間隔を検知する。具体的には、モータ内蔵ローラ5aを停止させる信号を送信、又は受信してから、第9回パルス間隔までのパルス信号の切り替わり間隔を測定する。
即ち本実施形態では、モータ内蔵ローラに対する通電を停止した後、パルス信号の間隔の発生数が一定数となるまでパルス信号の間隔を監視する。
【0061】
パルス間隔監視プログラム36では、
図8の様に、各ホール素子P,G,Oの信号に由来するパルス信号の切り替わり間隔tを検出する。即ち、3個のホール素子P,G,Oが発する信号を区別することなく、単純に切り替わる間隔だけを検出する。また各パルス信号の立ち上がり、立ち下がりを区別せず、立ち上がりから立ち下がりに至る間隔と、立ち下がりから立ち上がりに至る間隔をそれぞれ一回の「パルス信号の間隔」とする。従って前記した様に、「パルス信号の間隔」の時間は、「パルス信号の発生間隔」の約1/2であり、パルス信号の間隔を検知する回数は「パルス信号の発生間隔」の約2倍となる。
【0062】
図8を例に説明すると、ホール素子Pの立ち上がり時刻T1と、ホール素子Oの立ち下がり時刻T2との間の時間t1を測定する(第1回パルス間隔)。次に、ホール素子Oの立ち下がり時刻T2と、ホール素子Gの立ち上がり時刻T3との間の時間t2(第2回パルス間隔)を測定する。さらにホール素子Gの立ち上がり時刻T3とホール素子Pの立ち下がり時刻T4との間の時間t3(第3回パルス間隔)を測定する。こうして順次、各パルス信号の切り替わり間隔を測定する。
【0063】
最大パルス間隔選択プログラム37は、パルス間隔監視プログラム36によって検出された各パルス信号の切り替わり間隔の中から、最大のものを選択するプログラムてある。
【0064】
上位制御装置50に格納された判定プログラム51は、ゾーンコントローラ10から送信されて来た最大の切り替わり間隔と、予め設定された閾値とを比較して故障か否かを判定するプログラムである。
【0065】
判定プログラム51は、モータ内蔵ローラ5aの回転を停止させる際に、飛び抜けて長い間隔のパルス信号があるか否かを判定するものである。
【0066】
即ち、現に駆動しているモータ内蔵ローラ5aを停止する際には、モータ内蔵ローラ5aが発生するパルス信号の間隔が次第に延び、遂にはパルス間隔が無限大となるはずである。
ところがモータ内蔵ローラ5aの取り付け金具55に緩みがあると、モータ内蔵ローラ5aが発生するモータパルスの間隔が一旦広がる遅延現象が発生する。そして遅延現象に続いて、パルス信号の間隔が短くなり、停止に至るという固有現象が生じる。
そこで、本実施形態では、判定プログラム51では、遅延現象が発生したか否かを判定し、遅延現象が発生した場合には、表示画面(表示手段)に、取り付け金具55に緩みがあることを知らせる表示を行う。
【0067】
以下、遅延現象及び固有現象に付いて説明する。
図9は、取り付け金具55に緩みが無い場合におけるパルス信号の間隔を示すグラフである。
図9は、
図1に示すローラコンベア装置1を使用して実測したものであり、モータ内蔵ローラ5aに伝動ベルト6を介して6本の従動ローラ5bが接続されている。
図9に示す様に、時刻Aまで駆動信号がRUNであり、モータ内蔵ローラ5aは、一定の回転速度で回転している。そのため時刻Aまでの間は、パルス信号の間隔が一定である。
そして時刻Aで、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わり、モータ内蔵ローラ5aに対する給電が停止される。その結果、モータ内蔵ローラ5aは次第に速度を落としてゆき、当然にパルス信号の間隔が延びて行く。ここで、取り付け金具55に緩みが無い場合は、パルス信号の間隔が後になる程長くなる。そして一定数のパルス信号の立ち上がりと立ち下がりが発生すると、その後は、パルス信号の間隔が、やや定常状態となる。そしてモータ内蔵ローラ5aのローラの回転が実際に停止する直前の2回パルス間隔から4回パルス間隔のところで、パルス信号の間隔が延びる。そして遂にはパルスの発生が無くなる。
【0068】
これに対して、取り付け金具55に緩みがある場合には、パルス信号の間隔がばらつき、一時的にパルス信号の間隔が長くなり(遅延現象)その後に再度短くなる(固有現象)。
