特許第6387611号(P6387611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6387611PDMシステム、PDMシステムの管理方法、及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6387611
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】PDMシステム、PDMシステムの管理方法、及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   G06F17/50 614A
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-796(P2014-796)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-130025(P2015-130025A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北島 保仁
(72)【発明者】
【氏名】嶋守 淑美
(72)【発明者】
【氏名】巽 啓樹
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−318208(JP,A)
【文献】 特開2007−025896(JP,A)
【文献】 特開2006−127314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置される1以上の第2のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトと前記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理するPDM構成記憶手段と、
前記第2のオブジェクトが改版された際に、前記第1のオブジェクトと前記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する改版処理手段と、を有することを特徴とする、
PDMシステム。
【請求項2】
前記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の前記属性値を消去する要求を受け付け、
前記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性を確認し、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在しない場合には、前記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値を消去する改版確認手段を更に有することを特徴とする、
請求項1に記載のPDMシステム。
【請求項3】
前記改版確認手段は、特定の前記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された前記属性値を消去する要求を受け付け、
当該要求に基づいて当該リレーションオブジェクトに設定された当該特定の前記属性値を消去することを特徴とする、
請求項に記載のPDMシステム。
【請求項4】
前記改版確認手段は、前記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の前記属性値を消去する要求を受け付けた際、当該特定の前記属性値を有するリレーションオブジェクトが存在する場合には、エラーメッセージを通知することを特徴とする、
請求項3に記載のPDMシステム。
【請求項5】
前記改版処理手段は、前記第2のオブジェクトが改版された際に、当該改版に関する情報を通知することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のPDMシステム。
【請求項6】
製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトと関連付けされた1以上の第2のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトと前記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを管理するPDM構成記憶手段と、
前記第2のオブジェクトが改版された際に、前記第1のオブジェクトと前記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する改版処理手段と、
前記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の前記属性値を消去する要求を受け付け、
前記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性を確認し、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在しない場合には、前記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値を消去する改版確認手段と、を有することを特徴とする、
PDMシステム。
【請求項7】
情報処理装置が、
製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置される1以上の第2のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトと前記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理し、
前記第2のオブジェクトが改版された際に、前記第1のオブジェクトと前記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する、ことを特徴とする、
PDMシステムの管理方法。
【請求項8】
前記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の前記属性値を消去する要求を受け付け、前記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性を確認し、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在しない場合には、前記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値を消去することを特徴とする、
請求項7に記載のPDMシステムの管理方法。
【請求項9】
製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置される1以上の第2のオブジェクトと、
前記第1のオブジェクトと前記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理する処理と、
前記第2のオブジェクトが改版された際に、前記第1のオブジェクトと前記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する処理とを、
