(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387540
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】マイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20180903BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20180903BHJP
H04R 1/04 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
H04R1/02 108
H04R19/04
H04R1/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-257178(P2014-257178)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-119538(P2016-119538A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100177367
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−187416(JP,A)
【文献】
特開2011−055442(JP,A)
【文献】
実開昭59−129298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02−1/06
H04R 19/00
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声によって振動する振動板を含むマイクロホンユニットと、
前記振動板の背面側に設けられていて背面側に第1接地用パターンが設けられているユニット基板と、
前記マイクロホンユニットと前記ユニット基板とを収容するユニットケースと、
前記ユニットケースに設けられていて第1接地用パターンに接触している接触片と、
側面の一辺に第2接地用パターンが設けられていて前記第2接地用パターンが前記接触片と接触しているメイン基板と、
前記メイン基板の側面と前記マイクロホンユニットとを接合する接着剤と、
を有する、
マイクロホン。
【請求項2】
前記接着剤は、弾力を有し硬化すると収縮する性質を有する、
請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
前記接着剤は、ゴム系接着剤である、
請求項2記載のマイクロホン。
【請求項4】
前記メイン基板は、前記第2接地用パターンが設けられている側面の幅が前記ユニットケースの内面の幅と同じである、
請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項5】
前記ユニットケースは、前記ユニット基板の背面が露出するように開放されていて、
前記メイン基板は、前記ユニット基板の前記第1接地用パターンが設けられている前記背面側と前記接着剤によって接着されている、
請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項6】
前記ユニットケースと前記メイン基板とを収容する筐体を有する、
請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項7】
前記筐体とユニットケースとの間に介在するスペーサを有する、
請求項6記載のマイクロホン。
【請求項8】
前記スペーサは、前記筐体と前記ユニットケースとの間で弾性部材である、
請求項7記載のマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6と
図7に示すマイクロホン100は、会議用などに使用される小型のコンデンサマイクロホンである。マイクロホン100の筐体140の形状を小さくするために、マイクロホンユニット110に単一指向性エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットが用いられる。
【0003】
図8に示すように、マイクロホンユニット110は、音声によって振動する振動板111、必要な電子部品が搭載される回路基板(以下「ユニット基板112」という。)を備える。また、マイクロホンユニット110は、振動板111やユニット基板112などを収容するユニットケース113を備える。
【0004】
マイクロホンユニット110では、低域限界を低くするために振動板111の張力は低く設計されている。マイクロホンユニット110に加わる応力が大きい場合には、ユニットケース113から伝わる応力により振動板111が変形してしまい、振動板111の張力が高くなり低い音が出にくくなる。一方、マイクロホンユニット110に加わる応力が小さい場合には、振動板111やユニット基板112などがユニットケース113内で遊んでしまうことで振動が生じ雑音が発生する。
【0005】
マイクロホン100では、マイクロホンユニット110を収容する筐体140の形状を小さくするために、振動板111の背面側に電子回路基板(以下「メイン基板120」という。)が取り付けられている。メイン基板120は、側面に接地用パターン1220が設けられている。接地用パターン1220は、ユニットケース113の後端に露出しているユニット基板112に設けられている接地用パターン1210と接触させることでマイクロホンユニット110が接地されている。
【0006】
図8、9に示すように、マイクロホン100は、ユニットケース113の後端に露出しているユニット基板112がメイン基板120と接合して筐体に組み付けられている。このとき、マイクロホンユニット110やユニット基板112は、メイン基板120から圧縮方向の応力を受ける。ユニット基板112から受ける応力により、マイクロホンユニット110では、応力の影響を受けて上述の低い音が出にくい不具合や雑音が発生する不具合を生じる。また、ユニット基板112から受ける応力により、メイン基板120の接地用パターン1220とユニット基板112の接地用パターン1210との電気的接続が外れてしまい、大きな雑音が発生する不具合を生じる。