図10は、取り付け金具55に緩みが有る場合におけるパルス信号の間隔を示すグラフである。
図10についても
図1に示すローラコンベア装置1を使用して実測したものであり、モータ内蔵ローラ5aに伝動ベルト6を介して6本の従動ローラ5bが接続されている。
図10に示す様に、時刻Aまで駆動信号がRUNであり、モータ内蔵ローラ5aは、一定の回転速度で回転している。そのため時刻Aまでの間は、パルス信号の間隔が一定である。
そして時刻Aで、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わり、モータ内蔵ローラ5aに対する給電が停止される。その結果、モータ内蔵ローラ5aは次第に速度を落としてゆき、当然にパルス信号の間隔が延びて行く。取り付け金具55に緩みがあっても、発生するパルスが後になる程、間隔が長くなる傾向があるが、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わった後、第7回パルス間隔nwが第6回パルス間隔mwに比べて異様に長くなり(遅延現象)、続く第8回パルス間隔lwは、ピーク時(nw)に比べて短くなる(固有現象)。
【0069】
本実施形態で採用する最大パルス間隔選択プログラム37は、この様なパルス間隔が一旦長くなる遅延現象が起こるか否かを監視し、取り付け金具55の緩みを検出している。
【0070】
図9、
図10は、
図1に示すローラコンベア装置1の様な、一本のモータ内蔵ローラ5aによって複数の従動ローラ5bを回転させる構造のものであるが、従動ローラ5bを駆動させない構造のローラコンベア装置であっても、同様の現象が起きる。
参考のために、従動ローラ5bを有しない場合の挙動について付言する。
【0071】
図11は、単独のモータ内蔵ローラ5aを図示しないフレームに固定し、モータ内蔵ローラ5aを停止する際のパルスの間隔を測定したグラフである。
図11に示す様に、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わると、モータ内蔵ローラ5aは次第に速度を落としてゆき、当然にパルス信号の間隔が延びて行く。ここで、取り付け金具55に緩みが無い場合は、発生するパルスが後になる程、間隔が長くなる。
そして遂にはパルスの発生が無くなる。
【0072】
これに対して、取り付け金具55に緩みがある場合には、先の実験と同様にパルス信号の間隔がばらつき、一時的にパルス信号の間隔が長くなった後に再度短くなる。
図12に示す様に、時刻Aまで駆動信号がRUNであり、モータ内蔵ローラ5aは、一定の回転速度で回転している。そのため時刻Aまでの間は、パルス信号の間隔が一定である。
そして時刻Aで、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わり、モータ内蔵ローラ5aに対する給電が停止される。その結果、モータ内蔵ローラ5aは次第に速度を落としてゆき、当然にパルス信号の間隔が延びて行く。取り付け金具55に緩みがあっても、発生するパルスが後になる程、間隔が長くなる傾向があるが、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わった後、第7回パルス間隔nwが直前のパルス間隔mwに比べて異様に長くなり、第8回パルス間隔Lは短くなる。
【0073】
本実施形態のパルス間隔監視プログラム36は、
図1に示すローラコンベア装置1の様な、一本のモータ内蔵ローラ5aによって複数の従動ローラ5bを回転させる構造のものを対象としている。そのためパルス信号の間隔は、
図9、
図10の様になる。
本実施形態のパルス間隔監視プログラム36は、モータ内蔵ローラ5aが停止する直前のパルス信号の間隔が延びる期間を除いてパルス信号の間隔を監視する。即ち、モータ内蔵ローラ5aのローラの回転が実際に停止する直前のパルス信号は、最も長いものとなるがこれは無視する。またその近傍の回のパルス間隔についても除外し、それ以前に発生したパルス間隔だけを監視する。
具体的には、最終に検知したパルス間隔Zを含み、停止する直前の第2回のパルス間隔(
図10 ZとY回)から直前第4回のパルス間隔(
