(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電子弦楽器において、前記複数の絶縁チューブ内に挿入された前記複数の弦それぞれと導通する複数の導電部を備え、前記複数の接続ケーブルは、前記複数の導電部にそれぞれ接続されている、ことを特徴とする電子弦楽器。
請求項3に記載の電子弦楽器において、前記信号伝達部は、前記複数の弦高調整ねじとそれぞれ個別に導通する複数の導電板と、前記複数の導電板がそれぞれ個別に接続されるコネクタ部と、このコネクタ部に接続された接続ケーブルと、を備えていることを特徴とする電子弦楽器。
請求項6に記載の電子弦楽器において、前記複数の検出素子から出力される電気信号の電位差を混合し、前記混合された電位差を電気信号として出力することを特徴とする電子弦楽器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、
図1〜
図5を参照して、この発明を電子ギターに適用した第1実施形態について説明する。
この電子ギターは、
図1に示すように、ギター本体1を備えている。このギター本体1は、胴部2とネック3とで構成されている。また、このギター本体1は、複数(この実施形態では6本の)の弦4が、胴部2およびネック3に亘って張り渡されるように構成されている。
【0011】
この場合、胴部2のほぼ中央部には、
図1に示すように、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5が設けられている。このブリッジ部5の近傍には、複数の弦4の各弦振動を電気信号として出力する電磁式のノーマルピックアップ部6が設けられている。また、胴部2には、電子回路部7および表示部8が設けられている。電子回路部7は、電子ギターに必要な各種の電子部品を備えている。表示部8は、電子ギターによる演奏に必要な各種の情報を表示するように構成されている。
【0012】
一方、ネック3の先端部(
図1では右端部)には、
図1に示すように、弦支持部9を介してヘッド10が設けられている。弦支持部9は、複数の弦4を等間隔で支持するように構成されている。ヘッド10には、複数の弦4の各他端部4bがそれぞれ弦張調整可能に取り付けられる複数のペッグ11が設けられている。これにより、複数の弦4は、胴部2のブリッジ部5とヘッド10との間に張り渡されるように構成されている。これら複数の弦4は、それぞれ導電性を有する線材であり、電気抵抗をもって電流が流れるように構成されている。
【0013】
また、ネック3には、
図1に示すように、指板12が胴部2とヘッド10との間に設けられている。この指板12は、木製または合成樹脂製の帯状板であり、複数の弦4の張り渡し方向、つまりネック3の長手方向に沿って複数(この実施形態では22個)のフレット13が所定間隔で設けられている。これら複数のフレット13は、金属からなり、断面が半円弧状に形成されて、指板12の上面に取り付けられ、この指板12の上面に突出した円弧面である上面に複数の弦4がそれぞれ押し付けられるように構成されている。
【0014】
ところで、複数の弦4の各一端部4a(
図1では左端部)が取り付けられるブリッジ部5は、
図1および
図2に示すように、胴部2の中央部に設けられたブリッジ孔14内に配置されるブリッジ本体15と、このブリッジ本体15上に複数の弦4それぞれに対応して配置された複数のブリッジ駒16とを備えている。
【0015】
ブリッジ本体15は、
図2および
図3に示すように、金属製のブリッジブロック17と金属製のブリッジベース18とを有している。ブリッジブロック17は、胴部2のブリッジ孔14内に配置されて、胴部2から上方に突出するように構成されている。また、ブリッジベース18は、胴部2から上方に突出したブリッジブロック17上にビス18bによって取り付けられている。
【0016】
また、ブリッジ本体15は、
図2および
図3に示すように、ブリッジブロック17の下部にばね部材20が取り付けられ、このばね部材20のばね力によってネック3側(
図2では左側)に向けて付勢された状態で、ブリッジベース18の先端部18aつまりネック3側に位置する先端部18aが胴部2上に設けられたピン部材21に押し当てられていることにより、胴部2のブリッジ孔14内にブリッジブロック17が浮いた状態で揺動可能に取り付けられている。
【0017】
この場合、ブリッジ本体15には、
図1に示すように、トレモロアーム22が取り付けられている。このトレモロアーム22は、これを操作して、ブリッジ本体15を弦4の張り渡し方向およびこれと直交する方向に揺動させることにより、複数の弦4の張力を変化させて、効果音を付加させるように構成されている。また、ブリッジ本体15はグランド(基準電位)に接続されている。なお、胴部2の下部には、ブリッジ孔14を塞ぐ裏蓋14aが取り付けられている。
【0018】
一方、複数のブリッジ駒16は、それぞれ導電性を有する金属板によって形成されている。これら複数のブリッジ駒16は、
図2および
図3に示すように、それぞれ板状の駒本体23と、この駒本体23の前端部(
図2では左端部)に設けられた山形状の弦支持部24と、駒本体23の後端部(
図2では右端部)に設けられた板状の取付突起部25とを備え、ブリッジベース18上に配置されるように構成されている。
【0019】
また、複数のブリッジ駒16の各弦支持部24には、
図2および
図3に示すように、変換部であるピックアップ部26がそれぞれ設けられている。これら複数のピックアップ部26は、複数のブリッジ駒16をブリッジ本体15上にそれぞれ上下方向に変位可能に支持すると共に、複数の弦4の各振動に伴って複数のブリッジ駒16に加わる圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力するように構成されている。
【0020】
この場合、ピックアップ部26は、
図2および
図3に示すように、複数の弦4の弦高をそれぞれ調整する一対の弦高調整ねじ27を有している。これら一対の弦高調整ねじ27は、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する検出素子として形成されている。この場合、検出素子は、例えばセラミック構造のピエゾ素子であり、雄ねじ形状に形成されている。
【0021】
すなわち、セラミック構造のピエゾ素子によって作られた弦高調整ねじ27は、その材料が、例えばPbO、NiO、Nb
2O
3、TiO
2、ZrO
2などの金属酸化物の粉末を所定の割合で混合したピエゾ材料の粉末であり、このピエゾ材料の粉末を雄ねじの金型に充填して焼結処理した上、離型して後処理することによって形成されている。これにより、ピエゾ材料からなる弦高調整ねじ27は、振動や圧力が加わると、歪が生じて内部に電位差が発生し、その表面から電位差に応じた電気信号を出力するように構成されている。
