(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387574
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】床排水トラップ
(51)【国際特許分類】
E03C 1/284 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
E03C1/284
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-77152(P2014-77152)
(22)【出願日】2014年4月3日
(65)【公開番号】特開2015-197036(P2015-197036A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592139887
【氏名又は名称】株式会社テクノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昌平
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】永井 慶介
(72)【発明者】
【氏名】花田 美和
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−011130(JP,A)
【文献】
特開2004−244981(JP,A)
【文献】
特開2007−023688(JP,A)
【文献】
特開2011−241592(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2014−0008192(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする床排水トラップ。
【請求項2】
床固定部材にカバーを取り付けた際、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする請求項1に記載の床排水トラップ。
【請求項3】
床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力がリングを介してエルボのフランジに伝達されるとともに、フランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする請求項1または2に記載の床排水トラップ。
【請求項4】
リングが、2個の部材から構成され、2部材が係合した状態でエルボ垂直円筒部を囲繞してフランジ上に位置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項5】
エルボが一体成形されたエラストマー製であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項6】
環状シールの形状が、平ワッシャー状、断面凸状の平ワッシャー状、または、O−リングであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項7】
封水筒がカップとその内部に収納されるスロートから成り、かつ、環状シールが(1)フランジと、(2)スロートの上端部、カップの上端部および床固定部材の環状段差部、との間が水密となるように押圧されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項8】
垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材へのカバーの取り付けは、床固定部材の2側面に設けられたガイドレールに沿ってカバーをスライドさせることによってなされ、スライドにより床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする床排水トラップ。
【請求項9】
垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材へのカバーの取り付けは、床固定部材の2側面に設けられたスナップ留め具と、カバーの2側面に設けられたスナップ留め具とを係合させることによってなされ、スナップ留めにより床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする床排水トラップ。
【請求項10】
床固定部材にカバーを取り付けた際、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする請求項8または9に記載の床排水トラップ。
【請求項11】
床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力がリングを介してエルボのフランジに伝達されるとともに、フランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、シールを介して水密に押圧されることを特徴とする請求項8ないし10に記載の床排水トラップ。
【請求項12】
リングが、2個の部材から構成され、2部材が係合した状態でエルボ垂直円筒部を囲繞してフランジ上に位置することを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項13】
