(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[基板と封止壁との密着性]
本発明者等は、本発明の各態様を創作するにあたり、基板と封止壁との密着性に関する検討を行った。これについて、
図17を用い説明する。
図17に示すように、表示パネルの端縁部においては、基板901と基板915との間が封止壁916で封止されている。なお、
図17においては、引き出し配線9033の端縁部9033aと、パッシベーション膜9031の端縁部9031aが封止壁916よりも基板901の端部まで延出された構成となっている。そして、表示パネルの狭額縁化に伴い、封止層911の端縁部911aが基板901と封止壁916との間に位置してしまうことが生じ得る。
【0018】
このように基板901と封止壁916との間にSiNあるいはSiONからなる封止層911の端縁部911aが介挿された場合には、基板901と封止壁916との間の密着性が低下してしまう。特に、矢印Dで指し示すように、基板901と封止壁916との間に封止層911の縁端911bが位置することとなった場合には、基板901の表面901aから封止壁916が剥がれやすくなってしまう。
【0019】
なお、
図17では、封止層911の端縁部911aが基板901と封止壁916との間に介挿された状態について図示しているが、必ずしも封止層911が介挿されていなくても基板901と封止壁916との密着性向上を図ることが求められていることは同様である。
また、Z軸方向上方に配置される基板915の表面915aと封止壁916との密着性に関しても高い方が望ましいのであるが、これについては封止層911の形成により有機膜および酸化半導体層の保護が図れることから、必ずしも必要とはならない。
【0020】
[本発明の各態様]
本発明の一態様に係る有機発光デバイスは、第1および第2の基板と、第1機能部と、第2機能部と、封止壁と、第1被覆膜と、第2被覆部と、中間膜と、を備える。
第1および第2の基板は、互いに間隔をあけて対向配置されている。
第1機能部は、第1の基板と第2の基板との間の間隙に配置され、第1および第2の電極と、当該第1の電極と第2の電極との間に介挿された有機発光層とを有する。
【0021】
第2機能部は、第1の基板と第1機能部との間に配置され、少なくとも酸化物半導体層を構成中に有する。
封止壁は、第1の基板と第2の基板との間の間隙であって、平面視において、第1機能部および第2機能部が配置された領域を囲繞し、且つ、第1機能部および第2機能部が配置された領域を封止する。
【0022】
第1被覆膜は、第1の基板と第2の基板との間の間隙であって、第1機能部および第2機能部に対し、第2の基板側を覆う状態で配置され、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む。
第2被覆膜は、第1被覆膜と第2機能部における酸化物半導体層との間であって、第2機能部における酸化物半導体層を覆う状態で配置され、酸化アルミニウムからなる。
【0023】
中間膜は、第1の基板と封止壁との間に介挿され、酸化アルミニウムからなる。
上記態様に係る有機発光デバイスでは、第1の基板と第2の基板との間に間隙であって、第1機能部および第2機能部に対し、第2の基板側を覆う状態で第1被覆膜が形成されている。第1被覆膜は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンから構成されているので、第1機能部および第2機能部への水分や酸素の侵入を効果的に抑制することができる。このため、第1機能部や第2機能部の各部における有機膜の保護という観点から優れている。
【0024】
また、上記態様に係る有機発光デバイスでは、第1被覆膜と酸化物半導体層との間に、酸化物半導体層を覆う状態で第2被覆膜が形成されている。第2被覆膜は、酸化アルミニウムから構成されているので、第2機能部に含まれる酸化物半導体層への水素の侵入を効果的に抑制することができる。このため、第2機能部における酸化物半導体層の保護という観点から優れている。
【0025】
また、上記態様に係る有機発光デバイスでは、第1の基板と封止壁との間に中間膜が配置されている。中間膜は、酸化アルミニウムから構成されているので、第1の基板と封止壁との間の密着性を向上させることができる。このため、第1の基板と封止壁との間からの水分や酸素の侵入を効果的に抑制することができ、第1機能部や第2機能部の各部における有機膜の保護という観点から優れている。
【0026】
以上より、上記態様に係る有機発光デバイスは、構成中に含まれる酸化物半導体からなる層および有機膜の劣化が抑制され、長期にわたって優れた発光特性を有する。
本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第2被覆膜が第1被覆膜と接している。このように、第2被覆膜を第1被覆膜に接するように配置することにより、第1被覆膜からの水素脱ガスを、直下の第2被覆膜で抑制することができ、第2機能部における酸化物半導体層の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第2被覆膜と中間膜とが連続している。このように第2被覆膜と中間膜とが連続している構成を採用すれば中間膜を第2被覆膜とは別に形成する必要がなく、製造に係る工数を低減することができる。ただし、必ずしも第2被覆膜と中間膜とが連続した構成を採用する必要はなく、別構成とすることもできる。
【0028】
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記構成において、第1被覆膜における端縁部の少なくとも一部が封止壁下まで延設されており、当該封止壁下まで延設された第1被覆膜の端縁部が、中間膜と封止壁との間に配置されている。このように、SiNあるいはSiONからなる第1被覆膜が封止壁下まで延長されていても、第1被覆膜と基板との間に中間膜が介挿された形態を採るので、第1の基板と封止壁との高い密着性を確保することができる。よって、デバイスの狭額縁化をすすめる上で望ましい。
【0029】
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第2の基板と第1被覆膜との間であって、第1被覆膜の少なくとも一部を覆う状態で配置され、酸化アルミニウムからなる第3被覆膜をさらに備える。このように、第1被覆膜の上面の少なくとも一部を覆うように第3被覆膜を配置することとすれば、第1被覆膜の表面に凹凸が存在しても、その平坦化が図られる。よって、出射される光の不所望の屈折を抑制することができ、光取出し効率の向上を図ることができる。
【0030】
また、第1被覆膜の上に第3被覆膜を配置することにより、外部などからの水素の侵入を更に効果的に抑制することができる。よって、第2機能部における酸化物半導体層の劣化を抑制することができる。
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第3被覆膜における端縁部の少なくとも一部が前記封止壁下まで延設されており、当該封止壁下まで延設された第3被覆膜における端縁部が、中間膜と封止壁との間に配置されている。このように封止壁下まで延設された第3被覆膜の端縁部が中間膜と封止壁との間に配置されるようにすることで、第1の基板と封止壁との間における中間膜と第3被覆膜との合計膜厚を確保することが容易となる。よって、第1の基板と封止壁との密着性を更に確実に保持することができ、当該境界からの水分や酸素の侵入をより確実に抑制することができる。
【0031】
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第1被覆膜の縁端が、中間膜と第3被覆膜との間に挟まれた状態で配置されている。SiNあるいはSiONからなる第1被覆膜の縁端が第1の基板と封止壁との間に位置する場合、第1の基板と封止壁との密着性が低下しやすく、剥離し易い。これに対して、当該第1被覆膜の縁端を中間膜と第3被覆膜で挟み込むことにより、第1の基板と封止壁との剥離を抑制することができる。よって、第1の基板と封止壁との密着性を高め、当該境界からの水分や酸素の侵入を確実に抑制することができる。
【0032】