コンピュータに実行させることを特徴とする、
PDMシステムの管理プログラム。
【請求項10】
前記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の前記属性値を消去する要求を受け付ける処理と、
前記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性を確認し、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在しない場合には、前記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値を消去する処理とを、コンピュータに実行させることを特徴とする、
請求項9に記載のPDMシステムの管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品に関する情報を一元的に管理するPDM(Product Data Management)システム及びその管理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の設計、製造、検査等の工程を管理するために、その製品を構成する部品や、その製品に関連する各種情報(例えば、部品表、設計仕様書や検査仕様書等の仕様書類、及び、組立図やケーブル配線図等の図面類等、以下「製品情報」と称する場合がある)を登録して一元的に管理する、PDM(Product Data Management)システムが用いられている。
【0003】
そのようなPDMシステムは、上記のような各種製品情報を、例えばツリー構造等の階層的な構造によりその製品に関連付けて管理することが多い。
【0004】
ここで、例えば、PDMシステムに登録された上記各種製品情報である部品表や図面等を改版した場合、その部品表や図面を使用して製造される全ての製品について、改版の影響を確認する必要がある。
【0005】
特に、PDMシステムにおいて、類似製品の設計情報を共通部分と個別部分に分けて登録し、係る共通部分の設計情報を複数の製品で共有することは、設計や製造等の工程を効率化するためによく行われる手法である。このため、この共通部分が設計変更等により改版された場合には、係る改版が影響する全ての製品に対して、必要に応じて適切な処置を行う必要がある。
【0006】
このようなPDMシステムについて、本願出願に先だって存在する関連技術としては、例えば以下の特許文献がある。
【0007】
特許文献1は、PDMシステムにおいて、特定の構成要素の設計変更が生じた場合に、その設計変更が影響する範囲を検索する技術を開示する。特許文献1に開示された技術は、PDMシステムに登録される各種設計データの要素間にリンクを付与する。特許文献1に開示された技術は、特定の設計データが変更された場合には、係るリンクの情報を用いて上記設計データの親子関係を辿り、係る変更が影響する範囲を特定する。特許文献1に開示された技術によれば、特定の設計データが変更された場合の影響範囲を特定可能である。
【0008】
特許文献1に開示されて技術は、それぞれの設計データについて設計変更が影響するか否かを判定するためのフラグが設けられている。従って、設計変更が影響するか否かは判定可能である。
【0009】
特許文献2は、部品の設計変更が発生した際に、PDMシステムと連携して設計変更処理行い、係る設計変更処理が行われたことを知ることができるシステムに関する技術を開示する。特許文献2に開示された技術は、部品の構成情報がツリー形式で管理されたデータベースを有するPDM本システムから、設計変更の対象となる部品に関する仮データベースを取得する。特許文献2に開示された技術は、上記取得した仮データベースにおいて設計変更処理を行い、その情報を基にPDM本システムにおけるデータベースを更新する。
【0010】
特許文献2に開示された技術は、特定の部品に対する設計変更処理を実行する際、その部品を含むトップアッシーに関する情報を全て取得して表示する。これにより、特許文献2に開示された技術によれば、設計変更の対象となる部品を含む全ての部品について設計変更の漏れを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−083798号公報
【特許文献2】特開2006−127314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、上記したようなPDMシステムにおいては、ある製品に関連付けされた複数の製品情報が改版される場合がある。係る改版の影響を正確に把握するためには、改版された製品情報を漏れなく特定し、また、全ての改版に対して適切な処置を実施したことを確認可能であることが望ましい。
【0013】
特許文献1に開示された技術は、上記の通り、それぞれの設計データについて設けられたフラグにより設計変更が影響するか否かを判定する。しかしながら、係るフラグのみでは、複数の設計データのうち、いずれのデータが変更されたかを特定することが容易ではない。このため、特許文献1に開示された技術のみでは、複数の設計データが変更された場合に、全ての変更に対して適切な処置を講じたかを確認することが困難である。
【0014】
また、特定の設計データに影響を及ぼす改版が行われた箇所を特定するためには、係る改版が影響する全ての範囲を確認する必要があり、この確認には工数と時間を要する場合がある。
【0015】
また、特許文献2に開示された技術は、部品間の親子関係に基づいた階層構造を辿って影響範囲を特定している。このため、親に相当する設計データに影響を与える改版が行われた箇所を特定するためには、子に相当する設計データを全て確認する必要があり、この確認には工数と時間を要する場合がある。
【0016】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、特定の製品について改版された製品情報を容易に識別し、係る改版に対して適切な処置を講じたか否かを容易に確認可能とするPDMシステム及びその管理方法等を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成すべく、本発明に係るPDMシステムは、以下の構成を備えることを特徴とする。即ち、本発明に係るPDMシステムは、製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、上記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置される1以上の第2のオブジェクトと、上記第1のオブジェクトと上記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理するPDM構成記憶手段と、上記第2のオブジェクトが改版された際に、上記第1のオブジェクトと上記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する改版処理手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るPDMシステムの管理方法は、以下の構成を備えることを特徴とする。即ち、本発明に係るPDMシステムの管理方法は、情報処理装置が、製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、上記第1のオブジェクトに関連する製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置される1以上の第2のオブジェクトと、上記第1のオブジェクトと上記1以上の第2のオブジェクトとをそれぞれ関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理し、上記第2のオブジェクトが改版された際に、上記第1のオブジェクトと上記リレーションオブジェクトとにそれぞれ設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定することを特徴とする。
