(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
衣類や寝具その他の繊維製品に添付して品質等を表示する品質表示ネームや、あるいは洗い方等を表示する洗濯ネームなどのいわゆるケアラベルに、所定の文字や記号(以下「文字等」と略記する場合がある)を印刷する印刷方法としては熱転写印刷が一般的である。
しかし近年、ケアラベルへの印刷方法としてインクジェット印刷を採用するべく種々検討がされている。
【0003】
例えば特許文献1、2では、滲みがない上、ドライクリーニング等をしてもかすれたり消えたりしにくい特性(耐洗濯性)に優れた文字等をインクジェット印刷によって印刷するために、ケアラベル等のもとになる布帛について検討されている。
またケアラベル印刷用のインクジェットインクとしては上記耐洗濯性を向上するために、紫外線等の光の照射による硬化性(光硬化性)を有し、印刷後に光照射によって光硬化反応して、特にドライクリーニング用の溶剤等に対する文字等の耐性(耐溶剤性)などを向上できる光硬化性のインクジェットインクを使用するのが好ましいと考えられている。
【0004】
光硬化性のインクジェットインクとしては、例えば特許文献3〜5等に記載されたもの等が挙げられる。
このうち特許文献3に記載のインクジェットインクは、ラジカル重合性またはカチオン重合性の重合性成分(モノマー、オリゴマー等)に、光重合開始剤や着色剤等とともに、さらに非反応性でかつ接着性または粘着性を有するテルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤を配合して構成される。
【0005】
かかるインクジェットインクによれば、上記重合性成分の光硬化反応によって文字等の耐溶剤性などを向上できる上、光硬化反応後の文字等の、基材に対する定着性を上記粘着付与剤の持つ接着性、粘着性によって強化できるため、例えばケアラベルへの印刷に使用した場合には上記文字等の耐洗濯性をより一層向上できると考えられる。
しかし上記インクジェットインクは基本的に溶剤を含まないため、粘着付与剤を良好に溶解してなおかつその粘度をインクジェット印刷に適した範囲に調整するには、いわゆる反応性希釈剤として良好に機能しうる単官能モノマーを多量に配合しなければならない。
【0006】
そのため光硬化反応後の架橋密度が不足して文字等の耐溶剤性、ひいては耐洗濯性を十分に向上できないおそれがある。
また上記インクジェットインクは、サーマル方式のインクジェットプリンタでの使用には適さないという問題もある。
すなわちサーマル方式のインクジェットプリンタでは、インクジェットインクを加熱して気泡を発生させ、その体積増加分のインクジェットインクをノズルを通してインク滴として吐出させることで、基材に文字等を印刷している。
【0007】
この際、インクジェットインク中に含まれる溶剤が加熱による気泡の生成成分として主に機能するのであるが、上述したように特許文献3に記載のインクジェットインクは溶剤を含まないため加熱しても気泡を良好に発生できず、ノズルを通してインク滴を吐出できないのである。
特許文献4には、重合性成分等の種類の選択などによって水または水溶性溶剤と炭化水素系溶剤という異なる2種の溶剤の両方に相溶性を有するインク原液を調製し、それを任意の溶剤によって所定の粘度となるように希釈してインクジェットインクを作製することが記載されている。
【0008】
しかし特許文献4における溶剤の配合割合はごく少量である。例えば特許文献4の実施例5では、インクジェットインクの総量のおよそ4質量%強程度しかエタノールを配合していない。
かかる少量の溶剤を配合しても、サーマル方式のインクジェットプリンタに使用した際には、先述したメカニズムによって気泡を良好に発生させて、ノズルを通して適正なインク滴を吐出させることはできない。全く吐出できないわけではないが吐出性が不十分であり、かすれ等のない良好な文字等を印刷することはできない。
【0009】
特許文献5には、粘着付与剤を配合する代わりに、溶剤として低沸点溶剤と高沸点溶剤の2種を併用したインクジェットインクが開示されている。
かかる構成では、高沸点溶剤がインクジェットインクの乾燥固化を遅らせて布帛への染み込みを促すため、粘着付与剤を配合しなくても文字等の耐洗濯性をある程度は向上できる。
【0010】
また高沸点溶剤は、印刷のデキャップタイムにインクジェットプリンタのノズルが目詰まりして印刷再開時にかすれ等を生じるのを防止するためにも機能する。
デキャップタイムとは、インクジェットプリンタに複数設けられたノズルのうち間欠印刷時に印刷パターンに応じてインク滴が吐出されない待機状態とされたノズル内のインクジェットインクが外気にさらされている時間を指す。
【0011】
インクジェットプリンタには通常、その運転停止時にノズル内のインクジェットインクが外気にさらされることで乾燥して目詰まりを生じたりしないようにノズルを閉じる(キャップする)機能が付与されているのが一般的である。
しかし印刷時にはかかるキャップは解除されているため、特に間欠印刷時に待機状態となるノズルは次にインク滴が吐出されるまでの間、ノズルが閉じられていない状態(デキャップの状態)が続きその間、ノズル内のインクジェットインクは外気にさらされ続けることになる。
【0012】
そのため上記時間つまりデキャップタイムが長いほどノズルの目詰まりを生じやすくなる傾向がある。
デキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくい特性を、以下では「間欠印刷性」の良否として評価することとする。目詰まりを生じないデキャップタイムが長ければ長いほど、インクジェットインクは間欠印刷性が良好であると評価できる。
【0013】
ところが、溶剤として高沸点溶剤を併用した特許文献5のインクジェットインクは上述した利点を有してはいるものの、逆に乾燥固化に比較的長時間を要することから、印刷速度をアップしてケアラベル等の生産性を向上できないという問題がある。またインクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎて文字等の印字濃度が低下しやすい傾向もある。
