(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワッシャ側当接部は、前記ねじ体の一方の回転方向に対向する第一ワッシャ側当接領域と、前記ねじ体の他方の回転方向に対向する第二ワッシャ側当接領域と、を備えることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のねじ体の逆回転防止構造。
前記部材側当接部は、前記ねじ体の他方の回転方向に対向して前記ワッシャ側当接部と当接可能な第一部材側当接領域と、前記ねじ体の一方の回転方向に対向して前記ワッシャ側当接部と当接可能な第二部材側当接領域と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載のねじ体の逆回転防止構造。
前記第一係合機構は、前記ねじ体側座部にねじ体側凹凸が形成され、且つ、前記第一受部に前記ねじ体側凹凸と係合する第一受部側凹凸が形成され、前記係合状態を得ることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載のねじ体の逆回転防止構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のワッシャは、ねじ体との間の緩み防止構造に関して、摩擦や食い込みを期待する程度であるため、よく知られている通りその効果は不十分なものであった。従って、振動等が激しい環境では、ワッシャを用いたとしても、ねじ体が徐々に緩んでしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、ワッシャを有効活用することによって、簡易な構造によって、高度にねじ体の逆回転防止、即ち、緩み止めを行う構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、ねじ山を有するねじ体と、ワッシャとを備え、前記ねじ体は、前記ワッシャと対向するねじ体側座部を有して成り、前記ワッシャは、前記ねじ体側座部と対向する第一受部、及び、部材側座部を有する被締結部材と対向する第二受部を有して成り、前記ねじ体側座部と前記第一受部の間には、前記ねじ体側座部に対して特定方向の回転力が作用しても互いに係合する状態が保持される第一係合機構が構成され、前記ワッシャは、前記第二受部の周囲において、前記ねじ体の軸からの距離が周方向に沿って異なるワッシャ側当接部を有し、前記ワッシャ側当接部が前記被締結体の一部に当接して係合することで、前記ワッシャに対して前記特定方向の回転力が作用しても互いの当接する状態が保持される第二係合機構が構成され、前記第一係合機構により、前記ねじ体と前記ワッシャとの間における前記特定方向の相対回転が防止され、且つ、前記第二係合機構により、前記ワッシャと前記被締結部材との間における前記特定方向の相対回転が防止されることによって、該ねじ体と該被締結部材との間における該特定方向の相対回転が防止されることを特徴とする、ねじ体の逆回転防止構造である。
【0010】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記ワッシャ側当接部は、前記ねじ体の前記周方向の一部の範囲に形成されることを特徴とする。
【0011】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記ワッシャ側当接部は、前記ねじ体の一方の回転方向に対向する第一ワッシャ側当接領域と、前記ねじ体の他方の回転方向に対向する第二ワッシャ側当接領域と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記被締結部材は、前記部材側座部の周囲において、前記ねじ体の軸からの距離が周方向に沿って異なり、前記ワッシャ側当接部と当接可能な部材側当接部を有し、前記ワッシャ側当接部と前記部材側当接部により、前記ワッシャに対して前記特定方向の回転力が作用しても互いの当接する状態が保持される前記第二係合機構が構成され、該第二係合機構によって、前記被締結部材の前記ねじ体の前記特定方向への回転を防止することを特徴とする。
【0013】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記部材側当接部は、前記ねじ体の他方の回転方向に対向して前記ワッシャ側当接部と当接可能な第一部材側当接領域と、前記ねじ体の一方の回転方向に対向して前記ワッシャ側当接部と当接可能な第二部材側当接領域と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記ワッシャ側当接部は、前記ねじ体の軸方向に沿って、前記被締結部材を基準として前記ワッシャ側に延在することを特徴とする。
