【実施例】
【0009】
試験例1 市販スポーツドリンクA(飲用するシーン:入浴後)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章を与えて行う(文章想起評価))
(3)実際の場面(入浴後)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:スポーツドリンクA 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)59名、(2)59名、(3)54名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・次の場面のご自分をしっかりイメージしてください。
「ご自宅でお風呂から上がったところです。」
(3)被験者の自宅で、入浴後にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と文章想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差(p=0.000)がみられた(
図1)。
○文章想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図2)。
5)まとめ
スポーツドリンクA(通常評価:6.3点)においては、入浴後を想起させると通常評価時よりもおいしさが高く感じられていた。また、想起時には実際の入浴後と同様の結果になっていた。
【0010】
試験例2 市販スポーツドリンクB(飲用するシーン:入浴後)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章を与えて行う(文章想起評価))
(3)実際の場面(入浴後)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:スポーツドリンクB 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)59名、(2)39名、(3)39名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・次の場面のご自分をしっかりイメージしてください。
「ご自宅でお風呂から上がったところです。」
(3)被験者の自宅で、入浴後にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と文章想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差(p=0.027)がみられた(
図3)。
○文章想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図4)。
5)まとめ
スポーツドリンクB(通常評価:6.9点)においては、入浴後を想起させると通常評価時よりもおいしさが高く感じられていた。また、想起時には実際の入浴後と同様の結果になっていた。
【0011】
試験例3 市販スポーツドリンクC(飲用するシーン:入浴後)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章を与えて行う(文章想起評価))
(3)実際の場面(入浴後)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:スポーツドリンクC 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)59名、(2)38名、(3)38名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・次の場面のご自分をしっかりイメージしてください。
「ご自宅でお風呂から上がったところです。」
(3)被験者の自宅で、入浴後にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と文章想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図5)。
○文章想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図6)。
5)まとめ
スポーツドリンクC(通常評価:6.9点)においては、入浴後を想起させても通常評価時と変わらなかった。ただし、実際の入浴後と同様の結果になっていた。
【0012】
試験例4 市販止渇系乳性飲料A(飲用するシーン:運動後)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章、写真及び質問を与えて行う(写真等想起評価))
(3)実際の場面(運動後)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:止渇系乳性飲料A 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)63名、(2)43名、(3)26名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章、写真及び質問により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・よく晴れて暑い日に、野原で激しい運動をした後をイメージしてください。
・次に表示される写真に写っている人物になったとイメージしてください。
<写真>
図7参照。
<質問>
・どんな運動をしていましたか?
・辺りはどんな匂いがしていますか?
・体が火照っているのを感じますか?
・どれくらい汗を書きましたか?
(3)被験者の自宅で、運動後にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と写真等想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差(p=0.000)がみられた(
図8)。
○写真等想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図9)。
5)まとめ
止渇系乳性飲料A(通常評価:6.3点)においては、運動後を想起させると通常評価時よりもおいしさが高く感じられていた。また、想起時には実際の運動後と同様の結果になっていた。
【0013】
試験例5 市販止渇系乳性飲料A(飲用するシーン:仕事中)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章、写真及び質問を与えて行う(写真等想起評価))
(3)実際の場面(仕事中)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:止渇系乳性飲料A 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)63名、(2)43名、(3)38名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章、写真及び質問により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・平日の夕方に、仕事が一段落ついた時をイメージしてください。
・次に表示される写真に写っている人物になったとイメージしてください。
<写真>
図10参照。
<質問>
・どんな仕事をしていましたか?
・いつからその仕事をしていますか?
・目や肩は凝っていませんか?
・周囲はどんな音がしていますか?
(3)執務室内(社内)で、PC作業の合間に(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と写真等想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、差がつく傾向(p=0.094)がみられた(
図11)。
○写真等想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図12)。
5)まとめ
止渇系乳性飲料A(通常評価:6.1点)においては、仕事中を想起させると通常評価時よりもおいしさが高く感じられていた。また、想起時には実際の仕事中と同様の結果になっていた。
【0014】
試験例6 市販止渇系乳性飲料A(飲用するシーン:帰宅後)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章、写真及び質問を与えて行う(写真等想起評価))
(3)実際の場面(帰宅後)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:止渇系乳性飲料A 500mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。その際、シュリンクラベル、キャップは除去した。
2)被験者:(1)63名、(2)46名、(3)40名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章、写真及び質問により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・「仕事で疲れて帰ってきた後に、自宅でくつろいでいる時をイメージしてください。
・次に表示される写真に写っている人物になったとイメージしてください。
<写真>
図13参照。
<質問>
・どんな仕事をしていましたか?
・帰宅してからどれくらい経ちましたか?
・ご自宅はどんな香りがしていますか?
・どんな映像(番組)を見ていますか?