また、本発明の別態様に係る有機発光デバイスでは、上記態様において、第2被覆膜が原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法を用い形成された膜である。このように、第2被覆膜をALD法を用い形成された膜とすることにより、水素の透過を効果的に抑制することができる。よって、第1被覆膜から水素が脱離した場合にも、第2機能部における酸化物半導体層への侵入を抑制し、酸化物半導体層の劣化を確実に抑制することができる。
【0033】
本発明の一態様に係る有機表示装置は、表示パネルと、表示パネルに接続された制御駆動回路と、
を備える。そして、表示パネルとして、上記のうちの何れかの態様に係るデバイス構造が採用されている。これより、本発明の一態様に係る有機表示装置においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0034】
[実施の形態]
以下では、図面を参酌しながら実施の形態に係る有機EL表示装置1の構成について説明する。
1.概略構成
本実施の形態に係る有機EL表示装置1の概略構成について、
図1および
図2を用い説明する。
【0035】
図1に示すように、有機表示装置としての本実施の形態に係る有機EL表示装置1は、表示パネル10と、これに接続された駆動制御回路部20とを備えている。表示パネル10は、有機表示デバイスの一種であって、有機材料の電界発光現象を利用した有機ELパネルである。
図2に示すように、表示パネル10では、平面視において、表示領域10aと、当該領域を囲繞する囲繞領域10bとを有する。図示を省略しているが、表示領域10aにおいては、複数のサブピクセルがX軸方向およびY軸方向で構成される面方向に二次元配置されている。本実施の形態では、一例として、隣接する赤色(R)サブピクセルと、緑色(G)サブピクセルと、青色(B)サブピクセルの3つのサブピクセルの組み合わせを以って1のピクセル(画素部)を構成している。
【0036】
図1に戻って、有機EL表示装置1における駆動・制御回路部20は、4つの駆動回路21〜24と1つの制御回路25とから構成されている。なお、有機EL表示装置1における表示パネル10と駆動・制御回路部20との配置関係については、
図1に示す形態に限定されない。
また、ピクセル(画素部)の構成については、上述のような3つのサブピクセルの組み合わせからなる形態に限定されず、4つ以上のサブピクセルの組み合わせを以って1つのピクセルが構成されることとしてもよい。
【0037】
2.表示領域10aでの構成
表示パネル10における表示領域10aでの構成について、
図3を用い説明する。
図3に示すように、表示パネル10は、TFT基板100をベースにして、その上に複数の層が積層された構成を有する。
図3では、表示パネル10における表示領域10aの構成の内、一のサブピクセル100部分だけを抜き出して模式的に図示している。
【0038】
図3に示すように、表示パネル10における各サブピクセル100では、基板101の主面上に、TFT層102が形成されている。本実施の形態においては、TFT層102として、各サブピクセル100に2トランジスタ素子部を備える構成を一例としている。
TFT層102は、ゲート電極1021,1022、ゲート絶縁膜1023、チャネル層1024,1025、保護膜1026、ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029、パッシベーション膜1031、および接続用電極1032を有する。ゲート電極1021,1022は、基板101の主面上に配置されており、X軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。ゲート絶縁膜1023は、ゲート電極1021,1022を被覆するように形成されており、チャネル層1024,1025は、ゲート絶縁膜1023上において各ゲート電極1021,1022に対応して配置されている。保護膜1026は、チャネル層1024,1025およびゲート絶縁膜1023を被覆するように形成されており、ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029は、保護膜1026上における各チャネル層1024,1025に対応して配置されている。
【0039】
ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029は、対応するチャネル層1024,1025に対して一部が接触しており、ドレイン電極1028はゲート電極1022に接続されている。ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029は、パッシベーション膜1031により被覆されており、ソース電極1030はパッシベーション膜1031上に露出する接続用電極1032に接続されている。
【0040】
TFT層102上には、絶縁層103が積層形成されており、その上にアノード104およびホール注入層105が形成されている。絶縁層103には、TFT層102における接続用電極1032の上方に相当する箇所にコンタクト孔が開けられており、当該コンタクト孔を介してアノード104とTFT層102における接続用電極1032とが接続されている。
【0041】
なお、本実施の形態では、一例として、ホール注入層105についてもサブピクセル100単位で区切られた構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、隣接するサブピクセル100で連続した形態を採用することもできる。
次に、絶縁層103の露出面およびホール注入層105の一部を覆うように、バンク106が形成されている。バンク106は、紙面に垂直な方向に各々延伸しており、隣り合うバンク106同士の間の溝部(凹部)を規定する。
【0042】
なお、本実施の形態では、一例として、ラインバンク構造を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、ピクセルバンク構造を採用することもできる。
図3に示すように、隣り合う2条のバンク106により規定された溝部内には、Z軸方向下側から順に、ホール輸送層107、有機発光層108、電子輸送層109が積層形成されている。電子輸送層109上およびバンク106の頂面上を覆うように、Z軸方向下側から順に、カソード110および封止層111が積層形成されている。
【0043】
本実施の形態における封止層111は、窒化シリコンからなる膜(以下では、「SiN膜」と記載する。)1112の上下が酸化アルミニウムからなる膜(以下では、「AlOx膜」と記載する。)1111,1113で挟まれた構造を有する。ここで、SiN膜1112は、化学気相堆積(CVD;Chemical Vapor Deposition)法を用い形成されており、AlOx膜1111,1113は、原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法を用い形成されている。
【0044】
なお、本実施の形態では、表示領域10aにおける封止層111の各構成膜1111〜1113の膜厚を、一例として次のように設定した。
AlOx膜1111の膜厚t
1111;10nm〜100nm
SiN膜1112の膜厚t
1112;100nm〜2000nm
AlOx膜1113の膜厚t
1113;10nm〜100nm
また、「AlOx」の一例としては、例えば、Al
2O
3を採用することができるが、AlとOの組成比率については、これに限定されるものではない。また、膜中における領域により組成比が異なっていてもよい。本明細書で「AlOx」と記載している場合には、同様である。
【0045】
封止層111上には、樹脂層112を介してカラーフィルタパネルが配置されている。カラーフィルタパネルは、基板115のZ軸方向下側主面にカラーフィルタ層113およびブラックマトリクス層114が形成されてなるパネルである。そして、封止層111と樹脂層112との間、および樹脂層112とカラーフィルタ層113およびブラックマトリクス層114との間は、隙間なく密に接している。
【0046】
本実施の形態に係る表示パネル10は、トップエミッション型の表示パネルであり、Z軸方向上方に向けて光が取り出される。
なお、表示パネル10においては、表示領域10aにおける他のサブピクセル100についても同様の構成を有する。