【0022】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、
図2〜
図4に示すように、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なる。すなわち、一方の弦高調整ねじ27の圧力が大きいと、他方の弦高調整ねじ27の圧力が小さくなる。このため、ピックアップ部26は、一対の弦高調整ねじ27の各内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差を電気信号として出力するように構成されている。
【0023】
また、一対の弦高調整ねじ27は、
図2および
図3に示すように、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにその上部から下部に突き抜けた状態でそれぞれ螺合している。これにより、一対の弦高調整ねじ27は、これらを回して各弦高調整ねじ27の各下端部をブリッジ駒16の下側に出没させてブリッジベース18上に押し当てることにより、ブリッジベース18上においてブリッジ駒16を上下に変位させて弦4の弦高を調整するように構成されている。
【0024】
また、これら一対の弦高調整ねじ27は、
図2および
図3に示すように、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aに螺合していることにより、振動や圧力が加わって内部に電位差が発生した際に、ブリッジ駒16側が一方の電極(出力電極)となり、また各弦高調整ねじ27の各下端部がブリッジベース18上に押し当てられていることにより、ブリッジベース18側が他方の電極(グランド電極)となるように構成されている。
【0025】
また、ブリッジ駒16の取付突起部25には、
図2および
図3に示すように、オクターブ調整ねじ28が取り付けられている。このオクターブ調整ねじ28は、絶縁性を有する合成樹脂によって形成され、その先端側のねじ部28bがブリッジベース18の取付部29に設けられた挿入孔29aを通して、ブリッジ駒16の取付突起部25に設けられたねじ孔25aに螺合している。
【0026】
このオクターブ調整ねじ28の外周には、
図2に示すように、絶縁性を有する合成樹脂製のコイルばね30が、ブリッジ駒16の取付突起部25とブリッジベース18の取付部29との間に位置して設けられている。このコイルばね30は、ブリッジ駒16の取付突起部25を前側(
図2では左側)に向けて押し出す方向に付勢することにより、オクターブ調整ねじ28の頭部28aをブリッジベース18の取付部29の外面(
図2では右側)に押し付けるように構成されている。
【0027】
このため、ブリッジ駒16の取付突起部25とブリッジベース18の取付部29とは、
図2に示すように、コイルばね30のばね力によって互いに離れる方向に付勢されるように構成されている。これにより、ブリッジ駒16は、一対の弦高調整ねじ27とオクターブ調整ねじ28とによって、ブリッジベース18の上方に浮いた状態で配置されるように構成されている。
【0028】
この状態で、オクターブ調整ねじ28は、
図2に示すように、これを回すと、頭部28aがブリッジベース18の取付部29に当接した状態で回転すると共に、先端側のねじ部28bがブリッジ駒16の取付突起部25のねじ孔25a内を回転しながら螺旋移動することにより、ブリッジ駒16をブリッジベース18の前後方向(
図2では左右方向)に移動させるように構成されている。
【0029】
すなわち、オクターブ調整ねじ28は、
図2に示すように、これを回してブリッジ駒16の取付突起部25を前側(
図2では左側)に向けて押し出す際に、コイルばね30のばね力によってブリッジ駒16が前側に移動して弦4のオクターブを下げる方向に調整するように構成されている。
【0030】
また、このオクターブ調整ねじ28は、
図2に示すように、これを回してブリッジ駒16の取付突起部25をコイルばね30のばね力に抗して後側(
図2では右側)に向けて引き寄せると、ブリッジ駒16が後側に移動して弦4のオクターブを上げる方向に調整するように構成されている。
【0031】
ところで、複数の弦4は、
図2および
図3に示すように、その各一端部4aがブリッジ駒16の駒本体23の弦挿入孔23a、およびブリッジベース18の弦挿入孔18cを通して、ブリッジブロック17の弦取付孔31内にそれぞれ挿入された状態で、取り付けられるように構成されている。
【0032】
この場合、複数の弦4の各一端部4aには、
図2〜
図4に示すように、導電性を有するエンドボール32がそれぞれ取り付けられている。また、複数の弦4の各一端部4aは、絶縁チューブ33を介してブリッジブロック17の弦取付孔31内にそれぞれ挿入されていることにより、ブリッジブロック17およびブリッジベース18に接触して導通しないように構成されている。
【0033】
この場合、ブリッジブロック17の弦取付孔31は、
図2および
図3に示すように、上部が小径孔31aに形成され、下部が大径孔31に形成され、中間部が中径孔31cに形成され、小径孔31aと中径孔31cとの境に小径テーパ部31dがくびれた状態で形成され、中径孔31cと大径孔31bとの境に大径テーパ部31eがくびれた状態で形成されている。
【0034】
絶縁チューブ33は、塩化ビニル樹脂(PVC)などの絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。この絶縁チューブ33は、
図2〜
図4に示すように、ブリッジブロック17の弦取付孔31と同様、弦4が挿入する小径孔部33aと、エンドボール32が挿入する大径孔部33bと、その中間に位置する中径孔部33cとを有し、小径孔部33aと中径孔部33cとの境に小径テーパ部33dがくびれた状態で形成され、中径孔部33cと大径孔部33bとの境に大径テーパ部33eがくびれた状態で形成されている。
【0035】
これにより、絶縁チューブ33は、
図2〜
図4に示すように、大径孔部33bがブリッジブロック17の弦取付孔31の大径孔31b内に挿入されて、大径テーパ部33eが弦取付孔31の大径テーパ部31eに当接し、中径孔部33cが弦取付孔31の中径孔31c内に挿入されて、小径テーパ部33dが弦取付孔31の小径テーパー部31dに当接した状態で、小径孔部33aが弦取付孔31の小径孔31aおよびブリッジベース18の弦挿入孔18cに挿入されるように構成されている。
【0036】
また、この絶縁チューブ33の内部には、
図2〜