図10 Z,Y,X,W回)程度の数回のパルス間隔を無視し、これ以前に発生したパルス信号の間隔(
図10最初からX回又はV回まで)を監視する。本実施形態では、最終に検知したパルス間隔Zまでに発生するパルス間隔数(発生数)よりも、3回以上少ない回数に至るまでのパルス信号の切り替わり間隔を監視する。
【0074】
本発明者らの実験によると、モータ内蔵ローラ5aが停止するまでの間に30回程度(
図10では29回)のパルス信号間隔が検知されるが、遅延現象は、前記した通り、駆動信号がRUNからSTOPに切り替わった後、第7回パルス間隔の際に発生するから、余裕を見て第9回パルス間隔までを監視すれば実用上問題は無い。
即ち、モータ内蔵ローラ5aに対する給電が停止された後、約15パルスのパルス信号が発生し、パルス信号間隔を約30回(正確には29回)検出した後にモータ内蔵ローラ5aが停止するが、第9回パルス間隔までの間を監視すればその後の約21回(正確には20回)のパルス間隔を監視する必要はない。
【0075】
これをモータの回転角度との関係で説明すると、本実施形態で採用するモータ内蔵ローラ5aは、モータが一回転するごとに12回、パルスを発生させ、約24回に渡ってパルス信号の間隔が検知されるから、モータが3/8回転程度、回転する間のパルス間隔を監視すれば足りる。具体的には、0度から140度程度の間に発生するパルス間隔を確認すれば足りる。
前記した様に本実施形態では、約15パルスのパルス信号を発生させて、約30回に渡ってパルス信号の間隔を検知した後にモータ内蔵ローラ5aが停止するが、第9回パルス間隔までの間を監視すれば後の約21パルス間隔を監視する必要はない。
即ち、モータ内蔵ローラ5aに対する給電が停止された後、停止するまでに発生するパルス数Nに対して、Nマイナス3/2パルスまでの間、パルス信号の間隔を監視することが推奨され、さらに望ましくは、N/2パルスまでの間、パルス信号の間隔を監視することが望ましく、さらに給電が停止された後5パルスまでの間、パルス信号の間隔を監視することが望ましい。最も推奨される測定間隔は、モータが3/8回転だけ回転する間のパルス信号の間隔を監視することである。
なお「Nマイナス3/2パルス」まで監視すると、最終に検知したパルス間隔Zまでに発生するパルス間隔数(発生数)よりも、3回少ない回数に至るまでのパルス信号の切り替わり間隔を監視することとなる。
【0076】
また監視を開始する時期は、モータ内蔵ローラ5aへの通電を停止した直後であってもよいが、最初のパルス信号を無視してもよい。さらに第3回パルス間隔や第4回パルス間隔から監視を開始してもよい。
【0077】
また遅延現象であるか否かの判断は、ある程度の閾値TSを定め、この閾値を越える変化があったか否かで判定する。
閾値TSは、例えば5msである。閾値は、回転子21の極数や、ホール素子等の検知手段の数によって変わる。またモータ内蔵ローラ5aを停止した際における回転速度によっても適正値が変わる。
閾値TSは、モータ内蔵ローラ5aの取り付けにガタ付き等が無い条件でモータ内蔵ローラ5aを回転させ、モータ内蔵ローラ5aを停止する直前(給電を停止する直前)のパルス信号の間隔から定めることが望ましい。閾値TSは、モータ内蔵ローラ5aを停止する直前のパルス信号の間隔を基準間隔tsとしたとき、基準間隔tsの3倍から10倍程度に設定することが望ましく、より望ましい閾値TSは基準間隔tsの4倍から8倍程度である。
本実施形態では、閾値TSは基準間隔tsの5倍程度に設定されている。
またパルス間隔の変化が、20倍を越える様な場合は、検査エラーとすることが望ましい。
【0078】
また遅延現象であるか否かは、任意のパルス信号の間隔nwと、その直前のパルス信号の間隔mwを比較し、両者の差が直前のパルス信号の間隔mw又は特定のパルス信号の間隔nwを基準として所定の割合以上であるか否かによって判定してもよい。例えば両者の差が直前のパルス信号の間隔mwの30パーセント以上、又は60パーセント以上という閾値を設定してもよい。なおこの閾値は、30パーセント以上であることが望ましい。
ただし、両者の差が直前のパルス信号の間隔mwの10倍といった極端に長い間隔となった場合には、除外し、検査エラーとすることが望ましい。