3.囲繞領域10bの構成
表示パネル10における囲繞領域10bでの構成について、
図4および
図5を用い説明する。なお、
図4と
図5との差異点は、引き出し配線の配されているか否かという点である。
【0047】
図4に示すように、囲繞領域10bでは、その一部において、TFT層102におけるゲート電極1021、ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029の各々に接続された引き出し配線1033の端縁部1033aが、基板101の端縁部まで延設されている。引き出し配線1033上には、パッシベーション膜1031が被覆されており、パッシベーション膜1031の端縁部1031aについても基板101の端縁部まで延設されている。
【0048】
なお、基板101の端縁部において、引き出し配線1033およびパッシベーション膜1031は、基板101の主面101aに沿った状態となっている。
囲繞領域10bにおいては、基板101と基板115との間に封止壁116が設けられており、封止壁116は、基板115に対してZ軸方向下側の主面115aに密に接している。封止壁116により囲繞され密閉領域となった基板101,105間では、封止層111と基板115との間の領域に樹脂層112が形成されている。
【0049】
なお、囲繞領域10bにおいては、封止壁116で囲繞された基板101,115間の領域について、ゲッター剤を含む別部材を配置することもできる。
図4の矢印Aで指し示すように、囲繞慮域10bにおいては、封止層111の各膜1111〜1113の端縁部1111a〜1113aが封止壁116と基板101との間に介挿された状態となっています。このうち、SiN膜1112の端縁部1112aの縁端1112bは、封止壁116のX軸幅方向の中程に位置し、Z軸方向における上下がAlOx膜1111とAlOx膜1113とで挟み込まれた状態となっている。
【0050】
同様に、
図6の矢印Bで指し示すように、囲繞領域10bにおける引き出し配線1033が存在しない部分では、封止層111を構成する3つの膜1111〜1113の各端縁部1111a〜1113aの一部が封止壁116と基板101との間に挟み込まれた状態となっている。そして、当該部分においても、SiN膜1112の端縁部1112aの縁端1112bは、封止壁116のX軸幅方向の中程に位置し、Z軸方向における上下がAlOx膜1111とAlOx膜1113とで挟み込まれた状態となっている。
【0051】
なお、本実施の形態では、囲繞領域10bにおける封止層111の各構成膜1111〜1113(端縁部1111a〜1113a)の膜厚を、一例として次のように設定した。
AlOx膜1111の膜厚t
1111a;10nm〜100nm
SiN膜1112の膜厚t
1112a;100nm〜2000nm
AlOx膜1113の膜厚t
1113a;10nm〜100nm
4.表示パネル10の各構成材料
(1)基板101
基板101は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を用い形成されている。
【0052】
プラスチック基板としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0053】
(2)TFT層102
(2−1)ゲート電極1021,1022
ゲート電極1021,1022としては、例えば、銅(Cu)とモリブデン(Mo)との積層体を採用することができる。また、Cu単層とすることやCuとタングステン(W)との積層体を採用することもできる。さらに、それら以外にも、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)などの金属、あるいはそれらの合金、あるいは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの導電性金属酸化物若しくは酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)などの導電性金属復号酸化物、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子若しくはそれらに、塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸、六フッ化リン、五フッ化ヒ素、塩化鉄などのルイス酸、要素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを添加したもの、若しくは、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料などを用いることができる。
【0054】
さらに、金属微粒子とグラファイトのような導電性粒子を含むポリマー混合物を用いてもよい。これらは、一種または二種以上を組み合わせて用いることもできる。
(2−2)ゲート絶縁膜1023
ゲート絶縁膜1023としては、例えば、酸化シリコン(SiO)と窒化シリコン(SiN)との積層体を採用することができる。ただし、ゲート絶縁膜1023の構成については、これに限定を受けるものではなく、電気絶縁性を有する材料であれば、他に公知となっている有機材料や無機材料などを用いることもできる。
【0055】
ゲート絶縁膜1023を構成するのに採用することが可能な有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂などを採用することもできる。
また、ゲート絶縁膜1023を構成するのに採用することが可能な無機材料としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの金属酸化物や、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化セリウム、窒化亜鉛、窒化コバルト、窒化チタン、窒化タンタルなどの金属窒化物や、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸塩などの金属復号酸化物などが挙げられる。これらは、一種または二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0056】
さらに、上記のような材料を用い、表面処理剤(ODTS OTS HMDS βPTS)などでその表面を処理したものも含まれる。
(2−3)チャネル層1024,1025
チャネル層1024,1025としては、例えば、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)からなる層を採用することができる。チャネル層1024,1025の構成材料としては、これ以外にも、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種を含む酸化物半導体を採用することができる。
【0057】
なお、チャネル層1024とチャネル層1025とで構成材料を互いに異ならせることや、互いの層厚を異ならせることなども可能である。
(2−4)保護膜1026
保護膜1026としては、例えば、酸化シリコン(SiO)からなる膜を採用することができる。保護膜1026の構成材料としては、これ以外にも、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、あるいは酸化アルミニウム(AlOx)などを採用することもできる。
【0058】
さらに、上記のような材料を用いた層を複数積層することで保護膜1026を構成することなどもできる。
(2−5)ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029
ソース電極1027,1030およびドレイン電極1028,1029としては、例えば、銅マンガン(CuMn)と銅(Cu)とモリブデン(Mo)の積層体を採用することができる。
【0059】
(2−6)パッシベーション膜1031
パッシベーション膜1031としては、例えば、酸化シリコン(SiO)からなる膜を採用することができる。
なお、パッシベーション膜1031の構成材料としては、これ以外にも、窒化シリコン(SiN)や酸窒化シリコン(SiON)などを採用することができる。また、パッシベーション膜1031としては、上記のような材料からなる単層構造だけでなく、酸化シリコン(SiO)と酸化アルミニウム(AlOx)と窒化シリコン(SiN)の積層体などを用いることもできる。