図4に示すように、導電チューブ34が設けられている。この導電チューブ34は、弦4の一端部4aが挿入する弦挿入部34aと、この弦挿入部34aの下端部に設けられた広口のテーパ部34bとを有し、弦挿入部34aが絶縁チューブ33の中径孔部33cに挿入し、広口のテーパ部34bが絶縁チューブ33の大径テーパ部33eに当接した状態で、絶縁チューブ33内に配置されるように構成されている。
【0037】
これにより、導電チューブ34は、
図2〜
図4に示すように、絶縁チューブ33内に配置された状態で、絶縁チューブ33の大径孔部33b内にエンドボール32が挿入されると、このエンドボール32が導電チューブ34のテーパ部34bに当接することにより、エンドボール32と導通するように構成されている。
【0038】
さらに、この導電チューブ34は、
図2〜
図4に示すように、その下端部に接続ケーブル35が半田またはカシメによって接合され、この接続ケーブル35によって電子回路部7と電気的に接続されている。これにより、複数の弦4は、それぞれ各一対の弦高調整ねじ27で発生した電位差によって、各ブリッジ駒16を介して電流が流れ、この電流が各エンドボール32および各導電チューブ34を介して各接続ケーブル35にそれぞれ流れるように構成されている。
【0039】
この場合、複数の弦4は、
図2〜
図4に示すように、絶縁チューブ33によってブリッジ部5のブリッジ本体15に接触することがなく、ブリッジブロック17の弦取付孔31、ブリッジベース18の弦挿入孔18c、およびブリッジ駒16の駒本体23の弦挿入孔23aを通り、ブリッジ駒16の弦支持部24上に押し付けられた状態で、相互に導通することなく、張り渡されるように構成されている。
【0040】
次に、
図5に示されたブロック図を参照して、この電子ギターの回路構成について説明する。
この電子ギターの回路構成は、回路全般を制御するCPU(中央演算処理装置)40と、予め定められたプログラムおよび入力されたデータを格納するメモリ部41と、音量、音色、モード切替などの各種スイッチを備えた操作スイッチ部42と、複数の弦4の弾弦操作による弦振動を楽音情報として検出する楽音検出部43とを備えている。
【0041】
楽音検出部43は、電磁式のノーマルピックアップ部6とピエゾ素子のピックアップ部26とを有している。ノーマルピックアップ部6は、複数の弦4が弾かれた際に、これら弦4の振動を実際の楽音として検出する。また、ピエゾ素子のピックアップ部26は、複数の弦4の各弦振動に応じた圧力変化を楽音情報として検出する。
【0042】
CPU40は、ノーマルピックアップ部6からの弦振動に基づいて楽音の発音タイミングおよび発音されている楽音の音高を制御する。また、CPU40は、ピエゾ素子のピックアップ部26からの各弦振動による圧力変化に基づいて発音されている楽音の音高や音質を制御する。
【0043】
また、この電子ギターの回路構成は、CPU40からの指令に基づいて各種の情報を表示する表示部8と、CPU40からの音高、音質および発音タイミングの指令に基づいて楽音データを生成する音源部44と、この音源部44で生成された楽音データに対してエフェクトを付加するエフェクト部45と、このエフェクト部45でエフェクトの付加された楽音データをアナログ信号に変換してオーディオ機器に出力するD/A変換部46と、CPU40からの指令に基づいて外部機器との間でデータの授受を行うインターフェイス(I/F)47とを備えている。
【0044】
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張設された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれかに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾く。
【0045】
このときには、楽音検出部43のノーマルピックアップ部6によって複数の弦4の弦振動が検出されると共に、楽音検出部43のピエゾ素子のピックアップ部26によって押弦された複数の弦4の各振動による圧力変化がそれぞれ楽音情報として検出され、これらに基づいて楽音が発生される。
【0046】
すなわち、ノーマルピックアップ部6は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、これらの弦4全体の振動を検出する。ピエゾ素子のピックアップ部26は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、各一対の弦高調整ねじ27が各弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する。
【0047】
このときには、一対の弦高調整ねじ27のうち、弦4が弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なる。このため、ピックアップ部26は、一対の弦高調整ねじ27の各内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差を楽音情報として出力する。
【0048】
そして、ノーマルピックアップ部6によって検出された楽音の音高および発音開始情報と、ピエゾ素子のピックアップ部26によって検出された各弦振動による各弦4ごとの楽音情報とによって、CPU40が音源部44に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部45で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。このときには、一対の弦高調整ねじ27でそれぞれ異なる電位差が混合された電気信号がピックアップ部26から出力されるので、出力信号が豊かになり、ギターのハーフトーンのような効果が得られる。
【0049】
また、弦4に触れないように、ブリッジ駒16の上に演奏者が手を置くようにすれば、一対の弦高調整ねじ27が弦振動を拾いながらブリッジ駒16の沈む方向のDC信号を出力する。このため、弦振動による波形信号を音響用とし、DC信号を制御として用いることができる。これにより、ブリッジ駒16に圧力を加えてリバーブ成分を増やしたり、フィルタのカットオフを変更したり、あるいはギターシンセサイザであれば音源のエンベロープを変更したりすることで、従来では考えられないギターの演奏が実現できる。
【0050】