エルボが一体成形されたエラストマー製であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項14】
環状シールの形状が、平ワッシャー状、断面凸状の平ワッシャー状、または、O−リングであることを特徴とする請求項8ないし13のいずれかに記載の床排水トラップ。
【請求項15】
封水筒がカップとその内部に収納されるスロートから成り、かつ、環状シールが(1)フランジと、(2)スロートの上端部、カップの上端部および床固定部材の環状段差部、との間が水密となるように押圧されることを特徴とする請求項8ないし14のいずれかに記載の床排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面等に取り付けて使用する床排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
電気洗濯機等からの排水を床下に排出する場合、床排水トラップが使用される。
床排水トラップは、単に洗濯機等からの排水を流すだけでなく、排水の一部を貯留し、これにより臭気の逆流を阻止する機能を備えているが、洗濯機等からの排水は、洗濯容量が多い場合等には相当の水勢となるため、水圧によりトラップの接続部からの漏水や滲水が発生することがある。
【0003】
洗濯機は、一旦設置されると長期にわたって同一位置で使用されるが、その排水を受ける床排水トラップは、目詰まりの恐れ等もあり、定期的に点検やメンテナンス(清掃等)を行うことが必要である。このため、床排水トラップは、漏水や滲水の恐れがない状態で確実に設置・固定が可能であると同時に、点検やメンテナンス等に際しては容易に取り外し可能であるという、相反する要請に応えなければならない。
【0004】
図11は、従来技術に床排水トラップ61の断面の模式図である。この従来技術は、軟質合成樹脂の弾性を利用して上記要請に応えようとするものである(特許文献1参照)。
同図において、62は床板、63はその下方に配設された排水管、64は口部筒(床固定部材)である。口部筒64は排水管63の上端部に固着され、そのフランジ64aが床板62に固定される。65は口部筒64に取り付けられる封水槽、66は封水槽65内に位置する排水筒である。67は、軟質合成樹脂製の口部栓体であって、エルボ67aと水密に連設されている。口部栓体67は、軟質合成樹脂の弾力を利用して口部筒64に挿入され、排水筒66を封水槽65内の適所に位置させている。口部栓体67の外周には、凹部67bが設けられており、口部筒64の内周に設けられた凸部と係合する。
同図の床排水トラップでは、洗濯機(図示せず)から排出された排水は、エルボ67aを介して排水筒66内に流入し、その外周と封水槽65の内周の間を上方に流れ、封水槽65の上端部の溢水口65aから封水槽65の外周に溢出し、排水管63の下流側へと排出される。
上述の経路で排出される排水の一部は、封水槽65および排水筒66内の溢水口65aより低い部分に滞留し、臭気の逆流を防止する。
しかしながら、上記従来技術による床排水トラップは、洗濯機からの排水の勢いが激しい時などには、その水勢に十分に抗することができず、トラップの上部から水が滲み出てしまい、カビの発生等を惹起するという問題があった(特許文献2参照)。
【0005】
上述の問題を解決しうる従来技術として、ネジによる締め付けを利用した床排水トラップが知られている。
その一例として、特許文献2に記載のものをあげることができる。
図12は同文献記載の床排水トラップの断面図、
図13はその上面図である。
図12において、70は床板、71は排水管、72はトラップ本体、73は筒体(床固定部材)である。筒体73は排水管71の上端部に固着され、そのフランジ73aが床板70に固定される。74はこの筒体73に取り付けられる封水槽(カップ)、75は封水槽74内に位置する仕切り壁(スロート)である。76はエルボであり、その開口端が洗濯機の排水ホース(図示せず)に接続される。77は締付ナット(ロックナット)であり、その上部の外周には突部77aが、その下部の外周に雄ネジ部77bが形成されている。筒体73の上部の内周には雌ネジ部73bが形成されており、締付ナット77の雄ネジ部77bを筒体73の雌ネジ部73bと螺合させることにより、エルボ76とトラップ本体72とを両者のフランジで水密に接続することができる。エルボ76から流入した洗濯機からの排水は、トラップ72の仕切壁75の左側を流下し、その右側の空間を上方に流れ、その上端の開口部より流出する。
図13は、
図12の床排水トラップの上面図であり、73は筒体、76はエルボ、77は締付ナット(ロックナット)を示す。締付ナット77の外周部には、突部77aが形成されている。突部77aは、締付ナット77の雄ネジ部77bと筒体73の雌ネジ部73bとの螺合を容易化するためのものである。
【0006】
締付ナットによる締め付けを利用した床排水トラップの他の例として、
図14に記載のものをあげることができる(特許文献3参照)。
図14のものは、筒体(床固定部材)80、トラップ本体81,トラップ椀82、エルボ83、締付ナット84等から構成され、締付ナット84の雄ネジ部84aと筒体80の雌ネジ部80aとの螺合の容易化のため、締付ナット84の外周に径拡大部84bと蝶ネジ部84cが形成されている。