【0060】
(2−7)接続用電極1032
接続用電極1032としては、例えば、銅(Cu)と酸化インジウムスズ(ITO)との積層体を用いることができる。
なお、接続用電極1032の構成はこれに限定されるものではなく、導電性を有する材料から適宜選択することが可能である。
【0061】
(3)絶縁層103
絶縁層103は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。ここで、絶縁層103は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。
また、絶縁層103は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理等が施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形や変質などを生じない高い耐性を有する材料を用い形成されることが望ましい。
【0062】
(4)アノード104
アノード104としては、例えば、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料からなる層を用いることができる。トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
なお、アノード104については、上記のような金属材料からなる単層構造だけではなく、金属層と透明導電層との積層体を採用することもできる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0063】
(5)ホール注入層105
ホール注入層105は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。
【0064】
なお、ホール注入層105の構成材料として金属酸化物を用いる場合には、PEDOTなどの導電性ポリマー材料を用いる場合に比べて、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層107に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
ここで、ホール注入層105を遷移金属酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WO
X)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能を有するという観点から望ましい。
【0065】
(6)バンク106
バンク106としては、例えば、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク106の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク106は、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0066】
さらに、バンク106の構造については、
図3に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
(7)ホール輸送層107
ホール輸送層107としては、例えば、親水基を備えない高分子化合物を用い形成された層を用いることができる。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
【0067】
(8)有機発光層108
有機発光層108は、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層107の形成に用いる材料としては、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0068】
(9)電子輸送層109
電子輸送層109は、カソード110から注入された電子を有機発光層108へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
(10)カソード110
カソード110は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0069】
(11)封止層111
封止層111は、有機発光層106などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有する。そして、封止層111を構成する各膜1111〜1113は、次のような材料から構成されている。
(11−1)AlOx膜1111,1113
AlOx膜1111,1113は、ともに酸化アルミニウム(AlOx)からなる。そして、形成方法については、詳述を省略するが、本実施の形態では、少なくともSiN膜1112よりもZ軸方向下側に配置されるAlOx膜1111が原子層堆積(ALD)法を用い形成されている。
【0070】
(11−2)SiN膜1112
SiN膜1112は、本実施の形態では窒化シリコン(SiN)を用い形成されている。封止層111の構成中における当該位置に形成する膜としては、SiN以外にも、酸窒化シリコン(SiON)を用い形成することも可能である。
なお、トップエミッション型の表示パネル10においては、封止層111は、全体として光透過性を有することが必要となる。
【0071】
(12)樹脂層112
樹脂層112としては、例えば、エポキシ系樹脂を用い形成された層とすることができる。
なお、樹脂層112の構成材料としては、上記以外に、例えば、シリコーン系樹脂を用いることもできる。また、樹脂層112中に、水分や酸素を吸着するためのゲッター剤を混合しておくこともできる。
【0072】
(13)カラーフィルタ層113
カラーフィルタ層113としては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の波長域の可視光を選択的に透過する、公知の材料から構成される。各カラーフィルタ層113は、例えば、アクリル系樹脂をベースに形成されている。
(14)ブラックマトリクス層114
ブラックマトリクス層114としては、例えば、光吸収性および遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂から形成されている。具体的な紫外線硬化樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0073】
(15)基板115
カラーフィルタパネルのベースとなる基板115は、基板101と同様に、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板などや、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板などを用い形成されている。
(16)封止壁116
封止壁116としては、基板101,115との密着性(TFT層102におけるパッシベーション膜1031との密着性を含む)、および基板101と基板115との間の間隙を維持し、且つ、外圧がかかっても封止構造を維持することができる剛性を考慮して選択された材料を用い形成することができる。封止壁116の構成材料としては、例えば、溶着可能なガラスフリットや、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0074】
5.表示領域10aにおける有機膜および酸化物半導体層の劣化抑制
本実施の形態における表示領域10aにおける有機膜および酸化物半導体層の劣化抑制のメカニズムについて、
図6を用い説明する。
図6(a)は、本実施の形態に係る表示パネル10の表示領域10aの構成を模式的に表した図であり、
図6(b)は、比較例として、上記従来技術に係る表示パネルの表示領域の構成を模式的に表した図である。
【0075】
(1)有機発光層108,908などの有機膜の劣化抑制
図6(b)に示すように、比較例に係る表示パネルの構成では、SiNからなる封止層911を採用している。このため、パネル上方から侵入しようとする水分や酸素について、ある程度は遮断する機能を有するが、十分ではない。このため、比較例に係る表示パネルでは、その下方に設けられた有機発光層908などの有機膜の劣化を招いてしまうことがある。