このように、この電子ギターによれば、ギター本体1上に張設される導電性を有する複数の弦4と、ギター本体1の胴部2に揺動自在に設けられ、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ本体14と、このブリッジ本体14上に複数の弦4それぞれに対応して配置され、かつ複数の弦4をそれぞれ支持する複数のブリッジ駒15と、これら複数のブリッジ駒15をそれぞれブリッジ本体14上に上下方向に変位可能に支持すると共に、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する複数のピックアップ部26とを備えているので、これらピックアップ部26の構造を簡素化し、組付け作業性も良く、かつ弦振動に伴う電気信号を正確に出力することができる。
【0051】
すなわち、この電子ギターでは、複数のピックアップ部26に複数の弦4がそれぞれ直接接触していないので、複数のピックアップ部26の構造を簡素化することができると共に、これら複数のピックアップ部26で複数のブリッジ駒15をブリッジ本体14上に上下方向に変位可能に支持することができるので、複数の弦4の弦高を調整することができる。このため、ピックアップ部26が弦高調整機能をも備えていても、組み付け作業の簡素化を図ることができる共に、ピックアップ部26によって弦振動に伴う電気信号を正確にかつ良好に出力することができるので、楽音情報を正確にかつ確実に検出して良好に演奏することができる。
【0052】
この場合、複数のピックアップ部26は、複数の弦4の弦高をそれぞれ調整する各一対の弦高調整ねじ27を有し、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力するピエゾ素子などの検出素子を形成する材料によってそれぞれ構成されていることにより、一対の弦高調整ねじ27自体をピエゾ素子などの検出素子として機能させることができ、これにより複数のピックアップ部26の構造を簡素化することができると共に、組み付け作業を簡素化することができる。
【0053】
すなわち、一対の弦高調整ねじ27は、例えばセラミック構造のピエゾ素子によって雄ねじ形状に形成する際に、PbO、NiO、Nb
2O
3、TiO
2、ZrO
2などの金属酸化物の粉末を所定の割合で混合したピエゾ材料の粉末を雄ねじの金型に充填して焼結処理した上、離型して後処理することによって、簡単にかつ容易に製作することができ、これによりピエゾ材料からなる弦高調整ねじ27に振動や圧力が加わると、歪が生じて内部に電位差が発生し、その表面から電位差に応じた電気信号を出力することができる。
【0054】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにその上部から下部に突き抜けた状態でそれぞれ螺合していることにより、ブリッジ駒15に対する取付作業を簡素化することができる。これにより、一対の弦高調整ねじ27は、これらを回して各弦高調整ねじ27の各下端部をブリッジ駒16の下側に出没させてブリッジベース18上に押し当てることにより、ブリッジベース18上においてブリッジ駒16を上下に変位させて弦4の弦高を容易に調整することができる。
【0055】
このため、これら一対の弦高調整ねじ27は、弦4の振動に伴う圧力変化に応じて内部に電位差が生じ、この電位差が楽音情報として出力される際に、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aに螺合していることにより、ブリッジ駒16側が一方の電極(出力電極)となり、また各弦高調整ねじ27の各下端部がブリッジベース18上に押し当てられていることにより、ブリッジベース18側が他方の電極(グランド電極)となる構成であるから、一対の弦高調整ねじ27で発生した電気信号を容易にかつ正確に取り出すことができる。
【0056】
この場合、複数の弦4および複数のブリッジ駒15は、導電性を有する金属によって形成され、複数のピックアップ部26は、ブリッジ本体14にそれぞれ設けられた複数の弦取付孔31内にそれぞれ配置された複数の絶縁チューブ33と、これら複数の絶縁チューブ33内に挿入された複数の弦4それぞれと導通する複数の導電チューブ34と、これら複数の導電チューブ34にそれぞれ接続された複数の接続ケーブル35と、を備えているので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0057】
すなわち、この電子ギターでは、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差による電流が、各ブリッジ駒16を介して各弦4に流れ、これら各弦4に流れた電流が、各弦4の各一端部4aに取り付けられた各エンドボール32および各導電チューブ34を介して各接続ケーブル35にそれぞれ流れるので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0058】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なり、各弦高調整ねじ27の内部にそれぞれ発生する電位差が異なるため、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差が電気信号として出力されるので、この出力信号によって正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができるほか、出力信号が豊富になり、ギターのハーフトーンのような効果を得ることができる。
【0059】
なお、上述した第1実施形態では、絶縁チューブ33内に導電チューブ34を挿入し、この導電チューブ34に弦4のエンドボール32を接触させて導通させた場合について述べたが、これに限らず、例えば
図6に示す変形例のように、絶縁チューブ33の内面に導電層50を設け、この導電層50にエンドボール32を当接させて導通させ、かつこの導電層50を挟んで絶縁チューブ33の下端部に接続クリップ51を取り付け、この接続クリップ51に接続ケーブル35を接続した構成であっても良い。
【0060】
このように構成しても、絶縁チューブ33の内面に設けられた導電層50に弦4のエンドボール32を接触させて導通させることができるので、この導電層50および接続ケーブル35によってピックアップ部26で発生した電位差を電気信号として取り出すことができ、これによりピックアップ部26によって弦4の各振動に伴う圧力変化に応じた電気信号を楽音情報として確実に取り出すことができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、
図7〜
図9を参照して、この発明を電子ギターに適用した第2実施形態について説明する。なお、
図1〜
図5に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子ギターは、
図7および
