(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記消火対象が複数存在する場合には、前記制御装置は、前記消火対象の各々について前記出力方向あるいは前記初期方向を予め記憶し、火災の発生を検知した前記火災検知器が設けられた前記消火対象について前記出力方向あるいは前記初期方向を前記消火装置に設定させる
ことを特徴とする請求項3に記載の消火設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、火炎から放射される赤外線を検知する赤外線カメラを用いて火災発生箇所を特定するので、火災発生箇所の特定に時間を要し、よって速やかな消火活動を開始することができないという問題がある。すなわち、火災現場には火炎以外にも赤外線を放射するものが存在し得るので、火炎つまり火災発生箇所を容易に特定することができず、その結果として速やかな消火活動が実現し得ない。
また、上記従来技術では、火炎から放射される赤外線を検知する赤外線カメラを用いるので、火災発生箇所以外の箇所(赤外線の発生個所)を火災発生箇所として誤認する虞があり、この結果として的確な消火活動を実現し得ないという問題点もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも的確かつ速やかな消火活動を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、所定の出力方向に電磁波を送信すると共に消火剤を放射する消火装置と、消火対象に設けられ、前記電磁波を受信する電磁波受信手段と、前記出力方向が前記消火対象の方向に設定されることにより前記電磁波受信手段が前記電磁波を受信すると、前記消火装置に前記消火剤の放射を開始させる制御装置とを具備する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記消火装置は、前記出力方向が可変自在であり、前記制御装置は、前記消火装置が前記出力方向を初期方向から順次変更しつつ前記電磁波を送信している状態で前記電磁波受信手段が前記電磁波を受信すると、当該電磁波を受信したときの方向に前記出力方向を固定させて前記消火剤の放射を開始させる、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記消火対象に火災検知器をさらに設け、前記制御装置は、前記火災検知器が火災の発生を検知し、さらに前記電磁波受信手段が前記電磁波を受信すると、前記消火装置に前記消火剤の放射を開始させる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記消火対象が複数存在する場合には、前記制御装置は、前記消火対象の各々について前記出力方向あるいは前記初期方向を予め記憶し、火災の発生を検知した前記火災検知器が設けられた前記消火対象について前記出力方向あるいは前記初期方向を前記消火装置に設定させる、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記消火装置に所定の出力方向に電磁波を送信する機能を設けると共に前記消火対象に前記電磁波受信手段を設けることに代えて、前記消火装置に他の電磁波受信手段を備え、かつ、前記消火対象に前記他の電磁波受信手段に向けて電磁波を送信する機能を設ける、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、消火装置から送信された電磁波を消火対象に設けられた電磁波受信手段が受信することを条件として消火剤の放射が開始されるので、従来よりも的確かつ速やかな消火活動を実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る消火設備は、例えばプラント等の施設に備えられるものであり、
図1及び
図2に示すように消火装置1、赤外線受信器2(電磁波受信手段)、火災検知器3、中央制御装置4によって構成されている。このような消火設備は、複数(6個)のプラント機器U1〜U6を消火対象とし、当該プラント機器U1〜U6で発生した火災を消火する。
【0014】
上記プラント機器U1〜U6は、特に限定されるものではないが、プラントを構成する複数の各種プラント機器のうち、比較的背が高いタワー状機器である。このようなプラント機器U1〜U6は、
図1に示すように地上に一定距離を隔てて配置されている。
【0015】
消火装置1は、中央制御装置4による制御の下で、所定の粉末消火剤をプラント機器U1〜U6に放射する装置である。このような消火装置1は、
図1に示すように、複数のプラント機器U1〜U6から所定の距離を隔てた状態で地上に配置されている。すなわち、水平方向における消火装置1と複数のプラント機器U1〜U6との距離は、プラント機器U1〜U6毎に異なっている。また、
図1には示されていないが、複数のプラント機器U1〜U6は必ずしも同一の高さを有していないので、垂直方向における消火装置1と複数のプラント機器U1〜U6との距離もプラント機器U1〜U6毎に異なっている。
【0016】
このような消火装置1は、
図2に示すように、本体1a、配管1b、ジョイント1c、消火ノズル1d及び赤外線送信器1eを備えている。
本体1aは、内部に粉末消火剤が充填されたタンクを備え、地上に固定配置されている。配管1bは、上記タンクに連通する直管であり、図示するように本体1aから上方に向けて延在する。ジョイント1cは、上記配管1bの先端部に設けられ、消火ノズル1dを配管1bに対して回動自在に接続すると共に、上記配管1bを介して本体1aから供給された粉末消火剤を消火ノズル1dに供給する。
