(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したリアクタの反応流路においては、吸熱反応や発熱反応が遂行されることとなる。そこで、反応流路内の反応流体と反応流路外との熱伝達効率を向上するために、反応流路を形成する反応流路隔壁を、熱伝導性が高い金属で構成することがある。
【0007】
ここで、金属性の反応流路隔壁で形成された反応流路に、上記特許文献1に記載された触媒板を設けたリアクタでは、触媒板と反応流路隔壁との対向する面が接触して、触媒板と反応流路隔壁とが密着することとなる。このようなリアクタで吸熱反応を遂行する際、反応を促進するために反応流路隔壁を外部から加熱すると、触媒板と反応流路隔壁とが密着した状態で高温に曝されることとなる。また、上記金属製の反応流路隔壁と触媒板とを備えたリアクタで発熱反応を遂行する場合も、反応流体の反応による発熱で反応流路内の温度が上昇するため、触媒板と反応流路隔壁とが密着した状態で高温に曝されることとなる。
【0008】
そうすると、触媒板と反応流路隔壁とが固着してしまうおそれがある。触媒板と反応流路隔壁とが固着すると、触媒板を交換する際に反応流路隔壁からの触媒板の抜き取りが困難になり、触媒板を交換するためにリアクタを分解するといった煩雑な作業を作業者に強いることとなってしまう。また、触媒板の抜き取り方によっては反応流路隔壁が歪んでしまい、再利用できなくなるおそれもある。
【0009】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、反応流路隔壁と触媒板との接触面の構造を工夫することで、反応流路隔壁と触媒板との接触面積を低減して固着を回避または抑制することが可能なリアクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のリアクタは、反応流路隔壁によって形成され、反応対象となる流体である反応流体が流通する反応流路と、
反応流路隔壁の少なくとも一部を構成する伝熱隔壁を介して反応流路と並行して設けられ、反応流路を流通する反応流体と熱交換を行う流体である熱媒体が流通する熱媒体流路を含み、反応流路隔壁外から反応流体を加熱または冷却する温度調整部と、反応流路隔壁内に載置され、反応流体の反応を促進する触媒が表面に担持された金属板である触媒板と、を備え、反応流路隔壁のうち触媒板と接触する接触部を有する接触面
には、触媒板のうち反応流路隔壁と接触する接触部を有する接触
面との間に空隙を形成するための接触面積低減部が、反応流体の流通方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
また
、触媒板
の接触面は平滑面で構成され
、反応流路隔壁の接触面には、反応流体の流通方向に、接触面積低減部と接触部とが交互に配されているとしてもよい。
【0015】
また、反応流路と、熱媒体流路とが、伝熱隔壁を介して交互に複数積層されてなるとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反応流路隔壁と触媒板との接触面の構造を工夫することで、反応流路隔壁と触媒板との接触面積を低減して、固着を回避または抑制することが可能なリアクタを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(リアクタ100)
図1は、本実施形態にかかるリアクタ100を説明するための図であり、
図2は、熱媒体流路隔壁230および反応流路隔壁240を説明するための図である。本実施形態の
図1および
図2では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。また、
図1中、理解を容易にするために触媒板140の記載を省略する。
【0020】
図1および
図2に示すように、リアクタ100は、伝熱隔壁110が予め定められた間隔で離隔して複数積層された構造となっている。また、リアクタ100を構成する上面部102、側壁部114、サイドバー116、伝熱隔壁110(個々に110a、110bで示す場合もある)、反応流体導入部120、反応流体排出部122、熱媒体導入部130、熱媒体排出部132はすべて金属材料(例えば、ステンレス鋼(SUS310、Haynes(登録商標)230)等の耐熱金属)で形成されている。
【0021】
リアクタ100を製造する場合、伝熱隔壁110を積層し、側壁部114、サイドバー116を介してそれぞれを接合する。また上面部102は、側壁部114、サイドバー116を介して伝熱隔壁110に接合され、伝熱隔壁110と平行な位置関係にある。そして、反応流体導入部120、反応流体排出部122、熱媒体導入部130、熱媒体排出部132を、積層された伝熱隔壁110にそれぞれ接合する。リアクタ100を製造する際に用いる接合方法に限定はないが、例えば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接や拡散接合が利用できる。