【0015】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記ワッシャ側当接部は、前記ねじ体の軸方向に沿って、前記ワッシャの前記第二受部を基準として前記被締結部材側に延在することを特徴とする。
【0016】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記部材側当接部は、前記ねじ体と軸を異にする円柱又は円筒の外周壁によって構成されることを特徴とする。
【0017】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第一係合機構は、前記ねじ体側座部にねじ体側凹凸が形成され、且つ、前記第一受部に前記ねじ体側凹凸と係合する第一受部側凹凸が形成され、前記係合状態を得ることを特徴とする。
【0018】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第一受部側凹凸は、周方向に設けられる鋸刃形状であることを特徴とする。
【0019】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記ねじ体側座部には、半径方向に傾斜するねじ体側テーパ面が形成されることを特徴とする。
【0020】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第一受部には、半径方向に傾斜するワッシャ側テーパ面が形成されることを特徴とする。
【0021】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第一係合機構は、前記ねじ体側座部と前記第一受部の距離が縮む程、前記緩み方向の係合強度が高まるように構成されることを特徴とする。
【0022】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第一係合機構は、前記ねじ体側座部と前記第一受部の間で、前記ねじ体側座部の締め方向の相対回転を許容することを特徴とする。
【0023】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記第二受部の外壁が、前記ねじ体の軸に対して偏心した円形状であることを特徴とする。
【0024】
上記ねじ体の逆回転防止構造に関連して、前記部材側当接部として、前記部材側座部の周囲に前記ねじ体の軸方向に段設された部材側段部を有し、前記ワッシャ側当接部として、前記第二受部の周囲に前記部材側段部と係合するワッシャ側段部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡単な構造でありながらも、ねじ体の逆回転防止、例えば、ねじ体を緩ませる方向の回転を防止することでねじ体の緩み止めを確実に行う事が出来るようになる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1には、第一実施形態に係るねじ体の逆回転防止構造が示されている。
図3の通り、ねじ体の逆回転防止構造では、雄ねじ体10と、環状のワッシャ50と、被締結部材80と、基台90を備えて構成される。基台90には、雄ねじ体10と螺合するための雌ねじ穴92が形成されており、基台90と雄ねじ体10で挟まれることで、被締結部材80が固定される。
【0029】
雄ねじ体10は、所謂ボルトであり、頭部20と軸部30を有する。頭部20の下部乃至付け根に相当する部位には、ねじ体側座部22が形成される。軸部30には、円筒部30aとねじ部30bとが形成される。勿論、円筒部30aは必須ではない。
【0030】
ワッシャ50の一方側(
図1(A)の上側)には、第一受部60が形成される。この第一受部60は、ねじ体側座部22と対向しており、両者の間には、第一係合機構Aが構成される。この第一係合機構Aは、少なくともねじ体側座部22が、締結状態の雄ねじ体10を緩める方向に回転しようとすると、第一受部60とねじ体側座部22が互いに係合して、当該回転方向に対する第一受部60とねじ体側座部22との相対回転を防止する。
【0031】
ワッシャ50の他方側(
図1(A)の下側)には、第二受部70が形成される。この第一受部70は、被締結部材80と対向する。
【0032】
被締結部材80には、ワッシャ50の第二受部70に対向する部材側座部82が形成される。第二受部70と部材側座部82は、共に環状の平面領域となっており、互いに当接して、雄ねじ体10の締結力(軸力)を被締結部材80に伝達する役割を担う。即ち、雄ねじ体10の軸力の殆どは、ワッシャ50を介して被締結部材80に伝達される。
【0033】
更に、被締結部材80の部材側座部82と、ワッシャ50の第二受部70の周囲には、ワッシャ50に対して特定方向の回転力が作用しても互いの当接する状態が保持されて、相対回転が制約される第二係合機構Bが構成される。