【0007】
以上のように、小型のコンデンサマイクロホンでは、雑音が発生するなどの不具合を防いで高音質を得るのが難しい。
【0008】
なお、コンデンサマイクロホンにおいて、インダクタを介してユニットケースの後端を回路基板に電気的に接続する電路を有する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に開示された技術であっても、上述の不具合を防いで高音質のマイクロホンを得るのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4683996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、装置を小型化しつつ高音質のマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、音声によって振動する振動板を含むマイクロホンユニットと、振動板の背面側に設けられていて背面側に第1接地用パターンが設けられているユニット基板と、マイクロホンユニットとユニット基板とを収容するユニットケースと、ユニットケースに設けられていて第1接地用パターンに接触している接触片と、側面の一辺に第2接地用パターンが設けられていて第2接地用パターンが接触片と接触しているメイン基板と、メイン基板の側面とマイクロホンユニットとを接合する接着剤と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置を小型化しつつ高音質のマイクロホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るマイクロホンの実施の形態を示す断面図である。
【
図3】
図1のマイクロホンのマイクロホンユニット部分を示す拡大断面図である。
【
図4】
図1のマイクロホンの組み立て工程を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るマイクロホンの実施の形態を示すマイクロホンユニット部分の拡大断面図である。
【
図8】従来のマイクロホンのマイクロホンユニット部分を示す拡大断面図である。
【
図9】従来のマイクロホンの組み立て工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
●マイクロホン(1)
以下、本発明に係るマイクロホン、特にコンデンサマイクロホンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1、
図2の断面図に示すように、本実施の形態に係るマイクロホン1は、振動板などを備えるマイクロホンユニット10と、マイクロホンユニット10と接合されているメイン基板20とを有する。また、マイクロホン1は、マイクロホンユニット10とメイン基板20とを接合する接着剤30と、マイクロホンユニット10とメイン基板20とを収容しマイクロホンユニット10を構成する筒状のマイクロホンケース40とを有する。
【0017】
マイクロホン1では、マイクロホンケース40においてマイクロホンユニット10が取り付けられている側(
図1の紙面左側)を前方、その反対側(
図1の紙面右側)を後方とする。
【0018】
図3にも示すように、マイクロホンユニット10は、マイクロホンケース40の前方側に収容されている。マイクロホンケース40内において、マイクロホンユニット10の後方側には、接着剤30によりマイクロホンユニット10と接合されているメイン基板20が設けられている。メイン基板20は、前方側の側面21に第2接地用パターン22が設けられている。第2接地用パターン22は、マイクロホンユニット10のユニットケース13の接触片131に接触している。
【0019】
マイクロホンケース40の前方側には、筒状の開放端の一方を覆う前カバー41が設けられている。また、マイクロホンケース40の後方側には、筒状の開放端の他方を覆うテールピース42が設けられている。テールピース42には、孔43が設けられている。孔43とマイクロホンケース40に設けられている孔44とにネジ45を締め付けることにより、マイクロホンケース40とテールピース42とが固定される。
【0020】
図2の断面図は、
図1に示したマイクロホン1のメイン基板20の部品搭載面に垂直な方向から見た断面図である。同図に示すように、メイン基板20はマイクロホン1の前後方向に長い板状の部材である。
【0021】
図3を参照して、マイクロホンユニット10の構成、およびマイクロホンユニット10とメイン基板20との接合部分の構成についてさらに具体的に説明する。
【0022】
マイクロホンユニット10は、例えばエレクトレットコンデンサマイクロホンユニットなどのコンデンサマイクロホンユニットである。マイクロホンユニット10は、音声によって振動する振動板11と、振動板11の背面側に配置された固定極15と、必要な電子部品を搭載する回路基板(以下「ユニット基板12」という。)と、振動板11と固定極とユニット基板12とを収容するユニットケース13とを備える。固定極15とユニット基板12との間には絶縁基台16が介在している。マイクロホンユニット10は、スペーサ46を介して、マイクロホンケース40の前方に取り付けられている前カバー41に接触している。スペーサ46は、マイクロホンケース40内におけるマイクロホンユニット10の位置を画定するための部材である。
【0023】
ユニット基板12は、振動板11の後方(背面側)に設けられている。ユニット基板12は、所定の回路パターンが形成されているプリント基板などの電子回路基板であり、正面側に固定極15や必要な電子部品などが搭載されている。ユニット基板12は、ユニットケース13に収容されたときに外部に露出する背面側(振動板11と対向する面と反対側)に、第1接地用パターン121が設けられている。また、ユニット基板12には、正面側と背面側とを貫く孔122が設けられている。この孔122は、絶縁基台16および固定極15に形成された孔を通じて振動板11の背面側の空間に連通している。この孔122の付近には、振動板11と同時に動く空気の中心位置である後部音響端子がある。