【0022】
ここで、伝熱隔壁110によって区画される空間のうち、反応流体導入部120および反応流体排出部122側に形成された孔210aを介して、反応流体導入部120および反応流体排出部122と連通した空間が反応流路210となる。また、伝熱隔壁110によって区画される空間のうち、熱媒体導入部130および熱媒体排出部132側に形成された孔220aを介して、熱媒体導入部130および熱媒体排出部132と連通した空間が熱媒体流路220となる。本実施形態のリアクタ100では、
図1(a)と
図1(b)とを比較して解るように、反応流路210と熱媒体流路220とが伝熱隔壁110に区画されて並行して設けられるとともに、反応流路210と熱媒体流路220とが交互に積層された構造となっている。
【0023】
具体的に説明すると、
図2(a)に示すように、熱媒体流路220は、熱媒体流路隔壁230として形成される、伝熱隔壁110a、リブ112、側壁部114、サイドバー116不図示の伝熱隔壁110b(または上面部102)を含んで構成される。
【0024】
伝熱隔壁110aは、熱媒体流路220の底面を構成する。また、上面部102もしくは後述する伝熱隔壁110bは、熱媒体流路隔壁230の上面を構成する。リブ112は、伝熱隔壁110aから垂直に立設され、伝熱隔壁110a、伝熱隔壁110b間の空間を保持する。側壁部114は伝熱隔壁110aの端部から垂直に立設され、リアクタ100の側壁を構成する。また、側壁部114のうち、熱媒体導入部130および熱媒体排出部132が接合される側の側壁部114には、切り欠き114aが設けられており、伝熱隔壁110が積層されたときに、当該切り欠き114aが孔220aを形成することとなる。そして、熱媒体導入部130から孔220aを介して熱媒体流路220内へ熱媒体が導入されたり、熱媒体流路220内から孔220aを介して熱媒体排出部132へ熱媒体が排出されたりする。サイドバー116は、伝熱隔壁110aに設けられ、反応流体導入部120からの反応流体の混入を防止する。
【0025】
図2(b)に示すように、反応流路210は、反応流路隔壁240として形成される、伝熱隔壁110b、リブ112、側壁部114、不図示の伝熱隔壁110aを含んで構成される。
【0026】
伝熱隔壁110bは、反応流路210の底面を構成する。また、伝熱隔壁110aは、反応流路隔壁240の上面を構成する。伝熱隔壁110bにも、上記伝熱隔壁110aと同様に複数のリブ112が伝熱隔壁110bから垂直に立設され、伝熱隔壁110bと伝熱隔壁110a間の空間を保持する。また側壁部114は伝熱隔壁110bの端部から垂直に立設され、リアクタ100の側壁を構成する。なお、伝熱隔壁110bには、伝熱隔壁110aと異なり、サイドバー116が設けられていないため、両側壁部114間に間隙114bが形成されることとなる。間隙114bは、伝熱隔壁110が積層されたときに、孔210aを形成する。そして、反応流体導入部120から孔210aを介して反応流路210内へ反応流体が導入されたり、反応流路210内から孔210aを介して反応流体排出部122へ反応生成物が排出されたりする。
【0027】
また、本実施形態にかかるリアクタ100の寸法は、例えば、
図1中X軸方向の距離が1m程度、
図1中Y軸方向の距離が1m程度、伝熱隔壁110間の離隔距離が数mm程度である。なお、
図1では、理解を容易にするために、
図1中X軸方向の距離およびY軸方向の距離と比較して、伝熱隔壁110間の離隔距離を大きく示している。
【0028】
図2(b)に戻って説明すると、反応流路隔壁240には、波板形状(コルゲート形状)の金属板に触媒(活性金属)が担持された触媒板140が載置される。金属板を構成する金属材料としては、ステンレス鋼(SUS310など)、Aluchrom、Fecralloy、Kanthal、Nissin steel、Ugine Saorieが挙げられる。
【0029】
ここで、触媒は反応流路210において遂行される反応に適した触媒であり、例えば、反応流路210において遂行される反応がメタンの水蒸気改質反応である場合、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、Pt(白金)の群から選択される1または複数の金属である。
【0030】
図1に戻って説明すると、熱媒体導入部130から熱媒体が導入されると、
図1(a)中実線の矢印で示すように、熱媒体流路220を熱媒体が流通し、熱媒体排出部132から排出される。また、反応流体導入部120から反応流体(反応対象となる流体)が導入されると、
図1(b)中破線の矢印で示すように、反応流路210を反応流体が流通し、反応流体排出部122から排出される。なお、