【0034】
図1(B)に示されるように、この第二係合機構Bは、ワッシャ側当接部110及び部材側当接部120を有する。ワッシャ50の外壁は、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状となっており、残部を弦のように直線状に切り落とした形状とすることで、この弦をワッシャ側当接部110にしている。即ち、ワッシャ側当接部110のみを考えると、第二受部70の周囲において、半径方向に対して直角で、且つ半径方向外側に向いた平面によって構成されている。
【0035】
一方、部材側当接部120は、部材側座部82の周囲において、半径方向に対して直角で、且つ半径方向内側に向いた平面によって構成されている。従って、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120は対向しており、互いに当接する。
【0036】
より詳細にワッシャ側当接部110は、雄ねじ体10の一方の回転方向Xに対向する第一ワッシャ側当接領域110Xと、雄ねじ体10の他方の回転方向Yに対向する第二ワッシャ側当接領域110Yとを備える。部材側当接部120は、雄ねじ体10の他方の回転方向Yに対向して、第一ワッシャ側当接領域110Xと当接可能な第一部材側当接領域120Yと、雄ねじ体10の一方の回転方向Xに対向して、第二ワッシャ側当接領域110Yと当接可能な第二部材側当接領域120Xとを備える。
【0037】
例えば、雄ねじ体10が右ねじの場合に、雄ねじ体10を締める為にY方向に回転させると、それに連れてワッシャ50が部材側座部82に対してY方向に相対回転しようとするが、その結果、第一ワッシャ側当接領域110Xと第一部材側当接領域120Yの当接状態が保持されて、その相対回転が抑制される。同様に、雄ねじ体10がX方向に緩もうとすると、それに連れてワッシャ50が部材側座部82に対してX方向に相対回転しようとするが、その結果、第二ワッシャ側当接領域110Yと第二部材側当接領域120Xの当接状態が保持されて、その相対回転が抑制される。
【0038】
ワッシャ側当接部110及び部材側当接部120は、雄ねじ体10の周方向の一部の角度範囲Qに配置される。全周に形成しようとすると、ワッシャ側当接部110や部材側当接部120の構造が複雑化して製造コストが増大し、更には、雄ねじ体10の締結動作に干渉しやすくなる。当接部を構成する角度範囲としては180度未満が好ましく、より望ましくは120度未満とする。本実施形態では、約70度の角度範囲内でワッシャ側当接部110及び部材側当接部120が配置されている。結果、残りの290度の範囲は、雄ねじ体10の周囲を開放できる。
【0039】
更に本実施形態では、ワッシャ側当接部110及び部材側当接部120は、雄ねじ体10の軸方向に沿って、被締結部材80の部材側座部82を基準として、ワッシャ50側に延在している。結果、ワッシャ50は、その外周面をワッシャ側当接部110として有効活用できる。
【0040】
なお、ここでは雄ねじ体10が双方向X、Yに回転する際に、ワッシャ50の回転も抑制される構造を例示しているが、本発明はこれに限定されない。少なくともワッシャ50が、雄ねじ体10と共に緩む方向Xに回転しようとすると、第二ワッシャ側当接領域110Yと第二部材側当接領域120Xの当接状態が保持されて、当該回転方向Xに対する第二受部70と部材側座部82との相対回転を防止すればよい。
【0041】
以上の通り、第一係合機構Aと第二係合機構Bの作用により、雄ねじ体10が緩み方向Xに回転しようとすると、ワッシャ50の介在によって、雄ねじ体10と被締結部材80の相対回転が規制される。結果、雄ねじ体10が緩むことが防止される。また、雄ねじ体10が締まり方向Yに回転する場合にも、第二係合機構Bによってワッシャ50のつれ回りが抑制され、第一係合機構Aの係合動作を適切に発揮させることができる。
【0042】
図2に示すように、第一係合機構Aとして、雄ねじ体10のねじ体側座部22には、ねじ体側凹凸24が形成される。ねじ体側凹凸24は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状と成っている。ねじ体側凹凸24の各々が延びる方向、即ち、稜線が延びる方向は、雄ねじ体10の半径方向となっている。結果、ねじ体側凹凸24は、軸心から放射状に延びる。
【0043】
更に、このねじ体側座部22は、半径方向に傾斜するねじ体側テーパ面26が形成される。このねじ体側テーパ面26は、中心側がねじ先に近づくように傾斜しているので、結果として、ねじ先側に凸の円錐形状となる。更に好ましくは、このねじ体側テーパ面26に、既述のねじ体側凹凸24が形成される。
【0044】