締付ナットによる締め付けを利用した床排水トラップのさらに他の例としては、特許文献4に記載のものも知られており、この従来技術では、締付ナットの外周面に多数の突起が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録公報2527337号公報
【特許文献2】特開2002−4377号公報
【特許文献3】実用新案登録公報3073779号公報
【特許文献4】特開平9−209431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術による挿入式の床排水トラップは、上述のとおり、排水の滲出を防止することが困難であった。また、締付ナット式の床排水トラップは、この問題を一応解決することができるが、次のような問題があった。
すなわち、締付ナット式の床排水トラップは、その取付けに際し、締付ナットの回転に同期してエルボ等が回転するという問題がある。このため、取り付け時にエルボおよび排水ホースを意図した方向で固定するのが容易でない。その場合、エルボ等の方向を無理に矯正すると、排水ホースがねじれてしまったり、締付力が低下して漏水や滲水が発生したりすることがある。
床排水トラップは、洗濯機と壁の間の狭いスペースに設置されることが多く、しかも、洗濯機横側後方に位置取りされることが少なくない。このため、点検やメンテナンス作業を行う際、壁面と洗濯機の間の狭い空間に片手を伸ばした状態で締付ナットを回してエルボ等を取り外すことになるが、このような状態で取り外し作業を遂行することは、必ずしも容易ではない。その際、エルボが回転すると、困難度がさらに高まることになる。
また、点検・メンテナンス等の終了後、締付ナットを元の状態に復そうとしても、操作者が非力の場合などには、十分な力で締め付けることができず、漏水や滲水が発生することがある。
したがって、従来の床排水トラップでは、作業者レベルの事情などにより、漏水事故の発生確率が高まるとの問題もあった。
【0009】
本発明は、取り付け・取り外しの際の操作性を大幅に改善した床排水トラップを提供することをその目的・課題とする。
本発明は、作業者レベルの事情によらず、漏水や滲水の問題の問題を解消しうる床排水トラップを提供することをその目的・課題とする。
本発明は、また、設置時および点検・メンテナンス後においてエルボを任意の方向に設定することができる床排水トラップの提供を目的・課題とする。
本発明は、さらに、狭いスペースにも容易に設置可能な床排水トラップの提供を目的・課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的・課題は、床排水トラップにおいて、床固定部材の上部の平面形状を略矩形とし、その上に略矩形のカバーを取り付け、カバーの取り付の際の締付力により、エルボのフランジを床固定部材の環状段差部に水密に押圧することにより達成することができる。
すなわち、本件発明の請求項1に係る発明は、垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1の床排水トラップにおいて、前記床固定部材にカバーを取り付けた際、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2の床排水トラップにおいて、床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力がリングを介してエルボのフランジに伝達されるとともに、フランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3の床排水トラップにおいて、リングが、2個の部材から構成され、2部材が係合した状態でエルボ垂直円筒部を囲繞してフランジ上に位置することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかの床排水トラップにおいて、エルボが一体成形されたエラストマー製であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかの床排水トラップにおいて、環状シールが平ワッシャー状、断面凸状の平ワッシャー状、または、O−リングであることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれかの床排水トラップにおいて、
封水筒がカップとその内部に収納されるスロートから成り、かつ、環状シールが(1)フランジと、(2)スロートの上端部、カップの上端部および床固定部材の環状段差部、との間が水密となるように押圧されることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材へのカバーの取り付けは、床固定部材の2側面に設けられたガイドレールに沿ってカバーをスライドさせることによってなされ、スライドにより床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、垂直円筒部にフランジを有するエルボ、エルボを床に固定する床固定部材および封水筒を備えた床排水トラップであって、床固定部材の上部の平面形状が略矩形であり、床固定部材はその上に略矩形のカバーを取り付けることが可能であり、床固定部材へのカバーの取り付けは、床固定部材の2側面に設けられたスナップ留め具と、カバーの2側面に設けられたスナップ留め具とを係合させることによってなされ、スナップ係合により床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力により、エルボのフランジの下面が、床固定部材の環状段差部に水密に押圧されることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項8または9の床排水トラップにおいて、床固定部材にカバーを取り付けた際、エルボのフランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、環状シールを介して水密に押圧されることを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項8ないし10のいずれかの床排水トラップにおいて、床固定部材にカバーを取り付けた際、その締付力がリングを介してエルボのフランジに伝達されるとともに、フランジの下面が、少なくとも床固定部材の環状段差部に、シールを介して水密に押圧されることを特徴とする。
請求項12に係る発明は、請求項8ないし11のいずれかの床排水トラップにおいて、リングが、2個の部材から構成され、2部材が係合した状態でエルボ垂直円筒部を囲繞してフランジ上に位置することを特徴とする。
請求項13に係る発明は、請求項8ないし12のいずれかの床排水トラップにおいて、エルボが一体成形されたエラストマー製であることを特徴とする。
請求項14に係る発明は、請求項8ないし13のいずれかの床排水トラップにおいて、環状シールが平ワッシャー状、断面凸状の平ワッシャー状、または、O−リングであることを特徴とする。
請求項15に係る発明は、請求項8ないし14のいずれかの床排水トラップにおいて、
封水筒がカップとその内部に収納されるスロートから成り、かつ、環状シールが(1)フランジと、(2)スロートの上端部、カップの上端部および床固定部材の環状段差部、との間が水密となるように押圧されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取り付け・取り外しの際の操作性を大幅に改善・容易化した床排水トラップを提供することができる。
本発明によれば、作業者レベルの事情によらず、常に一定の水密性を確保することが可能であって、床排水トラップの漏水や滲水の問題が解消される床排水トラップが提供される。
本発明によれば、漏水や滲水の発生の恐れなくエルボの方向を任意に設定することができる床排水トラップが提供される。
本発明によれば、洗濯機と壁との間の狭いスペースに設置された場合にも、点検・メンテナンスが容易な床排水トラップを提供することができる。
本発明によれば、トラップの高さ寸法をより小さくすることができる。
さらに、本発明によれば、洗濯機の排水ホース内に残留する排水の量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による床排水トラップの分解斜視図。
【
図2】本発明の第1の実施形態による床排水トラップを斜め下方から見た斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施形態による床排水トラップのリングの説明図。
【
図4】本発明の第1の実施形態による床排水トラップを組み立てた状態の斜視図。
【
図5】本発明の第1の実施形態による床排水トラップの断面図。
【
図6】本発明の第1の実施形態による床排水トラップの断面図。
【
図7】本発明の第2の実施形態による床排水トラップの断面図。
【
図8】本発明の第3の実施形態による床排水トラップの斜視図。
【
図9】本発明による床排水トラップと従来の床排水トラップを比較した上面図。
【
図10】本発明による床排水トラップと従来の床排水トラップを比較した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1ないし
図6は、本発明の第1の実施形態による床排水トラップAを示す。
図1は、床排水トラップAの分解斜視図であり、同図において、1はエルボ(ホースジョイント)であり、その水平部の端部に洗濯機の排水ホース(図示せず)が接続される。エルボ1の下方に垂直円筒部1aが延在し、その外周にフランジ1bが設けられている。垂直円筒部1aのフランジ下方の外周に突条部1cが設けられている。エルボ1は、好ましくはエラストマー製であり、一体成形される。エラストマーとしては、軟質ゴム、軟質合成樹脂などが使用可能である。
2はリングであって、
図3で詳細に説明するとおり、2aおよび2bの2部材から構成される。
3は環状のシールであり、好ましくは、シリコンゴム製である。環状シール3の形状は、平ワッシャー状、断面凸状の平ワッシャー状であってよく、O−リングであってもよい。
4は略矩形状の床固定部材であって、その上部の形状は角部にRが付された略矩形であり、下方に垂直円筒部4aが延在する。垂直円筒部4aの内周には、環状段部4bが存在する(垂直円筒部4aの断面構造について、
図5を併せて参照)。床固定部材4は、取付孔4cにより、ビスなどで床板(図示せず)に取り付けられる。