図8に示すように、ブリッジ部5のブリッジ本体14と複数のブリッジ駒15との間に配置された絶縁板55と、この絶縁板55上に複数のブリッジ駒15それぞれと対応して配置された複数の導電板56とを備えた構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
【0062】
すなわち、絶縁板55は、合成樹脂からなり、
図7〜
図9に示すように、ブリッジベース18の上面にそのほぼ全域に亘って配置されている。この絶縁板55には、複数の弦挿入孔55aがブリッジベース18の弦挿入孔18cにそれぞれ対応して設けられている。また、複数の導電板56は、銅などの導電性の高い金属薄板からなり、その上面に各ブリッジ駒16がそれぞれ配置されるように構成されている。
【0063】
すなわち、この導電板56は、
図7〜
図9に示すように、ブリッジ駒16に取り付けられたピックアップ部26の一対の弦高調整ねじ27の各下端が接触して導通する本体部56aと、本体部56aから絶縁板55の所定個所、つまりブリッジ駒16が対応しない個所に延出された配線部56bとを有し、この配線部56bが絶縁板55の下面に設けられたコネクタ57に接続されるように構成されている。
【0064】
この場合、コネクタ57は、6種類の信号とグランド(基準電位)とが通せるように構成されている。すなわち、このコネクタ57は、
図7〜
図9に示すように、複数の導電板56の各配線部56bがそれぞれ接続され、この状態でブリッジベース18に設けられた挿入孔18dを通してブリッジベース18の下側に突出し、この突出した部分に接続ケーブル58が接続されるように構成されている。
【0065】
これにより、複数の導電板56は、
図7〜
図9に示すように、接続ケーブル58によって電子回路部7と電気的に接続されることにより、ピックアップ部26の一対の弦高調整ねじ27で発生した圧力変化に応じた電気信号を電子回路部7に供給するように構成されている。この場合にも、ピックアップ部26は、第1実施形態と同様、ピエゾ材料からなる一対の弦高調整ねじ27によって構成されている。
【0066】
これら一対の弦高調整ねじ27は、
図7〜
図9に示すように、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにそれぞれ螺合した状態で、その各下端部が導電板56の本体部56aにそれぞれ押し付けられていることにより、振動や圧力が加わると、歪が生じて内部に電位差が発生し、その表面から電位差に応じた電気信号を出力するように構成されている。
【0067】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、
図7〜
図9に示すように、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なる。すなわち、一方の弦高調整ねじ27の圧力が大きいと、他方の弦高調整ねじ27の圧力が小さくなる。このため、ピックアップ部26は、第1実施形態と同様、一対の弦高調整ねじ27の各内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差を電気信号として出力するように構成されている。
【0068】
また、この場合にも、一対の弦高調整ねじ27は、第1実施形態と同様、これらを回して各弦高調整ねじ27の各下端部をブリッジ駒16の下側に出没させてブリッジベース18上に押し当てることにより、ブリッジベース18上においてブリッジ駒16を上下に変位させて弦4の弦高を調整するように構成されている。
【0069】
また、オクターブ調整ねじ28およびコイルばね30は、第1実施形態と同様、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂によって形成されている。これにより、ブリッジ駒16は、一対の弦高調整ねじ27、オクターブ調整ねじ28、およびコイルばね30によって、ブリッジベース18の上方に浮いた状態で配置されるように構成されている。
【0070】
一方、ブリッジ本体15には、
図7に示すように、複数の弦4の各一端部4aが挿入する複数の弦取付孔31が複数のブリッジ駒16の各弦挿入孔23aにそれぞれ対応して設けられている。これら複数の弦取付孔31内には、それぞれ複数の絶縁チューブ33が配置されている。この場合、ブリッジ本体15の弦取付孔31は、上部が小径孔31aに形成され、下部が大径孔31bに形成され、この小径孔31aと大径孔31bとの境にテーパー部31dがくびれた状態で形成されている。
【0071】
絶縁チューブ33は、第1実施形態と同様、塩化ビニル樹脂(PVC)などの絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。この絶縁チューブ33は、ブリッジブロック17の弦取付孔31と同様、弦4が挿入する小径孔部33aと、エンドボール32が挿入する大径孔部33bとを有し、小径孔部33aと大径孔部33bとの境にテーパ部33dがくびれた状態で形成されている。
【0072】
この場合にも、複数の弦4は、
図7に示すように、その各一端部4aにエンドボール32が取り付けられた状態で、絶縁チューブ33によってブリッジ部5のブリッジ本体15に接触することがなく、ブリッジブロック17の弦取付孔31、ブリッジベース18の弦挿入孔18c、絶縁板55の弦挿入孔55a、およびブリッジ駒16の駒本体23の弦挿入孔23aを通り、ブリッジ駒16の弦支持部24上に押し付けられた状態で、相互に導通することなく、張り渡されるように構成されている。
【0073】
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張り渡された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれかに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾くことにより、第1実施形態と同様に演奏をすることができる。
【0074】
このときには、楽音検出部43のノーマルピックアップ部6によって複数の弦4の弦振動が検出されると共に、楽音検出部43のピエゾ素子のピックアップ部26によって押弦された複数の弦4の各振動による圧力変化がそれぞれ楽音情報として検出され、これらに基づいて楽音が発生される。
【0075】
すなわち、ノーマルピックアップ部6は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、これらの弦4全体の振動を検出する。ピエゾ素子のピックアップ部26は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、各一対の弦高調整ねじ27が各弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する。