【0019】
また、同目的は、上記構成を有するPDMシステム、並びに対応するPDMシステムの管理方法を、コンピュータによって実現するコンピュータ・プログラム、及びそのコンピュータ・プログラムが格納されている、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体によっても達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特定の製品について改版された製品情報を容易に識別し、係る改版に対して適切な処置を講じたか否かを容易に確認可能であるPDMシステム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本願発明の第1の実施形態におけるPDMシステムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図2図2は、本願発明の第1の実施形態におけるPDM構成記憶部の構成を例示する図である。
図3図3は、本願発明の第1の実施形態におけるPDM構成記憶部の具体例を例示する図である。
図4図4は、本願発明の第1の実施形態におけるPDMシステムによる処理を例示する、フローチャートである。
図5図5は、本願発明の第1の実施形態におけるPDM構成記憶部の他の構成を例示する図である。
図6図6は、本願発明の第1の実施形態におけるPDM構成記憶部の他の構成を例示する図である。
図7図7は、本願発明の第2の実施形態におけるPDMシステムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図8図8は、本願発明の第2の実施形態におけるPDMシステムによる処理を例示する、フローチャートである。
図9図9は、本願発明の第3の実施形態におけるPDMシステムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図10図10は、本願発明の各実施形態に係る、PDMシステムを実現可能な情報処理装置のハードウェア構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施する形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態に記載されている構成は単なる例示であり、本願発明の技術範囲はそれらには限定されない。
【0023】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るPDMシステム100の機能的な構成を例示するブロック図である。
【0024】
本実施形態におけるPDMシステム100はPDM構成記憶部101と、改版処理部102とを有する。また、本実施形態におけるPDMシステム100は、改版確認部103を有してもよい。
【0025】
本実施形態におけるPDMシステム100は、単一のコンピュータ等の情報処理装置により構成されてもよく、複数の情報処理装置により構成されてもよい。
【0026】
また、本実施形態におけるPDMシステムを構成する情報処理装置は、物理的な実体を伴ったコンピュータ等により構成されてもよく、その一部または全部が仮想環境に構築された仮想コンピュータ等により構成されてもよい。
【0027】
PDM構成記憶部101、改版処理部102、及び改版確認部103とは、それぞれ個別の情報処理システムにより構成されてもよく、あるいは、特定の情報処理装置において実行されるソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)として構成されてもよい。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0028】
PDM構成記憶部101は、本実施形態におけるPDMシステム100に登録される、製品及び係る製品に関連する製品情報を記憶し、それらの情報を統括して管理する。
【0029】
本実施形態においては、後述するユーザ104が、図示しない入力装置等を介して、製品に関する情報をPDM構成記憶部101に登録してもよい。また、後述する他のシステム105が、図示しない入力装置や通信回線を介して、製品に関する情報をPDM構成記憶部101に登録してもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、後述するユーザ104あるいは他のシステム105が、図示しない入出力インタフェースや通信ネットワークを介して、PDM構成記憶部101に登録された製品情報を改版することができる。
【0031】
以下、本実施形態におけるPDM構成記憶部101の構成について説明する。
【0032】
図2は、本実施形態におけるPDM構成記憶部101の構成を例示する図である。図2に例示するように、本実施形態におけるPDM構成記憶部101は、上記した製品情報であるオブジェクトと、係るオブジェクト間の関係を記憶する。
【0033】
図2に例示するオブジェクトO(符号201)、オブジェクトA1(符号202a)、オブジェクトA2(符号202b)、オブジェクトA3(符号202c)、は、それぞれ、特定の製品に関わる製品情報を保持するオブジェクトである。図2に例示する具体例においては、オブジェクトO(符号201)に対して、当該オブジェクトOが保持する製品情報に関連する、オブジェクトA1乃至オブジェクトA3が関連付けされている。
【0034】
図2に例示する具体例においては、上記したオブジェクトがツリー形式により管理されている。以下において、オブジェクトOをツリー形式の管理構造における「上位オブジェクト」、オブジェクトA1乃至オブジェクトA3を「下位オブジェクト」と称する場合がある。
【0035】
本実施形態において、上位オブジェクトは、製品情報を管理するツリー構造において上位のノード配置され、1つ以上の下位ノード(他のオブジェクト)を有する。また、下位オブジェクトは特定の上位オブジェクトに関連付けされ、上位オブジェクトに関連する製品情報を有する。
【0036】
なお、本実施形態においては、例えば図5に例示するように、上位オブジェクトと下位オブジェクトとの関係が複数の階層を構成してもよい。図5に例示する具体例の場合、オブジェクトOはオブジェクトAの上位オブジェクトであり、オブジェクトAはオブジェクトCの上位オブジェクトである。即ち、ある下位オブジェクトは、他のより下位のオブジェクトに対する上位オブジェクトとなり得る。また、ある上位オブジェクトは、他のより上位のオブジェクトに対する下位オブジェクトとなり得る。