また特許文献5のインクジェットインクは低沸点溶剤を含むものの、高沸点溶剤の配合によってその良好な揮発および発泡が阻害されるため、やはりサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して、先述したメカニズムによって気泡を良好に発生させて、ノズルを通して適正なインク滴を吐出させることはできない。全く吐出できないわけではないが吐出性が不十分であり、かすれ等のない良好な文字等を印刷することはできない。
【0014】
したがって特許文献3〜5のインクジェットインクはいずれもサーマル方式のインクジェットプリンタに適したものではない。このことは、特許文献3〜5においていずれもインクジェットインクをサーマル方式ではなくピエゾ方式のインクジェットプリンタに使用して効果を検証していることからも明らかである。
さらに上記特許文献3〜5等の従来のインクジェットインクはいずれも、例えば粘着付与剤と溶剤との組み合わせなどにもよるが、貯蔵時の安定性が不十分で析出を生じやすいといった問題を生じる場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のインクジェットインクは、
(1) ラジカル重合性成分、
(2) 光ラジカル重合開始剤、
(3) 水酸基価が10mgKOH/g以上、45mgKOH/g以下のテルペンフェノール樹脂およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の粘着付与剤、ならびに
(4) 炭素数1〜3のアルコール
を含んでいる。
【0020】
上記本発明のインクジェットインクによれば、印刷後に(1)のラジカル重合性成分を(2)の光ラジカル重合開始剤の作用によって光硬化反応させることで文字等の耐溶剤性などを向上できる上、上記文字等の基材に対する定着性を(3)の粘着付与剤の持つ接着性、粘着性によって強化できるため、特にケアラベル等のもとになる布帛に対して耐洗濯性に優れた文字等を印刷できる。
【0021】
また上記インクジェットインクによれば、低沸点で揮発性に優れた(4)の炭素数1〜3のアルコールを気泡の生成成分として機能させてサーマル方式のインクジェットプリンタに使用しても良好な印刷が可能である。
また上記アルコールの特性に基づいてインクジェットインクを短時間で乾燥固化できるため印刷速度をアップしてケアラベル等の生産性を向上できるとともに、インクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎるのを抑制して文字等の印字濃度を向上できる。
【0022】
しかも上記(3)の、水酸基価が10mgKOH/g以上、45mgKOH/g以下のテルペンフェノール樹脂および/またはロジンエステルを選択して(4)のアルコールと併用することにより、インクジェットインクの貯蔵安定性や間欠印刷性をも向上できる。
すなわち水酸基価が上記の範囲未満である粘着付与剤は極性が低すぎるため、(4)のアルコールに対する溶解性が不十分でインクジェットインク中に良好に溶解させることができない。そのためインクジェットインクの貯蔵安定性が低く析出を生じやすい上、間欠印刷性も不十分でデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じやすくなる。
【0023】
一方、水酸基価が45mgKOH/gを超える粘着付与剤は極性が高いため(4)のアルコールに良好に溶解でき、インクジェットインクの貯蔵安定性は向上できる。しかし、かかる水酸基価の高い粘着付与剤は(4)のアルコールの揮発に伴ってその溶解性が大きく変化するため、例えばノズル内で外気にさらされ続けた際にアルコールの揮発に伴ってインクジェットインクの粘度が大きく上昇しやすい。そのため間欠印刷性が不良でデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じやすくなる。
【0024】
これに対し、水酸基価が上記の範囲にある(3)の粘着付与剤は、(4)のアルコールに対して低すぎずかつ高すぎない適度の溶解性を有するためインクジェットインク中に良好に溶解させることができ、当該インクジェットインクの貯蔵安定性を向上できる。また間欠印刷性を向上してデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくくできる。
【0025】
〈(1) ラジカル重合性成分〉
(1)のラジカル重合性成分としては、ラジカル重合性を有し、光ラジカル重合開始剤の作用によって光硬化反応する種々の化合物が使用可能である。
(第1および第2のモノマー)
中でも式(a):
【0027】
[式中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、nは3〜5の数を示す。]
で表される第1のモノマーと、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトール4EOテトラアクリレートおよびジトリメチロールプロパンテトラアクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の第2のモノマーとを、質量比M
1/M
2=1/2〜2/1(M
1は第1のモノマー、M
2は第2のモノマーの質量を示す。)の割合で、(1)のラジカル重合性成分として併用するのが好ましい。
【0028】
上記第1のモノマーは常温で液状を呈するため、インクジェットインクの布帛への染み込みを促して文字等の定着性、ひいては耐洗濯性を向上するために機能する。また分子中の−(CH
2)
n−基が、(4)のアルコールを含む系中での光ラジカル重合開始剤やその増感剤などの固形分の溶解性を維持して、これらの固形分がインクジェットインク中に析出するのを防止するためにも機能する。
【0029】
しかし上記のように第1のモノマーは常温で液状を呈するため、上記の範囲より第1のモノマーの割合が多い場合には、インクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎて文字等の印字濃度が低下するおそれがある。
一方、上記3種の第2のモノマーはいずれも常温で固形であるため、かかる第2のモノマーの少なくとも1種を併用することで上記染み込みを適度に抑制して文字等の印字濃度を向上できる。
【0030】
ただし上記の範囲より第2のモノマーの割合が多い場合には相対的に第1のモノマーの割合が少なくなるため、インクジェットインクの布帛に対する染み込みが少なすぎて文字等の定着性、耐洗濯性が低下するおそれがある。