床固定部材4の対向する2辺の端部は、ガイドレール4dを構成している。
床固定部材4の上面には段差が存在し、その上段部の上面4eと下段部の上面4fとは異なる高さに構成されている。下段部の上面4fは平面であり、その上をスライドカバー5がスライド移動する。上段部4eの形状および厚みは、スライドカバー5の取付時において、その厚みおよび形状に対応するように形成されている。
スライドカバー5の平面形状は略矩形状であり、その対向する2辺にコの字形状の係合部5aが設けられている。スライドカバー5は、係合部5aで床固定部材4のガイドレール4dと係合し、これに沿ってスライドする。スライドカバー5を取り付ける際には、たとえば、その後端部5bを指などで押圧する。取り外す時は、たとえば、爪部5cを利用してカバー5をスライドさせる。
6は封水筒であり、6aはそのスロート、6bはカップである。エルボ1から流入した排水は、スロート6a内を流下し、スロート6aとカップ6bとの間に形成されるスペース内を上方に流れ、カップ6bの開口部6cから流出する。
【0014】
図2は、床排水トラップAを斜め下方から見た斜視図である。同図において、1はエルボ、4は床固定部材である。5はスライドカバーであり、その係合部5aが、床固定部材4のガイドレール4dに沿ってスライドする。スライドカバー5の下面に凸部5dが設けられており、当該凸部と、床固定部材4の上面に形成された凹部4g(
図1参照)との係合により、スライドカバー5が固定される。
【0015】
図3は、床排水トラップAのリング2の説明図である。
リング2は、2aと2bの2部材から構成され、部材2aと2bが係合状態でエルボ1の垂直円筒部1aを囲繞し、フランジ1bの上面に配置される。
部材2a、2bは、それぞれ係合部2c、2dを有している。係合部2cは部材2aの側部に延在し、その上面には凸部2eを有している。係合部2dの下面には凹部(図示せず)が設けられている。係合部2cの上面の凸部2eと、係合部2dの下面の凹部(図示せず)とが係合することにより、部材2aと2bから1個のリングが形成される。
リングの上面2f・2hの外周端部には図示のように傾斜が設けられている。
部材部材2aおよび2bの形状は、いずれも左右対称である。2aの係合部2cに対応する左右対称の位置にも係合部(図示せず)が設けられており、その上面に突部(図示せず)が設けられている。同様に、2bの係合部2dに対応する左右対称の位置にも係合部(図示せず)が設けられており、その下面には凹部(図示せず)が設けられている。
部材2bの上面には段差が設けられており、その上段部の上面2gと下段部の上面2hは高さ位置が異なる。2a・2bが係合した状態において、下段部の上面2hは、部材2aの上面2fと面一となる。2gについては次図で説明する。
【0016】
図4は、床排水トラップAが組み立てられた状態を示す斜視図である。同図において、1はエルボ、4は床固定部材、4aはその垂直円筒部、5はスライドカバー、5aはその係合部、5cはその爪部である。6bは封水筒6のカップであり、6cはその開口部である。
2gは、リング2の部材2bの上段部の上面である。
5gは、スライドカバー5の縁取りであり、2gに対応する同心円状に形成されている。
【0017】
図5は、本発明の第1の実施形態による床排水トラップAを、
図4に示す状態で組み立てた場合における断面図であって、スライドカバー5のスライド方向と直交し、かつ、エルボ1の垂直円筒部1aおよび封水筒6の両者の中心線を通る垂直面を示す。
図5において、1はエルボ、1aはその垂直円筒部、1bはフランジ、1cは突条部である。2はリング、3はシールである。4は床固定部材、4dはそのガイドレールである。床固定部材4の下方には垂直円筒部4aが延在する。垂直円筒部4aはその上部を除き、外筒部4hおよび内筒部4iから構成され、外筒部4hと内筒部4iとを接続して環状段差部4bが設けられている。5はスライドカバー、5aはその係合部、5cはその爪部、6aは封水筒6のスロート、6bはそのカップである。
図示のとおり、エルボ1のフランジ1b、リング2およびシール3は、床固定部材4とスライドカバー5との間に形成されるスペースに収容される。
スライドカバー5をガイドレール4dに沿ってスライドさせると、リング2の上面の外周端部に傾斜が設けられていることから、スライドカバー5がリング2上に乗り上げることで締付力が発生し、その締付力が、リング2およびフランジ1bに伝達され、フランジ1bと床固定部材4の環状段部4bとの間がシール3を介して水密となる。
また、リング2は、それ自体必須ではなく、省略することができる。その場合、たとえば、エルボ1のフランジ1bは、その上面が下面と平行であり、スライドカバー5が装着された状態において、シール3に対し、水密性の保持に必要な圧力を及ぼしうる厚みとされる。
さらに、シールも必ずしも必須ではなく、これを省略しても、たとえば、エルボが一体成形されたエラストマーである場合など、フランジの下面と環状段差部の表面とが、両者の間に間隙を生じない状態で対面可能な場合には、水密性を確保することができる。
【0018】
図6は、
図4の状態で組み立てた床排水トラップAの断面図であり、スライドカバー5のスライド方向に平行であり、かつ、エルボ1の垂直円筒部1aおよびカップ6bの中心線を通る垂直面を示す。