【0024】
ユニットケース13は、振動板11と、電子部品などが搭載されているユニット基板12を収容する導電性の筐体である。ユニットケース13は、前方が振動板11の前方(正面側)を覆い、後方が開放されている。ユニットケース13は、マイクロホン1の外形形状に倣った例えば円筒状の筐体である。ユニットケース13は、振動板11が内部で移動して不要な雑音を生じることがないように、振動板11やユニット基板12の寸法を考慮して寸法が定められる。
【0025】
ユニットケース13の後方側端部には、内部に収容されているユニット基板12の第1接地用パターン121と接触する接触片131が設けられている。接触片131は、ユニットケース13の後方側端部を内側にカシメにより折り曲げた鉤状の部分である。また、ユニットケース13の前方側端部には、マイクロホンケース40の前カバー41に設けられている開口部411を通過した音声信号を振動板11に通過させる孔132が設けられている。この孔132の前面側には、振動板11と同時に動く空気の中心位置である前部音響端子がある。
【0026】
ユニットケース13の後方側(ユニット基板12の背面側)には、メイン基板20が設けられている。メイン基板20は、先に説明したユニット基板12と同様に例えばプリント基板などの所定の回路パターンが形成されている電子回路基板である。メイン基板20には、側面21の一辺にも回路パターンが形成されていて、この回路パターンが接触片131と接触する第2接地用パターン22である。メイン基板20の第2接地用パターン22が設けられている側面21(
図3における短辺)の幅は、ユニットケース13の内面の幅とほぼ同じである。ここで、メイン基板20の側面21の幅は、第2接地用パターン22がユニットケース13の接触片131に対して電気的に接触することができる幅があればよいため、必ずしも同じ幅でなくてもよい。
【0027】
接着剤30は、メイン基板20の側面21と、マイクロホンユニット10とを接合する。
図3に示すように、接着剤30は、メイン基板20の側面21とユニットケース13に収容されているユニット基板12の背面側の面とを接合している。接着剤30は、弾力を有し硬化すると収縮する性質を有する、ゴム系接着剤を用いるのが好ましい。接着剤30は、ユニットケース13の後端部の周囲に形成されている接触片131の内側でメイン基板20とユニット基板12とを接着している。
【0028】
マイクロホン1では、ユニットケース13に設けられている接触片131が、ユニット基板12の第1接地用パターン121とメイン基板20の第2接地用パターン22とに電気的に接続している。この状態において、マイクロホン1では、メイン基板20とユニットケース13とを弾力を有し硬化すると収縮する性質を有する接着剤30により接合している。このため、マイクロホン1では、硬化した接着剤30によりユニット基板12とメイン基板20とに対して引っ張り応力が生じて、第1接地用パターン121と第2接地用パターン22との電気的接続が維持される。
【0029】
したがって、マイクロホン1によれば、メイン基板20の第1接地用パターン121とユニット基板12の第2接地用パターン22とが外れて大きな雑音が発生するというような不具合はなく高音質のマイクロホンを得ることができる。
【0030】
図4に示すように、マイクロホン1の組み立ては、最初にマイクロホンユニット10の背面側に位置しているユニット基板12の背面側の面と、メイン基板20の側面21とを、接着剤30で接合する。その後、マイクロホンユニット10とメイン基板20とは、前カバー41が取り付けられているマイクロホンケース40に挿入される。マイクロホンユニット10とメイン基板20とを挿入した後、マイクロホンケース40にはテールピース42が嵌めこまれて、メイン基板20の後方側の側面23が押される。嵌めこまれたテールピース42は、ネジ45により孔43と孔44とが締め付けられることでマイクロホンケース40に固定される。
【0031】
以上のような工程で製造されるマイクロホン1では、メイン基板20から前方への応力を受けても、ユニット基板12の第1接地用パターン121とメイン基板20の第2接地用パターン22は、接触片131と電気的に接触し続ける。このため、マイクロホン1によれば、大きな雑音が発生するなどの不具合を生じることがなく高音質のマイクロホンを提供することができる。
【0032】
また、以上のような工程で製造されるマイクロホン1では、メイン基板20から前方への応力を受けても、その応力は主にマイクロホンケース40に伝わるため、ユニット基板12や振動板11には伝わらない。このため、マイクロホン1によれば、振動板11に伝わる応力の変化による不具合を生じることがなく高音質のマイクロホンを提供することができる。
【0033】
●マイクロホン(2)●
本発明に係るマイクロホンの別の実施の形態について、先に説明した実施の形態との相違点のみを説明する。
【0034】
図5に示すように、本実施の形態に係るマイクロホン2は、マイクロホンケース40の前方の前カバー41とマイクロホンユニット10との間に介在する弾性部材として、皿バネ47を用いている。皿バネ47は、マイクロホンケース40内におけるマイクロホンユニット10の位置を画定させるとともに、マイクロホンユニット10を後方に押し返す力を生じている。
【0035】
マイクロホン2では、マイクロホンユニット10に加わる応力に応じて皿バネ47が伸縮し、振動板11に伝わる応力の変化を小さくし、上記応力の変化による不具合を解消してさらに高音質のマイクロホンを提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 マイクロホン
10 マイクロホンユニット
11 振動板
12 ユニット基板
13 ユニットケース
15 固定極
16 絶縁基台
20 メイン基板
21 側面
22 第2接地用パターン
23 側面
30 接着剤
40 マイクロホンケース
41 前カバー
42 テールピース
43 孔
44 孔
45 ネジ
46 スペーサ
47 皿バネ
121 第1接地用パターン
122 孔
131 接触片
411 開口部