これに対し上記第1および第2のモノマーを上記の割合で併用することにより、布帛に対して印字濃度が高くかつ耐洗濯性に優れた文字等を印刷できる。
【0031】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、第1および第2のモノマーの質量比M
1/M
2は、上記の範囲でも1/1.2〜1.2/1であるのがさらに好ましい。
第1のモノマーにおいて式(a)中のnが3〜5とされるのは、下記の理由による。
すなわちnが3未満では、−(CH
2)
n−基による光ラジカル重合開始剤や増感剤などの固形分の溶解性を維持する効果が不十分になって、当該固形分がインクジェットインク中に析出しやすくなる傾向がある。
【0032】
そして固形分が析出するとインクジェットインクの貯蔵安定性が低下したり、吐出不良を生じたり、光硬化反応が阻害されたり、あるいは文字等の布帛への良好な定着が阻害されたりするおそれがある。またnが3未満では皮膚刺激性が高くなるおそれもある。
一方、nが5を超える場合にはインクジェットインクの粘度が高くなって布帛に対する染み込みが不十分になり、文字等の定着性、耐洗濯性が低下するおそれがある。
【0033】
これに対しnを3〜5とすることで、布帛に対するインクジェットインクの良好な染み込みを確保しながら固形分の溶解性を向上してその析出を防止し、析出に伴う上述した各種の不良が発生するのをより一層確実に防止できる。また皮膚刺激性も抑制できる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮するとnは4であるのが好ましい。
上記第1のモノマーとしては、例えば
・ 式(a)中のR
1が水素原子で、かつnが4である4−ヒドロキシブチルアクリレート〔4HBA、ガラス転移温度Tg=−40℃〕
、
・ 式(a)中のR
1が水素原子で、かつnが5である5−ヒドロキシペンチルアクリレート(5HPeA)、
ならびに2−ヒドロキシプロピルアクリレート〔2HPA、ガラス転移温度Tg=−7℃〕からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。特に4HBAが好ましい。
【0034】
また第2のモノマーとしては、先述したようにペンタエリスリトールトリアクリレート〔サートマー社製のSR444、ガラス転移温度Tg=103℃〕、ペンタエリスリトール4EOテトラアクリレート〔第一工業製薬(株)製のニューフロンティア(登録商標)PETA−4、ガラス転移温度Tg=103℃〕およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート〔サートマー社製のSR355、ガラス転移温度Tg=98℃〕からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
第1のモノマーの配合割合は、インクジェットインクの総量の5質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、15質量%以下、特に12質量%以下であるのが好ましい。
第1のモノマーの配合割合がこの範囲未満では、当該第1のモノマーを配合することによる先に説明した効果が得られず、布帛に対するインクジェットインクの染み込みが少なすぎて文字等の定着性、耐洗濯性が低下するおそれがある。また第1のモノマーによる、固形分の溶解性を維持する効果が不十分になって当該固形分がインクジェットインク中に析出しやすくなり、析出に伴う上述した各種の不良が発生しやすくなるおそれもある。
【0036】
一方、第1のモノマーの配合割合が上記の範囲を超える場合には、インクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎて文字等の印字濃度が低下するおそれがある。
これに対し第1のモノマーの配合割合を上記の範囲とすることにより、析出等を生じにくい上、布帛に対して印字濃度が高くかつ耐洗濯性に優れた文字等を印刷できる。
また第2のモノマーの配合割合は、インクジェットインクの総量の5質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、15質量%以下、特に12質量%以下であるのが好ましい。
【0037】
第2のモノマーの配合割合がこの範囲未満では、当該第2のモノマーを配合することによる先に説明した効果が得られず、インクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎて文字等の印字濃度が低下するおそれがある。
一方、第2のモノマーの配合割合が上記の範囲を超える場合には、布帛に対するインクジェットインクの染み込みが少なすぎて文字等の定着性、耐洗濯性が低下するおそれがある。
これに対し第2のモノマーの配合割合を上記の範囲とすることにより、布帛に対して印字濃度が高くかつ耐洗濯性に優れた文字等を印刷できる。
【0038】
(アミン変性アクリレートオリゴマー)
(1)のラジカル重合性成分としては、アミン変性アクリレートオリゴマーを配合してもよい。特に上述した第1および第2のモノマーの併用系に、アミン変性アクリレートオリゴマーを配合するのが好ましい。
【0039】
かかる併用系においてアミン変性アクリレートオリゴマーは、前述した第1のモノマーとともに(4)のアルコールを含む系中で光ラジカル重合開始剤やその増感剤などの固形分が析出するのを防止するために機能する。また顔料の分散剤としても機能する。
そのため析出や顔料の分散不良を生じてインクジェットインクの貯蔵安定性が低下したり、吐出不良を生じたり、光硬化反応が阻害されたり、あるいは文字等の布帛への定着が阻害されたりするのをより一層確実に防止できる。
【0040】
アミン変性アクリレートオリゴマーとしては、例えばいずれもサートマー社製のCN371〔アミン価:136mgKOH/g〕、CN373〔アミン価:235mgKOH/g〕、CN383〔アミン価:150mgKOH/g〕、CN386〔アミン価:200mgKOH/g〕、CN551等の1種または2種以上が挙げられる。
アミン変性アクリレートオリゴマーの配合割合は、インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、4質量%以下、特に3質量%以下であるのが好ましい。
【0041】
(シリコン変性ポリエーテルアクリレート)