図3に示されるように、第一係合機構Aとして、ワッシャ50の第一受部60には、ねじ体側凹凸24と係合する第一受部側凹凸64が形成される。第一受部側凹凸64は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状となっている。第一受部側凹凸64の各々が延びる方向、即ち稜線が延びる方向は、雄ねじ体10の半径方向に沿っている。結果、第一受部側凹凸64は、ワッシャ50の貫通穴52の中心から放射状に延びる。
【0045】
更に、好ましくは、この第一受部60は、半径方向に傾斜するワッシャ側テーパ面66が形成される。このワッシャ側テーパ面66は、中心側がねじ先に近づくように傾斜してすり鉢状を成しているので、結果として、ねじ先側に凹の円錐形状となる。このワッシャ側テーパ面66に、既述の第一受部側凹凸64が形成される。
【0046】
結果、雄ねじ体10を締め付ける際に、第一係合機構Aでは、ワッシャ50のワッシャ側テーパ面66の凹内に、ねじ体側座部22のねじ体側テーパ面26が進入し、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64が係合する。両者の鋸歯形状は、
図4(A)に示されるように、雄ねじ体20が、締結方向Yに回転しようとすると、互いの傾斜面24Y、64Yが当接して、両者の距離を軸方向に狭めながら、相対スライドを許容する。一方、雄ねじ体20が、緩み方向Xに回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)24X、64Xが当接して、両者の相対移動を防止する。とりわけ第一係合機構Aは、雄ねじ体10を締め付けることによって、ねじ体側座部22と第一受部60の距離が縮む程、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64の噛み合いが強くなり、緩み方向X側の係合強度が高められる。ここで、ねじ体側テーパ面26の傾斜角度と、ワッシャ側テーパ面66の傾斜角度とを互いに異ならせること、特にワッシャ側テーパ面66の軸心からの傾斜角度をねじ体側テーパ面26の軸心からの傾斜角度よりも狭めに設定することで、それぞれのテーパ面に形成される鋸歯のピッチに因らず、ガタ付き無く締め付けることも可能となる。
【0047】
図3に戻って、ワッシャ50の第二受部70の周囲の外壁72は、ワッシャ側当接部110に相当する部分において平面形状となっており、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。具体的に第一ワッシャ側当接領域110Xは、雄ねじ体10の一方の回転方向Xに沿って距離XA、XB、XCが大きくなる。第二ワッシャ側当接領域110Yは、雄ねじ体10の一方の回転方向Yに沿って距離YA、YB、YCが大きくなる。なお、ワッシャ側当接部110を除いた部分は、ねじの軸心からの距離が一定となる正円形状となっている。
【0048】
図1(B)に示されるように、被締結部材80の部材側座部82の周囲には、雄ねじ10の頭部側に突出する段差が形成される。この段差におけるワッシャ50側に対向する平面形状の側壁が、部材側当接部120に相当する。この部材側当接部120も、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。具体的に第一部材側当接領域120Yは、雄ねじ体10の一方の回転方向Xに沿って距離X1、X2、X3が大きくなる。第二部材側当接領域120Xは、雄ねじ体10の一方の回転方向Yに沿って距離Y1、Y2、Y3が大きくなる。なお、この変動量は、多少の余裕隙間を無視すれば、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120で同じに設定される。或いは、この余裕隙間が、雄ねじ10によるワッシャ50の締め込みによる軸方向の圧縮によってもたらされる軸直角方向への変形によって、埋まるようにワッシャ50の弾性や形状を設定しても好い。
【0049】
従って、ワッシャ50の第二受部70と、被締結部材80の部材側座部82を接触させると、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120が当接する結果となり、ねじの軸心を合わせた状態のままでは、両者の周方向の相対回転が制約される。即ち、このワッシャ側当接部110と部材側当接部120が第二係合機構Bとして作用する。
【0050】
以上、第一実施形態のねじ体の逆回転防止構造によれば、ワッシャ50を介在させることによって、ねじ体側座部22と第一受部60の間に第一係合機構Aを構成し、部材側座部82と第二受部70の周囲に第二係合機構Bが配置され、雄ねじ体10が緩もうとすると、第一係合機構A及び第二係合機構Bの双方の規制作用によって、雄ねじ体10が被締結部材80と周方向に係合した状態となり、逆回転すること、即ち緩むことが防止される。従って、振動等が生じても、全く緩まない締結状態を得ることが出来る。