【0017】
また、このようなジョイント1cには、例えばモータが駆動手段として組み込まれている。このモータは、中央制御装置4から入力される制御信号に基づいて作動するものであり、消火ノズル1dの水平面内及び垂直面内における方向を設定する。
【0018】
消火ノズル1dは、図示するように所定長さを有する直管状部材であり、後端部が上記ジョイント1cに接続されている。このような消火ノズル1dには、配管1b及びジョイント1cを介して本体1aから供給された粉末消火剤を先端部から管軸方向(中心軸方向)に向けて放射する。なお、上記管軸方向は本実施形態における出力方向である。
【0019】
赤外線送信器1eは、消火ノズル1dに固定設置されており、上記管軸方向(出力方向)に限定して赤外線をビーム状に送信する。すなわち、赤外線送信器1eにおける赤外線の送信方向は、消火ノズル1dにおける粉末消火剤の放射方向と全く同一である。消火ノズル1dにおける粉末消火剤の放射方向は、モータが組み込まれたジョイント1cによって可変設定されるが、赤外線送信器1eは消火ノズル1dに固定設置されているので、赤外線の送信方向も粉末消火剤の放射方向と全く同一方向に可変設定される。
【0020】
例えば、ジョイント1cによって消火ノズル1dの向き(つまり粉末消火剤の放射方向)がプラント機器U1の方向に設定されると、赤外線送信器1eは、消火ノズル1dの向きと同一なプラント機器U1の方向に限定して赤外線を送信する。一方、ジョイント1cによって消火ノズル1dの向きがプラント機器U6の方向に設定されると、赤外線送信器1eは、消火ノズル1dの向きと同一なプラント機器U6の方向に限定して赤外線を送信する。
【0021】
赤外線受信器2は、プラント機器U1〜U6の頂上部に各々設けられており、上記赤外線送信器1eの赤外線を受信すると、受信信号を中央制御装置4に出力する。上述したように赤外線送信器1eは消火ノズル1dの管軸方向に限定してビーム状の赤外線を送信するので、赤外線受信器2は、赤外線送信器1eと正対した状態、つまり自らが消火ノズル1dの管軸方向に位置する状態において赤外線送信器1eの赤外線を受信する。
【0022】
すなわち、赤外線受信器2は、自らの位置が消火ノズル1dの管軸方向からずれた状態では赤外線送信器1eの赤外線を受信しない。換言すると、赤外線受信器2が赤外線送信器1eの赤外線を受信する状態とは、消火装置1における消火ノズル1dの管軸方向がプラント機器U1〜U6の頂上部に位置する赤外線受信器2の方向に設定された状態である。
【0023】
火災検知器3は、各々のプラント機器U1〜U6に設けられ、当該プラント機器U1〜U6における火災の発生を検知すると、火災検知信号を中央制御装置4に出力する。この火災検知器3は、例えば火災に基づく炎の有無を検出することにより火災の発生を検知する。また、上記火災検知信号には、火災を検知したことを示す情報の他にプラント機器U1〜U6の機器番号が含まれている。
【0024】
中央制御装置4は、複数のプラント機器U1〜U6が設置されたプラント等の施設の運転状態を統括的に監視制御する制御装置である。このような中央制御装置4は、施設の運転状態の監視機能の一環として、プラント機器U1〜U6の何れかに火災が発生した場合には、消火装置1を制御することにより消火処理を行う。
【0025】
すなわち、中央制御装置4は、火災検知器3から火災検知信号が入力されると、所定の消火プログラムを実行することにより、赤外線受信器2から入力される受信信号、また予め記憶している制御テーブルに基づいて消火装置1を制御してプラント機器U1〜U6の火災を消火する。なお、上記制御テーブルは、各々のプラント機器U1〜U6に対応する消火ノズル1dの向きの初期設定方向(初期方向)を示すデータ(初期方向データ)を登録したものである。
【0026】
次に、このように構成された消火設備の動作について、
図3のフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0027】
複数のプラント機器U1〜U6では、火災が発生すると、火災検知器3が当該火災の発生を検知し(ステップS1)、火災検知信号を中央制御装置4に出力する(ステップS2)。中央制御装置4は、上記火災検知信号を受信すると(ステップS3)、当該火災検知信号に含まれている機器番号を用いて上記制御テーブルを検索することにより、火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)に関する初期方向データを取得する(ステップS4)。そして、中央制御装置4は、このように取得した初期方向データを含む消火指令を消火装置1に出力する(ステップS5)。
【0028】
消火装置1は、このようにして中央制御装置4から入力された消火指令に基づいて、火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)の消火作業を行うが、最初にジョイント1cが作動して消火ノズル1dの向きが初期方向データが示す方向に設定される。例えば、火災が発生したプラント機器がプラント機器U1である場合、消火ノズル1dの水平面内及び垂直面内の向きがプラント機器U1の方向に初期設定される(ステップS6)。すなわち、この状態において、赤外線送信器1eにおける赤外線の送信方向は、プラント機器U1の初期設定方向に設定される。
【0029】