図1に示すように、本実施形態において、反応流体と熱媒体とは、対向流の関係となっている。
【0031】
このように、反応流路210と熱媒体流路220とが伝熱隔壁110によって区画されて並行して設けられることから、熱媒体流路220を流通する熱媒体は、伝熱隔壁110を介して、反応流路210を流通する反応流体と熱交換することとなる。ここで、反応流路210において吸熱反応が遂行される場合、熱媒体流路220および熱媒体は、反応流路210を流通する反応流体に熱を供給(加熱)し、反応流路210において発熱反応が遂行される場合、熱媒体流路220および熱媒体は、反応流路210を流通する反応流体を除熱(冷却)する温度調整部として機能する。
【0032】
なお、本実施形態において、熱媒体流路220には、熱媒体として気体が流通する。かかる構成により、熱媒体を液体で構成する場合と比較して、取り扱いが容易である。
【0033】
例えば、下記化学式(1)に示すメタンの水蒸気改質反応や、化学式(2)に示すメタンのドライリフォーミング反応は、吸熱反応である。
CH
4 + H
2O → 3H
2 + CO…化学式(1)
上記化学式(1)に示す、メタンの水蒸気改質反応は、エンタルピー変化(Δ
0298H)が−206kJ/mol程度の吸熱反応である。
CH
4 + CO
2 → 2H
2 + 2CO…化学式(2)
上記化学式(2)に示す、メタンのドライリフォーミング反応は、エンタルピー変化(Δ
0298H)が−247kJ/mol程度の吸熱反応である。
【0034】
リアクタ100において上記のような吸熱反応を遂行させる場合、高温の熱媒体を熱媒体流路220に導入する。熱媒体は、伝熱隔壁110を介して反応流路210を流通する反応流体と熱交換するが、このとき、反応流路隔壁240と、反応流路隔壁240に載置された触媒板140も伝熱経路となるため、反応流路隔壁240と触媒板140は高温となる。
【0035】
図3は、反応流路隔壁240と触媒板140とが接触する接触部10を説明するための比較図であり、反応流路隔壁240と触媒板140の断面を示す。
図3の比較図に示すように、仮に、反応流路隔壁240のうち触媒板140と接触する接触部10を有する接触面20aや、触媒板140のうち反応流路隔壁240と接触する接触部10を有する接触面20bに何ら加工することなく、反応流路隔壁240に触媒板140を載置すると、反応流路隔壁240は、触媒板140と対向する面である接触面20aが、当該触媒板140と接触して、反応流路隔壁240と触媒板140の接触面20bとが密着する。具体的には、触媒板140の接触面20bは伝熱隔壁110a、110bおよびリブ112の接触面20aが接触部10で密着する。そのため、上記の吸熱反応を進行させる場合、反応流路隔壁240と触媒板140とは、接触部10で密着した状態で長時間高温に曝されることとなる。その結果、反応流路隔壁240を構成する金属と触媒板140を構成する金属板とが接触部10で固着してしまうおそれがあった。
【0036】
そこで本実施形態では、反応流路隔壁240における接触面240aの構造を工夫することで、反応流路隔壁240と触媒板140との接触面積を低減して固着または抑制を回避または抑制する。
【0037】
図4は、本実施形態における反応流路隔壁240および触媒板140の断面図である。
図4に示すように、反応流路隔壁240のうち、触媒板140と対向する面を接触面240aとし、触媒板140のうち、反応流路隔壁240と対向する面を接触面140aとする。本実施形態では、反応流路隔壁240の接触面240a、より詳細には、伝熱隔壁110a、110bおよびリブ112が触媒板140と接触する面である接触面240aに、サンドブラスト、エッチング処理等を施している。これにより、接触面240aは、その表面に微細な高低差(凹凸)が設けられることとなる。一方、触媒板140の接触面140aは、平滑面で構成されている。
【0038】
ここで、反応流路隔壁240の接触面240aと、触媒板140の接触面140aとにおいて、両者が接触する部分を接触部Xとする。つまり、接触部Xは、接触面140a、240aの双方に存在することとなるが、接触面240aのうち、触媒板140と接触する接触部X以外の部分には、接触面140aとの間に空隙が維持されることとなる。ここで、接触面240aのうち、接触部X以外の部分、すなわち、接触面140aとの間の空隙を形成する部分を接触面積低減部250とすると、この接触面積低減部250によって、接触面240aと接触面140aとの接触面積が低減され、反応流路隔壁240と触媒板140との部分的な接触が実現されている。
【0039】
以上のように、反応流路隔壁240のうち、触媒板140と接触する接触部Xを有する接触面240aに、触媒板140の接触面140aとの間に空隙を形成するための接触面積低減部250を設けることで、両者の接触面積を低減することができるので、仮に、接触部Xが固着したとしても、固着面積が小さく、触媒板140を容易に抜き取り、交換することが可能となる。