【0076】
このときには、一対の弦高調整ねじ27のうち、弦4が弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なる。このため、ピックアップ部26は、第1実施形態と同様、一対の弦高調整ねじ27の各内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差を楽音情報として出力する。
【0077】
そして、ノーマルピックアップ部6によって検出された楽音の音高および発音開始情報と、ピエゾ素子のピックアップ部26によって検出された各弦振動による各弦4ごとの楽音情報とによって、CPU40が音源部44に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部45で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。このときにも、一対の弦高調整ねじ27でそれぞれ異なる電位差が混合された電気信号がピックアップ部26から出力されるので、出力信号が豊かになり、ギターのハーフトーンのような効果が得られる。
【0078】
また、弦4に触れないように、ブリッジ駒16の上に演奏者が手を置くようにすれば、第1実施形態と同様、一対の弦高調整ねじ27が弦振動を拾いながらブリッジ駒16の沈む方向のDC信号を出力する。このため、弦振動による波形信号を音響用とし、DC信号を制御として用いることができる。これにより、ブリッジ駒16に圧力を加えてリバーブ成分を増やしたり、フィルタのカットオフを変更したり、あるいはギターシンセサイザであれば音源のエンベロープを変更したりすることで、従来では考えられないギターの演奏が実現できる。
【0079】
このように、この電子ギターによれば、第1実施形態と同様の効果があるほか、複数の弦4および複数のブリッジ駒16がそれぞれ導電性を有し、複数のピックアップ部26が、ブリッジ本体15と複数のブリッジ駒16との間に配置された絶縁板55と、この絶縁板55上に配置されて一対の弦高調整ねじ27それぞれと導通する複数の導電板56と、これら複数の導電板56がそれぞれ接続されるコネクタ57と、このコネクタ57に接続された接続ケーブル58とを備えているので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0080】
すなわち、この電子ギターでは、第1実施形態と同様、ピックアップ部26がピエゾ材料からなる一対の弦高調整ねじ27を有し、これら一対の弦高調整ねじ27がブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにそれぞれ螺合した状態で、その各下端部が導電板56の本体部56aに押し付けられていることにより、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差による電流を、各導電板56およびコネクタ57によって接続ケーブル58に流すことができるので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0081】
この場合にも、第1実施形態と同様、一対の弦高調整ねじ27は、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なり、各弦高調整ねじ27の内部にそれぞれ発生する電位差が異なるため、この異なる2つの電位差が混合され、この混合された電位差が電気信号として出力されるので、この出力信号によって正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができるほか、出力信号が豊富になり、ギターのハーフトーンのような効果を得ることができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、
図10および
図11を参照して、この発明を電子ギターに適用した第3実施形態について説明する。この場合には、
図7〜
図9に示された第2実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この電子ギターは、
図10および
図11に示すように、ブリッジ部5のブリッジ本体14と複数のブリッジ駒15との間に配置された絶縁板55上に一対の導電板60、61を複数のブリッジ駒15にそれぞれ対応させて設けた構成であり、これ以外は第2実施形態と同じ構成になっている。
【0083】
この場合にも、絶縁板55は、第2実施形態と同様、ブリッジベース18の上面にそのほぼ全域に亘って配置されている。この絶縁板55にも、複数の弦挿入孔55aがブリッジベース18の弦挿入孔18cにそれぞれ対応して設けられている。一方、一対の導電板60、61は、銅などの導電性の高い金属薄板からなり、その上面にブリッジ駒16が配置されるように構成されている。
【0084】
これら一対の導電板60、61は、
図10および
図11に示すように、ブリッジ駒16に取り付けられたピックアップ部26の一対の弦高調整ねじ27の各下端がそれぞれ個別に接触して導通する各本体部60a、61aと、これら各本体部60a、61aから絶縁板55の所定個所、つまりブリッジ駒16が対応しない個所に延出された各配線部60b、61bとを有し、これら各配線部60b、61bが絶縁板55の下面に設けられたコネクタ62に接続されるように構成されている。
【0085】
この場合、一対の導電板60、61のうち、一方の導電板60は、
図11に示すように、その各配線部60bが絶縁板55の上面に設けられてコネクタ62に向けて延出され、この延出された先端部がスルーホール(図示せず)を通してコネクタ62に接続されている。また、他方の導電板61は、その各配線部61bが絶縁板55の上面からスルーホール(図示せず)を通して絶縁板55の下面に導かれて絶縁板55の下面に設けられ、この状態で先端部がコネクタ62に接続されている。
【0086】
この場合、コネクタ62は、12種類の信号とグランド(基準電位)とが通せるように構成されている。すなわち、このコネクタ62は、
図10に示すように、複数の各一対の導電板60、61の各配線部60b、61bがそれぞれ接続され、この状態で第2実施形態と同様、ブリッジベース18に設けられた挿入孔18dを通してブリッジベース18の下側に突出し、この突出した部分に接続ケーブル(図示せず)が接続されるように構成されている。
【0087】
これにより、複数のブリッジ駒16にそれぞれ対応する各一対の導電板60、61は、