同図において、1はエルボ、1aはその垂直円筒部、1bはフランジ、1cは突条部であり、2はリング、3はシールである。4は床固定部材、4aはその垂直円筒部、5はスライドカバー、6aは封水筒6のスロート、6bはそのカップ、6cは開口部である。
スロート6aは、カップ6bの内部に収納され、カップ6は、床固定部材の垂直円筒部4aの内筒部4iの内面に接した状態で360°回転可能である。
エルボ1の開口から流入した水は、エルボ1の垂直円筒部1aおよびスロート6aの内部を流下した後、スロート6aとカップ6bの間を上方に流れてカップ6bの開口部6cから流出する。
【0019】
次に、本発明の第2の実施形態による床排水トラップBについて説明する。この第2の実施形態による床排水トラップは、第1の実施形態のものと同様にスライドカバーのスライドに基づく締結力を利用するものであり、その組み立て後の外観は第1の実施形態の床排水トラップAの
図4と同様である。
図7は、第2の実施形態の床排水トラップBの断面図であって、第1の実施形態の
図4と同様の状態で組み立てた床排水トラップBを、スライドカバーのスライド方向に平行で、かつ、エルボの垂直円筒部およびカップの中心線を通る垂直面で切断して示したものである。なお、
図7において、
図1〜
図6と同一の部材には同一の符号が付されている。
図7において、1’はエルボ、1a’は垂直円筒部、1b’はフランジであり、2’はリング、3’はシールである。4’は床固定部材、4a’はその垂直円筒部、5’はスライドカバー、6a’は封水筒6’のスロート、6b’はそのカップである。
スロート6a’は、カップ6b’の内部に収納され、カップ6’は、床固定部材の垂直円筒部4a’の内面に接した状態で360°回転可能である。
本実施形態では、スロート6a’の上端6d’と、カップ6b’の上端6e’と、床固定部材4’の環状段差部4b’は面一に構成されており、その上に、その形状が平ワッシャー状のシール3’が載置されている。床固定部材4’の下部の垂直筒部4a’は、第1の実施形態とは異なり、一重の円筒から構成されている。
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、エルボ1’のフランジ1b’、リング2’およびシール3’は、床固定部材4’とスライドカバー5’との間に形成されるスペースに収容されており、スライドカバー5’を床固定部材4’のガイドレール(図示せず)に沿ってスライドさせた際に生じる締付力が、リング2’およびフランジ1b’に伝達され、(1)フランジ1b’と、(2)スロート6a’の上端部6d’、カップ6b’の上端部6e’および床固定部材4’の環状段差部4b’、との間がシール3’を介して水密となる。
本実施形態では、(1)フランジ1b’と、(2)スロート6a’の上端6d’、カップ6b’の上端6e’および床固定部材4’の環状段差部4b’、との間がいずれも水密となるように構成されているが、少なくとも(1)フランジ1b’と、(2)床固定部材4’の環状段差部4b’との間が水密となる構成であれば、床排水トラップとしての実用上は支障なく、そのような形態も本発明に包含される。
また、リング2’は、それ自体必須ではなく、省略することができる。その場合、たとえば、エルボ1’のフランジ1b’は、その上面が下面と平行であり、スライドカバー5’が装着された状態において、シール3’に対し、水密性の保持に必要な圧力を及ぼしうる厚みとされる。
さらに、シールも必ずしも必須ではなく、これを省略しても、たとえば、エルボが一体成形されたエラストマー製である場合など、フランジの下面と環状段差部の表面とが、両者の間に間隙を生じない状態で対面可能な場合には、水密性を確保することができる。
【0020】
図7に示す本発明の第2の実施形態による床排水トラップBは、第1の実施形態の床排水トラップAと比較して、エルボの垂直円筒部や封水筒の径を大きくすることが可能であり、その結果、より大量の排水をスムーズに排出することができる。
【0021】
図8は、本発明の第3の実施形態による床排水トラップCを示す。同図において、
図1〜
図7と同一の部材には、同一の符号が付されている。
図8は、組み立て前の床排水トラップCを下方から見た斜視図であり、1’’はエルボ、1a’’はその垂直円筒部を示す。1b’’はそのフランジであり、1c’’はその突条部を示す。エルボ1’’は、好ましくはエラストマー製であり、一体成形される。
4’’は角にRが付された略矩形の床固定部材であり、その下方には、垂直円筒部4a’’が延在している。垂直円筒部4a’’の内部には、環状段差部(図示せず)が存在する。
床固定部材4’’の4隅部には床面への取付穴4c’’が設けられている。床固定部材4’’の対向する2辺の端部には、スナップ留め具としてスナップバー4d’’が設けられている。
5’’はスナップカバーであり、その対抗する2端部にスナップ留め具としてスナップフック5a’’が設けられている。スナップカバー5’’には、エルボ1’’の垂直円筒部1a’’を、その3方から囲繞する切り欠き5h’’が形成されている。
3’は環状のシールであり、平ワッシャー状の形状を有する。好ましくは、シリコンゴム製である。