【0040】
なお、ここでは、反応流路隔壁240の接触面240aに接触面積低減部250を設けることとしたが、接触面積低減部250は、反応流路隔壁240の接触面240a、および、触媒板140の接触面140aの双方に設けてもよいし、触媒板140の接触面140aにのみ設けてもよい。ただし、反応流路隔壁240側に接触面積低減部250を設けた場合、一度、接触面積低減部250を形成しさえすれば、以後、接触面積低減部250の再形成が不要なので、接触面積低減部250は反応流路隔壁240側に設けられることが好ましい。
【0041】
(第1変形例)
図5は、第1変形例にかかる接触面積低減部520を説明するための図である。
図5(a)は、反応流路隔壁500の一部の斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の部分拡大図である。また、
図5中、理解を容易にするために触媒板140の記載を省略する。
図5に示すように、反応流路隔壁500における、触媒板140との対向面となる接触面510、つまり、伝熱隔壁110a、110bとリブ112側の面に、接触面積低減部520として溝部530が設けられている。
【0042】
この溝部530は、
図5中X軸方向、すなわち、反応流体の流通方向に、一定の間隔で形成されている。したがって、上記実施形態と同様に、平滑面で構成される接触面140aを有する触媒板140を、反応流路隔壁500内に載置すると、接触面510のうち、溝部530以外の部分が、触媒板140と接触する接触部Xとなる。このことからも明らかなように、接触面510には、反応流体の流通方向に、溝部530(接触面積低減部520)と接触部Xとが交互に配されることとなる。この第1変形例の構成によっても、上記実施形態と同様の作用効果を実現可能である。
【0043】
なお、この第1変形例によれば、溝部530(接触面積低減部520)を反応流路隔壁500の接触面510に形成する場合について説明したが、上記と同様に、触媒板140の接触面140aにのみ形成してもよいし、接触面140a、510の双方に形成してもよい。
【0044】
(第2変形例)
図6は、第2変形例にかかるリアクタ600を説明するための図である。なお、この第2変形例のリアクタ600は、反応流路隔壁610の接触面610aが平滑面で構成されており、接触面610aと触媒板140の接触面140aとの間にメッシュ状の金属部材620が設けられている点が上記実施形態と異なり、その他の構成は上記実施形態と同様である。したがって、ここでは、上記実施形態と異なる構成について説明し、上記実施形態と同様の構成については、上記と同様の符号を付するとともに、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図6に示すように、第2変形例のリアクタ600においても、反応流路隔壁610内に触媒板140が載置されるが、このとき、反応流路隔壁610と触媒板140との間には、メッシュ状の金属部材620が設けられている。この金属部材620は、伝熱隔壁110a、110bまたはリブ112に、例えば溶接によって固着される。また、金属部材620の材質としては、熱伝導性が高く、容易に入手できるステンレス鋼等の耐熱金属が好ましい。
【0046】
金属部材620がメッシュ状であることから、触媒板140と金属部材620とが接触する部分の接触面積は、反応流路隔壁610内に、触媒板140を直接載置した場合よりも低減されるため、上記実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
例えば、上述した実施形態および変形例において、反応流体と熱媒体とを対向流として熱交換させるリアクタ100、600を例に挙げて説明したが、反応流体と熱媒体とを平行流として熱交換させるリアクタであってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態および変形例では、リアクタ100、600が吸熱反応を遂行する場合を例に挙げて説明したが、発熱反応を遂行してもよい。
【0050】
また、上述した実施形態および変形例では、熱媒体によって反応流体を加熱または冷却する温度調整部が、伝熱隔壁110を介して反応流路210と並行して設けられ、反応流路210を流通する反応流体と熱交換を行う流体である熱媒体が流通する熱媒体流路220を含んで構成される場合について説明した。しかしながら、温度調整部は、熱媒体によって反応流体を加熱または冷却することができれば、例えば、バーナー等で構成してもよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。