【0051】
更に本実施形態では、第一係合機構Aとして、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64が、周方向に複数連続する鋸刃形状と成っており、所謂ラチェット機構又はワンウエイクラッチ機構として作用する。結果、締結動作時は、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64の相対移動を許容して、円滑な相対回転を実現する一方、緩み動作時は、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64の相対移動を完全に規制する。結果、締結時の作業性と、その後の緩み止めを合理的に両立出来る。
【0052】
また本第一実施形態では、第一係合機構Aとして、ねじ体側座部22と第一受部60には、ねじ体側テーパ面26、ワッシャ側テーパ面66が形成されるので、両者の当接面積を大きくすることが出来る。また、雄ねじ体10の軸線方向の締結力が、テーパ面によって半径方向にも作用する。互いのテーパ面を半径方向に押し付けることで、自励的にセンタリング出来る。結果、雄ねじ体10とワッシャ50の同芯度が高められ、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64の係合精度を高めることが出来る。なお、凸側のねじ体側テーパ面26の傾斜を微小に大きくし、凹側のワッシャ側テーパ面66の傾斜角を微小に小さくして、角度に微小差を設けておくことも好ましい。このようにすると、締め付け圧力の増大に伴って、中心から半径方向外側に向かって、互いのテーパ面を少しずつ当接させることが出来る。
【0053】
また更に、本第一実施形態では、第二係合機構Bとして、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120の形状が、ねじの軸心に対して同心円となることを回避している。換言すると、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120の形状は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変化する。この形状によって、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120が一旦当接すると、互いの軸心を合わせたままでは、それ以上の周方向の相対回転が規制される。特に、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120が、雄ねじ体10の全周に亘って形成されておらず、周方向の部分的に形成されているため、ワッシャ50や被締結部材80の形状加工を極めて簡単としつつ、両者の相対回転を防止でき、更に、ワッシャ50やねじ体10の周囲を広く開放できるようになる。
【0054】
なお、本第一実施形態では、第一係合機構Aとして、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64が鋸刃形状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図4(B)に示されるように、互いの凹凸を山形(双方とも傾斜面)にすることも可能である。このようにすると、雄ねじ体20が緩み方向Xに回転する際、互いの傾斜面24X,64Xが相対移動しようとするが、この傾斜面に沿って、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64が離れようとする。この移動距離(離れる角度α)を、雄ねじ体10のリード角より大きく設定すれば、雄ねじ体10が緩もうとしても、それ以上にねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64が離れようとするので、緩むことが出来なくなる。なお、この
図4(B)では、断面二等辺三角形の凹凸を例示したが、
図4(C)のように、締結回転時に当接する傾斜面24Y、64Yの傾斜角よりも、緩み回転時に当接する傾斜面24X,64Xの傾斜角をなだらかにすることも好ましい。このようにすると、締結回転時に、互いに乗り越えなければならない傾斜面24Y、64Yの周方向距離Pを短くすることができるので、締結後のガタ(隙間)を少なく出来る。
【0055】
また、
図4(A)〜(C)の応用として、
図4(D)に示されるように、峯と谷を湾曲させた波型の凹凸も好ましい。締結時に滑らかな操作性を得ることができる。更に、本第一実施形態では、半径方向に延びる凹凸を例示したが、