(1)のラジカル重合性成分としては、シリコン変性ポリエーテルアクリレートを配合してもよい。特に上述した第1および第2のモノマーの併用系に単独で、あるいはアミン変性アクリレートオリゴマーとともに、シリコン変性ポリエーテルアクリレートを配合するのが好ましい。
【0042】
かかるシリコン変性ポリエーテルアクリレートは界面活性剤としても機能してインクジェットインクの表面張力を調整し、それによって当該インクジェットインクの、インクジェットプリンタのノズルに対する濡れ性を調整し、吐出性を改善して印字の鮮明性を向上して、例えばバーコードの細線をよりシャープにしたり、あるいはパドリングの発生を抑制したりするために機能する。
【0043】
パドリングとは、ノズルを通してインク滴が吐出される際に当該インク滴から分離してノズル側に残ったインクジェットインクが、ノズルが形成されたノズルプレートのノズルの出口の周囲に濡れ拡がってインク溜まり(パドル)を形成する現象である。
パドリングを生じるとインク滴の吐出が妨げられて、吐出されたインク滴の軌道が変化したり、所定体積のインク滴が吐出されなかったり、あるいはインク滴が全く吐出されなかったりする結果、良好な文字等を印刷できなくなるおそれがある。
【0044】
これに対し、シリコン変性ポリエーテルアクリレートを配合してパドリングの発生を抑制すると、良好な文字等を連続的に印刷できる枚数を増加させる、すなわち連続印刷性を向上させることができる。
特にインクジェットインクに後述するラジカル重合禁止剤を添加することにより、例えばサーマル方式のインクジェットプリンタに使用してインク滴吐出のために加熱された際などにラジカル重合性成分がラジカル重合反応するのを抑制すると、シリコン変性ポリエーテルアクリレートを配合することによる上述した効果と相まってパドリングによる上述した弊害の発生をより一層良好に抑制して、インクジェットインクの連続印刷性をさらに向上できる。
【0045】
シリコン変性ポリエーテルアクリレートとしては、例えばエボニック インダストリーズ社製のTEGO(登録商標)Radシリーズのうち2010、2011、2100等の1種または2種以上が挙げられる。
シリコン変性ポリエーテルアクリレートの配合割合は、インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.3質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下、特に1質量%以下であるのが好ましい。
【0046】
(その他のラジカル重合性成分)
(1)のラジカル重合性成分としては、上記以外にも例えばポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のラジカル重合性のオリゴマーや、先述した第1および第2のモノマー以外の各種のラジカル重合性モノマー等の、種々のラジカル重合性の化合物が併用可能である。
【0047】
〈(2) 光ラジカル重合開始剤〉
(2)の光ラジカル重合開始剤としては、紫外線等の任意の波長の光の照射によってラジカルを発生して(1)のラジカル重合性成分を光硬化反応できる種々の化合物が使用可能である。
かかる(2)の光ラジカル重合開始剤としては、例えば下記化合物等の1種または2種以上が挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、
特開2008−280427号公報の一般式(1)で表されるベンゾフェノン化合物等のベンゾフェノン類またはその塩。
【0049】
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン、
特開2008−280427号公報の一般式(2)で表されるチオキサントン化合物等のチオキサントン類またはその塩。
エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。
【0050】
アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4′−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類。
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類。
【0051】
ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ‐1‐(4−モルホリノフェニルブタン)−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、9,10−フェナンスレンキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン類。
【0052】
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体。
ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類。
【0053】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリハロメチルトリアジン、ベンジル等。
【0054】
中でも特に2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製のイルガキュア(IRGACURE、登録商標)TPO〕が好ましい。
(2)の光ラジカル重合開始剤の配合割合は任意に設定できるものの、インクジェットインクに良好な光硬化性を付与することを考慮すると、当該インクジェットインクの総量の0.5質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、8質量%以下、特に5質量%以下であるのが好ましい。
【0055】
〈(3) 粘着付与剤〉
(3)の粘着付与剤としては、先に説明したように水酸基価が10mgKOH/g以上、45mgKOH/g以下である、テルペンフェノール樹脂およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。