エルボ1’’のフランジ1b’’の上面には、上記切り欠き5h’’の厚み・形状に対応する段差が設けられており、その上段部1d’’の上面1e’’は、スナップカバー5’’が床固定部材4’’のスナップバー4d’’にスナップ留めされた状態で、スナップカバー5’’の上面と面一となる。
同様に、床固定部材4’’の上面にも切り欠き5h’’の厚み・形状に対応する段差が設けられており、段差部の上面4e’’は、スナップカバー5’’が床固定部材4’’にスナップ留めされた状態でスナップカバー5’’の上面と面一となる。
6b’’は、封水筒6’’のカップである。
【0022】
図8の実施形態の床排水トラップCでは、スナップカバー5’’のスナップフック5a’’がスナップ留め具であるスナップバー4d’’と係合し、その締付力によりエルボ1’’のフランジ1b’’の下面と床固定部材4’’の環状段差部(図示せず)との間がシール3’’を介して水密となる。
シール3’’は必ずしも必須ではなく、これを省略しても、たとえば、エルボ全体がエラストマーで一体成形されている場合など、フランジの下面と環状段差部の表面とが、両者の間に間隙を生じない状態で対面可能な場合には、水密性を確保することができる。
本実施態様では、床固定部材4’’の垂直円筒部4a’’はその上部を除き、外筒部4h’’および内筒部4i’’から構成され、外筒部4h’’と内筒部4i’’とを接続して環状段差部(図示せず)が設けられている点で第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態と同様に、床固定部材4’’の垂直筒部4a’’を一重の円筒から構成し、その環状段差部(図示せず)と、スロート6a’’の上端(図示せず)と、カップ6b’’の上端(図示せず)とを面一に構成してもよい。
【0023】
図9は、本発明による床排水トラップ(9a)と従来の床排水トラップの一例(9b)を示す上面図である。
従来の床排水トラップ(9b)は、締付ナット32を回転させ、ネジによる締付力を利用する構造であるため、漏水や滲水を防止できる締付力を確保するには、締付ナット32は、その外周に突起部32aなどを設けるだけでは足りず、それ自体の径を大きくすることが必要であった。また、締め付けの際、エルボが回転してしまう問題があった。
これに対し、本発明の床排水トラップ(9a)では、カバー25の一方向への動きに基づく締付力を利用するので、その平面サイズを大幅に小さくすることができる。また、カバー25の一方向への移動のみで締付が完了するので、最初にエルボの方向を決定すれば、その方向からずれることがない。また、カバー25の一方向の移動で各部品の取り外しができるため、点検・メンテナンスの際も簡単な動作で作業をすることができる。
このため、トラップを洗濯機と壁の間の狭隘な部分に設置する場合であっても、簡単な操作で確実に、安定した締付力で取り付けることが可能であり、水密性が操作者レベルの事情により左右されることがない。
【0024】
図10は、本発明による床排水トラップ(10a)と従来の床排水トラップの一例(10b)とを比較した断面図である。
従来の床排水トラップ(10b)は、締付ナット51を回転させ、ネジによる締付力を利用する構造であるため、締付ナット51は、少なくともネジ部(図示せず)の長さ分だけ、上下に移動する。このため、エルボ52の下面52aは、締付ナット51の上下運動に支障を及ぼすことのない高い位置としなければならない。
これに対し、本発明では、カバー41の一方向への移動に基づく締付力を利用するので、従来の床排水トラップ10bのように締付ナットの回転上下動による制約がない。
すなわち、スライド係合式の実施形態の場合には、カバー41の移動は水平方向のみであり、上下には全く移動しない。スナップ係合式の場合も、スナップ係合に要する上下動は締付ナットの上下動よりもはるかに小さい。
このように、本発明においては、エルボの高さ位置を従来技術より低くすることができる。このため、本発明によれば、排水ホースに残留する排水を大幅に減少することができる。すなわち、従来の床排水トラップでは、エルボ52の高さ位置が高いため、これに接続された排水ホース53の中には、10bのように相当量の排水54が残留する。これに対し、本発明では、10aのとおり、排水ホース43中に残留する排水44の量は僅少である。なお、
図10において、45、55は床板、46、56は配水管である。
【0025】
本発明の床排水トラップは、従来の締付ナットの回転による締付力を利用する構造のものと比較して、少なくともそのネジ部の行程分だけ高さ寸法を小さくすることができるので、床下のスペースがより狭い場合であってもその取り付けが可能となる。
【0026】
本発明の床排水トラップは、エルボを任意の方向に向けて、確実に取り付けることができる。また、カバーはエルボの垂直円筒部の3方を囲繞するにすぎないので、カバーとエルボを
図4、
図7に示すような位置関係とした場合には、その取り付け・取り外しが特に容易である。
【符号の説明】
【0027】
1、1’、1’’ エルボ
1a、1a’、1a’’ 垂直円筒部
1b、1b’、1b’’ フランジ
2 リング
3、3’、3’’ シール
4、4’、4’’ 床固定部材
4a、4a’、4a’’ 垂直円筒部
4b 環状段差部
4d ガイドレール
4d’’ スナップバー
5、5’ スライドカバー
5 ’’ スナップカバー
6、6’、6’’ 封水筒