図5(A)に示されるように、渦巻き状(スパイラル状)の溝又は山(凹凸)を形成することも好ましい。また
図5(B)のように、直線状に延びる溝又は山(凹凸)であっても、ねじの半径方向に対して周方向位相が変化するように傾斜配置することもできる。また、
図5(C)に示されるように、微細凹凸を、ねじの周方向且つ半径方向の双方(平面状)に複数形成した、いわゆるエンボス形状を採用することも好ましい。
【0056】
更に本第一実施形態のように、ねじ体側凹凸24と第一受部側凹凸64の凹凸形状を必ずしも一致(相似)させる必要はない。例えば、
図4及び
図5の各種形状から異なるものを互いに選択して組み合わせることも出来る。
【0057】
本第一実施形態では、ねじ体側テーパ面26を凸形状、ワッシャ側テーパ面66を凹形状にする場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図6(A)のように、ねじ体側テーパ面26を平面形状にしたり、
図6(B)のように凹形状にしたりできる。ワッシャ側テーパ面も同様である。また特に図示しないが、例えばワッシャ50の弾性変形を有効活用すれば、双方のテーパ面の傾斜角を一致させる必要はない。勿論、雄ねじ体10又はワッシャ50の一方のみにテーパ面を形成しても良い。更には、双方のテーパ面を凸形状にしたり、凹形状にしたりすることで、ワッシャの弾性変形を活用して両者を密着させることが出来る。また、ワッシャ50の弾性を得る為に、ワッシャ50の基本的な形状を螺旋状として成る所謂スプリングワッシャ状や皿バネ状としても好い。
【0058】
更に、第一実施形態の応用として、
図7(A)に示されるように、ワッシャ50の第二受部70の周囲の複数個所(ここでは2カ所)に、ワッシャ側当接部110を形成することもできる。この際、部材側座部82の周囲に形成される部材側当接部120も複数個所に形成する。この際、ワッシャ側当接部110の第一ワッシャ側当接領域110Xと第二ワッシャ側当接領域110Yに対して、第一部材側当接領域110Yと第二部材側当接領域120Xが相似形状となる必要はない。本応用例のように、部材側当接部120は、ワッシャ側当接部110に対して凸となるような、円柱の外周面の一部で構成することもできる。結果、第一部材側当接領域110Yと第二部材側当接領域120Xは、第一ワッシャ側当接領域110Xと第二ワッシャ側当接領域110Yに向かって凸状態で当接する湾曲平面となる。このような構造であっても、ワッシャ側当接部110と部材側当接部120が当接して、周方向の相対回転が規制される。
【0059】
また
図7(B)に示されるように、ワッシャ50の外壁が、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状Sとなっており、その一部の領域に限って、半径方向に延びる突起Tを形成することが出来る。突起Tがワッシャ側当接部110となり、突起Tにおいて、雄ねじ体10の一方の回転方向Xに対向する一方の側面が第一ワッシャ側当接領域110Xとなり、雄ねじ体10の他方の回転方向Yに対向する他方の側面が第二ワッシャ側当接領域110Yとなる。この際、部材側座部82の周囲には、突起Tを挟み込むように、一対の円柱状の突出部K1、K2を形成する。この突出部K1、K2が部材側当接部120となる。一方の突出部K1には、第一ワッシャ側当接領域110Xと当接する第一部材側当接領域110Yが形成され、他方の突出部K2には、第二ワッシャ側当接領域110Yと当接する第二部材側当接領域120Xが形成される。なお特に図示しないが、部材側当接部120となる突出部K1、K2等は、被締結部材80に対してネジ構造等によって着脱自在となっていてもよい。
【0060】
図8(A)には、所謂フランジ継手の締結に、第一実施形態の構造を応用した状態を例示している。ここでは、フランジ継手の管部材150の外周面の一部を、第二係合機構Bの部材側当接部120として用いる。一方、ボルト又はナット等のねじ体10に適用されるワッシャ50には、管部材150の外周面に当接するワッシャ側当接部110が形成されている。このワッシャ側当接部110を、管部材150の半径方向に対して直角となる平面形状とし、これを管部材150の外周面に当接させることで、ワッシャ50の双方向の回転を規制する。
【0061】
なお、ワッシャ50に形成されるワッシャ側当接部110の形状を、
図8(B)に示されるようにしてもよい。具体的には、ねじ体10が締まる方向Yに回転する際に、第一ワッシャ側当接領域110Xが管部材150の外周面(第二部材側当接領域120Y)に当接するようにし、ねじ体10が緩む方向Xに回転する際に、第二ワッシャ側当接領域110Yが隣接するワッシャ50の外周(第一部材側当接領域120X)に当接するようにしてもよい。即ち、隣り合うワッシャ50が、第二係合機構Bの部材側当接部120として機能する。このようにすると、ねじ体10及びワッシャ50を利用して、