検査エラーして除外する範囲は、5倍から10倍程度であることが望ましい。
【0079】
前記した様に、故障検知機能は、上位制御装置50の指令によって実行される。即ち、始業前や、昼休みといった時間帯に、上位制御装置50から各ゾーンコントローラ10に故障検知動作を実行させる信号が発信される。この信号を受けた各ゾーンコントローラ10は、直ちに管轄するモータ内蔵ローラ5aを起動する。即ち各ゾーンコントローラ10からモータ内蔵ローラ5aにRUN信号が送られる。
モータ内蔵ローラ5aの速度を変化させることができる場合は、例えば60m/minといった一定の周速度となる様に制御する。そして一定時間後(例えば2秒から5秒後)に、モータ内蔵ローラ5aを停止させる。即ち各ゾーンコントローラ10からモータ内蔵ローラ5aにSTOP信号が送られる。
【0080】
そしてその後のパルスの間隔をパルス間隔監視プログラム36で検出し、最大パルス間隔選択プログラム37でその間の最大パルス間隔を検出し、上位制御装置50で、閾値TSと比較して遅延現象が起こったか否かを判定する。
【0081】
以下、
図14を参照しつつ、故障診断モードにおける各部の動作について説明する。
図14に示すフローチャートでは、モータ内蔵ローラ5aを停止して、第1回パルス間隔から第9回パルス間隔までの各パルス信号の間隔を測定する一連の動作を1クールとし、この動作を5クール実施する。
故障診断モードは、上位制御装置50の図示しない入力装置を操作することによって開始される。即ち故障診断モードを実行する旨の信号が、上位制御装置50から各ゾーンコントローラ10に発信される。
この信号を受信した各ゾーンコントローラ10は、自己のメモリー内の繰り返し回数カウンタnを0に復帰する(ステップ1)。ここで繰り返し回数カウンタnは、何クール目の動作であるかを確認するためのカウンタである。
【0082】
そしてステップ3で繰り返し回数カウンタnに1が加算される。さらにゾーンコントローラ10が内蔵するPmメモリの値、Pmaxメモリの値がクリアされて0になる。
ここでPmメモリは、パルス信号の間隔を一時的に記憶しておくメモリである。またPmaxメモリは、これまでの最大のパルス信号の間隔を一時的に記憶しておくメモリである。
さらにパルス順確認カウンタmに1が記憶される。ここでパルス順確認カウンタmは、測定しているパルス信号が、モータ内蔵ローラ5aを停止した後、何番目に発生したパルス信号であるかを確認するためのメモリである。
【0083】
またステップ3で、モータ内蔵ローラ5aが起動される。即ち各ゾーンコントローラ10は、モータ駆動回路部23を駆動して駆動用モータ12の固定子用コイル(U,V,W)に順次通電する。
そしてモータ内蔵ローラ5aの回転速度をフィードバックしてモータ内蔵ローラ5aの周速が、60m/minとなる様に制御する。
モータ内蔵ローラ5aが起動して、一定時間(例えば3秒)が経過し、モータ内蔵ローラ5aの回転速度が安定すると、モータ駆動回路部23から固定子用コイル(U,V,W)への通電を停止する(以上、ステップ3)。
【0084】
そしてステップ4で、停止直後から発生するパルス信号の間隔を測定する。具体的には、各ゾーンコントローラ10に格納されているパルス間隔監視プログラム36によって、固定子用コイルへの通電を停止した後に発生するパルス信号の間隔をステップ4で測定する。なお停止後に発生する第1回パルス間隔は、厳密には「パルス信号の間隔」とは言えない。即ち、第1回パルス間隔の直前のパルス信号の発生時期や消滅時期が不明であるから、第1回パルス間隔は、正確に「最初のパルス信号の間隔」を示すものでない。
ステップ4で測定されたパルス信号の間隔は、一時的にゾーンコントローラ10のPmメモリに記憶される。
【0085】
そして続くステップ5で、Pmメモリに一時的に記憶されたパルス信号の間隔と、Pmaxメモリに記憶されたこれまでの最大のパルス信号を比較する。
各ゾーンコントローラ10に格納されている最大パルス間隔選択プログラム37が、この機能を担う。
今回は、第1回パルス間隔であり、比較対象が無いから、当然にPmメモリの記憶時間は、Pmaxメモリに記憶された記憶時間よりも長い。そのためステップ5からステップ6に移行し、Pmaxメモリのデータが、Pmメモリの記憶時間に書き換えられる。