【0037】
再び図2を参照して、PDM構成記憶部101は、上位オブジェクト(例えば、オブジェクトO)と、下位オブジェクト(例えば、オブジェクトA1乃至オブジェクトA3)とを関連付ける構成情報である、リレーションオブジェクトを記憶する。
【0038】
図2に例示する具体例においては、リレーションオブジェクトOA1(符号203a)、リレーションオブジェクトOA2(符号203b)、リレーションオブジェクトOA3(符号203c)が、上位オブジェクトOと、下位オブジェクトA1乃至A3との間を関連付けている。なお、本実施形態における各リレーションオブジェクトは、上位オブジェクトと、下位オブジェクトとの間を、1対1の関係となるように関連付けてもよい。
【0039】
本実施形態における上位オブジェクト及びリレーションオブジェクトは、改版識別属性を有する。係る改版識別属性には、上位オブジェクトあるいはリレーションオブジェクトに関連付けされた下位オブジェクトが改版された際に、後述する改版処理部102によって、特定の属性値が設定される。
【0040】
上記した各改版識別属性に設定される特定の属性値は、改版された下位オブジェクトの種類毎に異なる。なお、係る属性値は、改版された下位オブジェクトの実体毎に異なるように設定してもよい。
【0041】
図2に例示する具体例においては、上位オブジェクトO(符号201)は、改版識別属性204を有し、リレーションオブジェクトOA1(符号203a)乃至リレーションオブジェクトOA3(符号203c)はそれぞれ改版識別属性205a乃至205cを有する。
【0042】
ここで、図2に例示する具体例においては、オブジェクトA1(符号202a)及びオブジェクトA2(符号202b)が改版されたことを想定している。このため、リレーションオブジェクトOA1及びリレーションオブジェクトOA2の改版識別属性205a、205bに、上記属性値としてそれぞれR1、R2が設定されている。また、同じ属性値R1、R2が上位オブジェクトであるオブジェクトOに設定されている。
【0043】
これらの属性値R1、R2は、上述したように、改版された下位オブジェクトの種類によって異なる。図2に例示する具体例においては、オブジェクトA1とオブジェクトA2との種類が異なるため、R1とR2との値は異なる。
【0044】
このように、上記した改版識別属性に対して、下位オブジェクトの種類毎に異なった属性値が設定されるため、いずれの下位オブジェクトが改版されたのか一意に識別可能である。
【0045】
なお、PDM構成記憶部101は、特定のオブジェクトに対する改版が発生した際、係る改版に関する情報を、後述する改版処理部102に通知してもよい。
【0046】
また、上位オブジェクト及び、各リレーションオブジェクトにおける改版識別属性に設定された属性値は、後述する改版確認部103により消去することが可能である。
【0047】
次に、図3を参照して、PDM構成記憶部101の構成について具体例を用いて説明する。
図3を参照すると、PDM構成記憶物101には、製品オブジェクト301と、係る製品に関連する製品情報である部品構成表302a、図面302b、仕様書302cが登録されている。図3に例示する具体例においては、部品構成表302a、図面302b、仕様書302c等の製品情報は、例えば、製品オブジェクト301に係る製品を製造するために必要な情報であり、製品オブジェクト301に対する下位オブジェクトである。
【0048】
また、製品オブジェクト301と、部品構成表302a、図面302b及び仕様書302cとの間を関連付ける構成情報である、リレーションオブジェクト303a乃至303cが登録されている。
【0049】
リレーションオブジェクト303a乃至303cは、それぞれに関連付けされた下位オブジェクトが改版された際に、後述する改版処理部102により特定の属性値が設定される、改版識別属性305a乃至305cを有する。また、上位オブジェクトである製品オブジェクト301も、関連付けされた下位オブジェクトが改版された際に、後述する改版処理部102により特定の属性値が設定される、改版識別属性304を有する。
【0050】
次に、本実施形態における改版処理部102について説明する。
【0051】
改版処理部102は、上記したPDM構成記憶部101と通信可能に接続されている。改版処理部102は、PDM構成記憶部101に記憶されているオブジェクトが改版された際に、係る改版されたオブジェクトに関連付けられたリレーションオブジェクト及び上位オブジェクトの改版識別属性に、特定の属性値を設定する。上述したように、係る属性値は、改版されたオブジェクトの種類毎に異なる。
【0052】
改版処理部102は、オブジェクトの種類毎に上記属性値を生成してもよい。また、予めPDM構成記憶部101にオブジェクトと共に上記属性値を記憶しておき、改版処理部102は、当該オブジェクトが改版された際に係る値を読み込んでもよい。
【0053】
上記属性値と、オブジェクトの種類(あるいはオブジェクトの実体)との対応関係は、PDMシステム100の他の構成要素あるいは後述するユーザ104や他のシステム105から参照可能に保持される。なお、係る対応関係はPDMシステム100の内部に保持してもよく、係る対応関係が予め定まっている場合は、PDMシステム100の外部に保持してもよい。
【0054】
なお、改版処理部102は、PDM構成記憶部101から、特定のオブジェクトに対する改版の通知を受信してもよい。また、改版処理部102は、定期的にPDM構成記憶部101の構成を確認することにより、特定のオブジェクトに対する改版を検知してもよい。
【0055】
図3に例示する具体例においては、例えば、部品構成表302aが改版された場合、改版処理部102は、リレーションオブジェクト303aの改版識別属性305aに、属性値として「1」を設定する。同様に、改版処理部102は、製品オブジェクト301の改版識別属性304に、属性値として「1」を設定する。また、図面302bが改版された場合も、同様に、改版処理部102は、改版識別属性305a及び改版識別属性304に、属性値として「2」を設定する。
【0056】
また、改版処理部102は、特定の下位オブジェクトが改版された際、当該改版に関する情報を、上位オブジェクトの管理者あるいはユーザ104等に通知してもよい。また、改版処理部102は、当該改版に関する情報を、他のシステム105に通知してもよい。
【0057】
図3に例示する具体例においては、改版処理部102は、例えば、部品構成表302aが改版された際、上位オブジェクトである製品オブジェクト301担当者(ユーザ等)に対して、当該改版に関する情報を任意の手段により通知してよい。
【0058】
改版処理部102は、上記通知の方法として、例えば、図示しない出力手段(画面等)に対してメッセージを表示する方法を採用してもよく、電子メール等の通信回線を介した通知手段を採用してもよい。なお、あるオブジェクトに対する担当者の情報は、係るオブジェクトと共に、PDM構成記憶部101に予め登録してもよい。
【0059】
次に、本実施形態における改版確認部103について説明する。