【0076】
一方、
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、封止層111がSiN膜1112のZ軸方向上下がAlOx膜1111,1113で挟まれた3層構造が採用されている。このため、
図6(b)に示す比較例に係る表示パネルよりも水分や酸素が有機発光層108などの有機膜が形成された側へ侵入するのを効果的に抑制することができる。また、水分や酸素の侵入抑制は、カソードの劣化抑制という効果も得ることができる。
【0077】
(2)TFT層102,902における酸化物半導体(IGZO)層の劣化抑制
上述のように、SiNからなり、CVD法を用い形成された封止層911については、水素が放出される。このため、
図6(b)に示すように、封止層(SiN膜)911から放出された水素がTFT層902側へも侵入して行き、TFT層902におけるチャネル層(酸化物半導体層)を劣化させることになる。
【0078】
一方、
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、封止層111において、SiN膜1112のZ軸方向下側、言い換えるとSiN膜1112とTFT層102との間にAlOx膜1111が設けられている。このため、SiN膜1112から水素が放出された場合にも、放出された水素はAlOx膜1111で遮断され、TFT層102におけるチャネル層(酸化物半導体層)への侵入を抑制できる。よって、本実施の形態に係る表示パネル10では、SiN膜1112からの水素脱ガスによるTFT層102の酸化物半導体層(チャネル層1024,1025)の劣化を効果的に抑制することができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、AlOx膜1111がALD法を用いて形成されているので、当該AlOx膜1111からの水素脱ガスは発生し難くなっており、この点からより優れている。
(3)光取り出し
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、封止層111において、SiN膜1112のZ軸方向上側にもAlOx膜1113が設けられている。このAlOx膜1113の形成により、SiN膜1112のZ軸方向上側表面の凹凸が埋め込まれることになり、光の取り出し効率を高くするという観点から優れている。
【0080】
6.酸化物半導体層の劣化抑制
本実施の形態に係る表示パネル10での酸化物半導体層(チャネル層1024,1025)の劣化抑制効果について確認を行った。その結果について、
図7から
図9を用い説明する。
(1)確認に用いたサンプル
確認には、封止層の構造を変更し、その他の構成は同一とした表示パネルのサンプルを4種類(サンプル1〜4)作成し用いた。
【0081】
(1−1)サンプル1
図7(a)に示すように、サンプル1に係るパネルでは、封止層111がZ軸方向下側(EL素子部およびTFT層側)から順に、AlOx膜1111、SiN膜1112、AlOx膜1113が積層された構造を採用している。この封止層111の構造については、上記実施の形態に係る表示パネル10と同様の構造である。
【0082】
(1−2)サンプル2
図7(b)に示すように、サンプル2に係るパネルでは、封止層121がZ軸方向下側(EL素子部およびTFT層側)から順に、AlOx膜1211、SiN膜1212が積層された構造を採用している。即ち、サンプル1の封止層111に対して、Z軸方向上側のAlOx膜1113を省略した構造となっている。
【0083】
なお、AlOx膜1211の膜厚はサンプル1のAlOx膜1111の膜厚と同一とし、SiN膜1212の膜厚はサンプル1のSiN膜1112の膜厚と同一としている。
(1−3)サンプル3
図7(c)に示すように、サンプル3に係るパネルでは、AlOx膜単層の封止層131を採用している。封止層131の膜厚については、サンプル1のAlOx膜1111の膜厚と同一としている。
【0084】
(1−4)サンプル4
図7(d)に示すように、サンプル4に係るパネルでは、SiN膜単層の封止層911を採用している。この封止層911の構造については、上記従来技術に係る表示パネルでの封止層構造と同一である(
図16を参照)。
なお、封止層911の膜厚については、サンプル1のSiN膜1112の膜厚と同一としている。
【0085】
(2)脱離水素量評価結果
上記サンプル1〜4について、TFT層に侵入した脱離水素量を測定し、その結果を
図8に示す。脱離水素量の測定には、昇温脱離ガス分光(TDS;Thermal Deposition Spectrometry)法を用いた。
図8に示すように、サンプル4の脱離水素量は、温度が90℃を超えたあたりから急激に増加している。
【0086】
一方、サンプル1〜3の脱離水素量は、温度を90℃以上に上昇させていったときにも急激な増加は見られない。
サンプル1〜3の脱離水素量について更に詳細に見ると、封止層の構成中にSiN膜を含まないサンプル3が最も低くなっており、温度を上昇させていったときにも殆ど変化は見られなかった。これは、サンプル1,2,4における脱離水素量が、SiN膜からの脱離水素の影響を受けていることを示している。
【0087】
(3)TFTにおける閾値電圧のシフト
上記サンプル1とサンプル4について、初期のTFTの閾値電圧と、80℃の環境下で16時間保管を行った後でのTFTの閾値電圧を測定した。その結果を
図9に示す。
図9(a)に示すように、サンプル4のパネルでは、初期のTFTの閾値電圧に対して、上記条件下での保管後のTFTの閾値電圧は、約2〜3(V)シフトしている。
【0088】
一方、
図9(b)に示すように、サンプル1のパネルでは、初期のTFTの閾値電圧から、上記条件下での保管後のTFTの閾値電圧のシフトは殆ど見られなかった。
(4)考察
図8および
図9のデータから、SiN膜とTFT層との間にAlOx膜が配置されていないサンプル4では、温度を90℃以上とした場合での脱離水素量が急激に増加し、また、TFTの閾値電圧のシフトも大きいことから、SiN膜(封止層911)からの脱離水素がTFT層における酸化物半導体層(チャネル層)に到達したものと考えることができる。
【0089】
一方、SiN膜1112,1212とTFT層との間にAlOx膜1111,1211を配置したサンプル1,2、および封止層131の構成中にSiN膜を含まないサンプル3では、90℃以上の温度域においても脱離水素量の増加はほとんど見られず、サンプル1では、TFTの閾値電圧のシフトも抑制されていた。
なお、サンプル3では、封止層131の構成中にSiN膜を含まないこととしたが、実際の発光デバイスの封止層においては、ある程度の厚みの封止層を設けることが必要であると考えられる。これは、外部からの水分や酸素などの侵入を抑制するという観点から、ある程度の厚みの封止層を形成することが必要であるためである。
【0090】
また、トップエミッション型のパネルなど、光の出射経路に設けられる封止層については、光がある程度屈折することも要件となるためである。このため、ALD法を用いて形成されるAlOx膜を余り厚くすることは、製造時におけるタクトタイムが長くなりすぎ、コスト上昇に繋がるため実際上は困難である。
以上より、外部からの水分や酸素の侵入を抑制するためのSiN膜を備え、且つ、SiN膜からの脱離水素がTFT層における酸化物半導体層に侵入するのを抑制するためのAlOx膜を備える封止層を設けることが優れた発光デバイスを構成する上で望ましい。
【0091】
7.封止壁と基板との密着性
囲繞領域10bにおける封止壁116と基板101との密着性に関し、2種類のサンプル11,14を作製して確認を行った。
(1)確認に用いたサンプル
確認に用いた2種類のサンプル11,14の概略構成について、
図10を用い説明する。
【0092】
(1−1)サンプル11
図10(a)に示すように、サンプル11は、上記実施の形態に係る表示パネル10の囲繞領域10bと同様に、封止壁116と基板101との間に、封止層111におけるAlOx膜1111,1113およびSiN膜1112の各端縁部1111a,1112a,1113aが介挿された構成となっている。基板101の主面101aとAlOx膜1111の端縁部1111aとは密着し、また、封止壁116は上面が基板115の主面115aに密着している。
