(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、バイオリン、チェロ、ビオラ、コントラバス、ギター、マンドリン等
の弦楽器もしくはこれらの演奏に用いられる弓等の保存においては、当該弦楽
器の性能を保つために適度な湿度調整が要求される。このため、例えば弦楽器
収納ケース内に、顆粒状のシリカゲルを含むバッグを収納し、弦楽器の使用直
後や、使用環境の変化によって生じた過度の湿気を除去し、保存雰囲気中の弦
楽器収納ケース内の湿度を低減する対策がなされている。また、弦楽器の保存
に際しては、湿度を低減するだけでなく、さらに一定の湿度を保つ必要がある。
これは上記弦楽器や弓等がその材料特性上、乾燥が進みすぎると音質が変化する等の問題を起こしたり、極端な場合にはひび割れ、切断等の物理的損傷
を生じることもあるからである。このため、吸放湿性を有する高分子を用い、これを基体となるゴム材料に混合させてなるゴムシートを形成し、弦楽器用調湿シート(例えば古河電気工業株式会社製「ドライキーパー」)として弦楽器収納ケースに入れて用いる対策がなされている(例えば、特許文献1)。
また、弦楽器の保存中以外に、弦楽器を使った演奏の最中においても、比較的乾燥したホールや強い照明が当たって暑くなるステージなどで、乾燥が進むと弦楽器の音質が変化してきたり、極端な場合には弦楽器に突然のひび割れなどが発生する等の問題が起こることがある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0009】
本発明における弦楽器としては、バイオリン、チェロ、ビオラ、コントラバス、マンドリン、ギターなどが挙げられる。
本発明の調湿用品はこれらの弦楽器のFホールから弦楽器の内部に挿入して使用するものであり、調湿用品の全体が弦楽器の内部に落ち込まないように、当該弦楽器のFホールの最大部分の径よりも大きい直径を有するストッパーを装着している。FホールとはF字孔とも呼ばれ、アルファベット文字のfをデザイン化した形で弦楽器の胴部分に通常2個空けられている孔である。
なお、Fホールを有しないギターの場合は、弦の隙間から調湿用品を挿入し、隣り合った2本の弦でストッパーを支持することで配設することができる。
【0010】
図1に、水を吸水する前の本発明の調湿用品の一例の模式図を示す。
図1において、1は袋状物、2は袋状物内に封入された吸水性樹脂シート、3はウェーブテープ、4はストッパーを示す。r
0は袋状物の巾、Lは袋状物の長さ、Rはストッパーの直径、aはストッパーと袋状物の連結部分の長さである。
図2は、
図1の調湿用品が水を吸水して膨潤した状態の一例の模式図を示す。
図2において、r
1は水で膨潤した袋状物の最大部分の直径、Lは袋状物の長さ、aは袋状物とストッパーの連結部分の長さ、Rはストッパーの直径である。
図3は、コントラバスのFホールに調湿用品を配設した場合の断面図の模式図である。
【0011】
本発明における水分透過性の袋状物としては、例えば、布帛、不織布およびシートなどで袋状に縫製もしくは接着された袋状物が挙げられる。
布帛の材質としては、たとえば綿、羊毛、絹、セルロース、パルプなどの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポバールなど及びその変性物などの合成樹脂又は繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維など及びこれらの混合素材などが適用できる。
不織布としては、工業的に使用されている不織布が使用できる。不織布は乾式法、湿式法のいずれの方法でも、またスパンレース法、サーマルボンド法、スパンボンド法、ニードルパンチ法などいずれの方法で製造されたものでも使用できる。不織布の目付量は、特に制限はないが30g〜500g/m
2が好ましく、40g〜200g/m
2がより好ましい。
シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシートに微細な孔を数多く開けたものなどが挙げられる。
これらの中で布帛や不織布が好ましく、特に弦楽器に配設する場合の風合いと吸放湿の即効性の観点から布帛が好ましい。
【0012】
袋状物の好ましい形状としては長方形の短冊状、一方が尖った短冊状および円筒状などが挙げられる。大きさとしては、弦楽器の大きさによって異なるが、吸放湿性成分としての吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂繊維および/または吸水性樹脂シートが封入された袋状物を水で膨潤させた際の直径が、Fホールの最大部分の径よりも小さいことが好ましく、Fホールの最大部分よりも大きいとFホールから挿入しにくくなる。