図11に示すように、コネクタ62に接続された接続ケーブル(図示せず)によって電子回路部7と電気的に接続されることにより、ピックアップ部26の一対の弦高調整ねじ27で発生した圧力変化に応じた電気信号を電子回路部7に供給するように構成されている。この場合にも、ピックアップ部26は、第1実施形態と同様、ピエゾ材料からなる一対の弦高調整ねじ27によって構成されている。
【0088】
すなわち、これら一対の弦高調整ねじ27は、
図10および
図11に示すように、ブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにそれぞれ螺合した状態で、その各下端部が一対の導電板60、61の各本体部60a、61aにそれぞれ押し付けられていることにより、振動や圧力がそれぞれに加わると、それぞれ歪が生じて各内部に電位差が発生し、その各表面から電位差に応じた電気信号をそれぞれ出力するように構成されている。
【0089】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、
図10および
図11に示すように、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なるため、各弦高調整ねじ27の内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が各導電板60、61の各配線部60b、61bからそれぞれ電気信号として出力されるように構成されている。
【0090】
このため、電子回路部7には、一対の弦高調整ねじ27でそれぞれ発生した異なる2つの電位差がそれぞれ電気信号として供給される。これにより、電子回路部7は、異なる2つの電気信号の差を検出して、弦4の演奏方向を検出するように構成されている。この場合、電子回路部7は、2つの異なる電気信号を加算したり減算したりすることで、大きな音質の変化が生みだせるように構成されている。
【0091】
例えば、2つの異なる電気信号を加算した場合には、基音成分が下がるが、倍音が比率的に増大し、クリアなジャズ、アコ―スティックサウンドなどに適した音が得られる。また、2つの異なる電気信号を減算した場合には、基音成分が倍増し、ディスト―ションに対して深い歪をもたらし、音程感が増し、ロックなどに適した音が得られる。
【0092】
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張り渡された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれかに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾くことにより、第1実施形態と同様に演奏をすることができる。
【0093】
このときには、楽音検出部43のノーマルピックアップ部6によって複数の弦4の弦振動が検出されると共に、楽音検出部43のピエゾ素子のピックアップ部26によって押弦された複数の弦4の各振動による圧力変化がそれぞれ楽音情報として検出され、これらに基づいて楽音が発生される。すなわち、ノーマルピックアップ部6は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、これらの弦4全体の振動を検出する。
【0094】
また、ピエゾ素子のピックアップ部26は、フレット13に押し付けられた複数の弦4がそれぞれ弾かれると、各一対の弦高調整ねじ27が各弦4の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する。このときには、一対の弦高調整ねじ27が弦4の振動に伴う圧力変化に応じて各内部に電位差が生じ、これらの電位差が楽音情報として出力される。
【0095】
このときには、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なるため、各弦高調整ねじ27の内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差が各導電板60、61の各配線部60b、61bからそれぞれ電気信号として出力される。
【0096】
この出力された2つの異なる電気信号は、電子回路部7で2つの電気信号の差を検出して、弦4の演奏方向を検出すると共に、2つの異なる電気信号を加算したり減算したりすることで、大きな音質の変化が生みだす。例えば、2つの異なる電気信号を加算すると、基音成分が下がるが、倍音が比率的に増大し、クリアなジャズ、アコ―スティックサウンドなどに適した音が得られる。また、2つの異なる電気信号を減算すると、基音成分が倍増し、ディスト―ションに対して深い歪をもたらし、音程感が増し、ロックなどに適した音が得られる。
【0097】
そして、ノーマルピックアップ部6によって検出された楽音の音高および発音開始情報と、ピエゾ素子のピックアップ部26によって検出された各弦振動による各弦4ごとの楽音情報とによって、CPU40が音源部44に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部45で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。
【0098】
このように、この電子ギターによれば、第2実施形態と同様の効果があるほか、複数の弦4および複数のブリッジ駒16が導電性を有する金属で形成され、複数のピックアップ部26が、ブリッジ本体15と複数のブリッジ駒16との間に配置された絶縁板55と、この絶縁板55上にそれぞれ配置されて各一対の弦高調整ねじ27それぞれと個別に導通する各一対の導電板60、61と、これら各一対の導電板60、61がそれぞれ個別に接続されるコネクタ62とを備えているので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0099】
すなわち、この電子ギターでは、第2実施形態と同様、ピックアップ部26がピエゾ材料からなる一対の弦高調整ねじ27を有し、これら一対の弦高調整ねじ27がブリッジ駒16の弦支持部24の各ねじ孔24aにそれぞれ螺合した状態で、その各下端部が一対の導電板60、61の各本体部60a、61aにそれぞれ押し付けられていることにより、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化に応じて各一対の弦高調整ねじ27にそれぞれ生じた各電位差による電流を、各一対の導電板60、61およびコネクタ62によって接続ケーブル(図示せず)に流すことができるので、複数の弦4の各振動に伴う圧力変化を楽音情報として正確にかつ確実に取り出すことができる。
【0100】