【0093】
なお、封止層111における縁端1112bは、封止壁116の下方に位置しており、Z軸方向の上下がAlOx膜1111,1113で挟まれ被覆された構成となっている。
なお、サンプル11については、エポキシ系樹脂材料を用いて封止壁116を形成した。
(1−2)サンプル14
図10(b)に示すように、サンプル14は、囲繞慮域において、封止壁916と基板901との間に封止層911(SiN膜単層)における端縁部911aの縁端911bが位置し(矢印Cで指し示す部分)、基板901の主面901aと封止層911(SiN膜)との間にAlOx膜は介挿されていない。
【0094】
サンプル14における封止壁916の構成材料についても、サンプル11と同様に、エポキシ系樹脂材料を採用した。
なお、サンプル14においても、封止壁916と上方の基板915の主面915aとの間は密着している。
(2)密着性の確認結果
エポキシ系樹脂層と、ガラス基板、SiN膜、Al
2O
3膜との各剥離強度の測定結果を
図11に示す。
【0095】
図11に示すように、エポキシ系樹脂層とガラス基板との剥離強度は4.2MPaであり、エポキシ系樹脂層とAl
2O
3膜との剥離強度は4.3MPaであった。
一方、エポキシ系樹脂層とSiN膜との剥離強度は、2.3MPaであり、エポキシ系樹脂層とガラス基板との剥離強度、およびエポキシ系樹脂層とAl
2O
3膜との剥離強度に比べて、1.9〜2.0MPa低い値となった。
【0096】
以上の結果より、
図10(b)に示す構造を有するサンプル14では、封止壁916とSiN膜911とが直に接触している領域が存在し、当該部分での剥離強度の低下を招くと考えられる。
一方、
図10(a)に示す構造を有するサンプル11では、エポキシ系樹脂材料からなる封止壁116とSiN膜1112との間にAlOx膜1113を介挿させることにより、高い剥離強度を確保することができる。このため基板101と封止壁116との間の密着性を向上させることができ、この間からの水分や酸素の侵入を効果的に抑制することができ、TFT層におけるチャネル層やEL素子部における各有機膜の保護という観点から優れている。
【0097】
[変形例1]
変形例1に係る発光デバイスの構成について、
図12(a)を用い説明する。なお、
図12(a)では、変形例1に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
図12(a)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1411、SiN膜1412との2層が積層されてなる封止層141を備える。そして、封止層141における各膜1411,1412の端縁部1411a、1412aは、封止壁146と基板101との間に介挿されている。AlOx膜1411については、上記同様にALD法を用い形成されている。
【0098】
SiN膜1412の端縁部1412aの縁端1412bは、封止壁146の下方に位置している。
図12(a)に示すような構成を有する変形例1に係る発光デバイスにおいても、封止層141において、SiN膜1412のZ軸方向下方にAlOx膜1411を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。
【0099】
また、封止層141の構成中に、SiN膜1412を含んでいるので、製造時における封止層141の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層141の構成に含まれるSiN膜1412と基板101との間にAlOx膜1411が介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁146と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0100】
[変形例2]
変形例2に係る発光デバイスの構成について、
図12(b)を用い説明する。なお、
図12(b)では、
図12(a)と同様に、変形例2に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
図12(b)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1511、SiN膜1512との2層が積層されてなる封止層151を備える。このうち、AlOx膜1511の端縁部1511aが封止壁156と基板101との間に介挿されている。
【0101】
一方、封止層151の構成要素として含まれるSiN膜1512は、封止壁156の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
なお、本変形例においても、AlOx膜1511については、上記同様にALD法を用い形成されている。
図12(b)に示すような構成を有する変形例2に係る発光デバイスにおいても、封止層151において、SiN膜1512のZ軸方向下方にAlOx膜1511を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。
【0102】
また、封止層151の構成中に、SiN膜1512を含んでいるので、製造時における封止層151の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層151の構成に含まれるAlOx膜1511が封止壁156と基板101との間に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁156と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0103】
[変形例3]
変形例3に係る発光デバイスの構成について、
図13(a)を用い説明する。なお、
図13(a)では、
図12(a)、(b)と同様に、変形例3に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
図13(a)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1611、SiN膜1612との2層が積層されてなる封止層161を備える。そして、封止層161における各膜1611,1612の端縁部1611a、1612aは、封止壁166と基板101との間に介挿されている。AlOx膜1611については、上記同様にALD法を用い形成されている。
【0104】
本変形例では、SiN膜1612の縁端1612b、およびAlOx膜1611の縁端1611bは、ともに封止壁166の下方に位置している。
図13(a)に示すような構成を有する変形例3に係る発光デバイスにおいても、封止層161において、SiN膜1612のZ軸方向下方にAlOx膜1611を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。
【0105】
また、封止層161の構成中に、SiN膜1612を含んでいるので、製造時における封止層161の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層161の構成に含まれるSiN膜1612と基板101との間にAlOx膜1611が介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁166と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0106】
[変形例4]
変形例4に係る発光デバイスの構成について、
図13(b)を用い説明する。なお、
図13(b)では、
図12(a)、(b)および
図13(a)と同様に、変形例4に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
図13(b)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1711、SiN膜1712との2層が積層されてなる封止層171を備える。このうち、AlOx膜1711の端縁部1711aが封止壁176と基板101との間に介挿され、縁端1711bが封止壁176の下方に位置している。