また、袋状物の長さとしては、弦楽器の大きさによって異なるが、調湿用品が挿入された際に弦楽器の背面にまで届かないような長さの方が、弦楽器の背面に調湿用品が直接接触することがないので好ましい。
【0013】
図1における短冊状の調湿用品の場合の例では、コントラバスおよびチェロ用の場合、r
0は好ましくは10〜40mm、ビオラ、バイオリン、マンドリンおよびギター用の場合はr
0は好ましくは5〜30mmである。また、水を吸水して膨潤した後の
図2におけるr
1は通常はr
0よりも小さくなる。
また、袋状物の長さLは、コントラバス用の場合は好ましくは100〜200mm、さらに好ましくは150〜200mmであり、チェロ用の場合は好ましくは50〜170mm、さらに好ましくは100〜160mmである。長さLは、ビオラ、バイオリン、マンドリンおよびギター用の場合は好ましくは20〜70mm、さらに好ましくは20〜60mmである。
【0014】
本発明における袋状物は前記の布帛、不織布またはシートを袋状に縫製または接着したものであれば特に限定されない。縫製または接着に際しては、吸放湿性成分を封入した状態で縫製または接着してもよく、また、縫製または接着した後に吸放湿性成分を封入してもよい。吸放湿性成分を封入した状態で縫製または接着する場合は、吸放湿性成分が使用時に水を吸水して充分に膨潤できるように、吸放湿性成分を噛み込まないような位置で縫製または接着することが好ましい。
【0015】
本発明における袋状物に封入される調湿性成分は、吸水性樹脂粉末、吸水性樹
脂繊維および吸水性樹脂シートからなる群から選ばれる1種以上である。
調湿性成分は、吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂繊維および吸水性樹脂シートのうちの一種を用いても、二種以上の併用であってもよい。これらのうち好ましいのは吸水後の膨潤樹脂の偏在化が少ないという観点から吸水性樹脂繊維および吸水性樹脂シートであり、吸水速度と吸水倍率の観点から、特に吸水性樹脂シートが好ましい。
吸水性樹脂以外の海綿状物、樹脂スポンジおよびゴムスポンジなどは水分を一旦は吸水するが、その保持力は小さいため、表面のべたつきがあり、使用感や吸放湿性において不十分であり、弦楽器の内部に水滴が落ちて内部の木部が腐る可能性がある。
【0016】
吸水性樹脂粉末としては特に限定されるものではないが、安価で、安全性、耐久性、吸水倍率や吸水速度などの吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。吸水性樹脂の組成としては公知のものが使用でき、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、および、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水膨潤特性、保水性、安全性や経済性などが良好であるため好ましい。
【0017】
吸水性樹脂粉末のうち、吸水性樹脂の含水ゲル重合体にさらに架橋剤を加えて混合し加熱して反応させた後、乾燥粉砕したものが特に好ましい。最も好ましいのは吸水性樹脂の粉末を含水ゲルとした後架橋剤を反応させて得られる吸水性樹脂粉末である。重合時のモノマーやオリゴマーなどの水可溶性成分をさらに架橋するので吸水性樹脂中に残存する水可溶性成分の量をさらに低下させることができる。したがって、調湿用品に用いると「ヌメリ」がさらに少なくなるので好ましい。
【0018】
前記架橋剤としては、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリン−1,3−ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリグリシジル化合物;グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオール化合物;エチレンジアミン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂などのポリアミン化合物などが挙げられる。好ましい架橋剤は、加水分解しにくいポリグリシジル化合物、ポリオール化合物である。架橋剤が加水分解しにくいと何回も繰り返して使用しても「ヌメリ」が少ない。上記反応条件として従来の吸水性樹脂粉末の表面架橋に用いる条件と同じでよい。
【0019】
これらの吸水性樹脂粉末は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記吸水性樹脂粉末は、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、微細繊維状、棒状、塊状など、種々の形状であってもよい。