【0086】
そしてステップ7に移行してパルス順確認カウンタmに1が加算される。
【0087】
その後ステップ8に移行し、パルス順確認カウンタmの数が確認され、これが9以下であれば、ステップ4に戻り、第2回パルス間隔の間隔を測定し、ゾーンコントローラ10のPmメモリが書き換えられる。
そして続くステップ5で、Pmメモリに一時的に記憶されたパルス信号の間隔と、Pmaxメモリに記憶されたこれまでの最大のパルス信号を比較する。
Pmメモリの記憶時間が、Pmaxメモリに記憶された記憶時間よりも長い場合は、ステップ6に移行し、Pmaxメモリのデータが、Pmメモリの記憶時間に書き換えられた後にステップ7に進む。
Pmメモリの記憶時間が、Pmaxメモリに記憶された記憶時間よりも短い場合は、ステップ6を飛ばしてステップ7に進む。
【0088】
そしてステップ7に移行してパルス順確認カウンタmに1が加算される。
その後ステップ8に移行し、パルス順確認カウンタmが確認され、これが9以下であれば、ステップ4に戻り、第2回パルスの間隔を測定し、ゾーンコントローラ10のPmメモリが書き換えられる。
【0089】
この動作を繰り返し、第9回パルス間隔を測定し終わり、ステップ8に移行すると、ステップ8がYES判定となり、ステップ9に進む。ステップ9では、Pmaxメモリに記憶された、今回のクールで最大のパルス信号の間隔が、上位制御装置50に送信され、上位制御装置50のメモリに記憶される。
【0090】
そしてステップ10に移行し、繰り返し回数カウンタnの数が確認される。繰り返し回数カウンタnの数が5未満であるならばステップ2に戻って、再度前記したクールを繰り返す。
そして5クールに渡る測定が終了するとステップ11に移行する。本実施形態では、ステップ11は、上位制御装置50で実行される。即ちステップ11は、上位制御装置50の判定プログラム51によって実現される動作である。
ステップ11では、5クールに渡って実施された測定結果の中に、閾値TSを越えるパルス信号の間隔のデータがあるか否かを判定する。そして閾値TSを越えるパルス信号の間隔が認められた場合には、上位制御装置50の表示装置に、遅延現象が発生したモータ内蔵ローラ5aがあった事実が表示される。もちろん、当該モータ内蔵ローラ5aが所属するゾーンが特定された状態で表示が行われる。
実際には、「モータ内蔵ローラ5aの取り付けに緩みがある」とか、「取り付け金具55か磨耗している」という様に、不具合箇所を具体的に示した表示がなされる。あるいは、故障箇所を示すコードが上位制御装置50の表示装置に表示される。
【0091】
上位制御装置50の表示は、単に遅延現象が発生したか否かを表示するものであってもよいが、遅延現象の程度を合わせて表示することが望ましい。
例えば、パルスの切り替わり間隔が延びた程度が軽微であって、いま、直ちに処置をする必要が無い場合と、パルスの切り替わり間隔が延びた程度が中程度であって、次回の定期点検の際に、部品交換をおこなうことが望ましいものと、パルスの切り替わり間隔が延びた程度が甚だしく、直ちに部品交換をおこなう必要があるものとに分けて表示する。
より具体的には「正常」「注意」「警告」「危険」という様な不良の程度を段階的に表示することが望ましい。
【0092】
以上説明した実施形態では、遅延現象だけを検出し、遅延現象の程度によって正常であるか否かを判定したが、固有現象の有無を判定基準に加えてもよい。
即ちパルス信号の間隔を監視し、パルス信号の間隔が一旦広がり、その後にパルス信号の間隔が短くなって停止に至る固有現象が起こったか否かを判定するプログラムを加えてもよい。
【0093】
固有現象であるか否かの判断は、ある程度の閾値TKをさだめ、この閾値TKを越える変化があったか否かで判定することが望ましい。
例えば、一回前のパルス間隔と、今回のパルス信号の間隔と、その後のパルス信号の間隔の関係を見たとき、今回のパルスの切り替わり間隔は、一回前の切り替わり間隔及び後の切り替わり間隔に比べて50パーセント以上長いことを閾値TKとすることが望ましい。また100パーセント以上長いことを閾値TKとすることがさらに望ましい。
ただし、例えば10倍といった極端に長い間隔となった場合には、除外し、検査エラーとすることが望ましい。