【0107】
一方、封止層171の構成要素として含まれるSiN膜1712は、上記変形例2と同様に、封止壁176の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
なお、本変形例においても、AlOx膜1711については、上記同様にALD法を用い形成されている。
【0108】
図13(b)に示すような構成を有する変形例4に係る発光デバイスにおいても、封止層171において、SiN膜1712のZ軸方向下方にAlOx膜1711を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。
また、封止層171の構成中に、SiN膜1712を含んでいるので、製造時における封止層171の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
【0109】
また、囲繞領域において、封止層171の構成に含まれるAlOx膜1711が封止壁176と基板101との間に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁176と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
[変形例5]
変形例5に係る発光デバイスの構成について、
図14(a)を用い説明する。なお、
図14(a)では、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)と同様に、変形例5に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
【0110】
図14(a)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1811、SiN膜1812、AlOx膜1813の3層が積層されてなる封止層181を備える。このうち、AlOx膜1811の端縁部1811a、およびAlOx膜1813の端縁部1813aが封止壁186と基板101との間に介挿されている。
一方、封止層181の構成要素として含まれるSiN膜1812は、封止壁186の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
【0111】
なお、本変形例においても、AlOx膜1811,1813については、上記同様にALD法を用い形成されている。
図14(a)に示すような構成を有する変形例5に係る発光デバイスにおいても、封止層181において、SiN膜1812のZ軸方向下方にAlOx膜1811を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。また、SiN膜1812のZ軸方向上方にAlOx膜1813を配置しているので、SiN膜1812の表面の凹凸をある程度埋め込むことができる。
【0112】
また、封止層181の構成中に、SiN膜1812を含んでいるので、製造時における封止層181の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層181の構成に含まれるAlOx膜1811,1813が封止壁186と基板101との間に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁186と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0113】
なお、本変形例では、封止壁186と基板101との間に、2層のAlOx膜1811,1813が介挿されるので、AlOx膜1811,1813を薄膜とした場合にも、製造時におけるバラツキを考慮しても確実に封止壁186と基板101との間に介挿されることになり、製造上のマージンをとることができる。
[変形例6]
変形例6に係る発光デバイスの構成について、
図14(b)を用い説明する。なお、
図14(b)では、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)および
図14(a)と同様に、変形例6に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
【0114】
図14(b)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜1911、SiN膜1912、AlOx膜1913の3層が積層されてなる封止層191を備える。このうち、AlOx膜1911の端縁部1911a、およびAlOx膜1913の端縁部1913aが封止壁196と基板101との間に介挿されている。
一方、封止層191の構成要素として含まれるSiN膜1912は、封止壁196の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
【0115】
ここで、本変形例では、上記変形例5と異なり、AlOx膜1911,1913の各縁端1911b、1913bが、封止壁196の下方に位置している。
なお、本変形例においても、AlOx膜1911,1913については、上記同様にALD法を用い形成されている。
図14(b)に示すような構成を有する変形例6に係る発光デバイスにおいても、封止層191において、SiN膜1912のZ軸方向下方にAlOx膜1911を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。また、SiN膜1912のZ軸方向上方にAlOx膜1913を配置しているので、SiN膜1912の表面の凹凸をある程度埋め込むことができる。
【0116】
また、封止層191の構成中に、SiN膜1912を含んでいるので、製造時における封止層191の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層191の構成に含まれるAlOx膜1911,1913が封止壁196と基板101との間の一部領域に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁196と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0117】
なお、本変形例でも、封止壁196と基板101との間の一部領域に、2層のAlOx膜1911,1913が介挿されるので、AlOx膜1911,1913を薄膜とした場合にも、製造時におけるバラツキを考慮しても確実に封止壁196と基板101との間に介挿されることになり、製造上のマージンをとることができる。
[変形例7]
変形例7に係る発光デバイスの構成について、
図15(a)を用い説明する。なお、
図15(a)では、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)および
図14(a)、(b)と同様に、変形例7に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
【0118】
図15(a)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜2011、SiN膜2012、AlOx膜2013の3層が積層されてなる封止層201を備える。このうち、AlOx膜2011の端縁部2011a、およびAlOx膜2013の端縁部2013aが封止壁206と基板101との間に介挿されている。
一方、封止層201の構成要素として含まれるSiN膜2012は、封止壁206の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
【0119】
ここで、本変形例では、上記変形例5と異なり、AlOx膜2013の縁端2013bが、封止壁206の下方に位置している。AlOx膜2011の縁端については、上記変形例5と同様に、封止壁206よりもX軸方向左側に延出された状態となっている。
なお、本変形例においても、AlOx膜2011,2013については、上記同様にALD法を用い形成されている。
【0120】