【0020】
吸水性樹脂粉末の平均粒子径についても特に限定はないが、好ましくは50〜850μmであり、さらに好ましくは60〜400μmである。50μmより大きいと袋状物から吸水性樹脂粉末が漏れにくくなり、850μmより小さいと調湿用品が水を吸収するときの吸収速度が良好である。粒度分布は特に限定はないが、好ましくは50〜850μmの範囲の粒子が95質量%以上となるように粉砕したものを用いることができる。ここで平均粒子径は質量平均粒子径を意味し、質量平均粒子径は、架橋重合体の各粒度分布を横軸が粒子径、縦軸が質量基準の含有量の対数確率紙にプロットし、全体の50%を占めるところの粒子径を求める方法により測定する。たとえば、篩振とう法が適用できる。
【0021】
上記吸水性樹脂の吸水倍率は重量で100〜1000倍であるのが好ましい。
吸水倍率は下記の方法で測定できる。
<吸水性樹脂の吸水倍率の測定法>
ナイロン製の網袋(250メッシュ)に吸水性樹脂の試料(サンプル量;Xg)を入れ、これを袋ごと過剰の水に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して15分間水切りした後、質量(Yg)を測定して下式より吸水倍率を求めた。[網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量(Zg)をブランクとして差し引いた。]
吸水倍率=(Y−Z)/X
【0022】
また、吸水性樹脂の吸水速度は、好ましくは5〜200秒であり、より好ましくは5〜100秒である。吸水速度が5秒以上であると、空気中の湿度の影響で吸水性樹脂同士のブロッキングなどが生じにくくなり、加工適性が良好である。吸水速度が200秒以下であると、調湿用品を含水した時の吸水速度が十分に速くまた水の蒸散速度も速くなるので調湿効果の即効性が発揮できるため好ましい。
【0023】
吸水速度は下記の方法で測定できる。
<吸水性樹脂の吸水速度の測定法>
1.100mLのガラスビーカーに水道水を50mL入れ、マグネットスターラー〔直径(中央部8mm、両端7mm)、長さ30mmのフッ素樹脂コーテイングされたもの〕を用いて600rpmで攪拌する。
2.試料2.00試験サンプルを渦中に一度に投入し、投入した時から渦が消えて液面が水平になった時点までの時間(秒)を測定し、吸水速度とする。
【0024】
本発明における袋状物に封入される調湿性成分のうち、吸水性樹脂繊維としては、前記吸水性樹脂粉末と同様の組成の吸水性樹脂を繊維状に成形したものが挙げられる。特に繊維状に成形しやすいイソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体およびアクリロニトリル共重合体が好ましい。
また、吸放湿性成分としては、これらの吸水性樹脂繊維と後述の水不溶性吸水・保水材を併用してもよい。
【0025】
本発明における袋状物に封入される調湿性成分のうち、吸水性樹脂シートと
しては、前記吸水性樹脂のみをシート状に成形したものであってもよく、前記吸水性樹脂粉末を吸水性樹脂以外の水不溶性吸水・保水材が通水性基材に固定されてなる吸水性樹脂シートであってもよい。好ましいのは、シートの強度および加工のし易さの観点から、前記吸水性樹脂粉末を吸水性樹脂以外の水不溶性吸水・保水材が通水性基材に固定されてなる吸水性樹脂シートである。
ここで「固定」とは吸水性樹脂と水不溶性吸水・保水材を通水性基材の片面に何らかの手段で固定することと、少なくとも片面が通水性基材であるように吸水性樹脂と水不溶性吸水・保水材を両側から基材で挟むことの両方を含むものとする。
【0026】
水不溶性吸水・保水材としては、吸水して膨潤する吸水性樹脂以外のもの、たとえば、パルプ、吸水性繊維、ヤシガラ、モミガラ、木くず、木粉、木綿、オガクズ、ワラ、ヤシ殻活性炭などの有機系水不溶性吸水・保水材やパーライト、ロックウール、多孔質セラミック、バーミキュライト、軽石などの無機系水不溶性吸水・保水材が挙げられる。好ましいのは軽量で柔軟性のある有機系水不溶性吸水・保水材であり、特に好ましいのは吸水性樹脂と親和性が大きく経済的に有利なパルプである。
【0027】
パルプとしては、たとえば、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、非木材パルプ(たとえば麻、楮、三椏、ガンピ、稲藁、麦藁、バナナ、バガス、月桃、ケナフ、竹、笹、ハトバショウ、カジノキなどのパルプ)などを挙げることができる。中でも、吸水性に優れ、入手も容易な針葉樹パルプを用いることが好ましい。
【0028】