先述したように水酸基価が上記の範囲にある(3)の粘着付与剤は、(4)の炭素数1〜3のアルコールに対して適度の溶解性を有するためインクジェットインク中に良好に溶解させることができ、当該インクジェットインクの貯蔵安定性を向上できる。また間欠印刷性を向上してデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくくできる。
【0056】
テルペンフェノール樹脂としては、イソプレンが頭尾で順次結合した基本骨格(C
5H
8)
p(ただしpは整数。)を有するテルペンとフェノール類との共重合体であって、水酸基価が上記の範囲にある種々のテルペンフェノール樹脂が使用可能である。
かかるテルペンフェノール樹脂としては、例えばヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU130(水酸基価:25mgKOH/g)、YSポリスターU115(水酸基価:30mgKOH/g)や、同社製の試作品(水酸基価:10mgKOH/g)、試作品(水酸基価:40mgKOH/g)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0057】
またロジンエステルとしては、一塩基性カルボン酸でアルキル化ヒドロフェナントレン核を有するアビエチン型またはピマリン型の樹脂酸を主体とするロジンとアルコール類とのエステルであって、水酸基価が上記の範囲にある種々のロジンエステルが使用可能である。
なおロジンとしては、例えばアビエチン酸、デキストロピマル酸等の不飽和結合を含む樹脂酸からなるものや、水素添加されたジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸等を主体とする水添ロジン等が挙げられる。またアルコール類としては、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
【0058】
かかるロジンエステルとしては、例えばハリマ化成(株)製のKSU005(水酸基価:11.5mgKOH/g)、KSU007(水酸基価:26.8mgKOH/g)、DS−822(水酸基価:29mgKOH/g)、荒川化学工業(株)製のスーパーエステルA−125(水酸基価:25mgKOH/g)、ペンセル(登録商標)D−125(水酸基価:30mgKOH/g)、パインクリスタル(登録商標)KE−359(水酸基価:43mgKOH/g)、(株)理化ファインテク製のペンタリン(登録商標)CJ(水酸基価:40mgKOH/g)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
(3)の粘着付与剤の配合割合は、インクジェットインクの総量の0.8質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、4質量%以下、特に2質量%以下であるのが好ましい。
(3)の粘着付与剤の配合割合がこの範囲未満では粘着性が不足して、布帛に対する文字等の定着性、耐洗濯性が低下するおそれがある。
一方、(3)の粘着付与剤の配合割合が上記の範囲を超える場合にはインクジェットインクの貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0060】
〈(4) アルコール〉
(4)の炭素数1〜3のアルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールのうちの1種または2種以上が挙げられる。
【0061】
(4)のアルコール選定のポイントとしては、特にサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際の揮発性、発泡性の良否、ならびに(3)の粘着付与剤の溶解性の良否である。
すなわち揮発性、発泡性はメタノール>エタノール>2−プロパノール>1−プロパノールの順であり、粘着付与剤の溶解性は1−プロパノール>2−プロパノール>エタノール>メタノールの順であるが、これらの特性の両立と、環境への負荷を低減することとを合わせ考慮するとエタノールが好ましい。
【0062】
また揮発性、発泡性の良いエタノールを主成分として、(3)の粘着付与剤の溶解性を補助するために2−プロパノールおよび/または1−プロパノール(以下「プロパノール」と総称する場合がある)を併用することも可能である。
かかる併用系におけるエタノールとプロパノールの質量比E/P=4/1〜10/1、特に6/1〜8/1(Eはエタノール、Pはプロパノールの質量を示す。)であるのが好ましい。
【0063】
また(4)のアルコールの配合割合、すなわち上記アルコールのうちの1種のみを単独で使用する場合はその配合割合、2種以上を併用する場合はその合計の配合割合は、インクジェットインクの残量とする。
すなわち上記(1)〜(3)の各成分や、本発明のインクジェットインクにさらに配合してもよい次項(5)以下の各成分を所定の割合で配合し、さらに総量が100質量%となるようにアルコールを加えてインクジェットインクを調製すればよい。
【0064】
ただし(4)のアルコールの配合割合は、インクジェットインクの総量の60質量%以上、特に65質量%以上であるのが好ましく、80質量%以下、特に75質量%以下であるのが好ましい。
(4)のアルコールの配合割合がこの範囲未満では、インクジェットインクの粘度が高くなる傾向があり、それを防止するために反応性希釈剤として単官能のモノマーを多量に配合すると先述したように光硬化反応後の架橋密度が不足して文字等の耐溶剤性や耐洗濯性が低下するおそれがある。
【0065】
また(4)のアルコールは、例えばサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際に先述したように気泡の生成成分として機能するが、その配合割合が上記の範囲未満では加熱しても先述したメカニズムによって気泡を良好に発生させて、ノズルを通して適正なインク滴を吐出できないおそれもある。
一方、(4)のアルコールの配合割合が上記の範囲を超える場合には乾燥固化に比較的長時間を要するため、印刷速度をアップしてケアラベル等の生産性を向上できないおそれがある。またインクジェットインクが布帛の内部へ染み込みすぎて文字等の印字濃度が低下するおそれもある。
【0066】
〈(5) 増感剤〉
本発明のインクジェットインクには、(2)の光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を配合してもよい。