【0060】
本実施形態における改版確認部103は、上記したPDM構成記憶部101と通信可能に接続されている。改版確認部103は、後述するユーザ104あるいは他のシステム105からの要求に応じて、上記PDM構成記憶部101に登録された上位オブジェクト及びリレーションオブジェクトの改版識別属性に設定された属性値を消去する。
【0061】
ユーザ104は、このように構成された上記PDM装置100に対して、図示しない入出力手段を介して、各種管理操作を実行したり、製品情報を登録したりする。PDM装置100は、ユーザによる操作に基づいて処理した結果を、図示しない入出力装置を介して、ユーザ104に提示してもよい。
【0062】
また、上記PDM装置100は、他のシステム105と通信可能に接続され、係る他のシステム105からの各種管理要求や操作要求を受け付け、当該各種要求に対する処理結果を当該他のシステムに通知してもよい。この場合、他のシステム105は、例えば、製品の製造に関連する生産管理システムや、製品の設計に関連する設計システム等であってもよい。
【0063】
上記のように構成されたPDMシステム100の動作について、図4に例示するフローチャートと、図3に例示するPDM構成記憶部101の具体例を用いて説明する。
【0064】
まず、PDM構成記憶部101に対して製品情報を表す各オブジェクトが登録され、下位オブジェクト(図3に例示する部品構成表302a、図面302b、仕様書302c等)が改版されていない状態を、例えば初期状態とする。
【0065】
係る初期状態においては、製品オブジェクト301における改版識別属性304と、各リレーションオブジェクト303a乃至303cにおける改版正規別属性305a乃至305cには属性値が設定されていない。
【0066】
ここで、例えばユーザ104(あるいは他のシステム105)が、図示しない入出力手段を介して、PDM構成管理部101に登録されているオブジェクトを改版する(ステップS401)。図3に例示する具体例においては、例えば、ユーザが部品構成表302aと、図面302bとを改版する。この場合においては、例えば、PDM構成記憶部101は、これらのオブジェクトが改版されたことを、改版処理部102に通知してもよい。
【0067】
改版処理部102は、改版されたオブジェクトに関連付けされているリレーションオブジェクに対して、特定の属性値を設定する(ステップS402)。また、改版処理部102は、改版されたオブジェクトに関連付けされている上位オブジェクに対して、特定の属性値を設定する(ステップS403)。これらのステップS402及びS403の順番は任意であり、どちらを先に実行してもよく、また同時に実行してもよい。
【0068】
図3に例示する具体例においては、改版処理部102は、改版された部品構成表302aに関連付けされたリレーションオブジェクト303aと、上位オブジェクトである製品オブジェクト301との改版識別属性(305a及び304)に対して、属性値「1」を設定する。
【0069】
また、改版処理部102は、改版された図面302bに関連付けされたリレーションオブジェクト303bと、上位オブジェクトである製品オブジェクト301との改版識別属性(305b及び304)に対して、属性値「2」を設定する。
【0070】
なお、図3に例示する属性値(「1」及び「2」)は一例である。係る属性値は、上記したように、オブジェクトの種類毎に異なった任意の値としてよい。
【0071】
次に、改版処理部102は、下位オブジェクトの改版に関する情報を、当該下位オブジェクトに関連付けされた上位オブジェクトの担当者(ユーザ等)に通知する(ステップS404)。
【0072】
図3に例示する具体例においては、部品構成行302aと、図面302bとの改版に関する情報を、製品オブジェクト301の担当者(不図示)に電子メール等により通知してもよい。
【0073】
ステップS404における通知を受領した図示しない上記担当者は、製品オブジェクト301、リレーションオブジェクト305a及び305bの改版識別属性(符号304、305a及び305b)に設定された属性値(「1」及び「2」)を確認する(ステップS405)。これにより、上記担当者は、部品構成表302a及び図面302bが改版されたことを知ることができる。また、上記担当者、係る通知に基づいて、それぞれの改版に対して任意の必要な処置を行ってもよい。
【0074】
なお、上記製品オブジェクト301の担当者は、必要な処置を行った後、処置が完了したことを示すために製品オブジェクト301、リレーションオブジェクト305a及び305bの改版識別属性に設定された上記属性値(「1」及び「2」)をクリア(消去)してもよい(ステップS406)。
【0075】
この場合、上記製品オブジェクト301の担当者は、改版確認部103に対して係る属性値の消去を通知(要求)してもよい。係る通知を受領した改版確認部103は、例えば、全てのオブジェクトに対する改版に対して必要な処置が実行されたとこと確認してから、上記各属性値を消去してもよい。
【0076】
上記したように、本実施形態におけるPDMシステム100は、特定のオブジェクトが改変された場合に、係るオブジェクトに関連付けされたリレーションオブジェクト及び、上位オブジェクトにおける改版識別情報に、改版されたオブジェクトを一意に識別可能な属性値を設定する。また、本実施形態におけるPDMシステム100は、係る改版に関する情報を、上位オブジェクトの担当者に通知する。
【0077】
このため、本実施形態におけるPDMシステム100によれば、特定の上位オブジェクトについて、どの下位オブジェクトにおいて改版が発生したかを容易に判定可能である。また、係る改版識別属性に設定された属性値をクリアすることにより、どのオブジェクトの改版に対して、処置を講じたか、識別することができる。
【0078】
以上より、本実施形態におけるPDMシステムによれば、特定改版された製品情報(オブジェクト)を容易に識別可能であり、また、係る改版に対して適切な処置を講じたか否かを容易に確認可能である。
【0079】
なお、上記本実施形態の説明においては、PDM構成記憶部101が製品情報を表すオブジェクトをツリー形式により管理する態様を例示しているが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態におけるPDM構成記憶部100は、あるオブジェクトと他のオブジェクトとの間をリレーションオブジェクトにより関連付け可能な任意の形式により、それらオブジェクトの管理構造を定めてよい。例えば、オブジェクト間をメッシュ状に接続してもよく、ネットワーク状に接続してもよい。また、図6に例示するように、特定の下位オブジェクトが、複数の上位オブジェクトに関連付けられていてもよい。
【0080】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明においては、本実施形態に係る特徴的な部分を中心に説明すると共に、上述した第1の実施形態と同様な構成についての重複する説明は省略する。
【0081】