検査エラーして除外する範囲は、5倍から10倍程度であることが望ましい。
また固有現象であるか否かは、例えばピーク時のパルス信号の間隔から、一定割合、例えば30パーセント以上発生間隔が短くなったことを判断基準してもよい。
【0094】
本発明者らの実験によると、遅延現象や固有現象が発生するパルスの発生順位は略一定である。即ち本発明者らの実験によると、停止信号が発信されてから、第7回パルス間隔、あるいは第8回パルス間隔に固有現象が発生する。そのため、その前後のパルス間隔だけを監視して、遅延現象の有無や、固有現象の有無を判定しても、実用上問題なく故障検知を行うことができる。
本実施形態を例に説明すると、第6回パルス間隔から第9回パルス間隔の間だけを監視すれば足りる。これをモータ内蔵ローラの回転との関係で説明すると、本実施形態で採用するモータ内蔵ローラ5aは、モータが一回転するごとに12回、パルスを発生させ、パルス信号の切り替わり間隔が24回検知されるから、モータが1/3回転する前後のパルス間隔を監視すれば足りる。具体的には、90度から135度程度回転する間に発生するパルス間隔を確認すれば足りる。
【0095】
次に、固有現象が起こる理由についての考察を説明する。
モータ内蔵ローラ5aが停止してる場合、取り付け金具55の孔61と、固定軸56との関係は
図13(a)の通りであり、固定軸56の六角形の回転角度姿勢と、孔61の角度姿勢は同一である。
これに対して、モータ内蔵ローラ5aを例えば時計回りに回転させると、固定軸56は、
図13(b)(c)の様にその反力で反時計回りに回転する。その結果、固定軸56の六角形の回転角度姿勢が、反時計方向に数度傾く。
【0096】
続いて、モータ内蔵ローラ5aにSTOP信号を送ると、ローラ本体が惰性で時計方向に回転し、固定軸56はこれに連れて時計方向に回転する。その結果、固定軸56の六角形の回転角度姿勢が、時計方向に数度傾く。
ここで、固定軸56の六角形の回転角度姿勢が、反時計方向に数度傾いている状態から、時計方向に数度傾く状態に移行する間、ローラ本体と固定軸56とが一瞬ではあるが同時に回転することとなり、この際のパルスの発生が遅れる。
そして実験によると、パルスの発生が遅れる現象は、モータ内蔵ローラ5aを停止させる信号を発してから、完全にモータ内蔵ローラ5aが停止するまでの間に起こる。
【0097】
以上説明した実施形態では、
図6、
図7に示した取り付け金具55を使用したが、取り付け金具55の構造は、任意であり、例えば
図15から
図17に示す様な取り付け金具80を利用することもできる。取り付け金具80は、二つの揺動片81,82をカム83で揺動させ、揺動片81,82の孔85,86を回動させて固定軸56を締めつける。
以上説明した実施形態では、一つの制御ゾーンにそれぞれゾーンコントローラ10が設けられた構成を例示したが、一つのゾーンコントローラで複数の制御ゾーンを制御する形式のローラコンベア装置にも本発明を適用することができる。
【0098】
また上記した実施形態は、ローラコンベア装置1のゾーンコントローラ10に本発明を適用したものであるが、コントローラ自体は、他の装置にも使用することができる。
即ちベルトコンベアの駆動プーリとしてモータ内蔵ローラが使用される場合がある。また巻き上げ機や、
図18に示す様なスクロール装置70にモータ内蔵ローラ71を採用する場合がある。
そしてこれらの装置に使用されるモータ内蔵ローラを制御するコントローラとして本発明を適用することができる。なお巻き上げ機やスクロール装置70に使用されるモータ内蔵ローラ71は、隣接する装置と連携動作させる必要性が低い。そのため巻き上げ機やスクロール装置70に本発明のコントローラを採用する場合には、隣接するコントローラとの間で、在荷信号や駆動状態信号の授受を行う機能は不要である。
【0099】
以上説明した実施形態では、「パルスの往復切り替わり間隔」を「パルス信号の間隔」としたが、パルス信号の発生間隔や、消滅間隔を「パルス信号の間隔」としてもよい。
例えば、
図8に従うと、ホール素子Pの立ち上がり時刻T1と、ホール素子Gの立ち上がり時刻T3との間の時間t2を測定し、この間の時間を「パルス信号の間隔」としてもよい。