増感剤は、光照射によって励起状態となって光ラジカル重合開始剤と相互作用して、当該光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助けるために機能する。
【0067】
特に光照射の光源としてLEDを使用する場合、当該LEDからの紫外線等の光は波長域が狭いことから、感度を有する波長域を広げて感度を向上する、すなわち増感するために増感剤を配合するのが好ましい。
増感剤としては、先に説明した光ラジカル重合開始剤のうちチオキサントン類またはその塩、中でも2−イソプロピルチオキサントン〔ランブソンジャパン(株)製のSpeedcure(登録商標)2−ITX〕が好適に使用される。
【0068】
またその他の増感剤としては、例えばナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0069】
増感剤としては、以上で説明した各種の増感剤の中から、光源からの光の波長域、ならびに光ラジカル重合開始剤の吸収波長域に応じて、増感に適した吸収波長域を有するものをそれぞれ1種単独で使用できる他、2種以上を併用してもよい。
増感剤の配合割合は任意に設定できるものの、良好な増感効果を得ることを考慮すると、インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、特に0.3質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下、特に1質量%以下であるのが好ましい。
【0070】
〈(6) ラジカル重合禁止剤〉
ラジカル重合禁止剤は、前述したようにサーマル方式のインクジェットプリンタに使用してインク滴吐出のために加熱された際などにラジカル重合性成分がラジカル重合反応してパドリングを生じるのを防止するために機能する。またインクジェットインクを貯蔵中、あるいはパッケージに封入して保管中にラジカル重合性成分がラジカル重合反応してゲル化するのを防止するためにも機能する。
【0071】
ラジカル重合禁止剤としては、かかる機能を有する種々の化合物がいずれも使用可能である。
ラジカル重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類等の1種または2種以上が挙げられる。
【0072】
このうちハイドロキノン類としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチロールハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
またカテコール類としては、例えばカテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0073】
ヒンダードアミン類としては、重合禁止効果を有する任意のヒンダードアミン類の1種または2種以上が好ましい。
フェノール類としては、例えばフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸アルキルエステル、ヒンダードフェノール類等の1種または2種以上が挙げられる。
【0074】
フェノチアジン類としては、例えばフェノチアジン等が挙げられる。
さらに縮合芳香族環のキノン類としては、例えばナフトキノン等が挙げられる。
中でもラジカル重合禁止剤としては、重合禁止効果の効率に優れ、(1)のラジカル重合性成分のラジカル重合反応を効率よく禁止できるヒンダードアミン類およびヒンダードフェノール類からなる群より選ばれた少なくとも1種、特にヒンダードアミン類が好ましい。
【0075】
また、ヒンダードアミン類の中でも分子中にテトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン類、特に4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリジジニルオキシ〔BASF社製のイルガスタブ(IRGASTAB、登録商標)UV10〕等が、重合禁止効果の効率に特に優れるためラジカル重合禁止剤としてより一層好適に使用される。
ラジカル重合禁止剤の配合割合は、インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、特に0.3質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下、特に1質量%以下であるのが好ましい。
【0076】
〈(7) 着色剤〉
着色剤としては種々の顔料、染料等が挙げられる。着色剤としては、インクジェットインクの色味に応じた各色の着色剤がいずれも使用可能である。特に文字等の耐洗濯性、耐光性、耐候性等を向上することを考慮すると種々の無機顔料および/または有機顔料が好ましい。
【0077】
このうち無機顔料としては、例えば酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された中性、酸性、塩基性等の種々のカーボンブラックの1種または2種以上が挙げられる。
また有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の1種または2種以上が挙げられる。
【0078】
無機または有機の顔料は、インクジェットインクの色目に応じて1種または2種以上を用いることができる。例えばカーボンブラックで黒色を表現する場合、より青黒く見せるためにシアン顔料を添加してもよい。
また顔料は、インクジェットインク中での分散安定性を向上するために表面を処理してもよい。
【0079】
また顔料は、インクジェットインクを構成する溶剤との相溶性に優れ、しかも顔料を良好に分散させることができる任意の溶剤、もしくは低粘度のラジカル重合性のモノマー(反応性希釈剤)中に分散させた顔料分散液の状態でインクジェットインクの製造に用いてもよい。
ラジカル重合性のモノマーとしては、例えばイソボルニルアクリレート(IBXA)等が挙げられる。また顔料分散液には、顔料を良好に分散させるために分散剤等を添加してもよい。
【0080】
顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
着色剤の配合割合は、インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に5質量%以下であるのが好ましい。
【0081】