この場合、一対の弦高調整ねじ27は、弦4が弾かれた際に、その弾かれた方向に位置する一方の弦高調整ねじ27と、これと反対方向に位置する他方の弦高調整ねじ27とで、歪が異なるため、各弦高調整ねじ27の内部にそれぞれ発生する電位差が異なり、この異なる2つの電位差を各導電板60、61の各配線部60b、61bからそれぞれ電気信号として出力することができる。
【0101】
この出力された2つの異なる電気信号は、電子回路部7で2つの電気信号の差を検出して弦4の演奏方向を検出することができると共に、2つの異なる電気信号を加算したり減算したりすることで、大きな音質の変化を生みだすことができる。例えば、2つの異なる電気信号を加算すると、基音成分が下がっても、倍音が比率的に増大するので、クリアなジャズ、アコ―スティックサウンドなどに適した音を得ることができる。また、2つの異なる電気信号を減算すると、基音成分が倍増し、ディスト―ションに対して深い歪をもたらすことができるので、音程感が増し、ロックなどに適した音を得ることができる。
【0102】
なお、上述した第1〜第3の各実施形態では、ピックアップ部26の各弦高調整ねじ27をピエゾ素子の材料で単体に成型したものを用いた場合について述べたが、これに限らず、例えばピエゾ素子を板状に形成し、この板状のピエゾ素子を積層させ、この積層したものを切削加工により雄ねじ形状に形成したものであっても良い。
【0103】
また、上述した第1〜第3の各実施形態では、ピックアップ部26の各弦高調整ねじ27のすべてをピエゾ素子の材料で形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば
図12に示す変形例のように、各弦高調整ねじ27の一部をピエゾ素子の材料で形成した構成であっても良い。すなわち、各弦高調整ねじ27の下部にピエゾ素子などの検出素子65を設け、この検出素子65を第1実施形態と同様にブリッジ本体15に押し当てた構成であっても良い。
【0104】
また、これに限らず、各弦高調整ねじ27の下部に設けられたピエゾ素子などの検出素子65を第2、第3の各実施形態と同様に導電板55または一対の導電板60、61に押し当てるように構成しても良い。このように、弦高調整ねじ27の下部にピエゾ素子などの検出素子65を設けた構成であっても、第1〜第3の各実施形態と同様の作用効果がある。
【0105】
さらに、上述した第1〜第3の各実施形態およびその各変形例では、ピックアップ部26の一対の弦高調整ねじ27の少なくとも一部にピエゾ素子などの検出素子65を設けた場合について述べたが、必ずしもピエゾ素子などの検出素子65である必要はなく、弦振動に伴う物理的変化を電気信号に変換して出力する検出素子を用いても良い。
【0106】
またさらに、上述した第1〜第3の各実施形態およびその各変形例においては、シンクロナイズドトレモロをモデルにしたギターを用いて説明した。これは一般的に用いられているもので、ブリッジが揺動自在となるメカニズムがついているが、この発明はこの構成に限定されるものでない。例えば、ばね部材20、ピン部材21を省略してブリッジベースをギター本体に直接ねじ止めする方式のテレキャスター型ギターに用いられるブリッジに、この発明を適用することも可能である。
【0107】
なおまた、上述した第1〜第3の各実施形態およびその各変形例では、電子ギターに適用した場合について述べたが、必ずしも電子ギターに適用する必要がなく、例えばマンドリン、ウクレレ、三味線などの各種の電子弦楽器に広く適用することができる。
【0108】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0109】
(付記)
請求項1に記載の発明は、楽器本体と、この楽器本体上に張設される複数の弦と、前記楽器本体上に設けられ、前記複数の弦の各一端部が取り付けられるブリッジ本体と、このブリッジ本体上に前記複数の弦それぞれに対応して配置され、かつ前記複数の弦をそれぞれ支持する複数のブリッジ駒と、前記複数のブリッジ駒をそれぞれ前記ブリッジ本体上に変位可能に支持すると共に、前記複数の弦の各振動に伴って前記複数のブリッジ駒に加わる圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して出力する複数の変換部と、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0110】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子弦楽器において、前記複数の変換部は、前記複数の弦の弦高をそれぞれ調整する各一対の弦高調整ねじを有し、前記複数の弦の各振動に伴う圧力変化をそれぞれ電気信号に変換して検出する検出素子を形成する材料によって、前記弦高調整ねじの少なくとも一部がそれぞれ形成されていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0111】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記複数の弦および前記ブリッジ駒はそれぞれ導電性を有し、前記複数の変換部は、前記ブリッジ本体にそれぞれ設けられた複数の弦取付孔内にそれぞれ配置された複数の絶縁チューブと、これら複数の絶縁チューブ内に挿入された前記複数の弦それぞれと導通する複数の導電部と、これら複数の導電部にそれぞれ接続された複数の接続ケーブルと、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0112】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電子弦楽器において、前記複数の弦および前記複数のブリッジ駒はそれぞれ導電性を有し、前記複数の変換部は、前記ブリッジ本体と前記複数のブリッジ駒との間に配置された絶縁部材と、この絶縁部材上に配置されて前記一対の弦高調整ねじとそれぞれ導通する複数の導電板と、これら複数の導電板がそれぞれ接続されるコネクタ部と、このコネクタ部に接続された接続ケーブルと、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
【0113】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の電子弦楽器において、前記複数の弦および前記複数のブリッジ駒はそれぞれ導電性を有し、前記複数の変換部は、前記ブリッジ本体と前記複数のブリッジ駒との間に配置された絶縁部材と、この絶縁部材上にそれぞれ配置されて前記一対の弦高調整ねじとそれぞれ個別に導通する各一対の導電板と、これら各一対の導電板がそれぞれ個別に接続されるコネクタ部と、このコネクタ部に接続された接続ケーブルと、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。