図7は、本実施形態におけるPDMシステム700の機能的な構成を例示するブロック図である。なお、本実施形態におけるPDMシステム700において、PDM構成記憶部101と、改案処理部102とは、上記第1の実施系と同様としてよい。このため以下の説明において、係る構成の説明は省略する。
【0082】
本実施形態におけるPDMシステム700は、必要に応じて、上位オブジェクトの改版識別属性に設定された属性値をクリア(消去)する操作を抑制する点において、上記第1の実施形態に係るPDMシステム100と相違する。以下係る相違点を中心に説明する。
【0083】
本実施形態における改版確認部701は、上記第1の実施形態と同様、ユーザ104あるいは他のシステム105からの要求に応じて、上記PDM構成記憶部101に登録された上位オブジェクト及びリレーションオブジェクトの改版識別属性に設定された属性値を消去する。
【0084】
ここで、本実施形態における改版確認部701は、上位オブジェクトの改版識別属性に設定された属性値に対する消去の要求を受領した際に、係る属性値と同一の属性値が設定されたリレーションオブジェクトが存在するか確認する。そして、改版確認部701は、消去しようとする属性値と同一の属性値が設定されたリレーションオブジェクトが存在する場合には、係る消去を抑制する。その差異、改版確認部701は、消去を要求したユーザ104や他のシステム105に対して、消去を抑制した旨を通知してもよい。
【0085】
また、改版確認部701は、消去しようとする属性値と同一の属性値が設定されたリレーションオブジェクトが存在しない場合には、係る消去を実行する。
【0086】
即ち、本実施形態における改版確認部701は、リレーションオブジェクトの改版識別属性に設定された属性値が消去されていない場合は、上位オブジェクトにおける改版識別属性から、当該属性値を消去できないように制御する。
【0087】
上記した本実施形態における改版確認部701の制御により、例えば、特定の下位オブジェクトに対する改版の影響を確認しないまま、係る下位オブジェクトに関連付けされた上位オブジェクトの担当者が当該上位オブジェクトを誤って操作することを防止可能である。
【0088】
次に、上記のように構成された本実施形態におけるPDMシステム700の動作について図8に例示するフローチャート及び、図3に例示する具体例を用いて説明する。
【0089】
まず、図8に例示するフローチャートにおけるステップS801乃至ステップS804は、それぞれ図4に例示するフローチャートにおけるステップS401乃至ステップS404と同様としてよいため、説明を省略する。
【0090】
ステップS805において、上位オブジェクト(例えば図3に例示する製品オブジェクト301)の担当者が、係る上位オブジェクトの改版識別属性に設定された特定の属性値のクリアを、本実施形態における改版確認部701に要求する(ステップS805)。
【0091】
図3に例示する具体例においては、例えば製品オブジェクト301の担当者(不図示)が、改版識別属性304に設定されている属性値「1」のクリアを、改版確認部701に要求する。
【0092】
ステップS805における要求を受け付けた改版確認部701は、係る特定の属性値が改版識別属性として設定されたリレーションオブジェクトの存在を確認する(ステップS806)。即ち、改版確認部701は、消去しようとしている属性値に対応する下位オブジェクトに関連付けされたリレーションオブジェクトから、当該属性値が消去されているか否かを確認する。
【0093】
図3に例示する具体例においては、各リレーションオブジェクト303a及び303bにおける、改版識別属性305a及び305bに設定されている値を確認する。
【0094】
上記ステップS806における確認の結果、当該属性値が設定されているリレーションオブジェクトが存在しない場合(ステップS806においてNO)、改版確認部701は、上記上位オブジェクトの改版識別属性から、当該属性値をクリア(消去)する(ステップS807)。
【0095】
上記ステップS806における確認の結果、当該属性値が設定されているリレーションオブジェクトが存在する場合(ステップS806においてYES)、改版確認部701は、上記上位オブジェクトの改版識別属性に対するクリアの要求を抑制する(ステップS808)。この場合、改版確認部701は、上記クリアの要求を抑制に伴う所定の処理を実行してもよい。改版確認部701は、例えば、消去を要求した上位オブジェクトの担当者に対して、消去を抑制した旨を通知してもよい。
【0096】
図3に例示する具体例において、例えば、製品オブジェクト301の担当者(不図示)が、改版識別属性304に設定されている属性値「1」のクリアを改版確認部701に要求した際、リレーションオブジェクト303aの改版識別属性305aに属性値「1」が設定されているとする(ステップS806においてYES)。
【0097】
この場合、改版確認部701は、製品オブジェクト301の改版識別属性における属性値「1」の消去を抑制する。そして、改版確認部701は、係る消去が抑制されたことを、上記担当者に通知してもよい。
【0098】
上記したように、本実施形態におけるPDMシステム700は、上記第1の実施形態と同様、特定のオブジェクトが改変された場合に、係るオブジェクトに関連付けされたリレーションオブジェクト及び、上位オブジェクトにおける改版識別情報に、改版されたオブジェクトを一意に識別可能な属性値を設定する。また、本実施形態におけるPDMシステム100は、係る改版に関する情報を、上位オブジェクトの担当者に通知する。
【0099】
このため、本実施形態におけるPDMシステム100によれば、特定の上位オブジェクトについて、どの下位オブジェクトにおいて改版が発生したかを容易に判定可能である。
【0100】
更に、本実施形態におけるPDMシステム700は、上位オブジェクトの改版識別属性に設定された属性値の消去を要求された場合、同じ識別値が設定されたリレーションオブジェクトが存在するか確認する。そして、同じ識別値が設定されたリレーションオブジェクトが存在する場合には、上位オブジェクトの改版識別属性に設定された属性値を消去しないよう制御する。
【0101】
このような動作により、本実施形態におけるPDMシステム700は、例えば、特定の下位オブジェクトに対する改版の影響を確認しないまま、係る下位オブジェクトに関連付けされた上位オブジェクトの担当者が当該上位オブジェクトを誤って操作することを防止可能である。
【0102】
以上より、本実施形態におけるPDMシステムによれば、上記第1の実施形態と同様、改版された製品情報(オブジェクト)を容易に識別可能であり、また、係る改版に対して適切な処置を講じたか否かを容易に確認可能である。更に、係る改版が影響する範囲(例えば上位オブジェクト)について適切な処置を講じないまま、誤った操作を実行することを防止可能である。
【0103】
換言すると、本実施形態におけるPDMシステム700によれば、ユーザ104は、改版された下位オブジェクトを見落とすことがなく、かつ、どの下位オブジェクトの改版について処置が実行されたかを、容易に判別可能である。
【0104】
なお、上記説明した本実施形態のように、あるオブジェクトの担当者が、そのオブジェクトに設定されている改版識別属性のクリアを要求する具体的なケースとしては、例えば、以下のような場合がある。
【0105】