顔料分散液を使用する場合、顔料の配合割合は、顔料分散液中に含まれる有効成分としての顔料自体の割合である。また2種以上の顔料を併用する場合は、その総量を上記の範囲に設定すればよい。
以上で説明した各成分を含む本発明のインクジェットインクによれば、サーマル方式のインクジェットプリンタに使用しても良好な印刷が可能で、しかも貯蔵安定性や間欠印刷性に優れるとともに短時間で乾燥固化できるため印刷速度をアップしてケアラベル等の生産性を向上できる上、当該ケアラベル等のもとになる布帛に対して印字濃度が高くかつ耐洗濯性に優れた文字等を印刷できるという特有の効果を奏する。
【実施例】
【0082】
〈実施例1〉
下記の各成分を表1に示す割合で混合したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過してインクジェットインクを調製した。
(1) ラジカル重合性成分
(第1のモノマー)
4−ヒドロキシブチルアクリレート、日本化成(株)製の4HBA、ガラス転移温度Tg=−40℃
(第2のモノマー)
ペンタエリスリトール4EOテトラアクリレート、第一工業製薬(株)製のニューフロンティア PETA−4、ガラス転移温度Tg=103℃
(アミン変性アクリレートオリゴマー)
サートマー社製のCN371、アミン価:136mgKOH/g
(シリコン変性ポリエーテルアクリレート)
エボニック インダストリーズ社製のTEGO Rad 2010
(2) 光ラジカル重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製のイルガキュア(IRGACURE)TPO
(3) 粘着付与剤
テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU115、水酸基価:30mgKOH/g
(4) 炭素数1〜3のアルコール
エタノール
1−プロパノール
(5) 増感剤
2−イソプロピルチオキサントン、ランブソンジャパン(株)製のSpeedcure 2−ITX
(6) ラジカル重合禁止剤
4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリジジニルオキシ、BASF社製のイルガスタブ(IRGASTAB)UV10
(7) 着色剤
カーボンブラック
【0083】
【表1】
【0084】
第1のモノマーとしての4HBAと第2のモノマーとしてのPETA−4の質量比M
1/M
2=1/1であった。またエタノールと1−プロパノールの質量比E/P=6.8/1であった。
〈実施例2〉
粘着付与剤として、水酸基価が10mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製の試作品〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0085】
〈実施例3〉
粘着付与剤として、水酸基価が40mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製の試作品〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0086】
〈実施例4〉
粘着付与剤として、水酸基価が30mgKOH/gであるロジンエステル〔荒川化学工業(株)製のペンセルD−125〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0087】
〈実施例5〉
粘着付与剤として、水酸基価が11.5mgKOH/gであるロジンエステル〔ハリマ化成(株)製のKSU005〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0088】
〈実施例6〉
粘着付与剤として、水酸基価が40mgKOH/gであるロジンエステル〔(株)理化ファインテク製のペンタリンCJ〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0089】
〈実施例7〉
第1のモノマーとしての4HBAの量を6.7質量部、第2のモノマーとしてのPETA−4の量を13.3質量部、両モノマーの質量比M
1/M
2=1/2としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0090】
〈実施例8〉
第1のモノマーとしての4HBAの量を13.3質量部、第2のモノマーとしてのPETA−4の量を6.7質量部、両モノマーの質量比M
1/M
2=2/1としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0091】
〈実施例9〉
第1のモノマーとしての4HBAの量を5.0質量部、第2のモノマーとしてのPETA−4の量を15.0質量部、両モノマーの質量比M
1/M
2=1/3としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0092】
〈実施例10〉
第1のモノマーとしての4HBAの量を15.0質量部、第2のモノマーとしてのPETA−4の量を5.0質量部、両モノマーの質量比M
1/M
2=3/1としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0093】
〈実施例11〉
アミン変性アクリレートオリゴマーに代えてエポキシアクリレートオリゴマー〔サートマー社製のCN112〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0094】
〈実施例12〉
シリコン変性ポリエーテルアクリレートに代えて、ラジカル重合性を有しないポリジメチルシロキサン〔ビックケミー社製のBYK307〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0095】
〈比較例1〉
粘着付与剤として、水酸基価が3mgKOH/gであるテルペン樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX800〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0096】
〈比較例2〉
粘着付与剤として、水酸基価が50mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT130〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0097】