水不溶性吸水・保水材の形状や大きさは特に限定はないが、好ましくは通水性基材から抜け出さないような大きさである。より好ましくは0.5mm以上、5mm以下であり、特に好ましくは1mm以上、3mm以下である。1mm以上であれば通水性基材から抜け出しにくく、5mm以下であれば感触がゴワゴワせず使いやすい。
【0029】
通水性基材としては、柔軟性・通水性を有し、且つ使用するまでに破れない程度の強度があれば特に形態、材質にはこだわらない。また通水性としては水が通る孔があれば特に限定はないが、孔の大きさが好ましくは0.001〜1mm、特に好ましくは0.01〜0.5mmである。基材の厚みは好ましくは0.001〜5mm、より好ましくは0.01〜3mmである。
【0030】
通水性基材の材質としては、たとえば綿、羊毛、絹、セルロース、パルプなどの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポバールなど及びその変性物などの合成樹脂又は繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維など及びこれらの混合素材、洋紙、和紙などの紙の素材が適用できる。好ましくは天然繊維、紙である。また、水によって崩壊するが溶解せず固体のまま残る紙なども好ましく使用できる。
【0031】
形態としては、たとえば編布、織布、不織布などの布;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシートに微細な孔を数多く開けたものなどのメッシュフィルム;洋紙、和紙などの紙などが挙げられる。これらの中で布や紙が好ましく、不織布や水に崩壊するが水に不溶なティッシュが特に好ましい。熱融着法で固定する場合は熱融着繊維及び/又はフィルムなどの熱融着物質を含んだものを使用するが、「熱融着不織布の実態と熱融着繊維全容」(1989年4月24日発行、大阪ケミカルマーケッティングセンター社)に詳細に記載されているものが挙げられる。不織布としては、前記不織布が使用できる。
【0032】
ここで通水性とは、100mlの25℃のイオン交換水が100cm
2の面積を通過する時間(秒)で表すと30秒以下であり、好ましくは15秒以下であり、特に好ましくは5秒以下である。
【0033】
吸水性樹脂シートの構成として好ましいのは、布(特に好ましくは不織布)、紙などの通水性基材の片面または両面に粘着剤やバインダー樹脂を用いて吸水性樹脂粉末を固定化したものであり、特に好ましいものは、紙や不織布などの通水性基材でサンドイッチ状に挟んだ後、エンボス加工法、ニードルパンチ法で吸水性樹脂を一体化したもの;プラスチックフィルムの片面に粘着剤やバインダー樹脂を用いて吸水性樹脂粉末水を固定させ、そのまままたは片面に上記通水性基材を被せたもの、たとえば、セロハンやビニールの粘着テープを用いて、粘着面に吸水性樹脂粉末を散布しそのまままたは不織布などの通水性基材を被せて圧着ロールで固定したものなどが挙げられる。これらの吸放湿性高分子シートは、吸水性樹脂粉末の吸水による膨潤を妨げにくいため、多くの水を吸収して保水することができる。特に好ましいものは、エンボス加工法で吸水性樹脂が不織布や紙に挟まれて固定されたものである。
【0034】
吸水性樹脂シートの大きさは特に限定がない。シートを袋状物の大きさに合わせてカッティングして1枚で設置しても折り曲げて入れても数枚重ねて設置してもよい。
【0035】
吸水性樹脂の使用量は、対象となる弦楽器のFホールの大きさによって異なるが、粉末であれ吸水性樹脂シートであれ、調湿用品1本当たり、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.2〜5g、特に好ましくは0.2〜3gである。使用量が0.1g以上であると調湿用品の保水性が良好であり弦楽器の調湿性が良好である。10g以下であると、調湿用品が吸水したとき膨らみすぎず、また性能と経済面のコストパフォーマンスが良好である。
【0036】
本発明における落下防止用のストッパーとしては、袋状物の端部に直接、または袋状物とウエーブテープを介して装着されているものである。
ストッパーの形状は弦楽器のFホールから調湿用品が挿入されたとき、あるいは挿入後に楽器内に調湿用品が落下しないようにするためのものであれば特に限定されず、円盤状、球状、半球状、直方体状および立方体状などが挙げられる。取扱い易さの観点から好ましいのは、円盤状もしくは球状である。これらのストッパーの直径はFホールの最大部分の径よりも大きいことが必要である。Fホールの最大部分の径は、弦楽器のメーカーによるが、通常はコントラバスで約20mm〜50mm、チェロで約10mm〜40mmである。