図15(a)に示すような構成を有する変形例7に係る発光デバイスにおいても、封止層201において、SiN膜2012のZ軸方向下方にAlOx膜2011を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。また、SiN膜2012のZ軸方向上方にAlOx膜2013を配置しているので、SiN膜2012の表面の凹凸をある程度埋め込むことができる。
【0121】
また、封止層201の構成中に、SiN膜2012を含んでいるので、製造時における封止層201の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層201の構成に含まれるAlOx膜2011が封止壁206と基板101との間に介挿され、AlOx膜2013が封止壁206と基板101との間の一部領域に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁206と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0122】
なお、本変形例でも、封止壁206と基板101との間の一部領域において、2層のAlOx膜2011,2013が介挿されるので、AlOx膜2011,2013を薄膜とした場合にも、製造時におけるバラツキを考慮しても確実に封止壁206と基板101との間に介挿されることになり、製造上のマージンをとることができる。
[変形例8]
変形例8に係る発光デバイスの構成について、
図15(b)を用い説明する。なお、
図15(b)では、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)および
図14(a)、(b)および
図15(a)と同様に、変形例8に係る発光デバイスの構成の内、囲繞領域だけを抽出して模式的に図示している。
【0123】
図15(b)に示すように、本変形例に係る発光デバイスでは、Z軸方向下側からAlOx膜2111、SiN膜2112、AlOx膜2113の3層が積層されてなる封止層211を備える。このうち、AlOx膜2111の端縁部2111aが封止壁216と基板101との間に介挿されている。
一方、封止層211の構成要素として含まれるSiN膜2112およびAlOx膜2113は、封止壁216の下方には回り込んでおらず、表示領域側の位置に縁端が位置している。
【0124】
なお、本変形例においても、AlOx膜2111,2113については、上記同様にALD法を用い形成されている。
図15(b)に示すような構成を有する変形例8に係る発光デバイスにおいても、封止層211において、SiN膜2112のZ軸方向下方にAlOx膜2111を配置しているので、EL素子部およびTFT層の劣化抑制という効果を上記同様に奏することができる。また、SiN膜2112のZ軸方向上方にAlOx膜2113を配置しているので、SiN膜2112の表面の凹凸をある程度埋め込むことができる。
【0125】
また、封止層211の構成中に、SiN膜2112を含んでいるので、製造時における封止層211の形成に係るタクトタイムの長時間化を抑制しながら、ある程度の膜厚を確保することができ、外部からの水分や酸素の侵入を抑制しながら、高い光学性能を有する。
また、囲繞領域において、封止層211の構成に含まれるAlOx膜2111が封止壁216と基板101との間の一部領域に介挿されているので、高い密着性を有する。よって、封止壁216と基板101との間からの水分や酸素の侵入も効果的に抑制することができる。これについては、上記実施の形態の表示パネル10と同様である。
【0126】
[その他の事項]
上記実施の形態および変形例1〜8では、封止層111,141,151,161,171,181,191,201,211の構成中に、SiN膜1112,1412,1512,1612,1712,1812,1912,2012,2112が含まれることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、SiN膜の代わりに酸窒化シリコン(SiON)からなる膜を含むこともできる。この場合においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0127】
また、封止層に含まれるAlOx膜の数を、上記実施の形態および変形例1〜8では、1層または2層としたが、3層以上とすることもできる。少なくともSiN膜よりもEL素子部およびTFT層の側にAlOx膜が配置されていればよい。
また、上記実施の形態および変形例1〜8では、封止層111,141,151,161,171,181,191,201,211において、SiN膜1112,1412,1512,1612,1712,1812,1912,2012,2112に接した状態でAlOx膜1111,1411,1511,1611,1711,1811,1911,2011,2111を設けることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、SiN膜の下方において、別の層を介してAlOx膜が配置された構成を採用することもできる。この場合にも、上記同様の効果を得ることができる。
【0128】
また、上記実施の形態および変形例1〜8では、封止層111,141,151,161,171,181,191,201,211におけるAlOx膜1111,1113,1411,1511,1611,1711,1811,1813,1911,1913,2011,2013,2111,2113が囲繞領域10bまで延設されている構成としたが、必ずしも表示領域10aにおけるAlOx膜と囲繞領域10bにおけるAlOx膜とが連続している必要はない。囲繞領域10bにおけるAlOx膜を中間膜として別に形成することとし、当該中間膜を封止壁と基板との間に介挿させた構成とすることもできる。
【0129】
また、上記実施の形態および変形例1〜8では、封止層111,141,151,161,171,181,191,201,211におけるAlOx膜1111,1113,1411,1511,1611,1711,1811,1813,1911,1913,2011,2013,2111,2113について、ALD法を用い形成することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の方法を用い形成することとしてもよい。ただし、水素脱ガスによるTFT層における酸化物半導体層の劣化を抑制するという観点からは、ALD法を用い形成することが望ましい。
【0130】
また、上記実施の形態および変形例1〜8では、封止層111,141,151,161,171,181,191,201,211の構成膜を「SiN膜」、「AlOx膜」としたが、それぞれの構成膜において、他の分子などを不純物レベルで含んでいてもよい。
また、上記実施の形態に係る表示パネル10では、ピクセルの平面構造などについては詳述しなかったが、本発明は、種々の形態を採用することができる。例えば、それぞれが平面視矩形状をした3つのサブピクセルの組み合わせを以って1ピクセルを構成することもできるし、その他にも、4つ以上のサブピクセルの組み合わせを以って1ピクセルを構成することもできる。また、各サブピクセルの平面形状についても、矩形状に限定されるものではなく、例えば、三角形や六角形、あるいは八角形などの平面形状を採用することもできる。また、全体としてハニカム形状の配置形態とすることなどもできる。
【0131】
また、上記実施の形態では、アノード104と有機発光層108との間に、ホール注入層105およびホール輸送層107を介挿させる構成を採用したが、必ずしもこれらの層の介挿は必要ではない場合もあり、逆に更なる中間機能層を介挿させることもできる。同様に、有機発光層108とカソード110との間に、電子輸送層109を介挿させる構成を採用したが、場合によっては電子輸送層の介挿を省略することもでき、逆に、有機発光層108とカソード110との間に別の中間機能層を介挿させることもできる。
【0132】
また、上記実施の形態では、有機発光層108に対してZ軸方向下側にアノード104を配し、上側にカソード110を配した構成を一例として採用したが、有機発光層108に対するアノードおよびカソードの配置関係については逆転してもよい。即ち、有機発光層108に対してZ軸方向下側にカソードを配し、上側にアノードを配してもよい。この場合にも、光取出し側に光透過性の電極を採用し、反対側に光反射性の電極を配することにより、トップエミッションを実現することができる。