〈比較例3〉
粘着付与剤を配合せず、エタノールの量を62.3質量部、1−プロパノールの量を9.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
モノマーの質量比M
1/M
2=1/1、アルコールの質量比E/P=6.8/1であった。
【0098】
〈貯蔵安定性評価〉
各実施例、比較例で調製したインクジェットインク20ccを瓶詰めして45℃で保管し、一定期間経過した時点で瓶をさかさまにした際に浮遊する凝集物の有無を確認して、下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
【0099】
○:1か月経過した時点でも凝集物は全く見られなかった。貯蔵安定性良好。
△:2週間経過した時点では凝集物は見られなかったが、1か月経過した時点ではわずかに凝集物が見られた。貯蔵安定性通常レベル。
×:2週間経過した時点で凝集物が見られた。貯蔵安定性不良。
〈間欠印刷性評価〉
各実施例、比較例で調製したインクジェットインクをサーマル方式のインクジェットプリンタ〔ビデオジェット(株)製のPrint Mail Wide Array(プリントメールワイドアレイ)、設定解像度600×600dpi〕に使用して、インク滴が吐出されない状態でノズル内のインクジェットインクが外気にさらされているデキャップタイムの長さを変えながら、当該デキャップタイムの終了直後にノズルの目詰まり等を生じることなく明瞭な印刷が可能であったか否かを観察して、下記の基準で間欠印刷性を評価した。
【0100】
○:デキャップタイムが5分間以上でも明瞭な印刷が可能であった。間欠印刷性良好。
△:デキャップタイムが1分間以上、5分間未満であれば明瞭な印刷が可能であった。間欠印刷性通常レベル。
×:デキャップタイムが1分間未満でないと明瞭な印刷ができなかった。間欠印刷性不良。
【0101】
〈印字濃度評価〉
各実施例、比較例で調製したインクジェットインクを間欠印刷性評価で使用したとの同じインクジェットプリンタに使用して、コート紙の表面にベタ印刷をしたのち、当該ベタ印刷の部分のOD値をハンディ型分光色差計〔日本電色工業(株)のNF777〕を用いて測定して、下記の基準で印字濃度を評価した。
【0102】
○:OD値は1.3以上であった。印字濃度良好。
△:OD値は1.0以上、1.3未満であった。印字濃度通常レベル。
×:OD値は1.0未満であった。印字濃度不良。
〈連続印刷性評価〉
各実施例、比較例で調製したインクジェットインクを、サーマル方式のインクジェットプリンタ〔Weber Marking Systems社製のMarkoprint iJET〕を連続吐出試験機として使用して12mm×15mmのベタ印刷を2000枚連続印刷した。そして印刷のかすれの有無、ならびに上記試験機のノズルプレートでのパドリングの有無を観察して、下記の基準で連続印刷性を評価した。
【0103】
○:印刷にかすれはなく、ノズルプレートにもパドリングは見られなかった。連続印刷性良好。
△:印刷にかすれは見られなかったが、ノズルプレートにわずかにパドリングが見られた。連続印刷性通常レベル。
×:印刷にかすれが見られ、ノズルプレートのパドリングも顕著であった。連続印刷性不良。
【0104】
〈耐洗濯性評価〉
各実施例、比較例で調製したインクジェットインクを間欠印刷性評価で使用したとの同じインクジェットプリンタに使用して、糸繊度:経50デニール×緯50デニール、織物密度:経260本/インチ×緯100本/インチのポリエステル朱子織のサテン布帛の表面にサンプルの文字等を印刷した。
【0105】
そして印刷した文字等を、LEDランプ出力12W×ライン速度16m/minの条件で紫外線を照射して光硬化反応させたのち、その耐洗濯性を、溶剤としてパークロロエチレンを用いた日本工業規格JIS L0860:2008「ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法」所載のA−1法によって、下記の基準で評価した。
○:変退色および汚染ともにグレースケール4級以上であった。耐洗濯性良好。
【0106】
△:変退色および汚染の少なくとも一方が3級に低下した。耐洗濯性通常レベル。
×:変退色および汚染の少なくとも一方が2級以下であった。耐洗濯性不良。
以上の結果を表2〜表4に示す。なお表中、粘着付与剤の種類の欄の符号はTp:テルペンフェノール樹脂、Ro:ロジンエステル、T:テルペン樹脂を示す。またオリゴマーの種類の欄の符号はCN371:アミン変性アクリレートオリゴマー〔前出のサートマー社製のCN371〕、EpAc:エポキシアクリレートオリゴマー〔前出のサートマー社製のCN112〕を示す。さらにシリコン含有成分の種類の欄の符号はRad2010:シリコン変性ポリエーテルアクリレート〔前出のエボニック インダストリーズ社製のTEGO Rad 2010〕、DmSi:ポリジメチルシロキサン〔前出のビックケミー社製のBYK307〕を示す。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
表2〜表4の実施例1〜12、比較例3の結果より、光硬化性のインクジェットインクにさらに粘着付与剤を配合することにより、布帛に対して耐洗濯性、および間欠印刷性に優れた文字等を印刷できることが判った。
ただし実施例1〜12、比較例1、2の結果より、上記の効果を得るためには、粘着付与剤として、水酸基価が10mgKOH/g以上、45mgKOH/g以下のテルペンフェノール樹脂および/またはロジンエステルを選択して配合する必要があることが判った。
【0111】
また特に実施例1、実施例7〜10の結果より、ラジカル重合性成分としては、式(a)で表される第1のモノマーと、前述した3種の特定の第2のモノマーのうちの少なくとも1種とを併用するのが好ましいこと、その質量比M
1/M
2=1/2〜2/1であるのが好ましいことが判った。
また実施例1、実施例11の結果より、ラジカル重合性成分としては、さらにアミン変性アクリレートオリゴマーを併用するのが好ましいことが判った。
【0112】
さらに実施例1、12の結果より、ラジカル重合性成分としては、さらにシリコン変性ポリエーテルアクリレートを併用するのが好ましいことが判った。