ある製品の担当者は、その製品オブジェクトに関連する下位オブジェクトが設計変更等により改版された場合、その改版による影響を確認し、必要に応じて適切な処置を講じる。
【0106】
ここで、製品オブジェクトの担当者は、係る改版と同時期に上記した必要な処置を講じることができるとは限らず、係る改版に対する対応を後回しにする場合が考えられる。
【0107】
このような場合、例えば、製品オブジェクトの担当者自身が、後回しにした改版を検索して処理する事が必要となる。
【0108】
このため、製品オブジェクトの担当者は、例えば、自身が担当する製品に関するオブジェクトであって、改版識別属性になんらかの属性値が設定されているものを検索する。そして、製品オブジェクトの担当者は、設定された属性値に対応する下位オブジェクトの改版内容を確認し、リレーションオブジェクトに設定された属性値をクリアする。
【0109】
製品オブジェクトの担当者は、下位オブジェクトの改版内容を確認した結果、自身が担当する上位(製品)オブジェクトの改版等の処置が必要な場合には、係る処置を実行する。
【0110】
上位(製品)オブジェクトを改版した場合、係る属性値は継承せずともよく、この場合は属性値をクリアせずともよい。
【0111】
製品オブジェクトの担当者は、下位オブジェクトの改版内容を確認した結果、自身が担当する上位(製品)オブジェクトの改版等の処置が不要な場合には、係る属性値をクリアする。
【0112】
このように、本実施形態におけるPDMシステム700によれば、製品オブジェクトの担当者が上記下位オブジェクトの改版内容を確認し、リレーションオブジェクトに設定された属性値のクリアをしない限り、上位(製品)オブジェクトの属性値をクリアできないよう制御する。これによって、改版内容を確認せずに、誤った操作をすることを防止可能である。
【0113】
また、例えば、本実施形態におけるPDMシステム700と、他のシステム106の一つである生産システムが連携する場合に、下位オブジェクトの改版が確認されていない製品オブジェクトの生産を行わないよう、生産システム側で抑制することも可能である。
【0114】
この場合、例えば、本実施形態におけるPDMシステム700から、PDM構成記憶部101に登録された特定の製品に関する情報を、図示しない生産システム(他のシステム106の一つ)に送り出す。
【0115】
上記生産システムは、例えば、PDMシステム100から受け取った上記製品に関する情報を確認し、係る製品の改版識別属性に属性値が設定されている場合は、当該製品の担当者に確認依頼を通知する。
【0116】
係る通知を受け付けた当該製品の担当者は、上記において説明したように、設定された属性値に対応する下位オブジェクトの改版内容を確認し、リレーションオブジェクトに設定された属性値をクリアする。
【0117】
このように、本実施形態におけるPDMシステム700によれば、製品オブジェクトに設けられた改版属性値を確認することにより、設計変更等に伴う改版が確認されないまま、当該製品が生産される等の不具合を防止可能である。
【0118】
<第3の実施形態>
次に、上述した各実施形態に共通する構成について、本発明の第3の実施形態として説明する。以下の説明においては、本実施形態に係る特徴的な部分を中心に説明すると共に、上述した第1及び第2の実施形態と同様な構成についての重複する説明は省略する。
【0119】
図9は、本実施形態におけるPDMシステム900の機能的な構成を例示するブロック図である。
【0120】
本実施形態におけるPDMシステム900はPDM構成記憶部901と、改版処理部902とを有する。また、本実施形態におけるPDMシステム100は、改版確認部903を有してもよい。
【0121】
本実施形態におけるPDM構成記憶部901は、製品に関連する情報である製品情報を表す第1のオブジェクトと、上記製品情報を表し、当該第1のオブジェクトの下位ノードに配置された1以上の第2のオブジェクトと、上記第1のオブジェクトと上記1以上の第2のオブジェクトとの間を関連付けるリレーションオブジェクトとを、ツリー形式にて管理する。
【0122】
本実施形態における改版処理部902は、上記第2のオブジェクトが改版された際に、上記第1のオブジェクトと上記リレーションオブジェクトとに設けられた改版識別属性に対して、当該改版された第2のオブジェクトの種類毎に異なる属性値を設定する。
【0123】
また、本実施形態における改版確認部903は、上記第1のオブジェクトに設けられた改版識別属性に設定された特定の上記属性値を消去する要求を受け付け、上記リレーションオブジェクトに設けられた改版識別属性を確認する。
【0124】
そして、改版確認部903は、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在しない場合には、上記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値を消去してよもい。また、当該特定の属性値を有するリレーションオブジェクトが存在する場合には、上記第1のオブジェクトに設定された当該特定の属性値の消去を抑制してもよい。
【0125】
上記のように構成された本実施形態におけるPDMシステムによれば、改版された製品情報(例えば上記第2のオブジェクト)を容易に識別可能であり、また、係る改版に対して適切な処置を講じたか否かを容易に確認可能である。更に、係る改版が影響する範囲(例えば上記第1のオブジェクト)について適切な処置を講じないまま、誤った操作を実行することを防止可能である。
【0126】
<ハードウェア及びソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)の構成>
以下、上記説明した各実施形態を実現可能なハードウェア構成について説明する。
【0127】
上記各実施形態において説明したPDMシステム(図1における符号100、図7における符号700、図9における符号900:以下、これらを総称して単にPDMシステムと称する場合がある)は、それぞれの機能を実現する専用のハードウェア装置により構成してもよい。その場合、上記各図に示した各部は、一部または全部を統合したハードウェア(処理ロジックを実装した集積回路等)として実現してもよい。
【0128】
また、上記PDMシステムは、その一部または全部を、単独のコンピュータ等の情報処理装置によって構成されてもよく、複数の情報処理装置により構成されてもよい。 また、上記PDMシステムを構成する情報処理装置は、物理的な実体を伴ったコンピュータ等により構成されてもよく、その一部または全部が仮想環境に構築された仮想コンピュータ等により構成されてもよい。
【0129】
また、上記PDMシステムは、図10に例示するようなハードウェアと、係るハードウェアによって実行される各種ソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)とによって構成してもよい。
【0130】
図10における演算装置1001は、汎用のCPU(Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ等の演算処理装置である。演算装置1001は、例えば後述する不揮発性記憶装置1003に記憶された各種ソフトウェア・プログラムを記憶装置1002に読み出し、係るソフトウェア・プログラムに従って処理を実行してもよい。