(3)被験者の自宅で、帰宅後にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と写真等想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図14)。
○写真等想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図15)。
5)まとめ
止渇系乳性飲料A(通常評価:5.9点)においては、帰宅後を想起させても通常の評価時と変わらなかった。ただし、実際の帰宅後と同様の結果になっていた。
【0015】
試験例7 市販柑橘系ホット果汁飲料A(飲用するシーン:冬の帰宅途中)
下記の3パターンについて官能評価を行った。
(1)ブース内での官能評価(飲食するシーンを被験者に想起させる手段を与えない(通常評価))
(2)ブース内での官能評価(飲用するシーンを被験者に想起させる文章を与えて行う(文章想起評価))
(3)実際の場面(冬の帰宅途中)での評価(実場面評価)
方法:
1)評価サンプル:柑橘系ホット果汁飲料A 280mlペットボトル((1)〜(3)で共通)
評価時はペットボトル1本をそのまま自由に飲用してもらった。
2)被験者:(1)24名、(2)24名、(3)24名
3)評価方法
(1)ブース内において、サンプルの「全体の風味」(おいしさ)を10点〜0点の11段階で評価してもらった。(「おいしい」を10点、「まずい」を0点、「どちらともいえない」を5点とした)
(2)ブース内において、飲用前に飲用シーンを文章により想起させた上で、(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
<文章>
・次の場面のご自分をしっかりイメージしてください。
「冬の寒い日に、仕事から帰宅している途中です。」
(3)被験者の帰宅途中にアンケート用紙を用いて(1)と同様の項目・尺度で評価してもらった。
4)解析・結果
解析には統計解析ソフト『SPSS statistics 21』を使用した。
○通常評価と文章想起評価の比較
→(1)と(2)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図16)。
○文章想起評価と実場面評価の比較
→(2)と(3)の両方に参加した被験者のデータを使って対応のあるt検定を行った結果、有意な差はみられなかった(
図17)。
5)まとめ
柑橘系ホット果汁飲料A(通常評価:8.0点)においては、帰宅途中を想起させても通常評価時と変わらなかった。ただし、想起時には実際の冬の帰宅途中と同様の結果になっていた。
【0016】
上記試験例1〜試験例7を行った結果、下記の知見を確認した。
(a)スポーツドリンク、止渇性飲料、柑橘系ホット果汁飲料において行った全ての試験例(試験例1〜7)において、文書等により飲用シーンをブース内で想起させた時の評価と実際の飲用シーンで行った評価とで、おいしさの得点は統計的に有意差はない、との結果となった。このことから、ブース内における評価時に、文書などにより飲用シーンを評価者に想起させることで実際の飲用シーンを、簡便あるいは擬似的に、シミュレーションできることが判明した。
(b)止渇系乳性飲料Aにおける、ブース内の評価において、画像等により運動後を評価者に想起させた場合と(試験例4)と仕事中を想起させた場合(試験例5)は、通常評価と比較しておいしさの得点が統計的に有意に高くなる又は統計的に高くなる傾向にあった。一方、止渇系乳性飲料Aにおける、ブース内評価において、画像等により、帰宅後を想起させた場合とブース内の通常評価は、統計的に有意差はなかった(試験例6)。このことから、運動後と仕事中に止渇系乳性飲料Aを飲むとよりおいしいと感じることが統計的に証明された。止渇系乳性飲料Aの商品広告や拡販用資料において、運動後や仕事中の飲用シーンを推奨することができる。
(c)通常評価の得点に着目すると、スポーツドリンクAや止渇系乳性飲料Aのようにおいしさの得点が6.5点以下の場合は、ブース内において、ある特定の飲用シーンを想起させると、通常評価と比較して、おいしさの得点に、統計的に意味がある数値変化が認められる場合がある。これに対して、柑橘系ホット飲料Aのようにおいしさの得点が8.0点と高くなると飲用シーンを想起させても、通常評価と統計的に有意差がない結果となった。また、スポーツドリンクBやスポーツドリンクCのようにおいしさの得点が6.9点程度では入浴後の飲用シーンを想起させた場合に、通常評価と比較して、統計的に有意差がある場合とない場合があった。したがって、おいしさの得点が、6.7以下好ましくは、6,6以下、より好ましくは、6.5以下の飲料の評価において、本願の評価方法および、広告方法等は有効と考えられる。
なお、本願において、「スポーツドリンク」とは、「最新・ソフトドリンクス(発行:平成15年9月30日、発行所:株式会社光琳、監修:社団法人 全国清涼飲料工業会)」P33記載の「2−7 スポーツドリンク」欄に記載されている飲料をいう。具体例としては、「BEVERRAGE GUIDE 飲料商品ガイド 2013(発行所:産経メデックス)」P74、P75、P76に列記されている各種市販品「スポーツドリンク」及び「イオン飲料」を含む概念である。
また、本願において、止渇性飲料とは、例えば、無糖飲料や炭酸飲料、乳性飲料などの止渇目的の飲料、及び乳性飲料のうち、特に低カロリー、ゼロカロリー、糖質ゼロ、糖類ゼロ、低糖、低糖等の特性を有する飲料である。