ストッパーの材質は、ゴム、発泡ゴム、発泡樹脂、樹脂または金属など、特に限定されないが、Fホールと接触するのでFホールにキズをつけないように比較的柔軟性のある軽量な材質が好ましい。また、硬質の材質であっても表面に柔軟性のある材料で覆われたものであってもよい。例えば、衣服用のボタンなどを代用してもよく、表面が繊維で植毛されたフェルト状の大型のボタンなども使用することが出来る。
【0037】
また、本発明の調湿用品を弦楽器に配設した場合に、袋状物が弦楽器の内面に直接接触しないようにするために、好ましくは袋状物とストッパーはウェーブテープを介して連結されていることが好ましい。ウェーブテープとしては、針金のように自由に曲げられるもので形状記憶するものが好ましく、芯部分が樹脂(例えば、特殊ポリエチレン樹脂)で該樹脂を繊維(例えば、レーヨン)で覆った形状のハードタイプのウェーブテープが好ましい。形状を保持する強度の観点からウェーブテープの巾は約8〜15mmのものが好ましい。
また、ウェーブテープは、前記袋状物の端部まで挿入されていることが好ましい。さらに必要により、ウェーブテープは二重に重ねて使用してもよい。袋状物の先端部まで挿入されていることにより、あるいは二重に重ねて使用することにより、吸水後の袋状物の形状が曲りにくくなるため、弦楽器を立てて置いても袋状物が弦楽器の内面の木部に直接接触しにくくなる。ここで、袋状物の先端部とは
図1に示したように吸放湿性成分が入っている先端部分である。
【0038】
本発明の調湿用品の製法は、一部が開口した袋状物を作成しておき、開口から吸放湿性成分とウェーブテープを挿入し、開口部を縫製して閉じてもよいし、調湿性成分とウェーブテープとを袋状物の材料で被せて袋を形成してから縫製して閉じてもよい。
なお、袋状物の先端部の巾(
図1のr
0)が狭くて縫製しにくい場合は、縫製作業の経済性の観点から先端部が尖った形状に縫製してもよい。
また、袋状物とストッパーの接合は、ウェーブテープを使用する場合は、ウェーブテープの一端をストッパーに縫いつけてもよいし接着してもよい。ウェーブテープを使用しない場合は、袋状物を直接ストッパーに縫いつけてもよいし接着してもよい。ストッパーが、その中央付近に複数の穴が空いているボタンの様な形状の場合は、その穴を利用してウェーブテープを結びつけてもよい。
【0039】
袋状物の縫製は、通常の家庭用または工業用ミシンによるミシン掛けがよく、生産効率面から、高速工業用ミシンによる縫製が好ましい。縫製糸は、綿、絹や合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレンなど)が使用できる。
【0040】
本発明の調湿性用品は、自宅で弦楽器をケース内で一時的に保管する場合や、長期の国内演奏や海外演奏などで弦楽器を長期間保管する場合や、乾燥した自宅室内で弦楽器を保管する場合や、演奏中の弦楽器であっても使用することができる。
【0041】
使用方法は、調湿用品の袋状物部分を1〜15分間、1〜25℃、好ましくは3〜25℃の水に浸けた後、表面の余分な水分を手でしごいてから、弦楽器のFホールに挿入するだけでよく、ストッパーがあるために弦楽器の内部に調湿用品の全体が落ち込まない。
また、吸水した袋状物の表面はサラッとしておりベタつきは無く、たとえ袋状物が弦楽器の内部に触れたとしても悪影響を及ぼすことはない。
また、長期間使用して袋状物の太さが細くなってきたら、再度水に漬けて上記と同様に使用でき、繰り返し使用することができる。
【0042】
本発明の調湿用品は、弦楽器の内側から調湿するので、その調湿効果が発揮しやすく、しかも効果が速く発揮できる。本発明の調湿用品は吸水性樹脂を使用していることにより、弦楽器内の湿度が約60%未満の場合は調湿用品からの湿気が拡散して約60%になるまで加湿し、湿度が約60%以上の場合は湿気は出ずに60%以上になることはない。また、梅雨の時期の室内などで高湿度になった場合などでは、調湿用品を水に漬けない状態のままで弦楽器に配設することにより吸湿性を発揮することもできる。
また、従来の弦楽器のケースの内側に貼り付けるタイプの調湿用品はケース内で嵩ばるので楽器の邪魔になるのに比べて、本発明の調湿用品は弦楽器の内部に配設するので嵩ばらない。
なお、必要により、弦楽器のケース内に簡易湿度計を設置してもよい。
【0043】
実施例
以下、製造例、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は質量%を示す。
【0044】
製造例1(吸水性樹脂の製造)