【0131】
記憶装置1002は、演算装置1001から参照可能な、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置であり、ソフトウェア・プログラムや各種データ等を記憶する。なお、記憶装置1002は、揮発性のメモリ装置であってもよい。
【0132】
不揮発性記憶装置1003は、例えば磁気ディスクドライブや、フラッシュメモリによる半導体記憶装置のような、不揮発性の記憶装置であり、各種ソフトウェア・プログラムやデータ等を記録してもよい。
【0133】
ネットワークインタフェース1006は、通信ネットワークに接続するインタフェース装置であり、例えば有線及び無線のLAN(Local Area Network)接続用インタフェース装置等を採用してもよい。
【0134】
例えば、上記各実施形態におけるPDMシステムに対して、各種データ(例えば、PDMシステムにおいて管理する製品情報等)を入出力する独立した他の装置(例えば、他のシステム105等)を設ける場合、係る他の装置と、当該PDMシステムとの間を任意の通信ネットワークにより通信可能に接続してもよい。
【0135】
外部記憶装置1004は、例えば、後述する外部記憶媒体1005に対するデータの読み込みや書き込みを処理する装置である。
【0136】
外部記録媒体1005は、例えば光ディスク、光磁気ディスク、半導体フラッシュメモリ等、データを記録可能な任意の記録媒体である。
【0137】
入出力インタフェース1007は、外部入力装置(例えばキーボードやマウス等)及び外部出力装置(例えばディスプレイ装置やプリンタ等)との間の入出力を制御する装置である。
【0138】
なお、上記各実施形態においては、上記PDMシステムに対する各種入力データ(PDMシステムにおいて管理する製品情報等)を上記外部記録媒体1005に記録して、外部記憶装置1004を介して上記PDMシステムに入力してもよい。また、図示しないユーザが、上記入出力インタフェース1007に接続された入出力装置を用いて、上記各種入力データを入力してもよい。
【0139】
上述した各実施形態を例に説明した本発明は、例えば、図10に例示したハードウェアによりPDMシステムを構成し、係る装置に対して、各実施形態の説明において参照したフローチャートの機能を実現可能なソフトウェア・プログラムを供給した後、そのソフトウェア・プログラムを、演算装置1001が実行することによって達成されてもよい。
【0140】
上述した各実施形態において、上記各図に示した各部は、上述したハードウェアにより実行されるソフトウェア・プログラムの機能(処理)単位である、ソフトウェアモジュールとして実現することができる。但し、これらの図面に示した各ソフトウェアモジュールの区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。
【0141】
例えば、図1図7、及び、図9示した各部をソフトウェアモジュールとして実現する場合、これらのソフトウェアモジュールを不揮発性記憶装置1003に記憶しておき、演算装置1001がそれぞれの処理を実行する際に、これらのソフトウェアモジュールを記憶装置1002に読み出すよう構成してもよい。
【0142】
また、これらのソフトウェアモジュール間は、共有メモリやプロセス間通信等の適宜の方法により、相互に各種データを伝達できるように構成してもよい。このような構成により、これらのソフトウェアモジュール間は、相互に通信可能に接続可能である。
【0143】
更に、上記各ソフトウェア・プログラムを外部記憶媒体1005に記録しておき、上記通信装置等の出荷段階、あるいは運用段階等において、適宜外部記憶装置1004を通じて当該ソフトウェア・プログラムを不揮発性メモリ1003に格納するよう構成してもよい。
【0144】
図1図7、及び、図9を参照して、例えば、改版処理部(符号102、902:以下単に改版処理部と称する場合がある)をソフトウェア・プログラムにより実現する場合、上述したように、上記改版処理部の機能を実現したソフトウェア・プログラムを記憶装置1002に読み込み、演算装置1001が、係るソフトウェア・プログラムを実行するよう制御してもよい。
【0145】
上記改版処理部と同様に、PDM構成情報記憶部(符号101、901)、改版確認部(103、701、903)についてもソフトウェア・プログラムにより実現可能である。
【0146】
また、上記PDMシステムの構成要素をソフトウェア・プログラムとして実現する場合、上記各実施形態において説明した、PDM構成情報記憶部に保持される各オブジェクトの情報は、適宜適切なデータ構造等を用いて、記憶装置1002や、不揮発性記憶装置1003に記憶してもよい。また、これらの情報を、任意のデータベースアプリケーション等を用いて記憶してもよい。
【0147】
なお、上記の場合において、上記PDMシステムを構成する各種ソフトウェア・プログラムの供給方法は、出荷前の製造段階、あるいは出荷後のメンテナンス段階等において、適当な治具を利用して上記ハードウェアにインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等のように、現在では一般的な手順を採用することができる。
【0148】
そして、このような場合において、本発明は、係るソフトウェア・プログラムを構成するコード、あるいは係るコードが記録されたところの、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって構成されると捉えることができる。
【0149】
以上、本発明を、上述した模範的な実施形態に適用した例として説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態に記載した範囲には限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更または改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更または改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、特定の製品に関連する設計や製造に必要な情報を統合管理する、PDMシステムに適応できる。本発明を適応したPDMシステムによれば、PDMシステムに登録されている各製品情報について、改版の有無を漏れなく確認可能である。また、係る改版が影響する範囲を容易に特定可能である。
【符号の説明】
【0151】
100 PDMシステム
101 PDM構成記憶部
102 改版処理部
103 改版確認部
104 ユーザ
701 改版確認部
900 PDMシステム
901 PDM構成記憶部
902 改版処理部
903 改版確認部
1001 演算装置
1002 記憶装置
1003 不揮発性記憶装置
1004 外部記憶装置
1005 外部記録媒体
1006 ネットワークインタフェース
1007 入出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10