図8(B)の態様でフランジ継手を締結していけば、結果として、本発明のねじ体の逆回転防止構造が完成することになる。この考え方は、フランジ継手の締結に限られず、複数のねじ体の逆回転防止構造を並列配置する際に適用できる。
【0062】
図9には、第二実施形態のねじの逆回転防止構造が示されている。
図9(B)に示されるように、雄ねじ体10のねじ体側座部22は平面形状となっており、そこに鋸刃形状のねじ体側凹凸24が形成される。また、雄ねじ体10の軸部30の根本には、ワッシャ50を保持するためのくびれ32が形成される。
【0063】
図9(A)の通り、ワッシャ50の第一受部60も平面形状となっており、そこに鋸刃形状の第一受部側凹凸64が形成される。ワッシャ50の貫通孔52には、内周側に突出する係合突起52Aが形成され、雄ねじ体10のくびれ32と係合する。結果、予め、雄ねじ体10とワッシャ50を一体化(結合)することが可能となる。
【0064】
更にワッシャ50の第二受部70の周囲には、ねじの軸線方向に延びるワッシャ側段部74が形成される。ここでは、ワッシャ50の第二受部70を基準にして、被締結部材80側に屈曲する爪の内壁によってワッシャ側段部74が構成される。
【0065】
一方、被締結部材80の部材側座部82には、ねじの軸線方向に伸びる部材側段部82Aを有する。この部材側段部82Aは、ねじ先側に落ち込むような段差となる。ワッシャ側段部74と部材側段部82Aのねじの軸心からの距離は、互いに一致している。従って、
図9(C)に示されるように、雄ねじ体10を締め付ければ、ワッシャ側段部74と部材側段部82Aを係合し、ワッシャ50と被締結部材80の相対回転が防止される。換言すると、ワッシャ側段部74は、第二係合機構Bにおけるワッシャ側当接部110に相当し、部材側段部82Aは、第二係合機構Bにおける部材側当接部120に相当する。
【0066】
このように、第二係合機構Bを、ねじ体10の周方向の一部の範囲であって、更にワッシャ50と比較して、ねじ先側に形成することで、ねじ体10の周囲を開放することが可能となる。
【0067】
なお、本第二実施形態では、雄ねじ体10のくびれ32とワッシャ50の係合突起52Aによって、予め両者を一体化する場合を例示したが、その手法はこれに限定されない。例えば、少なくとも一方に磁気を持たせることで、雄ねじ体10とワッシャ50を磁力で一体化することもできる。その他にも、接着剤、(スポット)溶接、圧入(摩擦力)によって雄ねじ体10とワッシャ50を予め一体化することもできる。また、Oリング等の補助具を用いて、雄ねじ体10とワッシャ50を一体化することも可能である。
【0068】
図10を参照して第二実施形態の応用例を示す。ここでは被締結部材80が、内部に軸部30を収容する円筒形状となっており、その強度を高めるために、周囲に四方に延びる板状のリブ89が配置されている。このリブ89を、第二係合機構Bの部材側当接部120として活用する。ワッシャ50の第二受部70の周囲には、ねじの軸線方向に延びる環状のワッシャ側段部74が形成されており、このワッシャ側段部74が、円筒形状の被締結部材80に覆い被さる。ワッシャ側段部74には、リブ89との干渉を避けるための切欠き75が形成される。
【0069】
この切欠き75の内周面がワッシャ側当接部110に相当し、リブ89の側面が部材側当接部120となる。両者が当接することによって第二係合機構Bとして機能し、結果、ワッシャ50の相対回転が抑制される。
【0070】
なお、
図9及び
図10では、ワッシャ50の外周にワッシャ側段部74が形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
【0071】
また、第一又は第二実施形態では、雄ねじ体10の頭部とワッシャ50を係合させる場合を例示したが、雄ねじ体に適用する場合に限られず、この緩み止め機構を、雌ねじ体側に適用することも出来る。例えば、
図11に示されるように、雌ねじ体18、ワッシャ50、被締結部材80に、第一係合機構Aと第二係合機構Bを設けることで、雌ねじ体18の逆回転を防止する事も可能である。
【0072】
なお、第一又は第二実施形態では、ワッシャ50の外形が、円形、部分円弧、弦等から構成される場合に限って例示したが、それ以外の形状を採用することができる。例えば、ワッシャ50の外形としては、楕円形、長円形、多角形等の形状であっても好い。また、ワッシャ50の外形が、ねじ体の軸に対して偏心した正円形状であることも好ましい。即ち、軸心に対してワッシャ50の外形が「非完全円形(同心の完全円ではない状態)」であれば良いことになる。
【0073】
また、本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。