容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸ナトリウム76.6g、アクリル酸23g、N,N'-メチレンビスアクリルアミド0.4gおよび脱イオン水295gを仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を5℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、過酸化水素の1%水溶液1g、アスコルビン酸の0.2%水溶液1.2gおよび2,2'-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液2.4gを添加して重合を開始させ、約5時間重合することにより吸水性樹脂濃度25%の含水ゲル状重合体を得た。これを乾燥して平均粒子径400μmの吸水性樹脂粉末を得た。さらにこの粉末90gに水360gを加えて含水ゲルとし、「デナコールEX−313」(グリセロールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)10gを添加して混練し、140℃で3時間反応した後、この混練物を90℃で減圧乾燥し、ピンミルで粉砕した後、50〜750ミクロンの粒度が約95%となるように粒度調整して、平均粒径350μmの吸水性樹脂を得た。
【0045】
製造例2[吸水性樹脂シートの作成]
巾40cm、長さ70cmのティッシュペーパーの上に、製造例1で製造した吸水性樹脂と繊維状パルプ(重量比で1/2)の合計量を150g/m
2になるように均一に散布し、その上に同じサイズのティッシュペーパーを置いて、その上からエンボス加工を施し一体化した。
これを下記の大きさにスリットして複数枚の吸水性樹脂シート(a1)〜(a3)を作成した。
(a1)巾2cm、長さ4cm
(a2)巾2cm、長さ12cm
(a3)巾2cm、長さ16cm
【0046】
実施例1[バイオリン用調湿用品の作成]
幅3cm、長さ7cmの綿100%の布帛からなる袋状物の中に、前記吸水性樹脂シート(a1)を4枚重ねて封入し、さらに長さ15cm、幅10mmのウェーブテープを二重に折り曲げて長さ7.5cmにして封入して、縫製して固定した。さらにウェーブテープの末端にストッパーとして直径4cmのフェルト製円盤状ボタンを結びつけて、本発明のバイオリン用の調湿用品−1を作成した。この場合、
図1におけるr
0は3cm、Lは7cm、aは3cm、Rは4cmである。
【0047】
実施例2[チェロ用調湿用品の作成]
幅3cm、長さ15cmの綿100%の布帛からなる袋状物の中に、前記吸水性樹脂シート(a2)を4枚重ねて封入し、さらに長さ35cm、幅10mmのウェーブテープを二つ折りにし長さ17.5cmにして封入して、縫製して固定した。さらにウェーブテープの末端にストッパーとして直径5cm、厚さ6mmのフェルト製円盤状ボタンを結びつけて、本発明のチェロ用の調湿用品−2を作成した。この場合、
図1におけるr
0は3cm、Lは15cm、aは5cm、Rは5cmである。
【0048】
実施例3[コントラバス用調湿用品の作成]
幅3cm、長さ20cmの綿100%の布帛からなる袋状物の中に、前記吸水性樹脂シート(a3)を4枚重ねて封入し、さらに長さ45cm、幅10mmのウェーブテープを二つ折りにし長さ22.5cmにして封入して、縫製して固定した。さらにウェーブテープの末端にストッパーとして直径5cmのフェルト製円盤状ボタンを結びつけて、本発明のコントラバス用の調湿用品−3を作成した。この場合、
図1におけるr
0は3cm、Lは20cm、aは5cm、Rは5cmである。
【0049】
比較例1〜3
直径1cm×長さ4cm、直径1.5cm×長さ12cm、直径2cm4×長さ16cmの棒状の海綿状スポンジを、それぞれ、表面に
多数の穴(1cm
2当たり約4個)があいたゴム製チューブに挿入し、末端にゴム製ストッパーを付けた形状の比較の放湿用品−1〜3を作成した。
【0050】
比較例4〜6
いずれの調湿用品をも使用しない場合を比較例4〜6とした。
評価結果
相対湿度25%、気温30℃の乾燥した室内で、実施例の調湿用品−1〜3および比較例の放湿用品−1〜3を15℃の水に5分間漬けたのち、表面の余分な水分を手でしごいて除去し、それぞれ、バイオリン、チェロ、コントラバスのFホールに配設し、それぞれのハードケース内に保管し、30℃の室内に保管した。ケース内には簡易湿度計を置いた。
1週間後にケースを開けてそれぞれの楽器の状態を観察した結果を表1に示す。
【0052】
表1から、本発明の調湿用品を使用した場合は、密閉した状態で弦楽器を保管しても、ひび割れなどを起こすことがなく安全に保管することができる。
また、吸放湿性のある吸水性樹脂を使用しているので、余分な水分が楽器に直接垂れることがなく、安全に保管することができる。
以上のことから、本発明の調湿用品は、弦楽器用の調湿用品として有用である。