このようにして消火ノズル1dの向きが初期設定方向に設定されると、消火装置1は、ジョイント1cが作動することにより消火ノズル1dの向きが初期送信方向に設定された状態で赤外線を送信し、さらに初期送信方向を中心とする所定の方向範囲において赤外線の送信方向を順次移動(スキャン)しつつ赤外線を送信する(ステップS7)。そして、火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)の赤外線受信器2は、このようにして送信方向が順次移動する赤外線を受信すると(ステップS8)、当該赤外線の受信信号を中央制御装置4に出力する(ステップS9)。
【0030】
そして、中央制御装置4は上記受信信号を受信すると(ステップS10)、消火ノズル1dの向きの固定を指示する固定指令を消火装置1に出力する(ステップS11)。この結果、消火装置1におけるジョイント1cの作動が停止し、消火ノズル1dの向きが火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)の赤外線受信器2が消火装置1の赤外線送信器1eから送信された赤外線を受信する状態、つまり消火装置1の赤外線送信器1eが火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)の赤外線受信器2と正対した状態に固定される(ステップS12)。そして、消火装置1は、このように消火ノズル1dの向きが火災が発生したプラント機器(例えばプラント機器U1)に向いた状態で粉末消火剤の放射を開始する(ステップS13)。
【0031】
ここで、上記初期方向データが示す消火ノズル1dの初期設定方向は、消火装置1の赤外線送信器1eが火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2と正対する方向である。しかしながら、ジョイント1cによる消火ノズル1dの向きの設定誤差等に起因して、消火ノズル1dの向きを初期設定方向に設定しても、消火装置1の赤外線送信器1eが火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2と正対しない状態、つまり消火ノズル1dから初期設定方向に放射される粉末消火剤が火災が発生したプラント機器に命中しない場合が発生し得る。
【0032】
このような事情に対して、本消火設備では、消火ノズル1dの向きを可変しつつ赤外線を送信し、当該赤外線が火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2で受信される状態に消火ノズル1dの向きを設定するので、消火ノズル1dから放射される粉末消火剤を火災が発生したプラント機器に確実に命中させることができる。
【0033】
また、このような本消火設備によれば、消火装置1の赤外線送信器1eから送信された赤外線を火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2が受信する場合に粉末消火剤の放射を開始するので、赤外線カメラを用いる従来技術よりも的確かつ速やかな消火活動を実現することが可能である。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、消火ノズル1dの向きが初期送信方向に設定された状態で赤外線を送信し、また所定の方向範囲において赤外線の送信方向を順次移動しつつ赤外線を送信するが、本発明はこれに限定されない。初期送信方向と実際のプラント機器U1〜U6の方向とに関する誤差要因を無視することができる場合には、消火ノズル1dの向きを初期送信方向に設定した状態において火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2は赤外線送信器1eから送信された赤外線を確実に受信するので、赤外線の送信方向を順次移動しつつ赤外線を送信することを割愛してもよい。
【0035】
すなわち、この場合には、消火ノズル1dの向きを初期送信方向に設定した状態で送信した赤外線が火災が発生したプラント機器の赤外線受信器2で受信されたら、消火ノズル1dから粉末消火剤を火災が発生したプラント機器に向けて放射することにより火災を消火する。
【0036】
(2)上記実施形態では、消火装置1に赤外線送信器1eを設け、またプラント機器U1〜U6に赤外線受信器2を設けたが、本発明はこれに限定されない。消火装置1に他の赤外線受信器を設け、またプラント機器U1〜U6に他の赤外線送信器を設けてもよい。すなわち、赤外線の送信と受信との関係を上記実施形態において入れ替えてもよい。
【0037】
この場合には、火災検知器3が火災を検知すると、当該火災検知器3に併設された他の赤外線送信器が赤外線の送信を開始し、消火装置1に設けられた他の赤外線受信器が上記他の赤外線送信器から送信された赤外線を検知すると、消火ノズル1dから火災が発生したプラント機器に向けた粉末消火剤の放射を開始する。また、必要に応じて所定の方向範囲において赤外線の送信方向を順次移動しつつ赤外線を送信することにより、上述した誤差要因による不適切な方向への粉末消火剤の照射を回避する。
【0038】
(3)上記実施形態では、複数(6個)のプラント機器U1〜U6を備える設備の消火について説明したが、本発明はこれに限定されない。プラント機器は単一であってもよいし、他の個数であってもよい。
また、上記実施形態では、消火剤として粉末消火剤を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。粉末消火剤に代えて例えば液体消火剤を用いてもよい。
【0039】
(4)上記実施形態では、電磁波として赤外線を用いたが、本発明はこれに限定されない。赤外線以外の電磁波、例えばレーザ光やマイクロ波等を用いてもよい。